説明

触媒、これらの製造方法およびこれらの使用

a)クレイ、ゼオライトおよび準結晶性ベーマイトを含んでなるスラリーを製造し(但し、スラリーは解膠準結晶性ベーマイトを含んでなるものでない)、b)このスラリーに一価の酸を添加し、c)このスラリーにケイ素源を添加し、そしてd)このスラリーを賦型して、粒子を形成する段階を含んでなる、触媒を製造する方法。この方法は、高いアクセシビリティおよび高い耐摩耗性の触媒を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法、この方法により入手可能な触媒および、例えば流動接触分解(FCC)におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一触媒の設計および製造における一般的な挑戦は、活性点の有効性および/またはアクセシビリティと、触媒粒子に充分な物理的強度、すなわち耐摩耗性を授与することにおける固定化マトリックスの有効性の間の良好な折衷を見出すことである。
【0003】
耐摩耗性触媒の製造はいくつかの先行技術の文献に開示されている。
【0004】
特許文献1は、(i)5重量%未満のナトリウム含量のフォージャサイトゼオライトを(ii)カオリン、(iii)解膠擬ベーマイトおよび(iv)ポリケイ酸アンモニウムと混合することにより製造される水性スラリーを噴霧乾燥することにより、耐摩耗性触媒を製造する方法を開示している。
【0005】
特許文献2による耐摩耗性触媒は、2つのタイプの酸性化された擬ベーマイト、ゼオライト、アルミナ、クレイと、ポリケイ酸アンモニウムまたはシリカゾルのいずれかを混合することにより製造されるスラリーを噴霧乾燥することにより製造される。
【0006】
特許文献3は、ゼオライト、クレイおよびアルミナバインダーを含んでなる耐摩耗性炭化水素変換触媒を製造することを開示している。この触媒は、最初にゼオライトとクレイを乾燥混合し、続いてアルミナゾルを添加することにより製造される。次に、この生成する混合物は塑性コンシステンシー物まで混合され、約20分の混合時間を必要とする。賦型粒子を形成するためには、この塑性コンシステンシー物はペレット化されるか、あるいは押し出され、あるいは水と混合され、引き続いて噴霧乾燥される。
【0007】
特許文献3に開示されているアルミナゾルは、水酸化アルミニウムと三塩化アルミニウムを4.5〜7.0のモル比で含んでなる(アルミニウムクロロヒドロールとも呼ばれる)。
【0008】
特許文献4は、上記に続いて噴霧乾燥された粒子を焼成する類似の製造方法に関する。焼成時に、このアルミニウムクロロヒドロール構成成分はアルミナバインダーに変換される。
【0009】
特許文献5は耐摩耗性の流動接触分解触媒の製造方法を開示している。この方法は、硫酸アルミニウム/シリカゾル、クレイスラリー、ゼオライトスラリーおよびアルミナスラリーを混合し、続いて噴霧乾燥することを含む。この工程時には、酸安定性あるいはアルカリ安定性界面活性剤がシリカゾル、クレイスラリー、ゼオライトスラリー、アルミナスラリーおよび/または噴霧乾燥スラリーに添加される。
【0010】
特許文献6は、噴霧乾燥されたクラッキング触媒の製造にも関する。この製造は、アルミンゾル、擬ベーマイト、モレキュラーシーブ、クレイおよび無機酸を含んでなるスラリーを使用する。この方法においては、アルミンゾルがスラリーに添加され、その後クレイと無機酸が添加され、そして無機酸を添加した後でモレキュラーシーブスラリーが添加される。一つの態様によれば、擬ベーマイトとアルミニウムゾルが最初に混合され、続いて無機酸が添加される。酸性化後、モレキュラーシーブが添加され、続いてカオリンが添加される。
【0011】
特許文献7は、高耐摩耗性と高アクセシビリティの両方を有するFCC触媒を製造する方法を開示している。この触媒は、ゼオライト、クレイおよびベーマイトをスラリー化し、このスラリーを賦型装置に供給し、そしてこの混合物を賦型して、粒子を成形することにより製造され、賦型段階の直前にこの混合物が脱安定化されることを特徴とする。この脱安定化は、例えば温度上昇、pH上昇、pH減少または塩、リン酸塩、硫酸塩および(部分的に)ゲル化されたシリカなどのゲル誘起剤の添加により行われる。脱安定化前に、このスラリー中に存在するいかなる解膠性化合物もよく解膠されていないといけない。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,086,187号
【特許文献2】米国特許第4,206,085号
【特許文献3】GB 1 315 553
【特許文献4】米国特許第4,458,023号
【特許文献5】WO96/09890
【特許文献6】CN1247885
【特許文献7】WO02/098563
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
後者の特許による触媒は比較的高い耐摩耗性とアクセシビリティを有するが、アクセシビリティと耐摩耗性を更に改善することができるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この更なる改善は、
a)クレイ、ゼオライトおよび準結晶性ベーマイトを含んでなるスラリーを製造し(但し、スラリーは解膠準結晶性ベーマイトを含んでなるものでない)、
b)このスラリーに一価の酸を添加し、
c)このスラリーにケイ素源を添加し、そして
d)このスラリーを賦型して、粒子を形成する
段階を含んでなる、本発明による方法により達成される。
【0015】
ゼオライト含有スラリーへの添加の前に準結晶性ベーマイト(例えば擬ベーマイト)の解膠を必ず行う慣用の方法と対照的に、本発明による方法は非解膠準結晶性ベーマイト(QCB)を添加する。酸は、QCB添加後に、すなわちゼオライトとクレイも含んでなるスラリーに添加されるのみである。
【0016】
理論に束縛されるのを望むのではないが、本発明者らは、前記の慣用の方法においては、負に帯電したシリカが後で添加される正に帯電した解膠ベーマイトと反応し、Si−Alコゲルを形成すると考える。ゼオライト、ベーマイトおよびクレイを含有するスラリーに酸を添加する本発明の方法においては、これらの3つの化合物のすべての表面は正帯電の表面となることができる。後で添加されるシリカは、ベーマイトのみならず、すべてのこれらの正に帯電した成分と相互作用し、低Si−Alコゲルの形成をもたらす。これは高いアクセシビリティの触媒粒子を生成させる。
【0017】
本発明による方法の更なる利点は、本発明によればFCCでの使用に充分なアクセシビリティおよび耐摩耗性を持つミクロ結晶性および準結晶性のベーマイトを含んでなる触媒の形成が可能となるということである。ミクロ結晶性ベーマイト(MCB)は、特にNi混入物質に対する好適な金属の不動態化物質である。しかしながら、MCBは、慣用のFCCタイプのバインダーにより結合することが困難であり、許容し得ない磨耗性の触媒粒子を生じるために、MCB含有のFCC触媒粒子の製造は現在まで成功しなかった。しかしながら、本発明による方法によれば、満足な耐摩耗性を持つMCB含有触媒を製造することが可能である。それゆえ、本発明は、MCBおよびQCBの両方を含んでなるFCC触媒にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ベーマイト
用語「ベーマイト」は、アルミニウム酸化物・水酸化物[AlO(OH)]のそれに近いX線回折(XRD)パターンを呈するアルミナ水和物を記述するのに当業界で使用される。更に、用語ベーマイトは、異なる量の水和水を含有し、異なる表面積、細孔容積、比重を有し、そして熱処理時に異なる熱特性を呈する広範なアルミナ水和物を記述するのに一般に使用される。しかしながら、これらのXRDパターンは、特性的なベーマイト[AlO(OH)]ピークを呈するが、通常、幅が変わり、そして位置がシフトすることもある。結晶化度、結晶サイズおよび不完全部の量を示すのに、XRDピークの鋭さおよびこれらの位置が使用されてきた。
【0019】
広く言って、準結晶性ベーマイト(QCB)およびミクロ結晶性ベーマイト(MCB)というベーマイトアルミナの2つのカテゴリーがある。
【0020】
現状技術では、準結晶性ベーマイトは擬ベーマイトおよびゼラチン状ベーマイトとも呼ばれる。通常、これらのQCBは、高い表面積、大きい細孔および細孔容積およびMCBよりも低い比重を有する。これらは、水または酸に容易に分散し、MCBよりも小さい結晶サイズを有し、そして更に多数の水和の水分子を含有する。QCBの水和の範囲は、広い範囲の値、例えばAl1モル当り約1.4〜約2モルまでの水を有することができ、この水は八面体の層の間で通常規則正しく、あるいは別な形でインターカレーションされている。
【0021】
DTG(示差熱重量分析)は、MCBの場合よりもずっと低い温度で多量の水がQCBから放出されるということを示す。QCBのXRDパターンはかなり広いピークを示し、そしてこれらの半値幅(すなわち、半値強度におけるピーク幅)は結晶サイズならびに結晶完全性の程度を示すものである。
【0022】
いくつかの通常の市販のQCBは、Pural(登録商標)、Catapal(登録商標)およびVersal(登録商標)の製品である。
【0023】
ミクロ結晶性ベーマイトは、これらの高い結晶化度、比較的大きい結晶サイズ、極めて低い表面積および高い密度によりQCBと区別される。QCBと反対に、MCBは高いピーク強度および極めて狭い半値幅を持つXRDパターンを示す。これは、インターカレーションされた水分子が比較的小数であること、結晶サイズが大きいこと、バルク材料の結晶化度が高いこと、そして結晶不完全部が少量であることによるものである。通常、インターカレーションされた水分子の数は、Al1モル当り約1から約1.4まで変わることができる。
【0024】
通常の市販MCBはSasolのP−200(登録商標)である。
【0025】
MCBとQCBは粉末X線反射によりキャラクタリゼーションされる。ICDDはベーマイトに対する登録項目を含み、そして(020)、(021)および(041)面に対応する反射が存在するということを裏付ける。Cu線に対しては、このような反射は2θ=14、28および38度に現われる。この反射の厳密な位置は、結晶性の程度とインターカレーションされた水の量に依存し;インターカレーションされた水の量が増加するにつれて、(020)反射はd間隔の増加に対応する低い値に移動する。それにも拘わらず、上記の位置に近い線は、1つ以上のタイプのベーマイト相の存在を示すものである。
【0026】
この明細書の目的には、本発明者らは、準結晶性ベーマイトを2θ=1.5゜あるいは1.5゜よりも大きい半値全幅(FWHH)の(020)反射を有するものとして定義する。2θ=1.5゜よりも小さいFWHHの(020)反射を有するベーマイトはミクロ結晶性ベーマイトと考えられる。
【0027】
全体として、QCBとMCBの間の基本的かつ特徴的な差は、三次元格子秩序、結晶子のサイズ、八面体層の間でインターカレーションされた水の量および結晶の不完全性の程度が変動することを含む。
【0028】
ゼオライト
段階a)のスラリー中に存在する好適なゼオライトは、HY、USY、RE−Y、脱アルミ化YおよびRE−USYを含むY−ゼオライト、ゼオライトベータ、ZSM−5、リン活性化ZSM−5、イオン交換ZSM−5、MCM−22およびMCM−36、金属交換ゼオライト、ITQ、SAPO、ALPOおよびこれらの混合物などのゼオライトを含む。
【0029】
クレイ
好適なクレイは、カオリン、ベントナイト、サポナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ラポナイト、ヘクトライト、イングリッシュクレイ、ヒドロタルサイトなどのアニオン性クレイおよびメタ−カオリンなどの熱処理あるいは化学的処理されたクレイを含む。
【0030】
段階a)
段階a)のスラリーは、クレイ、ゼオライトおよび非解膠QCBを水中で懸濁することにより製造される。場合によっては、MCB、アルミニウムクロロヒドロール、硝酸アルミニウム、AlおよびAl(OH)のような他のアルミナ源、アニオン性クレイ(例えばヒドロタルサイト)、スメクタイト、セピオライト、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、チタン酸マグネシウム、混合金属酸化物、層状ヒドロキシ塩、更なるゼオライト、酸化マグネシウム、塩基または塩および/またはアルカリ土類金属(例えばMg、CaおよびBa)、IIIA族遷移金属、IVA族遷移金属(例えばTi、Zr)、VA族遷移金属(例えばV、Nb)、VIA族遷移金属(例えばCr、Mo、W)、VIIA族遷移金属(例えばMn)、VIIIA族遷移金属(例えばFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt)、IB族遷移金属(例えばCu)、IIB族遷移金属(例えばZn)、ランタナイド(例えばLa、Ce)またはこれらの混合物を含有する化合物などの金属添加物などの他の構成成分が添加され得る。
【0031】
MCBとQCBの両方を含んでなる触媒を製造する結果となるために、特に好ましい構成成分はMCBである。
【0032】
クレイ、ゼオライト、非解膠QCBおよび随意の他の構成成分は、乾燥固体として水に添加することによりスラリー化可能である。別法として、個々の材料を含有するスラリーが混合されて、段階a)によりスラリーを形成する。材料の一部をスラリーとして、そして他のものを乾燥固体として添加することも可能である。
【0033】
いかなる添加順序も使用され得る。それゆえ、最初にクレイを添加し、次にゼオライトを、そして次に非解膠QCBを添加すること、あるいは最初にゼオライトを添加し、次にクレイを、そして次に非解膠QCBを添加すること、あるいは最初に非解膠QCBを添加し、次にゼオライトを、そして最後にクレイを添加すること、あるいは最初に非解膠QCBを添加し、次にクレイを、そして最後にゼオライトを添加すること、あるいは最初にクレイを添加し、次に非解膠QCBを、そして最後にゼオライトを添加すること、あるいは最初にゼオライトを添加し、次に非解膠QCBを、そして最後にクレイを添加することが可能である。
【0034】
ゼオライト、非解膠QCBおよびクレイを同時に添加することも可能である。更には、この成分の2つ、例えばゼオライトとクレイを同時に添加し、他の成分、例えば非解膠QCBを引き続いて添加することができる。
【0035】
ゼオライトの添加の前あるいは後に、随意の他の構成成分がクレイと非解膠QCBと一緒にスラリーに添加可能である。
【0036】
このスラリーは、好ましくは10〜70重量%の、更に好ましくは15〜50重量%の、そして最も好ましくは15〜40重量%のゼオライトを含んでなる。このスラリーは、好ましくは5〜70重量%の、更に好ましくは10〜60重量%の、そして最も好ましくは10〜50重量%のクレイを含んでなる。このスラリーは、好ましくは1〜50重量%の、更に好ましくは2〜40重量%の、そして最も好ましくは3〜40重量%の非解膠QCBを含んでなる。更に好ましくは、このスラリーは、1〜25重量%の、そして最も好ましくは5〜25重量%のMCBも含んでなる。
【0037】
すべての重量パーセントは乾燥固体含量基準で、かつ酸化物として計算したものである。
【0038】
このスラリーの固体含量は、好ましくは10〜30重量%、更に好ましくは15〜30重量%そして最も好ましくは15〜25重量%である。
【0039】
段階b)
次の段階において、一価の酸がこの懸濁液に添加され、化学融解を引き起こす。有機および無機の一価の酸またはこれらの混合物が使用可能である。好適な一価の酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、硝酸および塩酸である。
【0040】
この酸は、7よりも低い、更に好ましくは2と5の間の、最も好ましくは3と4の間のpHを得るのに充分な量でスラリーに添加される。
【0041】
酸添加時、このスラリーを攪拌、ミル掛け、磨砕、高剪断混合あるいは超音波処理にかけ得る。
【0042】
段階c)
段階c)で添加される好適なケイ素源は、(ポリ)ケイ酸、ケイ酸ナトリウム、ナトリウムを含まないケイ素源および有機ケイ素源を含む。好適なナトリウムを含まないケイ素源の例は、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸リンおよびケイ酸boriumである。好適な有機ケイ素源の例は、シリコーン(ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンおよびポリジメチルシロキサン)およびSi−O−C−O−Si構造を含む他の化合物と、メチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシランおよびこれらの混合物などのこれらの前駆体である。
【0043】
このケイ素源は、好ましくは乾燥固体含量基準で、かつSiOとして計算して1〜35重量%の、更に好ましくは4〜18重量%の量で添加される。
【0044】
本発明の好ましい態様においては、ケイ素源は段階a)のスラリー中に存在しない。これは、Si−Alコゲルの更なる形成を防止する。
【0045】
段階d)
好適な賦型方法は、噴霧乾燥、パルス乾燥、ペレット化、押し出し(場合によっては混練と組み合わされて)、ビード化または触媒および吸収剤分野で使用される任意の他の慣用の賦型方法またはこれらの組み合わせを含む。好ましい賦型方法は噴霧乾燥である。触媒を噴霧乾燥により賦型する場合には、噴霧乾燥機の入口温度は、好ましくは300〜600℃の範囲にあり、そして出口温度は、好ましくは105〜200℃の範囲にある。
【0046】
段階c)において賦型段階d)の直前にケイ素源を添加することが好ましい。ケイ素源の添加と賦型の間の時間は、好ましくは30分以下、更に好ましくは5分未満、そして最も好ましくは3分未満である。
【0047】
噴霧乾燥対象のスラリーのpHは、好ましくは3以上、更に好ましくは3.5以上、なお更に好ましくは4以上、そして最も好ましくは約4.5以上である。高pHのスラリーは取り扱い困難である可能性があるために、このスラリーのpHは好ましくは7よりも高くない。
【0048】
このpHは、噴霧乾燥直前に塩基(例えばNaOHまたはNHOH)をスラリーに添加することにより調整可能である。
【0049】
このように得られる触媒は、格別に良好な耐摩耗性およびアクセシビリティを有する。それゆえ、本発明は、本発明による方法により得られる触媒にも関する。
【0050】
上述のように、本発明は、更にMCBとQCBの両方を含んでなる触媒に関する。好ましくは、このような触媒は、1〜50重量%の、最も好ましくは3〜40重量%のQCBと、好ましくは1〜25重量%の、最も好ましくは5〜25重量%のMCB(酸化物として計算して)を含んでなる。
【0051】
この触媒は、シリカ、ゼオライトおよびクレイを更に含んでなる。QCBと随意のMCBの他に、このシリカ、ゼオライトおよびクレイは、1〜25重量%のシリカ、5〜50重量%のゼオライトおよび差分のクレイの好ましい量で存在する。
【0052】
これらの触媒は、FCC触媒、水素処理触媒におけるSO低減添加物、NOX低減添加物、CO燃焼添加物、ZSM−5添加物またはガソリン中のイオウ低減添加物などのFCC添加物、アルキル化触媒、改質触媒、ガス・液変換触媒、石炭変換触媒、水素製造触媒および自動車触媒において使用可能である。
【0053】
それゆえ、本発明は、本発明の方法により得られるこれらの触媒の流動接触分解、水素処理、アルキル化、改質、ガス・液変換、石炭変換および水素製造における触媒または添加物としての、そして自動車触媒としての使用にも関する。
【実施例】
【0054】
アクセシビリティ測定
トルエン溶液中に50gの15g/lのクウェートバキュームガスオイル(KVGO)を入れた攪拌された容器に1gの触媒を添加することにより、下記の実施例により製造される触媒のアクセシビリティを測定した。この溶液を容器と分光光度計の間を循環し、KVGO濃度を連続的に測定した。
【0055】
KVGOに対する触媒のアクセシビリティをアクゾアクセシビリティ指数(AAI)により定量した。この溶液中のKVGOの相対濃度を時間の平方根に対してプロットした。AAIをこのグラフの初期勾配
AAI= −d(C/C)/d(t1/2)* 100%
として定義する。
【0056】
この式において、tは時間(分での)であり、そしてCおよびCはそれぞれ実験の開始時および時間tにおけるこの溶媒中の高分子量化合物の濃度を表す。
【0057】
耐摩耗性
触媒の耐摩耗性を標準の摩耗試験により測定した。この試験においては、触媒床を3個のノズル付の摩耗板上に置く。磨耗板は外周温度に置かれた磨耗管内に存在する。空気をノズルに押し込み、そして生成するジェットにより触媒粒子と生成する微粉の上方輸送が起きる。磨耗管の頂部には分離チャンバーがあり、そこで流れは解消し、そして約16ミクロンよりも大きい大部分の粒子は磨耗管の中に戻る。小さい粒子を捕集バッグに捕集する。
【0058】
触媒試料を600℃で焼成した後でこの試験を行う。これは5時間の最初のランであり、そして50グラムの仮想取り込みを基準として捕集バッグに捕集される微粉の重量パーセントを求める。これが初期磨耗である。次に、この試験を更に15時間行い、そしてこの時間(5〜20時間)における微粉の重量パーセントを求める。これが固有磨耗である。磨耗指数(AI)は25時間後の外挿された重量%微粉である。したがって、触媒が耐摩耗性であるほど、AI値は低い。
【0059】
実施例1
60.6kgのゼオライトYスラリー(29.7重量%固体)を23.3kgのミクロ結晶性ベーマイトスラリー(23.2重量%Al)、16.2kgのカオリンスラリー(85.3重量%固体)、非解膠擬ベーマイトを含有する14.2kgのスラリー(71.9重量%Al)および48.9kgの水と混合することにより、スラリーを製造した。得られたスラリーにpHが3.3となるまでHNOを添加した。
【0060】
希釈した水ガラス(DWG)をHSOと混合することにより、シリカゾルをパイプラインミキサー(5900rpm)中で製造した。重量比DWG/HSOは2.9であった。
【0061】
このシリカゾルと上記で製造したスラリーの両方を混合容器(1450rpm)にポンプ送液し、21重量%の固体のスラリーを得た。このシリカゾルを0.88kg/分の流れでこの容器にポンプ送液し;このスラリーを2.12kg/分の流れでポンプ送液した。次に、約2.5のpHを有する生成スラリーを3.0kg/分の流れ、300℃の入口温度、125℃の出口温度および40バールのノズル圧力で噴霧乾燥機に供給した。
【0062】
噴霧乾燥された粒子は約75ミクロンのd50を有するものであった。
【0063】
この粒子は、30重量%のゼオライト、17重量%のQCB、9重量%のMCB、21重量%のシリカおよび差分のカオリンを含有するものであった。
【0064】
この処方を用いて、次に本発明による4つの試料を作製した。
試料A1は上記のように製造したものであり、
試料B1は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、3.8のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料C1は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.2のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料D1は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.6のpHに達せしめることにより得たものである。
【0065】
噴霧乾燥直前にpHを4.2(CC1)および4.6(CD1)に増加させることにより、解膠擬ベーマイト(硝酸により解膠された)を使用したことを除いて同一の手順により2つの比較試料(CC1およびCD1)を作製した。
【0066】
引き続いて、ナトリウム含量を0.5重量%(NaOとして)まで低下させるために、12kgのこの粒子を40リットルのアンモニア溶液中pH5.0で再スラリー化することにより、この試料を洗浄した。次に、この粒子を濾過し、そして420gの硫酸アンモニウムを含有する30リットルのアンモニア溶液により8.3のpHで洗浄し、30リットルのアンモニア溶液中pH7.8で再度再スラリー化し、そして420gの硫酸アンモニウムを含有する30リットルのアンモニア溶液により8.3のpHで洗浄した。最後に、この粒子を水により洗浄し、引き続いてフラッシュ焼成(出口ガス温度150℃)した。
【0067】
すべての洗浄段階を45℃で行った。
【0068】
磨耗指数(AI)およびアクゾアクセシビリティ指数(AAI)をすべての上記の試料に対して測定した。表1を参照のこと。この表は比AAI/Alも示す。本発明の方法により製造される触媒は、低い磨耗(すなわち、高い耐摩耗性)と高いAAI/Al比を有することが明白である。試料Al〜D1に対する結果の比較は、アクセシビリティが噴霧乾燥直前のpHと共に増加するということを更に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2
66.445kgのゼオライトYスラリー(27.1重量%固体)を25.851kgのミクロ結晶性ベーマイトスラリー(23.2重量%Al)、24.619kgのカオリンスラリー(85.3重量%固体)、非解膠擬ベーマイトを含有する8.054kgのスラリー(74.5重量%Al)および48.9kgの水と混合することにより、スラリーを製造した。この生成スラリーに、pHが3.3となるまで5.6kgのHNOを添加した。
【0071】
希釈した水ガラス(DWG)をHSOと混合することにより、シリカゾルをパイプラインミキサー(5900rpm)中で製造した。重量比DWG/HSOは2.92であった。
【0072】
このシリカゾルと上記で製造したスラリーの両方を混合容器(1450rpm)にポンプ送液し、25重量%固体のスラリーを得た。このシリカゾルを0.75kg/分の流れでこの容器にポンプ送液し;このスラリーを2.25kg/分の流れでポンプ送液した。次に、約2.5のpHを有する生成スラリーを3.0kg/分の流れ、300℃の入口温度、125℃の出口温度および40バールのノズル圧力で噴霧乾燥機に供給した。
【0073】
噴霧乾燥された粒子は約75ミクロンのd50を有するものであった。
【0074】
この粒子は、30重量%のゼオライト、10重量%のQCB、10重量%のMCB、15重量%のシリカおよび差分のカオリンを含有するものであった。
【0075】
この処方を用いて、次の本発明による4つの試料を作製した。
試料A2は上記のように製造したものであり、
試料B2は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、3.8のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料Cは、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.2のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料D2は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.6のpHに達せしめることにより得たものである。
【0076】
噴霧乾燥直前にpHを3.8(CB2)または5(CE2)に増加させることにより、解膠擬ベーマイト(硝酸により解膠された)を使用したことを除いて、同一手順により2つの比較試料(CB2およびCE2)を作製した。
【0077】
引き続いて、ナトリウム含量を0.5重量%(NaOとして)まで低下させるために、12kgのこの粒子を40リットルのアンモニア溶液中pH5.0で再スラリー化することにより、この試料を洗浄した。次に、この粒子を濾過し、そして420gの硫酸アンモニウムを含有する30リットルのアンモニア溶液により8.3のpHで洗浄し、30リットルのアンモニア溶液中pH7.8で再度再スラリー化し、そして420gの硫酸アンモニウムを含有する30リットルのアンモニア溶液により8.3のpHで洗浄した。最後に、この粒子を水により洗浄し、引き続いてフラッシュ焼成(出口ガス温度150℃)した。
【0078】
すべての洗浄段階を45℃で行った。
【0079】
磨耗指数(AI)およびアクゾアクセシビリティ指数(AAI)をすべての上記の試料に対して測定した。表2を参照のこと。この表は比AAI/Alも示す。この比は比較の触媒に対するよりも本発明による触媒に対して実質的に高い。再び、この表は、アクセシビリティが噴霧乾燥直前のpHと共に増加するということを示す。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例3
10.4kgのゼオライトYスラリー(23.1重量%固体)を5kgのカオリンスラリー(86重量%固体)、非解膠擬ベーマイトを含有する16.8kgのスラリー(17.3重量%Al)および0.92kgの水と混合することにより、スラリーを製造した。この生成スラリーに、pHが3.3となるまで5.6kgのHNOを添加した。
【0082】
希釈した水ガラス(DWG)をHSOと混合することにより、シリカゾルをパイプラインミキサー(5900rpm)中で製造した。重量比DWG/HSOは2.3であった。
【0083】
このシリカゾルと上記で製造したスラリーの両方を混合容器(1450rpm)にポンプ送液し、25重量%固体のスラリーを得た。このシリカゾルを0.75kg/分の流れでこの容器にポンプ送液し;このスラリーを0.93kg/分の流れでポンプ送液した。次に、約2.5のpHを有する生成スラリーを3.0kg/分の流れ、500℃の入口温度、120℃の出口温度および40バールのノズル圧力で噴霧乾燥機に供給した。
【0084】
この噴霧乾燥された粒子は約65ミクロンのd50を有するものであった。
【0085】
この粒子は、24重量%のゼオライト、29重量%のQCB、4重量%のシリカおよび差分のカオリンを含有するものであった。
【0086】
この処方を用いて、次の本発明による5つの試料を作製した。
試料A3は上記のように製造したものであり、
試料B3は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、3.6のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料Cは、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、3.9のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料D3は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.2のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料E3は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、5.0のpHに達せしめることにより得たものである。
【0087】
噴霧乾燥直前にpHを4.2(CD3)および5.0(CE3)に増加させることにより、解膠擬ベーマイト(硝酸により解膠された)を使用したことを除いて、同一手順により2つの比較試料(CD3およびCE3)を作製した。
【0088】
引き続いて、ナトリウム含量を0.5重量%(NaOとして)まで低下させるために、2kgのこの粒子を40リットルのアンモニア溶液中でpH5.0で再スラリー化することにより、この試料を洗浄した。次に、200gの硫酸アンモニウムをこのスラリーに添加した。次に、この粒子を濾過し、洗浄した。このフィルターケーキを熱水中で200gの硫酸アンモニウムと共に再スラリー化し、濾過し、洗浄し、そして硫酸アンモニウム中で再度再スラリー化した。最後に、この粒子を濾過し、そして熱水とアンモニアにより8.0と8.5の間のpHで洗浄した。最後の濾過の後、この粒子をオーブン中でトレー乾燥した。
【0089】
表3は、これらの触媒に対するAI、AAIおよび比AAI/AIを示す。D3およびE3に対する結果をCD3およびCE3のそれと比較することによって、本発明の方法は、耐摩耗性についての妥協無しで触媒のアクセシビリティにプラスの効果を及ぼすということが示される。更には、アクセシビリティは噴霧乾燥前のpHと共に増加する。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例4
8kgのゼオライトYスラリー(25重量%固体)を4.17kgのカオリンスラリー(86重量%固体)、5kgのミクロ結晶性ベーマイトスラリー(25重量%Al)、非解膠擬ベーマイト(17.3重量%Al)を含有する13.3kgのスラリーおよび0.92kgの水と混合することにより、スラリーを製造した。この生成スラリーに、pHが3.3となるまで5.6kgのHNOを添加した。
【0092】
希釈した水ガラス(DWG)をHSOと混合することにより、シリカゾルをパイプラインミキサー(5900rpm)中で製造した。重量比DWG/HSOは2.36であった。
【0093】
このシリカゾルと上記で製造したスラリーの両方を混合容器(1450rpm)にポンプ送液し、25重量%固体のスラリーを得た。このシリカゾルを0.112kg/分の流れでこの容器にポンプ送液し;このスラリーを0.888kg/分の流れでポンプ送液した。アンモニアをこのスラリーに添加した。次に、約2.5のpHを有する得られたスラリーを3.0kg/分の流れ、500℃の入口温度、120℃の出口温度および40バールのノズル圧力で噴霧乾燥機に供給した。
【0094】
この噴霧乾燥された粒子は約65ミクロンのd50を有するものであった。
【0095】
この粒子は、20重量%のゼオライト、24重量%のQCB、14重量%MCB、6重量%のシリカおよび差分のカオリンを含有するものであった。
【0096】
この処方を用いて、次の本発明による2つの試料を作製した。
試料A4は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、4.2のpHに達せしめることにより得たものであり、
試料B4は、苛性アルカリを噴霧乾燥直前にこのスラリーに添加し、5.0のpHに達せしめることにより得たものである。
【0097】
噴霧乾燥直前にpHを5に増加させることにより、解膠擬ベーマイト(硝酸により解膠された)を使用したことを除いて同一の手順により1つの比較試料(CB4)を作製した。
【0098】
引き続いて、ナトリウム含量を0.5重量%(NaOとして)まで低下させるために、2kgのこの粒子を熱水とアンモニア溶液中pH5.0で再スラリー化することにより、この試料を洗浄した。次に、200gの硫酸アンモニウムをこのスラリーに添加した。次に、この粒子を濾過し、洗浄した。このフィルターケーキを熱水中で200gの硫酸アンモニウムと共に再スラリー化し、濾過し、洗浄し、そして硫酸アンモニウム中で再度再スラリー化した。最後に、この粒子を濾過し、そして熱水とアンモニアにより8.0と8.5の間のpHで洗浄した。最後の濾過の後、この粒子をオーブン中でトレー乾燥した。
【0099】
表4は、これらの触媒に対するAI、AAIおよび比AAI/AIを示す。これは、これらの触媒のアクセシビリティに及ぼす本発明の方法のプラスの効果を明白に示す。
【0100】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クレイ、ゼオライトおよび準結晶性ベーマイトを含んでなるスラリーを製造し(但し、スラリーは解膠準結晶性ベーマイトを含んでなるものでない)、
b)スラリーに一価の酸を添加し、
c)スラリーにケイ素源を添加し、そして
d)スラリーを賦型して、粒子を形成する
段階を含んでなる、触媒を製造する方法。
【請求項2】
段階a)で得られるスラリーがケイ素源を含んでなるものでない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階c)で添加されるケイ素源がケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸リン、ケイ酸borium、ポリオルガノシロキサン、メチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシランおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
段階c)で、ケイ素源が乾燥固体含量基準で、かつSiOとして計算して1〜35重量%の量で添加される請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法により入手可能な触媒。
【請求項6】
ミクロ結晶性ベーマイト、準結晶性ベーマイト、ゼオライトおよびシリカを含んでなる触媒。
【請求項7】
流動接触分解、水素処理、アルキル化、改質、ガス・液変換、石炭変換および水素製造における、そして自動車触媒としての請求項5〜6のいずれか一つに記載の触媒の使用。

【公表番号】特表2008−537505(P2008−537505A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546087(P2007−546087)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056984
【国際公開番号】WO2006/067155
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(507062783)
【Fターム(参考)】