説明

触媒コンバータ系及びその使用

【課題】排ガス中における炭化水素の触媒燃焼時にも僅かしか劣化せず、煤フィルタのアクティブな再生時に有利に使用することができる、触媒コンバータ系を提供する。
【解決手段】本発明の触媒コンバータ系は、内燃機関の排ガスを浄化する触媒コンバータ系であって、コンバータハウジング(2)内に少なくとも2つの触媒コンバータ(3,4)を有しており、これらの触媒コンバータ(3,4)が、排ガスの流れ方向において相前後してかつ互いの間隔dをおいて配置されており、リーンな排ガスにおいて炭化水素及び一酸化炭素を触媒燃焼させることができ、前記コンバータハウジング(2)に、煤フィルタ(6)を備えた第2のコンバータハウジング(5)が後置されている形式のものにおいて、互いに隣接した2つの触媒コンバータの間における間隔dが、2〜30mmであり、前記触媒コンバータ(3,4)が、酸化触媒コンバータか又は、酸化触媒コンバータと三元触媒コンバートとの組合せであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスを浄化する触媒コンバータ系及びその使用であって、触媒コンバータ系が、1つの共通のコンバータハウジング内に少なくとも1つの触媒コンバータを有しており、これらの触媒コンバータが、排ガスの流れ方向において相前後してかつ互いの間隔をおいて配置されており、リーンな排ガスにおいて炭化水素及び一酸化炭素を触媒燃焼させることができる形式のものに関する。触媒コンバータ系は、ディーゼル機関の排ガス装置において、後置された煤フィルタを活性再生を目的として煤発火温度に排ガスを加熱するために使用される。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関によって生ぜしめられた煤は、空気を清浄に保つために、煤フィルタによって排ガスから除去されねばならない。フィルタにおける煤の沈着が増加するに連れて、フィルタによって生ぜしめられる排ガス背圧が上昇し、機関の出力を低下させる。従ってフィルタは煤の燃焼によって規則的に再生されねばならない。
【0003】
この再生には特に今日のディーゼル機関では問題がある。それというのは、このような機関の排ガスの温度は通常運転では、フィルタにおける煤の燃焼を開始するには低すぎるからである。煤の燃焼のためには500〜700℃の排ガス温度が必要である。
【0004】
煤フィルタの再生のためにはパッシブな方法及びアクティブな方法が公知である。パッシブな方法では例えば特許文献1によれば、煤フィルタは連続的に酸化剤としての窒素酸化物によって、400℃未満の排ガス温度において酸化されるようになっている。そのために煤フィルタの前には酸化触媒コンバータが配置されていて、この酸化触媒コンバータは、排ガス内における一酸化窒素を二酸化窒素に変換する。この方法は、排ガスが十分な一酸化窒素を有していることを前提条件とする。排ガス中における炭化水素の存在は、一酸化窒素から二酸化窒素への酸化を阻止する、という欠点がある。このような欠点を排除するために特許文献2に開示された発明では、煤フィルタの前に2つの酸化触媒コンバータが配置されており、第1の触媒コンバータは主として排ガス中における炭化水素を燃焼させ、第2の触媒コンバータは、排ガス中における窒素酸化物を二酸化窒素に酸化させるようにしている。
【0005】
パッシブな方法は、煤フィルタの故障しない運転を保証することができない。少なくとも時々、フィルタはアクティブに再生されねばならない。そのために酸化触媒コンバータの前で燃料が排ガス流に吹き込まれ、酸化触媒コンバータにおいて燃焼されるか又は、機関側における処置によって、排ガス中における未燃焼の炭化水素の凝縮が行われる。酸化触媒コンバータにおける触媒燃焼は、排ガスを、機関のその時の運転状態に応じて200〜400℃煤発火温度に加熱する必要がある。この場合酸化触媒コンバータの内部においては高い温度ピークが発生し、このような温度ピークは、触媒コンバータを早期に劣化させる原因になり得る。その結果、運転時間の経過と共に、酸化触媒コンバータにおける一酸化炭素及び炭化水素の変換もしくは反応が悪くなってしまう。
【0006】
特許文献3に開示された排ガス浄化装置は、触媒体を有しており、この触媒体は、排ガスの流れ方向において相前後して配置された複数の触媒円板から成っている。これらの触媒円板は、排ガス中における炭化水素、一酸化炭素及び酸化窒素を二酸化炭素、水及び窒素に変換させるために、焼結された金属パウダから成っている。これらの触媒円板の間の間隔は約3mmである。
【0007】
特許文献4に開示された排ガス浄化装置は、理論上の排ガス中における炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を変換するための三元触媒Aと、下流側に配置されていて炭化水素を吸収するためのゼオライトを有する触媒コンバータBとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP0341832A2
【特許文献2】US6877313B1
【特許文献3】DE102005017378A1
【特許文献4】US2003/0099583A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、排ガス中における炭化水素の触媒燃焼時にも僅かしか劣化せず、ゆえに煤フィルタのアクティブな再生時に有利に使用することができる、触媒コンバータ系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために本発明の構成では、内燃機関の排ガスを浄化する触媒コンバータ系であって、コンバータハウジング内に少なくとも2つの触媒コンバータを有しており、これらの触媒コンバータが、排ガスの流れ方向において相前後してかつ互いに間隔をおいて配置されており、リーンな排ガスにおいて炭化水素及び一酸化炭素を触媒燃焼させることができる形式のものにおいて、互いに隣接した2つの触媒コンバータの間における間隔dが、2〜30mmであるようにした。
【0011】
触媒コンバータが少なくとも2つの個別触媒コンバータに分割され、これらの個別触媒コンバータが互いの間に数mmの狭い間隔をおいて配置されると、触媒燃焼時における触媒コンバータの時間の経過に伴う劣化(Alterung)を抑制できることが、判明した。互いに連続する触媒コンバータの間における数mmの僅かな間隔は、排ガスを冷却することができないので、上記のような結果は驚くべき作用効果である。触媒コンバータを分割することによって、触媒コンバータにおける温度分布に有利な影響が与えられることは明らかである。これによって、さもないと触媒コンバータの早期の劣化を惹起するおそれのある温度ピークが回避される。
【0012】
触媒燃焼のために必要な炭化水素は、第1の触媒コンバータの前に配置された調量装置を用いて排ガス流内に吹き込まれるか、又は、機関の排ガス中における未燃焼の炭化水素成分が、機関による処置によって、例えば機関のシリンダ内への燃料の後噴射によって、高められることができる。
【0013】
本発明による触媒コンバータ系のためには、リーンな排ガスにおいて炭化水素を酸化することができるすべての触媒コンバータが適しており、このような触媒コンバータは特に、組み合わせて使用することも可能である酸化触媒コンバータ及び三元触媒コンバータである。
【0014】
触媒コンバータは有利には、セラミック製又は金属製のハニカム体に被着された酸化活性の触媒層を有しており、この触媒層は有利には、活性の酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコン、酸化セリウム及びこれらの混合物又は酸化混合物の群から成る坦体材料に、白金、パラジウム及びロジウムの群から成る少なくとも1つの貴金属を有している。炭化水素を貯蔵するためには、触媒層は付加的にゼオライトを有することができる。両方の触媒コンバータは、同じ組成を有していても、異なった組成を有していてもよい。
【0015】
触媒コンバータ系は有利には、ディーゼル機関の排ガス装置において、触媒コンバータにおける燃料の燃焼によって、最後の触媒コンバータの後ろで、リーンな排ガスを500〜700℃の間の温度に加熱するために使用される。そのために必要な燃料は、調量装置を用いて第1の触媒コンバータの前で排ガス流内に吹き込まれることができ、この際に注意すべきことは、排ガス組成が正味で酸化性であることである。択一的に、排ガス中における未燃焼の炭化水素における成分を、機関による処置によって、例えばディーゼル機関のシリンダ内への燃料の後噴射によって高めることが可能であり、この場合においても同様に注意すべきことは、排ガス組成が正味で酸化性であることである。このようにして加熱された排ガスによって、触媒コンバータ系の後ろに配置された煤フィルタを活性再生させることができる。
【0016】
本発明による触媒コンバータ系の目的は、排ガス中における又は別個に供給される燃焼可能な成分の燃焼によって、排ガスを有利に500℃〜700℃の温度に加熱することである。排ガス中における燃焼可能な成分としては、例えば、未燃焼の又は不完全に燃焼したディーゼル燃料からの炭化水素や一酸化炭素が挙げられる。
【0017】
両方の触媒コンバータの間における間隔によって、驚くべきことに、触媒コンバータ系の時間の経過に伴う劣化はゆっくりとなり、このことは、所定の時間経過後における一酸化炭素及び炭化水素の良好な変換において認識することができる。つまり本発明による触媒コンバータ系は、所定の時間経過後に、相応な一体的な触媒コンバータや互いに間隔なしに相前後して配置された2つの触媒コンバータに比べて、一酸化炭素及び炭化水素を僅かしか放出しない。
【0018】
触媒コンバータの間の間隔は、一方では、良好な効果が保証できないほど小さくてはならず、また他方では、触媒コンバータの間の間隔が大きくなるに連れて排ガスが冷却されてしまうので、空間的及び熱的な理由からあまりに大きな間隔も好ましくない。10〜20cmの直径を有する自動車排ガス触媒コンバータの通常の横断面寸法に対しては、2つの触媒コンバータの間の間隔が2〜30mmであることが望ましく、5〜20mmの間隔が有利である。
【0019】
しかしながら両触媒コンバータの間の間隔は、排ガス流で見て後ろの触媒コンバータの劣化に対する影響しか及ぼさない。前側の触媒コンバータの劣化を改善するためには、従って可能な限り熱耐性の触媒コンバータを選択することが望ましい。本発明によれば、パラジウムと組み合わせられた白金を有する触媒コンバータが、純粋な白金触媒に比べて良好な高温耐性を有している。第1のつまり前側の触媒コンバータの白金/パラジウム比は、有利には4:1〜1:1である。第2の触媒コンバータは、第1の触媒コンバータによって完全には変換されなかった一酸化炭素及び炭化水素を可能な限り完全に燃焼する、という課題を有している。この課題のためには、第1の触媒コンバータにおけるよりも僅かなパラジウム含有量を有する白金/パラジウム触媒コンバータか、又は純粋な白金触媒コンバータが適している。
【0020】
つまり両方の触媒コンバータがその機能を触媒コンバータ系において最適に果たすためには、両触媒コンバータの触媒層は互いに異なった組成を有することができる。しかしながら両方の触媒層が同じに選択されることも同様に有利である。
【0021】
冷機始動段階中におけるディーゼル機関の未処理排出物質は、主として、未燃焼の炭化水素から成っている。冷機始動段階中に、これらの成分はなお低温の触媒コンバータによって変化されることができない。このような排出物質を減じるために、本発明による触媒コンバータ系の両触媒コンバータのうちの前側及び/又は後ろ側の触媒コンバータは、炭化水素を中間貯蔵するゼオライトを有していることができる。排ガスの温度上昇に連れて、貯蔵された炭化水素は再び排出され、そして高温時に活性の触媒コンバータによって変換されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】煤フィルタと、煤フィルタを活性再生する本発明による触媒コンバータ系とを備えた排ガス装置の構造を示す図である。
【図2】3つの異なった触媒コンバータ系の排出量を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1にはディーゼル機関の排ガス装置1が示されている。この排ガス装置は第1のコンバータハウジング2を有しており、このコンバータハウジング2内には、互いに間隔をおいて位置する2つの酸化活性の触媒コンバータ、つまり酸化触媒コンバータ3,4が配置されている。両触媒コンバータコンバータ3,4の間の間隔は2〜30mmの範囲である。両触媒コンバータコンバータ3,4は同じ長さを有していても、異なった長さを有していてもよい。触媒コンバータ系の後ろには、煤フィルタ6を備えた第2のコンバータハウジング5が配置されている。触媒コンバータ系における付加的な燃料の燃焼によって、後置された煤フィルタを活性反応させることができる。
【0024】

図2では、排気量2.2リットルのディーゼル車両における3つの異なった触媒コンバータ系を、その残留排出量に関してNEDC(New European Driving Cycle)において互いに比較されている。触媒坦体としてはそれぞれ、62cm−2のセル密度と0.17mmの通路壁厚さとを有するコーディエライト製のハニカム体が使用されており、これらのハニカム体は、ハニカム体容量1リットル当たり3.18gのプラチナを有する汎用のディーゼル用酸化触媒によって被覆されている。
【0025】
系1:一体的なハニカム体
直径14.4cm;長さ8.9cm
系2:2つのハニカム体
直径14.4cm;各ハニカム体の長さ4.45cm;
両ハニカム体の間の間隔d:0.00cm
系3:本発明による2つのハニカム体
直径14.4cm;各ハニカム体の長さ4.45cm;
両ハニカム体の間の間隔d:1cm
触媒コンバータ系は21時間にわたって実際と同様に後噴射によって老化させられた。その後で、ディーゼル車両におけるその残留排出量がNEDCにおいて測定された。結果は図2に示されている。
【0026】
本発明による触媒コンバータ系3はテスト中に、汎用の一体的な系1及び、互いの間に間隔を有していない2つのハニカム体を備えた系2に比べて、著しく低いCO排出量及びHC排出量を示している。
【符号の説明】
【0027】
1 排ガス装置
2 第1のコンバータハウジング
3、4 酸化触媒コンバータ
5 第2のコンバータハウジング
6 煤フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを浄化する触媒コンバータ系であって、コンバータハウジング(2)内に少なくとも2つの触媒コンバータ(3,4)を有しており、これらの触媒コンバータ(3,4)が、排ガスの流れ方向において相前後してかつ互いに間隔dをおいて配置されており、リーンな排ガスにおいて炭化水素及び一酸化炭素を触媒燃焼させることができ、前記コンバータハウジング(2)に、煤フィルタ(6)を備えた第2のコンバータハウジング(5)が後置されている形式のものにおいて、
互いに隣接した2つの触媒コンバータの間における間隔dが、2〜30mmであり、前記触媒コンバータ(3,4)が、酸化触媒コンバータか又は、酸化触媒コンバータと三元触媒コンバータとの組合せであることを特徴とする触媒コンバータ系。
【請求項2】
排ガスの流れ方向において前側の第1の触媒コンバータ(3)の前に、排ガス中に燃料を吹き込むための調量装置が配置されている、請求項1記載の触媒コンバータ系。
【請求項3】
酸化触媒コンバータが、セラミック製又は金属製のハニカム体に被着された酸化活性の触媒層を有している、請求項1または2記載の触媒コンバータ系。
【請求項4】
触媒層が、活性の酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコン、酸化セリウム及びこれらの混合物又は酸化混合物の群から成る坦体材料に、白金、パラジウム及びロジウムの群から成る少なくとも1つの貴金属を有している、請求項3記載の触媒コンバータ系。
【請求項5】
排ガスの流れ方向において前側の第1触媒コンバータ(3)の触媒層が、パラジウムと組み合わせられた白金を有している、請求項4記載の触媒コンバータ系。
【請求項6】
排ガスの流れ方向において後ろ側の第2の触媒コンバータ(4)の触媒層が、パラジウムと組み合わせられた白金を有しており、パラジウム含有量が、前側の第1触媒コンバータ(3)の触媒層よりも少ない、請求項5記載の触媒コンバータ系。
【請求項7】
排ガスの流れ方向において後ろ側の第2の触媒コンバータ(4)の触媒層が、触媒活性の成分としてパラジウムだけを有している、請求項5記載の触媒コンバータ系。
【請求項8】
触媒層が付加的にゼオライトを有している、請求項4記載の触媒コンバータ系。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の触媒コンバータ系の使用であって、ディーゼル機関の排ガス装置(1)において、ディーゼル機関からの未燃焼の燃料成分又は燃料を触媒コンバータにおいて燃焼させることによって、最後の第2の触媒コンバータ(4)の後ろで、リーンな排ガスを500〜700℃の間の温度に加熱し、触媒コンバータ系の後ろに配置された煤フィルタ(6)を再生するために、触媒コンバータ系によって生ぜしめられた高温の排ガス流を用いることを特徴とする、触媒コンバータ系の使用。
【請求項10】
燃料が、調量装置を用いて第1の触媒コンバータ(3)の前で排ガス流内に吹き込まれる、請求項9記載の使用。
【請求項11】
排ガス中における未燃焼の燃料成分が、ディーゼル機関のシリンダへ燃料の後噴射によって生ぜしめられる、請求項9記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232309(P2012−232309A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178803(P2012−178803)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2009−550240(P2009−550240)の分割
【原出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】