説明

触媒コンバータ装置

【課題】排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制可能な触媒コンバータ装置を得る。
【解決手段】ケース筒体28の内部において、保持部材26を介して触媒担体14が保持される。保持部材26は、金属等の熱伝導率の高い部材で構成されており、触媒担体14の熱を効率的にケース筒体28に伝えることで、ケース筒体28に付着したカーボンの燃焼を促進できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、たとえば特許文献1に記載されているように、触媒を担持する基材に発熱体を用い、通電により基材を発熱させるようにしたものがある。このように基材(触媒担体)を通電により加熱することで、排気の温度が低い状態であっても、早期に触媒担体を昇温させることができる。
【0003】
ところで、排気中にはカーボンが含まれる。カーボンが、触媒担体や、この触媒担体が収容される筒体に付着すると、筒体(金属製シェル)と触媒担体との間の電気抵抗がカーボンによって低下してしまい、触媒担体への通電効率(加熱効率)が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭49−124412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制可能な触媒コンバータ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、筒状に形成されて内部に前記触媒担体が収容されると共に排気管に取り付けられる筒体と、前記触媒担体の外周面に設けられ触媒担体に通電するための一対の電極と、前記筒体と前記触媒担体との間に配置され弾性により触媒担体を筒体内に保持する保持部材と、前記触媒担体から前記筒体へ伝熱させるための伝熱部材と、を有する。
【0007】
この触媒コンバータ装置では、触媒担体が電極を通じて通電され加熱昇温されると、担持された触媒による浄化効果をより早期に発揮させることができる。また、触媒担体は保持部材及び筒体を介して排気管に取り付けられており、保持部材は弾性を有しているので、触媒担体と筒体との相対的な位置変動が吸収される。
【0008】
排気中には、内燃機関の燃焼で生じたカーボンが含まれることがあり、このカーボンが触媒担体や筒体に付着すると、カーボンにも電流が流れるため、触媒担体への通電効率が低下することがある。本発明では、触媒担体から筒体へ伝熱させるための伝熱部材を有している。したがって、このような伝熱部材がない構成と比較して、触媒担体の熱(電極からの通電による発熱に限定されず、排気から触媒担体に作用した熱や、触媒担体における触媒の反応熱を含む)を効率的に筒体に伝え、筒体の内周面に付着したカーボンを効果的に燃焼させることができる。カーボンを燃焼させて除去することで、触媒担体への通電効率の低下を抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記保持部材が金属製とされている。
【0010】
保持部材を金属製とすることで、たとえば樹脂製のものと比較して熱伝導率が高いので、保持部材が伝熱部材を兼ねる構成を実現できる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記保持部材が前記伝熱部材を兼ねている。
【0012】
保持部材が伝熱部材を兼ねているので、これらを別体とした構成と比較して、部品点数が少なくなる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記筒体が、前記触媒担体との間に前記保持部材が配置される大径部と、前記大径部よりも小径とされ前記触媒担体との間に前記伝熱部材が配置される小径部と、を有する。
【0014】
このように、筒体に大径部と小径部とを設け、大径部と触媒担体との間に保持部材を配置することで、保持部材の厚みを確保できるので、保持部材の弾性を高く発揮させて触媒担体を筒体内に保持できる。また、小径部と触媒担体との間に伝熱部材を配置することで、伝熱部材の厚みを薄くし、触媒担体から筒体への効率的な伝熱が可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記伝熱部材の一部が、前記排気の流れ方向上流側に露出している。
【0016】
したがって、伝熱部材の露出部分にカーボンが付着しやすくなるが、伝熱部材も触媒担体からの熱によって昇温されるので、付着したカーボンを効率的に燃焼させて除去できる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記筒体を前記触媒担体に対し電気的に絶縁する絶縁部材、を有する。
【0018】
絶縁部材により、触媒担体から筒体への電流が抑制されるので、触媒担体への通電効率がより高くなる。絶縁部材は、たとえば、伝熱部材が備えていてもよいし、これらとは別体で、たとえば、触媒担体と伝熱部材との間、あるいは伝熱部材と筒体との間に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において部分的に拡大して示す断面図であり、(A)はカーボンが付着した状態、(B)はカーボンが部分的に燃焼されて除去された状態を示す。
【図3】本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が排気管10への装着状態で示されている。
【0022】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料(導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている)によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14は、ハニカム状または波状等とした薄板を渦巻状あるは同心円状等に構成することで材料の表面積が増大された円柱状あるいは円筒状に形成されており、表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。触媒は、排気管10内を流れる排気(流れ方向を矢印F1で示す)中の有害物質を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状や波状に限定されるものではない。
【0023】
触媒担体14には2枚の電極16A、16Bが触媒担体14に対し対称の位置(図1では上下)に貼着されている。本実施形態では、電極16A、16Bの長さを触媒担体14の長さと一致させている。そして、電極16A、16Bの上流側端部16Uが、触媒担体14の上流側端面14Aと軸方向で同一位置になっている。同様に、電極16A、16Bの下流側端部16Lが、触媒担体14の下流側端面14Bと軸方向で同一位置になっている。
【0024】
電極16A、16Bにはそれぞれ、金属等の導電性を有する材料で構成された導線部材20A、20Bを介して端子18A、18Bが接続されている。端子18A、18Bはいずれも、中心の電極棒22の周囲を絶縁層24が覆う構造とされている。電極棒22の外側端部(導線部材20A、20Bと反対側の端部)は、触媒担体14への給電用のケーブルが接続される接続部22Cとされている。
【0025】
絶縁層24は電気絶縁性を有する材料によって円筒状に形成されている。絶縁層24は、電極棒22の外周面を全周にわたって覆うことで、電極棒22から、ケース筒体28のカバー部36への電気の流れが阻止されている。
【0026】
導線部材20A、20Bは、たとえばジグザグ状に、あるいは螺旋状に形成されて可撓性を有するようになっており、後述するようにケース筒体28と触媒担体14とが相対移動した場合に、この相対移動を吸収することが可能とされている。そして、端子18A、18Bから導線部材20A、20B及び電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒の浄化作用をエンジン始動直後等であっても早期に発揮させることができるようになっている。
【0027】
触媒担体14の外周には、金属性の材料(たとえばワイヤメッシュ等)によって略円筒状に形成された保持部材26が配置されている。さらに、保持部材26の外周には、ステンレス等の金属で略円筒状に成形されたケース筒体28が配置されている。換言すれば、略円筒状のケース筒体28の内部に、触媒担体14が収容されると共に、ケース筒体28と触媒担体14との間に配置された保持部材26により、触媒担体14がケース筒体28の内部に、同心(中心線CL)で保持されている。
【0028】
保持部材26は所定の弾性も有している。ケース筒体28と導電性セラミック製の触媒担体14とでは線膨張係数が異なっているため、排気管10内を通過する排気の熱や触媒担体14への通電加熱による膨張量が異なることとなるが、この膨張量の違いが、保持部材26の弾性により吸収される。さらに、排気管10を通じた振動の入力に対しても、保持部材26が緩衝作用を発揮しつつケース筒体28と触媒担体14との位置ズレを吸収する。
【0029】
また、保持部材26は、金属製の材料で構成されているので、他の材料(たとえばセラミックや樹脂等)と比較して、熱伝導率が高い。このため、触媒担体14の熱を、効率的にケース筒体28に伝えることが可能になっている。なお、第1実施形態及び後述する第2実施形態では、保持部材26が、本発明に係る伝熱部材を兼ねている構成である。
【0030】
本実施形態では、保持部材26は、軸方向に2分割されており、上流側保持部材26Pと下流側保持部材26Qとが構成されている。そして、上流側保持部材26Pと下流側保持部材26Qの間に、導線部材20A、20B及び端子18A、18Bの一部を収容する電極収容部30が形成されている。保持部材26と導線部材20A、20B及び端子18A、18Bとは非接触となっている。
【0031】
また、図1から分かるように、保持部材26を全体で見たとき、触媒担体14と保持部材26とは軸方向で概ね同じ長さに形成されており、触媒担体14の上流側端面14Aと保持部材26の上流側端面26Aとは略面一になっている。同様に、触媒担体14の下流側端面14Bと保持部材26の下流側端面26Bとは略面一になっている。そして、このように伝熱部材でもある保持部材26の一部(上流側端面26A)が、上流側に露出している。また、保持部材の他の部分(下流側端面26B)が、下流側に露出している。
【0032】
なお、保持部材26を上記のように2分割することなく、その上流側端面26Aから下流側端面26Bまで連続する略円筒状に形成してもよい。この場合には、電極収容部30を、電極16A、16Bのそれぞれに対応する位置に、保持部材26を厚み方向に貫通する孔部として構成することができる。
【0033】
ケース筒体28は、略円筒状に成形されており、流れ方向上流側において、下流へ向かって径が漸増された上流側テーパー部28Aと、流れ方向中間部分において上流側テーパー部28Aから連続し、排気管10よりも大径の中間部28B、及び長手方向下流側において、中間部28Bから連続すると共に下流へ向かって径が漸減された下流側テーパー部28Cを有している。
【0034】
排気管10の前側パイプ10Aの下流側端部は上流側テーパー部28Aの上流側端部に、排気管10の後側パイプ10Bの上流側端部が下流側テーパー部28Cの下流側端部にそれぞれ接続されており、排気の流路断面積が、このケース筒体28の部分(特に中間部28B)では局所的に拡大されていることになる。
【0035】
中間部28Bには、端子18A、18Bを収容可能な略筒状のカバー部36が設けられている。このカバー部36の内部に端子18A、18Bが挿通された状態で、カバー部36の開口部分が蓋板38で閉塞されている。
【0036】
ケース筒体28は、少なくとも触媒担体14及び保持部材26に対し絶縁性を有する構造とされている。したがって、触媒担体14の電流が、不用意にケース筒体28に流れて、触媒担体14への通電効率が低下しないようになっている。なお、ケース筒体28の絶縁構造としては、たとえば、ケース筒体28全体を、絶縁性を有する材料で構成する構造が挙げられる。この構成では、ケース筒体28が、本発明に係る絶縁部材にもなっている。
【0037】
また、ケース筒体28の本体部分を金属製とし、その内周面に絶縁性膜を設ける(たとえば絶縁性の樹脂薄膜を貼着あるいは塗布する)等により、触媒担体14及び保持部材26に対する絶縁性を確保する構造でもよい。この構成では、内周面の絶縁性膜が、本発明に係る絶縁部材を構成している。後述するように、触媒担体14から作用した熱を利用してケース筒体28の内周面に付着したカーボンの燃焼を促進する観点からは、ケース筒体28の本体部分を金属製として、熱伝導性が高い構造としておくことが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0039】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、そのケース筒体28が排気管10の途中に、排気管10と同心になるように取り付けられ、触媒担体14の内部を排気が通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の有害物質が浄化される。
【0040】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B、導線部材20A、20B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより高く発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。なお、排気の温度が充分に高い場合は、触媒担体14が排気からの熱で昇温されるので、触媒担体14に通電する必要はない。
【0041】
エンジンからの排気にはカーボンが含まれていることがある。図2(B)に示すように、このカーボンCBが触媒担体14の上流側端面14A(あるいは下流側端面14B)から保持部材26の上流側端面26A及びケース筒体28の内周面にかけて付着し、ケース筒体28の内周面において、全周にわたって繋がる(環状に連続してしまう)と、触媒担体14に流れるべき電流がカーボンCBにも流れるため、触媒担体14の通電効率が低下することがある。さらに、触媒担体14に担持された触媒の加熱効率も低下する懸念がある。
【0042】
ここで、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、保持部材26が金属製の材料で構成されており、金属以外の材料で構成されたものと比較して、熱伝導率が高くなっている。したがって、触媒担体14の熱が、保持部材26を介して、ケース筒体28に効率的に伝わり、ケース筒体28の温度を効率的に上昇させることができる。
【0043】
これにより、図2(A)に示すように、ケース筒体28の内周面に付着したカーボンCBを燃料させて除去することができる。なお、図2(A)では図示の便宜上、ケース筒体28の内周面に付着したカーボンCBのみが燃料により除去された状態を示しているが、(燃焼されたカーボンを符号CB’で示す)実際には、触媒担体14や、電極16A、16B、保持部材26に付着したカーボンCBも、これらの温度に応じて燃料され除去される。特に、保持部材26も触媒担体14からの熱が作用することにより昇温されるので、上流側端面26Aに付着したカーボンCBを効果的に燃焼させて除去することができる。そして、このようにカーボンCBが除去されることで、触媒担体14への通電効率の低下を抑制できる。
【0044】
なお、図2(A)及び(B)では、触媒担体14の上流側端面14Aの近傍のみを示しているが、触媒担体14の下流側端面14Bの近傍においても、触媒担体14を通過してカーボンが付着することがある。本実施形態では、触媒担体14の下流側端面14Bの近傍においても、ケース筒体28の内周面や、保持部材26の下流側端面26Bに付着したカーボンを効果的に燃焼させて除去することが可能である。
【0045】
このように、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、保持部材26を金属製として熱伝導率を高くすることで、触媒担体14の熱を効率的にケース筒体28に伝えて、カーボンCBを燃焼させることができる。なお、この場合の触媒担体14の熱としては、電極16A、16Bからの通電による発熱の他に、排気から作用する熱や、触媒担体14に担持された触媒の反応熱等が含まれる。
【0046】
なお、上記実施形態において、触媒担体14を流れるべき電流が金属製の保持部材26を流れないように、保持部材26を絶縁構造とすることが好ましい。たとえば、保持部材26を構成するワイヤーメッシュに絶縁性のコーティングを施して、熱伝導率は高く確保しつつ、触媒担体14から保持部材26への漏電は抑制する構造としてもよい。この構成では、絶縁性コーティングが、本発明に係る絶縁部材を構成している。
【0047】
また、保持部材26を、触媒担体14の周方向では複数に分割することで、一方の電極16Aから保持部材26を介して他方の電極16Bに電流が流れることを抑制してもよい。さらに、電極16A、16Bを、保持部材26には接触しない程度に短くしてもよい。加えて、以下の第2実施形態の触媒コンバータ装置52の構造としてもよい。
【0048】
図3には、本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置52が示されている。第2実施形態の触媒コンバータ装置52は、第1実施形態の触媒コンバータ装置12を略同一の構成とされているが、電極16A、16Bと保持部材26との間に、絶縁部材54が配置されている点が、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と異なっている。
【0049】
したがって、第2実施形態の触媒コンバータ装置52においても、触媒担体14を流れるべき電流が金属製の保持部材26を流れないようになり、触媒担体14への通電効率がより高くなる。
【0050】
なお、第2実施形態の触媒コンバータ装置52において、絶縁部材54の具体的構成は特に限定されず、たとえば、薄膜状の絶縁材料を電極16A、16Bあるいは保持部材26の所定位置に貼着した構造や、特定条件下でゲル状あるいはペースト状となる絶縁材料を電極16A、16Bあるいは保持部材26の所定位置に塗布し硬化させた構造を挙げることができる。さらには、たとえば、ガラスコーティング層を薄層化してコーティングした構成や、アルミナ等も適用可能である。
【0051】
図4には、本発明の第3実施形態の触媒コンバータ装置62が示されている。第3実施形態の触媒コンバータ装置62において、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0052】
第3実施形態の触媒コンバータ装置62では、第1実施形態の保持部材26に代えて、保持部材64と伝熱部材66が用いられている。2つの伝熱部材66はそれぞれ略円筒状に形成されており、触媒担体14の上流側端面14Aあるいは下流側端面14Bと面一になる位置で、触媒担体14の外周面とケース筒体28の内周面に接触するように配置されている。伝熱部材66の一部(上流側端面66A)が上流側に露出し、他の部分(下流側端面66B)が下流側に露出している。
【0053】
2つの保持部材64はそれぞれ、伝熱部材66よりも軸方向で中央寄りの位置(導線部材20A、20Bに近い位置)で、触媒担体14の外周面とケース筒体28の内周面に接触するように配置されている。
【0054】
保持部材64は、略円筒状に形成されているが、第1実施形態の保持部材26と異なり、絶縁性の材料で構成されている。そして、ケース筒体28の内部において、所定位置で触媒担体14を保持している。また、所定の弾性により、ケース筒体28と触媒担体14との膨張量の違いや、位置ズレを吸収する。
【0055】
これに対し、伝熱部材66は、金属等の熱伝導率の高い材料で構成されている。たとえば、第1実施形態の保持部材26と同様に、ワイヤーメッシュ等を適用可能である。但し、第3実施形態では、ケース筒体28内の所定位置に触媒担体14を保持する作用は、保持部材64が担っている。第3実施形態の伝熱部材としては、ケース筒体28内の所定位置に触媒担体14を保持する作用を奏する必要はなく、むしろ、保持部材64の弾性によって触媒担体14を所定位置に保持する作用を阻害しないように、弾性を低く設定されている(やわらかくされている)。このように、第3実施形態に係る伝熱部材66は弾性を発揮して触媒担体14を保持する必要がないので、より熱伝導率の高い材料や構造とすることが可能である。
【0056】
このように、第3実施形態の触媒コンバータ装置62では、触媒担体14をケース筒体28の内部の所定位置に保持する作用と、触媒担体14の熱を効率的にケース筒体28に伝える作用とを、保持部材64と伝熱部材66とで分担して担っている。したがって、保持部材64としては、触媒担体14をケース筒体28の内部の所定位置に保持する作用に優れたものを用い、伝熱部材66としては、触媒担体14の熱をケース筒体28に伝える作用に優れたものを用いることが可能となる。
【0057】
図5には、本発明の第4実施形態の触媒コンバータ装置72が示されている。第4実施形態の触媒コンバータ装置72では、第3実施形態の触媒コンバータ装置62と同様の保持部材64及び伝熱部材66を有しているが、ケース筒体28の形状が第3実施形態と異なっている。
【0058】
すなわち、第4実施形態に係るケース筒体28は、中間部28Bにおいて、大径部28Lと小径部28Sとが構成されている。大径部28Lは、保持部材64が配設される位置に設けられ、小径部28Sは、伝熱部材66が配設される位置に設けられている。
【0059】
図4と図5とを比較すれば分かるように、大径部28Lは、第3実施形態のケース筒体28の中間部28Bよりも大径とされている。また、小径部28Sは、中間部28Bよりも小径とされている。
【0060】
したがって、第4実施形態の触媒コンバータ装置72では、第3実施形態の触媒コンバータ装置62と比較して、保持部材64は厚くなっている。これにより、保持部材64の弾性をより効果的に発揮させて、触媒担体14をケース筒体28の内部に確実に保持することが可能になる。
【0061】
また、第4実施形態の触媒コンバータ装置72では、第3実施形態の触媒コンバータ装置62と比較して、伝熱部材66は薄くなっている。これにより、触媒担体14からケース筒体28への伝熱性を高め、より効果的にケース筒体28を昇温させることが可能になる。そして、ケース筒体28の内周面に付着したカーボンCBの燃焼をさらに促進することが可能である。
【0062】
なお、第3実施形態の触媒コンバータ装置62及び第4実施形態の触媒コンバータ装置72において、第2実施形態の触媒コンバータ装置52と同様に、電極16A、16Bと伝熱部材66との間に絶縁部材54を配置してもよい。また、絶縁部材54に代えて(あるいは併用して)伝熱部材66を絶縁構造としてもよい。
【0063】
本発明の保持部材としては、必ずしも金属製とされている必要はなく、熱伝導率の高い樹脂やセラミック等(熱伝導率の具体的数値の例として、0.5W/(m・k)以上)であれば、触媒担体の14の熱を効果的にケース筒体28に伝えてカーボンを燃焼させることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 排気管
12 触媒コンバータ装置
14 触媒担体
14A 上流側端面
14B 下流側端面
16A、16B 電極
18A、18B 端子
20A、20B 導線部材
26 保持部材(伝熱部材)
28 ケース筒体
28L 大径部
28S 小径部
52 触媒コンバータ装置
54 絶縁部材
62 触媒コンバータ装置
64 保持部材
66 伝熱部材
72 触媒コンバータ装置
CB カーボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、
筒状に形成されて内部に前記触媒担体が収容されると共に排気管に取り付けられる筒体と、
前記触媒担体の外周面に設けられ触媒担体に通電するための一対の電極と、
前記筒体と前記触媒担体との間に配置され弾性により触媒担体を筒体内に保持する保持部材と、
前記触媒担体から前記筒体へ伝熱させるための伝熱部材と、
を有する触媒コンバータ装置。
【請求項2】
前記保持部材が金属製とされている請求項1に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項3】
前記保持部材が前記伝熱部材を兼ねている請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項4】
前記筒体が、
前記触媒担体との間に前記保持部材が配置される大径部と、
前記大径部よりも小径とされ前記触媒担体との間に前記伝熱部材が配置される小径部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項5】
前記伝熱部材の一部が、前記排気の流れ方向上流側に露出している請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項6】
前記筒体を前記触媒担体に対し電気的に絶縁する絶縁部材、
を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219776(P2012−219776A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89174(P2011−89174)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】