触媒付パティキュレートフィルタ
【課題】触媒層7に堆積したパティキュレートの急速燃焼域及び緩慢燃焼域双方において、その燃焼が効率良く進むようにする。
【解決手段】フィルタ1の排ガス通路壁の触媒層7に、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とPtを担持した複合粒子材とが混在し、その複合粒子はCeを含有しないZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集したものであり、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物の質量比が、三成分相図(図15)において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にある。
【解決手段】フィルタ1の排ガス通路壁の触媒層7に、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とPtを担持した複合粒子材とが混在し、その複合粒子はCeを含有しないZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集したものであり、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物の質量比が、三成分相図(図15)において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希薄燃焼式エンジンより排出されるパティキュレートを捕集するとともに、捕集したパティキュレートを燃焼除去する触媒を排ガス通路壁に担持した触媒付パティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン車の排ガス通路には、排ガス中のパティキュレート(粒子状物質: Particulate matter)を捕集するフィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)が設けられ、このフィルタに触媒が設けられる場合がある。この触媒は、フィルタのパティキュレート堆積量が多くなったときに、フィルタを再生すべくパティキュレートを燃焼除去するときの当該燃焼を促進するものである。
【0003】
このような触媒付パティキュレートフィルタに関し、特許文献1には、Ptを担持した活性アルミナ粒子材とCeZr系複合酸化物粒子材とZrNd系複合酸化物粒子材とを混合してなる触媒を採用することにより、パティキュレート燃焼性の向上を図ることが記載されている。特許文献2には、活性アルミナの一次粒子とCe系複合酸化物の一次粒子とZr系複合酸化物の一次粒子とが互いに混ざり合って二次粒子を形成しているサポート材に触媒金属を担持することにより、パティキュレートの燃焼促進を図ることが記載されている。特許文献3には、Ce及びZrを有する複合酸化物粒子の結晶格子又は原子間にRh及びPtを設けるとともに、そのPtの一部を粒子表面に露出させることにより、パティキュレートの燃焼温度の低下及び燃焼開始温度の低下を図るとともに、触媒貴金属のシンタリングを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−39632号公報
【特許文献2】特開2009−90238号公報
【特許文献3】特開2005−329318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパティキュレート燃焼触媒の場合、フィルタの触媒層表面に堆積しているパティキュレートの堆積量が少ないときは、そのパティキュレートが比較的効率良く燃焼除去される。しかし、その堆積量が多くなると、パティキュレートの燃焼除去に時間がかかる傾向がみられる。その理由は、本発明者の実験・研究に基づく知見によれば、次のとおりである。
【0006】
すなわち、図1のグラフは触媒層に堆積した煤(パティキュレート)が燃焼していくときの煤残存割合の経時変化を模式的に示す。当初は煤の燃焼が急速に進むが、その急速燃焼域(例えば、煤残存割合が100%から50%なるまでの燃焼前期)を経た後、煤の燃焼が緩慢になる緩慢燃焼域(煤残存割合が50%から0%なるまでの燃焼後期)に移る。この点を以下詳述する。
【0007】
図2の写真に示すように、燃焼当初は煤がフィルタ基材の表面に薄く担持された触媒層に接触している。このため、例えば触媒層がCe系複合酸化物粒子を含んでいる場合、このCe系複合酸化物粒子は周囲の酸素を粒子内に取り込んで内部から活性な酸素を放出する酸素交換反応を起こすから、図3に模式的に示すように、内部酸素が粒子表面に接触している煤に高活性状態で供給される。その結果、粒子表面の煤が急速に燃焼していく。
【0008】
しかし、上述の如く、触媒粒子表面の煤が燃焼除去される結果、図4の写真に示すように、触媒層と煤堆積層との間に隙間を生ずる。そのため、図5に模式的に示すように、酸素交換反応によって粒子内部から放出される活性酸素は、ごく短時間であれば活性を維持するが、隙間を通る間に活性が低下し、例えば、気相中の酸素と同じ通常の酸素となる。その結果、煤の燃焼が緩慢になる。もちろん、図5左上及び左下に示すように排ガス中の酸素も煤の燃焼に寄与するが、上述の活性酸素による燃焼に比べると、その燃焼は緩慢である。
【0009】
そこで、本発明は、触媒層に堆積したパティキュレートの急速燃焼域及び緩慢燃焼域双方において、その燃焼が効率良く進むようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子にPtを担持させてなるPt担持複合粒子材と、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とによってパティキュレートの燃焼を促進するようにした。
【0011】
すなわち、ここに提示する触媒付パティキュレートフィルタは、排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、Ce含有複合酸化物とCeを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属とを含む触媒層が設けられていて、
上記触媒金属としてRhとPtとを含み、
上記Ce含有複合酸化物は、上記RhがドープされたRhドープCe含有複合酸化物粒子として上記触媒層に存在し、且つ該RhドープCe含有複合酸化物粒子に上記Ptが担持されており、
上記Zr含有複合酸化物と上記活性アルミナとは、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子として上記触媒層に存在し、且つ該複合粒子に上記Ptが担持されており、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする。
【0012】
上記Ce含有複合酸化物は、酸素過剰雰囲気では酸素を吸蔵し、雰囲気の酸素濃度が下がったときに吸蔵していた酸素を放出する酸素吸蔵放出能を有するとともに、先に述べた酸素交換反応を起こす性質があり、パティキュレートの燃焼に有効に働く活性酸素を放出する。そして、このCe含有複合酸化物にRhがドープされていることにより、上記酸素吸蔵放出及び酸素交換反応が促進される。一方、上記Zr含有複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性を有し、同様に酸素交換反応を起こして活性が高い酸素を放出する。
【0013】
具体的なメカニズムは定かでないが、上記触媒付パティキュレートフィルタにおいては、パティキュレートが触媒層に接触している条件下では、主として、Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子にPtを担持させてなるPt担持複合粒子材がパティキュレートの燃焼に働き、その燃焼を上記RhドープCe含有複合酸化物が助けると考えられる。そして、触媒層に接触しているパティキュレートの燃焼が進み、触媒層とパティキュレート堆積層との間に隙間ができた後の非接触条件では、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物がパティキュレートの燃焼を促進すると考えられる。
【0014】
この場合、上記複合粒子は、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが均一に混じり合って凝集してなるから、パティキュレートが当該複合粒子のいずれの部位に接触しても、上記Zr含有複合酸化物の酸化効果によって、その燃焼が促進されることになり、フィルタからのパティキュレートの早期燃焼除去に有利になる。パティキュレートの燃焼には、燃焼活性が低い活性アルミナ粒子がない方が良いとも言えるが、燃焼時に不完全燃焼により生じるCOをCO2まで酸化したり、また、酸化触媒で酸化しきれなかった、HCやCOのガス成分を酸化する機能として、活性アルミナ粒子が必須である。その前提においては、Zr含有複合酸化物と活性アルミナ粒子とが均一に混じり合った状態が良い。また、好ましいのは、上記複合粒子を構成する上記Zr含有複合酸化物粒子及び上記活性アルミナ粒子各々の平均粒子径を20〜100nmとすることである。これにより、上記複合粒子におけるZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子との高分散化が図れ、パティキュレートとZr含有複合酸化物粒子及び活性アルミナ粒子両者との接触確率が高くなり、パティキュレートの早期燃焼除去に有利になる。
【0015】
また、上記Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記Ptを担持した複合粒子材とが触媒層に混在するから、パティキュレートが触媒層のいずれの部位に接触しても、上記Pt担持複合粒子材によるパティキュレートの燃焼促進が図れ、また、その燃焼を上記Pt担持RhドープCe含有複合酸化物粒子材が助けることになる。また、触媒層とパティキュレート堆積層とが非接触状態になったときには、その非接触部位において上記Pt担持RhドープCe含有複合酸化物がパティキュレートの燃焼に効率良く寄与することになる。
【0016】
この場合、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように、上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とが混合されているときに、接触条件及び非接触条件を通じたトータルでのパティキュレートの燃焼速度が大きくなる。
【0017】
特に、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物が、上記三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、E(16+2/3,50,33+1/3)点及びF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内の質量比となるときに、上記トータルでのパティキュレートの燃焼速度が大きくなる。
【0018】
好ましいのは、上記RhとPtとの質量比Rh/Ptを1/1000以上1/4以下とすることである。これにより、非接触条件でのパティキュレートの燃焼が進み易くなる。上記質量比Rh/Ptは1/500以上1/10以下とすることがさらに好ましい。
【0019】
また、上記Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材に着目すると、このCe含有複合酸化物にドープされているRhと、該Ce含有複合酸化物に担持されているPtとの質量比Rh/Ptが1/150以上1/2以下であるときに、上記非接触条件でのパティキュレートの燃焼が特に進み易い。
【0020】
また、フィルタ全体でのPt担持量に関しては、該Pt担持量をフィルタ1L当たりで1g以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルタの排ガス通路壁の触媒層に、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とPtを担持した複合粒子材とが混在し、その複合粒子はCeを含有しないZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集したものであり、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物の質量比が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にあるから、パティキュレートが触媒層に接触している接触条件下、並びに触媒層とパティキュレート堆積層との間に隙間ができた後の非接触条件下でのパティキュレートの燃焼が共に効率良く促進され、フィルタの早期再生に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】触媒層に堆積した煤が燃焼していくときの煤残存割合の経時変化を模式的に示すグラフ図である。
【図2】触媒層に煤の堆積層が接触している状態(図1の急速燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
【図3】急速燃焼域における煤の燃焼メカニズムを示す模式図である。
【図4】触媒層と煤の堆積層との間に隙間ができた状態(図1の緩慢燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
【図5】緩慢燃焼域における煤の燃焼メカニズムを示す模式図である。
【図6】パティキュレートフィルタをエンジンの排気ガス通路に配置した状態を示す図である。
【図7】パティキュレートフィルタを模式的に示す正面図である。
【図8】パティキュレートフィルタを模式的に示す縦断面図である。
【図9】パティキュレートフィルタの排気ガス流入路と排気ガス流出路とを隔てる壁を模式的に示す拡大断面図である。
【図10】ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材及びZrNdPr複合酸化物粉末・活性アルミナ粉末物理混合材のTEM像、並びにAl、Zr、Nd及びPr各原子の相対濃度分布のマッピング図である。
【図11】カーボン燃焼性能試験装置を示す図である。
【図12】供試材A〜Fのカーボン燃焼量を示すグラフ図である。
【図13】Pt担持RhドープCeZrNd複合酸化物のRh/Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係を示すグラフ図である。
【図14】触媒材のRh/全Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係を示すグラフ図である。
【図15】実施例1〜12及び比較例1〜6の三成分相図である。
【図16】実施例1〜12及び比較例1〜6の煤燃焼速度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
<パティキュレートフィルタの構造>
図6はディーゼルエンジンの排ガス通路11に配置されたパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)1を示す。フィルタ1よりも排ガス流の上流側の排ガス通路11には、活性アルミナ等のサポート材にPt、Pd等に代表される触媒金属を担持した酸化触媒(図示省略)を配置することができる。このような酸化触媒をフィルタ1の上流側に配置するときは、該酸化触媒によって排ガス中のHC、COを酸化させ、その酸化燃焼熱でフィルタ1に流入する排ガス温度を高めてフィルタ1を加熱することによって、パティキュレートを燃焼除去することができる。また、NOが酸化触媒でNO2に酸化され、該NO2がフィルタ1にパティキュレートを燃焼させる酸化剤として供給されることになる。
【0025】
図7及び図8に模式的に示すように、フィルタ1は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路2,3を備えている。すなわち、フィルタ1は、下流端が栓4により閉塞された排ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排ガス流出路3とが交互に設けられ、排ガス流入路2と排ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図7においてハッチングを付した部分は排ガス流出路3の上流端の栓4を示している。
【0026】
フィルタ1は、上記隔壁5を含むフィルタ本体がコージェライト、SiC、Si3N4、サイアロンのような無機多孔質材料から形成されており、排ガス流入路2内に流入した排ガスは図8において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排ガス流出路3内に流出する。すなわち、図9に示すように、隔壁5は排ガス流入路2と排ガス流出路3とを連通する微小な細孔(排ガス通路)6を有し、この細孔6を排ガスが通る。パティキュレートは主に排ガス流入路2と細孔6の壁部に捕捉され堆積する。
【0027】
担体基材としての上記フィルタ本体の排ガス通路(排ガス流入路2、排ガス流出路3及び細孔6)を形成する壁面には触媒層7が形成されている。なお、排ガス流出路3側の壁面に触媒層を形成することは必ずしも要しない。
【0028】
上記触媒層7は、フィルタ1に堆積したパティキュレートを燃焼除去するための触媒材として、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材と、Ptを担持した複合粒子材とを含有する。その複合粒子は、Ceを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子である。
【0029】
<触媒材について>
[RhドープCe含有複合酸化物粒子材]
上記Ce含有複合酸化物にRhがドープされてなるRhドープCe含有複合酸化物粒子材として好ましいのは、Ceと、Zrと、Ce以外の希土類金属(例えば、Nd、Pr等)との複合酸化物にRhがドープされてなるRhドープCeZr系複合酸化物粒子材である。例えば、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材は次の方法によって調製することができる。このRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を以下では適宜「RhドープCZN」の記号で表す。
【0030】
−RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の調製法−
すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する(脱水)、そこにさらにイオン交換水を加えて撹拌する(水洗)、という脱水・水洗の操作を必要回数繰り返すことで、余剰な塩基性溶液を除去する。最終的に脱水を行なった後の共沈物について、大気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を得ることができる。
【0031】
−RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の粒子径−
上記調製法により、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)、Rhドープ量0.1質量%のRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した。透過電子顕微鏡を用いたTEM像観察によれば、そのRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の一次粒子の平均粒子径(「個数平均粒子径」のこと。以下、同じ。)は約10nm、二次粒子の平均粒子径は50〜100nm、三次粒子(フィルタに触媒層を形成すべく、スラリー状態にしてボールミルで粉砕した粒子)の平均粒子径は300〜400nmであった。
【0032】
[Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子材]
上記複合粒子材は、平均粒子径20〜100nmのZr含有複合酸化物粒子と平均粒子径20〜100nmの活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子よりなることが好ましい。この場合のZr含有複合酸化物として好ましいのは、Zrと、Ce以外の希土類金属(例えば、La,Nd,Y,Prから選ばれる少なくとも一種)との複合酸化物であり、例えば、ZrNdPr複合酸化物である。このZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材を以下では適宜「ZrNdPrOx・Al2O3」の記号で表す(ZrNdPr複合酸化物を「ZrNdPrOx」で表し、活性アルミナを「Al2O3」で表す。)。
【0033】
図10は、ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材、並びにZrNdPr複合酸化物粉末と活性アルミナ粉末との物理混合材(機械的混合材)の、透過電子顕微鏡を用いたTEM像、並びにAl、Zr、Nd及びPr各原子の相対濃度分布を示す。
【0034】
複合粒子材及び物理混合材のいずれも、スラリー状態にしてボールミルにより粉砕した後、そのスラリーを真空乾燥し、さらに800℃の温度に24時間保持する大気エージングを実施したものを供試材とした。また、いずれの供試材も、ZrNdPrOx:Al2O3=3:1(質量比)であり、ZrNdPrOxの組成は、ZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)である。
【0035】
物理混合材の場合(図10左側)、Alが偏在している場所とZr、Nd及びPrが偏在している場所とが見られる。これに対して、複合粒子材の場合(図10右側)は、Al、Zr、Nd及びPrの各原子が全体に均一に分散しており、当該複合粒子材のいずれの部位にパティキュレートが接触しても、その燃焼が進み易いことがわかる。
【0036】
透過電子顕微鏡を用いたTEM像観察によれば、上記複合粒子材を構成するZrNdPr複合酸化物及び活性アルミナはいずれも、一次粒子の平均粒子径は約10nm、二次粒子の平均粒子径は20〜100nm、三次粒子(フィルタに触媒層を形成すべく、スラリー状態にしてボールミルで粉砕した粒子)の平均粒子径は300〜400nmであった。
【0037】
上記複合粒子材は次の方法によって調製することができる。
【0038】
−方法1−
オキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸プラセオジウムをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、ZrNdPr複合酸化物の前駆体(共沈物)を得る。一方、硝酸アルミニウムをイオン交換水に溶かした溶液から同じく中和処理によって活性アルミナの前駆体(沈殿物)を得る。ZrNdPr複合酸化物の前駆体と活性アルミナの前駆体とを充分に混合し、大気中において150℃で乾燥させ、粉砕した後、大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0039】
−方法2−
方法1と同じ中和処理によって得られるZrNdPr複合酸化物の前駆体と活性アルミナの前駆体をそれぞれ水洗し、大気中において150℃で乾燥させた後、ボールミルによって平均粒子径100nm程度まで粉砕し、しかる後に両者を混合して大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0040】
−方法3−
方法1と同じ中和処理によって得られるZrNdPr複合酸化物の前駆体を水洗し、大気中において150℃で乾燥させ、さらに500℃の温度に2時間保持する焼成を行ない、次いでボールミルによって平均粒子径100nm程度まで粉砕する。そうして、方法1と同じ中和処理によって得られる活性アルミナの前駆体を水洗し、上記粉砕物と混合した後、大気中において150℃で乾燥させ、さらに500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0041】
<各種Ce含有複合酸化物の非接触条件でのカーボン燃焼性能評価>
[供試材の調製]
供試材として次の6種類のCe含有複合酸化物粒子材を調製した。
【0042】
−供試材A−
供試材Aは、CeZrNd複合酸化物粒子材(貴金属担持なし)であり、硝酸ロジウムを添加せずに、他は先に説明した「RhドープCeZrNd複合酸化物調製法」と同じ手順で調製した。CeZrNd複合酸化物の組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)である。
【0043】
−供試材B−
供試材Bは、Rh担持CeZrNd複合酸化物粒子材(Rh担持量0.1質量%)であり、供試材Aと同じ方法でCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した後、硝酸ロジウム溶液を用い、蒸発乾固法にてRhをCeZrNd複合酸化物粒子材に担持させた。CeZrNd複合酸化物の組成は供試材Aと同じである。
【0044】
−供試材C−
供試材Cは、Pt担持CeZrNd複合酸化物粒子材(Pt担持量3.2質量%)であり、供試材Aと同じ方法でCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した後、ジニトロジアミン白金硝酸溶液を用い、蒸発乾固法にてPtをCeZrNd複合酸化物粒子材に担持させた。
【0045】
−供試材D−
供試材Dは、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Rhドープ量0.1質量%)であり、先に説明した「RhドープCeZrNd複合酸化物調製法」で調製した。CeZrNd複合酸化物の組成は供試材Aと同じである。
【0046】
−供試材E−
供試材Eは、Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Rh担持量0.1質量%,Rhドープ量0.1質量%)であり、供試材DにRhを蒸発乾固法にて担持させたものである。
【0047】
−供試材F−
供試材Fは、Pt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Pt担持量3.1質量%,Rhドープ量0.1質量%)であり、供試材DにPtを蒸発乾固法にて担持させたものである。蒸発乾固にはジニトロジアミン白金硝酸溶液を用いた。
【0048】
[カーボン燃焼性能評価方法]
図11に示す試験装置にて各供試材の非接触条件でのカーボン燃焼性能を評価した。同図において、21はモデルガスを流通させる石英管であり、その内部に供試材セットが設けられている。供試材セットは、上流側から下流側に向かって、グラスウール22、供試材のペレット23、グラスウールスペーサ(厚さ1mm)24、カーボンブラック25、及びグラスウール26が順に重ねられたものである。グラスウールスペーサ24によって供試材ペレット23とカーボンブラック25とを非接触状態にしている。
【0049】
供試材A〜Fは、大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後に25tonの圧力で圧粉し、次いで粉砕し、篩い分けにより粒度100〜300μmに調整した後、図11の符号23の位置に挿入した。ペレット23における供試材量は20mg、カーボンブラック25のカーボン量は5mgである。
【0050】
そうして、石英管21にHeガスを流しながら供試材セットを580℃まで昇温させた後、同温度でHeガスから3.5%18O2含有Heガス(流量;100cc/分)に切り換えた。この切り換えから600秒間にわたって、供試材セット下流側のCO及びCO2濃度(C16O,C18O,C16O2,C16O18O,C18O2)を四重極質量分析計によって測定し、それら濃度からカーボン燃焼量を求めた。各供試材のCeZrNd複合酸化物を構成する酸素は16Oである。
【0051】
[結果]
結果を図12に示す。供試材A〜E間ではカーボン燃焼量に殆ど差が出ていない。つまり、CeZrNd複合酸化物にRhをドープしても、Rhを担持しても、或いはPtを担持しても、カーボン燃焼性能は、そのような貴金属をドープないしは担持しない場合と殆ど変わらない。これに対して、供試材FのPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物では、他の供試材に比べてカーボン燃焼量が2倍程度多くなっている。CeZrNd複合酸化物にRhをドープし且つPtを担持することが、上記非接触条件(先に説明した緩慢燃焼域(燃焼後期))でのカーボンの燃焼に特異な効果を示すことがわかる。
【0052】
ここに、C16O及びC16O2はCeZrNd複合酸化物内部から放出された16Oがカーボンと反応して生じたものであり、C16O18Oの16OもCeZrNd複合酸化物内部から放出されたものである。このことから、CeZrNd複合酸化物において酸素交換反応を生じていることがわかる。そして、他の供試材と比べて、CeZrNd複合酸化物にRhをドープし且つPtを担持したものについては、グラスウールスペーサ24を挟んで1mm下流にあるカーボンに対して、酸化物内部から放出された16Oのより多くが、活性を保ったまま供給され、燃焼を促進していることがわかる。
【0053】
<供試材FのRh/Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係>
供試材FのPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材におけるRh/Pt質量比が非接触条件でのカーボンの燃焼にどのように影響しているかを調べた。すなわち、PtとRhとを合わせたトータル貴金属量は3.2質量%に固定し、Rhドープ量とPt担持量とを変化させた各種のPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を調製し、各々のカーボン燃焼量を先に説明した[カーボン燃焼性能評価方法]によって測定した。結果を表1及び図13に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
図12の結果と図13の結果を比較すると、供試材Fの場合、Rh/Pt質量比が1/150以上1/2以下であるときに、供試材A〜Eよりもカーボン燃焼量が多くなることがわかる。特にRh/Pt質量が1/30であるときにカーボン燃焼量が最も多くなっている。
【0056】
<触媒材のRh/全Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係>
本発明は、パティキュレート燃焼除去用触媒材を、Ce含有複合酸化物とZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属としてのRh及びPtとを組み合わせて構成している。その具体例の一つは、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とにPtを担持させてなる触媒系である。そこで、この触媒系においてRh/全Pt質量比が非接触条件でのカーボン燃焼性能に及ぼす影響を調べた。ここに、「全Pt」は、RhドープCeZrNd複合酸化物に担持されたPtと、上記複合粒子材に担持されたPtとを合わせた量を意味する。
【0057】
[供試材の基本構成]
混合比 ZrNdPrOx・Al2O3:RhドープCZN=8:1(質量比)
複合粒子材の組成 ZrNdPrOx:Al2O3=3:1(質量比)
RhドープCZNのRhを除く組成 CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)
ZrNdPrOxの組成 ZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)
【0058】
[供試材のRh/全Pt質量比の調製]
Rh/全Pt質量比を種々に変えるために、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材のRhドープ量と、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合物に対するPt担持量(全Pt量)とを種々に変えた。但し、Rhドープ量と全Pt量との合計量は供試材量(Pt担持ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材との合計量)の3.2質量%となるようにした。
【0059】
[カーボン燃焼量の測定・評価]
Rh/全Pt質量比が相違する各供試材のカーボン燃焼量を先に説明した[カーボン燃焼性能評価方法]によって測定した。結果を表2及び図14に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
Rh/全Pt質量比が1/1000以上1/4以下であるときに、カーボン燃焼量が6.5mmol/g-cat以上になっている。特にRh/全Pt質量が1/50であるときにカーボン燃焼量が最も多くなっている。
【0062】
<実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材のカーボン燃焼性能>
[触媒材の構成]
−実施例1〜12−
実施例1〜12に係る触媒材はいずれも、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とにPtを担持させてなる。また、いずれも、RhドープCeZrNd複合酸化物のRhを除く組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)、そのRhドープ量は0.1質量%、ZrNdPr複合酸化物の組成はZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合物に対するPt担持量は3.0質量%である。
【0063】
そして、実施例1〜12に係る触媒材は、表3に示すように、RhドープCeZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合比、並びに上記複合粒子材の組成(ZrNdPr複合酸化物と活性アルミナとの質量比)が相違する。各触媒材は、上記混合比が相違する結果、Rh含有量が相違する。
【0064】
【表3】
【0065】
−比較例1〜6−
比較例1〜6の触媒材構成を表4に示す。
【0066】
比較例1に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0067】
比較例2に係る触媒材は、上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0068】
比較例3に係る触媒材は、上記活性アルミナ粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0069】
比較例4に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材と上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0070】
比較例5に係る触媒材は、上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材と上記活性アルミナ粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0071】
比較例6に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材と上記活性アルミナ粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0072】
【表4】
【0073】
図15は、実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材のZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)、活性アルミナ(Al2O3)及びRhドープCeZrNd複合酸化物(RhドープCZN)の質量比を示す三成分相図(三角図表)である。
【0074】
[煤燃焼性能の評価]
実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材による煤の燃焼速度を次の方法によって求めた。
【0075】
すなわち、実施例1〜12及び比較例1〜6の各触媒材をフィルタに担持させた。フィルタとしては、セル壁厚さ16mil(4.064×10−1mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数178のSiC製ハニカム状フィルタ(容量2.44L)を採用した。フィルタ1L当たりの触媒材担持量は20g/Lとした。この触媒材を担持したフィルタをエンジンの排気管に装着し、該エンジンを運転することによって実排ガス中の煤をフィルタに堆積させた。煤が堆積したフィルタから11.3cc(直径17mm、長さ50mm)のサンプルフィルタを切り取り、図7及び図8に示すように排ガス通路の目封じを施した。
【0076】
得られた各サンプルフィルタを模擬ガス流通反応装置に取り付け、N2ガスを流通させながらそのガス温度を上昇させた。フィルタ入口温度が580℃で安定した後、N2ガスから模擬排ガス(O2;7.5%,残N2)に切り換え、該模擬排ガスを空間速度40000/hで流した。そして、煤が燃焼することにより生じるCO及びCO2のガス中濃度をリアルタイムで測定し、それらの濃度から、下記の計算式を用いて、各時間ごとに、単位時間当たりのカーボン燃焼量を計算した。
【0077】
カーボン燃焼速度(g/h)
={ガス流速(L/h)×[(CO+CO2)濃度(ppm)/(1×106)]}×12(g/mol)/22.4(L/mol)
【0078】
その上で、時間に対するカーボン燃焼量の積算値を求め、煤燃焼率が90%に達するまでに要した時間から煤燃焼速度(フィルタ1Lでの1分間当たりの煤燃焼量(g/min-L))を求めた。
【0079】
結果を図16に示す。実施例1〜12はいずれも比較例1〜6より煤燃焼速度が大である。実施例1〜12のなかでは、実施例7の煤燃焼速度が最も大きく(0.046g/min-L)、これに、実施例3,8(0.045g/min-L)、実施例10(0.044g/min-L)、実施例4,6,11(0.043g/min-L)、実施例2,12(0.040g/min-L)、実施例1,5,9(0.038g/min-L)が続いている。
【0080】
このことから、ZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)、活性アルミナ(Al2O3)及びRhドープCeZrNd複合酸化物の質量比は、図15に示す三成分相図において、実施例4に相当するA(18+3/4,6+1/4,75)点、実施例12に相当するB(6+1/4,18+3/4,75)点、実施例9に相当するC(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点、並びに実施例1に相当するD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にあることが好ましいということができる。また、上記質量比は、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、実施例10に相当するE(16+2/3,50,33+1/3)点、並びに実施例2に相当するF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内にあることが好ましいということができる。
【0081】
さらには、図15に示す三成分相図において、上記質量比は、実施例4に相当する点(18+3/4,6+1/4,75)、実施例3に相当する点(37.5,12.5,50),実施例6に相当する点(33+1/3,33+1/3,33+1/3)、実施例10に相当する点(16+2/3,50,33+1/3)、実施例11に相当する点(12.5,37.5,50)、並びに実施例8に相当する点(12.5,12.5,75)で囲まれる範囲内になるようにすることが好ましいということができる。
【0082】
次に、上記実施例1に対応する比較例7の触媒材をさらに調製し、この実施例1と比較例7の燃焼前期(煤燃焼率が50%に達するまで)及び燃焼後期(煤燃焼率から50%から90%に達するまで)の煤燃焼速度を、先に説明した[煤燃焼性能の評価]方法により測定した。
【0083】
ここに、比較例7に係る触媒材は、ZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)粉末、活性アルミナ(Al2O3)粉末とRhドープCeZrNd複合酸化物粉末とを6:2:1の質量比で混合し、この混合物にPtを3.0質量%担持してなるものであり、その質量比は実施例1の三成分の質量比と同じである。また、ZrNdPr複合酸化物及びRhドープCeZrNd複合酸化物の組成も実施例1と比較例7は同じである。
【0084】
結果を表5に示す。燃焼前期(接触条件での急速燃焼域に相当)及び燃焼後期(非接触条件での緩慢燃焼域に相当)のいずれにおいても、実施例1は比較例7よりも煤燃焼速度が大である。Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子材と、RhドープCe含有複合酸化物粒子材との組み合わせが接触条件及び非接触条件のいずれにおいても煤を速やかに燃焼する上で大きな効果があることがわかる。
【0085】
【表5】
【符号の説明】
【0086】
1 フィルタ
2 排ガス流入路(排ガス通路)
3 排ガス流出路(排ガス通路)
6 細孔(排ガス通路)
7 触媒層
【技術分野】
【0001】
本発明は、希薄燃焼式エンジンより排出されるパティキュレートを捕集するとともに、捕集したパティキュレートを燃焼除去する触媒を排ガス通路壁に担持した触媒付パティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン車の排ガス通路には、排ガス中のパティキュレート(粒子状物質: Particulate matter)を捕集するフィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)が設けられ、このフィルタに触媒が設けられる場合がある。この触媒は、フィルタのパティキュレート堆積量が多くなったときに、フィルタを再生すべくパティキュレートを燃焼除去するときの当該燃焼を促進するものである。
【0003】
このような触媒付パティキュレートフィルタに関し、特許文献1には、Ptを担持した活性アルミナ粒子材とCeZr系複合酸化物粒子材とZrNd系複合酸化物粒子材とを混合してなる触媒を採用することにより、パティキュレート燃焼性の向上を図ることが記載されている。特許文献2には、活性アルミナの一次粒子とCe系複合酸化物の一次粒子とZr系複合酸化物の一次粒子とが互いに混ざり合って二次粒子を形成しているサポート材に触媒金属を担持することにより、パティキュレートの燃焼促進を図ることが記載されている。特許文献3には、Ce及びZrを有する複合酸化物粒子の結晶格子又は原子間にRh及びPtを設けるとともに、そのPtの一部を粒子表面に露出させることにより、パティキュレートの燃焼温度の低下及び燃焼開始温度の低下を図るとともに、触媒貴金属のシンタリングを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−39632号公報
【特許文献2】特開2009−90238号公報
【特許文献3】特開2005−329318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパティキュレート燃焼触媒の場合、フィルタの触媒層表面に堆積しているパティキュレートの堆積量が少ないときは、そのパティキュレートが比較的効率良く燃焼除去される。しかし、その堆積量が多くなると、パティキュレートの燃焼除去に時間がかかる傾向がみられる。その理由は、本発明者の実験・研究に基づく知見によれば、次のとおりである。
【0006】
すなわち、図1のグラフは触媒層に堆積した煤(パティキュレート)が燃焼していくときの煤残存割合の経時変化を模式的に示す。当初は煤の燃焼が急速に進むが、その急速燃焼域(例えば、煤残存割合が100%から50%なるまでの燃焼前期)を経た後、煤の燃焼が緩慢になる緩慢燃焼域(煤残存割合が50%から0%なるまでの燃焼後期)に移る。この点を以下詳述する。
【0007】
図2の写真に示すように、燃焼当初は煤がフィルタ基材の表面に薄く担持された触媒層に接触している。このため、例えば触媒層がCe系複合酸化物粒子を含んでいる場合、このCe系複合酸化物粒子は周囲の酸素を粒子内に取り込んで内部から活性な酸素を放出する酸素交換反応を起こすから、図3に模式的に示すように、内部酸素が粒子表面に接触している煤に高活性状態で供給される。その結果、粒子表面の煤が急速に燃焼していく。
【0008】
しかし、上述の如く、触媒粒子表面の煤が燃焼除去される結果、図4の写真に示すように、触媒層と煤堆積層との間に隙間を生ずる。そのため、図5に模式的に示すように、酸素交換反応によって粒子内部から放出される活性酸素は、ごく短時間であれば活性を維持するが、隙間を通る間に活性が低下し、例えば、気相中の酸素と同じ通常の酸素となる。その結果、煤の燃焼が緩慢になる。もちろん、図5左上及び左下に示すように排ガス中の酸素も煤の燃焼に寄与するが、上述の活性酸素による燃焼に比べると、その燃焼は緩慢である。
【0009】
そこで、本発明は、触媒層に堆積したパティキュレートの急速燃焼域及び緩慢燃焼域双方において、その燃焼が効率良く進むようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子にPtを担持させてなるPt担持複合粒子材と、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とによってパティキュレートの燃焼を促進するようにした。
【0011】
すなわち、ここに提示する触媒付パティキュレートフィルタは、排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、Ce含有複合酸化物とCeを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属とを含む触媒層が設けられていて、
上記触媒金属としてRhとPtとを含み、
上記Ce含有複合酸化物は、上記RhがドープされたRhドープCe含有複合酸化物粒子として上記触媒層に存在し、且つ該RhドープCe含有複合酸化物粒子に上記Ptが担持されており、
上記Zr含有複合酸化物と上記活性アルミナとは、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子として上記触媒層に存在し、且つ該複合粒子に上記Ptが担持されており、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする。
【0012】
上記Ce含有複合酸化物は、酸素過剰雰囲気では酸素を吸蔵し、雰囲気の酸素濃度が下がったときに吸蔵していた酸素を放出する酸素吸蔵放出能を有するとともに、先に述べた酸素交換反応を起こす性質があり、パティキュレートの燃焼に有効に働く活性酸素を放出する。そして、このCe含有複合酸化物にRhがドープされていることにより、上記酸素吸蔵放出及び酸素交換反応が促進される。一方、上記Zr含有複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性を有し、同様に酸素交換反応を起こして活性が高い酸素を放出する。
【0013】
具体的なメカニズムは定かでないが、上記触媒付パティキュレートフィルタにおいては、パティキュレートが触媒層に接触している条件下では、主として、Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子にPtを担持させてなるPt担持複合粒子材がパティキュレートの燃焼に働き、その燃焼を上記RhドープCe含有複合酸化物が助けると考えられる。そして、触媒層に接触しているパティキュレートの燃焼が進み、触媒層とパティキュレート堆積層との間に隙間ができた後の非接触条件では、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物がパティキュレートの燃焼を促進すると考えられる。
【0014】
この場合、上記複合粒子は、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが均一に混じり合って凝集してなるから、パティキュレートが当該複合粒子のいずれの部位に接触しても、上記Zr含有複合酸化物の酸化効果によって、その燃焼が促進されることになり、フィルタからのパティキュレートの早期燃焼除去に有利になる。パティキュレートの燃焼には、燃焼活性が低い活性アルミナ粒子がない方が良いとも言えるが、燃焼時に不完全燃焼により生じるCOをCO2まで酸化したり、また、酸化触媒で酸化しきれなかった、HCやCOのガス成分を酸化する機能として、活性アルミナ粒子が必須である。その前提においては、Zr含有複合酸化物と活性アルミナ粒子とが均一に混じり合った状態が良い。また、好ましいのは、上記複合粒子を構成する上記Zr含有複合酸化物粒子及び上記活性アルミナ粒子各々の平均粒子径を20〜100nmとすることである。これにより、上記複合粒子におけるZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子との高分散化が図れ、パティキュレートとZr含有複合酸化物粒子及び活性アルミナ粒子両者との接触確率が高くなり、パティキュレートの早期燃焼除去に有利になる。
【0015】
また、上記Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記Ptを担持した複合粒子材とが触媒層に混在するから、パティキュレートが触媒層のいずれの部位に接触しても、上記Pt担持複合粒子材によるパティキュレートの燃焼促進が図れ、また、その燃焼を上記Pt担持RhドープCe含有複合酸化物粒子材が助けることになる。また、触媒層とパティキュレート堆積層とが非接触状態になったときには、その非接触部位において上記Pt担持RhドープCe含有複合酸化物がパティキュレートの燃焼に効率良く寄与することになる。
【0016】
この場合、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように、上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とが混合されているときに、接触条件及び非接触条件を通じたトータルでのパティキュレートの燃焼速度が大きくなる。
【0017】
特に、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物が、上記三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、E(16+2/3,50,33+1/3)点及びF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内の質量比となるときに、上記トータルでのパティキュレートの燃焼速度が大きくなる。
【0018】
好ましいのは、上記RhとPtとの質量比Rh/Ptを1/1000以上1/4以下とすることである。これにより、非接触条件でのパティキュレートの燃焼が進み易くなる。上記質量比Rh/Ptは1/500以上1/10以下とすることがさらに好ましい。
【0019】
また、上記Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材に着目すると、このCe含有複合酸化物にドープされているRhと、該Ce含有複合酸化物に担持されているPtとの質量比Rh/Ptが1/150以上1/2以下であるときに、上記非接触条件でのパティキュレートの燃焼が特に進み易い。
【0020】
また、フィルタ全体でのPt担持量に関しては、該Pt担持量をフィルタ1L当たりで1g以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルタの排ガス通路壁の触媒層に、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材とPtを担持した複合粒子材とが混在し、その複合粒子はCeを含有しないZr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集したものであり、上記Zr含有複合酸化物、活性アルミナ及びRhドープCe含有複合酸化物の質量比が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にあるから、パティキュレートが触媒層に接触している接触条件下、並びに触媒層とパティキュレート堆積層との間に隙間ができた後の非接触条件下でのパティキュレートの燃焼が共に効率良く促進され、フィルタの早期再生に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】触媒層に堆積した煤が燃焼していくときの煤残存割合の経時変化を模式的に示すグラフ図である。
【図2】触媒層に煤の堆積層が接触している状態(図1の急速燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
【図3】急速燃焼域における煤の燃焼メカニズムを示す模式図である。
【図4】触媒層と煤の堆積層との間に隙間ができた状態(図1の緩慢燃焼域における状態)を示す顕微鏡写真である。
【図5】緩慢燃焼域における煤の燃焼メカニズムを示す模式図である。
【図6】パティキュレートフィルタをエンジンの排気ガス通路に配置した状態を示す図である。
【図7】パティキュレートフィルタを模式的に示す正面図である。
【図8】パティキュレートフィルタを模式的に示す縦断面図である。
【図9】パティキュレートフィルタの排気ガス流入路と排気ガス流出路とを隔てる壁を模式的に示す拡大断面図である。
【図10】ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材及びZrNdPr複合酸化物粉末・活性アルミナ粉末物理混合材のTEM像、並びにAl、Zr、Nd及びPr各原子の相対濃度分布のマッピング図である。
【図11】カーボン燃焼性能試験装置を示す図である。
【図12】供試材A〜Fのカーボン燃焼量を示すグラフ図である。
【図13】Pt担持RhドープCeZrNd複合酸化物のRh/Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係を示すグラフ図である。
【図14】触媒材のRh/全Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係を示すグラフ図である。
【図15】実施例1〜12及び比較例1〜6の三成分相図である。
【図16】実施例1〜12及び比較例1〜6の煤燃焼速度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
<パティキュレートフィルタの構造>
図6はディーゼルエンジンの排ガス通路11に配置されたパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)1を示す。フィルタ1よりも排ガス流の上流側の排ガス通路11には、活性アルミナ等のサポート材にPt、Pd等に代表される触媒金属を担持した酸化触媒(図示省略)を配置することができる。このような酸化触媒をフィルタ1の上流側に配置するときは、該酸化触媒によって排ガス中のHC、COを酸化させ、その酸化燃焼熱でフィルタ1に流入する排ガス温度を高めてフィルタ1を加熱することによって、パティキュレートを燃焼除去することができる。また、NOが酸化触媒でNO2に酸化され、該NO2がフィルタ1にパティキュレートを燃焼させる酸化剤として供給されることになる。
【0025】
図7及び図8に模式的に示すように、フィルタ1は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排ガス通路2,3を備えている。すなわち、フィルタ1は、下流端が栓4により閉塞された排ガス流入路2と、上流端が栓4により閉塞された排ガス流出路3とが交互に設けられ、排ガス流入路2と排ガス流出路3とは薄肉の隔壁5を介して隔てられている。なお、図7においてハッチングを付した部分は排ガス流出路3の上流端の栓4を示している。
【0026】
フィルタ1は、上記隔壁5を含むフィルタ本体がコージェライト、SiC、Si3N4、サイアロンのような無機多孔質材料から形成されており、排ガス流入路2内に流入した排ガスは図8において矢印で示したように周囲の隔壁5を通って隣接する排ガス流出路3内に流出する。すなわち、図9に示すように、隔壁5は排ガス流入路2と排ガス流出路3とを連通する微小な細孔(排ガス通路)6を有し、この細孔6を排ガスが通る。パティキュレートは主に排ガス流入路2と細孔6の壁部に捕捉され堆積する。
【0027】
担体基材としての上記フィルタ本体の排ガス通路(排ガス流入路2、排ガス流出路3及び細孔6)を形成する壁面には触媒層7が形成されている。なお、排ガス流出路3側の壁面に触媒層を形成することは必ずしも要しない。
【0028】
上記触媒層7は、フィルタ1に堆積したパティキュレートを燃焼除去するための触媒材として、Ptを担持したRhドープCe含有複合酸化物粒子材と、Ptを担持した複合粒子材とを含有する。その複合粒子は、Ceを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子である。
【0029】
<触媒材について>
[RhドープCe含有複合酸化物粒子材]
上記Ce含有複合酸化物にRhがドープされてなるRhドープCe含有複合酸化物粒子材として好ましいのは、Ceと、Zrと、Ce以外の希土類金属(例えば、Nd、Pr等)との複合酸化物にRhがドープされてなるRhドープCeZr系複合酸化物粒子材である。例えば、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材は次の方法によって調製することができる。このRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を以下では適宜「RhドープCZN」の記号で表す。
【0030】
−RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の調製法−
すなわち、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する(脱水)、そこにさらにイオン交換水を加えて撹拌する(水洗)、という脱水・水洗の操作を必要回数繰り返すことで、余剰な塩基性溶液を除去する。最終的に脱水を行なった後の共沈物について、大気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を得ることができる。
【0031】
−RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の粒子径−
上記調製法により、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)、Rhドープ量0.1質量%のRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した。透過電子顕微鏡を用いたTEM像観察によれば、そのRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材の一次粒子の平均粒子径(「個数平均粒子径」のこと。以下、同じ。)は約10nm、二次粒子の平均粒子径は50〜100nm、三次粒子(フィルタに触媒層を形成すべく、スラリー状態にしてボールミルで粉砕した粒子)の平均粒子径は300〜400nmであった。
【0032】
[Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子材]
上記複合粒子材は、平均粒子径20〜100nmのZr含有複合酸化物粒子と平均粒子径20〜100nmの活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子よりなることが好ましい。この場合のZr含有複合酸化物として好ましいのは、Zrと、Ce以外の希土類金属(例えば、La,Nd,Y,Prから選ばれる少なくとも一種)との複合酸化物であり、例えば、ZrNdPr複合酸化物である。このZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材を以下では適宜「ZrNdPrOx・Al2O3」の記号で表す(ZrNdPr複合酸化物を「ZrNdPrOx」で表し、活性アルミナを「Al2O3」で表す。)。
【0033】
図10は、ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材、並びにZrNdPr複合酸化物粉末と活性アルミナ粉末との物理混合材(機械的混合材)の、透過電子顕微鏡を用いたTEM像、並びにAl、Zr、Nd及びPr各原子の相対濃度分布を示す。
【0034】
複合粒子材及び物理混合材のいずれも、スラリー状態にしてボールミルにより粉砕した後、そのスラリーを真空乾燥し、さらに800℃の温度に24時間保持する大気エージングを実施したものを供試材とした。また、いずれの供試材も、ZrNdPrOx:Al2O3=3:1(質量比)であり、ZrNdPrOxの組成は、ZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)である。
【0035】
物理混合材の場合(図10左側)、Alが偏在している場所とZr、Nd及びPrが偏在している場所とが見られる。これに対して、複合粒子材の場合(図10右側)は、Al、Zr、Nd及びPrの各原子が全体に均一に分散しており、当該複合粒子材のいずれの部位にパティキュレートが接触しても、その燃焼が進み易いことがわかる。
【0036】
透過電子顕微鏡を用いたTEM像観察によれば、上記複合粒子材を構成するZrNdPr複合酸化物及び活性アルミナはいずれも、一次粒子の平均粒子径は約10nm、二次粒子の平均粒子径は20〜100nm、三次粒子(フィルタに触媒層を形成すべく、スラリー状態にしてボールミルで粉砕した粒子)の平均粒子径は300〜400nmであった。
【0037】
上記複合粒子材は次の方法によって調製することができる。
【0038】
−方法1−
オキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸プラセオジウムをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、ZrNdPr複合酸化物の前駆体(共沈物)を得る。一方、硝酸アルミニウムをイオン交換水に溶かした溶液から同じく中和処理によって活性アルミナの前駆体(沈殿物)を得る。ZrNdPr複合酸化物の前駆体と活性アルミナの前駆体とを充分に混合し、大気中において150℃で乾燥させ、粉砕した後、大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0039】
−方法2−
方法1と同じ中和処理によって得られるZrNdPr複合酸化物の前駆体と活性アルミナの前駆体をそれぞれ水洗し、大気中において150℃で乾燥させた後、ボールミルによって平均粒子径100nm程度まで粉砕し、しかる後に両者を混合して大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0040】
−方法3−
方法1と同じ中和処理によって得られるZrNdPr複合酸化物の前駆体を水洗し、大気中において150℃で乾燥させ、さらに500℃の温度に2時間保持する焼成を行ない、次いでボールミルによって平均粒子径100nm程度まで粉砕する。そうして、方法1と同じ中和処理によって得られる活性アルミナの前駆体を水洗し、上記粉砕物と混合した後、大気中において150℃で乾燥させ、さらに500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、上記複合粒子材を得ることができる。
【0041】
<各種Ce含有複合酸化物の非接触条件でのカーボン燃焼性能評価>
[供試材の調製]
供試材として次の6種類のCe含有複合酸化物粒子材を調製した。
【0042】
−供試材A−
供試材Aは、CeZrNd複合酸化物粒子材(貴金属担持なし)であり、硝酸ロジウムを添加せずに、他は先に説明した「RhドープCeZrNd複合酸化物調製法」と同じ手順で調製した。CeZrNd複合酸化物の組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)である。
【0043】
−供試材B−
供試材Bは、Rh担持CeZrNd複合酸化物粒子材(Rh担持量0.1質量%)であり、供試材Aと同じ方法でCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した後、硝酸ロジウム溶液を用い、蒸発乾固法にてRhをCeZrNd複合酸化物粒子材に担持させた。CeZrNd複合酸化物の組成は供試材Aと同じである。
【0044】
−供試材C−
供試材Cは、Pt担持CeZrNd複合酸化物粒子材(Pt担持量3.2質量%)であり、供試材Aと同じ方法でCeZrNd複合酸化物粒子材を調製した後、ジニトロジアミン白金硝酸溶液を用い、蒸発乾固法にてPtをCeZrNd複合酸化物粒子材に担持させた。
【0045】
−供試材D−
供試材Dは、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Rhドープ量0.1質量%)であり、先に説明した「RhドープCeZrNd複合酸化物調製法」で調製した。CeZrNd複合酸化物の組成は供試材Aと同じである。
【0046】
−供試材E−
供試材Eは、Rh担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Rh担持量0.1質量%,Rhドープ量0.1質量%)であり、供試材DにRhを蒸発乾固法にて担持させたものである。
【0047】
−供試材F−
供試材Fは、Pt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材(Pt担持量3.1質量%,Rhドープ量0.1質量%)であり、供試材DにPtを蒸発乾固法にて担持させたものである。蒸発乾固にはジニトロジアミン白金硝酸溶液を用いた。
【0048】
[カーボン燃焼性能評価方法]
図11に示す試験装置にて各供試材の非接触条件でのカーボン燃焼性能を評価した。同図において、21はモデルガスを流通させる石英管であり、その内部に供試材セットが設けられている。供試材セットは、上流側から下流側に向かって、グラスウール22、供試材のペレット23、グラスウールスペーサ(厚さ1mm)24、カーボンブラック25、及びグラスウール26が順に重ねられたものである。グラスウールスペーサ24によって供試材ペレット23とカーボンブラック25とを非接触状態にしている。
【0049】
供試材A〜Fは、大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後に25tonの圧力で圧粉し、次いで粉砕し、篩い分けにより粒度100〜300μmに調整した後、図11の符号23の位置に挿入した。ペレット23における供試材量は20mg、カーボンブラック25のカーボン量は5mgである。
【0050】
そうして、石英管21にHeガスを流しながら供試材セットを580℃まで昇温させた後、同温度でHeガスから3.5%18O2含有Heガス(流量;100cc/分)に切り換えた。この切り換えから600秒間にわたって、供試材セット下流側のCO及びCO2濃度(C16O,C18O,C16O2,C16O18O,C18O2)を四重極質量分析計によって測定し、それら濃度からカーボン燃焼量を求めた。各供試材のCeZrNd複合酸化物を構成する酸素は16Oである。
【0051】
[結果]
結果を図12に示す。供試材A〜E間ではカーボン燃焼量に殆ど差が出ていない。つまり、CeZrNd複合酸化物にRhをドープしても、Rhを担持しても、或いはPtを担持しても、カーボン燃焼性能は、そのような貴金属をドープないしは担持しない場合と殆ど変わらない。これに対して、供試材FのPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物では、他の供試材に比べてカーボン燃焼量が2倍程度多くなっている。CeZrNd複合酸化物にRhをドープし且つPtを担持することが、上記非接触条件(先に説明した緩慢燃焼域(燃焼後期))でのカーボンの燃焼に特異な効果を示すことがわかる。
【0052】
ここに、C16O及びC16O2はCeZrNd複合酸化物内部から放出された16Oがカーボンと反応して生じたものであり、C16O18Oの16OもCeZrNd複合酸化物内部から放出されたものである。このことから、CeZrNd複合酸化物において酸素交換反応を生じていることがわかる。そして、他の供試材と比べて、CeZrNd複合酸化物にRhをドープし且つPtを担持したものについては、グラスウールスペーサ24を挟んで1mm下流にあるカーボンに対して、酸化物内部から放出された16Oのより多くが、活性を保ったまま供給され、燃焼を促進していることがわかる。
【0053】
<供試材FのRh/Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係>
供試材FのPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材におけるRh/Pt質量比が非接触条件でのカーボンの燃焼にどのように影響しているかを調べた。すなわち、PtとRhとを合わせたトータル貴金属量は3.2質量%に固定し、Rhドープ量とPt担持量とを変化させた各種のPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を調製し、各々のカーボン燃焼量を先に説明した[カーボン燃焼性能評価方法]によって測定した。結果を表1及び図13に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
図12の結果と図13の結果を比較すると、供試材Fの場合、Rh/Pt質量比が1/150以上1/2以下であるときに、供試材A〜Eよりもカーボン燃焼量が多くなることがわかる。特にRh/Pt質量が1/30であるときにカーボン燃焼量が最も多くなっている。
【0056】
<触媒材のRh/全Pt質量比と非接触条件でのカーボン燃焼性能との関係>
本発明は、パティキュレート燃焼除去用触媒材を、Ce含有複合酸化物とZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属としてのRh及びPtとを組み合わせて構成している。その具体例の一つは、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とにPtを担持させてなる触媒系である。そこで、この触媒系においてRh/全Pt質量比が非接触条件でのカーボン燃焼性能に及ぼす影響を調べた。ここに、「全Pt」は、RhドープCeZrNd複合酸化物に担持されたPtと、上記複合粒子材に担持されたPtとを合わせた量を意味する。
【0057】
[供試材の基本構成]
混合比 ZrNdPrOx・Al2O3:RhドープCZN=8:1(質量比)
複合粒子材の組成 ZrNdPrOx:Al2O3=3:1(質量比)
RhドープCZNのRhを除く組成 CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)
ZrNdPrOxの組成 ZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)
【0058】
[供試材のRh/全Pt質量比の調製]
Rh/全Pt質量比を種々に変えるために、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材のRhドープ量と、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合物に対するPt担持量(全Pt量)とを種々に変えた。但し、Rhドープ量と全Pt量との合計量は供試材量(Pt担持ZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とPt担持RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材との合計量)の3.2質量%となるようにした。
【0059】
[カーボン燃焼量の測定・評価]
Rh/全Pt質量比が相違する各供試材のカーボン燃焼量を先に説明した[カーボン燃焼性能評価方法]によって測定した。結果を表2及び図14に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
Rh/全Pt質量比が1/1000以上1/4以下であるときに、カーボン燃焼量が6.5mmol/g-cat以上になっている。特にRh/全Pt質量が1/50であるときにカーボン燃焼量が最も多くなっている。
【0062】
<実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材のカーボン燃焼性能>
[触媒材の構成]
−実施例1〜12−
実施例1〜12に係る触媒材はいずれも、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材とにPtを担持させてなる。また、いずれも、RhドープCeZrNd複合酸化物のRhを除く組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=24:72:4(モル比)、そのRhドープ量は0.1質量%、ZrNdPr複合酸化物の組成はZrO2:Nd2O3:Pr2O3=70:12:18(モル比)、RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合物に対するPt担持量は3.0質量%である。
【0063】
そして、実施例1〜12に係る触媒材は、表3に示すように、RhドープCeZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物・活性アルミナ複合粒子材との混合比、並びに上記複合粒子材の組成(ZrNdPr複合酸化物と活性アルミナとの質量比)が相違する。各触媒材は、上記混合比が相違する結果、Rh含有量が相違する。
【0064】
【表3】
【0065】
−比較例1〜6−
比較例1〜6の触媒材構成を表4に示す。
【0066】
比較例1に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0067】
比較例2に係る触媒材は、上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0068】
比較例3に係る触媒材は、上記活性アルミナ粒子材にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0069】
比較例4に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材と上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0070】
比較例5に係る触媒材は、上記RhドープCeZrNd複合酸化物粒子材と上記活性アルミナ粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0071】
比較例6に係る触媒材は、上記ZrNdPr複合酸化物粒子材と上記活性アルミナ粒子材との混合物(質量比=1:1)にPtを3.0質量%担持させてなる。
【0072】
【表4】
【0073】
図15は、実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材のZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)、活性アルミナ(Al2O3)及びRhドープCeZrNd複合酸化物(RhドープCZN)の質量比を示す三成分相図(三角図表)である。
【0074】
[煤燃焼性能の評価]
実施例1〜12及び比較例1〜6に係る触媒材による煤の燃焼速度を次の方法によって求めた。
【0075】
すなわち、実施例1〜12及び比較例1〜6の各触媒材をフィルタに担持させた。フィルタとしては、セル壁厚さ16mil(4.064×10−1mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数178のSiC製ハニカム状フィルタ(容量2.44L)を採用した。フィルタ1L当たりの触媒材担持量は20g/Lとした。この触媒材を担持したフィルタをエンジンの排気管に装着し、該エンジンを運転することによって実排ガス中の煤をフィルタに堆積させた。煤が堆積したフィルタから11.3cc(直径17mm、長さ50mm)のサンプルフィルタを切り取り、図7及び図8に示すように排ガス通路の目封じを施した。
【0076】
得られた各サンプルフィルタを模擬ガス流通反応装置に取り付け、N2ガスを流通させながらそのガス温度を上昇させた。フィルタ入口温度が580℃で安定した後、N2ガスから模擬排ガス(O2;7.5%,残N2)に切り換え、該模擬排ガスを空間速度40000/hで流した。そして、煤が燃焼することにより生じるCO及びCO2のガス中濃度をリアルタイムで測定し、それらの濃度から、下記の計算式を用いて、各時間ごとに、単位時間当たりのカーボン燃焼量を計算した。
【0077】
カーボン燃焼速度(g/h)
={ガス流速(L/h)×[(CO+CO2)濃度(ppm)/(1×106)]}×12(g/mol)/22.4(L/mol)
【0078】
その上で、時間に対するカーボン燃焼量の積算値を求め、煤燃焼率が90%に達するまでに要した時間から煤燃焼速度(フィルタ1Lでの1分間当たりの煤燃焼量(g/min-L))を求めた。
【0079】
結果を図16に示す。実施例1〜12はいずれも比較例1〜6より煤燃焼速度が大である。実施例1〜12のなかでは、実施例7の煤燃焼速度が最も大きく(0.046g/min-L)、これに、実施例3,8(0.045g/min-L)、実施例10(0.044g/min-L)、実施例4,6,11(0.043g/min-L)、実施例2,12(0.040g/min-L)、実施例1,5,9(0.038g/min-L)が続いている。
【0080】
このことから、ZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)、活性アルミナ(Al2O3)及びRhドープCeZrNd複合酸化物の質量比は、図15に示す三成分相図において、実施例4に相当するA(18+3/4,6+1/4,75)点、実施例12に相当するB(6+1/4,18+3/4,75)点、実施例9に相当するC(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点、並びに実施例1に相当するD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内にあることが好ましいということができる。また、上記質量比は、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、実施例10に相当するE(16+2/3,50,33+1/3)点、並びに実施例2に相当するF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内にあることが好ましいということができる。
【0081】
さらには、図15に示す三成分相図において、上記質量比は、実施例4に相当する点(18+3/4,6+1/4,75)、実施例3に相当する点(37.5,12.5,50),実施例6に相当する点(33+1/3,33+1/3,33+1/3)、実施例10に相当する点(16+2/3,50,33+1/3)、実施例11に相当する点(12.5,37.5,50)、並びに実施例8に相当する点(12.5,12.5,75)で囲まれる範囲内になるようにすることが好ましいということができる。
【0082】
次に、上記実施例1に対応する比較例7の触媒材をさらに調製し、この実施例1と比較例7の燃焼前期(煤燃焼率が50%に達するまで)及び燃焼後期(煤燃焼率から50%から90%に達するまで)の煤燃焼速度を、先に説明した[煤燃焼性能の評価]方法により測定した。
【0083】
ここに、比較例7に係る触媒材は、ZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOx)粉末、活性アルミナ(Al2O3)粉末とRhドープCeZrNd複合酸化物粉末とを6:2:1の質量比で混合し、この混合物にPtを3.0質量%担持してなるものであり、その質量比は実施例1の三成分の質量比と同じである。また、ZrNdPr複合酸化物及びRhドープCeZrNd複合酸化物の組成も実施例1と比較例7は同じである。
【0084】
結果を表5に示す。燃焼前期(接触条件での急速燃焼域に相当)及び燃焼後期(非接触条件での緩慢燃焼域に相当)のいずれにおいても、実施例1は比較例7よりも煤燃焼速度が大である。Zr含有複合酸化物と活性アルミナとの複合粒子材と、RhドープCe含有複合酸化物粒子材との組み合わせが接触条件及び非接触条件のいずれにおいても煤を速やかに燃焼する上で大きな効果があることがわかる。
【0085】
【表5】
【符号の説明】
【0086】
1 フィルタ
2 排ガス流入路(排ガス通路)
3 排ガス流出路(排ガス通路)
6 細孔(排ガス通路)
7 触媒層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、Ce含有複合酸化物とCeを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属とを含む触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタであって、
上記触媒金属としてRhとPtとを含み、
上記Ce含有複合酸化物は、上記RhがドープされたRhドープCe含有複合酸化物粒子として上記触媒層に存在し、且つ該RhドープCe含有複合酸化物粒子に上記Ptが担持されており、
上記Zr含有複合酸化物と上記活性アルミナとは、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子として上記触媒層に存在し、且つ該複合粒子に上記Ptが担持されており、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
請求項1において、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、上記三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、E(16+2/3,50,33+1/3)点及びF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記RhとPtとの質量比Rh/Ptが1/1000以上1/4以下であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記複合粒子を構成する上記Zr含有複合酸化物粒子及び上記活性アルミナ粒子各々の平均粒子径は20〜100nmであることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項1】
排ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタの排ガス通路壁に、Ce含有複合酸化物とCeを含有しないZr含有複合酸化物と活性アルミナと触媒金属とを含む触媒層が設けられている触媒付パティキュレートフィルタであって、
上記触媒金属としてRhとPtとを含み、
上記Ce含有複合酸化物は、上記RhがドープされたRhドープCe含有複合酸化物粒子として上記触媒層に存在し、且つ該RhドープCe含有複合酸化物粒子に上記Ptが担持されており、
上記Zr含有複合酸化物と上記活性アルミナとは、Zr含有複合酸化物粒子と活性アルミナ粒子とが混じり合って凝集した複合粒子として上記触媒層に存在し、且つ該複合粒子に上記Ptが担持されており、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、(Zr含有複合酸化物,活性アルミナ,RhドープCe含有複合酸化物)の三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、C(22+2/9,66+6/9,11+1/9)点及びD(66+6/9,22+2/9,11+1/9)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項2】
請求項1において、
上記RhドープCe含有複合酸化物粒子材と上記複合粒子材とは、上記Zr含有複合酸化物、上記活性アルミナ及び上記RhドープCe含有複合酸化物が、上記三成分相図において、A(18+3/4,6+1/4,75)点、B(6+1/4,18+3/4,75)点、E(16+2/3,50,33+1/3)点及びF(50,16+2/3,33+1/3)点で囲まれる範囲内の質量比となるように混合されていることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記RhとPtとの質量比Rh/Ptが1/1000以上1/4以下であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記複合粒子を構成する上記Zr含有複合酸化物粒子及び上記活性アルミナ粒子各々の平均粒子径は20〜100nmであることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図4】
【図10】
【図3】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図13】
【図14】
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【図4】
【図10】
【公開番号】特開2013−66856(P2013−66856A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207774(P2011−207774)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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