説明

触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、及び、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法

【課題】低温条件下においてもCOを浄化可能な触媒担体を提供すること。
【解決手段】金属酸化物からなる触媒担体であって、前記金属酸化物が一般式(1):ATi(8−y)16(1)[Aは酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素、MはTi以外の金属元素であって酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素、xは、酸化物中においてAが1価の陽イオンの時は不等式:0<x≦2の範囲内の数値を示し、Aが2価の陽イオンの時は不等式:0<x≦1の範囲内の数値を示し、Aが酸化物中において1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する時は、1価の陽イオンとなる金属元素Aのxの値xと、2価の陽イオンとなる金属元素Aのxの値xとが不等式:0<(x+2×x)≦2に示す条件を満たし、yは、不等式:0<y≦2の範囲内の数値を示す。]で表され且つ一次元細孔構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体、それを用いた排ガス浄化用触媒、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関等から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素(CO)等の有害成分を浄化するために様々な排ガス浄化用触媒が用いられてきた。このような排ガス浄化用触媒としては、ホランダイト型等の特定の結晶構造を有する金属酸化物を利用したものが知られている。
【0003】
例えば、特開2001−198440号公報(特許文献1)においては、式:MOで表される八面体を含むクリプトメラン、ホランダイト、ロマネチャイト又はトドロカイトの構造を有する物質と、アルカリ元素、アルカリ土類元素、希土類、遷移金属、第IIIA族及び第IVA族からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素と、貴金属とを備え、且つ、前記八面体が、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIII族、第IB族、第IIB族および第IIIA族の元素から選ばれる少なくとも1つの元素Mを含む触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1においては、触媒をNOx浄化に用いることは記載されているものの、COを酸化するために用いることは何ら記載されておらず、その触媒をCOの酸化のために用いた場合には低温条件下におけるCO酸化性能が必ずしも十分なものではなかった。
【0004】
また、2005年に発行されたChem. Mater.のvol.17(非特許文献1)の4335頁〜4343頁に記載されたLiyu Liらが著者の「Synthesis and Characterization of Silver Hollandite Application in Emission Control」においては、式:Ag1.8Mn16で表される金属酸化物からなる触媒が記載されている。しかしながら、非特許文献1に記載のような触媒においても低温条件下におけるCO酸化性能は必ずしも十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−198440号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Liyu Li及びDavid L.King、「Synthesis and Characterization of Silver Hollandite Application in Emission Control」、Chem. Mater.、2005年、vol.17、4335頁〜4343頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、触媒成分と組み合わせて用いることにより得られる排ガス浄化用触媒に、低温条件下においてもCOを十分に酸化して浄化することができる十分に高度なCO酸化性能を発揮させることが可能な触媒担体、それを用いた十分に高度なCO酸化性能を有する排ガス浄化用触媒、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表され且つ一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物を触媒担体として用いることにより、その触媒担体を備える排ガス浄化用触媒が、低温条件下においてCOを十分に酸化して浄化することが可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の触媒担体は、金属酸化物からなる触媒担体であって、
前記金属酸化物が、下記一般式(1):
Ti(8−y)16 (1)
[式(1)中、Aは酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素を示し、
MはTi以外の金属元素であって酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素を示し、
xは、酸化物中において前記Aが1価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦2の範囲内の数値を示し、他方、前記Aが2価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦1の範囲内の数値を示し、
前記Aとして酸化物中において1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する場合においては、1価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xと、2価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xとが不等式:0<(x+2×x)≦2に示す条件を満たし、
yは、不等式:0<y≦2の範囲内の数値を示す。]
で表され且つ一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物であることを特徴とするものである。
【0010】
上記本発明の触媒担体においては、前記金属酸化物がホランダイト型の金属酸化物であることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明の触媒担体においては、前記金属元素Aが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
また、上記本発明の触媒担体においては、前記金属元素MがSc、Y、V、Nb、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ga、Al、In及びLaからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明の触媒担体においては、前記金属元素AがBa及びNaからなる群から選択される少なくとも一種であり、且つ、前記金属元素MがAl及びFeからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、上記本発明の触媒担体と、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属の粒子及び/又は該元素を含む金属酸化物の粒子からなる触媒成分の粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒成分の粒子が前記触媒担体に担持されていることが好ましい。
【0016】
さらに、上記本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒成分の粒子中に含まれる前記元素がV、Cu、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【0017】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に一酸化炭素を含む排ガスを接触せしめて、前記一酸化炭素を酸化して浄化することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、触媒成分と組み合わせて用いることにより得られる排ガス浄化用触媒に、低温条件下においてもCOを十分に酸化して浄化することができる十分に高度なCO酸化性能を発揮させることが可能な触媒担体、それを用いた十分に高度なCO酸化性能を有する排ガス浄化用触媒、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒(A)〜(J)のCO浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の触媒担体について説明する。すなわち、本発明の触媒担体は、金属酸化物からなる触媒担体であって、
前記金属酸化物が、下記一般式(1):
Ti(8−y)16 (1)
[式(1)中、Aは酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素を示し、
MはTi以外の金属元素であって酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素を示し、
xは、酸化物中において前記Aが1価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦2の範囲内の数値を示し、他方、前記Aが2価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦1の範囲内の数値を示し、
前記Aとして酸化物中において1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する場合においては、1価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xと、2価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xとが不等式:0<(x+2×x)≦2に示す条件を満たし、
yは、不等式:0<y≦2の範囲内の数値を示す。]
で表され且つ一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物であることを特徴とするものである。
【0022】
このような一般式(1)中のAは、金属酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素である。このような金属元素Aは、金属酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素であればよく、特に制限されないが、より高度なCO酸化性能を発揮できるという観点から、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baであることが好ましく、Li、Na、K、Ca、Baであることがより好ましく、Ba、Naであることが特に好ましい。なお、このような金属元素Aとしては1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、上記一般式(1)中のMは、Ti以外の金属元素であって、酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素である。このような金属元素Mは、Ti以外の金属元素であって酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素であればよく、特に制限されないが、資源流通量や安全性の観点や、十分に高度なCO酸化性能を得るという観点から、Sc、Y、V、Nb、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ga、Al、In、Laが好ましく、V、Nb、Cr、Fe、Ga、Al、Inがより好ましく、Al、Feが特に好ましい。なお、このような金属元素Mとしては1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
さらに、上記一般式(1)で表される金属酸化物中の前記金属元素Aと前記金属元素Mとしては、より高度なCO酸化性能を発揮させることが可能であるという観点から、前記金属元素AがBa及びNaからなる群から選択される少なくとも一種であり、且つ、前記金属元素MがAl及びFeからなる群から選択される少なくとも一種であることであることが好ましい。
【0025】
また、上記一般式(1)中のxは、金属酸化物中の金属元素Aの存在比(濃度)を示す値である。このようなxの値は、前記金属元素Aの陽イオンの価数に応じて異なるものであり、前記金属元素Aが1価の陽イオンとなる場合には、不等式:0<x≦2の範囲内の数値であり、他方、前記金属元素Aが2価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦1の範囲内の数値である。このようなxの値が前記上限以上となった場合においては、クリプトメラングループに属する金属酸化物(好ましくはホランダイト型構造の金属酸化物)の細孔全体に充填し得る以上の量の金属元素Aが担持されることとなり、単相のクリプトメラングループに属する金属酸化物(特に単相のホランダイト型構造の金属酸化物)が得られなくなる。また、このようなxの値としては、前記不等式を満たす範囲であればよく(単相のクリプトメラングループに属する金属酸化物を製造できる範囲の値であればよく)、その好適な範囲は、使用する金属元素Aや金属元素Mの種類等によっても異なるものであり、一概には言えないが、排ガス浄化用触媒に用いた場合に、より高度なCO酸化性能が得られる傾向にあることから、前記金属元素Aが1価の陽イオンとなる場合には、不等式:0.5≦x≦2の範囲内の数値であることがより好ましく、また、同様の観点から、xの値は、前記金属元素Aが2価の陽イオンとなる場合には、不等式:0.25≦x≦1の範囲内の数値であることがより好ましい。
【0026】
また、前記金属元素Aとして1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する場合においては、金属元素Aの価数ごとに一般式(1):ATi(8−y)16で表される式を考慮した場合において、その金属酸化物中に存在する1価の陽イオンとなる金属元素Aのxの値をxとし、金属酸化物中に存在する2価の陽イオンとなる各金属元素Aのxの値をxとした場合に、不等式:0<(x+2×x)≦2に示す条件を満たす必要がある。このような式で表される(x+2×x)の値が前記上限を超えると、クリプトメラングループに属する金属酸化物(好ましくはホランダイト型構造の金属酸化物)の細孔全体に充填し得る以上の量の金属元素Aが担持されることとなり、クリプトメラングループに属する金属酸化物(特に単相のホランダイト型構造の金属酸化物)が得られなくなる。なお、上記xの値は、1価の陽イオンとなる金属元素Aが複数種共存する場合には全ての1価の陽イオンとなる金属元素Aのxの値の合計値とする。同様に、xの値は、2価の陽イオンとなる金属元素Aが複数種共存する場合には、全ての2価の陽イオンとなる金属元素Aのxの値の合計値とする。
【0027】
さらに、前記金属元素Aとして1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する場合において、上記x及びxの値の好適な範囲は、使用する金属元素Aや金属元素Mの種類等によっても異なるものであり、一概には言えないが、排ガス浄化用触媒に用いた場合に、より高度なCO酸化性能が得られる傾向にあることから、不等式:0.5≦(x+2×x)≦2に示す条件を満たすことがより好ましい。
【0028】
また、上記一般式(1)中のyは、金属酸化物中の金属元素Mの存在比(濃度)を示す値である。このようなyの値は不等式:0<y≦2の範囲内の数値である。このようなyの値が前記上限を超えると、単相のクリプトメラングループに属する金属酸化物(特に単相のホランダイト型構造の金属酸化物)が得られなくなる。また、このようなyの値の好適な範囲は、使用する金属元素Aや金属元素Mの種類等によっても異なるものであり、一概には言えないが、不等式:0.5≦y≦2の範囲内の数値であることが好ましい。なお、このような一般式(1)中におけるxの値やyの値等の数値は、誘導結合プラズマ(ICP)分析により測定される濃度に基づいて求められる値を採用する。
【0029】
また、本発明にかかる一般式(1)で表される金属酸化物は、上記一般式(1)中のyの値からも明らかなように、チタン(Ti)を必須成分として含有する。本発明においては、このように金属酸化物中にチタンが必須成分として含まれるため、金属元素MとTiといった異なる種類の金属元素により金属酸化物の結晶が形成されており、結晶の基本単位を構成する金属元素の酸化数を異なるものとすることができることから、その金属酸化物中において局所的に酸点を効率よく発現させることが可能であり、これにより、触媒成分と組み合わせて用いた場合に触媒成分の電子状態を制御することができる上に、一次元細孔構造に起因する粒子の物理構造から触媒成分の粒子の分散性を高度に維持することができるため、十分に高度なCO酸化性能が得られるものと推察される。
【0030】
さらに、このような一般式(1)で表される金属酸化物は、一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物である。すなわち、このような一般式(1)で表される金属酸化物は、クリプトメラングループに属する結晶構造(例えば、ホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型の結晶構造)を有する単相の金属酸化物であり、その結晶構造に由来する一次元細孔構造を有するものである。ここで、「単相の結晶構造を有する」とは、X線回折(XRD)測定において、クリプトメラングループに属する結晶相以外の他の結晶相が確認されないことを意味し、例えば、前記金属酸化物がホランダイト型金属酸化物である場合には、X線回折(XRD)測定において、ホランダイト型の結晶相以外の他の結晶相が確認されないことを意味する。また、「クリプトメラングループに属する金属酸化物」とは、ホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型に代表される、上記一般式(1)で表される正方晶系、単斜晶系又は擬正方晶系の金属酸化物であり、式:BO(式中、Bは前記金属元素M又はTiを示す。)で表される八面体を基本単位とし、I2/m、I4、I4/m、C2/mのいずれかの空間群に属する結晶相を有する金属酸化物をいう。また、このようなクリプトメラングループに属する金属酸化物(例えば、ホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型の金属酸化物)においては、その結晶構造に由来してc軸と平行なトンネル状の細孔が形成される。すなわち、このようなクリプトメラングループに属する金属酸化物はc軸と平行な一次元細孔構造を有するものとなる。なお、このような結晶構造は、X線回折パターンからその存在を確認することができる。また、本発明においては、金属酸化物の「一次元細孔構造」の有無は、X線回折パターンからクリプトメラングループに属する結晶構造が確認されるか否かにより判別し、クリプトメラングループに属する結晶構造が確認された場合には、その金属酸化物は一次元細孔構造を有するものとして認識することができる。
【0031】
このような一般式(1)で表される金属酸化物としては、粒子状のものが好ましい。また、このような金属酸化物の一次粒子としては、粒径の平均値(平均粒子径)が1〜1000nmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、3〜100nmであることが更に好ましい。このような一次粒子の粒径の平均値が前記下限未満では、シンタリング(粒成長)し易くなってしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、細孔が長くなるため、十分な比表面積を得られなくなる傾向にある。なお、このような一次粒子の粒径の平均値(平均粒子径)は、任意の100個以上の一次粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定して各粒子の粒子径を求め、その値を平均化することにより求めることができる。また、このような一次粒子の粒子径は、粒子の断面の最大直径を意味し、粒子の断面が円形でない場合には、その粒子の断面の最大の外接円の直径とする。
【0032】
また、このような一般式(1)で表される金属酸化物の一次粒子としては、比表面積が1〜300m/gであることが好ましく、5〜200m/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では、十分な触媒活性を発揮させるために、妥当な量の酸化能を有する前記触媒成分を担持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化による比表面積低下が生じ易くなる傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として求めることができる。
【0033】
また、このような一般式(1)で表される金属酸化物においては、その基本骨格においてTiを必須成分として十分な比率で含有することから、結晶構造から理論値として求められる細孔の平均細孔直径は、0.47nm近傍の値(基本的に0.47nm±0.1nmの範囲の値)となる。このような平均細孔直径が、前記範囲外となるような金属酸化物は、Tiを必須成分として含有するクリプトメラングループに属する単相の一般式(1)で表される金属酸化物として得ることが困難な傾向にある。なお、このような平均細孔直径の理論値は、基本的に実測される値と一致するものである。また、このような平均細孔径を実際に測定する方法としては、例えば窒素吸着法が挙げられる。
【0034】
さらに、このような一般式(1)で表される金属酸化物においては、その細孔内に前記金属元素Aが存在している。なお、金属酸化物の結晶構造がクリプトメラングループに属するもの(例えばホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型)であれば、その結晶構造により細孔内に金属元素Aが存在するという金属酸化物の構成は達成されるため、細孔内に金属元素Aが存在することは、XRD測定により金属酸化物の結晶構造を測定することにより確認できる。
【0035】
また、このような一般式(1)で表される金属酸化物としては、排ガス浄化用触媒に用いた場合に、低温条件下において、より高度なCO酸化性能を発揮させることが可能となることから、ホランダイト型の金属酸化物であることが好ましい。なお、本発明において好適な「ホランダイト型」の結晶相は、式:BO(式中、Bは前記金属元素M又はTiを示す。)で表される八面体の基本単位が、縦に2単位及び横に2単位配列して中央に一次元細孔(トンネル状の細孔であってc軸と平行な細孔)が形成されている相である。このようなホランダイト型の結晶相は、空間群がI4/m、I2/mに属する相である。
【0036】
また、このような一般式(1)で表される金属酸化物を製造するための方法としては、特に制限されず、例えば、前記金属元素A、前記金属元素Mの種類等に応じて製造条件を適宜変更しながら、クリプトメラングループに属する結晶構造(例えばホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型の結晶構造)を形成することが可能な公知の方法を適宜利用して製造することもできる。また、このような一般式(1)で表される金属酸化物を製造するための方法としては、例えば、前記金属元素Aを含む第一化合物と、前記金属元素Mを含む第二化合物と、Tiを含む第三化合物とを混合して混合物を得た後、前記混合物を焼成することにより、一般式(1)で表される金属酸化物を製造する方法(I)を利用してもよい。以下、このような方法(I)について説明する。
【0037】
このような方法(I)においては、先ず、前記金属元素Aを含む第一化合物と、前記金属元素Mを含む第二化合物と、Tiを含む第三化合物とを混合して混合物を得る。
【0038】
このような金属元素Aを含む第一化合物としては、金属元素Aを含有していればよく特に制限されず、金属元素Aとともに金属元素Mを併せて含有するものを用いてもよい。このような第一化合物としては、例えば、金属元素Aの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩(例えば酢酸塩、クエン酸塩)等が挙げられる。なお、このような第一化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような第一化合物の形態は特に制限されず、水和物であってもよい。
【0039】
また、前記金属元素Mを含む第二化合物としては、金属元素Mを含有していればよく特に制限されず、例えば、金属元素Mの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩(例えば酢酸塩、クエン酸塩)等が挙げられる。なお、このような第二化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような第二化合物の形態は特に制限されず、水和物であってもよい。
【0040】
さらに、Tiを含む第三化合物としては、Tiを含有していればよく特に制限されず、例えば、Tiの硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩(例えば酢酸塩、クエン酸塩)等が挙げられる。なお、このような第三化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような第三化合物の形態は特に制限されず、水和物であってもよい。更に、このような第一〜第三化合物としては、市販のものを適宜用いてもよい。
【0041】
また、前記第一〜第三化合物を混合する方法(混合方法)としては、特に制限されず、前記第一〜第三の化合物の粉末を物理的に混合する方法を採用してもよく、あるいは、前記第一〜第三の化合物を溶媒中で混合する方法を採用してもよい。なお、このような混合方法としては、混合の均一性の観点から、前記第一〜第三の化合物を溶媒中で混合する方法を採用することが好ましい。
【0042】
ここで、前記混合方法に関して、先ず、前記第一〜第三の化合物の粉末を物理的に混合する方法を採用する場合について説明する。このような第一〜第三の化合物の粉末を物理的に混合する方法としては、例えば、乳鉢を用いて混合する方法や、ボールミルして粉砕混合する方法を適宜採用することができる。このように、第一〜第三の化合物の粉末を物理的に混合する場合においては、第一〜第三の化合物の粉末(粒子)の平均粒子径は、それぞれ、0.01〜2000μmであることが好ましく、0.1〜1000μmであることがより好ましい。このような第一〜第三化合物の粒子の平均粒子径が前記下限未満では粉末の取り扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると十分に混合することが困難となる傾向にある。
【0043】
また、このように物理的に混合して得られる混合物の粉末の平均粒子径としては、特に制限されないが、5〜1000nm(より好ましくは10〜500nm)であることが好ましい。このような粉末の大きさが前記下限未満では混合するためのコストが高騰し、経済性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分に混合されず、未反応成分が残る傾向にある。なお、このような混合後の粒径に応じて、混合条件は適宜変更することができる。
【0044】
次に、前記混合方法として、第一〜第三の化合物を溶媒中で混合する方法を採用する場合について説明する。このような混合方法に利用し得る溶媒としては特に制限されないが、工業性の観点から、水(イオン交換水)を用いることが好ましい。また、前記第一〜第三化合物を溶媒中で混合する方法としては、前記第一化合物を溶解した水溶液(A)、前記第二化合物を溶解した水溶液(B)及び前記第三化合物を溶解した水溶液(C)のうちのいずれか1種以上を用いて、水溶液中において、第一〜第三の化合物を撹拌混合する方法を採用してもよい。このような水溶液を利用する方法としては、例えば、水溶液(B)と水溶液(C)との混合液を調製し、そこに第三の化合物を添加して混合することにより混合液を得る方法(i)や、水溶液(A)に前記第二化合物及び前記第三化合物の粉末を添加して混合することにより混合液を得る方法(ii)を挙げることができる。また、このような水溶液を利用する方法(i)を採用する場合には、水溶液(B)及び(C)中の金属元素Mの塩と、Tiの塩は、焼成時の安全性の観点から、同じ種類の塩とすること(例えば共にクエン酸塩とすること)が好ましい。
【0045】
さらに、第一〜第三の化合物を溶媒中で混合する方法を採用する場合においては、その混合方法により得られた混合液から溶媒を除去(例えば溶媒を蒸発させる等)して固形分として前記第一化合物と前記第二化合物と前記第三化合物との混合物を得てもよく、あるいは、その混合方法により得られた混合液を還流して、沈殿物として混合物を得てもよい。なお、沈殿物として混合物を得る場合には、その混合物は、沈殿が生じた後にろ過等することにより容易に回収することができる。また、このような還流工程の条件(時間等)は、目的とする金属酸化物の設計(粒子径や細孔の長さ等)に応じて、その条件を適宜変更することができる。
【0046】
さらに、前記混合物を得るために用いる前記第一〜第三化合物の使用量は、利用する混合方法の種類等によっても異なるものであって、一概に言えるものではなく、その使用量を上記一般式(1)で表される金属酸化物を形成することが可能な比率とすればよく、目的とする金属酸化物の設計に応じて適宜変更することができる。このように、前記第一〜第三化合物の使用量は、特に制限されないが、得られる混合物中における金属元素Aの全モル数と、前記混合物中における金属元素Mの全モル数と、前記混合物中におけるチタン(Ti)の全モル数との比を[Aの全モル数]:[Mの全モル数]:[Tiの全モル数]と表した場合において、Aが1価の金属元素の場合には、その比の値としての[Aの全モル数]と[Mの全モル数]と[Tiの全モル数]とが、それぞれ0<[Aの全モル数]≦3、0<[Mの全モル数]≦2、8>[Tiの全モル数]≧6に示す範囲の数値となるように調整することが好ましく、Aが2価の金属元素の場合には、その比の値としての[Aの全モル数]と[Mの全モル数]と[Tiの全モル数]とが、それぞれ0<[Aの全モル数]≦1.5、0<[Mの全モル数]≦2、8>[Tiの全モル数]≧6に示す範囲の数値となるように調整することが好ましい。また、前記Aとして1価の金属元素と2価の金属元素とが共存する場合には、前記混合物中におけるAのモル数の換算値([1価のAの全モル数]+2×[2価のAの全モル数])と、前記混合物中における金属元素Mの全モル数と、前記混合物中におけるチタン(Ti)の全モル数との比を([1価のAの全モル数]+2×[2価のAの全モル数]):[Mの全モル数]:[Tiの全モル数]で表した場合に、それぞれが、0<([1価のAの全モル数]+2×[2価のAの全モル数])≦3、0<[Mの全モル数]≦2、8>[Tiの全モル数]≧6に示す範囲の数値となるように調整することが好ましい。このようなAとMのモル数が前記上限を超える場合には、クリプトメラングループに属する結晶構造を有する金属酸化物を単相で得ることができなくなる傾向にある。
【0047】
また、このような混合物を得る工程においては、後述の焼成工程を実施する前に、得られた混合物に対して乾燥処理を適宜施してもよい。このような乾燥処理としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができる。
【0048】
また、上記方法(I)においては、上述のようにして混合物を得た後、前記混合物を焼成して、一般式(1)で表される金属酸化物を得る。
【0049】
このような焼成の条件は、用いる金属元素Aや金属元素Mの種類、混合物の調製方法等によってその好適な条件は異なるものであり、特に制限されず、その条件を、クリプトメラングループに属する結晶構造(例えばホランダイト型、プリデライト型又はフレウデンバーガイト型の結晶構造)を有する金属酸化物を得ることが可能となるような条件に適宜設定すればよい。以下、前記混合物を得る際に採用した混合方法の種類に応じて焼成の好適な条件について説明する。
【0050】
前記混合物を得る際に採用した前記混合方法が、前記第一〜第三の化合物の粉末を物理的に混合する方法である場合には、焼成温度を500〜1400℃(より好ましくは600〜1200℃)とし、焼成時間を1〜24時間(より好ましくは2〜12時間)として、前記混合物を焼成することが好ましい。このような焼成温度及び時間が前記下限未満では十分な結晶性を有する金属酸化物が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、単相の金属酸化物が得られなくなる傾向にある。
【0051】
また、前記混合物を得る際に採用した前記混合方法が、前記第一〜第三化合物を溶媒中で混合する方法である場合においては、焼成温度を500〜1200℃(より好ましくは600〜1000℃、更に好ましくは700〜900℃)とし、焼成時間を1〜12時間(より好ましくは2〜10時間)として、前記混合物を焼成することが好ましい。このような焼成温度及び時間が、前記下限未満では十分な結晶性を有する金属酸化物が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、単相の金属酸化物が得られなくなる傾向にある。
【0052】
また、前記混合物を得る際に採用した前記混合方法が、前記第一〜第三化合物を溶媒中で混合する方法である場合においては、原料中の有機酸の分解の観点から、上記焼成工程を実施する前に、仮焼成を施してもよい。このような仮焼成の条件としては、100〜600℃(より好ましくは200〜500℃)の温度で1〜10時間(より好ましくは2〜8時間)加熱する条件を採用することが好ましい。
【0053】
以上、上記一般式(1)で表され且つ一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物からなる本発明の触媒担体について説明したが、以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0054】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記本発明の触媒担体と、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属の粒子及び/又は該元素を含む金属酸化物の粒子からなる触媒成分の粒子と、
を備えることを特徴とするものである。
【0055】
このような触媒成分の粒子は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属(メタル)の粒子及び/又はV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属酸化物の粒子からなるものである。このような触媒成分の粒子を形成する元素としては、特に制限されないが、より高度なCO酸化性能を得るという観点から、V、Cu、Pt、Au、Pd、Rh、Ir、Ruが好ましく、V、Cu、Pt、Au、Pdがより好ましく、Pt、Pdが特に好ましい。このような触媒成分の粒子を形成する元素は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用することができる。
【0056】
また、このような触媒成分の粒子を形成する元素としては、更に高度なCO酸化性能を発揮させることが可能となるという観点から、Ptと、Pt以外の触媒成分の元素(より好ましくはPt以外の貴金属)とを組み合わせることが好ましく、PtとPdとを組み合わせることが特に好ましい。
【0057】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、上記一般式(1)で表される金属酸化物からなる触媒担体に、前記触媒成分(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属及び/又は該元素を含む金属酸化物)が粒子の状態で担持されることが好ましい。すなわち、本発明においては、上記一般式(1)で表され且つクリプトメラングループに属する金属酸化物からなる触媒担体に、前記触媒成分の粒子が担持されていることが好ましい。このように、前記触媒成分の粒子が前記触媒担体に担持されることで、より高度なCO酸化活性を得ることができる。
【0058】
さらに、このような触媒成分の粒子の平均粒子径としては100nm以下であることがより好ましく、1〜50nmであることがより好ましい。前記触媒成分の粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、十分に高度なCO酸化活性を得ることが困難になる傾向にある。このような触媒成分の粒子の粒子径は、X線回折(XRD)による測定を行うことにより確認することができる。
【0059】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、触媒中の前記触媒成分の総量が0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。このような触媒成分の粒子の総量が前記下限未満では十分に高度なCO酸化性能を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコストが高騰するとともに、前記触媒成分の粒子の粒成長が起こり易くなる傾向にある。
【0060】
さらに、このような排ガス浄化用触媒において、Ptと、Pt以外の触媒成分の元素とを組み合わせて用いる場合においては、触媒中のPtの量が0.01〜5質量%(より好ましくは0.1〜2質量%)であり且つPt以外の触媒成分の元素の量が0.01〜5質量%(より好ましくは0.1〜2質量%)であることが好ましい。このような割合でPt等が担持されることにより、より高度なCO酸化性能が得られる傾向にある。
【0061】
また、前記触媒担体に前記触媒成分の粒子を担持させる方法としては、前記触媒成分の元素(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir、Ru)の塩(例えば、ジニトロジアミン塩)や錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液を、前記触媒担体に接触させた後に乾燥、焼成する方法を採用することができる。このようにして、前記触媒成分の元素の塩や錯体を含有する水溶液を前記触媒担体に接触させる方法としては特に制限されず、浸漬法や含浸法などの公知の方法を適宜利用することができる。また、水溶液を接触させた後の乾燥や焼成の条件は触媒担体上に前記触媒成分を担持することが可能な条件であればよく、特に制限されず、公知の条件を適宜採用することができ、例えば、乾燥条件として80〜140℃で1〜48時間程度加熱する条件を、焼成条件として200〜700℃で0.5〜5時間程度加熱する条件を、それぞれ採用してもよい。
【0062】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、上記一般式(1)で表される金属酸化物からなる上記本発明の触媒担体と、前記触媒成分の粒子とを備えていればよく、他の構成は特に制限されず、排ガスの浄化に利用可能な公知の他の金属を含む担体等を適宜組み合わせて用いてもよい。また、本発明の排ガス浄化用触媒の形態は特に制限されず、例えば、ペレット状に成型する等して用いてもよく、あるいは、公知の基材(例えばセラミック製のハニカム基材等)に担持して用いてもよい。
【0063】
以上、本発明の排ガス浄化用触媒について説明したが、次に、上記本発明の排ガス浄化用触媒を用いた本発明の排ガスの浄化方法について説明する。
【0064】
本発明の排ガスの浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に一酸化炭素を含む排ガスを接触せしめて、前記一酸化炭素を酸化して浄化することを特徴とする方法である。
【0065】
このような一酸化炭素(CO)を含む排ガスを接触せしめる方法としては特に制限されず、例えば、排ガス管中に上記本発明の排ガス浄化用触媒を配置し、ガソリン車のエンジン、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関から排出される排ガスを、排ガス管中において上記本発明の排ガス浄化用触媒に接触させる方法等を採用してもよい。
【0066】
本発明の排ガスの浄化方法は、酸素過剰雰囲気下において、COを含む排ガスを接触せしめて、COを浄化する方法に特に好適に利用できる。ここにいう「酸素過剰雰囲気」とは酸素の還元ガス成分に対する化学当量比が1以上である雰囲気をいう。このように本発明によれば、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジンから排出される酸素過剰雰囲気の排ガスであっても、効率よく浄化することができる。
【0067】
また、このようにして排ガスを浄化させる際に、本発明の排ガス浄化用触媒は単独であるいは他の材料とともに、基材等に担持せしめて利用してもよい。このような基材としては特に制限されず、排ガス浄化用の触媒を担持するために用いることが可能な公知の基材を適宜利用することができる。また、このようにして排ガスを浄化させる際には、より効率よく排ガスを浄化するという観点から、上記本発明の排ガス浄化用触媒を他の触媒と組み合わせて用いてもよい。このような他の触媒としては、特に制限されず、公知の触媒(例えば、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型(NSR触媒)、NOx選択還元触媒(SCR触媒)、酸化触媒等)を適宜用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
〈金属酸化物を調製する工程〉
先ず、0.93molのクエン酸を165mlのイオン交換水に溶解させた溶解液中に0.3molのチタンテトライソプロポキシドを加えて、80℃の温度条件下において撹拌することにより、チタンクエン酸塩を0.91mol/Lの濃度で含有するチタンクエン酸塩水溶液を調製した。次に、0.93molのクエン酸を165mlのイオン交換水に溶解させた溶解液中に0.3molの塩基性酢酸アルミニウムを加えて80℃の温度条件下において撹拌することにより、アルミクエン酸塩を0.83mol/Lの濃度で含有するアルミクエン酸塩水溶液を調製した。
【0070】
次いで、51.1mlの前記チタンクエン酸塩水溶液と16.3mlの前記アルミクエン酸塩水溶液とを混合して第一の混合液を得た後、前記第一の混合液中に0.0075molの酢酸バリウムを加えて、第二の混合液を得た。その後、第二の混合液から水分を蒸発させて除去し、固形分を得た。次に、その固形分を乾燥させた後、大気中、400℃、5時間の加熱条件で仮焼成した。そして、仮焼成後の固形分を、大気中、800℃、5時間の加熱条件で焼成して金属酸化物(粒子状)を得た。
【0071】
〈排ガス浄化用触媒を調製する工程〉
0.107gのPt(NO(NHと0.0704gのPd(NOを溶解した水溶液中に、上述のようにした得られた金属酸化物を5g添加し、1時間撹拌して混合物を得た後、前記混合物に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(A)を得た。このようして得られた排ガス浄化用触媒(A)は、前記金属酸化物にPtとPdがそれぞれ1.3wt%(Pt)、0.65wt%(Pd)の割合で担持されたものであった。
【0072】
〔金属酸化物の特性の評価〕
実施例1で排ガス浄化用触媒を形成する際に得られた金属酸化物に対して、誘導結合プラズマ(ICP)分析を行った。このような測定の結果、前記金属酸化物は、式:BaAl1.8Ti6.216で表される金属酸化物であることが確認された。
【0073】
また、このような金属酸化物に対して、X線回折(XRD)分析を行った。このような測定の結果、XRD測定により得られたX線回折パターンから、得られた金属酸化物においては、ホランダイト型の結晶相が確認され、他の結晶相の存在は確認されなかった。すなわち、このようなXRD測定の結果から、得られた金属酸化物は、単相の金属酸化物であって、ホランダイト型の結晶構造を有する金属酸化物であることが確認された。また、このような結果から、金属酸化物においては、ホランダイト型の結晶構造に由来した一次元細孔構造が形成されていることが分かった。更に、X線回折による格子定数測定値から計算することにより金属酸化物の平均細孔径を求めたところ、平均細孔径は0.47nmであった。また、吸着等温線からBET等温吸着式を用いて比表面積を求めたところ、前記金属酸化物の粒子の比表面積(BET)は22m/gであった。
【0074】
(実施例2)
前記アルミクエン酸塩水溶液を調製する代わりに、0.98molのクエン酸を180mlのイオン交換水に溶解させた溶解液中に96.3gの三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物を加えて80℃の温度条件下において撹拌することで、鉄クエン酸塩アンモニウムを0.60mol/Lの濃度で含有する鉄クエン酸塩アンモニウム水溶液を調製し、更に、前記第二の混合液の代わりに、51.1mlの前記チタンクエン酸塩水溶液と11.8mlの前記鉄クエン酸塩アンモニウム水溶液とを混合した後に0.0075molの酢酸バリウムを加えて調製した混合液を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を採用して、排ガス浄化用触媒(B)を得た。このようして得られた排ガス浄化用触媒(B)は、前記金属酸化物(粒子状)にPtとPdがそれぞれ1.3wt%(Pt)、0.65wt%(Pd)の割合で担持されたものであった。
【0075】
〔金属酸化物の特性の評価〕
実施例2で排ガス浄化用触媒(B)を形成する際に得られた金属酸化物の特性を、実施例1で金属酸化物の特性を評価した方法と同様の方法を採用して評価したところ、得られた金属酸化物は、式:BaFeTi16で表され、且つ、一次元細孔構造を有するホランダイト型の結晶構造(単相)を有する金属酸化物であることが確認された。更に、このような金属酸化物は、平均細孔径が0.47nmであり、比表面積(BET)は18m/gであった。
【0076】
(実施例3)
実施例1で採用した「金属酸化物を調製する工程」と同様の方法を採用して、式:BaAl1.8Ti6.216で表されるホランダイト型の金属酸化物(粒子状)を得た後、下記排ガス浄化用触媒を調製する工程を実施して、前記金属酸化物にPtを担持して排ガス浄化用触媒(C)を得た。
【0077】
〈排ガス浄化用触媒を調製する工程〉
0.0823gのPt(NO(NHを溶解した水溶液に、前記金属酸化物を5g添加し、1時間撹拌して混合物を得た後、前記混合物に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(C)を得た。なお、このようして得られた排ガス浄化用触媒(C)は、前記金属酸化物にPtが1.0wt%の割合で担持されたものであった。
【0078】
(実施例4)
〈金属酸化物を調製する工程〉
先ず、24gの水酸化ナトリウムを250mlのイオン交換水に溶解させた水溶液を調製した後、前記水溶液中に0.00625molの三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物と20gの酸化チタン(粒子状、平均粒子径:6.8nm)を順次加えて混合液を得た。次いで、前記混合液を24時間還流した後、形成された沈殿をろ過して回収し、固形分(沈殿物)を得た。次に、得られた固形分を蒸留水で5回洗い、大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥させた。その後、乾燥した固形分を、大気中、800℃、5時間の加熱条件で焼成して、金属酸化物(粒子状)を得た。
【0079】
〈排ガス浄化用触媒を調製する工程〉
0.0823gのPt(NO(NHを溶解した水溶液中に、前記金属酸化物を5g添加し、1時間撹拌して混合物を得た後、前記混合物に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(D)を得た。なお、このようして得られた排ガス浄化用触媒(D)は、前記金属酸化物にPtが1.0wt%の割合で担持されたものであった。
【0080】
〔金属酸化物の特性の評価〕
実施例4で排ガス浄化用触媒を形成する際に得られた金属酸化物の特性を、実施例1で採用した金属酸化物の特性を評価した方法と同様の方法を採用して評価したところ、得られた金属酸化物は、式:NaFe0.2Ti7.816で表され、且つ、一次元細孔構造を有するホランダイト型の結晶構造(単相)を有する金属酸化物であることが確認された。また、このような金属酸化物は、平均細孔径が0.47nmであり、比表面積(BET)は24m/gであった。
【0081】
(実施例5)
金属酸化物を調製する工程において、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物の添加量を0.00625molから0.0125molに変更した以外は、実施例4に記載の方法と同様の方法を採用して、排ガス浄化用触媒(E)を得た。なお、このようして得られた排ガス浄化用触媒(E)は、前記金属酸化物(粒子状)にPtが1.0wt%の割合で担持されたものであった。
【0082】
〔金属酸化物の特性の評価〕
実施例5で排ガス浄化用触媒を形成する際に得られた金属酸化物の特性を、実施例1で採用した金属酸化物の特性を評価した方法と同様の方法を採用して評価したところ、得られた金属酸化物は、式:NaFe0.4Ti7.616で表され、且つ、一次元細孔構造を有するホランダイト型の結晶構造(単相)を有する金属酸化物であることが確認された。また、このような金属酸化物は、平均細孔径が0.47nmであり、比表面積(BET)は15m/gであった。
【0083】
(比較例1)
1.91gのAgMnOを320mlの蒸留水に溶解した溶解液中に、3mlの硝酸を加えた後、2.25gのMn(NOを添加し、溶解して、混合液を得た。次に、得られた混合液を120℃にて6時間熟成させて沈殿を形成せしめた。次いで、前記混合液から固形分(沈殿物)をろ過して回収し、得られた固形分を蒸留水で5回洗った。その後、前記固形分を大気中、110℃、24時間放置して乾燥させた。その後、乾燥した固形分を500℃にて4時間焼成して、金属酸化物からなる比較のための排ガス浄化用触媒(F)を得た。
【0084】
〔金属酸化物(排ガス浄化用触媒(F))の特性の評価〕
比較例1で得られた金属酸化物(排ガス浄化用触媒(F))の特性を、実施例1で採用した金属酸化物の特性を評価した方法と同様の方法を採用して評価したところ、得られた金属酸化物は、式:AgMn16で表され、且つ、一次元細孔構造を有するホランダイト型の結晶構造(単相)を有する金属酸化物であることが確認された。また、このような金属酸化物は、平均細孔径が0.46nmであり、比表面積(BET)は5m/gであった。
【0085】
(比較例2)
27.5gのMn(NOを50mlの蒸留水に溶解した第一の溶解液中に12.5mlの酢酸を加えた後、更に、16.6gのKMnOを375mlの蒸留水に溶解した第二の溶解液を添加し、混合液を得た。次いで、前記混合液を24時間還流した後、形成された沈殿をろ過して回収し、固形分(沈殿物)を得た。次に、得られた固形分を蒸留水で5回洗った。その後、前記固形分を大気中、12時間放置して乾燥させた。次いで、乾燥した固形分を500℃にて4時間焼成して、金属酸化物からなる比較のための排ガス浄化用触媒(G)を得た。
【0086】
〔金属酸化物(排ガス浄化用触媒(G))の特性の評価〕
比較例2で得られた金属酸化物(排ガス浄化用触媒(G))の特性を、実施例1で採用した金属酸化物の特性を評価した方法と同様の方法を採用して評価したところ、得られた金属酸化物は、式:KMn16で表され、且つ、一次元細孔構造を有するホランダイト型の結晶構造(単相)を有する金属酸化物であることが確認された。また、このような金属酸化物は、平均細孔径が0.46nmであり、比表面積(BET)は83m/gであった。
【0087】
(比較例3)
〈金属酸化物を調製する工程〉
比較例2で採用した金属酸化物(排ガス浄化用触媒(G))を製造する方法と同様の方法を採用して金属酸化物(KMn16)を得た。
【0088】
〈排ガス浄化用触媒を調製する工程〉
0.107gのPt(NO(NHと0.0704gのPd(NOを溶解した水溶液に、前記金属酸化物を5g加え、1時間撹拌して混合物を得た後、前記混合物に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(H)を得た。このようして得られた排ガス浄化用触媒(H)は、PtとPdがそれぞれ1.3wt%(Pt)、0.65wt%(Pd)の割合で担持されたものであった。
【0089】
(比較例4)
〈金属酸化物を調製する工程〉
比較例2で採用した金属酸化物(排ガス浄化用触媒(G))を製造する方法と同様の方法を採用して金属酸化物(KMn16)を得た。
【0090】
〈排ガス浄化用触媒を調製する工程〉
0.0082gのPt(NO(NHを溶解した水溶液に、前記金属酸化物を5g加え、1時間撹拌して混合物を得た後、前記混合物に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(I)を得た。このようして得られた排ガス浄化用触媒(H)は、Ptが1.0wt%の割合で担持されたものであった。
【0091】
(比較例5)
0.0119gのPt(NO(NHを溶解した水溶液に、0.92gの酸化アルミニウム(粒子状、平均粒子径:17μm、Rhodia社製の商品名「MI307」)と、4.95gの酸化チタン(粒子状、平均粒子径:6.8nm、石原産業社製の商品名「ST−01」)と、0.1molの酢酸バリウムとを加え、1時間撹拌した後、蒸発乾固を行って、粉末状の固形分を得た。次に、得られた固形分に対して大気中、110℃、24時間の加熱条件で乾燥処理を行い、触媒前駆体を得た。次いで、得られた触媒前駆体を、大気中、300℃、3時間の加熱条件で焼成して、排ガス浄化用触媒(J)を得た。このようにして得られた排ガス浄化用触媒(J)は、アルミナとチタニアの混合粉末からなる担体にBaとPtとが担持された触媒であった。また、排ガス浄化用触媒(J)は、前記混合粉末にPtが1.0wt%の割合で担持されたものであった。なお、排ガス浄化用触媒(J)と実施例3で得られた排ガス浄化用触媒(C)は、形態は異なるものの、構成成分の組成比は同じである。
【0092】
[排ガス浄化用触媒(A)〜(J)の特性の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒(A)〜(J)をそれぞれ用い、各触媒のCO酸化性能を測定した。このようなCO酸化性能の測定に際しては、先ず、固定床流通式反応装置を用い、排ガス浄化用触媒(1.0g)を内径15mmの反応管に充填した。次に、200℃(一定)の温度条件下、前記排ガス浄化用触媒に対して、下記表1に示す組成のリーンガスを5L/分の流量で供給し、前記排ガス浄化用触媒に接触する前のガス(入りガス:前記リーンガス)及び前記排ガス浄化用触媒に接触した後のガス(出ガス)中のCO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、定常状態における入りガス中のCO濃度と出ガス中のCO濃度とからCO浄化率を算出した。
【0093】
【表1】

【0094】
このようなCO酸化性能の測定結果(実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒(A)〜(J)のCO浄化率の結果)を、表2及び図1に示す。なお、表2及び図1中の記号(A)〜(J)は、それぞれ実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた排ガス浄化用触媒(A)〜(J)の種類を示す記号(触媒の種類を示す記号)である。
【0095】
【表2】

【0096】
表2及び図1に示す結果からも明らかなように、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜5)においてはいずれも、200℃という低温の条件下においてもCO浄化率が50.4%以上となっており、非常に高度なCO酸化性能を有することが分かった。また、本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜5)においては、PtとPdとを担持した場合(実施例1〜2)に、より高度なCO浄化性能が得られることが確認された。これに対して、AgMn16又はKMn16で表されるホランダイト型の金属酸化物をそのまま触媒として用いた場合(比較例1〜2)においては、十分なCO酸化性能は得られないことが確認された。また、Tiを必須成分としていないホランダイト型の金属酸化物(KMn16)に触媒成分を担持した比較のための排ガス浄化用触媒(比較例3〜4)においても、やはりCO酸化性能は十分なものとはならなかった。特に、Ptのみを担持した比較例4で得られた排ガス浄化用触媒に至っては、CO浄化率が2.4%と非常に低い値となっていた。このような結果から、Tiを必須成分として含有する実施例1〜5で得られたホランダイト型の金属酸化物を触媒の担体に用いることで、得られる触媒に非常に高度なCO酸化性能を発揮させることが可能となることが分かった。
【0097】
なお、比較例3〜4のための排ガス浄化用触媒においては、Pt等の担体として用いた金属酸化物が式:KMn16で表されるホランダイト型の金属酸化物であり、その結晶の基本単位中の金属元素が複数の価数を採り得るMnのみであること(結晶の基本単位が式:MnOで表される八面体のみであること)から、Mnの価数変化によって担体上に局所的な酸点を十分に発現させることができず、これにより担体に担持されたPt及び/又はPdのメタル化が十分に進行しなかったため、十分なCO酸化性能が得られなかったものと推察される。一方、実施例1〜5で得られた本発明の排ガス浄化用触媒においては、Pt等の担体として用いた金属酸化物が、その結晶の基本単位を構成する金属元素にTiとFe又はAlとを含み、異なる種類の元素により結晶が構成されたものとなっていることから、その金属酸化物中において酸化数の違い等に起因して局所的な酸点が形成され易く、これにより担体上のPt及び/又はPdの電子状態を十分に制御できる上に、一次元細孔構造に起因する粒子の物理構造からPt及び/又はPdの粒子の分散性を十分に高度に維持することができたことから、十分に高度なCO酸化性能が得られたものと推察される。
【0098】
また、実施例3で得られた排ガス浄化用触媒と、比較例5で得られた排ガス浄化用触媒とを比較すると、構成成分の組成比は同じであるが、比較例5で得られた排ガス浄化用触媒においてはCO酸化性能は十分なものとはならなかった。このような実施例3及び比較例5で得られた排ガス浄化用触媒の結果から、担体として上記一般式(1)で表されるホランダイト型の金属酸化物を利用することで、十分に高度なCO酸化性能が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、触媒成分と組み合わせて用いることにより得られる排ガス浄化用触媒に、低温条件下においてもCOを十分に酸化して浄化することができる十分に高度なCO酸化性能を発揮させることが可能な触媒担体、それを用いた十分に高度なCO酸化性能を有する排ガス浄化用触媒、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【0100】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法は、自動車のエンジン等の内燃機関から排出されるCOを含む排ガスを浄化するための触媒及びそのような排ガスを浄化するための方法等として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる触媒担体であって、
前記金属酸化物が、下記一般式(1):
Ti(8−y)16 (1)
[式(1)中、Aは酸化物中において1価又は2価の陽イオンとなる金属元素を示し、
MはTi以外の金属元素であって酸化物中において3価の陽イオンとなり得る金属元素を示し、
xは、酸化物中において前記Aが1価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦2の範囲内の数値を示し、他方、前記Aが2価の陽イオンとなる場合には不等式:0<x≦1の範囲内の数値を示し、
前記Aとして酸化物中において1価の陽イオンとなる金属元素と2価の陽イオンとなる金属元素とが共存する場合においては、1価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xと、2価の陽イオンとなる金属元素Aに関するxの値xとが不等式:0<(x+2×x)≦2に示す条件を満たし、
yは、不等式:0<y≦2の範囲内の数値を示す。]
で表され且つ一次元細孔構造を有するクリプトメラングループに属する金属酸化物であることを特徴とする触媒担体。
【請求項2】
前記金属酸化物が、ホランダイト型の金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
前記金属元素Aが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒担体。
【請求項4】
前記金属元素MがSc、Y、V、Nb、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ga、Al、In及びLaからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
【請求項5】
前記金属元素AがBa及びNaからなる群から選択される少なくとも一種であり、且つ、前記金属元素MがAl及びFeからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の触媒担体と、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ag、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属の粒子及び/又は該元素を含む金属酸化物の粒子からなる触媒成分の粒子と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記触媒成分の粒子が、前記触媒担体に担持されていることを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記触媒成分の粒子中に含まれる前記元素がV、Cu、Pt、Au、Pd、Rh、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項6又は7のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒に一酸化炭素を含む排ガスを接触せしめて、前記一酸化炭素を酸化して浄化することを特徴とする排ガス浄化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−196653(P2012−196653A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63959(P2011−63959)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】