説明

触媒フェノール水素化

本発明は、芳香族化合物を水素化する方法に関する。本発明は特に、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ土類金属の炭酸塩の群から選択されるドーパントを含む担持水素化触媒を含む反応器に供給されたフェノールを触媒水素化することによって、連続的にシクロヘキサノン、シクロヘキサノールまたはそれらの混合物を製造する方法であって、そのプロセスにおいて、フェノールの水素化中に、水が連続的または断続的に反応器に供給され、反応器に供給される水と反応器に供給されるフェノールとの重量比が、平均で0.1以下である方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、芳香族化合物を水素化する方法に関する。本発明は特に、フェノールの水素化によって連続プロセスでシクロヘキサノン、シクロヘキサノールまたはそれらの混合物を製造する方法に関する。
【0002】
シクロヘキサノンは、酸化反応において工業溶媒または活性化剤として使用することができる。とりわけアジピン酸、シクロヘキサノン樹脂、カプロラクタム、ナイロン6およびナイロン6,6の製造において中間体としても使用される。
【0003】
フェノールからのシクロヘキサノンの製造において、通常シクロヘキサノール(シクロヘキサノンにさらに転化するのに有用な中間体生成物としてみなすことができる)も形成される。
【0004】
シクロヘキサノンおよび/またはシクロヘキサノールは従来通り、例えば白金またはパラジウム触媒を使用したフェノール水素化反応器における接触水素化によって、フェノールから製造することができる。その反応は、液相または気相で行うことができる。[Kirk−OthmerEncyclopedia of Chemical Technology,e.g.3rd Edition,Vol 7(1979)page 410−416;I.Dodgson et al.“A low Cost Phenol to Cyclohexanone Process”,Chemistry & Industry 18 December 1989,p 830−833;A.C.Dimian and C.S.Bildea“Chemical Process Design,Computer−Aided Case Studies”,Wiley−VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,Germany,Chapter 5,page 129−172;またはhttp://www.mrw.interscience.wilev.com/emrw/9783527306732/search/firstpaqeから電子的に入手可能な、M.T.Musser“cyclohexanol and Cyclohexanone”,Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(7thEdition,2007)(以降、「Musser」)]。
【0005】
従来のプロセスでは、一般に、所望の生成物(フェノール供給物のパーセンテージとして形成されるシクロヘキサノンおよび/またはシクロヘキサノール)の収率、反応の選択性(転化されたフェノールのパーセンテージとしてのシクロヘキサノンおよび/またはシクロヘキサノール)の間で妥協しなければならない。上記に示される手引き書の記載のように、温度、触媒の選択、および水素/フェノールの供給比などのいくつかの因子が本明細書において役割を果たす。
【0006】
本発明の一目的は、芳香族化合物、特にフェノールを1種または複数種の水素化化合物へと触媒水素化することによって所望の化合物、特にシクロヘキサノン、シクロヘキサノールまたはそれらの混合物を製造する新規な方法を提供することである。
【0007】
芳香族化合物、特にフェノールの転化を増加し、および/または1種または複数種の化合物、特にシクロヘキサノンおよび/またはシクロヘキサノールに対する選択性を高めることを可能にするかかる方法を提供することが特に目的である。
【0008】
本発明の根底にある1つまたは複数の目的は、フェノールの水素化前および/または水素化中に、触媒と接触させることができる特定の助剤を使用することによって満たされることが判明した。
【0009】
したがって、第1態様において、本発明は、水素化触媒を含む反応器に供給されたフェノールを触媒水素化することを含む、シクロヘキサノン、シクロヘキサノールまたはそれらの混合物を連続プロセスで製造する方法であって、その水素化触媒は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ土類金属の炭酸塩の群から選択されるドーパントを含む担持触媒であり;
フェノールの水素化中、連続的または断続的に水が反応器に供給され、反応器に供給される水と反応器に供給されるフェノールとの重量比が平均で0.1以下である、方法に関する。
【0010】
水素化触媒は原則的に、水素化される化合物の水素化を触媒することができる、任意の担持水素化触媒であることができる。
【0011】
通常、その触媒は、1種または複数種の触媒活性金属を含む。かかる金属は特に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウムおよびオスミウムの群から選択することができる。
【0012】
パラジウム、白金またはその組み合わせが、特にフェノールの水素化に、とりわけシクロヘキサノン、またはシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物(シクロヘキサノンがこれら2成分の主要成分である)への水素化に、好ましい触媒活性金属である。
【0013】
原則的に、それが担持する触媒材料と組み合わせて、対象の化合物の水素化において使用するのに適した担体を使用することができる。特に、適切な担体は、アルミナ、活性炭、酸化チタン、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックの群から選択することができる。使用することができる、もう1つの担体はシリカである。
【0014】
反応条件下での担体の良好な安定性および/または向上した転化率に特に好ましいのは、アルミナおよび活性炭の群から選択される担体である。
【0015】
アルミナは、水および水素化される化合物が蒸気として反応器に供給される実施形態に特に好ましい。
【0016】
活性炭は、水および水素化される化合物が液体として反応器に供給される実施形態に特に好ましい。
【0017】
以下の実施例によって説明されるように、水素化反応中に連続的または断続的に水(または蒸気)を供給することによって水で水素化触媒を処理することで、フェノールの転化率が増加する。水が連続的に添加された場合、転化率がより高いレベルに維持されるが、本発明者らは、水の供給が止められ、フェノールの水素化が続けられた場合にも、反応器に水が全く供給されていない参照の方法よりも高い転化率が認められることを確認した。これは特に、水の供給が断続的に行われる場合に重要である。
【0018】
水を使用して、フェノール以外の芳香族化合物を水素化することによって、シクロヘキサノールまたはシクロヘキサノン以外の1種または複数種の化合物を製造する方法を改善することもできることがさらに予想される。したがって、本発明はさらに、連続プロセスにおいて、水素化触媒を含む反応器に供給された芳香族化合物を触媒水素化する方法であって、その反応器に連続的または断続的に水が供給される方法に関する。
【0019】
フェノールの水素化に加えて、官能基、例えばヒドロキシル、カルボニル、ニトロ、カルボキシルまたは1−オキソ−2−プロペニル(CH=CH−(C=O)−)の不飽和炭素間結合などの不飽和炭素間結合の水素化、または置換基を含む他の芳香族化合物の水素化、特に置換ベンゼンの官能基を相当する水素化化合物へと水素化するために、例えばニトロベンゼンをアニリンへと水素化するために、かかる方法を使用することができることが予想される。
【0020】
さらに、芳香族環を含む芳香族化合物を相当する環状脂肪族化合物へと水素化するために、例えばベンゼンをシクロヘキサンに水素化するため、またはアニリンをシクロヘキシルアミンに水素化するために、かかる方法を使用することができることが予想される。
【0021】
このように製造された化合物は例えば、他の所望の化合物の溶媒または中間体として使用することができる。例えば、シクロヘキサンを酸化して、シクロヘキサノンを製造することができる。
【0022】
本明細書で使用される「または」という用語は、別段の指定がない限り「および/または」として定義される。
【0023】
本明細書で使用される「1つ(a)または(an)」は、別段の指定がない限り「少なくとも1つ」として定義される。
【0024】
単数で「名詞」(例えば、化合物、添加剤等)が言及される場合、複数が包含されることを意味する。したがって、具体的な名詞、例えば「化合物」が言及される場合、これは、別段の指定がない限りその「少なくとも1つ」、例えば「少なくとも1種類の化合物」を意味する。
【0025】
独国特許第19727712号明細書には、バッチ式で行われ、かつアルカリ性成分に対して水を20重量%〜200重量%含むアルカリ性成分とそれを混合した後に反応器に供給される湿潤触媒が利用される、水素化プロセスが開示されていることが注目される。しかしながら、この文書には、連続式で行われる水素化反応過程中の水の連続的または断続的な供給が、開示も提示もされていない。
【0026】
さらに、米国特許第3,998,884号明細書には、使用される反応混合物中に、酸化アルミニウム担持ニッケル触媒および制御された量の水素および/または水を使用することによる、主にシクロヘキサノールへのフェノールの水素化が開示されている。しかしながら、前記参考文献で使用される水の量は、本発明による量よりもかなり多く、多くの他の触媒を含む。これらの先行技術参考文献も、それらの組み合わせも、本発明のプロセスおよびその利点を、教示も提示もしていない。
【0027】
水素化反応器は特に、水素化されるべき化合物を水素化するのに適した反応器の種類、特にフェノールの水素化に適した任意の反応器であることができる。特に、反応器は、充填層反応器、スラリー反応器、管内に触媒を有し、かつ蒸気を発生させるシェル・アンド・チューブ型熱交換式反応器、および他の適切な種類の反応器から選択することができる。最も好ましくは、本発明による水素化は、シェル・アンド・チューブ型熱交換式反応器で行われる。
【0028】
反応器に供給される水が本明細書で言及される場合、水は原則的に、あらゆる形状をとることができ、特に、水は、水を含む流体として反応器に供給することができる。その流体は、スチームなどの蒸気、または水蒸気を含む混合物、および水素などのガス、水蒸気とフェノール蒸気を含む混合物、または水素化される他の化合物の蒸気であることができ、流体は、液状の水または水性液などの液体、または液状の水および液状フェノールまたは水素化される他の液状化合物を含む混合物であることができ、または流体は、蒸気と液体の混合物であることができる。
【0029】
特定の実施形態において、フェノール(または水素化される他の化合物)および水が、蒸気として反応器に供給される。かかる方法では、特に、充填層反応器で良好な結果が達成されている。
【0030】
更なる特定の実施形態において、フェノール(または水素化される他の化合物)および水が液体として反応器に供給される。
【0031】
水は一般に、水と水素化される化合物(特にフェノール)との重量比が平均で0.1以下となる水素化反応に供給される。理論に束縛されることなく、水素化される化合物の転化率の増加に関して、他が同じ環境下では、かかる比を超えるさらに有益な効果はないと考えられる。一方、製造された生成物中の高濃度の水の存在は望ましくなく、したがって、転化率の向上に望ましい比よりも高い比は一般に、不要である。所望の場合には、例えば蒸発技術、例えば蒸留によって余分な水を除去することができるが、除去する必要がある水が多いほど、通常、意図する最大レベルまで水の除去を達成するのに、エネルギー消費が高くなる。したがって、特に最終生成物がほとんど水を含有しないか、または本質的に水を含有しない場合には、水と反応器に供給される水素化される化合物(特にフェノール)との重量比は、好ましくは0.05以下、0.02以下、または0.015以下である。
【0032】
水と水素化される化合物との最小重量比に関して、この最小値は、微量のその化合物を含み得て、純粋な化合物における前記比を超えることが確認される。
【0033】
例えば、フェノールは、一般に200ppm未満の微量の水を含有し得る(A.C.Dimian and C.S.Bildea:“Chemical Process Design,Computer−Aided Case Studies”,Wiley−VCH Verlag GmbH&Co,KGaA,Mannheim,2008,Chapter 5,page 130参照)。
【0034】
通常、水と、水素化される化合物、特にフェノールとの重量比は、平均で少なくとも0.0005、特に0.0010以上、つまり0.0010〜0.10の範囲である。本発明の好ましい方法において、前記比は平均で少なくとも0.0015である。特に好ましい方法では、向上した転化率を得るために、前記比は平均で少なくとも0.004である。特定の実施形態において、前記比は少なくとも0.010である。反応器に供給される水と反応器に供給されるフェノールとの重量比の特に好ましい範囲は、0.0010〜0.05、さらに特には0.0015〜0.02の範囲である。
【0035】
特に、フェノールなどの芳香族化合物を水素化する方法であって、パラジウムと、アルミナおよび活性炭の群から選択される担体とを含む担持触媒が利用される方法において、水の供給は有益であり得る。
【0036】
触媒金属の濃度は、広い限度内で選択することができる。通常、触媒金属は、担体の重量に対して0.1〜20重量%の濃度、特に担体の重量に対して0.2〜10重量%の濃度、さらに特には担体の重量に対して0.5〜2重量%の濃度で存在する。
【0037】
具体的には、水および水素化される化合物、特にフェノールが蒸気として反応器に供給される方法では、担体の重量に対する触媒金属の濃度は、好ましくは0.1〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.2〜5重量%の範囲、または0.5〜2重量%の範囲である。
【0038】
具体的には、水および水素化される化合物、特にフェノールが液体として反応器に供給される方法では、担体の重量に対する触媒金属の濃度は、好ましくは0.2〜20重量%の範囲、さらに好ましくは1〜15重量%の範囲、または5〜10重量%の範囲である。
【0039】
上述のように、担持触媒は、ドーパント、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ土類金属の炭酸塩の群から選択されるドーパントを含む。具体的には、NaOH、KOH、炭酸ナトリウム、および酸化マグネシウムが好ましい。
【0040】
通常、総ドーパント濃度は、触媒の全重量(担体および触媒活性成分を含む)に対して少なくとも0.5重量%である。好ましくは、その濃度は、0.5〜2重量%の範囲である。
【0041】
水素供給速度、反応器内の温度および作業圧力などの他の反応条件は、それ自体が当技術分野で公知の適切な条件、例えば上記の先行技術またはそれに記載の先行技術に示される条件に基づく。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態において、フェノールおよび水は反応器内のスラリーに供給され、その反応器内で触媒は、フェノールと水を含む液相中に存在する。本発明のさらに他の特に好ましい実施形態において、フェノールは液体として反応器に供給され、水は蒸気として反応器に供給される。
本発明は、それに制限されることなく、以下の比較実験および実施例によって解明されるだろう。
【0043】
[比較実験A]
フェノール(0.14バール)、水素(0.61バール)および窒素(残りの圧力)からなる、全圧3.4バール(絶対圧力)を有する気体混合物(27.0Nl/時までの全ガスフロー量)を管型反応器に連続的に供給した、この管型反応器の内径は4.55mmであった。この反応器における触媒床は、フェノール水素化触媒(:プロモーターとしてNa(NaHCOとして)1重量%が添加されたアルミナ担体上の1重量%Pd0.2173グラム;BASF;元の星形触媒粒子を穏やかに粉砕し、ふるいにかけた後に得られた0.2〜1.0mmのふるい分級物)と、不活性SiC粒子(粒径:0.210〜0.297mm)2.270グラムとの混合物からなった。反応器を温度170℃に維持した。実験を開始した後、すぐにフェノールの転化が安定した。作業から29時間後に、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率40.92%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は0.66%であった。
【0044】
[実施例1]
反応器の気体供給物に水も添加されることを除いては、比較実験Aに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給物における水の濃度は、反応器供給物におけるフェノールに対して0.67重量%であった。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から29時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率80.54%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は1.02%であった。フェノールの高い転化率が長時間続いた。
【0045】
[比較実験B]
反応器を温度210℃に維持することを除いて、上述のように反応器の供給物に水を添加することなく、実施例1に記載の実験を続けた。修正されたこれらの条件下で作業して1時間後に、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率40.92%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は0.66%であった。
【0046】
[実施例2]
反応器の気体供給物に水も添加されることを除いては、比較実験Bに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給物における水の濃度は、反応器供給物におけるフェノールに対して0.67重量%であった。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から1時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率49.99%が示された。シクロヘキサノールに対する選択率は1.32%であった。
【0047】
[比較実験C]
フェノール水素化触媒および不活性SiC粒子の量がそれぞれ0.2202グラムおよび2.30グラムであることを除いては、比較実験Aに記載の実験を上述のように続けた。
【0048】
作業から45時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率36.26%が示された。形成された主要な生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は0.74%であった。
【0049】
[実施例3]
反応器の気体供給物に水も添加されることを除いては、比較実験Cに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給物における水の濃度は、反応器供給物におけるフェノールに対して3.6重量%であった。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から4時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率94.73%が示された。形成された主要な生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は1.46%であった。
【0050】
[比較実験D]
反応器を温度210℃に維持したことを除いては、反応器の供給物に水を添加することなく、実施例3に記載の実験を上述のように続けた。修正されたこれらの条件下で作業して1時間後に、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率18.90%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は1.10%であった。
【0051】
[実施例4]
反応器の気体供給物に水も添加されることを除いては、比較実験Dに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給物における水の濃度は、反応器供給物におけるフェノールに対して3.6重量%であった。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から1時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率44.56%が示された。シクロヘキサノールに対する選択率は1.26%であった。
【0052】
[比較実験E]
この実験において、完全な状態の(壊れていない)触媒粒子が使用されたことを除いては、比較実験Aに記載の実験を上述のように繰り返した。管型反応器の充填物は、不活性SiC粒子0.108グラムの最下層、および不活性SiC、0.1885グラムと合わせられた12倍の触媒粒子からなった。この反応器における触媒床は全部で、フェノール水素化触媒0.2214グラムと不活性SiC粒子2.368グラムからなった。
【0053】
フェノール(0.15バール)、水素(0.60バール)および窒素(残りの圧力)からなる、全圧3.4バール(絶対圧力)を有する気体混合物を管型反応器に連続的に供給した。この管型反応器の内径は4.55mmであった。この反応器における触媒床は、不活性SiC粒子0.108グラムの最下層、および不活性SiC粒子(粒径:0.210〜0.297mm)0.1885グラムと合わせられた12倍のフェノール水素化触媒粒子(:プロモーターとしてNa(NaHCOとして)1重量%が添加された、アルミナ担体上の0.9%Pd;BASF)からなった。この反応器における触媒床は合計で、フェノール水素化触媒0.2214グラムと不活性SiC粒子2.368グラムからなった。
【0054】
反応器を温度170℃に維持した。実験を開始した後、すぐにフェノールの転化率が安定化した。作業から26時間後に、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率29.80%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は4.91%であった。
【0055】
[実施例5]
反応器の気体供給物に水も添加されることを除いては、比較実験Eに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給物における水の濃度は、反応器供給物におけるフェノールに対して0.67重量%であった。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から26時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析し、フェノール転化率49.07%が示された。形成された主要生成物はシクロヘキサノンであった。シクロヘキサノールに対する選択率は6.37%であった。
【0056】
[比較実験F]
フェノール水素化工業プラントにおいて。管内に触媒を有し、外側にスチームが生じる、シェル・アンド・チューブ型熱交換式反応器に、全圧3.6バール(絶対圧力)を有する気体混合物を連続的に供給した。各管の内径は25mmであった。各管は水素化触媒で充填される(プロモーターとしてNa(NaHCOとして)1重量%が添加された、アルミナ担体上の1重量%Pd;BASF)。各反応器管における触媒床の高さは2.4mである。生成されたスチームの圧力は6.5バールであった。
【0057】
反応器に供給される全ガスフローは、16150Nm/時に達し、主に水素(約70体積%)、フェノール(約7200kg/時)および不活性成分(CHなど)からなる。
【0058】
反応器を出る生成物フローの分析から、反応器に供給されたフェノールの87.2モル%がシクロヘキサノン(76.2モル%)およびシクロヘキサノール(11.0モル%)に転化されたことが示された。
【0059】
[実施例6]
反応器の気体供給物に水100kg/時も添加されたことを除いては、比較実験Fに記載の実験を上述のように続けた。反応器の連続供給における水とフェノールの比は約1.4重量%に等しい。水を添加し始めたほぼ直後に、フェノールの転化率が増加し、増加レベルにてまもなく安定化した。水の添加を開始した後、作業から3時間後、反応器を出る気体生成物フローを分析した。
【0060】
この分析から、反応器に供給されたフェノールの98.1モル%がシクロヘキサノン(87.9モル%)およびシクロヘキサノール(10.2モル%)に転化されたことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒を含む反応器に供給されたフェノールを触媒水素化することを含む、シクロヘキサノン、シクロヘキサノールまたはそれらの混合物を連続プロセスで製造する方法であって、
前記水素化触媒が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属の炭酸塩およびアルカリ土類金属の炭酸塩の群から選択されるドーパントを含む担持触媒であり;
フェノールの水素化中、水が前記反応器に連続的または断続的に供給され、前記反応器に供給される水と前記反応器に供給されるフェノールとの重量比が平均で0.1以下である、方法。
【請求項2】
前記反応器に供給される水と前記反応器に供給されるフェノールとの重量比で、範囲0.0010〜0.10の前記水が、前記反応器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器に供給される水と前記反応器に供給されるフェノールとの重量比で、範囲0.0010〜0.05の前記水が、前記反応器に供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応器に供給される水と前記反応器に供給されるフェノールとの重量比で、範囲0.0015〜0.02の前記水が、前記反応器に供給される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フェノールおよび水が蒸気として前記反応器に供給される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フェノールおよび水が液体として前記反応器に供給される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フェノールが液体として前記反応器に供給され、かつ水が蒸気として前記反応器に供給される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、アルミナ、活性炭、酸化チタン、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックの群から選択される担体を含む担持触媒である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化触媒が、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウムおよびオスミウムの群から選択される少なくとも1種類の触媒金属を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化触媒が、パラジウムおよび白金の群から選択される少なくとも1種類の触媒金属を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、パラジウムと、アルミナおよび活性炭の群から選択される担体とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒金属が、前記担体の重量に対して0.1〜20重量%の濃度で、特に前記担体の重量に対して0.2〜10重量%の濃度で、さらに特には前記担体の重量に対して0.5〜2重量%の濃度で存在する、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化が、シェル・アンド・チューブ型熱交換式反応器で行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
フェノールおよび水が前記反応器内のスラリーに供給され、前記反応器内で前記触媒がフェノールと水を含む液相中に存在する、請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514309(P2013−514309A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543702(P2012−543702)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069707
【国際公開番号】WO2011/073233
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】