触媒インバーター用保持材
【課題】保護膜が形成された保持材において、保護膜に延伸性を付与して、触媒担体への装着性を向上させる。
【解決手段】触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【解決手段】触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーターに組み込まれる触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材(以下、単に「保持材」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、周知の如く、そのエンジンの排気ガス中に含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等の有害成分を除去するために、排気ガス浄化用触媒コンバーターが積載されている。図12は、触媒コンバーターの一例を模式的に示した断面図である。この触媒コンバーター10では、内燃機関から排出された排気ガスが導入される導入管16が金属製ケーシング11の一端部に接続されるとともに、他端部には、触媒担体12を通過した排気ガスを外部に排出する排出管17が設けられている。また、金属製ケーシング11の内部には、触媒担体12が保持材13を介して設置されている。
【0003】
触媒担体12は、例えばコージェライト等からなる円筒状のハニカム状成形体に貴金属触媒等が担持されたものが一般的であるため、保持材13には、自動車の走行中に振動等によって触媒担体12が金属製ケーシング11に衝突して破損しないように触媒担体12を安全に保持する機能と、触媒担体12と金属製ケーシング11との間隙から未浄化の排気ガスが漏れないようにシールする機能とを兼ね備えることが必要とされている。そこで、現在では、アルミナ繊維やムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等の無機繊維を、有機バインダーを用いて所定厚さのマット状に成形したものが主流となっている。また、その形状は、図13(A)に示す平面形状を呈しており、平板状の本体部41の一端には凸部42が形成されており、他端には凸部42と嵌合可能な形状の凹部43が形成されている。そして、図13(B)に示すように、触媒担体12の外周面に本体41を巻き付け、凸部42と凹部43とを係合させることで触媒担体12に巻装される。
【0004】
触媒担体12は、保持材13を巻装した状態で金属ケーシング11に圧入(キャニング)され、触媒コンバーター10とされる。このキャニングの作業性を高めるために、保持材13のケーシング側表面(外周面)にフィルム、テープ、不織布、樹脂コーティングといった保護膜50を付加して摩擦抵抗を小さくすることが行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32710号公報
【特許文献2】特開平8−61054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような保護膜50が形成された保持材13は、図13(A)に示すような無機繊維からなる平板状のマットの一方の表面に保護膜50を形成したものであり、触媒担体12に巻装するためには、保護膜50を外側にして凸部42と凹部43とが係合するように湾曲する必要がある。そのため、保護膜50は、図中の左右方向に延伸されるが、フィルムやテープ、不織布の場合は一枚の連続体であるため延伸し難く、場合によっては破断する可能性がある。また、樹脂コーティングを施した場合は、保持材13を湾曲させた際に湾曲方向と直交するように(触媒担体12の軸線方向に沿って)多数の亀裂が生じる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、保護膜が形成された保持材において、保護膜に延伸性を付与して、触媒担体への装着性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は下記の触媒コンバーター用保持材を提供する。
(1)触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(2)保護膜の坪量が、突起または皺が形成される前の坪量に対して1.05〜2倍であることを特徴とする上記(1)記載の触媒コンバーター用保持材。
(3)保護膜が、開口を有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の触媒コンバーター用保持材。
(4)保護膜における開口率が10〜45%であることを特徴とする上記(3)記載の触媒コンバーター用保持材。
(5)断面扁平形状の触媒担体用であり、かつ、前記触媒担体の断面形状の曲率が最大である部分を覆う部分のみに保護膜が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(6)保護膜の坪量が1〜30g/m2であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(7)保護膜がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはセルロースのうち少なくともいずれか1つからなることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(8)保持材全体の有機成分が、該保持材全量の5質量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保持材は、保護膜を有するためキャニング性に優れるとともに、保護膜が延伸性に優れるため触媒担体への装着性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の触媒コンバーター用保持材の保護膜表面を拡大して示す模式図であり、保護膜に突起を形成した例である。
【図2】本発明の触媒コンバーター用保持材の保護膜表面を拡大して示す模式図であり、保護膜に皺を形成した例である。
【図3】保護膜に開口を形成した例を示す図である。
【図4】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図5】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図6】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図7】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図8】断面扁平形状の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図9】図8の保持材を平面に展開した斜視図である。
【図10】断面扁平帰形状の他の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図11】断面扁平形状の他の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図12】触媒コンバーターの一例を示す断面図である。
【図13】(A)従来の触媒コンバーター用保持材の平面図、(B)触媒担体に巻装した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の保持材13の一部を示す斜視図であるが、その全体形状は図13(A)に示したような無機繊維製の平板状マットからなる基材45の一方の面に、保護膜50Aを接合したものである。また、図13(A)、(B)に示したように本体部41の長手方向の両端には凸部42と凹部43が形成されており、触媒担体12に巻装した際に両者が係合するようになっている(何れも図示略)。
【0013】
但し本発明では、保護膜50Aに、図1に示すような突起51、あるいは図2に示すような皺52が全面に形成している。
【0014】
図1において、突起51の形状には制限はなく、図示されるような断面波形の他、半球状、円錐状、柱状であってもよい。突起51の寸法にも制限はないが、延伸性を考慮すると、裾部分の幅もしくは径Lは0.05〜1mmが好ましく、ピッチ(頂点間隔)Pは0.01〜1mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。また、突起51は、格子状に規則的に形成されてもよいし、ランダムに形成されてもよい。更には、突起51は全て同じ寸法(高さHや幅L)であってもよいし、個々に異なっていてもよい。尚、突起51の形成は、突起を有する押板を押し付ける等して行うことができる。突起51は、あらゆる水平方向に延伸でき、後述する皺52のように異方性がないため、施工性に優れる。
【0015】
図2において、皺52は保持材13を湾曲したときに延伸する方向(図中延伸方向として示す)に対して垂直(図中垂直方向として示す)に延びるように形成されていればよく、同図(A)に示すように保持材13の全幅に形成されていてもよいし、同図(B)に示すように断続的に、更にはランダムに形成されてもよい。また、皺52は、その断面形状は波形の他、三角形等であってもよく、寸法にも制限はない。更には、稜線Kは、直線でもよいし、湾曲していてもよい。尚、皺52の形成は、クレープ紙の製造に使用されるような、通常の皺加工により行うことができる。
【0016】
このように突起51や皺52を形成した保護膜50Aでは、表面積が大きくなるため、突起51や皺52が形成される前の坪量よりも大きくなる。この坪量の増加分は、延伸性を考慮すると、5%(1.05倍)〜100%(2倍)が好ましく、5%(1.05倍)〜30%(1.3倍)がより好ましい。坪量の増加分が多いほど保護膜50Aの延伸度合も高まるが、坪量の増加分が100%を超えると、保持材13を触媒担体12に巻装した状態で、延伸分を差し引いた過剰の保護膜50Aが波打つように残存し、キャニングの際に抵抗となる。また、後述するように、保護膜50Aを基材45に接合する方法として熱融着を行うことが好ましいが、坪量の増加分が増すほど突起51や皺52を残した状態で熱融着するのが困難になる。
【0017】
また、坪量の増加分が多くなるほど、保持材全体としての有機成分も多くなる。触媒コンバーターでは、浄化効率を高めるために、触媒担体12を1000℃近くまで加熱するが、有機成分は容易に分解、焼失してCO2やCO、各種の有機系ガスが発生し、特に、触媒コンバーターの作動初期に多量に発生する。排ガス規制は厳しくなる一方であり、有機成分に由来するCO2等が多く発生し好ましくない。また、最近ではエンジンの電子制御が進んでいるが、本来の排気ガスに関係の無いCO2が存在すると、排気系のセンサー類を誤作動させてエンジンの電子制御にも悪影響が出てくる。このような不具合を防ぐために、メーカーは出荷前に焼成処理して有機成分を焼失して除去する作業を行っている。そのため、保護膜50Aの坪量の増加を抑えることが好ましい。
【0018】
このように、保護膜50Aに突起51や皺52を形成することにより、保持材13を触媒担体に巻装する際に(図13(B)参照)、保護膜50Aが湾曲方向に延伸するため、装着作業がしやすくなる。
【0019】
尚、保護膜50Aの材質としては、従来公知のもので構わず、例えば、ポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなるフィルムや不織布が挙げられる。また、セルロースであってもよい。これらの中でも、低コストで入手可能で、延伸しやすく、強度があることなどから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びセルロース製の不織布が好適である。
【0020】
保護膜50Aの厚さには制限はないが、薄くなりすぎると膜強度が低くなり、キャニング時や触媒担体12への巻装後に破断しやくなる。また、厚くなりすぎると延伸し難くなり、更には有機成分も多くなる。膜強度としては、引張強度で0.5N/30mm以上であることが好ましく、2N/30mm以上であることがより好ましい。尚、引張強度は、JIS P 8813に準拠して測定される。
【0021】
また、保護膜50Aに開口を形成してもよい。こうすることにより、有機成分をより少なくすることができる。開口の形成パターンには制限はないが、例えば図3に示すように、開口60を等間隔で形成したり、図4に示すように千鳥格子状に形成してもよい。また、図示は省略するが、ランダムに形成してもよい。更には、図5に示すように、大きさの異なる円を組み合わせでもよい。
【0022】
開口60は、円形の他にも図6に示すように楕円形であってもよい。楕円の長軸は、図示されるように保持材13の長手方向(紙面左右方向)に沿って形成されてもよいし、長手方向と直交(紙面上下方向)するように形成されていてもよいし、長手方向に斜め方向に沿って形成されていてもよい。保持材13は、圧入の際にその幅方向が圧入方向になるため、長軸が保持材13の幅方向に一致するように開口60を形成することにより圧入しやすくなる。一方、楕円の長軸が保持材13の長手方向に一致するように開口60を形成することにより、触媒担体12に巻装する際の湾曲がしやすくなる。また、図示されるように、大きさの異なる楕円を組み合わせてもよい。
【0023】
また、開口60は、最小部の長さ、即ち図3〜5に示すような円形の場合はその直径、図6に示すような楕円の場合はその短軸が5mm以上であることが好ましく、10〜15mmであることがより好ましい。図5や図6に示すように大きさの異なる開口60が混在している場合は、最小の開口における直径または短軸を10mm以上とする。圧入の際に開口60の周縁が抵抗となるため、開口径が小さくなるほど開口60をより多く形成しなければならず、圧入時の摩擦抵抗が大きくなる。一方、開口径が30mmを超えると、基材45が多く露出して圧入時の摩擦抵抗が大きくなる。
【0024】
図3に示すように、隣接する開口60の間隔Dは、3mm以上であることが好ましく、5mmより大きく15mm以下であることがより好ましい。隣接する開口60の間隔が狭くなるほど開口間の保護膜50Aが幅細になるため、圧入時に保護膜50Aが破断しやすくなる。また、開口60の間隔が広くなるほど開口間の保護膜50Aが幅広になるため、圧入時の保護膜50Aの破断は抑えられるものの、開口60を設けることの効果が低下する。
【0025】
図7に示すように、保持材13の本体部41の凸部42の周辺領域47、並びに凹部43の周辺領域48には開口60を形成しないことが好ましい。図13(B)に示すように、凸部42と凹部43は、保持材13を触媒担体12に巻装した際に係合する部分であり、係合端縁に段差があると圧入時に金属ケーシングの内面に引っ掛かることがある。係合端縁に段差がある場合でも、保護膜50Aにより低摩擦抵抗化されて圧入しやすくなるが、開口60があると基材45が露出してその分摩擦抵抗が大きくなる。そのため、凸部42及び凹部43の周辺部分47、48のみに開口60を形成しないことにより、できるだけ摩擦抵抗の低減化を図ることができるようになる。そのため、周辺部分47、48が広くなるほど圧入時の摩擦抵抗を小さくすることができるが、開口60を設けることの効果が低下するため、周辺部分47、48の広さとしては、図中の寸法aが保持材全幅の50〜100%、bが保持材全長の5〜9%、cが保持材全長の5〜9%、dが保持材全幅の50〜100%であることが好ましい。
【0026】
上記何れの場合も、開口60の開口率、即ち、保護膜50Aの全面積に占める開口60の割合は、10〜45%であることが好ましく、20〜35%であることがより好ましい。開口率が小さくなるほど、保護膜本来の作用の低下が少ないものの、開口60を設けることの効果が低下する。一方、開口率が大きくなるほど、保護膜本来の作用の低下が大きくなり、更に基材45が露出してその分摩擦抵抗が大きくなりキャニング性が悪化する。従って、開口60の大きさ、開口間の間隔、大きさの異なる開口の組み合わせ、形成パターン等を調整して上記の開口率範囲とする。
【0027】
上記保護膜50Aは、坪量が1〜30g/m2であることが好ましく、有機成分を少なくする観点からは1〜10g/m2、1〜5g/m2であることがより好ましい。このような坪量になるように、膜厚や、突起51や皺52の形成様式、開口60を調整する。
【0028】
保護膜50Aを基材45に接合するには、接着剤を用いたり、ホットプレスにより熱融着する方法等が可能である。但し、接着剤を用いる方法では有機分が多くなり、また接着剤が開口60の周縁、更に不織布の場合は繊維の隙間からはみ出て外観不良になりやすいため、ホットプレスが好ましい。
【0029】
尚、基材45には制限が無く、例えば、無機繊維と少量の有機バインダーとを湿式成形した後、圧縮した状態で乾燥した圧縮マット、無機繊維を集綿したものをニードル加工したブランケットからなるマット、無機繊維とバーミキュライト等の膨張材とを湿式成形した膨張マット等のマット材等を使用できる。
【0030】
基材45の全体形状にも制限がなく、例えば図13(A)に示したように、平板状の本体部41の一端に凸部42を形成し、他端に凸部42と嵌合可能な形状の凹部43を形成した形状とすることができる。尚、凸部42及び凹部43の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部42及び凹部43の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0031】
無機繊維としては、従来から保持材に用いられている種々の無機繊維を用いることができる。例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等を適宜使用できる。より具体的には、アルミナ繊維としては、例えばAl2O3が90重量%以上(残りはSiO2分)であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その平均繊維径が3〜10μm、ウエットボリューム300cc/5g以上が好ましい。ムライト繊維としては、例えばAl2O3分/SiO2分重量比が70/30〜83/17程度のムライト組成であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その平均繊維径が3〜10μm、ウエットボリューム300cc/5gが好ましい。その他のセラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維を挙げることができるが、何れも従来から保持材に使用されているもので構わない。また、ガラス繊維やシリカ繊維、ロックウール、生体溶解性無機繊維を配合してもよく、いずれか2つ以上を組み合わせてもよい。
【0032】
尚、上記ウエットボリュームは、次の方法で算出される。
1)乾燥した繊維材料5gを少数点2桁以上の精度を有する秤で計量する。
2)計量した繊維材料を500mlのガラスビーカーに入れる。
3)2)のガラスビーカーに温度20〜25℃の蒸留水を400ml程度入れ、攪拌機を用いて繊維材料を切断しないように慎重に攪拌し、分散させる。この分散は超音波洗浄機を使用してもよい。
4)3)のガラスビーカーの中味を1000mlのメスシリンダーに移し、目盛で1000ccまで蒸留水を加える。
5)4)のメスシリンダーの口を手等で塞ぎ、水が漏れないように注意しながら上下逆さまにして攪拌する。これを計10回繰り返す。
6)攪拌停止後、室温下で静置し、30分経過後の繊維沈降体積を目視で計測する。
7)上記操作を3サンプルについて行い、その平均値を測定値とする。
【0033】
有機バインダーも公知のもので構わず、ゴム類、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用できる。具体的には、ゴム類の例としては、n−ブチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンゴム等がある。水溶性有機高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がある。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の単独重合体及び共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等がある。熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等がある。また、これら有機バインダーのいずれか2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、基材45には、有機バインダーとしてパルプ等の有機繊維を少量配合することも可能である。有機繊維は細く長いものほどバインド力が高く、高度にフィブリル化したセルロースやセルロースナノファイバー等が好ましい。具体的には、繊維径が0.01〜50μm、繊維長が1〜5000μmであることが好ましく、繊維径が0.02〜1μm、繊維長が10〜1000μmであることがより好ましい。
【0035】
こうした有機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。有機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。有機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、10質量部を越える場合は、消失する際に排ガス規制を上回ってしまう可能性がある。有機有機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜3質量部である。
【0036】
有機バインダーと無機バインダーを併用してもよい。有機バインダーと無機バインダーの併用によれば、使用時おける有機成分の揮発が起因する上述した不具合を回避するために、有機バインダーの使用量を少なくした場合であっても、無機繊維を良好に結束でき、従来と同等の厚さを維持できる触媒コンバーター用保持材を提供することができる。こういった無機バインダーは公知のもので構わず、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、水ガラス、ベントナイトといった粘土系などが挙げられる。なお、これらの無機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。無機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限ないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。無機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。無機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部未満である。
【0037】
保持材全体、即ち基材45と保護膜50Aとの合計における有機分は、少ないほど好ましい。具体的には、有機分は保持材全量の5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下とすることもできる。そのため、基材45においては、有機バインダーや有機繊維は圧縮状態を維持できるように極く少量に留めることが好ましい。
【0038】
尚、上記は触媒単体が断面円形である場合について述べたが、触媒担体は断面が楕円やトラック形等のように扁平の場合もある。その場合は、保持材13を装着する際に、保持材13が大きく湾曲する部分にのみ突起51や皺52を形成してもよい。
【0039】
例えば、図8は断面楕円形状の触媒担体12に、保持材13を巻装した状態を示している。保持材13は、触媒担体12の表面の短径Yとの一方の交点C1の直上で凸部42と凹部43が係合しており、触媒担体12の表面の長径Xとの交点C2の両側で、所定長さにわたり大きく湾曲している。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、交点C2の両側部分50A1にのみ突起51や皺52(図示略)を形成することにより、保護膜50Aが延伸して湾曲しやすくなる。尚、図9は、このような保持材13を平面に展開した状態を示している。
【0040】
図10は、断面トラック形状の触媒担体12に保持材13を巻装した状態を示している。保持材13は、触媒担体12の一方の平面部分12Aの中央部直上での凸部42と凹部43が係合しており、触媒担体12の湾曲部分12Bを覆うように大きく湾曲して延伸量も大きくなっている。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、湾曲部分12Bを覆う部分50A2にのみ突起51や皺52(図示略)を形成する。
【0041】
図11は、楕円の長径Xの両端を、この長径Xと直交するように切断した断面形状の触媒担体12に保持材13を巻装した状態を示している。保持材13の凸部42と凹部43は、触媒担体12の表面の短径Yとの一方の交点C1の直上で係合している。また、触媒担体12は、長径Xを切断する線と元の楕円との交点C3が屈曲しており、保持材13もこの交点C3を覆う部分が屈曲する。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、交点C3を覆う部分50A3にのみ突起51や皺52(図示略)を形成する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0043】
(保持材作製)
坪量5g/m2で、幅70mmのポリエチレン不織布を用い、皺加工を施して坪量の増加分を表1に示すように調整して保護膜を作製した。尚、坪量の増分0%は、皺加工を施す前の不織布をそのまま使用したことを示す。
【0044】
そして、各保護膜を、長手方向長さ530mm、幅方向長さ144mmで、坪量1200g/m2のアルミナ繊維製基材の片面にホットブレスにより接合して保持材とした。尚、坪量増加分が200%の保護膜は、ホットプレスによる接合が困難であり、接着剤を用いて接合した。
【0045】
(巻装性評価)
直径が異なる鋼管を用意し、直径が大きい鋼管から順に保持材を巻き付け、巻き付け可能な最小の直径を求めた。結果を表1に併記するが、坪量の増加分が100%以下となるように皺加工を施した保護膜を接合した保持材は、皺加工を施していない保護膜を接合した保持材に比べて小径の鋼管に巻き付けることができており、触媒担体への巻装性が向上することは明らかである。
【0046】
【表1】
【符号の説明】
【0047】
11 金属製ケーシング
12 触媒担体
13 保持材
45 基材
50、50A 保護膜
51 突起
52 皺
60 開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーターに組み込まれる触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材(以下、単に「保持材」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、周知の如く、そのエンジンの排気ガス中に含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等の有害成分を除去するために、排気ガス浄化用触媒コンバーターが積載されている。図12は、触媒コンバーターの一例を模式的に示した断面図である。この触媒コンバーター10では、内燃機関から排出された排気ガスが導入される導入管16が金属製ケーシング11の一端部に接続されるとともに、他端部には、触媒担体12を通過した排気ガスを外部に排出する排出管17が設けられている。また、金属製ケーシング11の内部には、触媒担体12が保持材13を介して設置されている。
【0003】
触媒担体12は、例えばコージェライト等からなる円筒状のハニカム状成形体に貴金属触媒等が担持されたものが一般的であるため、保持材13には、自動車の走行中に振動等によって触媒担体12が金属製ケーシング11に衝突して破損しないように触媒担体12を安全に保持する機能と、触媒担体12と金属製ケーシング11との間隙から未浄化の排気ガスが漏れないようにシールする機能とを兼ね備えることが必要とされている。そこで、現在では、アルミナ繊維やムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等の無機繊維を、有機バインダーを用いて所定厚さのマット状に成形したものが主流となっている。また、その形状は、図13(A)に示す平面形状を呈しており、平板状の本体部41の一端には凸部42が形成されており、他端には凸部42と嵌合可能な形状の凹部43が形成されている。そして、図13(B)に示すように、触媒担体12の外周面に本体41を巻き付け、凸部42と凹部43とを係合させることで触媒担体12に巻装される。
【0004】
触媒担体12は、保持材13を巻装した状態で金属ケーシング11に圧入(キャニング)され、触媒コンバーター10とされる。このキャニングの作業性を高めるために、保持材13のケーシング側表面(外周面)にフィルム、テープ、不織布、樹脂コーティングといった保護膜50を付加して摩擦抵抗を小さくすることが行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32710号公報
【特許文献2】特開平8−61054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような保護膜50が形成された保持材13は、図13(A)に示すような無機繊維からなる平板状のマットの一方の表面に保護膜50を形成したものであり、触媒担体12に巻装するためには、保護膜50を外側にして凸部42と凹部43とが係合するように湾曲する必要がある。そのため、保護膜50は、図中の左右方向に延伸されるが、フィルムやテープ、不織布の場合は一枚の連続体であるため延伸し難く、場合によっては破断する可能性がある。また、樹脂コーティングを施した場合は、保持材13を湾曲させた際に湾曲方向と直交するように(触媒担体12の軸線方向に沿って)多数の亀裂が生じる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、保護膜が形成された保持材において、保護膜に延伸性を付与して、触媒担体への装着性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は下記の触媒コンバーター用保持材を提供する。
(1)触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(2)保護膜の坪量が、突起または皺が形成される前の坪量に対して1.05〜2倍であることを特徴とする上記(1)記載の触媒コンバーター用保持材。
(3)保護膜が、開口を有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の触媒コンバーター用保持材。
(4)保護膜における開口率が10〜45%であることを特徴とする上記(3)記載の触媒コンバーター用保持材。
(5)断面扁平形状の触媒担体用であり、かつ、前記触媒担体の断面形状の曲率が最大である部分を覆う部分のみに保護膜が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(6)保護膜の坪量が1〜30g/m2であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(7)保護膜がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはセルロースのうち少なくともいずれか1つからなることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
(8)保持材全体の有機成分が、該保持材全量の5質量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保持材は、保護膜を有するためキャニング性に優れるとともに、保護膜が延伸性に優れるため触媒担体への装着性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の触媒コンバーター用保持材の保護膜表面を拡大して示す模式図であり、保護膜に突起を形成した例である。
【図2】本発明の触媒コンバーター用保持材の保護膜表面を拡大して示す模式図であり、保護膜に皺を形成した例である。
【図3】保護膜に開口を形成した例を示す図である。
【図4】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図5】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図6】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図7】開口パターンの他の例を示す平面図である。
【図8】断面扁平形状の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図9】図8の保持材を平面に展開した斜視図である。
【図10】断面扁平帰形状の他の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図11】断面扁平形状の他の触媒担体に本発明の保持材を巻装した状態を示す図である。
【図12】触媒コンバーターの一例を示す断面図である。
【図13】(A)従来の触媒コンバーター用保持材の平面図、(B)触媒担体に巻装した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の保持材13の一部を示す斜視図であるが、その全体形状は図13(A)に示したような無機繊維製の平板状マットからなる基材45の一方の面に、保護膜50Aを接合したものである。また、図13(A)、(B)に示したように本体部41の長手方向の両端には凸部42と凹部43が形成されており、触媒担体12に巻装した際に両者が係合するようになっている(何れも図示略)。
【0013】
但し本発明では、保護膜50Aに、図1に示すような突起51、あるいは図2に示すような皺52が全面に形成している。
【0014】
図1において、突起51の形状には制限はなく、図示されるような断面波形の他、半球状、円錐状、柱状であってもよい。突起51の寸法にも制限はないが、延伸性を考慮すると、裾部分の幅もしくは径Lは0.05〜1mmが好ましく、ピッチ(頂点間隔)Pは0.01〜1mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。また、突起51は、格子状に規則的に形成されてもよいし、ランダムに形成されてもよい。更には、突起51は全て同じ寸法(高さHや幅L)であってもよいし、個々に異なっていてもよい。尚、突起51の形成は、突起を有する押板を押し付ける等して行うことができる。突起51は、あらゆる水平方向に延伸でき、後述する皺52のように異方性がないため、施工性に優れる。
【0015】
図2において、皺52は保持材13を湾曲したときに延伸する方向(図中延伸方向として示す)に対して垂直(図中垂直方向として示す)に延びるように形成されていればよく、同図(A)に示すように保持材13の全幅に形成されていてもよいし、同図(B)に示すように断続的に、更にはランダムに形成されてもよい。また、皺52は、その断面形状は波形の他、三角形等であってもよく、寸法にも制限はない。更には、稜線Kは、直線でもよいし、湾曲していてもよい。尚、皺52の形成は、クレープ紙の製造に使用されるような、通常の皺加工により行うことができる。
【0016】
このように突起51や皺52を形成した保護膜50Aでは、表面積が大きくなるため、突起51や皺52が形成される前の坪量よりも大きくなる。この坪量の増加分は、延伸性を考慮すると、5%(1.05倍)〜100%(2倍)が好ましく、5%(1.05倍)〜30%(1.3倍)がより好ましい。坪量の増加分が多いほど保護膜50Aの延伸度合も高まるが、坪量の増加分が100%を超えると、保持材13を触媒担体12に巻装した状態で、延伸分を差し引いた過剰の保護膜50Aが波打つように残存し、キャニングの際に抵抗となる。また、後述するように、保護膜50Aを基材45に接合する方法として熱融着を行うことが好ましいが、坪量の増加分が増すほど突起51や皺52を残した状態で熱融着するのが困難になる。
【0017】
また、坪量の増加分が多くなるほど、保持材全体としての有機成分も多くなる。触媒コンバーターでは、浄化効率を高めるために、触媒担体12を1000℃近くまで加熱するが、有機成分は容易に分解、焼失してCO2やCO、各種の有機系ガスが発生し、特に、触媒コンバーターの作動初期に多量に発生する。排ガス規制は厳しくなる一方であり、有機成分に由来するCO2等が多く発生し好ましくない。また、最近ではエンジンの電子制御が進んでいるが、本来の排気ガスに関係の無いCO2が存在すると、排気系のセンサー類を誤作動させてエンジンの電子制御にも悪影響が出てくる。このような不具合を防ぐために、メーカーは出荷前に焼成処理して有機成分を焼失して除去する作業を行っている。そのため、保護膜50Aの坪量の増加を抑えることが好ましい。
【0018】
このように、保護膜50Aに突起51や皺52を形成することにより、保持材13を触媒担体に巻装する際に(図13(B)参照)、保護膜50Aが湾曲方向に延伸するため、装着作業がしやすくなる。
【0019】
尚、保護膜50Aの材質としては、従来公知のもので構わず、例えば、ポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等からなるフィルムや不織布が挙げられる。また、セルロースであってもよい。これらの中でも、低コストで入手可能で、延伸しやすく、強度があることなどから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びセルロース製の不織布が好適である。
【0020】
保護膜50Aの厚さには制限はないが、薄くなりすぎると膜強度が低くなり、キャニング時や触媒担体12への巻装後に破断しやくなる。また、厚くなりすぎると延伸し難くなり、更には有機成分も多くなる。膜強度としては、引張強度で0.5N/30mm以上であることが好ましく、2N/30mm以上であることがより好ましい。尚、引張強度は、JIS P 8813に準拠して測定される。
【0021】
また、保護膜50Aに開口を形成してもよい。こうすることにより、有機成分をより少なくすることができる。開口の形成パターンには制限はないが、例えば図3に示すように、開口60を等間隔で形成したり、図4に示すように千鳥格子状に形成してもよい。また、図示は省略するが、ランダムに形成してもよい。更には、図5に示すように、大きさの異なる円を組み合わせでもよい。
【0022】
開口60は、円形の他にも図6に示すように楕円形であってもよい。楕円の長軸は、図示されるように保持材13の長手方向(紙面左右方向)に沿って形成されてもよいし、長手方向と直交(紙面上下方向)するように形成されていてもよいし、長手方向に斜め方向に沿って形成されていてもよい。保持材13は、圧入の際にその幅方向が圧入方向になるため、長軸が保持材13の幅方向に一致するように開口60を形成することにより圧入しやすくなる。一方、楕円の長軸が保持材13の長手方向に一致するように開口60を形成することにより、触媒担体12に巻装する際の湾曲がしやすくなる。また、図示されるように、大きさの異なる楕円を組み合わせてもよい。
【0023】
また、開口60は、最小部の長さ、即ち図3〜5に示すような円形の場合はその直径、図6に示すような楕円の場合はその短軸が5mm以上であることが好ましく、10〜15mmであることがより好ましい。図5や図6に示すように大きさの異なる開口60が混在している場合は、最小の開口における直径または短軸を10mm以上とする。圧入の際に開口60の周縁が抵抗となるため、開口径が小さくなるほど開口60をより多く形成しなければならず、圧入時の摩擦抵抗が大きくなる。一方、開口径が30mmを超えると、基材45が多く露出して圧入時の摩擦抵抗が大きくなる。
【0024】
図3に示すように、隣接する開口60の間隔Dは、3mm以上であることが好ましく、5mmより大きく15mm以下であることがより好ましい。隣接する開口60の間隔が狭くなるほど開口間の保護膜50Aが幅細になるため、圧入時に保護膜50Aが破断しやすくなる。また、開口60の間隔が広くなるほど開口間の保護膜50Aが幅広になるため、圧入時の保護膜50Aの破断は抑えられるものの、開口60を設けることの効果が低下する。
【0025】
図7に示すように、保持材13の本体部41の凸部42の周辺領域47、並びに凹部43の周辺領域48には開口60を形成しないことが好ましい。図13(B)に示すように、凸部42と凹部43は、保持材13を触媒担体12に巻装した際に係合する部分であり、係合端縁に段差があると圧入時に金属ケーシングの内面に引っ掛かることがある。係合端縁に段差がある場合でも、保護膜50Aにより低摩擦抵抗化されて圧入しやすくなるが、開口60があると基材45が露出してその分摩擦抵抗が大きくなる。そのため、凸部42及び凹部43の周辺部分47、48のみに開口60を形成しないことにより、できるだけ摩擦抵抗の低減化を図ることができるようになる。そのため、周辺部分47、48が広くなるほど圧入時の摩擦抵抗を小さくすることができるが、開口60を設けることの効果が低下するため、周辺部分47、48の広さとしては、図中の寸法aが保持材全幅の50〜100%、bが保持材全長の5〜9%、cが保持材全長の5〜9%、dが保持材全幅の50〜100%であることが好ましい。
【0026】
上記何れの場合も、開口60の開口率、即ち、保護膜50Aの全面積に占める開口60の割合は、10〜45%であることが好ましく、20〜35%であることがより好ましい。開口率が小さくなるほど、保護膜本来の作用の低下が少ないものの、開口60を設けることの効果が低下する。一方、開口率が大きくなるほど、保護膜本来の作用の低下が大きくなり、更に基材45が露出してその分摩擦抵抗が大きくなりキャニング性が悪化する。従って、開口60の大きさ、開口間の間隔、大きさの異なる開口の組み合わせ、形成パターン等を調整して上記の開口率範囲とする。
【0027】
上記保護膜50Aは、坪量が1〜30g/m2であることが好ましく、有機成分を少なくする観点からは1〜10g/m2、1〜5g/m2であることがより好ましい。このような坪量になるように、膜厚や、突起51や皺52の形成様式、開口60を調整する。
【0028】
保護膜50Aを基材45に接合するには、接着剤を用いたり、ホットプレスにより熱融着する方法等が可能である。但し、接着剤を用いる方法では有機分が多くなり、また接着剤が開口60の周縁、更に不織布の場合は繊維の隙間からはみ出て外観不良になりやすいため、ホットプレスが好ましい。
【0029】
尚、基材45には制限が無く、例えば、無機繊維と少量の有機バインダーとを湿式成形した後、圧縮した状態で乾燥した圧縮マット、無機繊維を集綿したものをニードル加工したブランケットからなるマット、無機繊維とバーミキュライト等の膨張材とを湿式成形した膨張マット等のマット材等を使用できる。
【0030】
基材45の全体形状にも制限がなく、例えば図13(A)に示したように、平板状の本体部41の一端に凸部42を形成し、他端に凸部42と嵌合可能な形状の凹部43を形成した形状とすることができる。尚、凸部42及び凹部43の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部42及び凹部43の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0031】
無機繊維としては、従来から保持材に用いられている種々の無機繊維を用いることができる。例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等を適宜使用できる。より具体的には、アルミナ繊維としては、例えばAl2O3が90重量%以上(残りはSiO2分)であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その平均繊維径が3〜10μm、ウエットボリューム300cc/5g以上が好ましい。ムライト繊維としては、例えばAl2O3分/SiO2分重量比が70/30〜83/17程度のムライト組成であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その平均繊維径が3〜10μm、ウエットボリューム300cc/5gが好ましい。その他のセラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維を挙げることができるが、何れも従来から保持材に使用されているもので構わない。また、ガラス繊維やシリカ繊維、ロックウール、生体溶解性無機繊維を配合してもよく、いずれか2つ以上を組み合わせてもよい。
【0032】
尚、上記ウエットボリュームは、次の方法で算出される。
1)乾燥した繊維材料5gを少数点2桁以上の精度を有する秤で計量する。
2)計量した繊維材料を500mlのガラスビーカーに入れる。
3)2)のガラスビーカーに温度20〜25℃の蒸留水を400ml程度入れ、攪拌機を用いて繊維材料を切断しないように慎重に攪拌し、分散させる。この分散は超音波洗浄機を使用してもよい。
4)3)のガラスビーカーの中味を1000mlのメスシリンダーに移し、目盛で1000ccまで蒸留水を加える。
5)4)のメスシリンダーの口を手等で塞ぎ、水が漏れないように注意しながら上下逆さまにして攪拌する。これを計10回繰り返す。
6)攪拌停止後、室温下で静置し、30分経過後の繊維沈降体積を目視で計測する。
7)上記操作を3サンプルについて行い、その平均値を測定値とする。
【0033】
有機バインダーも公知のもので構わず、ゴム類、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用できる。具体的には、ゴム類の例としては、n−ブチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンゴム等がある。水溶性有機高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がある。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の単独重合体及び共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等がある。熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等がある。また、これら有機バインダーのいずれか2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、基材45には、有機バインダーとしてパルプ等の有機繊維を少量配合することも可能である。有機繊維は細く長いものほどバインド力が高く、高度にフィブリル化したセルロースやセルロースナノファイバー等が好ましい。具体的には、繊維径が0.01〜50μm、繊維長が1〜5000μmであることが好ましく、繊維径が0.02〜1μm、繊維長が10〜1000μmであることがより好ましい。
【0035】
こうした有機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。有機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。有機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、10質量部を越える場合は、消失する際に排ガス規制を上回ってしまう可能性がある。有機有機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜3質量部である。
【0036】
有機バインダーと無機バインダーを併用してもよい。有機バインダーと無機バインダーの併用によれば、使用時おける有機成分の揮発が起因する上述した不具合を回避するために、有機バインダーの使用量を少なくした場合であっても、無機繊維を良好に結束でき、従来と同等の厚さを維持できる触媒コンバーター用保持材を提供することができる。こういった無機バインダーは公知のもので構わず、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、水ガラス、ベントナイトといった粘土系などが挙げられる。なお、これらの無機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。無機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限ないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。無機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。無機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部未満である。
【0037】
保持材全体、即ち基材45と保護膜50Aとの合計における有機分は、少ないほど好ましい。具体的には、有機分は保持材全量の5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下とすることもできる。そのため、基材45においては、有機バインダーや有機繊維は圧縮状態を維持できるように極く少量に留めることが好ましい。
【0038】
尚、上記は触媒単体が断面円形である場合について述べたが、触媒担体は断面が楕円やトラック形等のように扁平の場合もある。その場合は、保持材13を装着する際に、保持材13が大きく湾曲する部分にのみ突起51や皺52を形成してもよい。
【0039】
例えば、図8は断面楕円形状の触媒担体12に、保持材13を巻装した状態を示している。保持材13は、触媒担体12の表面の短径Yとの一方の交点C1の直上で凸部42と凹部43が係合しており、触媒担体12の表面の長径Xとの交点C2の両側で、所定長さにわたり大きく湾曲している。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、交点C2の両側部分50A1にのみ突起51や皺52(図示略)を形成することにより、保護膜50Aが延伸して湾曲しやすくなる。尚、図9は、このような保持材13を平面に展開した状態を示している。
【0040】
図10は、断面トラック形状の触媒担体12に保持材13を巻装した状態を示している。保持材13は、触媒担体12の一方の平面部分12Aの中央部直上での凸部42と凹部43が係合しており、触媒担体12の湾曲部分12Bを覆うように大きく湾曲して延伸量も大きくなっている。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、湾曲部分12Bを覆う部分50A2にのみ突起51や皺52(図示略)を形成する。
【0041】
図11は、楕円の長径Xの両端を、この長径Xと直交するように切断した断面形状の触媒担体12に保持材13を巻装した状態を示している。保持材13の凸部42と凹部43は、触媒担体12の表面の短径Yとの一方の交点C1の直上で係合している。また、触媒担体12は、長径Xを切断する線と元の楕円との交点C3が屈曲しており、保持材13もこの交点C3を覆う部分が屈曲する。そこで、保持材13の保護膜50Aにおいて、交点C3を覆う部分50A3にのみ突起51や皺52(図示略)を形成する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0043】
(保持材作製)
坪量5g/m2で、幅70mmのポリエチレン不織布を用い、皺加工を施して坪量の増加分を表1に示すように調整して保護膜を作製した。尚、坪量の増分0%は、皺加工を施す前の不織布をそのまま使用したことを示す。
【0044】
そして、各保護膜を、長手方向長さ530mm、幅方向長さ144mmで、坪量1200g/m2のアルミナ繊維製基材の片面にホットブレスにより接合して保持材とした。尚、坪量増加分が200%の保護膜は、ホットプレスによる接合が困難であり、接着剤を用いて接合した。
【0045】
(巻装性評価)
直径が異なる鋼管を用意し、直径が大きい鋼管から順に保持材を巻き付け、巻き付け可能な最小の直径を求めた。結果を表1に併記するが、坪量の増加分が100%以下となるように皺加工を施した保護膜を接合した保持材は、皺加工を施していない保護膜を接合した保持材に比べて小径の鋼管に巻き付けることができており、触媒担体への巻装性が向上することは明らかである。
【0046】
【表1】
【符号の説明】
【0047】
11 金属製ケーシング
12 触媒担体
13 保持材
45 基材
50、50A 保護膜
51 突起
52 皺
60 開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
保護膜の坪量が、突起または皺が形成される前の坪量に対して1.05〜2倍であることを特徴とする請求項1記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
保護膜が、開口を有することを特徴とする請求項1または2記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
保護膜における開口率が10〜45%であることを特徴とする請求項3記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
断面扁平形状の触媒担体用であり、かつ、前記触媒担体の断面形状の曲率が最大である部分を覆う部分のみに保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項6】
保護膜の坪量が1〜30g/m2であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項7】
保護膜がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはセルロースのうち少なくともいずれか1つからなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項8】
保持材全体の有機成分が、該保持材全量の5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項1】
触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻装されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
無機繊維製の基材の金属製ケーシング側の表面に、突起または皺が形成された保護膜が接合されていることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
保護膜の坪量が、突起または皺が形成される前の坪量に対して1.05〜2倍であることを特徴とする請求項1記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
保護膜が、開口を有することを特徴とする請求項1または2記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
保護膜における開口率が10〜45%であることを特徴とする請求項3記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
断面扁平形状の触媒担体用であり、かつ、前記触媒担体の断面形状の曲率が最大である部分を覆う部分のみに保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項6】
保護膜の坪量が1〜30g/m2であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項7】
保護膜がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはセルロースのうち少なくともいずれか1つからなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項8】
保持材全体の有機成分が、該保持材全量の5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−208520(P2011−208520A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75022(P2010−75022)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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