説明

解錠制御システム

【課題】 マンション・スペース等を期間貸しする業種、特に定期借家契約による家具付マンション等を提供する業種に適し、支払い済みの利用料金に相当する期間のみの設備利用を可能とし、滞納を防止する解錠制御システムを提供する。
【解決手段】 データの記憶が可能なカード式のキー4と、宿泊室のドア10に設置される解錠制御装置11を備え、カードキー4は、部屋IDと、宿泊契約を識別する契約IDと、宿泊設備の有効利用期間と、を記憶する一方、前記解錠制御装置11は、自己の記憶部16に部屋IDと、現在有効な宿泊契約のIDとを記憶し、前記カードキー4から読み取った部屋ID及び契約IDが、記憶部16に記憶されている部屋ID及び契約IDとそれぞれ一致し、かつ、内蔵している時計18によって得られた現在時刻が、前記キー4から取得した有効利用期間内にある場合には、解錠信号を発生する処理制御部15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マンション・スペース等を期間貸しする業種、特にウィークリー・マンスリーマンションなどの定期借家契約による家具付マンションを提供する業種に適し、支払い済みの利用料金に相当する期間のみの設備利用を可能とし、期間経過後の利用を防止する解錠制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテルや旅館などの宿泊施設では、宿泊客はチェックイン時にメカニカルなルームキー(通常金属製であって、ドアの鍵穴に差込んで解錠、施錠するタイプの鍵)を受け取り、そのルームキーを用いて客室へ出入りしていた。しかし、ルームキーはかさばるだけでなく、セキュリティ上の理由などから、ルームキーに替えてカード式のキー(以下、「カードキー」)の利用が普及してきている。このカードキーは、客室のドアの電気錠を解錠するためのキー情報などが磁気データとして、あるいは搭載したICにデジタルデータとして記録されており、客室のドアに設けられたカード読取装置のキー挿入口にカードキーを挿入したり、非接触の状態でカード読取装置にキー情報を読み取らせたりすることで、解錠できる。このようなカードキーに関する発明が、その利便性の高さから、種々提案されている。
【0003】
例えば、特開2006−185378号公報に記載の客室情報サービスシステム、コンピュータプログラム及びカードドライブ装置に関する発明も、その一つである。この発明は、各客室にカードドライブ装置を設け、データ送受信手段を介してサーバから受信したサービスデータをカードキーに書き込むことにより、カードキーを単なるドアの開閉手段にとどめず、利用客に宿泊設備以外の他のサービスに関する情報をも提供するという付加機能を持たせたことに主眼がある。
【0004】
また、特開2003−64917号公報には、個人で利用可能な施設と複数人で利用可能な施設とを併せ備える施設に適する施錠管理システムが開示されている。この発明では、各宿泊室のドアに設置されたカードキーの読み取り装置は、施錠及び解錠を行うだけでなく、カードキーに対し、共同利用施設使用のための有効期限データを書き込む機能も備える。
【0005】
さらに、特開平8−202776号公報には、カードキーを利用して、利用者の予約受付から、客室等の施設管理、料金精算までを一貫して無人で管理運営するホテルシステムが開示され、前払金を記憶させたカードキーにより宿泊室等のドアの施錠及び解錠を管理している。
【0006】
【特許文献1】特開2006−185378号公報
【特許文献2】特開2003−64917号公報
【特許文献3】特開平8−202776号公報
【特許文献4】特開2006−189985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、平成12年3月に「契約で定めた期限がくると契約が必ず終了する借家契約」が施行されることによって、借家の貸主が1日から貸すことが可能になり、定期借家契約による賃貸マンションや家具付マンション(ウィークリーマンション・マンスリーマンション)が供給されるようになっている。手軽で、短期間から長期間まで入居可能なウィークリー・マンスリーマンションは、利用者の立場から見ると、好きな時に入居でき、好きな時に退去できるというメリットがある。そのため、長期出張のビジネスマンや滞在型の旅行者の中にはアパートやビジネスホテルの代わりにこれらを利用する者もいる。
【0008】
定期借家契約による賃貸マンション等は、外部との出入りの際にフロントを通ったり、門限があったりするホテルや旅館に比べ、利用客は自由な行動を取りやすい。
また、定期借家契約による賃貸マンション等は、月毎に家賃を支払うアパートと類似の性格も有していることから、利用料の滞納のおそれがある。しかし、通常のアパートの居住者と異なり、単身で利用し、住民票も移さず、自分の家財道具を持たないことが多いので、滞納した利用料を精算することなく、貸主の知らぬ間に退去するおそれもある。
定期借家契約による不動産の貸主の中には、手持ちの遊休不動産を活用する目的の零細業者もいる。このような業者にとって、利用客から利用料を支払われないまま居座られたり、利用料を踏み倒されたりすることは、由々しき問題である。
一方、利用客に安心をもたらすために、第三者の不正な入室を防止できなくてはならず、利用客にとっての利便性及びセキュリティの観点から、カードキーを採用することが望ましい。
【0009】
しかし、前記した先行特許文献記載の発明は、主としてホテルで活用されることを想定している。そのため、定期借家契約による賃貸マンション等の貸主と利用客の双方に利便性をもたらすシステムとしては最適といえない。
例えば、特開2006−185378号公報(特許文献1)に記載のシステムは、宿泊設備の提供以外にも、喫茶・レストラン設備やプール・映画館などの娯楽施設も備えているホテルにとって、非常に有用である。しかし、専ら宿泊設備の提供に特化している場合、契約期間内だけ入室を許可する機能さえあれば十分である。しかも、余剰不動産の有効活用などを目的とすることが多いため、設備投資は抑制したい。そのためには、各室に設置した装置をサーバと通信可能に接続するのでは予算がかさみすぎる。
【0010】
また、特開2003−64917号公報(特許文献2)に記載の発明では、宿泊設備以外の設備も備えているホテルなどに適用されることを念頭に、カードキーに共同利用設備の有効期限を書き込む機能を持たせている。安価かつ迅速な設備導入の観点から、キーとしてカードを使用する際に、ドアに設けた装置によって、後からデータを書き込ませることはシステムを複雑にするので、好ましいことではない。
【0011】
さらに、特開平8−202776号公報(特許文献3)記載の発明では、予約から精算までのホテル業務全般の無人自動化を目的とすることから、各客室のドアに設置された解錠装置は、客室内設備等の利用許可又は禁止と、料金の精算をも行う。しかし、前払いした料金に相当する期限内のみの利用に限定することで未収金の発生を防止するシステムにとって料金の精算はありえず、不要な機能である。
【0012】
このように、前記の特許文献に記載の発明は、1)契約終了後の居座りを防ぐ、2)利用代金の未収を防ぐという、定期借家契約による賃貸マンションにとって最重要な2つの課題を解決する上で必要にして十分な機能を果たすとはいえない。そのため、本発明は、これら2つ課題に対し、迅速かつ低コストで応えることを目的とする。
【0013】
なお、特開2006−189985号公報(特許文献4)記載の発明は、タイムシェアマンションを対象とする点で、本発明と共通するが、利用終了後に料金が決済されるので、代金の未収を防ぐという課題に対応していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、データの記憶が可能なキーと、宿泊設備のドアに対応して設置され、該ドアの解錠を制御する解錠制御装置と、を備え、前記キーを利用して前記解錠制御装置による解錠を制御する解錠制御システムであって、前記キーは、各宿泊設備を識別するための部屋IDと、各宿泊契約を識別するための契約IDと、宿泊設備の有効利用期間とが記憶可能である一方、前記解錠制御装置は、設置されている宿泊設備の部屋IDと、現在有効な宿泊契約の契約IDとを記憶する記憶部と、前記キーに記憶されている情報を読み取るデータ読み取り手段と、前記キーから取得した部屋ID及び契約IDが、前記記憶部に記憶されている部屋ID及び契約IDとそれぞれ一致し、かつ、内蔵している時計によって得られた現在時刻が、前記キーから取得した有効利用期間内にある場合には、解錠信号を発生する処理制御部とを備えることを特徴とする。
「宿泊設備の有効利用期間」とは、前払いされた利用料金によって設備が利用可能となる初日(以下「入金済みの初日」)から、利用可能な最終日(以下「入金済みの最終日」)までをいう。
これにより、キーに書き込まれている部屋IDの正当性且つ契約IDの正当性且つ有効利用期間内という3つの条件が充足されたときに限り、宿泊設備内への入室が可能となるので、利用客にとって安全性が確保されるとともに、貸主にとって利用料の未収は生じない。
【0015】
また、前記の目的を達成するために、前記解錠制御装置は、少なくとも数字を入力できるデータ入力部と、入力された情報を前記記憶手段に記憶させるデータ書き込み手段とを備え、前記データ入力部を介して部屋IDあるいは契約IDが更新できることを特徴とする。前記解錠制御装置は、データ入力部が、ドアの内側に位置するようにドアに設置されることが好ましい。
これにより、有効利用期間が経過すると、契約IDを変更することができ、期限切れのカードキーを用いて入室することを防止できる。更新手段が室内側にあるので、正当に入室しうる者、例えば、管理人や清掃係以外によるデータの更新を防止できる。
あるいは、前記解錠制御装置は、ICカードに記憶されている部屋IDあるいは契約IDを前記データ読み取り手段に読み取らせ、読み取った値を前記記憶部に記憶させることにより、部屋IDあるいは契約IDを更新するようにしてもよい。
さらに、この解錠制御装置は、電池で動作することが好ましい。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明のキーとして、ICカードを搭載することによって電子マネー機能を付加された携帯電話を用いることができ、宿泊設備の提供者が該宿泊設備の利用料の入金確認後に、前記提供者から前記携帯電話に対し、部屋IDと、契約IDと、入金された利用料に相当する有効利用期間とが送信されることを特徴とする。
【0017】
近年、ICカードを携帯電話に搭載し、携帯電話からインターネットに接続できるインフラを利用することにより、各種商品やサービスの代金を決済できるようになってきた。本発明のシステムは、このICカードを搭載した電子マネー機能付きの携帯電話をキーとして活用する。
本発明は、普及の著しい携帯電話をキーとして利用できるので、別途カードキーを持たずにすむ。
【0018】
前記目的を達成するために、本発明のキーとして、半導体メモリ等の記憶手段を備えたICカードで構成されるカードキーを用いることができ、このキーには、宿泊設備の提供者が該宿泊設備の利用料の入金確認後に、前記提供者のコンピュータと接続するカードリーダライタによって部屋IDと、契約IDと、入金された利用料に相当する有効利用期間とが書き込まれることを特徴とする。また、前記カードリーダライタは、クレジットカードの決済機能を有してもよい。
【0019】
「カードキー」とは、カードリーダライタ(カードドライブ装置と呼ばれることもある)によって、データの書き込みが行われ、その書き込まれたデータが保存可能であるとともに、カードリーダライタによって、保存されているデータの読み込みが行われるカード式の鍵である。カードキーとして、ICカードと磁気カードのいずれもが利用可能であるが、次の理由により、ICカードを利用することが望ましい。すなわち、1)ICカードは、カードリーダライタと無線電波の送受信により、非接触でデータの送受信が行われ、記憶されているデータが読み取れるので、利用客の負担を軽減する、2)カードリーダライタにカードの挿入口及び専用の端子を設ける必要がない、3)偽造可能な磁気カードと異なり、ICカードは偽造のおそれがない等の理由である。
【発明の効果】
【0020】
1枚の宿泊室用のカードキー、あるいは電子マネー機能付の携帯電話を使用することによって、ドアの施錠・解錠の管理を簡単かつ安全に実現でき、しかも、利用客から支払い済みの期間内のみの利用を許可することによって未収金の発生を防止できる。
ウィークリーマンションなどにとって必要にして十分な機能のみに絞ることで、迅速かつ低コストで設備導入ができる。
各ドアの解錠装置をネットワーク接続させず、単体で動作できるようにしたので、機能変更や故障時には、解錠制御装置のみを取り替えればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一の実施の形態)
図面を参照しながら、第一の実施の形態について説明する。この実施の形態では、ICカードをカードキーとして使用する。
【0022】
複数の賃貸不動産物件(例えば、複数のウィークリーマンション)を管理している会社を想定する。この管理会社の管理コンピュータ1は、図1に示すように、各賃貸不動産物件(例えば、ウィークリーマンション)の管理人室の管理人端末2と通信回線Nで接続している。
管理コンピュータ1は、賃貸不動産物件に関するデータを記憶する物件データベース、物件ごとの賃貸料を賃貸期間に応じて設定し記憶する賃貸料データベース(なお、賃貸期間には、月、週、日、時間単位の期間、その他の所定期間のいずれかが少なくとも標準期間として含まれる)、契約内容を記憶する契約データベースを備えている。
契約データベースに記憶されるデータには、契約者(つまり利用客)名、契約者の連絡先、利用物件の物件IDや物件タイプ、申し込み受付日、入金日、有効利用期間(つまり、入金済みの初日及び入金済みの最終日)、その他の様々なデータを記憶する。物件IDによって物件データベースのデータを参照でき、物件タイプによって賃貸料データベースのデータを参照できる。なお、利用客名や連絡先などは別途利用客データベースを設けて管理してもよい。
【0023】
賃貸不動産物件(以下、「賃貸マンション」)を利用したいと希望する人は、管理会社に連絡し予約をする。所望の部屋を予約できれば、管理会社の指示にしたがって利用代金を前払いする。支払い方法はどのようなものでもよい。数ヶ月間あるいは数週間の利用を希望する人は、一括して支払わなくても、最初の標準期間(1月間、1週間など)に対応した利用代金を支払えばよい。なお、通常のアパートの家賃のように、月払いが可能であることから、滞納の問題が生じるが、これを解決するのが、本発明の主目的である。
【0024】
管理会社は入金を確認すると、契約データベースに入金済みである旨と入金額に対応する有効利用期間とを書き込み、通信回線Nを介して、管理人端末2に、新規契約データを送信する。この新規契約データには、部屋IDと契約IDも含まれる。管理コンピュータ1は、契約毎に契約IDを生成する。
利用客は、賃貸マンションを訪れると、管理人端末2と接続しているカードリーダライタ3によって必要なデータが書き込まれたカードキー4を手渡される。なお、カードキー4は、入金を確認後に管理会社から郵便等の方法で送付されるようにしてもよい。
以上が、利用客がカードキー4を入手するまでの仕組みである。
次に、本発明の解錠制御システムの実施形態例について説明する。
【0025】
利用客に渡されたカードキー4は、図2に示すように、内部メモリ5、アンテナ部6、受信部7、送信部8、制御部9を備えている。
受信部7は、カードリーダライタ3から送られた情報を、アンテナ部6を介して受信し、制御部9に伝える。制御部9は、この情報(部屋IDと契約IDと有効利用期間)を内部メモリ5に保存する。
送信部8は、制御部9の指示により内部メモリ5から取り出された情報を、アンテナ部6を介して、後述する解錠制御装置11に送信する。
【0026】
続いて、図3の機能ブロック図に従い、宿泊室のドア10に対応して設置される解錠制御装置11の構成について説明する。
解錠制御装置11は、ドア10に設けられた電気錠12の解錠を制御するものであり、アンテナ部13、送受信部14、処理制御部15、記憶部16、データ入力部17、内部時計18、ドア錠用インタフェース部19を備える。また、解錠制御装置11は、図示しない電池を電源として動作する。
【0027】
送受信部14は、カードキー4から送られた部屋IDなどの情報を、アンテナ部13を介して受信し、処理制御部15に伝える。
データ入力部17は、手動で操作される入力手段であって、入力されたデータは、処理制御部15の指示によって記憶部16に保存される。データ入力部17は、例えば、数字キーと、誤入力を訂正するキーと、入力データを処理制御部15に伝えるためのキーを備えた構成をとる。なお、解錠制御装置11は、ドア10の近傍に設置したときに、データ入力部17が室内に位置するように設置する。
【0028】
処理制御部15は、解錠制御装置11によって行われる各種処理の制御を行う。主たる処理は、受信した部屋IDなどを記憶部16に保存されている部屋IDなどと比較し、解錠の可否を判定する処理、解錠可と判定したときに、ドア錠用インタフェース部19に対し、ドアの錠12の解錠を行うように指示する処理である。なお、ドア錠用インタフェース部19は、錠12の図示しないソレノイドを制御する信号の送信などを行う。
なお、請求項1にいうデータ読み取り手段は、アンテナ部13、送受信部14および処理制御部15との連携によって実現され、請求項2にいうデータ書き込み手段は、データ入力部17と処理制御部15との連携によって実現される。
【0029】
続いて、図4に従い、この実施形態のシステムの動作を説明する。
利用客は、利用する部屋のドア10のところまで行く。
解錠制御装置11は、ポーリングでカードキー4との交信が可能となる状態を待機している。利用客が自分のカードキー4を宿泊室のドア10の解錠制御装置11に近づけ、これにより、カードキー4と解錠制御装置11との間の相互の無線通信が成立する(ステップS1)と、カードキー4の部屋IDと契約IDと有効利用期間の初日と最終日を読み込む(ステップS2)。読み込んだ部屋IDを、自己の記憶部16に保存している部屋IDと照合する(ステップS3)。部屋IDが一致しているならば(ステップS3でyes)、読み込んだ契約IDを、自己の記憶部16に保存している契約IDと照合する(ステップS4)。契約IDも一致しているならば(ステップS4でyes)、自己の内部時計18から得た現在時刻と、カードキー4から読み取った有効利用期間とを比較し(ステップS5)、現在時刻が有効利用期間の初日よりも時間軸で未来に該当し、かつ、有効利用期間の最終日よりも時間軸で過去に該当すれば(ステップS5でyes)、当該宿泊室の利用が可能と判断する。そこで、解錠制御装置11の処理制御部15は、ドア錠用インタフェース部19を介して、ドア10の錠12に対し解錠信号を送信する(ステップS6)。
これによりドア10が開き、利用客は室内に入ることができる。
このシステムでは、利用可能と判断できなかった場合(ステップS3、ステップS4、ステップS5のいずれかでnoの場合)にどのような処理をどのように行うかは特に問わない。
【0030】
ここで、部屋IDの一致を判定するのは、利用客が間違って他の部屋に入室しないようにするためであり、契約IDの一致を判定するのは、期限切れのカードキーで入室しようとする試みを防止するためである。
なお、契約IDは、1回の契約ごとに生成されるが、1回の契約とは、1回の入金に対応する契約である。したがって、再契約しようとする場合は、再契約分の利用料を前払いした時点で新たな契約が成立し、契約IDも更新される。このように契約ごとにIDを変えるので、契約期限切れのカードキーで入室しようとしても、入室できない。
カードキー4に書き込まれた契約IDは、カードリーダライタ3で書き込み、解錠制御装置11で読み込みが行われるので、外部に表示されない。したがって、利用客に契約IDを知られずにすむ。
また、利用期間の確認をするので、利用可能な期間以外は、部屋IDおよび契約IDが一致していても入室できない。つまり、本システムでは、滞納の問題は生じない。
【0031】
ところで、ウィークリーマンションあるいはマンスリーマンションは、数週間あるいは数ヶ月間をまとめて契約することが多く、その場合、全期間に相当する利用料を一括して支払うとは限らない。1週間とか1月間とかの標準期間ごとに利用料を徴収することも行われる。この場合、支払い済みの標準期間が満了する以前に、次の標準期間分の利用料を支払う。このような、支払い方法をとる場合、あるいは、同じ部屋を延長して利用しようとする場合(以下、「再契約の場合」と呼ぶことにする)の処理を説明する。
【0032】
利用客が支払いを適当な方法で行うと、入金を確認した管理コンピュータ1から管理人端末2に契約IDが送信されてくる。管理人端末2に接続しているカードリーダライタ3が、カードキー4の情報を書き換える。以後、利用客は、データを書き換えられたキー4を使うこととなる。なお、書き換えられるのは、契約IDと有効利用期間である。ここで、カードリーダライタ3にクレジットカードの決済機能まであると、入金と同時にカードキー4の更新が可能になる。
【0033】
一方、再契約の場合、貸主は、解錠制御装置11側の情報を書き換えなくてはならない。管理人あるいは清掃係のような正当な権限のある人が、自己のカードキーを使って入室し、書き換える。これらの利用客以外の人たちが使用するカードキーは、必要な部屋に入室できるものであれば、どのような仕様でもよい。管理人であれば、全部屋の解錠が可能なマスターキーを使えばよい。清掃係などであれば、部屋IDと契約IDの少なくともいずれかが書き込まれたカードキーを使って入室する等の方法により、担当する部屋以外には入れないようにしてもよい。
入室した管理人や清掃係など(以下「管理人等」)は、データ入力部17を操作して、新たな契約に対応する契約IDを入力する。なお、基本的には部屋IDは固定であるが、解錠制御装置11を設置する部屋の変更もありうるため、部屋IDも手動で変更できる仕様が望ましい。
【0034】
ここで注意すべきことは、解錠制御装置11には有効利用期間を入力する必要がない、という点である。有効利用期間の入力を必要としないので、管理人等の負担が軽くなる。
さらに、データ入力部17が部屋の内側に位置しているので、ドア10の外からはデータの書き換えができない。このように、セキュリティについての十分な配慮がなされている。
なお、利用客によりデータ入力部17が操作されるおそれは残る。しかし、データ変更のためには、専用のコマンドと特定のフォーマットを用意しておくことで、利用客によるデータ書き換えを防止できる。
また、この実施形態では、ICカードを利用しているので、カードの偽造ができず、一層安全である。さらに、解錠制御装置11は電池によって駆動可能なので、停電時にも入室できる。
【0035】
(第2の実施の形態)
この実施の形態では、キーとして電子マネー機能付きの携帯電話を使用する。
部屋ID、契約IDおよび有効利用期間を携帯電話に搭載したICカードに記憶させる点、解錠制御装置11に近づけてICカードに記憶させたデータを読み取らせ、解錠させる点は、第1の実施の形態と変わるところはない。
以下、第1の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0036】
新規に宿泊の契約をするときは、管理会社に申し込みをし、管理会社が入金を確認すると、当該携帯電話あてに情報を送信する。送信される情報は、入金済みの初日および最終日(=有効利用期間)、部屋ID、契約毎の契約IDであり、携帯電話に搭載されたICカードは、これらを記憶する。
宿泊延長などの再契約時、あるいは翌月(翌週、翌日など)分の利用料支払い時は、利用客からの入金を確認後、当該利用客の携帯電話あてに情報を送信する。送信される情報は、新規契約の場合と同様に、有効利用期間、部屋ID、契約毎の契約IDである。
【0037】
(他の実施の形態)
前記した実施形態では、管理人端末2が管理コンピュータ1と接続するシステムを想定していたが、賃貸物件が1件のみといった場合は、管理人のオフィスにスタンドアローンで設置されるコンピュータが、契約の受付、入金の確認からカードキーの発行までの処理を実行するものであってよい。
【0038】
また、前記した実施形態では、管理人等は、テンキーのような入力手段17を用いて手動でデータを更新していた。しかし、データ更新専用のICカードを発行し、このICカードを解錠制御装置11に近づけ、読み込ませるような構成をとってもよい。人手による入力ミスを防止できるだけでなく、請求項2の「データ入力部」に相当するテンキーのような操作手段を不要とするので部品点数を削減できる。なお、データ更新のためのICカードは、部屋ID変更用と契約ID変更用とを別にしてもよい。部屋IDの変更は、頻繁には行われないからである。
【0039】
さらに、前記した実施形態では、契約IDは、1回の契約ごと、つまり、1回の入金に対応する契約ごとに生成されるユニークな値であった。管理コンピュータ1が、乱数を発生させる等のアルゴリズムによって生成することを想定している。しかし、現実には、このような契約IDを生成することが難しい場合もある。たとえば、管理人等のオフィスにあるパソコンはスタンドアロンで動作し、契約IDを生成するための専用ソフトがインストールされていない、といった場合である。
賃貸マンションの管理人室の窓口などで、入金と引き換えに、利用客に再書き込みしたカードキーあるいは新規発行のカードキーを渡す場合、契約IDの代わりになる値を書き込むようにしてもよい。例えば、適当な個数の値(01から10までの10種類など)を用意し、管理人がランダムに選んだいずれか1の値を書き込むわけである。本来のIDは、ある契約を他の契約と識別する一意な値という意味であって、予め決められた値を使い回しするのでは、契約IDとは言いがたい。しかし、本発明の契約IDは、解錠を許可する3条件の一つである。部屋IDの一致と有効利用期間内という条件に加えて、複数の中からランダムに選んだ値も一致するならば、実用上は十分である。
【0040】
要は、前記のように開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。したがって、種々の変形が可能である。しかし、その変形が特許請求の範囲に記載された技術思想に基づくものである限り、その変形は本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
(宿泊設備以外への応用)
本発明は、主として、定期借家契約による賃貸マンション等において用いられることを想定している。しかし、不心得な利用客による、契約期間経過後の不正な設備使用や、料金の踏み倒しは、駐輪場や駐車場においても発生する。このような駐輪場等の経営者にとっての問題も、本発明のシステムを採用することによって、解決が図られる。
例えば、駐輪場に本発明を応用する場合、解錠制御装置11を、自転車前輪をロックする機構の近傍に設け、料金を前払いしたときに交付されたカードキーを近づけることによって、ロックが解除されるようにするとよい。1台の自転車用のラック等のIDが、前記の実施形態の部屋IDに相当する。料金の支払いの都度、契約IDが更新される点、カードキーにはラック等のIDと、契約IDと、有効な利用期間とが書き込まれる点、解錠制御装置11によってカードキーの読み取りから解錠信号の発生までの処理が行われる点は、宿泊設備に本発明が使用される場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、一月間、一週間、一日間あるいは時間単位の期間が標準期間として含まれるマンション・事務所・スペース(駐輪場、駐車場も含む)等の期間貸しを業とする者が、確実な利用料金の徴収のために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態のシステムの全体構成を示した図である。
【図2】第1の実施形態のカードキーの構成を示した図である。
【図3】第1の実施形態の解錠制御装置の構成を示した図である。
【図4】第1の実施形態の解錠可否の判定から解錠までの処理を表す流れ図である。
【符号の説明】
【0044】
1 管理コンピュータ
2 管理人端末
3 カードリーダライタ
4 カードキー
5 (カードキー4の)内部メモリ
10 ドア
11 解錠制御装置
12 (ドア10の)錠
13 (装置11の)アンテナ部
14 (装置11の)送受信部
15 (装置11の)処理制御部
16 (装置11の)記憶部
17 (装置11の)データ入力部
18 (装置11の)時計
19 (装置11の)ドア錠用インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの記憶が可能なキーと、宿泊設備のドアに対応して設置され、該ドアの解錠を制御する解錠制御装置と、を備え、前記キーを利用して前記解錠制御装置による解錠を制御する解錠制御システムであって、
前記キーは、各宿泊設備を識別するための部屋IDと、各宿泊契約を識別するための契約IDと、宿泊設備の有効利用期間とが記憶可能である一方、
前記解錠制御装置は、
設置されている宿泊設備の部屋IDと、現在有効な宿泊契約の契約IDとを記憶する記憶部と、
前記キーに記憶されている情報を読み取るデータ読み取り手段と、
前記キーから取得した部屋ID及び契約IDが、前記記憶部に記憶されている部屋ID及び契約IDとそれぞれ一致し、かつ、内蔵している時計によって得られた現在時刻が、前記キーから取得した有効利用期間内にある場合には、解錠信号を発生する処理制御部とを備えることを特徴とする解錠制御システム。
【請求項2】
前記解錠制御装置は、少なくとも数字を入力できるデータ入力部と、入力された情報を前記記憶部に記憶させるデータ書き込み手段とを備え、前記データ入力部を介して部屋IDあるいは契約IDが更新できることを特徴とする請求項1に記載の解錠制御システム。
【請求項3】
前記解錠制御装置は、ドアの内側に前記データ入力部が位置するように、ドアに設置されることを特徴とする請求項2に記載の解錠制御システム。
【請求項4】
前記解錠制御装置は、ICカードに記憶されている部屋IDあるいは契約IDを前記データ読み取り手段に読み取らせ、読み取った値を前記記憶部に記憶させることにより、部屋IDあるいは契約IDを更新することを特徴とする請求項1に記載の解錠制御システム。
【請求項5】
前記解錠制御装置は、電池で動作することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の解錠制御システム。
【請求項6】
前記キーとして、ICカードを搭載することによって電子マネー機能を付加された携帯電話を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の解錠制御システム。
【請求項7】
宿泊設備の提供者が該宿泊設備の利用料の入金確認後に、前記提供者から前記携帯電話に対し、部屋IDと、契約IDと、入金された利用料に相当する有効利用期間とが送信されることを特徴とする請求項6に記載の解錠制御システム。
【請求項8】
前記キーは、内部メモリを備えたICカードで構成されるカードキーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の解錠制御システム。
【請求項9】
前記キーは、宿泊設備の提供者が該宿泊設備の利用料の入金確認後に、前記提供者のコンピュータと接続するカードリーダライタによって、部屋IDと、契約IDと、入金された利用料に相当する有効利用期間とが書き込まれることを特徴とする請求項8に記載の解錠制御システム。
【請求項10】
前記カードリーダライタは、クレジットカードの決済機能を有することを特徴とする請求項9に記載の解錠制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−26264(P2009−26264A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191693(P2007−191693)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(502406373)グッド・コミュニケーション株式会社 (1)
【Fターム(参考)】