説明

触媒の製造方法および触媒小成形体

【課題】製造コストが大粒径の触媒とほぼ同等に抑えられ、かつ粒径の揃った小粒径の触媒を得る製造方法と多管式反応器に充填するのに適した小粒径の触媒を提供する。
【解決手段】粒径5〜10mmの触媒大成形体1を、整粒機2を用いて小粒化し、粒径1〜4mmの触媒小成形体10を得る。整粒機2は、回転するローター21と、ローター21の周囲に配置された網25とを備えている。この整粒機2のローター21と綱25の間に触媒大成形体1を供給すると、ローター21によって触媒大成形体1が網25に押し付けられて粉砕され、網25の目を通るときに、ほぼ同じ粒径に整粒される。このため、粒径がよく揃い歩留りよく触媒小成形体10が得られる。触媒大成形体1から小粒化するので、専用の製造ラインを設ける必要がなく安価に製造できる。また、人手によって粉砕するよりもはるかに生産性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法および触媒小成形体に関する。さらに詳しくは、多管式反応器に充填して用いる触媒のうち小粒に整粒した触媒小成形体の製造方法と、それによって得られた触媒小成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
多管式反応器は、多数本の反応管を槽内に束ねて入れ、各反応管には触媒を充填しておいて、一端から原料ガスを入れ、発熱反応させて他端から反応生成物含有ガスを取り出す装置である。
この多管式反応器の内部での反応は、一般的に気相反応として実施され、生成物の品質等は各反応管内の流路に沿った温度に左右される。このため、多数本の反応管のうちの幾つか反応管には熱電対などの温度計測器を挿入して、温度管理できるようにしている。そして、この温度計測器の挿入は、反応管内の軸方向における適所で固定したり、反応管内に挿入した保護管内で移動自在に保持されるもの等がある。
いずれの挿入形式にしても、温度計測器の挿入部分では、反応管内の流路断面積を局所的に変化させることになる。
【0003】
上記のような多管式反応器において、温度計測器を挿入していない反応管は、流路断面積の変化がないので、全て大きい粒径の触媒の充填しておけば、充填密度も一定になり、反応管毎の圧力差が生じない。
しかし、温度計測器を挿入している反応管では、大きい粒径の触媒を充填しただけであると、計測器挿入部分に隙間が生じやすく、温度計測器を挿入していない反応管に比べて圧力損失が小さくなる。
この場合、温度計測器を挿している反応管と挿入していない反応管とで、原料ガスの通過時間が異なることから反応温度にも相違が生じ、各反応管によって得られる反応生成物の品質が異なってしまう等の不具合が生じる。
【0004】
この問題を解決するため、大粒径の触媒の外に圧力調整用の小粒径の触媒を用意して充填することが指摘されている(特許文献1参照)。しかし、わざわざ異なる粒径の異なる触媒を用意することは、大変な手間がかかり費用対効果の面で現実的でない。たとえば、大粒径の通常用いる触媒の外に小粒径の触媒をわざわざ製造することは単位数量当りのコストが大変高いものとなる。なぜなら、大粒径の触媒も小粒径の触媒も、製造上の手間は変らないにも拘らず、必要数量は段違いに異なるからである。たとえば、代表的な多管式反応管において大粒径の触媒が約10t必要としたら、小粒径の触媒は、わずか4kg程度に過ぎないからである。
かといって、大粒径の触媒を人がハンマーで砕いて作るとなると、1時間で150gできるのがやっとであり、しかも粒径は揃わないので、はなはだ作業性が悪い。
【0005】
【特許文献1】特開2003−1094
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、製造コストが安価であり、かつ粒径の揃った小粒径の触媒を得る製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、多管式反応器に充填するのに適した小粒径の触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の触媒の製造方法は、多管式反応器に充填する触媒の製造方法であって、粒径5〜10mmの触媒大成形体を、整粒機を用いて小粒化し、粒径1〜4mmの触媒小成形体を得ることを特徴とする。
第2発明の触媒の製造方法は、第1発明において、前記整粒機が、回転するローターと、該ローターの周囲に配置された網とを備えており、前記ローターと前記綱の間に触媒大成形体を供給して粉砕し、粉砕された触媒を前記網から排出させて小粒化し触媒小成形体を得ることを特徴とする。
第3発明の触媒小成形体は、多管式反応器に充填する触媒であって、粒径5〜10mmの触媒大成形体を、整粒機を用いて小粒化して、粒径1〜4mmにされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、触媒大成形体から小粒化するので、専用の製造ラインを設ける必要がなく非常に安価に製造できる。また、整粒機を用いるので、得られる触媒小成形体の粒径を揃えることができる。さらに、人手によって粉砕するよりもはるかに生産性が高い。
第2発明によれば、ローターによって網に押し付けられた触媒大成形体が粉砕されるが、網の目を通るときに、ほぼ同じ粒径に整粒されるので、粒径がよく揃い歩留りよく触媒小成形体が得られる。
第3発明によれば、粒径が1〜4mmに揃えられているので、反応管の計測器挿入部における流路断面積の狭い部分にも、大きな隙間が生じないように詰め込むことができ、反応管の他の部分における触媒大成形体を充填した部分とほぼ同等のガス通過抵抗にすることができる。このため、多管式反応管の全ての反応管における反応温度が均質化し、得られる反応生成物の品質を均等化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の触媒の製造方法を示す工程図である。
本発明は、触媒小成形体を製造する方法であり、図1に示すI〜IIIの3工程により行われる。以下、順に説明する。
【0010】
I:図1のIに示すように本発明の特徴は、触媒大成形体1を用いることにある。
本明細書でいう触媒大成形体10は、従来より多管式反応器の各反応管に触媒として充填されていた大きさの触媒をいう。具体的には、粒径5〜10mmの範囲の粒体であるが、より代表的なものは直径も長さも5〜6mmの円筒形の触媒である。なお、触媒の材質は生成物質によって異なるが、ヘテロポリ酸、Mo−Bi系複合酸化物、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライトなどを例示できる。
【0011】
II:本発明では上記の触媒大成形体1を小粒化するが、その作業に整粒機2を用いる。整粒機2を用いる利点は後に詳述するが、作業能率がよく、粒径の揃った小粒化が行える点にある。
【0012】
III:前記の整粒機2で小粒化されたものが触媒小成形体10となる。整粒機2の網を通過させることにより小粒化されるが、粒径が、ふるいの目開きで1〜4mmのものとされる。具体的には、2.8mm以上、3.35mm以下のものを例示できるが、これに限定されるものではない。
得られる触媒小成形体10は、後述するように整粒機2のローターで砕かれ網を通過する間に円筒形状は崩されるので、形は不均衡となるが、粒径は以上の寸法にほぼ揃えられる。
【0013】
図2には、本発明で用いる整粒機の好ましい一例を示している。
整粒機2の基本的な構成は、回転するローター21と網25とからなる。ローター21は棒状のインペラー22を適数本、2枚の円板23,23の間に円周方向において等間隔に取付けたものである。このローター21は、モーター等の適宜の駆動源で回転される。
前記網25は前記ローター21の約下半分を覆うように取付けたもので、側面視で略U字状に配置されている。この網25には適宜の大きさの孔がマス目状に形成されている。孔の大きさは得ようとする触媒小成形体10に合わせて選択すればよい。
【0014】
図示の整粒機2はローター21と網25を横向きに配置した横型であるが、ローター21と網25を縦向きに配置した竪型であってもよい。本発明において整粒機2のタイプは任意であり、触媒大成形体10を粒径を揃えて小さく砕けるものであれば、とくに制限なく用いることができる。
【0015】
上記の整粒機2では、触媒大成形体1がインペラー22と網25の間に入り、インペラー22で打ち砕かれることによって小粒化され、かつ網25の孔を通ることによって孔径以下の大きさの粉砕物のみが取り出される。このようにして、一定の粒径以下に揃えられた触媒小成形体10が得られる。なお、余りに小さい粉砕物を除きたい場合は、適宜のふるいで微小粒を除き、一定の粒径以上、一定の粒径以下のものに揃えればよい。
【0016】
以上のように本発明によれば、触媒大成形体1から小粒化するので、専用の製造ラインを設ける必要がないので安価に製造できる。すなわち、触媒大成形体1とほぼ同程度の製造価格に抑えることができる。
また、整粒機2を用いるので、人手によって粉砕するよりもはるかに生産性が高い。そして、ローター21によって網25に押し付けられた触媒大成形体1が粉砕されるが、網の目を通るときに、ほぼ同じ粒径に整粒されるので、粒径がよく揃い歩留りよく触媒小成形体10が得ることができる。
【0017】
以上の製法により得られた触媒小成形体10は、反応管の計測器挿入部における流路断面積の狭い部分にも、大きな隙間が生じないように詰め込むことができる。このため、反応管の他の部分における触媒大成形体1を充填した部分とほぼ同等のガス通過抵抗にすることができる。このように触媒小成形体10を用いると、多管式反応器における温度計測器を挿入している反応管と挿入していない反応管とを含めた全ての反応管における反応温度が均質化するので、得られる反応生成物の品質を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の触媒の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の製造方法で用いる整粒機2の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 触媒大成形体
2 製粒機
10 触媒小成形体
21 ローター
25 網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多管式反応器に充填する触媒の製造方法であって、
粒径5〜10mmの触媒大成形体を、整粒機を用いて小粒化し、
粒径1〜4mmの触媒小成形体を得る
ことを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項2】
前記整粒機が、回転するローターと、該ローターの周囲に配置された網とを備えており、
前記ローターと前記綱の間に触媒大成形体を供給して粉砕し、粉砕された触媒を前記網から排出させて小粒化し触媒小成形体を得る
ことを特徴とする請求項1記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
多管式反応器に充填する触媒であって、
粒径5〜10mmの触媒大成形体を、整粒機を用いて小粒化して、粒径1〜4mmにされた
ことを特徴とする触媒小成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−220053(P2009−220053A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68789(P2008−68789)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】