説明

触媒付き繊維集合体、その製造方法及び排ガス用浄化装置

【課題】触媒を利用したフィルタとしての機能が十分に得られる触媒付き繊維集合体、その製造方法、及びこれを用いた排ガス用浄化装置を提供すること。
【解決手段】触媒付き繊維集合体は、無機繊維から成る繊維集合体表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが20%以下である。
無機繊維から成る繊維集合体表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが20%以下である触媒付き繊維集合体の製造方法であって、酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒付き繊維集合体、その製造方法及び排ガス用浄化装置に係り、更に詳細には、無機繊維から成る繊維集合体の表面上に酸素吸放出材を含む所定の触媒成分層を備えた触媒付き繊維集合体、その製造方法及びこれを用いた排ガス用浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートマター(PM)の低減には、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が用いられている。
DPFとしては、耐熱性に優れたコージェライトや炭化ケイ素などのセラミックスの多孔体を交互目封じハニカム構造体としたものが一般的に使用されている。
このようなDPFにおいては、PMの捕集がセル壁で行われるため、PMがセル壁表面に堆積し、排ガスの圧力損失が急激に上昇する。
そのために、DPFを自己再生する際に、燃料噴射によって600℃以上の過熱燃焼処理を定期的に行うシステムが提案されている(特許文献1及び2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−294315号公報
【特許文献2】特開平8−189339号公報
【0004】
また、このようなDPFにおいて、セル壁表面に堆積したPMを白金やセリウムなどを含む触媒を利用して、PMの酸化を容易にし、連続的に酸化除去するシステムも提案されている(特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献3】特開2006−007117号公報
【0006】
一方、DPFとしては、無機繊維(主に耐熱性に優れる炭化ケイ素)を不織布に加工したものも提案されている(特許文献4参照。)。
【0007】
【特許文献4】特開2003−097253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に記載のDPFに、従来の触媒スラリーを用いた担持方法で触媒を担持しようとすると、目詰まりなどの不具合が生じてしまうため、無機繊維から成る繊維集合体の表面上に所定の触媒成分層を備えた触媒付き繊維集合体を得ることができていなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、触媒を利用したフィルタとしての機能が十分に得られる触媒付き繊維集合体、その製造方法、及びこれを用いた排ガス用浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の触媒付き繊維集合体は、無機繊維から成る繊維集合体表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、該無機繊維の平均繊維径に対し該触媒成分層の厚みが20%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の触媒付き繊維集合体の製造方法は、上記本発明の触媒付き繊維集合体の製造方法であって、酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の排ガス用浄化装置は、上記本発明の触媒付き繊維集合体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成することなどとしたため、触媒を利用したフィルタとしての機能が十分に得られる触媒付き繊維集合体、その製造方法、及びこれを用いた排ガス用浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の触媒付き繊維集合体について説明する。
上述の如く、本発明の触媒付き繊維集合体は、無機繊維から成る繊維集合体の表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが20%以下であるものである。
このような構成とすることにより、触媒を利用したフィルタとしての機能を十分に得ることができる。
【0016】
無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが20%を超える場合には、触媒を利用したフィルタとしての機能を発揮することができない。即ち、触媒成分層が所定の厚みを超えると、繊維集合体を用いることによる比表面積の向上効果が十分に得られない。また、触媒自体の比表面積も低下してしまう。
触媒を利用したフィルタとしての機能を十分に発揮するという観点からは、無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが0.01%以上10%以下であることが好ましく、0.01%以上5%以下であることが更に好ましい。
【0017】
また、具体的には、無機繊維の平均繊維径が30μmであるときは、触媒成分層の厚みは1〜3%であることが好ましい。また、無機繊維の平均繊維径が15μmであるときは、触媒成分層の厚みは2〜5%であることが好ましい。更に、無機繊維の平均繊維径が3μmであるときは、触媒成分層の厚みは3〜7%であることが好ましい。
【0018】
本発明において、「触媒成分層」とは、少なくとも酸素吸放出材を含めば、連続層であるもののみならず非連続層であるものをも含むものである。
従って、例えば触媒成分層が連続層である場合には、触媒成分層の厚みはその厚みを意味する。また、触媒成分層が非連続層である場合には、触媒成分層の各層の厚みを意味する。更に、非連続層が粒状である場合には、その粒径を意味する。
また、このような触媒成分層は、例えば白金などの貴金属やナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類金属等の他の成分を含むものであってもよいが、酸素吸放出材のみから成るものであってもよい。更に、触媒成分層を構成する酸素吸放出材は、例えば無機繊維の表面上に均一分散されて配設されていることが望ましい。
【0019】
上記酸素吸放出材としては、例えばセリウム含有酸化物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。即ち、プラセオジム含有酸化物、イットリウム含有酸化物、ランタン含有酸化物、マンガン含有酸化物などを挙げることもできる。また、例えばセリウム−プラセオジム含有酸化物などの混合ないし複合化したものを適用することもできる。酸素吸放出性能の観点からは、セリウム−プラセオジム含有酸化物が特に望ましい。
【0020】
上記無機繊維としては、例えば金属繊維を挙げることができるが、これに限定されるものではない。即ち、例えば非金属繊維を用いることもできる。
上記金属繊維としては、例えばフェライト系ステンレスなどの耐熱性金属の繊維を挙げることができる。
また、上記非金属繊維としては、例えば炭化ケイ素などの非酸化物やアルミニウム酸化物やアルミニウム−ケイ素酸化物、アルミニウム−チタン酸化物などの酸化物を挙げることができる。
なお、特に限定されるものではないが、無機繊維の平均繊維径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましく、5〜15μmであることが更に好ましい。
平均繊維径が1μm未満である場合には、圧損が悪化する場合があり、50μmを超える場合には、繊維構造体を構成できなくなる場合がある。
【0021】
更に、上記金属繊維や非金属繊維は適宜組み合わせることもできる。このような無機繊維としては、表面にアルミニウム含有酸化物を含む酸化物層を有する含アルミニウム金属繊維を好適例として挙げることができる。
本発明において、「含アルミニウム金属」とは、アルミニウムを含有している金属である。アルミニウムの含有率が1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。例えばR20−5USR鋼材などを好適例として挙げることができる。
【0022】
なお、特に限定されるものではないが、触媒付き繊維集合体の空隙率は50〜95%であることが好ましく、60〜85%であることがより好ましい。空隙率が50%未満の場合には圧損が悪化することがあり、95%を超える場合には、PM捕集が困難になることがある。
【0023】
次に、本発明の触媒付き繊維集合体の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の触媒付き繊維集合体の製造方法は、上述した触媒付き繊維集合体を得る方法であって、酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成する工程を含む方法である。
このような製法により、目詰まりを生じることなく、無機繊維から成る繊維集合体の表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、無機繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みが20%以下である所望の触媒付き繊維集合体を得ることができる。
なお、上述した本発明の触媒付き繊維集合体は、本発明の触媒付き繊維集合体の製造方法により製造されたものに必ずしも限定されるものではない。
【0024】
上記酸素吸放出材ゾルは、例えば粒子径が好ましくは500nm以下、より好ましくは50〜300nmであり、メジアン径が好ましくは100nm以下、より好ましくは5〜80nm、更に好ましくは10〜60nmであるもの用いることができる。
酸素吸放出剤ゾルの粒子径が500nm以下であると、上述した所望の触媒付き繊維集合体を簡易に作製することができる。また、粒子径が3000nm以上であると、繊維の細孔閉塞を招き、繊維フィルターの役割を果たさなくなる。
また、酸素吸放出材ゾルの粘度は、低いことが好ましい。
ここで、酸素吸放出材ゾルの粒子径やメジアン径は、例えば動的光散乱法により測定できる。
【0025】
上記酸素吸放出材ゾルとしては、例えばセリウム含有酸化物ゾルを用いることができるが、これに限定されるものではない。即ち、プラセオジム含有酸化物ゾル、イットリウム含有酸化物ゾル、ランタン含有酸化物ゾル、マンガン含有酸化物ゾルなどを用いることもできる。また、例えばセリウム−プラセオジム含有酸化物ゾルなどの混合ないし複合化したものを用いることもできる。酸素吸放出性能の観点からは、セリウム−プラセオジム含有酸化物ゾルを用いることが特に望ましい。
【0026】
上記触媒成分層形成用材料としては、酸素吸放出材ゾル以外に他の成分を含有しているもの、酸素吸放出材ゾルのみを含むもののいずれであっても用いることができる。
他の成分としては、白金などの貴金属やナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムやバリウムなどのアルカリ土類金属等を挙げることができるが、これらは溶液や固体、ゾルなどの状態のいずれの状態で含まれていてもよい。
【0027】
上記無機繊維から成る繊維集合体としては、例えば金属繊維から成る繊維集合体を用いることができるが、これに限定されるものではない。即ち、例えば非金属繊維から成る繊維集合体を適用することもできる。
上記金属繊維から成る繊維集合体としては、例えばフェライト系ステンレスなどの耐熱性金属の繊維から成る繊維集合体を挙げることができる。
また、上記非金属繊維から成る繊維集合体としては、例えば炭化ケイ素などの非酸化物やアルミニウム−ケイ素酸化物やアルミニウム−チタン酸化物などの酸化物から成る繊維集合体を挙げることができる。
更に、上記金属繊維及び非金属繊維を含む繊維集合体や上記金属繊維から成る繊維集合体及び上記非金属繊維から成る繊維集合体を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0028】
更にまた、上記無機繊維においては、金属や非金属は適宜組み合わせることもできる。このような無機繊維としては、表面にアルミニウム含有酸化物を含む酸化物層を有する含アルミニウム金属繊維を好適例として挙げることができる。
このような無機繊維から成る繊維集合体は、例えば含アルミニウム金属から成る繊維集合体を熱処理することなどにより得ることができる。
【0029】
次に、本発明の排ガス用浄化装置について説明する。
本発明の排ガス用浄化装置は、上述した触媒付き繊維集合体を備えたものである。
このような排ガス用浄化装置は、例えばディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの排ガス流路に配置され、パティキュレートフィルタとして適用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。
【0031】
(実施例1)
<繊維集合体の準備>
フェライト系ステンレス鋼の金属繊維(平均繊維径3μm)を用い、集積機により、繊維を集合させ、更に、拡散接合処理して、繊維集合体を得た。
【0032】
<触媒付き繊維集合体の作製>
得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは7%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
なお、用いたセリウム含有酸化物ゾルや後述するセリウム含有酸化物の粒子径などは、動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LB−550)を用いて測定した。
【0033】
(実施例2)
<繊維集合体の準備>
フェライト系ステンレス鋼の金属繊維(平均繊維径15μm)を用い、集積機により、繊維を集合させ、更に、拡散接合処理して、繊維集合体を得た。
【0034】
<触媒付き繊維集合体の作製>
得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは5%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0035】
(実施例3)
<繊維集合体の準備>
フェライト系ステンレス鋼の金属繊維(平均繊維径30μm)を用い、集積機により、繊維を集合させ、更に、拡散接合処理して、繊維集合体を得た。
【0036】
<触媒付き繊維集合体の作製>
得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは3%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。更に、得られた触媒付き繊維集合体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。
【0037】
(実施例4)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは0.01%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0038】
(実施例5)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは10%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0039】
(実施例6)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:500nm、メジアン径:70nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは20%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0040】
(実施例7)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは4%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は50%であった。
【0041】
(実施例8)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは4%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は95%であった。
【0042】
(実施例9)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは4%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は60%であった。
【0043】
(実施例10)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは4%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は85%であった。
【0044】
(実施例11)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:50nm、メジアン径:10nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは0.5%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0045】
(実施例12)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは4%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0046】
(実施例13)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:100nm、メジアン径:15nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは1%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0047】
(実施例14)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:5nm、メジアン径:5nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは0.05%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0048】
(実施例15)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:80nm、メジアン径:10nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは1%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0049】
(実施例16)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:10nm、メジアン径:2nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは0.1%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0050】
(実施例17)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:60nm、メジアン径:8nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは1%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0051】
(実施例18)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例3で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは1%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0052】
(実施例19)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例1で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは3%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0053】
(実施例20)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物ゾル(粒子径:300nm、メジアン径:50nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、室温から100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは2%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0054】
(比較例1)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例1で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物(粒子径:3000nm、メジアン径:450nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは50%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は60%であった。
【0055】
(比較例2)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物(粒子径:3000nm、メジアン径:450nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは40%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0056】
(比較例3)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例3で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物(粒子径:3000nm、メジアン径:450nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは30%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。更に、得られた触媒付き繊維集合体のSEM写真を図2に示す。
【0057】
(比較例4)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物(粒子径:2500nm、メジアン径:450nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは25%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は70%であった。
【0058】
(比較例5)
<触媒付き繊維集合体の作製>
実施例2で得られた繊維集合体を、セリウム含有酸化物(粒子径:2500nm、メジアン径:450nm)を含む触媒成分層形成用材料に浸漬し、繊維集合体を取り出し、余分な触媒成分層形成用材料を空気流にて除去し、100℃で1時間乾燥し、400℃で1時間焼成して、本例の触媒付き繊維集合体を得た。
得られた触媒付き繊維集合体において、金属繊維の平均繊維径に対し触媒成分層の厚みは25%であった。また、得られた触媒付き繊維集合体の空隙率は96%であった。
各例の触媒付き繊維集合体の仕様を表1示す。
【0059】
[性能評価]
ディーゼルエンジン(排気量:2500cc、日産自動車株式会社製)の排ガス流路に、各例の触媒付き繊維集合体を用いたDPFを配置し、DPFの出入口の圧力を測定して、圧力損失の値を求めた。表1に120分経過時における各例の圧力損失の値を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成して得られた実施例1〜20の触媒付き繊維集合体は、所定の厚みの触媒成分層が形成されていた。また、酸素吸放出材が無機繊維の表面上に均一分散して配設されていた。
一方、従来の酸素吸放出材を含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成して得られた比較例1〜5の触媒付き繊維集合体は、所定の厚みの触媒成分層を形成することができなかった。また、酸素吸放出材が無機繊維の表面上に偏って配設されていた。
【0062】
また、表1より、実施例1〜20の触媒付き繊維集合体は、比較例1〜5の触媒付き繊維集合体よりも圧力損失の値が小さいことが分かる。
そして、各例の触媒付き繊維集合体は、同程度のPM除去率であったことから、本発明の範囲に属する実施例1〜20の触媒付き繊維集合体は、触媒を利用したフィルタとしての機能を十分に発揮していることが分かる。
【0063】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例により詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態や実施例においては、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排ガス流路に配置する場合などを例にとって説明したが、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、種々の燃焼装置の排ガス用浄化装置として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例3の触媒付き繊維集合体のSEM写真である。
【図2】比較例3の触媒付き繊維集合体のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維から成る繊維集合体表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、該無機繊維の平均繊維径に対し該触媒成分層の厚みが20%以下であることを特徴とする触媒付き繊維集合体。
【請求項2】
上記無機繊維の平均繊維径に対し上記触媒成分層の厚みが0.01%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の触媒付き繊維集合体。
【請求項3】
上記酸素吸放出材が、セリウム含有酸化物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒付き繊維集合体。
【請求項4】
上記無機繊維が、金属繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の触媒付き繊維集合体。
【請求項5】
上記無機繊維が、表面にアルミニウム含有酸化物を含む酸化物層を有する含アルミニウム金属繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の触媒付き繊維集合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の触媒付き繊維集合体を備えたことを特徴とする排ガス用浄化装置。
【請求項7】
無機繊維から成る繊維集合体表面上に、酸素吸放出材を含む触媒成分層を有し、該無機繊維の平均繊維径に対し該触媒成分層の厚みが20%以下である触媒付き繊維集合体の製造方法であって、
酸素吸放出材ゾルを含む触媒成分層形成用材料を、無機繊維から成る繊維集合体に担持し、焼成する工程を含む、ことを特徴とする触媒付き繊維集合体の製造方法。
【請求項8】
上記酸素吸放出材ゾルは、粒子径が500nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の触媒付き繊維集合体の製造方法。
【請求項9】
上記酸素吸放出材ゾルが、セリウム含有酸化物ゾルであることを特徴とする請求項7又は8に記載の触媒付き繊維集合体の製造方法。
【請求項10】
上記無機繊維が、金属繊維であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つの項に記載の触媒付き繊維集合体の製造方法。
【請求項11】
上記無機繊維が、表面にアルミニウム含有酸化物を含む酸化物層を有する含アルミニウム金属繊維であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つの項に記載の触媒付き繊維集合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235660(P2009−235660A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266195(P2008−266195)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】