説明

触媒成分の製造方法およびそれから得られる成分

Mg化合物とTi化合物とアルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪族エーテルから選択される電子供与化合物(ED)とを必須化合物として含む触媒成分を製造するための、新鮮な反応材として該必須化合物の少なくとも1種を単独でまたはそれが主成分を構成する混合物中で使用することを含む反応の2以上の工程を含み、該1以上の反応工程の最後に新鮮な反応材として用いられる必須化合物がED化合物であることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンCH2=CHR (ここで、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用の触媒成分の製造方法に関する。特に、本発明は、Mgジクロリド上に担持され、Ti化合物と電子供与体とを含む触媒成分の製造方法に関し、それから得られる特定の触媒成分にも関する。これらの触媒成分は、触媒に変換されたとき、ポリマー鎖に沿っておよび種々のポリマー鎖の中でα-オレフィンを均質に分布させる性質のため、エチレンのα-オレフィンとのコポリマーの製造に特に適する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムハライド上に担持されたチタン化合物を含む触媒は、当該技術において周知である。この種類の触媒は、例えば米国特許第4,298,718号に記載されている。該触媒は、マグネシウムのハロゲン化物上に担持されたチタンテトラハライドを含む。この触媒は、プロピレンのようなα-オレフィンの重合において高い活性を有するが、それほど立体特異的ではない。立体特異性についての実質的な改良は、固体触媒成分にある特定の電子供与化合物を加えることにより達成されている。
【0003】
これらの触媒の最近の製造方法は、まず、MgCl2またはその前駆体の電子供与化合物およびチタン化合物(通常、TiCl4)との接触、次いで、このようにして得られた固体の熱液状TiCl4での1以上の処理を含む。このような方法の例は、なかでもEP491566号に開示されている。これらの方法は、プロピレン重合における一般に高い活性および立体特異性を賦与されているが、しかしある問題点により特徴付けられる触媒成分をつくる。例えば、この種の方法では、供与体の最終量を精密に一致させることが困難である。なぜなら、熱TiCl4での次の処理によりその実質的な部分が除かれるからである。さらに、電子供与体のある特定のクラスは、TiCl4での熱処理の下で安定でないという単純な理由から、この方法に用いることができない。これらの問題点は、大量の供与体が正確に機能することを必要とするある種のポリエチレン触媒について特に関係する。
【0004】
触媒成分上に供与体の高い量を固定することができるある種類の触媒の製造が、例えばUSP 4,521,573号に記載されており、これはMgCl2およびチタン化合物に関して溶媒として機能する電子供与化合物の大過剰の使用を含む。次いで、触媒成分を沈殿または結晶化により溶液から分離することができる。この方法は、いくつかの問題点を抱える。まず、ある特定の供与体は、それらが溶媒として機能できないその化学構造の観点から使用できない。次に、該触媒成分から供与体の実質的な量が除去されるか、または触媒が多孔性の不活性な支持体上に堆積されるかしなければ高い多孔性の触媒成分を製造することができない。しかし、最後の場合にはさらなる工程とさらなる材料とが必要であるが、方法が複雑になりコストが増大するという結果となる。さらなる問題点としては、これらの触媒が示す重合活性は、一般的に比較的低いことである。
【0005】
欧州特許出願EP 452156号において、供与体を加えた後に過剰の熱TiCl4での1以上の処理を含む手順により製造される触媒は、主要なモル量のAlEt3の存在下にさらなる電子供与化合物でさらに処理される。しかし、この方法は、触媒成分中の電子供与体の含量を実質的に増加させることができない。なぜなら、この方法は、触媒成分自体を非常に高い量の非常に反応性のある化合物(AlEt3)と接触させ、これがあらかじめ形成された触媒成分の性質を大きく変えるとみられるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、供与体の含量が簡単に調節できかつ触媒成分が付加的な特性を示すかまたはそれらの必須の構成要素から導き出せる特性を保持し得る、供与体含有触媒成分の製造に適する方法を有することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本発明の観点は、MgCl2上に担持され、Mg化合物とTi化合物とアルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪族エーテルから選択される電子供与化合物(ED)とを必須化合物として使用することを含む触媒成分を製造するための、新鮮な反応材として上記の必須化合物の少なくとも1種を単独でまたはそれが主成分を構成する混合物中で使用することを含む反応の2以上の工程を含み、該1以上の反応工程の最後において新鮮な反応材として用いられる必須化合物がED化合物であることを特徴とする方法である。
【0008】
上記の方法から得ることができる触媒成分も、本発明の観点を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、「新鮮な反応材」の用語は、反応混合物と初めて接触するある量の必須化合物を意図する。
【0010】
「それが主成分を構成する混合物」の用語により、必須化合物が、該混合物を取り扱うのに用いられる不活性溶媒または希釈剤を除く他の可能な化合物に対して、モル量について主成分であるべきであることを意味する。
【0011】
電子供与化合物(ED)は、単独または互いの混合物中に用いることができる。
好ましいエステルは、C1〜C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、特に脂肪族モノカルボン酸のC1〜C8アルキルエステル、例えば酢酸エチル、ギ酸メチル(methyl formiate)、ギ酸エチル(ethylformiate)、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチルである。
【0012】
好ましいアルコキシシランは、式Ra5Rb6Si(OR7)c (ここで、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数でありかつ(a+b+c)の合計は4であり;R5、R6およびR7は、ヘテロ原子を任意に含有してもよい1〜18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)のものである。特に好ましくは、aが0または1であり、cが2または3であり、R6が任意にヘテロ原子を含有してもよいアルキルまたはシクロアルキル基であり、R7がメチルであるケイ素化合物である。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびt-ブチルトリメトキシシランである。
【0013】
好ましいアルコールは、式R3OH (ここでR3基はC1〜C20炭化水素基である)のものである。好ましくは、R3はC1〜C10アルキル基である。具体例はメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールである。
【0014】
好ましいアミンは、式NR43 (ここで、R4基は独立して、水素またはC1〜C20炭化水素基であるが、但しこれらは同時に水素ではない)のものである。好ましくは、R4はC1〜C10アルキル基である。具体例はジエチルアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリエチルアミンである。
【0015】
好ましいアミドは、式R5CONR62 (ここで、R5およびR6は独立して、水素またはC1〜C20炭化水素基である)のものである。具体例はホルムアミドおよびアセトアミドである。
【0016】
好ましいニトリルは、式R3CN (ここで、R3は上記の意味を有する)のものである。具体例はアセトニトリルである。
【0017】
好ましいグリコールは、50より低い炭素原子の総数を有するものである。これらのうち特に好ましいものは、25より低い炭素原子の総数を有する1,2または1,3グリコールである。具体例は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコールおよび1,3-プロピレングリコールである。
【0018】
好ましいED化合物は、アミド、エステルおよびアルコキシシランから選択される。
【0019】
適切なチタン化合物は、テトラハライドまたは式TiXn(OR1)4-n (ここで、0≦n≦3、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、R1はC1〜C10炭化水素基である)の化合物である。チタンテトラクロリドが好ましい化合物である。
【0020】
本発明の方法から得られる触媒成分において、MgCl2は、少量のさらなる担体(carrier)が用いられ得るとしても基本的な支持体(support)である。MgCl2は、そのままで用いられるかまたはハロゲン化化合物との反応によりMgCl2に変換し得る前駆体として用いられるMg化合物から得ることができる。特に好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒の支持体として特許文献から広く知られる活性型のMgCl2の使用である。特許USP 4,298,718号およびUSP 4,495,338号は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載した。これらの特許から、オレフィン重合用の触媒の成分における支持体または補助支持体(co-support)として用いられる活性型のマグネシウムジハライドが、非活性なハライドのスペクトルのASTM-カードリファレンスに現れる最も強い回折線の強度が減少しかつ広くなるというX線スペクトルにより特徴付けられることが知られている。活性型の好ましいマグネシウムジハライドのX線スペクトルにおいて、上記の最も強い回折線は、強度が減少し、そしてその最大の強度が最も強い回折線のものに関してより低い角度に移動したハロにより置換される。
【0021】
本発明の方法は、その基本的なバージョンにおいて、実行が単純である。実際に、該方法は、チタン化合物とMg化合物、好ましくはMgジハライドとを、任意に不活性媒体の存在下に、Mgジクロリド上に担持されたチタン化合物を含有する中間生成物を得るためにまず接触させることを含み、それは所望により単離することもできる。続いて、ED化合物を、この中間生成物と、それが反応混合物に単独で加えられるかまたはそれがモル量について主成分を示す他の化合物との混合物中で加えられるような条件下で接触させる。次いで、ED処理された生成物は、最終生成物を回収するために、適切な溶媒での洗浄に付すことができる。必要であれば、所望のED化合物での処理を1回以上繰り返すことができる。予め形成したMgCl2が出発化合物として用いられるのであれば、それは活性型であるのが好ましい。特許USP 4,298,718号およびUSP 4,495,338号は、どのようにして活性型のMgCl2を得るか記載している。チタン化合物は、好ましくはチタンテトラクロリドである。
【0022】
この基本的な方法において、触媒または方法自体に特定の性質を賦与する目的でいくつかのバリエーションをつくることができる。よって、上記のように、Mgジハライドの前駆体は、必須の出発Mg化合物として用いることができる。これは、例えば、式MgR'2 (ここで、R'基は独立して、任意に置換されていてもよいC1〜C20炭化水素基、OR基、OCOR基、ハロゲン(ここで、Rは任意に置換されていてもよいC1〜C20炭化水素基である)であるが、但し明らかにR'基は同時にハロゲンではない)のMg化合物から選択することができる。前駆体として適するものは、Mgジハライドと適切なルイス塩基との間のルイス付加物である。特定の好ましいクラスは、MgX2 (R''OH)m付加物(ここで、R''基は、C1〜C20炭化水素基、好ましくはC1〜C10アルキル基であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、mは0.1〜6、好ましくは0.5〜3、より好ましくは0.5〜2である)により構成される。この種類の付加物は、一般に、アルコールと塩化マグネシウムとを、付加物に不混和性の不活性炭化水素の存在下に、付加物の融解温度(100〜130℃)で攪拌条件下に混合することにより得ることができる。次いで、エマルションを急冷し、それにより球状粒子の形での付加物を凝固させる。これらの球状付加物の代表的な製造法は、例えば、USP 4,469,648号、USP 4,399,054号およびWO98/44009号に報告される。他の用い得る球晶化(spherulization)の方法は、例えばUSP 5,100,849号および4,829,034号に記載される噴霧冷却である。
【0023】
特に興味のあるものは、MgCl2・(EtOH)m付加物 (ここで、mは0.15〜1.7である)であり、これは、より高いアルコール含量の付加物を、窒素流中で50〜150℃の間の温度でアルコール含量が上記の値に減少されるまで行う熱脱アルコール化処理に付すことにより得られる。この種類の方法は、EP 395083号に記載される。
脱アルコール化は、付加物をアルコール基と反応できる化合物と接触させることにより化学的に行うこともできる。
【0024】
一般に、これらの脱アルコール化された付加物は、0.15〜2.5 cm3/g、好ましくは0.25〜1.5 cm3/gの範囲の0.1μmまでの半径の孔による多孔性(水銀法により測定)によっても特徴付けられる。
【0025】
MgX2 (R''OH)m付加物は、通常、脱アルコール化化合物(dealcoholating compound)との反応を介して対応するハライドに変換される。脱アルコール化剤は、OH基と反応できる官能基を有するいずれの化学剤であり得る。脱アルコール化剤の特徴的な群は、アルキルアルミニウム化合物の群である。適切なアルキルアルミニウム化合物は、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムおよびトリス(2,4,4-トリメチル-ペンチル)アルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物である。トリアルキルアルミニウム化合物のアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムヒドリドまたはアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEt2ClおよびAl2Et3Cl3との混合物を用いることも可能である。
【0026】
アルキルアルミニウム化合物は、Ti化合物に関して還元活性を有し得ることが知られている。よって、この活性が望まれないのであれば、不活性化剤、例えばO2を、工程(b)を行う前に加えることができ、これによりチタン化合物の還元を回避することができる。
【0027】
用い得る脱アルコール化剤の別の群は、ハロゲン含有ケイ素化合物の群である。このようなケイ素化合物の具体例は、式SiX4-nYn (ここで、XおよびYはハロゲン原子、例えばClおよびBrを表し、nは0〜3の数である)を有するハロゲン化ケイ素を含む。SiCl4の使用が特に好ましい。
【0028】
本発明のある特定の実施形態において、脱アルコール化反応が、チタン化合物の使用を含む反応工程と同時に行われることが好ましい。よって、これらの付加物は、好ましくはチタンテトラクロリドである上記のTiXn(OR1)4-n化合物(またはおそらくこれらの混合物)と反応させる。Ti化合物との反応は、付加物をTiCl4 (通常、低温)中に懸濁し、混合物を80〜130℃の範囲の温度に加熱し、この温度で0.5〜2時間保持することにより行うことができる。チタン化合物を用いる処理は、1回以上行うことができる。好ましくは2回繰り返される。これは、上記のもののような電子供与化合物の存在下に行うこともできる。この方法の最後に、固体を、懸濁物を常法(例えば静置して液体を除去する、濾過、遠心分離)により分離することにより回収し、溶媒での洗浄に付すことができる。典型的には、洗浄は不活性な炭化水素の液体により行なわれるが、より極性の溶媒(例えばより高い誘電率を有する)、例えばハロゲン化炭化水素を用いることもできる。
【0029】
このようにして得られた固体中間物は、該中間物に特定の特性を賦与し得る特定の化合物での後処理を受けることもできる。例としては、該中間物は、固体に含まれるチタン化合物の酸化状態を低くするために還元化合物、例えばAl-アルキル化合物での処理に付すことができる。
【0030】
中間物に対して行うことができる処理の別の例は、予備重合(pre-polymerization)工程である。予備重合は、いずれのオレフィンCH2=CHR (ここで、RはHまたはC1〜C10炭化水素基である)と行うことができる。特に、エチレンまたはプロピレンまたはそれらの1種以上のα-オレフィンとの混合物(20モル%までのα-オレフィンを含有する)を予備重合して、固体中間物1 g当たり約0.1 gから約1000 gまで、好ましくは固体中間物1 g当たり約0.5〜約500 gのポリマー量を形成するのが特に好ましい。予備重合工程は、0〜80℃、好ましくは5〜70℃の温度で、液相または気相中に行うことができる。中間物1 g当たり0.5〜20 gの範囲のポリマー量を製造するための、中間物のエチレンまたはプロピレンとの予備重合は、特に好ましい。予備重合は、有機アルミニウム化合物のような適切な助触媒を用いて行なわれ、該助触媒は以下に詳細に議論される1種以上の外部供与体との組み合わせで用いることもできる。
【0031】
上記のように、中間生成物は、次いで、固体上に有効量の供与体を固定することができる条件下でED化合物と接触させる。この方法の高い自由度により、用いられる供与体の量は広く変動可能である。例として、供与体は、中間生成物中のTi含量に対して0.5〜20、好ましくは1〜10の範囲のモル比で用いることができる。厳密に必要ではないが、接触は、液体炭化水素のような液状媒体中で通常行なわれる。接触させる温度は、試薬の性質に応じて変動可能である。通常、-10〜150℃、好ましくは0〜120℃の範囲である。通常の適切な範囲内であるとしても、いずれの特定の試薬の分解または劣化を起こす温度を避けるべきであることは明確である。
【0032】
処理の時間も、他の条件、例えば試薬の性質、温度、濃度などに応じて変動可能である。一般的な指示として、この接触工程は10分〜10時間、より頻繁には0.5〜5時間続けることができる。所望により、最終の供与体含量をさらに増加させるために、この工程を1回以上繰り返すことができる。この工程の最後に、固体を、懸濁物を常法(例えば静置して液体を除去する、濾過、遠心分離)により分離することにより回収し、溶媒での洗浄に付すことができる。典型的には、洗浄は不活性な炭化水素の液体により行なわれるが、より極性の溶媒(例えばより高い誘電率を有する)、例えばハロゲン化炭化水素または酸化炭化水素を用いることもできる。
【0033】
この場合においても、このようにして得られた固体は、該固体に特定の特性を賦与し得る特定の化合物での後処理を受けることができる。例としては、該固体は、固体に含まれるチタン化合物の酸化状態を低くするために還元化合物、例えばAl-アルキル化合物での処理に付すことができる。
【0034】
チタン化合物に対して広い範囲の量での種々の供与体を、本発明の方法において用い得ることが既に記載されている。得られる全ての触媒は、通常、エチレンの単独重合および20モル%までのα-オレフィンを含有するエチレン-α-オレフィンコポリマーを製造するためのエチレンのC3〜C10α-オレフィンとの共重合において特に良好な性能を示す。特に興味のあるものは、Mgジクロリド上に担持されたTi化合物とアルコール、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、脂肪族エーテルおよび脂肪族カルボン酸のエステルから選択される電子供与体(ED)とを含む触媒成分であり、ここでED/Tiモル比は1.5〜3.5の範囲でありかつMg/Tiモル比は5.5より高い。好ましくは、ED/Tiモル比は2〜3.4、好ましくは2.2〜3.3の範囲である。好ましくは、Mg/Ti比は7〜110、より好ましくは8〜80および特に8〜50の範囲である。
【0035】
好ましい供与体は、上記のものである。さらに、脂肪族エーテルおよび特にC2〜C20脂肪族エーテルも好ましい。好ましくは3〜5の炭素原子を有する環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンは特に好ましい。エステル、例えば酢酸エチルをED化合物として用いて優れた結果が得られている。予備重合もされた上記の組成を有する触媒も好ましい。
【0036】
本発明による固体触媒成分は、それらを既知の方法により有機アルミニウム化合物と反応させることにより、オレフィンの重合用の触媒に変換することができる。
特に、
(a) 上記の固体触媒成分と、
(b) アルキルアルミニウム化合物と、任意に
(c) 外部電子供与化合物
との間の反応生成物を含む、オレフィンCH2=CHR (ここで、Rは水素または1〜12の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)の重合用の触媒は、本発明の目的である。
【0037】
アルキル-Al化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム (TMA)、トリエチルアルミニウム (TEAL)、トリイソブチルアルミニウム (TIBA)、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムから好ましく選択することができる。アルキルアルミニウムハライド、特にアルキルアルミニウムクロリド、例えばジエチルアルミニウムクロリド (DEAC)、ジイソブチルアルミニウムクロリド、Al-セスキクロリドおよびジメチルアルミニウムクロリド (DMAC)も用いることができる。トリアルキルアルミニウムのアルキルアルミニウムハライドとの混合物を用いることもでき、それが好ましい場合もある。これらのうち、TEAL/DEACおよびTIBA/DEAC混合物が特に好ましい。
【0038】
外部電子供与化合物は、固体触媒成分に用いられるEDと同じまたは異なることができる。好ましくは、エーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトリル、シランおよびこれらの混合物からなる群より選択される。特に、これはC2〜C20脂肪族エーテル、特に好ましくは3〜5の炭素原子を有する環状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのような環状エーテルから有利に選択され得る。
【0039】
さらに、電子供与化合物は、式Ra5Rb6Si(OR7)c (aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R5、R6およびR7は、1〜18の炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を有していてもよいアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)のケイ素化合物から有利に選択されることもできる。特に好ましいものは、aが0であり、cが3であり、R6が任意にヘテロ原子を有していてもよい分岐アルキルまたはシクロアルキル基でありかつR7がメチルであるケイ素化合物である。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。
【0040】
上記の成分(a)〜(c)は、重合条件下にそれらの活性を活用できる反応器に別々に供給することができる。しかし、任意に少量のオレフィンの存在下に、0.1〜120分の範囲、好ましくは1〜60分の範囲の期間で、上記の成分を予備接触させることは特に有利な実施形態を構成する。この予備接触は、液状希釈剤中に0〜90℃の範囲、好ましくは20〜70℃の範囲の温度で行うことができる。
【0041】
このようにして形成された触媒系は、主重合反応中で直接用い得るか、または特に固体中間物の予備重合が行なわれなかった場合に予め予備重合することができる。予備重合工程は、主重合反応が気相中で行われるときに、通常好ましい。予備重合は、いずれのオレフィンCH2=CHR (ここで、RはHまたはC1〜C10炭化水素基である)と行うことができる。特に、エチレンまたはプロピレンまたはそれらの1種以上のα-オレフィンとの混合物(20モル%までのα-オレフィンを含有する)を予備重合して、固体成分1 g当たり約0.1 gから固体触媒成分1 g当たり1000 gまでのポリマー量を形成するのが特に好ましい。予備重合工程は、0〜80℃、好ましくは5〜70℃の温度で、液相または気相中に行うことができる。予備重合工程は、連続重合反応の一部分として直列にまたは別個にバッチ反応で行うことができる。触媒成分1 g当たり0.5〜20 gの範囲のポリマー量を製造するための、本発明の触媒のエチレンまたはプロピレンとのバッチ予備重合は、特に好ましい。予備重合された触媒成分は、主重合工程で用いられる前にチタン化合物とのさらなる処理に付すこともできる。この場合、TiCl4の使用が特に好ましい。Ti化合物との反応は、予備重合させた触媒成分を、液状Ti化合物中に、任意に液状希釈剤との混合物中に懸濁することにより行うことができる。混合物は、60〜120℃に加熱され、この温度に0.5〜2時間保持される
【0042】
本発明の触媒を用い得る気相法の例は、WO 92/21706号、USP 5,733,987号およびWO 93/03078に記載される。これらの方法は、一連の流動床または機械的攪拌床(mechanically stirred bed)の1以上の反応器での触媒成分の予備接触工程、予備重合工程および気相重合工程を含む。特定の実施形態において、気相法は以下の工程に従って適切に行うことができる。
【0043】
(i) 触媒成分(a)、(b)および任意に(c)を、0.1〜120分の範囲の期間、0〜90℃の範囲の温度で接触させる工程;任意に
(ii) 1種以上の式CH2=CHR (ここで、RはHまたはC1〜C10炭化水素基である)のオレフィンと、固体触媒成分(a) 1 g当たり約0.1から約1000 gまでのポリマー量を形成するまで予備重合する工程、および
(iii) 気相においてエチレン、またはエチレンのα-オレフィンCH2=CHR (ここで、Rは1〜10の炭素原子を有する炭化水素基である)との混合物を、1以上の流動床反応器または機械的攪拌床反応器中に、(i)または(ii)からの生成物の存在下に重合する工程。
【0044】
既に上記したように、本発明の触媒は、エチレンの3〜12の炭素原子を有する1種以上のα-オレフィンとのコポリマーからなり、エチレン由来単位のモル含量が80%より高い線状低密度ポリエチレン(LLDPE、0.940 g/cm3より低い密度を有する)ならびに極低密度および超低密度ポリエチレン(very-low-density and ultra-low-density polyethylenes) (VLDPEおよびULDPE、0.920 g/cm3より低く、0.880 g/cm3までの密度を有する)の製造に特に適する。しかし、該触媒は、例えばエチレンホモポリマーおよびエチレンの3〜12の炭素原子を有するα-オレフィンとのコポリマーを含む高密度エチレンポリマー(HDPE、0.940 g/cm3より高い密度を有する);エチレンとプロピレンとの弾性コポリマーおよびエチレンとプロピレンと少量の割合のジエンとのターポリマー(エチレン由来単位の含量は約30〜70重量%である);アイソタクチックポリプロピレンおよびプロピレンとエチレンおよび/またはその他のα-オレフィンとの結晶性コポリマー(プロピレン由来単位の含量が85重量%より高い);プロピレンおよびプロピレンのエチレンとの混合物の連続重合により得られるプロピレンの耐衝撃性ポリマー(30重量%までのエチレンを含有する);10〜40重量%の1-ブテン由来単位の数を有するプロピレンと1-ブテンとのコポリマーを含む広範囲のポリオレフィン物質の製造に用いることもできる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために限定しない様式で与えられる。
特徴づけ
特性は、以下の方法により測定する。
メルトインデックス:190℃で、ASTM D-1238の条件"E" (2.16 Kgの負荷)および"F" (21.6 Kgの負荷)に従って測定。
【0046】
キシレン中の可溶画分:25℃のキシレン中での可溶性は、次の方法に従って測定した。ポリマー約2.5 gおよびo-キシレン250 mlを冷却器および還流冷却器を備える丸底フラスコに入れ、窒素下に保持した。得られた混合物を135℃に加熱し、約60分間攪拌下に保持した。最終の溶液は、連続攪拌の下に25℃まで冷却させ、次いで濾過した。次いで濾液を窒素流の下に140℃で一定重量に達するまで蒸発させた。キシレン可溶画分の含量は、元の2.5 gのパーセンテージとして表される。
【0047】
コモノマー含量
1-ブテンは、赤外分光光度法により測定した。
1-ブテンより高級なα-オレフィンは、赤外分析により測定した。
有効密度:ASTM-D 1505。
【0048】
熱分析:熱量測定は、示差走査熱量計DSC Perkin-Elmerを用いて行なった。この装置は、インジウムおよびスズの標準物質で校正される。メルトインデックスの測定から得られた、秤量した試料(5〜10 mg)をアルミニウムの皿に密閉し、5℃に3分間調温し、20℃/分で200℃まで加熱し、この温度に充分な時間(5分間)保持して全てのクリスタライトを完全に融解させた。続いて、20℃/分で-20℃まで冷却した後、ピーク温度を結晶化温度(Tc)とみなした。0℃で5分間放置した後、試料を200℃まで20℃/分の割合で加熱した。この2回目の加熱動作において、ピーク温度を融解温度(Tm)とみなし、面積を全体の融解エンタルピー(global melting enthalpy) (ΔH)とみなした。
【0049】
Mg、Tiの測定:は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により行なわれる。
Clの測定:は、電位差滴定により行われる。
EDの測定:ガスクロマトグラフィ分析による。
【0050】
実施例
球状MgCl2(EtOH) 付加物の製造の一般的な手順
約3モルのアルコールを含有する塩化マグネシウムおよびアルコール付加物を、USP 4,399,054号の実施例2に記載の方法に従うが、10000 RPMの代わりに2000 RPMで操作して製造した。
含有するアルコールの量が減少した付加物(47重量%、35重量%、25重量%および15重量%)を、窒素流の下で50〜150℃の範囲の温度にわたる熱処理により製造した。
【0051】
固体触媒成分の中間物の製造の一般的な手順
窒素でパージした500 mLの四つ口丸フラスコに、0℃で250 mLのTiCl4を導入した。次いで、同温度で、25重量%のエタノールを含有し、上記のようにして製造した球状MgCl2/EtOH付加物17.5 gを攪拌下に加えた。温度を1時間で130℃まで上昇させ、60分間保持した。次いで、攪拌を停止し、固体生成物を沈殿させて上清の液体をサイホンで吸い出した。
【0052】
固体を6回、60℃で無水ヘキサン(5×100 mL)でおよび25℃で1回洗浄した。最後に、固体を真空下に乾燥させて分析した(Ti = 4.9重量%;Mg = 19.4重量%)。
【0053】
最終の固体触媒成分の製造の一般的な手順(中間物のEDとの接触)
機械的攪拌器を備え、窒素でパージした500 mLの四つ口丸フラスコに、無水ヘキサン200 mLおよび上記のようにして得られた固体中間物成分10 gを室温で導入した。同温度で、攪拌下に、ED/Tiモル比が4を達成する量で所望のEDを滴下した。温度を50℃まで上昇させ、混合物を3時間攪拌した。次いで、攪拌を停止し、固体生成物を沈殿させて上清の液体をサイホンで吸い出した。
【0054】
固体を無水ヘキサン(3×100 mL)で25℃で3回洗浄し、回収し、真空下に乾燥して分析した。
【0055】
エチレン/α-オレフィン共重合:一般的な手順
磁気攪拌器、温度・圧力指示器、エチレン、プロパン、1-ブテン、水素の供給ラインおよび触媒の注入用のスチールバイアルを備える4.5リットルのステンレス鋼オートクレーブを、純水窒素を70℃で60分間流すことにより清潔にした。次いでこれをプロパンで洗浄し、75℃に加熱し、最後にプロパン800 g、1-ブテン(表2および4に報告する量)、エチレン(7.0バール、分圧)および水素(表2および4のように)を入れた。
【0056】
100 cm3の三つ口ガラスフラスコ中に、この順序で、無水ヘキサン50 cm3、10 重量/容量%のTEA/ヘキサン溶液(または等量の表2および4に報告する助触媒) 9.6 cm3、任意に外部電子供与化合物(表2および4)および実施例の固体触媒(表2および4に報告する量で)を導入した。これらを一緒に混合し、室温で5分間攪拌し、次いで窒素の過圧を用いてスチールバイアルを介して反応器に導入した。
【0057】
連続的な攪拌の下に、エチレンの供給により、75℃で全体の圧力を60分間一定に保った。最後に反応器を減圧し、温度を30℃に落とした。得られたポリマーを70℃で窒素流の下に乾燥させて秤量した。
【0058】
実施例1〜12
一連の触媒成分を、異なる電子供与(ED)化合物を用いて製造した。触媒を、上記の手順に従って製造した25重量%のEtOHを含有する球状MgCl2(EtOH)付加物を用いて製造した。該付加物は、まず、上記の手順に従って中間物を製造するためにTiCl4で処理され、次いで、一般的な手順に従って、表1に報告する供給比で用いられる特定のED化合物と接触させた。
【0059】
このようにして得られた触媒は、次いで、上記に報告する一般的な手順に従って、表2に列挙される特定の条件下で行なわれるエチレンの共重合において用いられた。表2はポリマーの性質に関するデータも含む。
【0060】
実施例13〜14
触媒を、ED/Tiのモル供給比がそれぞれ8、4および1であった以外は実施例1〜12に記載されたのと同じ手順に従って、電子供与体としてAcOEtを用いて製造した。このようにして得られた触媒は、次いで、上記に報告する一般的な手順に従って、表4に列挙される特定の条件下で行なわれるエチレンの共重合において用いられた。表4はポリマーの性質に関するデータも含む。
【0061】
実施例15
一般的な手順に従って製造した固体中間物をオートクレーブに注入し、30℃に保持して無水ヘキサン中に(固体の濃度は40g/Lであった)窒素雰囲気下で攪拌した。懸濁物を、TEA/固体の比が0.5 wt/wtを達成するような量のヘキサン中のトリ-エチル-アルミニウム(TEA)の10重量%溶液で処理した。次いで、固体の初期の量の0.7倍に等しい量のプロピレンを、温度を30℃に保持するのに適する速度でゆっくり供給した。30分後に重合を停止した。固体を無水ヘキサンで25℃で3回洗浄し、ヘキサン中に再び懸濁して、ED化合物としてAcOEtを用いて、AcOEt/Ti供給モル比をが8であった以外は一般的な手順に従って処理した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0062】
実施例16
触媒を、接触の温度を0℃にした以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0063】
実施例17
触媒を、接触を100℃でヘキサンの代わりにヘプタン中で行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0064】
実施例18
触媒を、接触をヘキサンの代わりにトルエン中で行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0065】
実施例19
触媒を、接触工程を2回行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。第1回目は、AcOEt/Ti供給モル比が1において30分間行い、第2回目は固体をヘキサンで洗浄した後に、AcOEt/Ti供給モル比が4で接触が2.5時間続いた。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0066】
実施例20
触媒を、ED接触工程を1時間行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0067】
実施例21
触媒を、ED接触工程を2時間行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0068】
実施例22
触媒を、ED接触工程を5時間行った以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0069】
実施例23
一般的な手順に従って製造した固体中間物を、無水ヘプタン中に、90℃で(固体の濃度は40g/Lであった)、アルミニウムジエチルモノクロリド(DEAC)と、窒素雰囲気下に10のAl/Tiモル比でDEACを用いて攪拌した。1時間後に攪拌を停止し、固体生成物を沈殿させ、上清の液体をサイホンで吸い出した。次いで、前回と同じ条件下での2回目のDEAC処理を行った。固体を無水ヘキサンで90℃で1回、および無水ヘキサンで室温で2回洗浄した。固体を真空下に乾燥させて分析した(Titotal = 4.6重量%、Ti3+ = 2.9重量%;Mg = 20重量%)。次いで、EDでの接触工程を、反応時間を2時間に変更した以外は一般的な手順に記載のようにして、EDとしてAcOEtを用いて行った。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0070】
実施例24
実施例15に記載のようにして得られた予備重合させた中間物をヘキサン中に懸濁し、攪拌下に50℃で1時間、TiCl4 (プレポリマー/TiCl4 =24 wt/wt)で処理した。固体を無水ヘキサンで25℃で3回洗浄し、ヘキサン中に再び懸濁した。AcOEtでの後続の処理を、ED/Ti供給モル比を8にした以外は一般的な手順に記載のようにして行った。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0071】
実施例25
触媒を、固体中間物の製造においてTiCl4処理を130℃に代えて100℃で行い、かつ100℃(30分間)での2回目のTiCl4処理を洗浄工程の前に挿入した以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って、EDとしてAcOEtを用いて製造した(Ti 1.9重量%;Mg 19.4重量%)。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0072】
実施例26
触媒を、ED接触工程においてEDがAcOEt/THF混合物(1/1 mol/mol)で構成された以外は実施例1〜12に記載したのと同じ方法に従って製造した。全ED/Tiモル比は4に等しかった。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0073】
実施例27
MgCl2前駆体を、USP 4,220,554号の実施例1(a)に記載された手順に従って製造した。このようにして得られた固体を、次いで、固体中間物を製造するために、TiCl4処理を130℃の代わりに120℃で行い、さらに2回の120℃でのTiCl4処理(30分間)を洗浄工程の前に挿入した以外は一般的な方法に従って、TiCl4で処理した。固体を無水ヘキサン(2×100 mL)で60℃で2回および25℃で2回洗浄した。最後に、固体を真空下に乾燥させて分析した(Ti = 5.8重量%;Mg = 18.8重量%)。AcOEtとの接触工程を、一般的な手順に従って行なった。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0074】
実施例28〜30
触媒成分を、出発の球状MgCl2(EtOH)付加物がそれぞれ47.3重量%、35重量%および14.3重量%のアルコール含量を有した以外は実施例1〜13に記載されたのと同じ手順に従って、電子供与体としてAcOEtを用いて製造した。触媒成分の性質は表3に報告し、共重合の結果は表4に報告する。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgCl2上に担持され、Mg化合物とTi化合物とアルコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪族エーテルから選択される電子供与化合物(ED)とを必須化合物として使用することを含む触媒成分を製造するための、新鮮な反応材として上記の必須化合物の少なくとも1種を単独でまたはそれが主成分を構成する混合物中で使用することを含む反応の2以上の工程を含み、該2以上の反応工程の最後において、新鮮な反応材として用いられる必須化合物がED化合物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
ED化合物がエーテル、エステルおよびアルコキシシランからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ED化合物が環状エーテルおよびC1〜C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルからなる群より選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ED化合物が、テトラヒドロフラン、ギ酸メチルおよび酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
チタン化合物が、テトラハライドまたは式TiXn(OR1)4-n (ここで0≦n≦3、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、R1はC1〜C10炭化水素基である)の化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
チタン化合物がTiCl4である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Mg化合物が、式MgX2 (R''OH)m付加物 (ここでR''基はC1〜C20炭化水素基であり、Xは塩素であり、mは0.1〜6である)のルイス付加物である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
mが0.5〜2である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ルイス付加物をチタンテトラハライドまたはTiXn(OR1)4-n化合物 (ここでn、XおよびR1は請求項5に記載したのと同じ意味を有する)と反応させ、それにより固体中間物を得て、次いでそれをED化合物と接触させて最終の固体触媒成分を得る請求項7に記載の方法。
【請求項10】
チタン化合物がTiCl4である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
TiCl4のルイス付加物との反応が2回繰り返される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固体中間物が、ED化合物と反応させる前に予備重合に付される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
予備重合が、固体中間物1 g当たり約0.1 gから約1000 gまでのポリマーの量を形成するエチレンまたはプロピレンまたはそれらの混合物を予備重合させることにより行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
固体中間物を、0.5〜20の範囲の中間生成物中のTi含量に対するEDモル比を有するのに適する量で用いられるED化合物と接触させる請求項9に記載の方法。
【請求項15】
接触が液状媒体中で行われる請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法により得ることができるオレフィンの重合用の固体触媒成分。
【請求項17】
固体触媒成分1 g当たり約0.1 gから約1000 gまでのポリマーの量を形成する1種以上のオレフィンCH2=CHR (ここでRはHまたはC1〜C10炭化水素基である)と予備重合させる請求項16に記載の固体触媒成分。
【請求項18】
ED/Tiモル比が1.5〜3.5の範囲でありかつMg/Tiモル比が5.5より高い、マグネシウムジクロリド上に担持されたTi化合物とアルコール、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、脂肪族エーテルおよび脂肪族カルボン酸のエステルから選択される電子供与体(ED)とを含むオレフィン重合用の固体触媒成分。
【請求項19】
ED/Tiモル比が2〜3.4の範囲であり、Mg/Ti比が7〜110の範囲である請求項18に記載の固体触媒成分。
【請求項20】
ED化合物が、環状脂肪族エーテルおよびカルボン酸エステルから選択される請求項18〜19のいずれか1つに記載の固体触媒成分。
【請求項21】
ED化合物が、酢酸エチルまたはテトラヒドロフランである請求項20に記載の固体触媒成分。
【請求項22】
チタン原子が、チタンテトラハライドまたは式TiXn(OR1)4-n (ここで、0≦n≦3、Xはハロゲンであり、RはC1〜C10炭化水素基である)の化合物に由来する請求項18に記載の固体触媒成分。
【請求項23】
(a) 請求項16〜22のいずれか1つに記載の固体触媒成分と;
(b) 1種以上のアルミニウムアルキル化合物と、任意に
(c) 外部電子供与化合物
とを接触させることにより得られる生成物を含むオレフィンの重合用の触媒。
【請求項24】
アルミニウムアルキル化合物がAlトリアルキルである請求項23に記載の触媒。
【請求項25】
アルミニウムアルキル化合物がアルミニウムアルキルハライドである請求項23に記載の触媒。
【請求項26】
アルミニウムアルキル化合物が、Alトリアルキル化合物をアルミニウムアルキルハライドと混合することにより得られる生成物である請求項24および25に記載の触媒。
【請求項27】
外部電子供与化合物がC2〜C20脂肪族エーテルである請求項23に記載の触媒。
【請求項28】
エーテルがテトラヒドロフランである請求項27に記載の触媒。
【請求項29】
請求項23〜28の1つ以上に記載の触媒の存在下で行われる、オレフィンCH2=CHR (ここでRは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の(共)重合方法。

【公表番号】特表2006−528271(P2006−528271A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529818(P2006−529818)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005186
【国際公開番号】WO2004/106388
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】