説明

触媒の組み合わせによるメタンの芳香族化

【課題】本発明の目的は、触媒の組み合わせによるメタンの芳香族化のための方法およびシステムを提供することである。
【解決手段】メタンを含む加熱反応ガスを第一の触媒および第二の触媒と接触させて、芳香族炭化水素の生成を触媒する。第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して第二の触媒よりも活性であり、第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して第一の触媒よりも活性である。反応ガスから芳香族炭化水素を生成するための反応器は、反応ガスをその内部で反応させるための反応ゾーンを画定する導管を有していてもよく、第一および第二の触媒は反応ゾーン内に配置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2011年9月21日提出の「PROCESS FOR PRODUCTION OF AROMATIC HYDROCARBONS FROM NATURAL GAS」なる標題の米国特許出願第61/537,232号の恩典およびこれに対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本発明は、天然ガスからの芳香族炭化水素の生成を含む、低級炭化水素の芳香族化のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
メタン(CH4)の非酸化的条件下でのデヒドロ芳香族化は熱力学的にオレフィンよりも芳香族に有利であることが公知であり、Mo/ZSM-5およびMo/MCM-22などのモリブデン修飾ゼオライトまたはアルミノケイ酸塩はそのような反応の有効な触媒であることが判明している。そのような触媒の性能についての詳細にわたる調査が行われて報告されており、生成性能は試験した触媒の構造および組成と、触媒をどのように活性化したかに依存することが明らかにされている。このように、今日までに報告された調査は、活性化してメタン芳香族化からのベンゼン収率などの芳香族化性能の改善を提供しうる触媒を特定することに集中していた。
【0004】
そのような調査結果の代表的刊行物には非特許文献1から9が含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Smieskova et al. “Aromatization of methane on Mo modified zeolites: Influence of the surface and structural properties of the carriers,” Applied Catalysis A: General, 2010, vol. 377, pp. 83-91
【非特許文献2】Skutil et al., “Some technological aspects of methane aromatization (direct and via oxidative coupling),” Fuel Processing Technology, 2006, vol. 87, pp. 511-51
【非特許文献3】Liu et al., “Methane dehydroaromatization under nonoxidative conditions over Mo/HZSM-5 catalysts: Identification and preparation of the Mo active species,” Journal of Catalysis, 2006, vol. 239, pp. 441-450
【非特許文献4】Ha et al., “Aromatization of methane over zeolite supported molybdenum: active sites and reaction mechanism,” Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, 2002, vol. 181, pp. 283-290
【非特許文献5】Shu et al., “Methane dehydro-aromatization over Mo/MCM-22 catalysts: highly selective catalyst for the formation of benzene,” Catalysis Letters, 2000, vol. 70, pp. 67-73
【非特許文献6】Xu et al., “Recent advances in methane dehydro-aromatization over transition metal ion-modified zeolite catalysts under non-oxidative conditions,” Applied Catalysis A: General, 1999, vol. 188, pp. 53-67
【非特許文献7】Huang et al., “Structure and acidity of Mo/H-MCM-22 catalysts studied by NMR spectroscopy,” Catalysis Today, 204, vol. 97, pp. 25-34
【非特許文献8】Chu et al., “A feasible way to enhance effectively the catalytic performance of methane dehydroaromatization,” Catalysis Communications, 2010, vol. 11, pp. 513-517
【非特許文献9】Chu et al., “Dehydroaromatization of methane with a small amount of ethane for higher yield of benzene,” Chinese Chemical Letters, 2004, vol. 15, pp. 591-593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、触媒の組み合わせによるメタンの芳香族化のための方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外なことに、模擬天然ガスを異なる触媒の組み合わせ存在下で加熱することにより、触媒の組み合わせがメタンの芳香族化の触媒に関してより活性な第一の触媒とエタンの芳香族化の触媒に関してより活性な第二の触媒とを含む場合に芳香族化合物の生成の収率が向上しうることが、明らかにされている。例えば、第一の触媒はMo/MCM-22触媒であってもよく、第二の触媒はMo/ZSM-5触媒であってもよい。
【0008】
本発明の一局面に従い、メタンを含む加熱反応ガスを第一の触媒および第二の触媒と接触させて、芳香族炭化水素の生成を触媒する方法が提供される。第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して第二の触媒よりも活性であり、第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して第一の触媒よりも活性である。第一および第二の触媒の少なくとも一方は遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトであってもよい。第一の触媒は第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであってもよい。第二の触媒は第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトであってもよい。第一の遷移金属および第二の遷移金属はモリブデンであってもよい。各触媒は約3〜約12重量%のモリブデンを含んでいてもよい。各触媒は25〜45のSi/2Al比を有していてもよい。加熱反応ガスは約600〜約700℃の温度まで加熱してもよい。反応ガスを接触させる前に、第一および第二の触媒をプロパン存在下で少なくとも300℃まで加熱してもよい。第一および第二の触媒の重量比は約1:1であってもよい。
【0009】
もう一つの局面において、メタンを含む反応ガスから芳香族炭化水素を生成するための反応器が提供される。反応器は、反応ガスをその内部で反応させるための反応ゾーンを画定する導管;ならびに反応ゾーン内の第一の触媒および第二の触媒を含む。第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して第二の触媒よりも活性であり、第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して第一の触媒よりも活性である。第一および第二の触媒の少なくとも一方は遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトであってもよい。第一の触媒は第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであってもよい。第二の触媒は第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトであってもよい。第一の遷移金属および第二の遷移金属はモリブデンであってもよい。各触媒は約3〜約12重量%のモリブデンを含んでいてもよい。各触媒は25〜45のSi/2Al比を有していてもよい。第一および第二の触媒の重量比は約1:1であってもよい。
【0010】
本発明の他の局面および特徴は、以下の本発明の具体的態様の説明を添付の図面と共に綿密に調べることにより、当業者には明らかになるであろう。
【0011】
より具体的には、本発明は下記を提供する:
[1]メタンを含む加熱反応ガスを第一の触媒および第二の触媒と接触させて芳香族炭化水素の生成を触媒する段階を含む、方法であって、
該第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して該第二の触媒よりも活性であり、かつ該第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して該第一の触媒よりも活性である、方法;
[2]前記第一および第二の触媒の少なくとも一方が、遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、[1]の方法;
[3]前記第一の触媒が第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであり、かつ前記第二の触媒が第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトである、[2]の方法;
[4]前記第一の遷移金属および前記第二の遷移金属のそれぞれがモリブデンである、[3]の方法;
[5]前記第一および第二の触媒の1つずつが約3〜約12重量%のモリブデンを含む、[4]の方法;
[6]前記第一および第二の触媒の1つずつが25〜45のSi/2Al比を有する、[4]の方法;
[7]前記加熱反応ガスを約600〜約700℃の温度まで加熱する、[1]の方法;
[8]前記接触の前に、前記第一および第二の触媒をプロパン存在下で少なくとも300℃まで加熱する、[1]の方法;
[9]前記第一および第二の触媒の重量比が約1:1である、[1]の方法;
[10]以下を含む、メタンを含む反応ガスから芳香族炭化水素を生成するための反応器:
該反応ガスをその内部で反応させるための反応ゾーンを画定する導管;ならびに
該反応ゾーン内の第一の触媒および第二の触媒であって、該第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して該第二の触媒よりも活性であり、かつ該第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して該第一の触媒よりも活性である、第一の触媒および第二の触媒;
[11]前記第一および第二の触媒の少なくとも一方が、遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、[10]の反応器;
[12]前記第一の触媒が第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであり、かつ前記第二の触媒が第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトである、[11]の反応器;
[13]前記第一の遷移金属および前記第二の遷移金属のそれぞれがモリブデンである、[12]の反応器;
[14]前記第一および第二の触媒の1つずつが約3〜約12重量%のモリブデンを含む、[13]の反応器;
[15]前記第一および第二の触媒の1つずつが25〜45のSi/2Al比を有する、[13]の反応器;ならびに
[16]前記第一および第二の触媒の重量比が約1:1である、[10]の反応器。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、触媒の組み合わせによるメタンの芳香族化のための方法およびシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は本発明の態様を例示のためにのみ示すものである。
【図1】本発明の態様の例示である、反応器を用いての芳香族化方法の模式図である。
【図2】図1の反応器の反応ゾーンの模式的断面図である。
【図3】触媒の異なる構造による例示的芳香族化方法における代表的な生成結果を示すデータグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明の選択された態様に従ってメタンを含む反応ガスから芳香族炭化水素を生成するための方法を図1に例示する。示したとおり、反応ガスを反応器10に供給し、ここで反応ガスを非酸化的条件下で加熱して芳香族炭化水素および水素などの他の生成物を生成してもよい。
【0015】
反応ガスは天然ガスであってもよい。典型的な天然ガスは、例えば、75〜99モル%のメタン(CH4)、0.01〜15モル%のエタン(C2H6)、0.01〜10モル%のプロパン(C3H8)、最大0.30モル%の二酸化炭素(CO2)、および他の少量の成分を含みうる。反応ガスは、低級炭素アルカン、またはC1-C4炭化水素などの他の低級炭素脂肪族炭化水素を含む、任意の他の合成または天然に存在するガスまたはガスの混合物であってもよい。
【0016】
反応器10内で起こる実際の反応は複雑であり得、異なる態様においては当業者であれば理解しうる様々な因子に応じて変動しうる。多くの場合に、完全な反応機構は完全には理解されていないこともある。しかし、全反応は以下のとおりに記載しうる反応結果を含んでいてもよい。
【0017】
(数1)
6CH4 = 9H2 + C6H6 (1)
【0018】
選択された態様において、エタンも反応器10内に存在すると予想される。エタンは反応ガスなどの注入ガス中に含まれることもあり、または反応器10内で生成されることもある。したがって、芳香族化方法の全体の性能は、メタンの芳香族化の触媒に関してより活性である第一の触媒とエタンの芳香族化の触媒に関してより活性である第二の触媒との触媒の組み合わせを反応器10内に含めることによって、増強することができる。触媒は、所望の生成物のより高い収率を提供する場合、もしくは所望の反応のための活性触媒として、再活性化することなくより長い寿命を有する場合、またはその両方の場合により活性である。
【0019】
触媒は図2に示す触媒床12内に設置しうる(図1には別々に示していない)。図2に示すとおり、触媒床12は反応器10内の導管14内に設置し、その中を反応ガスが通過し、芳香族化反応が起こる。反応ガスが触媒に接触して反応する、導管14内の空間を反応ゾーンと呼ぶ。
【0020】
選択された態様において、図2に示すとおり、導管14を垂直に配置してもよく、反応ガスを下向きに流してもよい。
【0021】
少なくとも2つの異なる種類の触媒を触媒床12内に設置する。図2に示すとおり、第一の触媒16を触媒床12内の上流(図2に示す上部)に設置し、第二の触媒18を触媒床12内の下流(図2に示す下部)に設置する。選択された態様において、触媒16はMo/MCM-22触媒であり、触媒18はMo/ZSM-5触媒である。用いうる可能な触媒は、それらの選択および調製を以下に詳細に記載する。異なる態様において、触媒は、本明細書の他所に記載するとおり、異なるように配置してもよい。
【0022】
反応器10、触媒床12および導管14は、触媒床12内の触媒のほかは任意の適切な通常の技術に従い、かつ本明細書に記載の触媒の組み合わせを考慮して、またはそれに対応するように、任意の可能な、または必須の改変を行って、設計し、構築してもよい。例えば、反応器10は連続流動反応器であってもよく、触媒床12は固定触媒床であってもよい。反応器10、触媒床12および導管14のサイズおよび形状は、ガス相反応器を設計するために公知の技術に従い、当業者が選択してもよい。反応器内の異なる成分は、本明細書に記載の触媒の組み合わせに適合性であるとのさらなる条件で、当業者には公知の適切な材料を用いて構築してもよい。
【0023】
反応器10のいくつかの任意および必須の成分、ならびに反応器10を操作するための任意または必須の設備および装置は図に示していないが、これらは当業者であれば本開示を考慮して容易に理解し、提供することができる。
【0024】
操作中に、反応ガスを導管14内の触媒床12を選択した温度、圧および流速で通過させる。導管14内の温度、圧、流速、および他の操作条件は、非酸化的デヒドロ芳香族化条件を提供するよう選択し、制御する。当業者には理解されるであろうとおり、酸化的反応を避けるために、生成方法のために用いる反応物は非酸化的であるべきで、反応ガスは酸化ガスなどの酸化物質を含む、またはそれらに接触すべきではない。
【0025】
選択された態様において、反応ゾーンの反応温度は約650℃であってもよく、導管14内の圧は約0.1MPaまたは約1気圧であってもよい。いくつかの態様において、反応温度は、約500〜約900℃の範囲、例えば約600〜約700℃から選択してもよく;反応圧は、0.1〜約1MPaの範囲、例えば約0.1〜約0.5MPaから選択してもよい。
【0026】
選択された態様において、導管14内の反応ガスの空間速度は約10h-1であってもよい。いくつかの態様において、反応ガスの空間速度は、約5〜約15h-1の範囲、例えば約7〜約12h-1であってもよい。
【0027】
空間速度、反応温度、および反応圧は反応結果および方法の性能に影響をおよぼし得、したがって所与の適用のための反応方法の特定の局面を最適化するように選択してもよい。
【0028】
反応器10内で起こる反応の結果、芳香族炭化水素および水素ガスなどの他の生成物が生じる。反応器10内で生成する可能性のある芳香族炭化水素には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン、スチレン、またはその混合物が含まれる。特に、選択された態様において、ベンゼン、トルエン、およびキシレンの1つまたは複数を生成するために反応条件を最適化してもよい。
【0029】
都合のよいことに、本明細書に記載の異なる触媒の組み合わせが提供され、反応器10内にある場合、触媒の1つだけを用いる方法に比べて、処理性能の改善が得られることもある。
【0030】
例えば、Mo/ZSM-5はエタン芳香族化反応を触媒する際に非常に効率的である。試験により、Mo/ZSM-5だけを用いた場合、100%のエタン変換が長時間にわたって得られ、ベンゼン収率は安定であったことが判明している。しかし、触媒が不活性化されると、ベンゼン収率は急速に低下した。これに比べ、Mo/MCM-22はメタン芳香族化反応に対してより効率的であることが明らかにされている。Mo/MCM-22だけを用いた場合、ベンゼン収率は比較的高いレベルで一定の期間維持されうるが、この触媒はエタン芳香族化反応に対しては低い活性を示した。
【0031】
試験により、Mo/ZSM-5触媒およびMo/MCM-22触媒の組み合わせを天然ガス芳香族化反応のために用いた場合、エタンおよびメタンの両方からのベンゼン、トルエンおよびキシレン生成物への変換性能は、これらの触媒のいずれか1つを用いる場合に比べて、改善または最大化されうることが明らかにされている。
【0032】
任意の特定の理論に限定されることなく、Mo/MCM-22はメタンを芳香族化合物に効率的に変換しうると予想される。この変換中に、いくらかのエタンが生成されうる。生成した、または未反応の(注入反応ガス中に存在する場合)エタンは、Mo/ZSM-5に接触すれば、芳香族化合物へと効率的に変換されうる。その結果、方法の全体の性能は増強されうる。試験結果から、ベンゼン収率および触媒安定性はいずれも、Mo/ZSM-5およびMo/MCM-22の両方を用いた場合に増大しうることが示された。
【0033】
本発明の一態様により、1種類の触媒を用いるメタンの非酸化的デヒドロ芳香族化のための通常の方法に比べて、ベンゼン収率は150時間の処理期間の間に30%増大すると予想することができる。
【0034】
理解されうるとおり、Mo/MCM-22をメタン芳香族化の触媒に関してより効率的または活性である別の触媒で置き換え、Mo/ZSM-5をエタン芳香族化の触媒に関してより効率的または活性である別の触媒で置き換えた場合、同様の結果または改善が予想される。例えば、細孔チャネルサイズがMCM-22またはZSM-5のサイズと類似のゼオライト構造を有する他の触媒は、選択された態様において適切な触媒でありうる。適切な触媒はそれぞれMCM-22またはZSM-5のものと類似の異なる細孔構造を有していてもよい。異なる細孔構造を、触媒活性に対するそれらの効果に基づいて選択してもよい。いくつかの態様において、触媒は約1%〜約15%のMo負荷、および25〜45のSi/2Al比を有していてもよい。
【0035】
前述の議論を考慮して、反応ガスがまず触媒16と接触し、次いで触媒18と接触する様式で触媒を配置するなど、性能を最適化するように触媒床12内の触媒を配置してもよい。
【0036】
しかし、いくつかの態様において、天然ガスなどの反応ガスがまず触媒18と接触し、次いで触媒16と接触する場合にも、性能改善を得ることができよう。
【0037】
選択された態様において、触媒16および18をあらかじめ混合してもよく、混合物を各触媒のための分離区画のない触媒床12に設置してもよい。
【0038】
前述の任意の配置において、触媒16および触媒18の重量比は約1:1であってもよく、または1:10〜10:1などの別の値であってもよい。比は反応性能の特定の局面を最適化するよう選択してもよく、または所与の適用に対する他の考慮事項のために選択してもよい。
【0039】
触媒を活性化し、性能を改善するために、反応ガスを導管14を通過させる前に触媒を前処理にかけてもよい。例えば、いくつかの態様において、触媒をプロパン存在下で少なくとも300℃、例えば450℃〜650℃、または475℃〜525℃の温度で加熱してもよい。前処理は、約10〜100分間、例えば約20〜40分間続けてもよい。触媒を、2009年7月23日公開のLiuらの国際公開公報第2009/091336号に記載のとおりに調製し、前処理してもよく、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。Mo/MCM-22触媒は以下の実施例に記載のとおりに調製してもよい。
【0040】
触媒を、コークス沈殿物を除去するための酸化処理などにより、不活性化後に再生してもよい。不活性化触媒の再生は有用であり得、いくつかの商業的適用において費用を減じることができる。
【0041】
現在理解されうるとおり、異なる態様において、触媒16および18はそれぞれ遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトであってもよい。第一の触媒(触媒16)のためのゼオライトはMCM-22ゼオライトに基づいていてもよい。第二の触媒(触媒18)のためのゼオライトはZSM-5ゼオライトに基づいていてもよい。文献中では、MCM-22は時にHMCM-22またはH-MCM-22と呼ばれ、ZSM-5は時にH-ZSM-5またはHZSM-5と呼ばれると記されている。第一の触媒のためのゼオライトは、MWW型の骨格を有する別のゼオライトであってもよく、第二の触媒のためのゼオライトは、MFI型の骨格を有する別のゼオライトであってもよい。例えば、国際公開公報第2009/091336号に記載の触媒、アルミノケイ酸塩、ゼオライトおよび金属修飾剤は選択に適した候補でありうる。その中に記載されている異なる成分の特定の組み合わせを、特定の適用に応じて選択し、用いてもよい。
【0042】
特に、適切な遷移金属はモリブデンでありうる。いくつかの態様において、モリブデンは他の金属よりも良好な性能を提供しうる。いくつかの態様において、タングステンまたはレニウムを用いてもよい。
【0043】
ゼオライト中の金属の負荷は、生成性能を最適化するよう選択してもよい。例えば、Moを用いる場合、その負荷は、約1重量%〜15%、例えば約3重量%〜約12重量%であってもよい。
【0044】
触媒の一方または両方は、10〜100の、例えば25〜45のSi/2Al比を有していてもよい。いくつかの態様において、この比は約30または約35であってもよい。比は所望の酸性度を提供するよう選択してもよい。
【0045】
異なるゼオライトおよび触媒の調製、ならびにメタンおよび他のアルカンのデヒドロ芳香族化のための通常の技術は、当業者であれば、本開示を考慮して、本開示のいくつかの態様において用いるために改変または適合させてもよい。そのような技術のいくつかが、背景の項に挙げる引用文献、および以下の引用文献中に開示されている:1979年2月13日公開のRollmanらの米国特許第4,139,600号;Rubinらの米国特許第4,954,325号;2001年5月29日発行のIchikawaらの米国特許第6,239,057号;2003年4月22日発行のAllisonらの米国特許第6,552,243号;および2011年2月17日公開のLaiらの米国特許第2011/0038789号、そのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
本明細書に記載の具体的態様は例示のためであることが理解されるべきである。これらの態様に対する様々な改変が可能で、当業者には明白であろう。
【0047】
本発明のいくつかの態様を、以下の非限定例によりさらに例示する。
【実施例】
【0048】
以下の実施例のために、通常の含浸技術に従い、ZSM-5およびMCM-22ゼオライトを含浸することによってそれぞれMo/ZSM-5およびMo/MCM-22を調製した。
【0049】
ZSM-5は、約30のSi/2Al比で、Zeolystから購入した。
【0050】
約35のSi/2Al比のMCM-22を以下のとおりに調製した。水酸化ナトリウム(0.18g)、無水アルミン酸ナトリウム(0.20g)、および蒸留水(27.60g)を混合物中で溶解するまで混合した。ヘキサメチレンイミン(HMI、1.73g)を混合物に加え、得られた混合物を約10分間撹拌した。Ludox HS-40コロイドシリカ(5.25g)およびMCM-22シード(0.04g)を加え、最終混合物(35ml)を室温で4時間撹拌した。混合物からゲルが形成され、オートクレーブに移し、Parr反応器(オーブン)内で150℃(30rpm)で14日間加熱した。生成物をろ過し、水にろ液のpHが9以下になるまで分散した。
【0051】
触媒をLiuらの国際公開公報第2009/091336号に記載の方法に従って前処理(活性化)し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
用いた天然ガスにおいて、主成分はメタンであった。天然ガスは少量のC2、C3、およびC4炭化水素やCO2、ならびに痕跡量のC5およびC6炭化水素も含んでいた。
【0053】
実施例I
天然ガスを反応ガスとして用い、図2に示す触媒床を通過させた。Mo/ZSM-5を触媒床の下部(すなわち、ガス流路の下流)に設置し、同量のMo/MCM-22を触媒床内のMo/ZSM-5の上部(すなわち、ガス流路の上流)に設置した。
【0054】
反応条件を、約650℃の温度、約0.1MPaの圧、および約7.5ml/分の天然ガス流速で維持した。非酸化的条件を提供するために、反応ガス中に酸化ガスは含まれなかった。
【0055】
代表的生成結果を図3に示す(「実施例I」と表示)。
【0056】
実施例II
本実施例において、反応ガス、用いた触媒および反応条件は、触媒床においてMo/ZSM-5を上部(上流)に設置し、Mo/MCM-22を下部(下流)に設置した以外は、実施例Iと同じであった。
【0057】
代表的生成結果を図3に示す(「実施例II」と表示)。
【0058】
実施例III
本実施例において、反応ガス、用いた触媒および反応条件は、触媒床においてMo/ZSM-5およびMo/MCM-22を互いに混合した以外は、実施例Iと同じであった。したがって、反応ガスは2つの触媒と流路のほぼ同じ位置で接触した。
【0059】
代表的生成結果を図3に示す(「実施例III」と表示)。
【0060】
実施例IV(比較)
本実施例において、反応ガスおよび反応条件は実施例Iと同じであった。しかし、Mo/ZSM-5だけを触媒床内に設置し、触媒として用いた。
【0061】
代表的生成結果を図3に示す(「実施例IV」と表示)。
【0062】
実施例V(比較)
本実施例において、反応ガスおよび反応条件は実施例Iと同じであった。しかし、Mo/MCM-22だけを触媒床内に設置し、触媒として用いた。
【0063】
代表的生成結果を図3に示す(「実施例I」と表示)。
【0064】
図3から明らかであるとおり、ベンゼン収率および触媒寿命はいずれも、Mo/MCM-22およびMo/ZSM-5の組み合わせを触媒として用いた場合に高かった。実施例I(Mo/MCM-22上流およびMo/ZSM-5下流)は最も高いベンゼン収率および触媒寿命を提供した(図3の三角で表すデータ点参照)。650℃でMo/MCM-22は最初は天然ガス中のメタンをベンゼンおよびエタンに効率的に変換し;次いで、生成したエタンおよび天然ガス中の未変換のエタンは下流のMo/ZSM-5触媒によりベンゼンに効率的に変換されると予想された。性能は実施例IIおよびIIIでも実施例IVおよびVに比べて改善されたが、改善は実施例Iほど明白ではなかった。
【0065】
本明細書における任意の範囲の値は所与の範囲内の任意の中間値または下位範囲を具体的に含むことが意図され、すべてのそのような中間値および下位範囲は個別に、かつ具体的に開示されることが理解されるであろう。
【0066】
「1つの(a)」または「ある(an)」なる用語は「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」を意味することが意図され、任意の単数形は本明細書において複数形を含むことが意図されることも理解されるであろう。
【0067】
その任意の変形を含む「含む]なる用語は変更可能であることが意図され、特に記載がないかぎり「含むが、それらに限定されるわけではない」ことを意味することもさらに理解されるであろう。
【0068】
本明細書において項目のリストが最後の項目の前に「または」として示される場合、挙げられた項目の任意の1つまたは挙げられた項目の2つ以上の任意の適切な組み合わせを選択し、使用してもよい。
【0069】
当然のことながら、前述の態様は例示のためにすぎず、いかなる様式でも限定的でないことが意図される。記載した態様は形状、部分の配置、操作の詳細および順序の多くの改変が可能である。むしろ、本発明は特許請求の範囲によって規定される、その範囲内のすべてのそのような改変を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0070】
10:反応器
12:触媒床
14:導管
16:触媒
18:触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを含む加熱反応ガスを第一の触媒および第二の触媒と接触させて芳香族炭化水素の生成を触媒する段階を含む、方法であって、
該第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して該第二の触媒よりも活性であり、かつ該第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して該第一の触媒よりも活性である、方法。
【請求項2】
前記第一および第二の触媒の少なくとも一方が、遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一の触媒が第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであり、かつ前記第二の触媒が第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第一の遷移金属および前記第二の遷移金属のそれぞれがモリブデンである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第一および第二の触媒の1つずつが約3〜約12重量%のモリブデンを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第一および第二の触媒の1つずつが25〜45のSi/2Al比を有する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記加熱反応ガスを約600〜約700℃の温度まで加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記接触の前に、前記第一および第二の触媒をプロパン存在下で少なくとも300℃まで加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記第一および第二の触媒の重量比が約1:1である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
以下を含む、メタンを含む反応ガスから芳香族炭化水素を生成するための反応器:
該反応ガスをその内部で反応させるための反応ゾーンを画定する導管;ならびに
該反応ゾーン内の第一の触媒および第二の触媒であって、該第一の触媒はメタンの芳香族化の触媒に関して該第二の触媒よりも活性であり、かつ該第二の触媒はエタンの芳香族化の触媒に関して該第一の触媒よりも活性である、第一の触媒および第二の触媒。
【請求項11】
前記第一および第二の触媒の少なくとも一方が、遷移金属によって修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、請求項10記載の反応器。
【請求項12】
前記第一の触媒が第一の遷移金属によって修飾されたMCM-22ゼオライトであり、かつ前記第二の触媒が第二の遷移金属によって修飾されたZSM-5ゼオライトである、請求項11記載の反応器。
【請求項13】
前記第一の遷移金属および前記第二の遷移金属のそれぞれがモリブデンである、請求項12記載の反応器。
【請求項14】
前記第一および第二の触媒の1つずつが約3〜約12重量%のモリブデンを含む、請求項13記載の反応器。
【請求項15】
前記第一および第二の触媒の1つずつが25〜45のSi/2Al比を有する、請求項13記載の反応器。
【請求項16】
前記第一および第二の触媒の重量比が約1:1である、請求項10記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67616(P2013−67616A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208433(P2012−208433)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】