説明

触媒コンバータ装置

【課題】触媒担体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置を得る。
【解決手段】触媒担体14の内部は区画されて、複数の区画部26が備えられている。区画部26のそれぞれ体積抵抗率は、発熱量が均一に近づくような電流が流れるように、それぞれ所定の値に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、触媒を担持する金属製触媒担体を通電して昇温させ、十分な触媒効果が得られるようにすることが望まれる。たとえば、特許文献1には、断面形状が正方形である正方形セル(貫通孔)を有し、この貫通孔壁とで形成されるか角度が鋭角となるように電極板を配置することで、均一な発熱性を得られるようにしたハニカムモノリスヒータが記載されている。
【0003】
しかし、実際の触媒コンバータ装置における触媒担体では、その断面形状や電極配置等に応じて、部位ごとに発熱量のムラが生じることがあるため、触媒担体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布にすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−280086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、触媒担体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、前記排気の流れ方向と直交する直交断面で見て前記触媒担体を挟んで対向する位置で触媒担体に接触配置された一対の電極と、前記触媒担体を前記電極中心線と直交する方向に区画して設けられ、区画された前記触媒担体の部位ごとの通電による発熱量が均一に近づくようにそれぞれ異なる体積抵抗率とされた複数の区画部と、を有する。
【0007】
この触媒コンバータ装置では、触媒担体に接触配置された一対の電極により触媒担体に通電されると、触媒担体は加熱されて昇温されるので、担持された触媒による浄化効果をより早期に発揮させることができる。
【0008】
電極は、排気の流れ方向と直交する直交断面で見て、触媒担体を挟んで対向する位置に設けられているため、電極をこのように対向配置していない構成と比較して、触媒担体を均一に加熱することができる。
【0009】
触媒担体には、電極中心線と直交する方向に区画することで複数の区画部が設けられている。これらの区画部では、触媒担体の部位ごとの通電による発熱量が均一に近づくようにそれぞれ異なる体積抵抗率とされている。したがって、このような複数の区画部が設けられることなく、一定の体積抵抗率とされた触媒担体と比較して、触媒担体への通電時の温度が均一化される。触媒担体全体としては温度ムラが少なくなり、均一な温度分布に近づく。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、複数の前記区画部の間に区画部の間を絶縁する絶縁層が設けられている。
【0011】
区画部の間に絶縁層を設けることで、区画部間での不用意な電流を阻止し、それぞれの区画部で所望の発熱量を確実に得ることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記触媒担体が、前記直交断面で見て円形状とされている。
【0013】
触媒担体の、直交断面で見た形状を円形状とすることで、触媒担体は排気管の内周面の形状に沿った形状となり、排気管への搭載性が高くなる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体が前記直交断面で見て前記中心線に対し対称形状とされている。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体が前記直交断面で見て前記中心線の垂直二等分線に対し対称形状とされている。
【0016】
このように、触媒担体を対称形状とすることで、通電時の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記区画部のそれぞれが、前記直交断面で見て一定の幅とされている。
【0018】
区画部のそれぞれにおいて幅を一定とすることで、区画部内での電流密度のムラを少なくし、触媒担体の温度分布を均一に近づけることが可能となる。なお、この場合、複数の区画部のすべてで同幅とされていてもよいが、区画部それぞれにおいて、一定の幅となっている(異なる区画部では幅も異なっている)構成でもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への搭載状態で排気の流れ方向にそった断面で示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を示す図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置おける(A)は電流密度分布、(B)は温度分布をそれぞれ概念的に示す説明図である。
【図4】比較例の触媒コンバータ装置を示す断面図である。
【図5】比較例の触媒コンバータ装置おける(A)は電流密度分布、(B)は温度分布をそれぞれ概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置を図2と同様の断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(A)には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が示されている。触媒コンバータ装置12は、エンジンからの排気が流れる排気管10の途中に装着されるようになっている。排気管内には、エンジンからの排気が流れるが、図12は、この排気の流れ方向(矢印F1方向)と直交する方向の断面(図1の2−2線断面)にて、触媒コンバータ装置12を示したものである。以下において、「幅方向」というときは、図2における幅方向(左右方向)を意味する。
【0022】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、略円柱状の触媒担体14を有している。触媒担体14は、断面形状(排気の流れ方向と直交する方向の断面形状が円形とされており、略円筒状のケース筒体28の内部において、保持部材24を介して保持されている。保持部材24は、所定の弾性を有しており、ケース筒体28内における触媒担体14の相対移動を吸収する。さらに、保持部材24は絶縁性を有している。
【0023】
触媒担体14には、2枚の電極16A、16Bが貼着され、さらに電極16A、16Bの中心にはそれぞれ端子18A、18Bが接続されている。電極16A、16Bは、触媒担体14の外周面に沿って所定の広がりをもった範囲で触媒担体14に接触配置されている。図示しない電源装置から、端子18A、18B及び電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで(電流を矢印ECで示す)、触媒担体14を加熱できる。そして、この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒が有する排気浄化作用をより早期に発揮させることができるようになっている。たとえば、エンジンの始動直後等の、排気の温度が比較的低い状況でも、触媒担体14を昇温することで、触媒により排気浄化作用を早い段階から発揮させることができる。
【0024】
特に本実施形態では、電極16A、16Bを、触媒担体14を挟んで対向する位置に配置しており、触媒担体14の電流分布の偏在を少なくして、均一な加熱に寄与できるようにしている。以下の説明においては、図2に示す断面で見たときの、電極16A、16Bのそれぞれの中心を結ぶ直線を中心線CLとし、さらに、この中心線CLの垂直二等分線VDを設定する。触媒担体14は全体として、中心線CLに対して(図2における左右に)対称形状であり、さらに、垂直二等分線VDに対して(図2における上下に)対称形状である。
【0025】
触媒担体14は、断面形状が円形とされているので、電極16A、16Bよりも幅方向外側に位置する部分が存在している。この部分が、本発明に係る担体幅広部14Wとなっている。換言すれば、このような担体幅広部14Wを有する形状の触媒担体であれば、断面形状がたとえ円形でなくでも、担体幅広部14Wがない形状(たとえば、電極16A、16Bと同幅で上から下まで連続している形状)の触媒担体と比較して、断面形状がより円形に近づくことになり、排気管10への搭載性が高くなる。
【0026】
触媒担体14の内部には、複数の区画部26が備えられている。本実施形態では、中心線CLに近い位置から遠い位置に向かって4つずつ、左右合わせて8つの区画部26を有する構成としている。以下では必要に応じて、中心線CLに近い位置から遠い位置へ向かって区画部26A、26B、26C、26Dとして区別する。
【0027】
本実施形態では、区画部26A、26B、26C、26Dはいずれも、断面形状が長方形状とされている。そして、それぞれの長方形状の長手方向が、中心線CLに沿った方向となっている。
【0028】
それぞれの区画部26A、26B、26C、26D内では、幅が一定となっている。第1実施形態では特に、区画部26A、26B、26C、26Dがすべて等しい幅を有している。区画部26A、26B、26C、26Dのそれぞれの高さは、触媒担体14の円形状に沿うように、中心線CLに近い区画部26Aから遠い区画部26Dへと高さが段階的に低くなっている。
【0029】
区画部26A、26B、26C、26Dの上部及び下部には、電気抵抗が低く設定された(好ましくは、電極16A、16Bと同程度の抵抗とされた)低抵抗部30が配置されている。低抵抗部30は、触媒担体14の断面が全体として円形になるように、区画部26A、26B、26C、26Dの形状に対応して、部位ごとに異なる形状とされている。また、幅方向両端の区画部26Dのさらに幅方向外側には、電気抵抗が高く設定された高抵抗部32が配置されている。高抵抗部32も、触媒担体14の断面が全体として円形になるように、所定の形状とされている。
【0030】
区画部26A、26B、26C、26Dの間には、不導体で構成された絶縁板34が配置されている。絶縁板34により、区画部26A、26B、26C、26Dの間での不用意な電気の流れ(電流の漏れ出し)が防止されている。なお、絶縁板34も、触媒担体14の断面が全体として円形になるように、所定の形状とされている。絶縁板34は、本発明に係る絶縁層の一例である。絶縁層としては、絶縁板34に代えて、絶縁性の薄膜等を用いてもよい。
【0031】
区画部26、低抵抗部30及び高抵抗部32はいずれも、たとえばハニカム状とすることで材料の表面積が増大されている。区画部26、低抵抗部30及び高抵抗部32の表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。触媒は、排気管10内(図1参照)を流れる排気中の有害物質を浄化する作用を有している。なお、区画部26、低抵抗部30及び高抵抗部32の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状に限定されるものではなく、たとえば波状等であってもよい。
【0032】
区画部26、低抵抗部30及び高抵抗部32を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている。触媒担体14を構成する材料として、たとえば、少なくとも炭化珪素を含むようにすれば、高い強度や耐熱性を得られるので好ましい。
【0033】
区画部26A、26B、26C、26Dの体積抵抗率は、以下に詳述するように、各区画部26の発熱量が均一に近づくような電流が流れるように、それぞれ所定の値に設定されている。
【0034】
ここで、任意の区画部26において、体積をV、密度をρ、比熱をc、抵抗をR、体積抵抗率をp、断面積(電流と直交する方向の断面積)をS、長さ(電流の方向に沿った長さ)をLとする。
【0035】
この区画部26に対して電圧Vをかけて電流Iが流れた際の熱量Qは、
Q=E×I=E/R ・・・・(1)
となる。ここで、R=p×L/Sである。
また、この区画部の熱容量Cは、
C=V×ρ×cである。
したがって、この区画部26に、一定の電圧Eをかけて電流Iが流れたときの温度上昇ΔTは、
ΔT=Q/(V×ρ×c)=((E×S)/(p×L)/V×ρ×c)・・・(2)
となる。
【0036】
上記式(2)において、各区画部26を、添字n(nは自然数)を用いて区別すると、各区画部26での温度上昇ΔTを均一にするため、すなわち、
ΔT=ΔT=・・・・
となるためには、
((E×S)/(p×L)/V×ρ×c)=((E×S)/(p×L)/V×ρ×c)=・・・(3)
を満たしていればよい。
なお、V=S×Lであることを用いることにより、上記式(3)を
ΔT=ΔT=・・・・を、E/pρc=E/pρc=・・・(4)
と書き換えることも可能である。
【0037】
いずれにしても、各区画部26における温度上昇ΔTを等しくするためには、各区画部26で体積V(あるいは長さL)が異なることを考慮した上で、体積抵抗率pが決定される。ただし、この段階では、区画部26どうしの体積抵抗率pの比率は決まる。そこで、さらに、触媒担体14の全体としての抵抗値も所定の抵抗値になるように、各区画部26の体積抵抗率pが決められる。
【0038】
なお、このように区画部26の体積抵抗率を所定の値とする方法としては、たとえば、区画部26を構成する材料の配合比を変更したり、気孔率を変更したりする方法が挙げられる。
【0039】
また、本実施形態では、複数の区画部26を全体で考えたとき、中心線CLを中心とする対称形状(図2における左右対称)とし、さらに、区画部26のそれぞれに関しては、垂直二等分線VDを中心とする対称形状(図3における上下対称)としている。
【0040】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0041】
触媒コンバータ装置12は、そのケース筒体28が排気管の途中に取り付けられており、触媒担体14の内部を排気が矢印F1方向に通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の有害物質が浄化される。本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより高く発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0042】
また、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、各区画部26A、26B、26C、26Dでの温度上昇ΔTが等しくなるように、これらの区画部26A、26B、26C、26Dごとに体積抵抗率pが決められている。換言すれば、各区画部26A、26B、26C、26Dごとに、温度上昇ΔTが等しくなるために必要な熱量が発生するように電流の値が適切に制御されていることになる。したがって、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、このように区画部26A、26B、26C、26Dごとに体積抵抗率が異なる値に設定されていない(一定の体積抵抗率の)触媒コンバータ装置と比較して、触媒担体14への通電時の温度上昇ΔTが均一化される。触媒担体14全体としては、温度ムラが抑制され、均一な温度分布に近づく。
【0043】
図3(A)及び(B)には、本実施形態の触媒コンバータ装置12において、触媒担体14へ直流500Vを通電したときの、通電20秒後の電流密度分布及び温度分布がそれぞれ示されている。
【0044】
また、図4には、比較例の触媒コンバータ装置92が、図2と同様の断面(排気の流れ方向と直交する方向の断面)で示されている。この比較例の触媒コンバータ装置92では、触媒担体94が全体として単一の材料で構成されており、一定の(均一な)体積抵抗率を有している。図5(A)及び(B)には、この触媒コンバータ装置92における、通電20秒後の電流密度分布及び温度分布がそれぞれ示されている。比較例の触媒コンバータ装置92の触媒担体94では、その幅が上下方向の中央部分で広く、上部及び下部では狭くなっている。すなわち、この部分では電流の流れに対する断面積が変化している。しかしながら、触媒担体94の体積抵抗率は各部位で一定である。
【0045】
図5(A)及び(B)から、比較例の触媒コンバータ装置92における触媒担体94では、通電20秒後において、電流密度のムラが大きくなっており、温度のムラも大きくなっていることが分かる。これに対し、図3(A)及び(B)からは、本実施形態の触媒コンバータ装置12の触媒担体14では、比較例の触媒コンバータ装置92の触媒担体94よりも、電流密度のムラが小さくなっており、温度のムラも小さい(温度分布が均一に近づいている)ことが分かる。
【0046】
なお、区画部26の間には絶縁板34が配置されており、区画部26の間での不用意な電流を阻止されている。これにより、それぞれの区画部26では、所望の発熱量を確実に得ることが可能になっている。
【0047】
図6には、本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置42が示されている。以下において、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同様の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0048】
第2実施形態に係る触媒担体44は、排気の流れ方向と直交する断面で見て、区画部46の数が第1実施形態の区画部26よりも多くなっている。具体的には、第1実施形態において、中心線CLの片側で区画部26が4つであったのに対し、第2実施形態では、同じく中心線CLの片側で区画部46が5つ(区画部46A、46B、46C、46D、46E)になっている。
【0049】
また、中心線CLに近い位置から遠い位置にむかって、区画部46の幅が段階的に狭くなっている。このように、区画部46の幅をその位置によって変えたことで、第2実施形態では、複数の区画部46を全体として見たときの(低抵抗部30及び高抵抗部32を考慮しない)断面形状が、より円形に近づいている。換言すれば、断面で見たときの、低抵抗部30及び高抵抗部32の占める面積が狭くなっている。
【0050】
なお、複数の区画部46を全体として円形に近づけるためには、区画部46のそれぞれの幅は、中心線CLから離れるにしたがって狭くなっていればよいが、本実施形態では特に、図6に二点鎖線で示すように、複数の半径R1を想定している。これらの半径R1の間の角度θは一定とされている。これらの半径R1のそれぞれと触媒担体14の円周との交点CPの位置を基準に、区画部46の幅を決定している。これにより、過度に区画部46の数を増やすことなく、効率的に区画部46全体の全体形状を円形に近づけることができる。
【0051】
上記各実施形態では、触媒担体として、その断面形状が円形のものを挙げているが、触媒担体の断面形状は円形に限定されない。たとえば、中心線CLと長軸とする楕円形状であってもよい。さらに、この楕円形状から、幅方向の両側部分を中心線CLと平行になるように直線化(平面化)した形状(レーストラック形状と称されることがある)でもよい。いずれの形状であっても、電極16A、16Bの幅よりも広い担体幅広部14Wを有していれば、担体幅広部14Wがない形状の触媒担体と比較して、断面形状が円形に近づくことになる。触媒コンバータ装置12、42の搭載対象である排気管10は円筒状に形成されることが多いので、排気管10への搭載性に優れる。
【0052】
特に、触媒担体を上記したような断面楕円形状あるいは断面レーストラック形状とすれば、上下方向の中央部分での幅が断面円形の触媒担体と比較して狭くなる。すなわち、電流密度を考えると、上下方向の中央部分での電流密度の低下が抑制される。したがって、触媒担体への通電時に温度ムラを抑制する効果が高くなる。
【0053】
また、触媒担体14、44は、排気の流れ方向(矢印F1方向)と直交する断面において、中心線CLに対し対称形状とされ、さらに、垂直二等分線VDに対しても対称形状とされている。したがって、触媒担体を非対称形状とした構造と比較して、触媒担体14、44における通電時の温度ムラを少なくし、触媒担体14、44全体を均一な温度分布に近づけることができる。
【0054】
さらに、各実施形態では、区画部26、46のそれぞれについても、中心線CLに対し対称形状とされ、さらに、垂直二等分線VDに対しても対称形状とされている。このため、区画部26、46のぞれぞれの内部における通電時の温度ムラを少なくし、均一な温度分布に近づけることができる。
【0055】
区画部26、46の形状として、上記ではそれぞれの区画部26、46内では幅が一定の形状を挙げているが、それぞれの区画部26、46内で幅が異なる部分があってもよい。ただし、幅を一定にすると、それぞれの区画部26、46内での電流密度も均一化されるので、触媒担体14、44の温度分布を均一に近づけるという観点からは、より好ましい。
【0056】
区画部の数としても、特に上記したもの(触媒担体全体で8あるいは10)に限定されない、この区画部の数を多くすれば(区画部の幅は狭くなる)、触媒担体全体として、さらに均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
12 触媒コンバータ装置
14 触媒担体
14W 幅広部
16A、16B 電極
16C 電極中心
18A、18B 端子
28 ケース筒体
42 触媒コンバータ装置
44 触媒担体
CL 中心線
VD 垂直二等分線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、
前記排気の流れ方向と直交する直交断面で見て前記触媒担体を挟んで対向する位置で触媒担体に接触配置された一対の電極と、
前記触媒担体を前記電極中心線と直交する方向に区画して設けられ、区画された前記触媒担体の部位ごとの通電による発熱量が均一に近づくようにそれぞれ異なる体積抵抗率とされた複数の区画部と、
を有する触媒コンバータ装置。
【請求項2】
複数の前記区画部の間に区画部の間を絶縁する絶縁層が設けられている請求項1又は請求項1に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項3】
前記触媒担体が、前記直交断面で見て円形状とされている請求項1または請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項4】
前記触媒担体が前記直交断面で見て前記中心線に対し対称形状とされている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項5】
前記触媒担体が前記直交断面で見て前記中心線の垂直二等分線に対し対称形状とされている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項6】
前記区画部のそれぞれが、前記直交断面で見て一定の幅とされている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188958(P2012−188958A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51722(P2011−51722)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】