説明

触媒成形体

【課題】 光触媒を使用して有毒、悪臭の有機物等を分解する場合、微粉末では、取扱いが難しく、わずかな気体の流れによっても舞い上がったり、液体の流れにより流されたり、同伴され、所定の場所から出てしまう。このため、微粉末をフィルター等に固着する方法が考えられる。しかし、これは非常に手間であるだけでなく、どうしても効率が悪くなる。そこで、気体が効率よく触媒と接触でき、かつその触媒の入れ替えが非常に簡単な光触媒成形体を提供する。
【解決手段】酸化チタンの一次微粉末を0.1mm以上の大きさに造粒し、さらにその造粒物を互いに複数個固着することによって連続した空隙を有する成形物に成形したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン触媒成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒が近時常温で効果のある酸化反応触媒として注目を集め、実際に使用され始めてきている。代表的なものは、アナターゼ型の酸化チタンである。この光触媒は、触媒効果が表面積に依存するため、効果を上げるためできるだけ細かくすることが研究されてきている。最近では、そのサイズは数nmのものまで出現してきている。
【0003】
このような微粉末(特許文献1のような)が出現することによって実際触媒効率は非常に向上してきた。それによって、種々の酸化工程に使用できるようになってきた。
【特許文献1】特開2000−256014
【0004】
このような光触媒を使用して有毒、悪臭の有機物等を分解する場合、微粉末では、取扱いが難しく、わずかな気体の流れによっても舞い上がったり、液体の流れにより流されたり、同伴され、所定の場所から出てしまう。
【0005】
このため、微粉末をフィルター等に固着する方法が考えられる。しかし、これは非常に手間であるだけでなく、どうしても効率が悪くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、気体が効率よく触媒と接触でき、かつその触媒の入れ替えが非常に簡単な光触媒成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明触媒成形体を完成したものであり、その特徴とするところは、酸化チタンの一次微粉末を0.1mm以上の大きさに造粒し、さらにその造粒物を互いに複数個固着することによって連続した空隙を有する成形物に成形した点にあり、他の態様では、0.1mm以上の大きさの無機粒体の表面に、酸化チタン粒子を固着し複合粒体を製造し、
さらにその複合粒体を互いに複数個固着することによって連続した空隙を有する成形物に成形した点にある。
【0008】
本出願でいう酸化チタンは、前記したアナターゼ型結晶が好適であるが、それに限らず他のタイプの結晶でもよい。
【0009】
ここでいう造粒とは、微粉末を一定のサイズの粒子にすることをいう。一次微粉末のサイズは、特に限定はしないが、50nm以下が触媒効率の点から好適である。勿論、50nm以上でも効果は少し落ちるが問題はない。
造粒の方法は通常の方法でよく、特別な方法でなくてもよい。造粒してできる粒子は、0.1mm以上である。これより小さいと成形物にした時の空気透過性が悪いためである。通常は0.5〜10mm程度が、効果と通過性から最も効率がよかった。
【0010】
造粒に接着剤を使用する場合、その接着剤は有機チタン化合物が好適である。例えば、テトラアルコキシドチタン、チタンアシレート、チタンキレート等である。なかでもテトラアルコキシドチタン類が好適である。例えば、テトラ−n−ブトキシチタンである。これは、常温常圧で液体である。これに微粉末酸化チタンを混合し適当なサイズにして加熱するのである。加熱によってテトラ−n−ブトキシチタンが分解し、アルコールが取れ酸化チタンが残る。これによって、微粒子状の酸化チタンが固着される。
【0011】
また、接着剤でなく、水や有機物の水溶液等を用いても、加熱すれば十分に固着できる。
【0012】
次にこの造粒物を互いに固着する。この固着の方法は、連続した空隙を有するように固着する。それは、接着剤の量と粒子のサイズ、粒度分布によって決めればよい。
固着するに使用する接着剤は、上記したものや酸化チタンゾル等が使用できる。酸化チタンゾルを用いる方法では、酸化チタンを水に分散させたものを接着剤のようにして固着させ、それを加熱(300〜600℃)して水分蒸発、融着などをさせる方法がある。また、接着剤に揮発性又は不揮発性の有機物が含まれていても、後述のように、加熱酸化チタンの酸化力によって炭酸ガスや水などに分解されて存在しなくなる。
【0013】
この固着によって、成形する形状はどのようなものでもよい。例えば、薄板状体がある。これは、厚みは特に限定しないが、数mm〜数十cmが好適である。また、平面視形状は矩形(長方形等)が取り扱い易いが、円形でもその他の形状でもよい。縦、横大きさは自由であるが、数十cm×数十cmが好適である。
このような板状にすると、酸化、分解のための装置に挿入することや、交換することが非常に容易である。また、追加や除去が容易であるため、負荷の変動や効果の変動に簡単に対応できる。
【0014】
また、薄板状だけでなく、ブロック(直方体のような)状、球状、円柱状、その他種々の形状も可能である。球状の場合、筒状の容器に入れる場合等に好適であり、ブロック状のものは板状のものより更に取り扱いが簡単である。
【0015】
連続した空隙に関しては、同じようなサイズの造粒物を固着する場合と、いろんなサイズのものを組み合わせる等によって、空隙率(成形体の全見かけ容積に占める空隙の割合)を調整することができる。
空隙率としては、10〜40%程度が好適であり、更に粒の平均サイズが数mm程度のものが、気体の通過もよく(圧力損失が小さい)、最も効率がよかった。
【0016】
本発明の他の態様として、無機粒体の表面に酸化チタン粒子を固着し複合粒体を製造し、さらにその複合粒体を互いに複数個固着することによって同様の連続空隙を有する成形体にしたものがある。
即ち、ここでいう複合粒体が上記した造粒物と同様のものである。
【0017】
この複合粒体は、ガラス、セラミック、金属、中空バルーン等の無機粒体を芯材として、その周囲表面に酸化チタン粒子を接着させて製造したものである。酸化チタン粒子のサイズは、通常は一次微粒子を造粒したもので、特に限定はしないが0.01〜0.1mm程度である。接着剤としては前記したものでよい。
芯材のサイズは、0.1mm以上であり、これも上記同様0.5〜10mm程度が好適である。
このような複合粒体は、前記した酸化チタンの造粒物を用いる場合に比べて安価であり、光触媒としての効果は十分期待できる。
【0018】
また、この芯材を用いるタイプで、芯材として前記した無機材ではなく、酸化チタンの粒体を用いることもできる。即ち、酸化チタンの表面に更に酸化チタン粒子を固着したものである。このようにすると、酸化チタンの表面積が大きく、触媒効果が高くなる。
【0019】
本発明酸化チタン触媒成形体は、光を照射して使用してもよいが、光ではなく加熱することによって励起させて使用するのがよい。即ち、本発明成形体を被処理気体の通過部分に置き、その成形体又は被処理気体を加熱するのである。加熱温度は100〜500℃程度が好適である。
【0020】
加熱の方法はどのようなものでもよく、被処理気体がそのような温度であれば触媒自体を加熱する必要はない。また、気体が低温の場合は、加熱空気で加熱する方法、電気ヒーターで加熱する方法、ガスバーナー等で加熱する方法等がある。中でも電気ヒーターを用いるものが温度調整の容易さ、価格等の面で好適である。また、マイクロ波のように触媒自体を直接加熱する方法でもよい。その場合、より効果的な金属粒子等を触媒の内部や触媒近傍に設置してもよい。
【0021】
電気ヒーターの場合、それを用いた面状(網のような)のヒーターにし、それを2枚の成形体で挟持したサンドイッチ構造のものでも、逆に成形体を面状ヒーターで上下から挟んでもよい。更に、ヒーターは面状だけでなく、線状にして成形体の空隙に通過させてもよい。要するにヒーターの形状や設置場所は自由である。線状のヒーターはより伝熱を効果的にするために発熱線自体を被分解処理ガスに直接接触する方法もある。このヒーターは、処理ガス(室温)の予熱に使用するのが好ましい。
被処理ガス中の被分解物は酸化により発熱するが、その量が微少量である場合が多いので、これによりガスや触媒の加熱は期待できない。この場合には、加熱を補助するために、発熱、加熱の燃料の役割をするガスや微粉体を被処理ガス中に適当量添加し、これらは加熱酸化チタンの酸化力により発熱するので、加熱の助けとすることができる。補助燃料は産業廃棄物などであればなお好ましい。
また、温度センサーを設けて自動制御にしてもよい。
更に、酸化分解用の酸素源が不足するようであれば、別途酸素や空気等を触媒付近に導入すればよい。
【0022】
本発明触媒体の使用分野としては、気体に限定するものではないが、気体の酸化、分解が便利である。例えば、養鶏場の廃ガスのような悪臭ガスの脱臭、硫化水素等の有害ガスの酸化、分解等である。勿論、気体に同伴される粒子(カーボン、タール、可燃性粉体等)についても好適である。
また、本願の酸化チタン触媒成形体は、エンジンの排気ガス設備内に設けてもよい。排気ガスが高温であればそのまま使用でき、温度が低い場合にはヒーターを設ければよい。排気ガス設備内に設ける場合には、成形体の形状はブロック状でも球状でもその設備の形状に適したものにすればよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明触媒成形体には、次のような大きな利点がある。
(1) 板状体に成形されているため、取扱いが非常に容易であり、従来のような同伴、舞い上がり、目詰まり等がほとんどない。
(2) 板状に一体になっているため、取り付け、交換が非常に簡単である。
(3) 気体が効率よく通過できるため、接触面積も大きく、効率よく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下好適な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明成形体1の1例を示す斜視図(一部省略)である。これは、幅Wで長さL、厚みがTの板状である。ここでは、W=60cm、L=90cm、T=5cmを用いた。
この例では、酸化チタンの一次微粉末を造粒して造粒物2とし、それを多数個点接着(接着部3)させて板状にしたものである。図2はその部分拡大図である。空隙4が多数あり、気体が容易に通過することが分かる。
【0026】
図3は、無機粒体(ここではセラミックス)5の周囲(全部でも一部でも可)に、酸化チタン粒子6を固着し複合粒体にしたものを図2同様固着したものである。酸化チタンとしても表面積が増大していることが分かる。
【0027】
図4は、悪臭気体を酸化させる反応器7内に図1の例の成形体1(円形にしたもの)を2枚設けた例である。この反応器7は平面視円形であり、成形体1がきっちりと嵌るサイズである。また、反応器7の下部の周囲に電気ヒーター8が設けられている。気体入口9から入った気体は加熱され、触媒層で酸化され出口10から送出される。この反応器7の上流、下流はどのようなものでもよい。
【0028】
光触媒粒子(アナターゼ型酸化チタン:サイズ10〜80nm)を用いて、比較実験を行なった。
実施例1
上記光触媒粒子をテトラ−n−ブトキシチタンをバインダーとして、約1〜3mmの粒に造粒し、酸化チタンゾルで接着し50cm×50cm×3cmの正方形の板状体に成形し、それを400℃に加熱して固めた。
【0029】
比較例1
上記の光触媒粒子を微粒子のまま使用した。
比較例2
上記の3〜6mmの造粒したもののまま使用した。
【0030】
以下図5に示す実験装置に従って説明する。実施例1の板状体11を2枚、約1000ccの透明窓の付いた容器12の中間位置に固定した。その2枚の板状体1の中間に網状の電気ヒーター13を挿入している。電気ヒーター13は、電源及び制御機(図示せず)に接続されている。
更に、容器12には、被処理気体導入口14、排気口15が設けられている。電気ヒーター13によって触媒成形体を400℃に加熱している。
ここに、被処理気体導入口14から養鶏場の悪臭の排気ガスを導入した。容器内の滞留時間を確保するため、流速は小さく設定している。そして、有機物は分解され排気口15から排出されていく。
【0031】
次に比較例について説明する。
比較例1は微粒子であるため、目の細かい不燃性の不織布に包み、網で上下を挟んで固定した。
比較例2は、5〜10mmの造粒したものであるため、目の細かい金属製の網で挟んで固定した。
【0032】
この装置に被処理ガスを10Nm3/hで3時間導入した。
結果は次の通りである。
1 排出ガスの悪臭
実施例1:なし
比較例1:なし
比較例2:わずか残存
2 光触媒の減量
実施例1:ほぼ0%
比較例1:約20%
比較例2:ほぼ0
【0033】
以上の結果から、比較例1のような微粉末では排気口から同伴され多量に減少し、比較例2のような造粒したままの状態ではどうしても分解の効率が悪い。実施例ではこのようなことがなく優れている。
また、比較例1は当然であるが、比較例2もその設置や交換が非常に手間である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明成形体の1例を示す部分斜視図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】本発明成形体の他の例を示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明成形体の使用例を示す断面図である。
【図5】本発明成形体の他の使用例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 触媒成形体
2 造粒物
3 接着部
4 空隙
5 芯材
6 酸化チタン粒子
7 反応器
8 ヒーター
9 入口
10 出口
11 本発明成形体
12 容器
13 電気ヒーター
14 被処理気体導入口
15 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンの一次微粉末を0.1mm以上の大きさに造粒し、さらにその造粒物を互いに複数個固着することによって連続した空隙を有する成形物に成形したことを特徴とする酸化チタン触媒成形体。
【請求項2】
0.1mm以上の大きさの無機粒体の表面に、酸化チタン粒子を固着し複合粒体を製造し、さらにその複合粒体を互いに複数個固着することによって連続した空隙を有する成形物に成形したことを特徴とする酸化チタン触媒成形体。
【請求項3】
該無機粒体がセラミックである請求項2記載の酸化チタン触媒成形体。
【請求項4】
該無機粒体が酸化チタンの一次微粉末を0.1mm以上の大きさに造粒したものである請求項2記載の酸化チタン触媒成形体。
【請求項5】
エンジンの排気ガス設備内に、請求項1又は2記載の酸化チタン触媒成形体及び加熱ヒーターを設けたことを特徴とする排気ガス処理システム。
【請求項6】
反応器内に請求項1又は2記載の酸化チタン触媒成形体を設置し、その容器内に被処理ガスを通過させる方法であって、該酸化チタン触媒成形体の温度を所定の温度にするため、該被処理ガスに可燃ガス又は可燃微粉末を添加することを特徴とする被処理ガスの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−173604(P2008−173604A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11301(P2007−11301)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(592189376)オサダ技研株式会社 (23)
【出願人】(000214629)
【Fターム(参考)】