説明

触媒再生方法および触媒再生装置

【課題】装置規模をコンパクトにするとともに制御も容易にした、触媒再生方法および触媒再生装置を提供する。
【解決手段】芳香族製造触媒を再生する触媒再生方法である。仕切り壁22によって底部側を低温ゾーン23と高温ゾーン24とに区画した単段式の触媒再生器21の低温ゾーン23に、廃触媒Cを導入する廃触媒導入工程と、低温ゾーン23に酸素含有ガスを供給し、廃触媒のコーク中の水素分を燃焼させる第1燃焼工程と、第1燃焼工程を経た廃触媒Cを低温ゾーン23から高温ゾーン24にオーバーフローさせるオーバーフロー工程と、高温ゾーン24に酸素含有ガスを供給し、廃触媒Cのコーク中の炭素分を燃焼させて二酸化炭素にする第2燃焼工程と、第2燃焼工程を経た再生触媒を高温ゾーン24から導出する再生触媒導出工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解改質反応による単環芳香族炭化水素の製造に用いられる単環芳香族炭化水素製造用触媒を再生するための、触媒再生方法および触媒再生装置に関する。分解改質反応とは、流動床を用いた分解改質による、単環芳香族炭化水素の製造をなす反応である。
【背景技術】
【0002】
原油蒸留装置から得られる軽質ナフサ、重質ナフサ等から接触芳香族製造反応により、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等の単環芳香族炭化水素を製造する方法はよく知られている。一般に、これらの製造方式としては、粒状の単環芳香族炭化水素製造用触媒(以下、芳香族製造触媒と記す。)を用いた固定床または移動床による方式が採用されている。
【0003】
芳香族製造反応は、通常、吸熱反応であるため、その反応熱を補うための熱供給の方法およびそれに関連する温度制御の手法が課題となっている。また、原料油として重質ナフサ、特に流動接触分解(以下、FCCと記す。)装置からの分解軽油(ライトサイクルオイル。以下、LCOと記す。)を用いた場合には、反応操作の進行に伴うコークの発生が著しく、芳香族製造触媒の再生の頻度も高くなる。
【0004】
このような課題に対処するため、従来の固定床(例えば、特許文献1等)や移動床(例えば、特許文献2等)による方式に代え、流動床による方式も提案されている(例えば、特許文献3等)。
流動床による方式を採用することで、反応床内の触媒の状態をより均一にすることができ、また、原料が重質化した場合のコーク劣化した芳香族製造触媒を適宜分解改質反応器から抜き出すことで、再生を円滑に行うことができる。
【0005】
すなわち、原料油との接触によって芳香族製造触媒にコークが付着し、芳香族製造触媒が不活性化するため、分解改質反応器内から芳香族製造触媒(廃触媒)を抜き出して再生器(触媒再生器)に移送し、該再生器内にて不活性化した触媒(廃触媒)に付着したコークを外部から供給した空気の存在下で燃焼させ、廃触媒を再生する。その後、再生した芳香族製造触媒(再生触媒)を分解改質反応器に移送する。
【0006】
触媒再生器としては、従来では単段式の触媒再生器によるものが知られている。この単段式の触媒再生器からなる触媒再生器では、充分な量の酸素(空気)を供給することにより、移送されてきた廃触媒のコーク中の水素分を燃焼させて水にするとともに、炭素分を完全燃焼させて二酸化炭素にしている。しかし、このような単段式の触媒再生器では、炭素を完全燃焼させて二酸化炭素にしているため発熱量が多く、この発熱によって触媒再生器内の触媒の温度が高くなり過ぎて触媒が水熱劣化を起こしてしまう。すなわち、触媒再生器内では以下に示すような反応(燃焼)が主に起こるが、水素分の燃焼は炭素の燃焼に優先して起こるため、触媒再生器内には水分が存在することになる。
・H+(1/2)O→H
・C+O→CO
その状態で、炭素分の完全燃焼によって高温状態になると、触媒は水による水熱劣化を起こしてしまうのである。
【0007】
そこで、触媒再生器内への空気の供給量を少なくし、以下に示すように炭素の一部を不完全燃焼させ、発熱量を抑えることが考えられる。
・C+(1/2)O→CO
炭素を一酸化炭素にする不完全燃焼は、二酸化炭素にする完全燃焼に比べて発熱量が少なく、したがって発熱量が抑えられる。しかしながら、その場合には、分解改質反応器に供給される触媒に充分な熱が付与されず、分解改質反応器における芳香族製造反応において必要な熱が得られなくなることがある。また、触媒にカーボンが残ってしまうなど再生状態が不充分となり、触媒性能が充分に再生されなくなってしまうこともある。
【0008】
そこで、単段式の触媒再生器に代えて、2段式の触媒再生器を用いることが考えられる。
すなわち、1段目の触媒再生器内で主に廃触媒のコーク中の水素分を燃焼させて水にし、2段目の触媒再生器内で主にコーク中の炭素分を完全燃焼させて二酸化炭素にする。このように構成することで、2段目では水が生成しないことから水熱劣化が起こらず、しかも炭素分を完全燃焼させて二酸化炭素にすることで、触媒再生効率を高め、かつ分解改質反応器に供給する触媒に充分な熱を付与して高温にすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−277692号公報
【特許文献2】特開昭48−85605号公報
【特許文献3】特表平3−503656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したように触媒再生器を2段式の触媒再生器で構成するのは、装置規模が大きくなって単環芳香族炭化水素の製造プラントの大型化を招いてしまう。また、1段目の触媒再生器から2段目の触媒再生器に触媒を移送する機構が必要となるなど、機構が複雑になり、したがってその制御も複雑になってしまう。
【0011】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、水熱劣化をほとんど起こさせることなく、かつ、充分な熱を付与した状態に廃触媒を再生することができ、しかも、装置規模をコンパクトにするとともに制御も容易にした、触媒再生方法および触媒再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の触媒再生方法は、分解改質反応法による単環芳香族炭化水素の製造に用いられる単環芳香族炭化水素製造用触媒を再生する触媒再生方法であって、
仕切り壁によって底部側を低温ゾーンと該低温ゾーンより高温に保持される高温ゾーンとに区画した単段式の触媒再生器の前記低温ゾーンに、分解改質反応法に用いられた廃触媒を導入する廃触媒導入工程と、
前記低温ゾーンに酸素含有ガスを供給し、前記廃触媒に付着しているコーク中の水素分を燃焼させる第1燃焼工程と、
前記第1燃焼工程を経た前記廃触媒を前記低温ゾーンから前記高温ゾーンにオーバーフローさせるオーバーフロー工程と、
前記高温ゾーンに酸素含有ガスを供給し、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた前記廃触媒に付着しているコーク中の炭素分を燃焼させて二酸化炭素にする第2燃焼工程と、
前記第2燃焼工程を経た再生触媒を前記高温ゾーンから導出する再生触媒導出工程と、を備えることを特徴とする。
なお、第1燃焼工程においては、一部の炭素は不完全燃焼がなされる。
【0013】
また、前記触媒再生方法において、前記第1燃焼工程では、前記低温ゾーン内の温度が650℃以下になるように酸素含有ガスの供給量を制御しつつ燃焼を行わせ、
前記第2燃焼工程では、前記高温ゾーン内の温度が500℃以上800℃以下で、かつ前記低温ゾーン内の温度より高くなるように酸素含有ガスの供給量を制御しつつ燃焼を行わせることが好ましい。
【0014】
また、本発明の触媒再生装置は、分解改質反応法による単環芳香族炭化水素の製造に用いられる単環芳香族炭化水素製造用触媒を再生する触媒再生装置であって、
単段式の触媒再生器からなり、前記触媒再生器の底部側が、仕切り壁によって低温ゾーンと該低温ゾーンより高温に保持される高温ゾーンとに区画され、
前記低温ゾーンには、分解改質反応法に用いられた廃触媒が導入される導入口が設けられ、
前記高温ゾーンには、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた廃触媒を再生した後の再生触媒を導出するための導出口が設けられ、
前記低温ゾーンには、該低温ゾーン内に酸素含有ガスを供給する第1ガス供給部が接続され、
前記高温ゾーンには、該高温ゾーン内に酸素含有ガスを供給する第2ガス供給部が接続され、
前記第1ガス供給部は第1制御部に接続され、
前記第2ガス供給部は第2制御部に接続され、
前記第1制御部は、前記低温ゾーン内への酸素含有ガスの供給量が、前記廃触媒に付着しているコーク中の水素分を燃焼させるのに必要な量となるように前記第1ガス供給部を制御し、
前記第2制御部は、前記高温ゾーン内への酸素含有ガスの供給量が、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた廃触媒に付着しているコーク中の炭素分を燃焼させて二酸化炭素にするのに必要な量となるように前記第2ガス供給部を制御することを特徴とする。
【0015】
また、前記触媒再生装置において、前記第1制御部は、前記低温ゾーン内の温度が650℃以下になるように前記第1ガス供給部による酸素含有ガスの供給量を制御し、
前記第2制御部は、前記高温ゾーン内の温度が500℃以上800℃以下で、かつ前記低温ゾーン内の温度より高くなるように前記第2ガス供給部による酸素含有ガスの供給量を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の触媒再生方法および触媒再生装置によれば、単段式の触媒再生器の底部側を単に仕切り壁によって低温ゾーンと高温ゾーンとに区画し、低温ゾーンの廃触媒をオーバーフローさせることで高温ゾーンに移送するようにしたので、装置構成を簡易にして装置規模をコンパクト化することができ、また、制御も容易にすることができる。
さらに、低温ゾーンで主にコーク中の水素分を燃焼させ、高温ゾーンで主にコーク中の炭素分を完全燃焼させるようにしたので、水熱劣化をほとんど起こさせることなく、かつ、充分な熱を分解改質反応器へ供給される触媒に付与して触媒を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】単環芳香族炭化水素の製造プラントの一例を示す概略構成図である。
【図2】(a)は本発明の触媒再生装置の一実施形態の概略構成を示す側断面図、(b)は(a)に示した触媒再生装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の触媒再生装置を備えた単環芳香族炭化水素の製造プラントの一例を示す図であり、図1中符号10は分解改質反応器、20は触媒再生装置である。
分解改質反応器10は、原料油を流動床状態にある芳香族製造触媒(単環芳香族炭化水素製造用触媒)と接触させ、分解改質反応させてBTXを多く含む生成油を得るためのもので、触媒ライザ11を通って移送された原料油の蒸気および芳香族製造触媒を内部に導入する供給口と、芳香族製造触媒を第1の傾斜パイプ12に抜き出す抜出口と、生成油の蒸気と芳香族製造触媒とを分離するサイクロン(図示略)と、サイクロンで分離された生成油の蒸気を排出パイプ13に排出する排出口と、を備えている。また、触媒ライザ11には、該触媒ライザ11に原料油を供給し、該触媒ライザ11を介して分解改質反応器10に原料油を供給するためのフィードパイプ14が接続されている。
【0019】
触媒再生装置20は、分解改質反応器10にて用いられた芳香族製造触媒を再生するためのもので、有底有蓋円筒状の単段式の触媒再生器21(図2参照)からなり、前記第1の傾斜パイプ12に接続して分解改質反応器10からの芳香族製造触媒(廃触媒)を導入するための導入口と、前記触媒ライザ11に接続する第2の傾斜パイプ15に接続して、再生した芳香族製造触媒(再生触媒)を該第2の傾斜パイプ15に導出するための導出口と、を有して構成されている。
【0020】
この触媒再生装置20には、図2(a)の側断面図に示すように触媒再生器21の底部側に仕切り壁22が設けられており、これによって触媒再生器21の底部側には、低温ゾーン23と高温ゾーン24とが区画形成されている。仕切り壁22は、図2(a)に示すように触媒再生器21の円筒状の側壁の底部側に取り付けられたもので、図2(b)の平面図に示すように側壁の一方の側に偏って形成配置されている。そして、この仕切り壁22によって仕切られ、区画された二つの領域のうちの狭い方の領域が低温ゾーン23とされ、広い方の領域が高温ゾーン24とされている。
【0021】
低温ゾーン23を形成する触媒再生器21の側壁部(側面)には前記導入口(図示せず)が形成されており、この導入口には前記第1の傾斜パイプ12が接続されている。この第1の傾斜パイプ12には、低温ゾーン23内への廃触媒(芳香族製造触媒)の導入量を調整するための調整バルブ12aが設けられている。このような構成により、低温ゾーン23には前記分解改質反応器10から第1の傾斜パイプ12を介して廃触媒が導入されるようになっている。
【0022】
高温ゾーン24を形成する触媒再生器21の側壁部(側面)には前記導出口(図示せず)が形成されており、この導出口には前記第2の傾斜パイプ15が接続されている。この第2の傾斜パイプ15にも、高温ゾーン24からの芳香族製造触媒(再生触媒)の導出量を調整するための調整バルブ(図示せず)が設けられている。このような構成により、高温ゾーン24から前記分解改質反応器10に、第2の傾斜パイプ15、触媒ライザ11を介して再生触媒(芳香族製造触媒)が返送されるようになっている。
【0023】
また、低温ゾーン23には、該低温ゾーン23内に空気(酸素含有ガス)を供給する第1ガス供給部25が接続され、高温ゾーン24には、該高温ゾーン24内に空気(酸素含有ガス)を供給する第2ガス供給部26が接続されている。
第1ガス供給部25は、コンプレッサー等の空気源27に接続するパイプ28から分岐し、低温ゾーン23内にまで延びて配置された第1配管29と、この第1配管29の先端部に設けられて低温ゾーン23内に空気を吹き出す例えば円環状の第1吹出管30と、を備えて構成されている。同様に第2ガス供給部26は、前記空気源27に接続するパイプ28から分岐し、高温ゾーン24内にまで延びて配置された第2配管31と、この第2配管31の先端部に設けられて高温ゾーン24内に空気を吹き出す円環状の第2吹出管32と、を備えて構成されている。
【0024】
第1吹出管30は低温ゾーン23の底部側に配置されており、第2吹出管32も高温ゾーン24の底部側に配置されている。これによって第1吹出管30、第2吹出管32は、それぞれに形成された多数の吹き出し口(図示せず)から空気を、各ゾーンのほぼ全域に吹き出すことができるようになっている。
【0025】
また、第1ガス供給部25の第1配管29には第1制御バルブ33が設けられ、該第1制御バルブ33には制御装置34が電気的に接続されている。同様に、第2ガス供給部26の第2配管31には第2制御バルブ35が設けられ、該第2制御バルブ35には制御装置34が電気的に接続されている。このような構成のもとに、制御装置34によって第1制御バルブ33、第2制御バルブ35の開度が調整されるようになっている。また、第1ガス供給部25による低温ゾーン23内への空気の供給量、および第2ガス供給部26による高温ゾーン24内への空気の供給量が、制御装置34によって調整されるようになっている。すなわち、第1制御バルブ33とこれを制御する制御装置34とにより、第1ガス供給部25を制御する第1制御部が形成されており、第2制御バルブ35とこれを制御する制御装置34とにより、第2ガス供給部26を制御する第2制御部が形成されている。
【0026】
ここで、第1制御部は、第1ガス供給部25を制御することにより、低温ゾーン23内に導入される芳香族製造触媒C(廃触媒)に付着しているコーク中の水素分を燃焼させるのに必要な量供給できるように、低温ゾーン23内への空気の供給量を調整する。具体的には、芳香族製造触媒Cのコーク中の水素分を燃焼させて水にすることにより、その反応熱によって低温ゾーン23内の温度が650℃以下、好ましくは630℃以下になるように、低温ゾーン23内への空気の供給量を調整する。ただし、この低温ゾーン23では、芳香族製造触媒C(廃触媒)に付着しているコーク中の炭素分を完全燃焼させないよう、空気の供給量を調整する必要がある。
【0027】
このような空気の供給量の調整は、例えば低温ゾーン23内の温度をモニタリングすることによって行うことができる。すなわち、低温ゾーン23内の適宜位置、例えば仕切り壁22と反対側の触媒再生器側壁の内面に温度センサ36を配置しておき、この温度センサ36によって検出された温度に基づき、制御装置34は第1制御バルブ33の開度を調整する。例えば、予め実験やシミュレーション等によって温度センサ36で検出される低温ゾーン23内の温度と空気供給量との関係を調べておき、低温ゾーン23内の温度が予め設定した温度より高くなったら供給する空気量を減らし、温度が低くなったら供給する空気量を増やすように制御する。これにより、低温ゾーン23への芳香族製造触媒C(廃触媒)の導入量が変化し、燃焼による発熱量にばらつきが生じても、供給する空気量を調整することによって低温ゾーン23内の温度を予め設定した範囲内に保持することができる。
【0028】
なお、低温ゾーン23では、前記したように導入された芳香族製造触媒C(廃触媒)に付着しているコーク中の炭素分が完全燃焼しないように、空気の供給量を調整する。水素分の燃焼(H+(1/2)O→HO)は炭素分の不完全燃焼(C+(1/2)O→CO)や完全燃焼(C+O→CO)に優先して起こるため、空気の供給量を調整することにより、特に炭素分の完全燃焼を起こさせることなく、水素分の燃焼を起こさせことが可能になる。ただし、二酸化炭素(炭酸ガス)への完全燃焼はともかく、一酸化炭素への不完全燃焼がある程度起こるのを防ぐのは困難である。しかし、炭素分の不完全燃焼による一酸化炭素の生成は、完全燃焼の場合に比べて発熱量が少なく、したがってこのような不完全燃焼はある程度許容される。
【0029】
また、低温ゾーン23では、水素分が燃焼して生成した水(HO)と、炭素分が燃焼して生成した一酸化炭素(CO)とが、触媒再生器21の頂部に設けられたサイクロン37を経て外部に排気され、COボイラ38に送られて処理される。なお、水や一酸化炭素に同伴された触媒は、サイクロン37によって固気分離されることにより、水や一酸化炭素から分離されて触媒再生器21の底部側に回収される。このように、水はサイクロン37を経て外部に排気されることから、高温ゾーン24側に滞留することはない。
【0030】
また、このようにして水素分が燃焼した触媒Cは、分解改質反応器10から第1の傾斜パイプ12を経て低温ゾーン23内に芳香族製造触媒C(廃触媒)が導入されることにより、仕切り壁22をオーバーフローして高温ゾーン24に移動する。
【0031】
第2制御部は、第2ガス供給部26を制御することにより、高温ゾーン24内にオーバーフローした芳香族製造触媒Cに付着しているコーク中の炭素分を完全燃焼させるのに必要な量供給できるように、高温ゾーン24内への空気の供給量を調整する。具体的には、芳香族製造触媒Cのコーク中の炭素分を完全燃焼させて二酸化炭素にすることにより、その反応熱によって高温ゾーン24内の温度が500℃以上800℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下で、かつ、低温ゾーン23内の温度より高くなるように、高温ゾーン24内への空気の供給量を調整する。
【0032】
このような空気の供給量の調整も、低温ゾーン23の場合と同様、例えば高温ゾーン24内の温度をモニタリングすることによって行うことができる。すなわち、高温ゾーン24内の適宜位置、例えば仕切り壁22と反対側の触媒再生器側壁の内面に温度センサ40を配置しておき、この温度センサ40によって検出された温度に基づき、制御装置34は第2制御バルブ35の開度を調整する。例えば、予め実験やシミュレーション等によって温度センサ40で検出される高温ゾーン24内の温度と空気供給量との関係を調べておき、高温ゾーン24内の温度が予め設定した温度より高くなったら供給する空気量を減らし、温度が低くなったら供給する空気量を増やすように制御する。これにより、低温ゾーン23から高温ゾーン24にオーバーフローする芳香族製造触媒Cの量が変化し、高温ゾーン24での燃焼による発熱量にばらつきが生じても、供給する空気量を制御することによって高温ゾーン24内の温度を予め設定した範囲内に保持することができる。
また、触媒再生器内で過度の温度上昇を避けるため、当該触媒再生器上部に触媒サイクロンを設け、反応熱をサイクロン部で循環流動する触媒に吸収させることも有効である。
【0033】
すなわち、高温ゾーン24では、オーバーフローしてきた芳香族製造触媒Cに付着しているコーク中の炭素分が完全燃焼するよう、空気の供給量を充分に多くする。このようにして炭素分を完全燃焼させると、炭素分の完全燃焼は発熱量が多いため、高温ゾーン24内は前記した範囲の高温状態に保持される。なお、オーバーフローしてきた芳香族製造触媒Cは、これに付着しているコーク中から水素分がほぼ完全に除去されているため、高温ゾーン24では水素分の燃焼が起こらない。したがって、高温ゾーン24内には水分が存在せず、そのため高温ゾーン24内が前記した高温範囲に保持されていても、芳香族製造触媒Cは水熱劣化を起こすことがない。
【0034】
なお、高温ゾーン24で生成した二酸化炭素や供給された空気の過剰分は、低温ゾーン23で生成した水や一酸化炭素と共に触媒再生器21の頂部に設けられたサイクロン37を経て外部に排気され、COボイラ38に送られて処理される。また、サイクロン37によって固気分離されることにより、二酸化炭素や空気の過剰分に同伴される触媒も、触媒再生器21の底部側に回収される。
【0035】
また、このようにして炭素分が燃焼した触媒Cは、低温ゾーン23から高温ゾーン24内に芳香族製造触媒Cが連続的にオーバーフローしてくることにより、導出口から第2の傾斜パイプ15に導出され、図1に示したように触媒ライザ11を経て分解改質反応器10に返送される。
【0036】
フィードパイプ14より触媒ライザ11を経て分解改質反応器10に供給される原料油としては、FCC装置から得られるLCO、該LCOを水素化処理したものならびに原油蒸留装置からのナフサおよび直留軽油等からなる群から選ばれる1種以上が用いられる。
【0037】
芳香族製造触媒は、結晶性アルミノシリケートを含むものである。
芳香族製造触媒における結晶性アルミノシリケートの含有量は、特に限定されないものの、芳香族製造触媒全体を100質量%とした際の10〜95質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜70質量%が特に好ましい。結晶性アルミノシリケートの含有量が10質量%以上であれば、充分に高い触媒活性が得られる。
【0038】
結晶アルミノシリケートは、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、中細孔ゼオライトおよび/または大細孔ゼオライトであることが好ましい。
中細孔ゼオライトは、10員環の骨格構造を有するゼオライトであり、中細孔ゼオライトとしては、例えば、AEL型、EUO型、FER型、HEU型、MEL型、MFI型、NES型、TON型、WEI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、MFI型が好ましい。
大細孔ゼオライトは、12員環の骨格構造を有するゼオライトであり、大細孔ゼオライトとしては、例えば、AFI型、ATO型、BEA型、CON型、FAU型、GME型、LTL型、MOR型、MTW型、OFF型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、工業的に使用できる点では、BEA型、FAU型、MOR型が好ましく、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできることから、BEA型が好ましい。
【0039】
結晶性アルミノシリケートは、中細孔ゼオライトおよび大細孔ゼオライト以外に、10員環以下の骨格構造を有する小細孔ゼオライト、14員環以上の骨格構造を有する超大細孔ゼオライトを含有してもよい。
ここで、小細孔ゼオライトとしては、例えば、ANA型、CHA型、ERI型、GIS型、KFI型、LTA型、NAT型、PAU型、YUG型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
超大細孔ゼオライトとしては、例えば、CLO型、VPI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
【0040】
[リン、ホウ素]
芳香族製造触媒においては、リンおよび/またはホウ素を含有することが好ましい。芳香族製造触媒がリンおよび/またはホウ素を含有すれば、単環芳香族炭化水素の収率の経時的な低下を防止でき、また、触媒表面のコーク生成を抑制できる。
【0041】
芳香族製造触媒にリンを含有させる方法としては、例えば、イオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケートまたは結晶性アルミノジンコシリケートにリンを担持する方法、ゼオライト合成時にリン化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をリンと置き換える方法、ゼオライト合成時にリンを含有した結晶促進剤を用いる方法、などが挙げられる。その際に用いるリン酸イオン含有水溶液は特に限定されないが、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびその他の水溶性リン酸塩などを任意の濃度で水に溶解させて調製したものを好ましく使用できる。
芳香族製造触媒にホウ素を含有させる方法としては、例えば、イオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケートまたは結晶性アルミノジンコシリケートにホウ素を担持する方法、ゼオライト合成時にホウ素化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をホウ素と置き換える方法、ゼオライト合成時にホウ素を含有した結晶促進剤を用いる方法、などが挙げられる。
【0042】
芳香族製造触媒におけるリンおよびホウ素の含有量は、触媒全重量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには、下限は0.5質量%以上がより好ましく、上限は9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。触媒全重量に対するリンの含有量が0.1質量%以上であることで、経時的な単環芳香族炭化水素の収率低下を防止でき、10質量%以下であることで、単環芳香族炭化水素の収率を高くできる。
【0043】
[ガリウム、亜鉛]
芳香族製造触媒には、必要に応じて、ガリウムおよび/または亜鉛を含有させることができる。ガリウムおよび/または亜鉛を含有させれば、単環芳香族炭化水素の生成割合をより多くできる。
【0044】
芳香族製造触媒におけるガリウム含有の形態としては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内にガリウムが組み込まれたもの(結晶性アルミノガロシリケート)、結晶性アルミノシリケートにガリウムが担持されたもの(ガリウム担持結晶性アルミノシリケート)、その両方を含んだものが挙げられる。
芳香族製造触媒における亜鉛含有の形態としては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内に亜鉛が組み込まれたもの(結晶性アルミノジンコシリケート)、結晶性アルミノシリケートに亜鉛が担持されたもの(亜鉛担持結晶性アルミノシリケート)、その両方を含んだものが挙げられる。
【0045】
結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートは、SiO、AlOおよびGaO構造が骨格中に存在する構造を有する。また、結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートは、例えば、水熱合成によるゲル結晶化、結晶性アルミノシリケートの格子骨格中にガリウムまたは亜鉛を挿入する方法、または結晶性ガロシリケートまたは結晶性ジンコシリケートの格子骨格中にアルミニウムを挿入する方法により得られる。
【0046】
ガリウム担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートにガリウムをイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。その際に用いるガリウム源としては、特に限定されないが、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩、酸化ガリウム等が挙げられる。
亜鉛担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートに亜鉛をイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。その際に用いる亜鉛源としては、特に限定されないが、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛塩、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0047】
芳香族製造触媒がガリウムおよび/または亜鉛を含有する場合、芳香族製造触媒におけるガリウムおよび亜鉛の含有量は、触媒全体を100質量%とした際の0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.05〜2.0質量%であることがより好ましい。ガリウムおよび亜鉛の含有量が0.01質量%以上であれば、単環芳香族炭化水素の生成割合をより多くでき、5.0質量%以下であれば、単環芳香族炭化水素の収率をより高くできる。
【0048】
[形状]
単環芳香族炭化水素製造用触媒は、反応形式に応じて、例えば、粉末状、粒状、ペレット状等にされる。例えば、本実施形態のように流動床の場合には粉末状にされ、別の実施形態のように固定床の場合には粒状またはペレット状にされる。流動床で用いる触媒の平均粒子径は30〜180μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。また、流動床で用いる触媒のかさ密度は0.4〜1.8g/ccが好ましく、0.5〜1.0g/ccがより好ましい。
なお、平均粒子径はふるいによる分級によって得た粒径分布において50質量%となる粒径を表し、かさ密度はJIS規格R9301−2−3の方法により測定した値である。
粒状またはペレット状の触媒を得る場合には、必要に応じて、バインダーとして触媒に不活性な酸化物を配合した後、各種成形機を用いて成形すればよい。
【0049】
単環芳香族炭化水素製造用触媒がバインダー等の無機酸化物を含有する場合、バインダーとしてリンを含むものを用いても構わない。
【0050】
(反応温度)
原料油を単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触、反応させる際の反応温度については、特に制限されないものの、400〜650℃とすることが好ましい。反応温度の下限は400℃以上であれば原料油を容易に反応させることができ、より好ましくは450℃以上である。また、反応温度の上限は650℃以下であれば単環芳香族炭化水素の収率を十分に高くでき、より好ましくは600℃以下である。
【0051】
(反応圧力)
原料油および後述するリサイクル油を単環芳香族炭化水素製造用触媒と接触、反応させる際の反応圧力は、1.5MPaG以下とすることが好ましく、1.0MPaG以下とすることがより好ましい。反応圧力が1.5MPaG以下であれば、軽質ガスの副生を抑制できる上に、反応装置の耐圧性を低くできる。
【0052】
(接触時間)
原料油と単環芳香族炭化水素製造用触媒との接触時間は、実質的に所望する反応が進行すれば特に制限はされないが、例えば、単環芳香族炭化水素製造用触媒上のガス通過時間で1〜300秒が好ましく、さらに下限は5秒以上、上限は150秒以下がより好ましい。接触時間が1秒以上であれば、確実に反応させることができ、接触時間が300秒以下であれば、コーキング等による触媒への炭素質の蓄積を抑制できる。または分解による軽質ガスの発生量を抑制できる。
【0053】
次に、図1、図2に示した構成の触媒再生装置20を用いた触媒再生方法について説明する。
[廃触媒導入工程]
まず、分解改質反応器10で使用され、不活性化した芳香族製造触媒(廃触媒)を、第1の傾斜パイプ12によって触媒再生装置20の低温ゾーン23内に導入する。なお、この低温ゾーン23内には、先に導入され、燃焼処理された芳香族製造触媒Cが残留しているものとする。
【0054】
[第1燃焼工程]
また、この低温ゾーン23には、第1ガス供給部25より空気(酸素含有ガス)を供給する。その際、第1制御バルブ33と制御装置34とからなる第1制御部により、第1ガス供給部25からの空気の供給量を制御する。すなわち、低温ゾーン23内への空気の供給量が、芳香族製造触媒C(廃触媒)に付着しているコーク中の水素分を燃焼させるのに必要な量となり、かつ、炭素を完全燃焼させない量となるように、第1制御部によって第1ガス供給部25を制御する。
【0055】
すると、低温ゾーン23の芳香族製造触媒Cは、付着しているコーク中の水素分が燃焼し、触媒再生器21の頂部より排出される。また、コーク中の炭素分が一部不完全燃焼して生成した一酸化炭素も排出される。その際、水素分の燃焼や炭素分の不完全燃焼は比較的発熱量が少ないため、低温ゾーン23内は前記したように650℃以下に保持され、したがって芳香族製造触媒Cは水熱劣化がほとんど起こらない。
【0056】
[オーバーフロー工程]
また、ある程度の燃焼処理を行ったら、第1の傾斜パイプ12に設けた調整バルブ12aによって低温ゾーン23内に新たに芳香族製造触媒C(廃触媒)を供給する。すると、低温ゾーン23内の芳香族製造触媒Cが過剰になることにより、その上部側に滞留して水素分が既に燃焼している芳香族製造触媒Cが、高温ゾーン24側にオーバーフローする。
【0057】
[第2燃焼工程]
高温ゾーン24には、第2ガス供給部26より空気(酸素含有ガス)を供給する。その際、第2制御バルブ35と制御装置34とからなる第2制御部により、第2ガス供給部26からの空気の供給量を制御する。すなわち、高温ゾーン24内への空気の供給量が、低温ゾーン23からオーバーフローしてきた芳香族製造触媒C(廃触媒)に付着している炭素分を燃焼させて二酸化炭素にするのに必要な量となるように、第2制御部によって第2ガス供給部26を制御する。
【0058】
すると、高温ゾーン24の芳香族製造触媒Cは、付着しているコーク中の炭素分が完全燃焼し、触媒再生器21の頂部より排出される。また、供給した空気の過剰分も排出される。その際、炭素分の完全燃焼は発熱量が多いため、高温ゾーン24内は前記したように500℃以上800℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下に保持される。また、前記したように、低温ゾーン23より高温になるように保持される。
【0059】
[再生触媒導出工程]
このようにして、高温ゾーン24で芳香族製造触媒Cに付着したコークの炭素分を完全燃焼させて除去し、さらに所定時間滞留させて所望の高熱を付与したら、再生処理後の芳香族製造触媒C(再生触媒)を導出口から第2の傾斜パイプ15に導出し、触媒ライザ11を介して分解改質反応器10に返送する。
【0060】
本実施形態の触媒再生装置20およびこれを用いた触媒再生方法にあっては、単段式の触媒再生器21の底部側を単に仕切り壁22によって低温ゾーン23と高温ゾーン24とに区画し、低温ゾーン23の芳香族製造触媒C(廃触媒)をオーバーフローさせることで高温ゾーン24に移送するようにしたので、装置構成を簡易にして装置規模をコンパクト化することができる。また、触媒再生装置20内での触媒移送についての制御や、空気供給についての制御も容易に行うことができる。
さらに、低温ゾーン23で主にコーク中の水素分を燃焼させ、高温ゾーン24で主にコーク中の炭素分を完全燃焼させるようにしたので、水熱劣化をほとんど起こさせることなく、かつ、充分な熱を付与した状態に触媒を再生することができる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では酸素含有ガスとして空気を用いたが、特に低温ゾーン23に供給するガスについては、空気に窒素を混合して酸素濃度を低くした希釈空気を用い、炭素分の完全燃焼を起こさせることなく、選択的に水素分の燃焼を起こさせるようにしてもよい。また、高温ゾーン24に供給するガスについては、空気に酸素を混合して酸素濃度を高くした空気を用い、炭素分をより確実に完全燃焼させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、FCC装置から得られるLCOおよび原油蒸留装置からのナフサ等を原料にした単環芳香族炭化水素の製造に有用である。
【符号の説明】
【0063】
10…分解改質反応器、20…触媒再生装置、21…触媒再生器、22…仕切り壁、23…低温ゾーン、24…高温ゾーン、25…第1ガス供給部、26…第2ガス供給部、33…第1制御バルブ、34…制御装置、35…第2制御バルブ、C…芳香族製造触媒(単環芳香族炭化水素製造用触媒、廃触媒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解改質反応法による単環芳香族炭化水素の製造に用いられる単環芳香族炭化水素製造用触媒を再生する触媒再生方法であって、
仕切り壁によって底部側を低温ゾーンと該低温ゾーンより高温に保持される高温ゾーンとに区画した単段式の触媒再生器の前記低温ゾーンに、分解改質反応法に用いられた廃触媒を導入する廃触媒導入工程と、
前記低温ゾーンに酸素含有ガスを供給し、前記廃触媒に付着しているコーク中の水素分を燃焼させる第1燃焼工程と、
前記第1燃焼工程を経た前記廃触媒を前記低温ゾーンから前記高温ゾーンにオーバーフローさせるオーバーフロー工程と、
前記高温ゾーンに酸素含有ガスを供給し、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた前記廃触媒に付着しているコーク中の炭素分を燃焼させて二酸化炭素にする第2燃焼工程と、
前記第2燃焼工程を経た再生触媒を前記高温ゾーンから導出する再生触媒導出工程と、を備えることを特徴とする触媒再生方法。
【請求項2】
前記第1燃焼工程では、前記低温ゾーン内の温度が650℃以下になるように酸素含有ガスの供給量を制御しつつ燃焼を行わせ、
前記第2燃焼工程では、前記高温ゾーン内の温度が500℃以上800℃以下で、かつ前記低温ゾーン内の温度より高くなるように酸素含有ガスの供給量を制御しつつ燃焼を行わせることを特徴とする請求項1記載の触媒再生方法。
【請求項3】
分解改質反応法による単環芳香族炭化水素の製造に用いられる単環芳香族炭化水素製造用触媒を再生する触媒再生装置であって、
単段式の触媒再生器からなり、前記触媒再生器の底部側が、仕切り壁によって低温ゾーンと該低温ゾーンより高温に保持される高温ゾーンとに区画され、
前記低温ゾーンには、分解改質反応法に用いられた廃触媒が導入される導入口が設けられ、
前記高温ゾーンには、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた廃触媒を再生した後の再生触媒を導出するための導出口が設けられ、
前記低温ゾーンには、該低温ゾーン内に酸素含有ガスを供給する第1ガス供給部が接続され、
前記高温ゾーンには、該高温ゾーン内に酸素含有ガスを供給する第2ガス供給部が接続され、
前記第1ガス供給部は第1制御部に接続され、
前記第2ガス供給部は第2制御部に接続され、
前記第1制御部は、前記低温ゾーン内への酸素含有ガスの供給量が、前記廃触媒に付着しているコーク中の水素分を燃焼させるのに必要な量となるように前記第1ガス供給部を制御し、
前記第2制御部は、前記高温ゾーン内への酸素含有ガスの供給量が、前記低温ゾーンからオーバーフローしてきた廃触媒に付着しているコーク中の炭素分を燃焼させて二酸化炭素にするのに必要な量となるように前記第2ガス供給部を制御することを特徴とする触媒再生装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記低温ゾーン内の温度が650℃以下になるように前記第1ガス供給部による酸素含有ガスの供給量を制御し、
前記第2制御部は、前記高温ゾーン内の温度が500℃以上800℃以下で、かつ前記低温ゾーン内の温度より高くなるように前記第2ガス供給部による酸素含有ガスの供給量を制御することを特徴とする請求項1記載の触媒再生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−240022(P2012−240022A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115638(P2011−115638)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】