説明

触媒のためのハロゲン化物フリー前駆体

【課題】アルケニルアルカノエートの製造、特に酢酸ビニルの製造において、副産物の低減および生産効率を改良する。
【解決手段】触媒構造、それらの触媒を製造する方法に関する少なくとも4つの異なる面に関する。第一の面は、ロジウムまたは別の金属を含むユニークなパラジウム/金触媒またはプレ触媒(任意に焼成される)に関する。第二の面は、層状担持材をベースとするパラジウム/金触媒またはプレ触媒に関するものであって、前記担持材の一つの層は実質的に触媒成分を含有していない。第三の面は、ジルコニア含有担持材上のパラジウム/金触媒またはプレ触媒に関する。第四の面は、実質的に塩化物を含有していない触媒成分から製造されるパラジウム/金触媒またはプレ触媒に関する。これらの製造方法による触媒。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
優先権の請求
[0001]本出願は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする2003年12月19日に出願された米国仮出願第60/530,937号の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
[0002]本発明は、触媒、触媒を製造する方法、およびアルケニルアルカノエートを製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、酢酸ビニルを製造する方法に関する。
【0003】
発明の背景
[0003]特定のアルケニルアルカノエート、例えば酢酸ビニル(VA)は、それらのモノマー形態に関して高い需要がある汎用化学製品である。例えば、VAは、ポリビニルアセテート(PVAc)を作るために使用され、そしてそれは接着剤に一般的に使用されており、VAの用途の大きな割合を占めている。VAの他の用途としては、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、酢酸ビニルエチレン(VAE)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルホルマール(PVF)および塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。PVOHは、典型的には、織物、フィルム、接着剤および感光性コーティングに使用される。フィルムおよびワイヤおよびケーブル絶縁材は、しばしば若干の割合でEVAを使用している。塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーの主用途としては、コーティング、ペイント、および接着剤が挙げられ、若干の割合で、VAを有するVAEをしばしば使用している。50パーセント超でVAを含むVAEは、主として、セメント添加剤、ペイントおよび接着剤として使用されている。PVBは、主に、積層スクリーンおよびコーティングなどにおける下層のために使用される。EVOHは、バリヤーフィルムおよびエンジニアリングポリマーのために使用される。PVFは、ワイヤエナメルおよび磁気テープのために使用される。
【0004】
[0004]VAは非常に多くの商業的に重要な材料および製品のための基材であるので、VAに関する需要は大きく、VAの生産は、しばしば、比較的大規模で、例えば1年あたり50,000メートルトン以上の規模で行われている。この大規模生産とは、重要な規模の経済が可能であること、また、プロセス、プロセス条件または触媒特性における比較的微妙な変化がVAの生産コストに重要な経済的影響を及ぼすことがあることを意味している。
【0005】
[0005]アルケニルアルカノエートの製造に関して多くの技術が報告されてきた。
例えば、VAを作る場合、広範に使用されている技術としては、以下の反応:
【0006】
【化1】

【0007】
において認められるように、エチレンと酢酸および酸素との接触気相反応が挙げられる。例えばCOの形成を含むいくつかの副反応が起こる場合がある。この反応の結果は、反応系の空時収量(STY)に関して検討される。その場合、STYとは、反応時間1時間あたりかつ触媒1リットルあたりに製造されるVAのグラム数である(g/l*h)。
【0008】
[0006]出発原料供給の組成は、広い範囲で変えることができる。典型的には、出発原料供給は、30〜70%のエチレン、10〜30%の酢酸および4〜16%の酸素を含む。また、出発原料供給は、不活性材料、例えばCO、窒素、メタン、エタン、プロパン、アルゴンおよび/またはヘリウムも含むことができる。供給組成物に関しては、反応器から出てくる流出物流における酸素レベルが、着火領域外にあるように充分に低いレベルでなければならないという第一の制限がある。流出物における酸素レベルは、出発原料流における酸素レベル、反応のO転化速度、流出物における任意の不活性材料の量によって影響を受ける。
【0009】
[0007]出発原料の供給が固定床反応器の上または中を通過する気相反応が行われてきた。好成績は、−125℃〜200℃の反応温度および典型的には1〜15atmの反応圧力を使用することによって得られた。
【0010】
[0008]これらの系は充分な収率を提供してきたが、副産物の減少、より高いVA製造速度、および製造中のエネルギー使用率の低減に関するニーズが絶えずある。一つの方法は、触媒特性、特に触媒のCO選択率および/または活性を向上させる方法である。
別の方法は、反応条件、例えば各出発原料の割合、反応のO転化率、出発原料供給の空間速度(SV)および運転温度と運転圧力を改良する方法である。
【0011】
[0009]二酸化炭素の形成は、改良触媒の使用によって低減できる一つの面である。
CO選択率とは、COへと転化されるエチレンの百分率である。CO選択率を低減させることによって、全ての他の反応条件を変えなくても、既存のプラントにおいて単位体積および単位時間あたりより大量のVAの製造が可能になる。
【0012】
[0010]特定の反応系のVA製造量は、触媒、各出発原料の割合、反応のO転化率、出発原料供給の空間速度(SV)、および運転温度と運転圧力を含むいくつかの他の因子による影響を受ける。全てのこれらの因子が作用し合って反応系の空時収量(STY)が決定される。その場合、STYは、触媒1リットルあたりかつ反応時間1時間あたりに製造されるVAのグラム、すなわちg/l*hに関して検討される。
【0013】
[0011]一般的に、活性は、STYを決定する場合に重要な因子であるが、他の因子もSTYに関して有意な影響を及ぼす場合がある。典型的には、触媒の活性が高くなると、触媒がもたらすことができるSTYも高くなる。
【0014】
[0012]O転化率は、触媒の存在下でどのくらいの酸素が反応するかを示す尺度である。O転化率は、温度依存性であり、転化率は一般的に反応温度と共に上昇する。しかしながら、生成されるCO量も、O転化率と共に増加する。而して、O転化率は、生成されるCO量に対してバランスをとった所望のVA製造量を与えるように選択する。より高い活性を有する触媒とは、同じO転化率を維持しつつ、全体の反応温度を低下させることができる触媒を意味している。または、より高い活性を有する触媒は、所与の温度および空間速度において、より高いO転化率を与える。
【0015】
[0013]触媒が、比較的不活性な担持材上に担持された1種以上の触媒成分を使用することは一般的である。VA触媒の場合、触媒成分は、典型的には、担持材全体に均一に(「オールスルーアウト触媒(all through−out catalyst)」)、担持材の表面のみに(「シェル触媒」)、担持材のシェルよりも下のみに(「卵白触媒(egg white catalyst)」)、または担持材の核に(「卵黄触媒(egg yolk catalyst)」)分配できる金属の混合物である。
【0016】
[0014]シリカ、セリウムでドープされたシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよび酸化物混合物を含む多数の異なるタイプの担持材が、VA触媒で使用するために提案されてきた。しかしながら、担持材間の違いについての調査は殆ど行われてこなかった。殆どの場合、シリカおよびアルミナのみが、実際に担持材として商品化されてきた。
【0017】
[0015]VA触媒用金属の一つの有用な組み合わせは、パラジウムと金である。Pd/Au触媒は、充分なCO選択率および活性を提供するが、VAの製造において可能な規模の経済を付与する改良触媒に関するニーズが常にある。
【0018】
[0016]典型的には、Pd/Au触媒を製造するための一つの方法は、担体にパラジウムおよび金の水溶性塩の水溶液を含浸させる工程;含浸させた水溶性塩を、適当なアルカリ化合物、例えば水酸化ナトリウムと反応させて、水不溶性化合物として、例えば水酸化物として金属元素を沈殿させる(しばしば固定と呼ばれる)工程;固定された担持材を洗浄して固定されていない化合物を除去し、また、任意の潜在的な毒の触媒、例えば塩化物を浄化する工程;水不溶性化合物を、典型的な還元剤、例えば水素、エチレンまたはヒドラジンで還元する工程、およびアルカリ金属化合物、例えば酢酸カリウムまたは酢酸ナトリウムを加える工程を含む。
【0019】
[0017]この基礎的な方法に関して様々な改良が提案されてきた。例えば、米国特許第5,990,344号では、パラジウムの焼結を、その遊離金属形態を還元した後に行うことを提案している。米国特許第6,022,823号では、パラジウム塩および金塩両方の含浸後に、非還元雰囲気下で担体を焼成することは有利であり得ることを示唆している。W094/21374では、還元および活性化の後、しかし、その最初の使用前に、触媒は、酸化雰囲気、不活性雰囲気、および還元雰囲気の下で連続加熱することによって前処理できることを示唆している。
【0020】
[0018]米国特許第5,466,652号では、ヒドロキシル、ハロゲン化物およびバリウムを含有しておらずかつ酢酸中で可溶性であるパラジウムおよび金の塩は、担持材を含浸するのに有用であり得ることを示唆している。類似の示唆は、米国特許第4,902,823号でもなされている。すなわち、2〜10個の炭素を有する非置換カルボン酸中に可溶性であるパラジウムのハロゲン化物と硫黄とを含有していない塩および錯体の使用が提案されている。
【0021】
[0019]米国特許第6,486,370号は、内層担持材が外層担持材と異なっている層状触媒を脱水素化法で使用できることを示唆した。同様に、米国特許第5,935,889号は、層状触媒が酸触媒として有用であり得ることを示唆している。しかしながら、どちらも、アルケニルアルカノエートを製造する場合に層状触媒を使用することを提案していない。
【0022】
[0020]以上のことを考慮して、本発明者は、より低コストで改良されたVA製造を提供するVA触媒分野での継続的な改良に関するニーズを認め対処した。
発明の概要
[0021]本発明は、触媒構造、それらの触媒を製造する方法、およびアルケニルアルカノエートを製造するためにそれらの触媒を使用する方法に関する少なくとも4つの異なる面に関する。別々にまたは一緒に組み合わせて、本発明の様々な面は、副産物の低減と改良された生産効率とを含むアルケニルアルカノエートの製造を改良すること、特にVAの製造を改良することを目的としている。本発明の第一の面は、ロジウムまたは別の金属を含むユニークなパラジウム/金の触媒またはプレ触媒(任意に焼成される)に関する。
【0023】
第二の面は、層状担持材をベースとするパラジウム/金の触媒またはプレ触媒に関する。前記担持材の一つの層は実質的に触媒成分を含有していない。第三の面は、ジルコニア含有担持材上のパラジウム/金の触媒またはプレ触媒に関する。第四の面は、実質的に塩化物を含有していない触媒成分から製造されるパラジウム/金の触媒またはプレ触媒に関する。
【0024】
詳細な記述
[0022]触媒
[0023]本発明の目的のために、触媒は、少なくとも1つの触媒成分を含んでいてかつ反応を触媒できる任意の担持材であり、一方、プレ触媒は、本明細書で検討される触媒製造工程のいずれかから得られる任意の材料である
[0024]本発明の触媒およびプレ触媒としては、以下の属性:すなわち、1)触媒は、少なくとも別の触媒成分、例えばロジウムを含むパラジウムと金とを含有している触媒である、前記触媒成分のうちの1種以上は焼成される;2)触媒は、層状担体上に担持される、3)触媒は、ジルコニア含有担持材上に担持される;4)触媒は、塩化物フリー前駆体を使用して製造される、のうちの少なくとも1つの属性または前記属性の任意の組み合わせを有するものが挙げられる。而して、触媒の有効利用は、特にVA製造に関係するCO選択率、活性またはその両方を向上させるのに役立つ。
【0025】
[0025]本発明は、特定の実施態様の文脈で説明されるが、特定の用途のニーズにしたがう多くの面のいずれかにおいて変更できることを了解すべきである。例えば、限定するものではないが、触媒は、担持材の全体にわたって均一に分配された触媒成分を有することができるか、または、触媒成分が担持材コアの周囲の比較的薄いシェルにおいて見出されるシェル触媒であることができる。触媒成分が担持材の中心から実質的に離れて存在する卵白触媒も適し得る。卵黄触媒も適し得る。
【0026】
[0026]触媒成分
[0027]一般的に、本発明の触媒およびプレ触媒は、金属を含み、特に、少なくとも2種の金属の組み合わせを含む。特に、金属の組み合わせは、VIIIB族から少なくとも1種とIB族から少なくとも1種とを含む。「触媒成分」という用語は、触媒に触媒機能を最終的に付与する金属を示すために使用されるが、様々な状態の金属、例えば塩、溶液、ゾルゲル、懸濁液、コロイド懸濁液、遊離金属、合金、またはそれらの組み合わせを含むことが了解される。好ましい触媒は、触媒成分としてパラジウムおよび金を含む。
【0027】
[0028]触媒の一つの態様は、第三触媒成分と組み合わされたパラジウムと金とを有する触媒成分の組み合わせを含む。第三触媒成分は、好ましくはVIIIB族から選択され、最も好ましくはRhである。他の好ましい触媒としては、第三触媒成分がW、Ni、Nb、Ta、Ti、Zr、Y、Re、Os、Fe、Cu、Co、Zn、In、Sn、Ce、Ge、Gaおよびそれらの組み合わせから選択される触媒が挙げられる。
【0028】
[0029]触媒の別の態様は、パラジウム、金、およびロジウムの部分を含んでいる触媒成分の組み合わせを含む。任意に、第三触媒成分(上で列記した)を、この態様では、Rhの代わりに含むこともできる。別の態様では、上記リストからの2種以上の触媒成分を使用できる。
【0029】
[0030]一つの例では、パラジウムおよび金をRhと組み合わせて、Rhを欠いているPd/Au触媒と比較して、改良されたCO選択率(すなわちCO形成の低減)を示す触媒を形成できる。また、Rhの添加によって、触媒の活性に対する悪影響も無いようである。パラジウムと金とロジウムとの触媒のCO選択率も、触媒製造中の焼成によってかつ/または水溶性ハロゲン化物フリー前駆体を使用することによって(両方とも以下で検討する)、向上させることができるが、これらは、Rh効果を観察するには不要である。
【0030】
[0031]第三触媒成分のパラジウムに対する原子比は、約0.005〜約1.0であることができ、更に好ましくは約0.01〜約1.0であることができる。一つの態様では、触媒は、触媒1リットルあたり約0.01〜約5.0gの第三触媒成分を含む。
【0031】
[0032]触媒の別の好ましい態様は、触媒1リットルあたり約1〜約10グラムのパラジウムおよび約0.5〜約10グラムの金を含む。金の量は、好ましくはパラジウムの重量を基準として約10〜約125重量%である。
【0032】
[0033]粉砕触媒に関する一つの態様では、粉砕触媒にとっては、AuのPdに対する原子比は約0.5〜約1.00であることが好ましい場合がある。原子比は、活性とCO選択率のバランスをとるように調整できる。より高いAu/Pd重量比または原子比を使用すると、より活性でより選択的な触媒が有利に得られる傾向がある。換言すると、約0.6の原子比を有する触媒は、COに関する選択率は低いが、約0.8の原子比を有する触媒に比べて活性は低い。固定工程に関して以下で検討しているように、粉砕担持材に関する高いAu/Pd原子比の効果も、比較的高過剰の水酸化物イオンを使用することによって増強できる。粉砕触媒は、触媒成分を担持材に接触させ、次いで(例えば粉砕またはボールミル粉砕によって)粒径を小さくした触媒または担持材の大きさを低下させた後に担持材に触媒成分を接触させる触媒であることができる。
【0033】
[0034]シェル触媒では、担持材上の触媒成分のシェル厚は、約5μm〜約500μmである。更に好ましい範囲としては、約5μm〜約300μmが挙げられる。
[0035] 担持材
[0036]上記のように本発明の一つの面では、本発明の触媒成分は、一般的に、担持材によって担持される。適当な担持材は、典型的には、素性において実質的に均一な材料または材料の混合物を含む。概して、担持材は、実行される反応において典型的には不活性である。担持材は、好ましくは担持材が単位質量または単位体積あたり比較的大きな表面積を有するように選択される任意の適当な物質、例えば多孔質構造、モレキュラーシーブ構造、ハニカム構造体、または他の適当な構造から成ることができる。例えば、担持材としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、粘土、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。材料の異なる結晶形のうちのいずれか、例えばα−またはγ−アルミナも適し得る。
最も好ましくはシリカおよびジルコニア含有担持材である。更に、多層担持材も本発明での使用に適する。
【0034】
[0037]本発明の触媒における担持材は、様々な規則的または不規則な形状、例えば球体、錠剤、円筒、ディスク、リング、星形、または他の形状のうちのいずれかを有する粒子から成ることができる。担持材は、約1〜約10mm、好ましくは約3〜約9mmの寸法、例えば直径、長さまたは幅を有することができる。特に規則的な形状(例えば球形)は、約4mm〜約8mmのその好適な最大寸法を有する。更に、担持材が、約10ミクロン〜約1000ミクロン、好ましくは約10〜約700ミクロン、最も好ましくは約180ミクロン〜約450ミクロンの直径を有する規則的または不規則な形状を有するような粉砕触媒または粉末触媒が適し得る。より大きいまたはより小さいサイズ、ならびに粒径の多分散系集合(polydisperse collection)を使用してもよい。例えば、流動床触媒用には、好ましい大きさとしては10〜150ミクロンが挙げられる。層状触媒で使用される前駆体のためには、10〜250ミクロンの粒度範囲が好ましい。
【0035】
[0038]BET(Brunauer,Emmett,およびTeller)法で測定した場合に、触媒成分を担持するのに利用可能な表面積は、一般的に約1m/g〜約500m/g、好ましくは約100m/g〜約200m/gであることができる。例えば、多孔質担体のために、担持材の細孔容積は、一般的に約0.1〜約2ml/g、好ましくは約0.4〜約1.2ml/gであることができる。例えば、約50〜約2000オングストロームの平均孔径が、望ましいが、必須ではない。
【0036】
[0039]適当なシリカ含有担持材としては、例えば、Sud Chemieから市販されているKA160、Degussaから市販されているAerolyst350および約1mm〜約10mmの粒径を有する他の熱分解法シリカまたは微多孔質無含有シリカが挙げられる。
【0037】
[0040]適当なジルコニア含有担持材としては、例えば、NorPro、Zirconia Sales(America)Inc.、Daichi Kigenso Kagaku Kogyo、およびMagnesium Elektron Inc.(MEI)から市販されているものが挙げられる。適当なジルコニア担持材は、約5m/g未満から300m/gを超えるまでの広範な表面積を有する。好ましいジルコニア担持材は、約10m/g〜約135m/gの表面積を有する。担持材は、未使用の担持材を加熱する焼成工程によって処理された表面を有することができる。加熱によって、担持材の表面積が減少する(例えば焼成)。これによって、供給元から容易には入手できない特定の表面積を有する担持材を作製する方法が提供される。
【0038】
[0041]別の態様では、それぞれが異なる特徴を有する担持材の少なくとも複数の組み合わせを使用することが企図される。例えば、異なる特徴を有する少なくとも2種の担持材(例えばジルコニア)は、異なる活性およびCO選択性を示すことができ、而して、特徴の所望の一組を有する触媒を製造することが可能になる。すなわち、触媒の活性と触媒のCO選択性とのバランスをとることができる。
【0039】
[0042]一つの態様では、複数の異なる担体を層状構成で使用する。層化(layering)は、多くの異なるアプローチのいずれか、例えば、一般的に、平坦であるか、波状であるか、またはそれらの組み合わせである複数のラメラで達成できる。一つの特定の方法は、最初のコア層に関して被覆層を順々に施用する方法である。一般的に、本明細書では、層状担持材は、典型的には、少なくとも、内層と、内層を少なくとも部分的に取り囲んでいる外層とを含む。外層は、好ましくは、内層に比べて、実質的により多くの触媒成分を含む。一つの態様では、内層および外層は異なる材料で作られているが;その材料は同じであってもよい。内層は非多孔性であってもよいが、他の態様は多孔質である内層を含む。
【0040】
[0043]層状担持材は、好ましくは、結果的にシェル触媒の形態となる。しかしながら、層状担持材は、触媒成分を有する担持材の領域と、そうでない領域との間に明確な境界線を提供する。また、外層は、一貫して所望の厚さで作ることができる。境界線と、外層の均一な厚さとが一緒になって、均一で公知の厚さの触媒成分から成るシェルであるシェル触媒となる。
【0041】
[0044]層状担持材を作るための公知のいくつかの技術としては、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第6,486,370号;第5,935,889号;および第5,200,382号に記載されている技術が挙げられる。一つの態様では、内層の材料も、液体によって、例えばアルミニウム、チタンおよびジルコニウムを含むがそれらに限定されない金属によって実質的に浸入されない。内層用の他の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、粘土、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブおよびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。好ましい内層は、シリカであり、詳しくはKA160である。
【0042】
[0045]内層を構成するこれらの材料は、様々な形態、例えば規則的に造形された微粒子、不規則に造形された微粒子、ペレット、ディスク、リング、星形、貨車の車輪(wagon wheel)、ハニカムまたは他の造形体であることができる。球状微粒子内層が好ましい。内層は、球状であるか否かにかかわらず、約0.02mm〜約10.0mm、そして好ましくは約0.04mm〜約8.0mmの有効径を有する。
【0043】
[0046]任意の多重層構造の最外層は、多孔質であってかつ約5m/g〜300m/gの表面積を有する。外層の材料は、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせであり、そして一つの態様では、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、コージライト、ステアタイト、ベントナイト、粘土、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブおよびそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ(NZMS)、チタニア、ジルコニアおよびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の例としては、ジルコニア、シリカおよびアルミナまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
[0047]外層は、典型的には、内層全体を実質的に取り囲むが、それは必ずしも必須ではなく、外層による内層上の選択的なコーティングを使用してもよい。
[0048]外層は、適当な方法で下地層の上に塗布できる。一つの態様では、外層材料のスラリーを使用する。スラリーによる内層のコーティングは、例えばロール塗り、浸し塗り、吹き付け塗り、ウオッシュコーティング、スラリーコーティングの技術、またはそれらの組み合わせなどの方法によって達成できる。一つの好ましい技術は、内層粒子の固定床または流動床を使用すること、およびその床中にスラリーを吹き付けて粒子を均一にコートすることを含む。スラリーは、少量を塗布して乾燥させ、それを繰り返して、厚さが高度に均一な外層を提供できる。
【0045】
[0049]内層をコートするために使用されるスラリーは、多くの添加剤、例えば界面活性剤、下地層に対する外層の接着を助ける有機または無機の結合剤、またはそれらの組み合わせのいずれかを含むことができる。この有機結合剤としては、例えば、PVA、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、それらに限定されない。スラリーに加えられる有機結合剤の量は、例えば、外層と結合剤との総重量を基準として約1重量%〜約15重量%の範囲で変えることができる。無機結合剤は、例えば、アルミナ結合剤(例えばBohmite)、シリカ結合剤(例えばLudox、Teos)、ジルコニア結合剤(例えばジルコニアアセテートまたはコロイド状ジルコニア)またはそれらの組み合わせから選択する。シリカ結合剤としては、例えばシリカゾルおよびシリカゲルが挙げられ、アルミナ結合剤としては、例えばアルミナゾル、ベントナイト、Bohmite、および硝酸アルミニウムが挙げられる。無機結合剤の量は、外層と結合剤との総重量を基準として約2重量%〜約15重量%の範囲で変えることができる。外層の厚さは、約5ミクロン〜約500ミクロン、好ましくは約20ミクロン〜約250ミクロンであることができる。
【0046】
[0050]内層を外層でコートしたら、得られた層状担体を、約100℃〜約320℃の温度で(例えば約1〜約24時間)加熱することによって乾燥させ、そして次に、約300℃〜約900℃の温度で(例えば約0.5〜約10時間)任意に焼成して、下地層の少なくとも一部分にわたって下地層に対する外層の結合を増強して、層状触媒担体を提供できる。乾燥工程および焼成工程を組み合わせて一工程にすることができる。得られた層状担持材は、後述するように、触媒製造における任意の他の担持材と同様に、触媒成分と接触させることができる。別法として、外層担持材を下地層の上にコートする前に、外層担持材を触媒成分と接触させる。
【0047】
[0051]層状担体の別の態様では、第二の外層を加えて初期外層を取り囲み、少なくとも3つの層を作る。第二外層のための材料は、第一外層と同じかまたは異なっていてもよい。適当な材料としては、第一外層に関して検討されたものが挙げられる。第二外層を施用する方法は、中間層を施用するために使用された方法と同じかまたは異なっていてもよく、適当な方法としては、第一外層に関して検討された方法が挙げられる。既に述べた有機または無機の結合剤は、第二外層の形成において適当に使用できる。
【0048】
[0052]初期外層は、触媒成分を含んでいてもよくまたは含んでいなくてもよい。
同様に、第二外層は、触媒成分を含んでいてもよくまたは含んでいなくてもよい。両方の外層が触媒成分を含む場合、好ましくは異なる触媒成分が各層で使用されるが、それは必須ではない。一つの好ましい態様では、初期外層は触媒成分を含まない。後述するように、外層に対する触媒成分の接触は、含浸またはスプレーコーティングによって達成できる。
【0049】
[0053]初期外層が触媒成分を含む態様では、これを達成する一つの方法は、初期外層の材料を内層に施用する前に、触媒成分を初期外層の材料に接触させる方法である。第二外層は、触媒成分を含んでいないかまたは含んでいる初期外層に施用できる。
【0050】
[0054]他の適当な技術を使用して、外層のうちの1つ以上が触媒成分を含む3つの層状担持材を得ることができる。実際に、層状担持材は、3つの層に限定されないが、4層、5層またはそれ以上の層を含むことができ、そのいくつかまたは全ては触媒成分を含むことができる。
【0051】
[0055]更に、触媒成分の数およびタイプは層状担持材の層間で異なっていてもよく、また、担持材の他の特徴(例えば多孔性、粒径、表面積、細孔容積など)も層間で異なっていてもよい。
【0052】
[0056]触媒製造法
[0057]一般的に、本方法は、担持材触媒成分を接触させる工程、およびその触媒成分を還元する工程を含む。本発明の好ましい方法は、触媒成分を担持材中に含浸させる工程、触媒成分含有担持材を焼成する工程、触媒成分を還元する工程、および担持材上の還元された触媒成分を改質する工程を含む。追加の工程、例えば触媒成分を担持材上に固定する工程およびその固定された触媒成分を洗浄する工程も、触媒またはプレ触媒を製造する方法に含むことができる。上で述べた工程のうちのいくつかは、任意であり、そして他の工程は省略する場合もある(例えば洗浄工程/固定工程)。更に、いくつかの工程は繰り返すことができ(例えば複数の含浸工程または固定工程)、また、工程の順序は、上記とは異なってもよい(例えば、還元工程を焼成工程の前に行う)。ある程度まで、接触工程によって、触媒の形成のために後にどのような工程が必要であるかが決まる。
【0053】
[0058]接触工程
[0059]接触に関する一つの特定の方法は、卵黄触媒またはプレ触媒が形成される方法、卵白触媒またはプレ触媒が形成される方法、オールスルーアウトの触媒またはプレ触媒が形成される方法、またはそれらの組み合わせにしがう方法である。一つの態様では、シェル触媒を形成する技術が好ましい。
【0054】
[0060]接触工程は、シリカ、ジルコニアおよび最も有利にはジルコニアを含む層状担持材と一緒に、上記した担持材のいずれかを使用して実行できる。接触工程は、周囲温度および周囲圧力の条件下で行うが;低下させたまたは上昇させた温度または圧力を使用できる。
【0055】
[0061]一つの好ましい接触工程では、担持材には、触媒成分の一種以上の水溶液(前駆体溶液と呼ぶ)を含浸させる。接触工程中の担持材の物理的状態は、乾燥固体、スラリー、ゾル・ゲル、コロイド懸濁液などであることができる。
【0056】
[0062]一つの態様では、前駆体溶液に含まれる触媒成分は、塩化物、他のハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩(OAc)、およびアミンを含むがそれらに限定されない触媒成分から作られた水溶性塩であり、好ましくはハロゲン化物を含有していない塩および最も好ましくは塩化物を含有していない塩である。
前駆体溶液での使用に適するパラジウム塩としては、例えば、PdCl、NaPdCl、Pd(NH(NO、Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NO、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(OAc)、KOHおよび/またはNMeOHおよび/またはNaOH中Pd(OAc)、Pd(NH(HCOおよびシュウ酸パラジウムが挙げられる。塩化物含有パラジウム前駆体の中では、最も好ましくはNaPdClである。塩化物を含有していないパラジウム前駆体塩の中では、最も好ましくは、次の4つ:すなわち、Pd(NH(NO、Pd(NO、Pd(NH(NO、Pd(NH(OH)である。前駆体溶液での使用に適する金塩としては、例えば、AuCl、HAuCl、NaAuCl、KAuO、NaAuO、NMeAuO、KOHおよび/またはNMeOH中Au(OAc)ならびに硝酸中HAu(NOが挙げられ、その塩化物を含有していない金前駆体の中で最も好ましいのはKAuOである。前駆体溶液での使用に適するロジウム塩類としては、例えばRhCl、Rh(OAc)、およびRh(NOが挙げられる。上記した第三触媒成分の同様な塩も選択できる。
【0057】
[0063]更にまた、2種以上の塩を、所与の前駆体溶液で使用できる。例えば、パラジウム塩は、金塩と組み合わせることができ、または2種の異なるパラジウム塩を、単一の前駆体溶液中で一緒に組み合わせることができる。前駆体溶液は、典型的には、溶解調節剤、例えば酸、塩基または他の溶媒を使用してまたは使用せずに、水中に選択した塩(一種または複数種)を溶解させることによって作ることができる。他の非水溶媒も適し得る。
【0058】
[0064]前駆体溶液は、同時に(例えば共含浸)または順々に担持材上に含浸させることができ、また、一種もしくは多種の前駆体溶液を使用することによって含浸させることができる。3種以上の触媒成分に関して、同時含浸と連続含浸との組み合わせを用いることができる。例えば、パラジウムとロジウムは単一前駆体溶液を使用して含浸させることができ(共含浸と呼ぶ)、次いで金の前駆体溶液を含浸させることができる。更に、触媒成分を、複数の工程では多数の工程で担持材上に含浸させることができ、その工程ごとに、一部の触媒成分を接触させる。例えば、1つの適当なプロトコルは、Pdを含浸させ、次いで、Auを含浸させ、更に続いてAuを含浸させることを含むことができる。
【0059】
[0065]担持材に前駆体溶液を含浸させる順序は重要ではないが;焼成工程に関して後述するように、一定の順序にはいくつかの利点が認められる場合がある。好ましくは、パラジウム触媒成分をまず最初に担持材上へ含浸させ、パラジウムの後または最後に、金を含浸させる。使用されるとき、ロジウムまたは他の第三触媒成分には、パラジウムを、をまたはそれ自体を含浸させることができる。また、担持材には、複数回、同じ触媒成分を含浸させることができる。例えば、触媒に含まれる金の総量の一部を最初に接触させることができ、次いで、前記金の第二の部分を接触させることができる。もう一つの他の工程、例えば焼成、還元および/または固定の工程を、金を担持材に接触させる工程の間にはさんでもよい。
【0060】
[0066]前駆体溶液の酸塩基プロフィールは、共含浸を利用するか連続含浸を利用するかに影響を与える場合がある。而して、共含浸工程では、同様な酸塩基プロフィールを有する前駆体溶液のみを一緒に使用すべきであり;それによって、前駆体溶液を汚染する可能性のある任意の酸塩基反応が排除される。
【0061】
[0067]含浸工程のために、前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約85%〜約110%に相当するように選択する。前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約95%〜約100%が好ましく、更に好ましくは細孔容積の約98%〜約99%である。
【0062】
[0068]典型的には、前駆体溶液は担持材に加えられ、そして担持材は前駆体溶液を吸収することができる。これは、担持材の初期湿潤が実質的に達成されるまで、滴下して行うことができる。あるいは、担持材は、前駆体溶液中にアリコートでまたは回分式で配置できる。回転浸漬または他の補助的装置を使用して、担持材と前駆体溶液との間の完全な接触を達成できる。更に、担持材(前駆体溶液が吸収される)上にノズルから前駆体溶液が吹き付けられるように、スプレー装置を使用できる。任意には、担持材によって吸収されなかった任意の過剰な液体を除去するために、または、含浸後に担持材を乾燥させるために、デカンティング、加熱または減圧を使用できる。
【0063】
[0069]含浸工程のために、前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約85%〜約110%に相当するように選択する。前駆体溶液の体積は、担持材の細孔容積の約95%〜約100%が好ましく、更に好ましくは細孔容積の約98%〜約99%である。
【0064】
[0070]典型的には、前駆体溶液は担持材に加えられ、そして担持材は前駆体溶液を吸収することができる。これは、担持材の初期湿潤が実質的に達成されるまで、滴下して行うことができる。あるいは、担持材は、前駆体溶液中にアリコートでまたは回分式で配置できる。回転浸漬または他の補助的装置を使用して、担持材と前駆体溶液との間の完全な接触を達成できる。更に、担持材(前駆体溶液が吸収される)上にノズルから前駆体溶液が吹き付けられるように、スプレー装置を使用できる。任意には、担持材によって吸収されなかった任意の過剰な液体を除去するために、または、含浸後に担持材を乾燥させるために、デカンティング、加熱または減圧を使用できる。
【0065】
[0071]他の接触技術を使用して、固定工程を回避できるが、それでもなおシェル触媒が得られる。例えば、触媒成分は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとするUS2001/0048970に記載されている化学蒸着法によって担持材に接触させることができる。また、均一に予備含浸された担持材を、内層の上に外層としてスプレーコーティングするかまたは層化させることによっても、層状担持材として記述することもできるシェル触媒が効果的に形成される。別の技術では、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,700,753号に記載されているように、触媒成分に関する、特に金に関する有機金属前駆体を使用して、シェル触媒を形成できる。
【0066】
[0072]物理的なシェル形成技術も、シェル触媒の製造に適し得る。その場合、前駆体溶液を、加熱された担持材または層状担持材の上にスプレーすることができ、その前駆体溶液の溶媒は、加熱された担持材と接触すると蒸発し、而して担持材上のシェル中に触媒成分が堆積する。好ましくは、約40〜140℃の温度を使用できる。シェルの厚さは、担持材の温度およびスプレーノズルを通る溶液の流量を選択することによって、調節できる。例えば、約100℃を超える温度を使用すると、比較的薄いシェルが形成される。
この態様は、塩化物フリー前駆体を利用して担持材上でのシェル形成の増強を助けるときに、特に有用であり得る。
【0067】
[0073]当業者は、接触工程の組み合わせが接触担持材を形成する適当な方法であり得ることを了解するであろう。
[0074]固定工程
[0075]接触担持材上の触媒成分の少なくとも一部分を、水溶性形態から水不溶性形態へと変えることは望ましいであろう。この種の工程を固定工程と呼ぶことができる。固定工程は、固定剤(例えば、液体中分散、例えば溶液)を、含浸された担持材に塗布して触媒成分の少なくとも一部分を沈殿させることによって達成できる。この固定工程は、シェル触媒を形成するのに役立つが、シェル触媒の形成に必須な工程ではない。
【0068】
[0076]任意の適当な固定剤を使用でき、好ましくは、水溶液中の水酸化物(例えばアルカリ金属水酸化物)、シリケート、ボレート、カルボネートおよびバイカーボネートである。好ましい固定剤はNaOHである。固定は、前駆体溶液を担持材に含浸させる前、含浸させている間または含浸させた後に、固定剤を担持材に加えることによって達成できる。典型的には、接触担持材を固定溶液中に約1〜約24時間浸漬できるように、固定剤は、接触工程後に使用する。規定の時間は、前駆体溶液と固定剤との組み合わせに左右される。含浸工程と同様に、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,332,710号に記載されている回転浸漬装置のような補助的装置を、固定工程で有利に使用できる。
【0069】
[0077]固定工程は、共固定(co−fix)または分離固定(separate fix)と呼称する一工程または複数の工程で達成できる。共固定では、接触が、1つまたは複数の溶液によって達成されたかどうかに関係なく、すべての関連のある前駆体溶液を担持材に接触させた後に、固定剤の1つ以上の体積を接触担持材に施用する。例えば、パラジウム前駆体溶液、金前駆体溶液およびロジウム前駆体溶液による連続含浸後の固定は共固定であり、同様に、パラジウム/ロジウム前駆体溶液による共含浸、そしてそれに続く金前駆体溶液による含浸後の固定も共固定である。共固定の例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,314,888号において見出すことができる。
【0070】
[0078]一方、分離固定は、前駆体溶液による各含浸の間または後に、固定剤溶液を塗布することを含む。例えば、以下のプロトコルは、分離固定である:a)パラジウムを含浸させ、次いで固定し、次いで金を含浸させる;またはb)パラジウムおよびロジウムを共含浸させ、次いで固定し、次いで金を含浸させ、次いで固定する。固定とそれに続く含浸との間で、任意の過剰な液体を除去し、そして、担持材を乾燥させることができるが、常にそうとは限らない。分離固定の例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第6,034,030号において見出すことができる。
【0071】
[0079]別の態様では、固定工程および接触工程は、同時に行われる。その一つの例は、参照によりその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第4,048,096号に記載されている。例えば、同時固定は:パラジウムによる含浸、次いで固定、次いで金および固定剤による含浸であることができる。この態様に関するバリエーションでは、固定は、触媒成分に関して二回行うことができる。触媒成分は、担持材に接触すると部分的に固定され(「予備固定と呼称する)、次いで、追加の最終的な固定が行われる。例えば:パラジウムを含浸させ、次いで金と予備固定剤を含浸させ、次いで最終固定剤で固定する。この技術を使用して、オールスルーアウト触媒とは対照的なシェル型触媒を確実に形成するのに役立てることができる。
【0072】
[0080]塩化物フリー前駆体と一緒に使用するのに特に適する別の態様では、担持材を固定剤で前処理して担持材の特性を調整する。この態様では、まず最初に、担持材に、酸性または塩基性の溶液(典型的には金属を含有していない)を含浸させる。
乾燥後、その乾燥した担持材に、その担持材とは反対の酸性度/アルカリ度を有する前駆体溶液を含浸させる。続いて起こる酸塩基反応により、触媒成分のシェルが担持材の上に形成される。例えば、硝酸を使用して担持材を前処理することができ、そして次に、Pd(OH)またはAu(OH)のような塩基性前駆体溶液を含浸させる。この形成技術は、固定工程後に接触工程を使用していると考えることができる。
【0073】
[0081]溶液中の固定剤濃度は、典型的には、担持材に含浸させた触媒成分の量のモル過剰である。固定剤の量は、水溶性塩中に存在する触媒的に活性なカチオンと反応させるのに必要な量の約0〜約2.0倍、好ましくは約1.1〜約1.8倍であるべきである。高いAu/Pd原子比または重量比を使用する一つの態様では、水酸化物イオンのモル過剰を増加させると、得られる触媒の選択性及び活性が増強される。
【0074】
[0082]供給される固定剤溶液の体積は、一般的に、含浸された担持材の利用可能な自由表面を隠蔽するのに充分な量でなければならない。これは、例えば、接触させた担持材の細孔容積に比べて大きい体積を導入することによって達成できる。
【0075】
[0083]含浸工程および固定工程はシェル型触媒を形成できる。しかしながら、ハロゲン化物フリー前駆体溶液を使用すると、任意に固定工程を省いても、シェル触媒を形成できる。塩化物前駆体が存在していない場合には、洗浄工程は、以下で検討しているように、省くことができる。更に、その方法では、洗浄工程を残す必要がある触媒成分を固定する工程を行わないことが可能である。洗浄工程が必要ないので、洗浄工程を残すために触媒成分を固定する必要はない。触媒を製造する方法における次の工程は、固定される触媒成分を必要としないので、工程の残りは、追加の製造工程無しで実施できる。概して、塩化物フリー前駆体を使用すると、洗浄工程の無い触媒またはプレ触媒の製造法が可能になるので、触媒を製造するのに必要とされる工程数が減り、また、塩化物含有廃棄物を処理する必要性が無くなる。
【0076】
[0084]洗浄工程
[0085]特に、ハロゲン化物含有前駆体溶液を利用するとき、及び所望の他の用途では、固定工程後に、固定された担持材を洗浄して担体上の任意のハロゲン化物の残留物を除去することができ、または、担持材上の汚染物質の潜在的な悪い効果を排除するために処理することができる。洗浄工程は、水で、好ましくは脱イオン水で固定担持材をすすぐことを含んでいた。洗浄は、回分モードまたは連続モードで行うことができる。室温での洗浄は、流出洗浄水が約1000ppm未満のハロゲン化物イオン含量を有するまで、そして更に好ましくは、最終的な流出物が硝酸銀試験に対して陰性結果を与えるまで続けるべきである。洗浄工程は、以下で検討する還元工程の後にまたは同時に行ってもよいが、好ましくは、その前に行う。上記したように、ハロゲン化物をフリー前駆体溶液を使用すると、洗浄工程を除くことが可能になる。
【0077】
[0086]焼成工程
[0087]少なくとも1種の触媒成分を担持材に接触させた後、焼成工程を用いることができる。焼成工程は、典型的には、還元工程の前かつ固定工程の後に行うが(前記の工程が使用される場合)、プロセスのどこかで行うことができる。別の態様では、焼成工程は、還元工程後に行われる。焼成工程は、非還元雰囲気(すなわち酸化または不活性な雰囲気)下で担持材を加熱することを含む。焼成中、担持材上の触媒成分は、それらの塩から、それらの酸化物と遊離金属形態との混合物へと、少なくとも部分的に分解される。
【0078】
[0088]例えば、焼成工程は、約100℃〜約700℃、好ましくは約200℃〜約500℃の温度で行う。焼成用に使用される非還元ガスとしては、1種以上の不活性ガスまたは酸化性ガス、例えばヘリウム、窒素、アルゴン、ネオン、窒素酸化物、酸素、空気、二酸化炭素またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。一つつの態様では、焼成工程は、実質的に純粋な窒素、酸素、空気またはそれらを組み合わせた雰囲気下で行う。焼成時間は、変えることができるが、好ましくは約1〜5時間である。触媒成分塩の分解度は、使用される温度および含浸触媒が焼成される時間の長さに依存し、そして揮発分解生成物をモニターすることによって追跡できる。
【0079】
[0089]一つ以上の焼成工程を用いることができるので、少なくとも1種の触媒成分を担持材に接触させた後の任意のポイントで焼成できる。好ましくは、最後の焼成工程は、ジルコニア担持材に対する金触媒成分の接触前に行う。あるいは、金を含むジルコニア担持材の焼成は、約300℃未満の温度で行う。約300℃を超える温度での金含有ジルコニア担持材の焼成を回避することによって、得られる触媒のCO選択性に有害な影響を与えるという危険性は低下する。
【0080】
[0090] 焼成工程を含む例示的プロトコルとしては:a)パラジウムを含浸させ、次いで焼成し、次いで金を含浸させる;b)パラジウムとロジウムを共含浸させ、次いで焼成し、次いでAuを含浸させる;c)パラジウムを含浸させ、次いで焼成し、次いでロジウムを含浸させ、次いで焼成し、次いで金を含浸させる;またはd)パラジウムとロジウムを含浸させ、次いで金を含浸させ、次いで焼成する、が挙げられる。
【0081】
[0091]還元工程
[0092]本明細書で一般的に使用される別の工程、例えば還元工程によって、任意の残留触媒成分を、塩または酸化物の形態から触媒活性状態へと少なくとも部分的に変える。典型的には、これは、塩または酸化物を還元剤に曝露することによって行う。還元剤としては、例えばアンモニア、一酸化炭素、水素、炭化水素、オレフィン、アルデヒド、アルコール、ヒドラジン、第一級アミン、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル及びそれらの組み合わせが挙げられる。水素、エチレン、プロピレン、アルカリ性ヒドラジンおよびアルカリ性ホルムアルデヒドおよびそれらの組み合わせは、好ましい還元剤であり、特に好ましくは、不活性ガスとブレンドされたエチレンおよび水素である。ガス環境を使用する還元が好ましいが、液体環境で行われる還元工程を用いてもよい(例えば還元性溶液を使用する)。還元のために選択される温度は、周囲温度から約550℃までであることができる。還元時間は、典型的には約1〜約5時間の範囲で変える。
【0082】
[0093]触媒成分を還元するために使用される方法は、最終触媒の特性に影響を及ぼし得るので、還元に使用される条件は、高度な活性、高度の選択性またはこれらの特性のある程度のバランスが要求されるかどうかによって変えることができる。
【0083】
[0094]一つの態様では、参照によりその内容の本明細書に引用したものとする米国特許第6,486,093号、第6,015,769号および関連特許に記載されているように、金を接触させそして還元する前に、パラジウムを担持材に接触させ、固定し還元する。
【0084】
[0095]還元工程を含む例示的なプロトコルとしては:a)パラジウムを含浸させ、次いで任意に焼成し、次いで金を含浸させ、次いで還元する;b)パラジウムおよび金を共含浸させ、次いで任意に焼成し、次いで還元する;またはc)パラジウムを含浸させ、任意に焼成し、還元し、次いで金を含浸させる、が挙げられる。
【0085】
[0096]改質工程
[0097]通常は、還元工程の後かつ触媒を使用する前に、改質工程が望ましい。触媒は、改質工程と一緒に使用でき、改質工程は、触媒の運転寿命を長くすることを含むいくつかの有益な結果を有する。改質工程は、時には活性化工程と呼ばれ、従来の実行法にしたがって達成できる。すなわち、還元された担持材を、使用前に、改質剤、例えばアルカリ金属カルボン酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物と接触させる。従来のアルカリ金属カルボン酸塩、例えばC2−4脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩およびセシウム塩は本目的に使用される。VAの製造で好ましい活性化剤は、酢酸アルカリであり、最も好ましくは酢酸カリウム(KOAc)である。
【0086】
[0098]担持材には、任意に、改質剤の溶液を含浸させることができる。乾燥後、触媒は、例えば、触媒1リットルあたり約10〜約70グラム、好ましくは約20〜約60グラムの改質剤を含むことができる。
【0087】
[0099]アルケニルアルカノエートを製造する方法
[00100]本発明を用いて、触媒の存在下で、アルケン、アルカン酸および酸素含有ガスから、アルケニルアルカノエートを製造できる。好ましいアルケン出発原料は、2〜4個の炭素原子を含む(例えばエチレン、プロピレンおよびn−ブテン)。アルケニルアルカノエートを製造するための本発明方法で使用される好ましいアルカン酸出発原料は、2〜4個の炭素原子を含む(例えば酢酸、プロピオン酸および酪酸)。本発明方法の好ましい生成物は、VA、ビニルプロピオネート、ビニルブチレートおよびアリルアセテートである。最も好ましい出発原料は、エチレンおよび酢酸であり、最も好ましい生成物はVAである。而して、本発明は、触媒の存在下で、オレフィン不飽和化合物、カルボン酸および酸素からオレフィン不飽和カルボン酸エステルを製造する場合に有用である。本明細書の残りの部分ではもっぱらVAについて検討するが、触媒、触媒を作る方法および製造法は、他のアルケニルアルカノエートに等しく適用可能であり、また、その記述は本発明の用途をVAに限定することを意図していないことを了解すべきである。
【0088】
[00101]VAを、本発明の触媒を使用して製造する場合、エチレン、酸素または空気を含むガスと酢酸とを触媒の上に流す。ガス流の組成は、流出物の着火領域を考慮しながら、広範な制限内で変えることができる。例えば、エチレン対酸素のモル比は約80:20〜約98:2であることができ、酢酸対エチレンのモル比は約100:1〜約1:100、好ましくは約10:1〜約1:10、最も好ましくは約1:1〜約1:8であることができる。ガス流は、ガス状のアルカリ金属酢酸塩および/または不活性ガス、例えば窒素、二酸化炭素および/または飽和炭化水素を含むこともできる。使用できる反応温度は、高温であり、好ましくは約125〜220℃である。使用される圧力は、やや減圧された圧力、常圧又は高圧、好ましくは最大で約20気圧(ゲージ圧)の圧力であることができる。
【0089】
[00102]固定床反応器に加えて、アルケニルアルカノエートおよび本発明の触媒を製造する方法は、他のタイプの反応で、例えば流動床反応器で最適に使用することもできる。
【0090】
[00103]実施例
[00104]以下の実施例は、ただの例示であり、限定することを意図していない。
溶媒および反応体の量はおおよそである。Au/Pd原子比は、次の方程式:すなわち、Au/Pd原子比=0.54*(Au/Pd重量比)およびAu/Pd重量比=1.85(Au/Pd原子比)によって、Au/Pd重量比へと変換できる(逆も可能)。還元は「R」で略記してあり、その後に、還元が行われた温度を℃単位で示してある。同様に、焼成は「C」で略記してあり、その後に、焼成が行われた温度を℃単位で示してある。一方、乾燥工程は「乾燥」と略記してある。
【0091】
[00105]実施例1〜11の触媒は、実施例に記載のようにして調製でき、そして以下の手順にしたがって試験することができる。その場合、実施例1〜7から得られた触媒は互いに比較することができ、また実施例8〜11から得られた触媒も互いに比較することができる。可能なら、結果を提供する。
【0092】
[00106]実施例の触媒は、エチレン、酸素および酢酸の反応による酢酸ビニルの製造中に生じるの様々な副産物に対するそれらの活性および選択性について試験した。これを達成するために、上記のようにして調製した触媒60mlを、頂部と底部の両方に熱電対を備えていて温度を測定できるようにしたステンレス鋼製のバスケットに入れた。バスケットを再循環タイプのBerty連続撹拌タンク反応器内に入れ、電気加熱マントルで約45%の酸素転化率を生ずる温度に維持した。約50ノルマルリットル(N.T.P.で測定した)のエチレンと、約10ノルマルリットルの酸素と、約49ノルマルリットルの窒素と、約50gの酢酸と、および約4mgの酢酸カリウムとのガス混合物を、約12気圧の圧力下でバスケット中に移動させ、そして、触媒を、少なくとも16時間これらの反応条件下で熟成させ、そして2時間運転し、その後で反応を終了させた。生成物の分析は、約10℃で生成物流を凝縮させて、最終生成物、すなわち二酸化炭素(CO)、高沸点留分(HE)および酢酸エチル(EtOAc)の最適分析を得るオフライン液体生成物分析と組み合わせたオンラインガスクロマトグラフィー分析によって行い、そしてその結果を用いて、各実施例に関して、これらの材料の%選択率(CO選択率)を計算できる。活性因子(活性)として表される反応の相対活量は、活性因子を、触媒温度(反応中)と、酸素転化率と、そしてVA合成中に起こる反応に関する一連の速度論的パラメータと相関させる一連の方程式を用いてコンピュータで計算できる。更に一般的には、活性因子は、典型的には、一定の酸素転化率を達成するために必要な温度とは反比例関係にある。
【0093】
[00107]ロジウム触媒実施例
[00108]実施例1:パラジウム金属およびロジウム金属を含む担持材を以下のようにして調製した:7mmの呼び径、約0.569g/mlの密度、約0.568g水/g担体の吸収率、約160〜175m/gの表面積、および約0.68ml/gの細孔容積を有するSud Chemie KA−160シリカ球から成る250mlの量の担持材に、まず最初に、触媒1リットルあたり約7グラムの元素パラジウムおよび約0.29グラムの元素ロジウムを提供するのに充分なソジウムテトラクロロパラジウム(II)(NaPdCl)と塩化ロジウム三水和物(RhCl・3HO)との水溶液82.5mlを、初期湿潤によって、含浸させた。その担体を5分間その溶液中で振盪して、溶液を完全に確実に吸収させた。次いで、パラジウムおよびロジウムをそれらの水酸化物へと転化させるのに必要な量の120%量の50%w/w NaOH/HOから調製された水酸化ナトリウム水溶液283mlと、処理された担体とを、約5回転/分で2.5時間回転浸漬することによって接触させ、水酸化パラジウム(II)および水酸化ロジウム(III)としてパラジウムおよびロジウムを担体に固定した。溶液を、処理された担体から排出し、次いでその担体を脱イオン水ですすぎ、そして、1.2時間、流動床乾燥器において100℃で乾燥させた。水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む担持材に、初期湿潤法によって、NaAuCl由来の1.24gのAuと2.71gの50%NaOH溶液とを含む水溶液(81ml)(1.8当量のAu)を含浸させた。NaOHで処理されたピルは、Au塩を不溶性水酸化物へと確実に沈殿させるために一晩静置させた。そのピルを、脱イオン水で完全に洗浄して(〜5時間)、塩化物イオンを除去し、次いで、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、パラジウム、ロジウムおよび金を含有する担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして、室温まで自然に冷却させた。パラジウム、ロジウムおよび金を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させて還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。
【0094】
[00109]実施例2:水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを使用する担持材を、実施例1に記載のようにして調製した。次いで、パラジウムおよびロジウムを含有している担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして室温まで自然に冷却させた。
水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む焼成された担持材に、初期湿潤法によって、NaAuCl由来の1.24gのAuと2.71gの50%NaOH溶液とを含む水溶液(81ml)(1.8当量のAu)を含浸させた。NaOHで処理されたピルは、Au塩を不溶性水酸化物へと確実に沈殿させるために一晩静置した。そのピルを脱イオン水で完全に洗浄して(〜5時間)、塩化物イオンを除去し、次いで、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、150℃で5時間、気相中で、担体をCH4(窒素中1%)と接触させることによって、パラジウム、ロジウムおよび金を還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。
【0095】
[00110]実施例3:水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む担持材を、実施例1に記載したようにして調製した。次に、パラジウムおよびロジウムを含有している担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして室温まで自然に冷却させた。次いで、水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む焼成された担持材を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。続いて、パラジウム金属およびロジウム金属を含む担体に、初期湿潤法によって、NaAuCl由来の1.24gのAuと2.71gの50%NaOH溶液とを含む水溶液(81ml)(1.8当量のAu)を含浸させた。NaOHで処理されたピルは、Au塩を不溶性水酸化物へと確実に沈殿させるために一晩静置した。そのピルを脱イオン水で完全に洗浄して(〜5時間)、塩化物イオンを除去し、次いで、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって、パラジウム、ロジウムおよび金を還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。
【0096】
[00111]実施例4:水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む担持材を、実施例1に記載したようにして調製した。次いで、パラジウムおよびロジウムを含有している担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして室温まで自然に冷却させた。水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む焼成された担持材を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。次いで、パラジウム金属およびロジウム金属を含む担体に、初期湿潤法を使用して、KAuO由来の1.1gのAuを含む水溶液(81ml)を含浸させた。続いて、そのピルを、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、パラジウム、ロジウムおよび金を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。
【0097】
[00112] 実施例5:水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む担持材を、実施例1に記載のようにして調製した。次いで、パラジウムおよびロジウムを含有している担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして室温まで自然に冷却させた。次いで、水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む焼成された担体に、初期湿潤法を使用して、KAuO由来の1.1gのAuを含む水溶液(81ml)を含浸させた。続いて、そのピルを、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。パラジウム、ロジウムおよび金を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。
【0098】
[00113]実施例6:水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む担持材を、実施例1に記載のようにして調製した。次いで、パラジウムおよびロジウムを含有している担体を空気下において400℃で2時間焼成し、そして室温まで自然に冷却させた。水酸化パラジウムおよび水酸化ロジウムを含む焼成された担持材を、150℃で5時間、気相中で、担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。次いで、パラジウム金属およびロジウム金属を含む担体に、初期湿潤法を使用して、KAuO由来l.1gのAuと10gの酢酸カリウムとを含む水溶液(81ml)を含浸させた。続いて、そのピルを、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。
【0099】
[00114]実施例7(参照触媒):パラジウム金属を含む担持材を以下の通りに調製した:7mmの呼び径、約0.569g/mlの密度、約0.568g水/g担体の吸収率、約160〜175m/gの表面積、および約0.68ml/gの細孔容積を有するSud Chemie KA−160シリカ球から成る250mlの量の担持材に、まず最初に、触媒1リットルあたり約7グラムの元素パラジウムを提供するのに充分なソジウムテトラクロロパラジウム(II)(NaPdCl)の水溶液82.5mlを、初期湿潤によって、含浸させた。その担体を5分間その溶液中で振盪して、溶液を完全に確実に吸収させた。次いで、パラジウムをその水酸化物へと転化するのに必要な量の110%量の50%w/w NaOH/HOから調製された水酸化ナトリウム水溶液283mlと、処理された担体とを、約5回転/分で2.5時間回転浸漬することによって、接触させ、水酸化パラジウム(II)としてパラジウムを担体に固定した。溶液を処理された担体から排出し、次いでその担体を脱イオン水ですすぎ、そして、1.2時間、流動床乾燥器において100℃で乾燥させた。次いで、水酸化パラジウムを含む担持材に、初期湿潤法を使用して、NaAuCl由来の1.24gのAuと2.71gの50%NaOH溶液とを含む水溶液(81ml)(1.8当量のAu)を含浸させた。NaOHで処理されたピルは、Au塩を不溶性水酸化物へと確実に沈殿させるために一晩静置した。そのピルを脱イオン水で完全に洗浄して(〜5時間)、塩化物イオンを除去し、次いで、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、パラジウムおよび金を含有している担体を、150℃で5時間、気相中で前記担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして、流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。表1には、実施例1および7の触媒に関して、CO選択率と活性の比較が示してある。
【0100】
[00115]
【表1】

【0101】
[00116]層状担体の実施例
[00117]実施例8:40gのZrO(RC−100、DKKから入手した)を650℃で3時間焼成した。得られた材料は、38m/gの比表面積を有する。その材料を、120mlの脱イオン水と一緒にボールミル粉砕した。そのゾルに、DKK(ZA−20)から入手した結合剤酢酸ジルコニウム22.5gを混合し、外径〜7.5mmを有するベントナイトKA−160の球体55g上へ吹き付けた。コートされたビードを600℃で3時間焼成した。顕微鏡下で検査すると、250μmの厚さを有する均一なシェルの形成が認められた。
【0102】
[00118]実施例9:20gのZrO(XZ16075、比表面積55m/g)にPd(NO溶液(Aldrich)を含浸させて、1gのZrOあたり39mgのPdを充填させた。その含浸された材料を、乾燥させ、450℃で4時間焼成した。
その材料を、60mlの脱イオン水と一緒に4時間ボールミル粉砕し、そこに11gの結合剤(ZA−20)を混ぜ合わせ、そして30gのベントナイトKA−160球体上に吹き付けた。そのビードを450℃で3時間焼成した。この手順により、160μmの厚さを有する強くて均一なシェルが得られる。
【0103】
[00119]実施例10:実施例8から得られたビードに、酢酸カリウム溶液を含浸させて、1mlのKA−160あたり40mgのKOAcを充填し、乾燥させ、そして300℃で4時間焼成した。その後で、9.4mMのPd(Heraeusから入手したPd(NH(OH)由来)と4.7mMのAu(1M溶液、1.6M KOH中に溶解されたAu(OH)“Alfa”由来)とを含む溶液をこれらのビード上に吹き付けた。材料を、200℃で4時間、5%Hと95%Nとの混合物を使用して還元した。
ビードを粉砕し、そして、実験の項に記載してある条件下で固定床マイクロ反応器において試験した。45%の酸素転化率において〜6%のCO選択率が達成された。
【0104】
[00120]実施例11(参照触媒):実施例7で調製されたものと同じ触媒を参照触媒として使用した。表2では、実施例9〜11の触媒に関してCO選択率および活性を比較している。
【0105】
[00121]
【表2】

【0106】
[00122]ジルコニア担持材および塩化物フリー前駆体の実施例
[00123]この一組の実施例では、以下の一般的な手順を使用した。ジルコニア担持材触媒は次のようにして作った:様々な造形触媒担体を、粉砕し、ふるいにかけた。
ジルコニア担持材は、NorPro(XZ16052およびXZ16075)、DKKおよびMEIから入手した。シリカ担持材は、DegussaおよびSud Chemieから入手した。180〜425μmのふるい分級物に、初期湿潤までPdおよびAuの前駆体溶液を含浸させ(110℃の中間乾燥工程および任意に中間焼成工程と同時にまたは順々に)、そして任意に空気中で焼成し、5%H/N形成ガスで還元し、KOAc溶液を後含浸させ、N下100℃で乾燥させ、そして、8x6多チャンネル固定床反応器(multichannel fixed bed reactor)でふるい分けした。
KOH中Au(OH)溶液をAu前駆体として使用した。Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NH(NOおよびPd(NOPdの水溶液をPd前駆体として使用した。
【0107】
[00124] シリカ担持材触媒参照を次のようにして作った:パラジウム金属およびロジウム金属を含む担持材を次のようにして調製した:7mmの呼び径、約0.569g/mlの密度、約0.568g水/g担体の吸収率、約160〜175m/gの表面積、および約0.68ml/gの細孔容積を有するSud Chemie KA−160シリカ球から成る250mlの量の担持材に、まず最初に、触媒1リットルあたり約7グラムの元素パラジウムを提供するのに充分なソジウムテトラクロロパラジウム(II)(NaPdCl)の水溶液82.5mlを、初期湿潤によって、含浸させた。その担体を5分間その溶液中で振盪して、溶液を完全に確実に吸収させた。次いで、パラジウムをその水酸化物へと転化するのに必要な量の110%量の50%w/w NaOH/HOから調製された水酸化ナトリウム水溶液283mlと、処理された担体とを、約5回転/分で2.5時間回転浸漬することによって、接触させ、水酸化パラジウム(II)としてパラジウムを担体に固定した。溶液を処理された担体から排出し、次いでその担体を脱イオン水ですすぎ、そして、1.2時間、流動床乾燥器において100℃で乾燥させた。次いで、水酸化パラジウムを含む担持材に、初期湿潤法を使用して、NaAuCl由来の1.24gのAuと2.71gの50%NaOH溶液とを含む水溶液(81ml)(1.8当量のAu)を含浸させた。NaOHで処理されたピルは、Au塩を不溶性水酸化物へと確実に沈殿させるために一晩静置した。そのピルを脱イオン水で完全に洗浄して(〜5時間)、塩化物イオンを除去し、次いで、流動床乾燥器において100℃で1.2時間乾燥させた。次いで、パラジウムおよび金を含有している担体を、150℃で5時間、気相中で前記担体をC(窒素中1%)と接触させることによって還元した。最後に、触媒に、初期湿潤によって、81mlのHO中10gの酢酸カリウム水溶液を含浸させ、そして流動床乾燥器において1.2時間100℃で乾燥させた。試験前に、触媒を粉砕し、ふるいにかけた。180〜425μmの粒度範囲のふるい分級物を使用した。
【0108】
[00125]ガラスバイアルの8行x6列(8 rows x 6 columns)の配列から成る触媒ライブラリを設計し、そして36個のガラスバイアルから成るラックをボルテクサーに載置し、次いでCavro(商標)液体分注ロボットを使用して金属前駆体溶液を分注しながら撹拌した。各ライブラリ要素のために、そして、ガラスバイアル合成のために、0.4mlの担体を使用し、ならびに各反応器容器に充填した。
【0109】
[00126]KOAcの充填量は、触媒体積1リットルあたりのKOAcのグラム数または担体0.4mlあたりのKOAcのマイクロモル数で記録する。Au充填量を示すためには、AuのPdに対する相対的な原子比をAu/Pdとして記録する。Pd充填量は、0.4mlの担体体積あたりのPdのmg数で示す(すなわち、反応器容器中のPdの絶対量)。
【0110】
[00127]スクリーニングプロトコルでは、175%の固定空間速度において、5℃の増分で145〜165℃の温度傾斜(temperature ramp)を使用した(0.4mlの担体上1.5mgのPd)。100%の空間速度とは、次の流量と定義する:すなわち、48個の各触媒容器(その全てが約4mmの内径を有していた)を流れる5.75sccmの窒素、0.94sccmの酸素、5.94sccmのエチレン、および毎分5.38マイクロリットルの酢酸。CO選択率を酸素転化率に対してプロットし、線形フィッティングを行い、そして、45%酸素転化率で計算された(殆どの場合内挿された)CO選択率が、以下の性能概要表に記録してある。45%の酸素転化率における温度は、温度傾斜から計算した(反応温度に対するCO選択率と酸素転化率の線形フィッティングも記録してある)。この計算された温度が低くなればなるほど、触媒の活性は高くなる。45%酸素転化率における空時収量(STY;触媒1mlあたり毎時製造されるVAのg数)は、触媒の生産性の尺度である。
【0111】
[00128]実施例12:ZrO担体であるXZ16075(入手時55m/g)およびXZ16052(650℃で2時間予備焼成して表面積を42m/gまで低下させた)400μlに、3種の異なるPd溶液を初期湿潤まで含浸させ、110℃で5時間乾燥させ、KAuO(0.97M Au原液)を初期湿潤まで含浸させ、110℃で5時間乾燥させ、5%H/N形成ガス中において350℃で4時間還元し、KOAcを後含浸させ、そして110℃で5時間乾燥させた。次いで、Pd/Au/ZrOサンプル(シェル)を、KA160希釈剤(40g/lのKOAcで前充填した)で1/9.3まで希釈した。すなわち、43μlのPd/Au/ZrOシェルおよび357μlの希釈剤(400μlの総固定床体積)を反応器容器に入れた。Pd充填量は、400ulのZrOシェル中14mgのPd(すなわち、全てのライブラリ要素のための反応器容器では14*43/400=14/9.3=1.5mgのPd)であった。Pd前駆体は、列1および列4ではPd(NH(NO、列2および列5ではPd(NH(OH)、列3および列6ではPd(NH(NOであった。行2および行5ではAu/Pd=0.3、行3ではAu/Pd=0.6、行4、6および7ではAu/Pd=0.9。KOAc充填量は、行2、3、5では114マイクロモルおよび行4、6、7では147マイクロモルであった。シリカ参照触媒は、列1に充填した。ライブラリは、固定された空間速度において、温度傾斜スクリーニングプロトコルを使用してスクリーニングした。スクリーニングの結果は表3にまとめてある。
【0112】
[00129]
【表3】

【0113】
[00130]実施例13:ZrO担体であるXZ16075(入手時55m/g)およびXZ16052(650℃で2時間予備焼成して表面積を42m/gまで低下させた)400μlに、Pd(NH(OH)(1.117M Pd原液)を初期湿潤まで含浸させ、350℃で4時間空気中で乾燥させ、KAuO(0.97M Au原液)を初期湿潤まで含浸させ、110℃で5時間乾燥させ、5%H/N形成ガス中において350℃で4時間還元し、KOAcを後含浸させ、そして110℃で5時間乾燥させた。次いで、Pd/Au/ZrOサンプル(シェル)を、KA160希釈剤(40g/lのKOAcで前充填した)で1/12まで希釈した。すなわち、33.3μlのPd/Au/ZrO触媒および366.7μlの希釈剤(400μlの総固定床体積)を反応器容器に入れた。ライブラリの設計およびライブラリ要素の組成は、次の通りだった:すなわち、列1〜3にはZrO XZ16075(ライブラリの左の半分)および列4〜6にはZrO XZ16052(650℃)(ライブラリの右半部)。Pd充填量は、セルG2、列3(セルB3〜G3)、セルG5、列6(セルB6〜G6)において400μlのZrOシェル中18mgのPd(すなわち、反応器容器中では18*33/400=18/12mgのPd);列1(セルA1〜G1)および列4(セルA4〜G4)において400μlのZrOシェル中には10mgのPd(すなわち、反応器容器中では10*33/400=10/12mgのPd);列2(セルB2〜F2)および列5(セルB5〜F5)において400μlのZrOシェル中には14mgのPd(すなわち、反応器容器中では14*33/400=14/12mgのPd)であった。行2および行5ではAu/Pd=0.3、行3および行6ではAu/Pd=0.5、行4および行7ではAu/Pd=0.7であった(Au/Pd=0.3であったセルA1、A4、G2、G5は除く)。KOAc充填量は、114マイクロモルであった(KOAc充填量が147マイクロモルであったセルD3、G3、D6、G6は除く)。シリカ参照触媒は、行1に充填した。ライブラリは、空間速度を固定して、温度傾斜スクリーニングプロトコルを使用してスクリーニングした。スクリーニングの結果は表4にまとめてある。
【0114】
[00131]
【表4】

【0115】
[00132]実施例14:ZrO担体(NorProから入手、XZ16075、ふるい分級物180〜425μm、密度1.15g/ml、細孔容積475μl/g、比表面積55m/g)に、Pd(NO前駆体溶液を初期湿潤まで含浸させ、110℃で乾燥させ、空気中で250℃で(列1〜2)、350℃で(列3〜4)、450℃で(列5〜6)焼成し、KAuO溶液(KOH中にAu(OH)を溶解させて調製した)を含浸させ、110℃で乾燥させ、350℃で4時間5%H/N形成ガスで還元し、そしてKOAc溶液を後含浸させた。そのライブラリは、行2から行7において25〜50g/lのKOAc勾配を有する。Pd充填量は、0.4mlの担体上に1.5mgのPdである。2つの異なるAu充填量を選択した(列1,3,5ではAu/Pd=0.5および列2,4,6ではAu/Pd=0.7)。シリカ参照触媒は、行1に充填した。そのライブラリを、固定された空間速度で、MCFB48 VA反応器において、温度傾斜スクリーニングプロトコルを使用してスクリーニングした。スクリーニングの結果は表5にまとめてある。
【0116】
[00133]
【表5】

【0117】
[00134]実施例15:ZrO担体(NorProtoから入手、XZ16075、ふるい分級物180〜425um、密度1.15g/ml、細孔容積575μl/g、比表面積55m/g)に、Pd(NO前駆体溶液を初期湿潤まで含浸させ、110℃で乾燥させ、空気中で450℃で焼成し、KAuO溶液(KOH中にAu(OH)を溶解させて調製した)を含浸させ、110℃で乾燥させ、、200℃(列1〜2)、300℃(列3〜4)または400℃(列5〜6)で5%H/N形成ガスによって還元し、KOAc溶液で後含浸させた。そのライブラリは、行2から行7において15〜40g/lのKOAc勾配を有する。Pd充填量は、0.4mlの担体上に1.5mgのPdである。2つの異なるAu充填量を選択した(列1,3,5ではAu/Pd=0.5および列2,4,6ではAu/Pd=0.7)。シリカ参照触媒は行1に充填した。ライブラリは、固定された空間速度で、温度傾斜スクリーニングプロトコルを使用して、MCFB48 VA 反応器においてスクリーニングした。スクリーニングの結果は表6にまとめてある。
【0118】
[00135]
【表6】

【0119】
[00136]複数の構成要素もしくは工程の機能または構造を結合させて、単一の構成要素もしくは工程にしてもよく、または、一つの工程もしくは構成要素の機能もしくは構造を、複数の工程もしくは構成要素へと分割してもよいことが更に了解されるだろう。本発明は、これらの組み合わせのすべてを企図している。特に断りがない場合は、本明細書に記載してある様々な構造の寸法およびジオメトリーは、本発明を限定することを意図しておらず、他の寸法またはジオメトリーも可能である。複数の構成要素または工程は、単一の統合された構造または工程によって提供することができる。あるいは、単一の統合された構造または工程は、別々の複数の構成要素または工程へと分割できる。更に、本発明の特徴を、例示態様のうちのただ一つの文脈で説明してきたが、前記特徴は、任意の所定の用途のために、他の態様の一つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。また、本明細書に記載してあるユニークな構造の作製およびそれらの運転が、本発明による方法を構成することも上記説明から了解されるだろう。
【0120】
[00137]本明細書で提示してある説明および実例は、他の当業者に、本発明、本発明の原則および本発明の実際的な用途を知らせることを目的としている。当業者は、特定用途の要求条件に最も適し得るように、本発明を、その多くの形態で採用かつ適用できる。而して、記載したような本発明の特定の態様は、本発明を網羅または限定することを目的としていない。而して、本発明の範囲は、上記の説明によって決定されるべきではなく、添付の請求の範囲と、前記請求の範囲が権利を付与している等価物の全範囲とによって決定されるべきである。特許出願および刊行物を含む物品および引例の開示は、あらゆる目的のために引用したものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:すなわち
少なくとも1種の触媒前駆体溶液を担持材上に金およびパラジウムを配置するために該担持材に同時にまたは連続的に接触させる工程であって、該少なくとも1種の触媒前駆体溶液がPd(NH(NO、Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(HCO、NaAuO、NMeAuO、硝酸中HAu(NOまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される1種またはそれ以上のパラジウムおよび1種またはそれ以上の金前駆体を含む水溶液である;および
還元環境を該担持材に接触させることによって該パラジウムまたは金を還元する工程
を含むアルケニルアルカノエートの製造を促進するのに好適な触媒を製造する方法。
【請求項2】
該担持材が、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリケート、アルミノシリケート、チタネート、スピネル、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭素、ステアタイト、ベントナイト、クレイ、金属、ガラス、石英、軽石、ゼオライト、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該担持材が、ジルコニアを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該担持材が、層状担持材を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該層状担持材が、内層および外層を含み、かつ該内層がパラジウムおよび金を含有していない請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該接触工程が、触媒1リットルあたり1〜10グラムのパラジウムおよび0.5〜10グラムの金を該担持材に接触させることを含み、かつ、該金の量が、パラジウムの重量を基準として10〜125重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該触媒前駆体溶液が、更にロジウムを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酢酸カリウムを該担持材に接触させる工程を更に含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該酢酸カリウムが、触媒1リットルあたり10〜70グラムの量で存在する請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下の方法:すなわち
少なくとも1種の触媒前駆体溶液を担持材上に金およびパラジウムを配置するために該担持材に同時にまたは連続的に接触させる工程であって、該少なくとも1種の触媒前駆体溶液がPd(NH(NO、Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(HCO、NaAuO、NMeAuO、硝酸中HAu(NOまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される1種またはそれ以上のパラジウムおよび1種またはそれ以上の金前駆体を含む水溶液である;および
還元環境を該担持材に接触させることによって該パラジウムまたは金を還元する工程
を含む方法によって製造されるアルケニルアルカノエートの製造を触媒するための組成物。
【請求項11】
該担持材が、ジルコニアを含む請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該担持材が、層状担持材を含む請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
該触媒が、更にロジウムを含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
該触媒が、触媒1リットルあたり1〜10グラムのパラジウムおよび0.5〜10グラムの金を含み、かつ、該金の量が、パラジウムの重量を基準として10〜125重量%である請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該触媒が、酢酸カリウムを含む請求項10〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該酢酸カリウムが、触媒1リットルあたり10〜70グラムの量で存在する請求項10〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
該担持材が、粒子担持材または粉砕担持材を含む請求項10〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
担持材上にパラジウムおよび金を含む触媒にアルケン、アルカン酸および酸化剤を含む供給原料を接触させる工程を含み、1種またはそれ以上の前駆体から形成される該触媒がPd(NH(NO、Pd(NH(OH)、Pd(NH(NO、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(OAc)、Pd(NH(HCO、NaAuO、NMeAuO、硝酸中HAu(NOまたはそれらの組み合わせよりなる群から選択される1種またはそれ以上のパラジウム前駆体および1種またはそれ以上の金前駆体を含む、アルケニルアルカノエートを製造する方法。
【請求項19】
該アルケンがエチレン、アルカン酸が酢酸、および酸化剤が酸素含有ガスである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該触媒が、更にロジウムを含む請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
該触媒が、触媒1リットルあたり約1〜約10グラムのパラジウムおよび約0.5〜約10グラムの金を含み、かつ、該金の量が、パラジウムの重量を基準として約10〜約125重量%である請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
該担持材が、ジルコニアを含む請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
該担持材が、層状担持材を含む請求項18〜22記載のいずれか1項に記載の方法。


【公開番号】特開2012−196674(P2012−196674A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125817(P2012−125817)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2006−545664(P2006−545664)の分割
【原出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】