説明

触媒コンバータ装置

【課題】触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置を得る。
【解決手段】電極16A、16Bは、排気の流れ方向に沿った断面でみたときの中央部で体積抵抗率が最も高く、両端部に向かって体積抵抗率が漸減されており、電極16A、16Bを全体で考えると、一様な体積抵抗率の電極と比較して、両端部により多くの電流を流すことで、触媒担体14に対し、電流をより均一化して流すことが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、触媒を担持する金属製触媒担体を通電して昇温させ、十分な触媒効果が得られるようにすることが望まれる。触媒担体の温度上昇は、触媒担体の部位によらず均一化することが好ましい。
【0003】
たとえば、特許文献1には、排気の流れ方向と直交する断面で担体を見たときのセル構造を中央部と外周部で異ならせて中央部を外周部より早く温度上昇するようにした触媒装置が記載されている。
【0004】
ところで、排気の流れ方向の断面で触媒コンバータ装置を見ると、電極はこの流れ方向に所定の長さ(広がり)をもって配置されているが、電極に接続された端子は、狭い部分で接続されており、電極の部位によって、端子からの距離の長短が生じる。これにより、端子から遠い位置ほど電流が流れにくくなるため、触媒担体の通電量も、排気の流れ方向に沿った位置ごとに異なってしまうと、触媒担体に温度ムラが生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−232647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、前記触媒担体に対し、前記排気の流れ方向に沿った外面に接触配置された一対の電極と、前記電極にそれぞれ接続され電極に通電するための端子と、を有し、前記排気の流れ方向に沿った流れ方向において前記電極の電気抵抗が、前記端子から遠ざかるにつれて小さくされている。
【0008】
この触媒コンバータ装置では、触媒担体の外面に接触配置された一対の電極により触媒担体が通電されると、触媒担体は加熱されて昇温されるので、担持された触媒による浄化効果をより早期に発揮させることができる。
【0009】
排気の流れ方向断面で見た電極の電気抵抗は、端子から遠ざかるにつれて小さくされている。すなわち、たとえば電気抵抗が流れ方向断面の各部位で均一な電極では、端子から遠い位置ほど電流が流れにくくなるが、本発明では、端子から遠い位置では相対的に電気抵抗が小さいため、電流が流れやすい。これにより、触媒担体に流れる電流も、流れ方向断面で見て均一に近づけることができるため、触媒担体の温度ムラが少なくなり、均一は温度分布に近づく。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記流れ方向断面で見たときの前記電極の厚みが、前記端子から遠ざかるにつれて薄くされている部分を電極が有している。
【0011】
したがって、触媒担体と電極とを合わせた径が、端子から遠ざかるについて、すなわち排気の流れ方向の両端部で小さくなるので、他の部材への挿入性が高くなる(挿入しやすくなる)。たとえば、触媒担体の外面に電極を配置し、さらにその外側に保持部材を巻き付けたものを筒体に挿入するときの挿入性が高くなる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記電極の前記電気抵抗が、前記流れ方向において体積抵抗率を異ならせることで前記端子から遠ざかるにつれて小さくされている。
【0013】
このように、電極の部位ごとに体積抵抗率を異ならせることで、電極の形状に依存することなく(あるいは形状への依存を小さくして)て、電極の電気抵抗を所望の値にすることが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、前記流れ方向断面で見たとき前記端子が前記電極の中央に配置されると共に電極が端子に対し対称な構造とされている。
【0015】
したがって、電極の流れ方向で見たとき、端子に対し電極が対称な形状となるため、触媒担体に対称に通電できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を排気の流れ方向に沿った断面で示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を電極及びその近傍で部分的に拡大して示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置の図1とは異なる例を排気の流れ方向に沿った断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(A)には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が示されている。触媒コンバータ装置12は、排気管の途中に装着されるようになっている。排気管内には、エンジンからの排気が流れるが、図1は、この排気の流れ方向(矢印F1方向)に沿った断面にて、触媒コンバータ装置12を示したものである。以下において、適宜「長手方向」というが、これは、排気の流れ方向に一致する。
【0019】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14は、たとえばハニカム状とすることで材料の表面積が増大されている。触媒担体14の表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。触媒は、排気管内を流れる排気(流れ方向を矢印F1で示す)中の有害物質を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状に限定されるものではなく、たとえば波状等であってもよい。
【0020】
触媒担体14を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている。触媒担体14を構成する材料として、たとえば、少なくとも炭化珪素を含むようにすれば、高い強度や耐熱性を得られるので好ましい。さらに、電気抵抗率としては、10〜200Ω・cmとすれば、後述するように通電したときに、担持した触媒を効率的に温度上昇させることができるので好ましい。触媒担体の気孔率としては、30〜60%の範囲とすることが好ましい。気孔率を30%以上とすると、必要な表面積を確保して多くの触媒を担持可能となる。また、気孔率を60%以下とすることで、触媒担体14として求められる強度を維持することが可能となる。
【0021】
触媒担体14には、2枚の電極16A、16Bが貼着され、さらに電極16A、16Bの中心にはそれぞれ端子18A、18Bが接続されている。電極16A、16Bは、触媒担体14の外周面に取り付けられていてもよいし、触媒担体14と一体で形成されていてもよい。電極16A、16Bは、金属あるいはセラミックで構成されている。
【0022】
電極16A、16Bは、触媒担体14の外周面に沿って所定の広がりをもった範囲で触媒担体14に接触配置されており、端子18A、18Bから電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。そして、この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒が有する排気の浄化作用をより高く発揮させることができるようになっている。
【0023】
本実施形態では、図1(B)から分かるように、排気の流れ方向に沿った断面で見て、
電極16A、16Bを、触媒担体14と同じ長さとしている。電極16A、16Bの上流側端部16Fが触媒担体14の上流側端面14Aと一致し、電極16A、16Bの下流側端部16Rが触媒担体14の下流側端面14Bと一致している。端子18A、18Bは、電極16A、16Bに対し、中央に接触配置されている。
【0024】
電極16A、16Bはいずれも、中央(端子18A、18Bが接続された箇所)から上流側及び下流側へ向かって、厚みが漸減する形状とされている。触媒担体14と電極16A、16Bとを併せた部材を考えると、この部材の直径が中央から端部に向かって漸減しているので、この部材に、後述する保持部材24を巻きつけた状態でケース筒体28に挿入するときの挿入性が高くなっている。なお、このように、他の部材への挿入性が高い構造としては、図1と同様の断面で見たときに、少なくとも両端部の近傍部分において、径が漸減されていればよい。また、このように他の部材への挿入性を高める必要がなければ、電極としては、排気の流れ方向で一定の厚みを有する形状としてもよい。
【0025】
図2には、電極16A内における、端子18Aから触媒担体14までの電流の流れが示されている。特に、図2では、端子18Aの近傍から上流側部分のみを採り上げ、中央部分と、これよりも上流側の3箇所における電流を矢印EC−1、EC−2、EC−3、EC−4でそれぞれ例示している。なお、電極16Aにおいて、端子18Aより下流側も、上流側と対称な電流の流れとなる。また、電極16Bについても、電極16Aと上下で対称な電流の流れとなる。
【0026】
この図2から分かるように、電極16Aの中央部では、端子18Aから触媒担体14までの電流の経路(矢印EC−1で示す電流を参照)が短いが、矢印EC−2〜EC−4から分かるように、電極16Aの端部に向かうにつれて、端子18Aから触媒担体14までの電流の経路が徐々に長くなる。
【0027】
一般に、物質の電気抵抗Rは、体積抵抗率をρ、電流が流れる部分の断面積をA、長さをLとして、
R=ρ・L/A ・・・・(1)
の関係がある。したがって、電極16Aが一様な体積抵抗率を有している構造(比較例)を考えると、端子18Aから触媒担体14に至るまでの電極16Aの電気抵抗は、中央部で最低で、両端部に近い位置ほど漸増する。このため、触媒担体14において、中央部でより多くの電流が流れ、上流側端面14A及び下流側端面14Bに向かって少ない電流となる(電流密度が不均一となる)。
【0028】
これに対し、本実施形態に係る電極16Aでは、中央部で体積抵抗率が最も高く、両端部に向かって体積抵抗率が漸減するように、電極16Aを構成する材質(あるいは、電極を構成する材料の粒径等)が調整されている。したがって、電極16Aの電気抵抗に着目すると、電極16Aの長手方向において、相対的に中央部で高く、両端部に向かって漸減されており、比較例の構造よりも、電気抵抗の均一化が図られている。換言すれば、電極16Aを全体で考えると、一様な体積抵抗率の電極と比較して、両端部により多くの電流を流すことで、より均一化された電流とすることが可能となっている。
【0029】
触媒担体14の外周には、絶縁性材料によって円筒状に形成された保持部材24が配置されている。さらに、保持部材24の外周には、ステンレス等の金属あるいはセラミック等の絶縁体で円筒状に成形されたケース筒体28が配置されている。すなわち、円筒状のケース筒体28の内部に、触媒担体14が収容されると共に、ケース筒体28と触媒担体14との間に配置された保持部材24により、触媒担体14がケース筒体28の内部に隙間なく保持されている。そして、絶縁性を有する保持部材24が触媒担体14とケース筒体28との間に配置されているので、触媒担体14からケース筒体28への電気の流れが阻止されている。
【0030】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0031】
触媒コンバータ装置12は、そのケース筒体28が排気管の途中に取り付けられており、触媒担体14の内部を排気が矢印F1方向に通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の有害物質が浄化される。本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより早期に発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0032】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、電極16A、16Bの体積抵抗率が中央部で高く、両端部に向かって漸減されている。電極16A、16Bの電気抵抗が電極16Aの長手方向で均一化されており、実際の電流としても、図1に矢印EFで示すように、長手方向の各部位で均一化される。
【0033】
このため、図2に矢印EFで示すように、触媒担体14を流れる電流も、中央部と両端部(上流側端面14A及び下流側端面14Bの近傍)とで均一に近づく。このように、触媒担体14を流れ方向に沿った断面で見て、位置によらず電流を均一化して供給することで、触媒担体14をより均一に加熱することが可能となる。そして、触媒担体14全体として、温度ムラを少なくして、均一な温度分布に近づけることが可能になる。
【0034】
特に、本実施形態では、図1から分かるように、電極16A、16Bの厚みが、中央部で厚く、両端部に向かって漸減している。このような電極16A、16Bの厚みによって、電流の流れる部分の断面積も両端部のほうが小さくなるため、電気抵抗は大きくなりがちである。しかし、本実施形態では、このような電極16A、16Bの形状であっても、両端部における電気抵抗を相対的に低くして、触媒担体14を流れる電流を均一に近づけることが可能である。
【0035】
上記では、端子18A、18Bが電極16A、16Bに対し、排気の流れ方向(図1に示す断面)で中央部に接触配置されている例を挙げているが、端子18A、18Bがそれぞれ、電極16A、16Bに対し中央部以外の位置で接触配置されていてもよい。ただし、電極16A,16Bの中央部において端子18A、18Bをそれぞれ接触配置すると、端子18A、18Bに対し電極16A、16Bが対称形状となるので、電流を均一に流す観点から、好ましい。
【0036】
電極16A、16Bの体積抵抗率は、長手方向で連続的に変化していてもよいが、図3に示すように、電極16A、16Bを長手方向で複数の区画に分け、これらの区画ごとに所定の体積抵抗率としてもよい(長手方向では、体積抵抗率が段階的に変化することになる)。
【0037】
上記では、電極16A、16Bを構成する材料の体積抵抗率を変えることで、電極16A、16Bの抵抗を端子18A、18Bから遠ざかるにつれて小さくなるようにしているが、電極16A、16Bの抵抗を部位ごとに変化させるためには、上記した式(1)からも分かるように、電流が流れる部分の断面積Aや長さLを調整してもよい。
【符号の説明】
【0038】
12 触媒コンバータ装置
14 触媒担体
14A 上流側端面
14B 下流側端面
16A、16B 電極
16F 上流側端部
16R 下流側端部
18A、18B 端子
24 保持部材
28 ケース筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、
前記触媒担体に対し、前記排気の流れ方向に沿った外面に接触配置された一対の電極と、
前記電極にそれぞれ接続され電極に通電するための端子と、
を有し、
前記排気の流れ方向に沿った流れ方向において前記電極の電気抵抗が、前記端子から遠ざかるにつれて小さくされている触媒コンバータ装置。
【請求項2】
前記流れ方向断面で見たときの前記電極の厚みが、前記端子から遠ざかるにつれて薄くされている部分を電極が有している請求項1に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項3】
前記電極の前記電気抵抗が、前記流れ方向において体積抵抗率を異ならせることで前記端子から遠ざかるにつれて小さくされている請求項1又は請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項4】
前記流れ方向断面で見たとき前記端子が前記電極の中央に配置されると共に電極が端子に対し対称な構造とされている請求項3に記載の触媒コンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202396(P2012−202396A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71116(P2011−71116)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】