説明

触媒活性単位を固定化するための支持体

本発明の炭素ベースの多孔性支持体が、本質的に互いに積み重ねられた少なくとも2つの多孔性層と、それらの間に形成され、液体が貫流することを可能にする中間の空隙、又は、液体が貫流することを可能にする中間の空隙が材料層の少なくとも2つの重ね合わされたセグメントの間に形成されるように、その形状を維持してそれ自体に巻き上げられるか又は配置される少なくとも1つの多孔性層とからなる層状構造を有する。本発明はまた、支持体上に実質的に固定化されて化学的及び/又は生物学的反応に対して触媒活性を示す単位、前記支持体を含有する触媒ユニット、及び生物学的及び化学反応のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒活性単位を固定化するための炭素ベースの多孔体の使用に関する。特に、本発明は、本質的に互いに積み重ねて配置され、それらの間に貫流可能な空隙が存在する少なくとも2つの多孔性材料層、又は互いに積み重ねられている材料層の少なくとも2つの部分の間に貫流可能な空隙が存在するように、その形状を維持したままそれ自体に巻き上げられるか又は配置される少なくとも1つの多孔性材料層、を含む層状構造を有する炭素ベースの多孔性支持体、及び化学的及び/又は生物学的反応のための、支持体上に本質的に固定化される触媒活性単位、これらの支持体を含む触媒ユニット及び反応器、並びに化学的及び生物学的反応においてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんど全ての化学的及び生物学的反応が、触媒を用いて産業規模で行なわれている。触媒は活性化エネルギーを低下させ、反応の選択的な実施を可能にし、それによってプロセスの経済性を改良する。単純な有機金属錯体から複雑に形成される酵素まで、あらゆる種類の化合物が、触媒として利用される。
【0003】
産業規模の反応は高処理量を必要とし、経済的問題を伴う。触媒を生成物混合物からより良く分離できるように、又はそれらを次に再利用できるように、それらは固体基材上に固定化される。触媒作用は、反応媒体と触媒を配合される基材との間の境界において生じる。又、「触媒単位(catalytic units)」の固定化により、触媒を連続的に添加しなくても連続プロセス処理が可能となる。
【0004】
さらに、固定化「触媒単位」による方法は、触媒が高濃度になり、プロセスの時間がかなり短縮されうることに加え、反応速度が比較的高くなり、及びシステムの寸法を小さくできる。固定化酵素により、例えば発酵プロセスでは、遊離酵素よりも反応速度が速くなる。
【0005】
国際公開第00/06711号パンフレットにおいて、とりわけ、酵素をケイソウ土上に支持材料として固定化することが記載されている。
【0006】
この前記方法は、特定の不利点がある。支持体は、例えば、いかなる所望の方法でも改良できず、又は支持材料の適合性が不十分であり、又は固定化プロセスの損失が高い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上記の不利な点を克服する固定化された「触媒ユニット(catalyst units)」を提供することである。好ましくは、これらの固定化された「触媒ユニット」は、産業規模での反応に適する。
【0008】
上記の目的は、支持材料として請求項1に記載の炭素ベースの多孔体の使用によって解決する。
【0009】
本発明は、化学的及び/又は生物学的反応のための触媒活性単位を固定化するための炭素ベースの多孔体の使用に関する。特に、本発明の本質は、独立クレームにおいて規定されるような支持体である。従属クレームは、好ましい実施態様を規定する。
【0010】
本発明はさらに、炭素ベースの多孔性支持体と触媒単位とを含む触媒ユニット並びに反応器に関する。これに関する好ましい実施態様を従属クレームで規定する。さらに、本発明は、本発明の1つ以上の触媒ユニットを含む化学的又は生物学的反応のための反応器を含む。これに関する従属クレームは、好ましい実施態様を示す。
【0011】
定義
本明細書における用語「触媒単位」は、生細胞若しくは生物又は増殖可能な細胞及び生物を除き、触媒活性物質、特に金属、金属化合物、合金、有機金属錯体及び酵素を含む。
【0012】
用語「炭素ベースの多孔性支持体」は、カーバイドを含有する炭素含有材料を含み、好ましくは本質的に炭素を含み、平均細孔が特定のサイズである多孔体をいう。本発明によれば、これらの多孔体は触媒単位の支持材料として機能する。
【0013】
用語「半透性分離層」は、好ましくは多孔体と直接接触し、触媒単位に不透過性であり各反応生成物及びエダクト並びに反応媒体に透過性であるか、又は触媒単位及び生成物に不透過性であり各エダクト及び反応媒体に透過性である層をいう。
【0014】
用語「触媒ユニット」は、触媒単位を含み、その外面が半透性膜と直接接触しており、場合により、封止される外面からは離れているか、又はハウジング内に配置される多孔性支持体をいう。
【0015】
用語「化学反応」は、生物若しくは生細胞又は増殖可能な生物及び細胞を利用しない全ての反応を述べる。
【0016】
用語「生物学的反応」は、生細胞若しくは生物又は増殖可能な細胞及び生物を除いた、酵素を利用する反応を述べる。
【0017】
用語「反応媒体」は、いかなる流体、気体又は液体、例えば水、有機溶剤、無機溶剤、超臨界ガス、及び通常のキャリアガスをも含む。
【0018】
用語「エダクト」は、化学的又は生物学的反応の出発原料、又は、特に生物学的反応の場合は栄養素、酸素及び、場合により、二酸化炭素を含む。
【0019】
用語「生成物」は、化学反応の反応生成物もしくは生物学的又は酵素反応の場合は反応生成物又は変換生成物に関する。
【0020】
用語「反応混合物」は、反応媒体と、場合によりエダクトと、場合により生成物との混合物を含む。
【0021】
支持体及び触媒ユニット
本発明により、炭素ベースの多孔性支持体は、触媒単位の固定化のための支持材料として用いられる。本発明の触媒ユニットは、これらの多孔性支持体の外面を各々少なくとも部分的に封止することによるか、又はそれらを適当なハウジング又は容器内に配置することによって得られる。そのように、本発明の触媒ユニットは、場合により、カートリッジシステム内の交換可能なカートリッジ又は適当な反応器として有用である。
【0022】
炭素ベースの多孔性支持体は寸法安定性であり、例えば細孔サイズ、内部構造、及び外形等の構造について極めて多様に製造しうる。これらの性質の結果、これら炭素ベースの多孔性支持体を多用途に調整できる。その最も一般的な態様において、本発明は、それゆえ、上に定義した触媒単位の固定化のための炭素ベースの多孔性支持体の使用に関する。
【0023】
本発明の範囲内で、「炭素をベースとした(carbon-based)」又は「炭素ベースの(on the basis of carbon)」により、金属により改質がなされる前の炭素含有量が1重量%より多い、特に50重量%より多い、好ましくは60重量%より多い、特に好ましくは70重量%より多い、例えば80重量%より多い、最も好ましくは90重量%より多い全ての材料が設計される。特に好ましい実施態様において、本発明の炭素含有支持体は、炭素を95〜100重量%、特に95〜99重量%で含有する。
【0024】
本発明の多孔性支持体は好ましくは、活性化炭素、焼結活性化炭素、非晶質、ガラス質、結晶質、又は半結晶質炭素、黒鉛、炭素含有材料熱分解によって又は炭化によって製造された炭素含有材料、炭素繊維、もしくは金属又は非金属のカーバイド、カルボニトリド、オキシカーバイド又はオキシカルボニトリド、並びにそれらの混合物から本質的に成る。好ましくは、多孔体は、非晶質及び/又は熱分解炭素を含む。
【0025】
多孔性支持体は場合により、特に好ましくは、無酸素大気中高温下で前述の炭素含有材料に変換される出発原料の熱分解/炭化によって製造される。本発明の支持体への炭化に適する出発原料は、例えばポリマー、ポリマーフィルム、紙、含浸又はコーティング紙、織布、不織布、コーティングセラミックディスク、脱脂綿、綿棒、綿ペレット、セルロース材料、又は例えば、豆果例えば、エンドウ豆、ヒラマメ、豆等、同様にナッツ、乾燥果等、又はそれらをベースとして製造された未加工体である。
【0026】
特に好ましい実施態様において、多孔体は、さらに、有機及び無機物質又は化合物から選択された他の物質、ドープ剤、添加剤、及び助触媒を含みうる。鉄、コバルト、銅、亜鉛、マンガン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、硫黄、又はリンなどの物質又は化合物が好ましい。
【0027】
酵素又は生物学的反応には、炭水化物、脂質、プリン、ピロミジン、ピリミジン、ビタミン、タンパク質、成長因子、アミノ酸、及び/又は硫黄もしくは窒素源による多孔体の含浸又はコーティングがさらに適する。
【0028】
多孔体の平均細孔サイズは好ましくは、2オングストローム〜1ミリメートル、好ましくは1ナノメートル〜400マイクロメートル、特に好ましくは10ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0029】
本発明の好ましい多孔体は有利には、本質的に炭素を含み、熱分解によって製造された材料である。
【0030】
炭素ベースの支持体が、
i)本質的に互いに積み重ねて配置されて互いに接続され、それらの間に貫流可能な空隙が存在する少なくとも2つの多孔性材料層、又は
ii)互いに積み重ねられている材料層の少なくとも2つの部分の間に貫流可能な空隙が存在するように、その形状を維持したままそれ自体に巻き上げられるか又は配置される少なくとも1つの多孔性材料層、を含む層状構造を有することが好ましい。
【0031】
支持体が、互いに積み重ねて配置され、それらの各々の間に貫流可能な中間部分又は空隙が配置される多数の材料層を含む場合は、特に好ましい。各空隙は好ましくは、溝状構造物、例えば本質的に互いに平行に、交差して、又は網目状に延びる多数の溝を含む。溝状構造物は例えば、支持材料層上に配置されてそれらを離隔する多数の間隔要素により確保されてもよい。溝又は溝状構造物は、平均溝直径が好ましくは、約1nm〜約1m、特に約1nm〜約10cm、好ましくは10nm〜10mm、特に好ましくは50nm〜1mmの範囲である。2つの隣接した材料層の間の距離は各々、好ましくは本質的に同一の寸法を示すが、しかしながら、異なった距離でもよく、場合によってはさらに好ましい。
【0032】
本発明の支持体は、特に好ましくは、第1及び第2の材料層の間の各々の溝、及び前記第2の材料層と第3の材料層との間の隣接した層の溝が本質的に平行な方向に配置されて、支持体全体が、好ましい方向に貫流可能な溝層を示すように構成される。あるいは、支持体はまた、第1及び第2の材料層の間の溝が各々、前記第2の材料層と第3の材料層との間の隣接した層の溝に対して0°より大きく90°まで、好ましくは30°〜90°、特に好ましくは45°〜90°の角度で角度の偏差であるように配置され、支持体が互いに交互に偏角される溝層を示すように設計されてもよい。
【0033】
本発明の支持体の溝又は溝状構造物は溝の両端の端部で本質的に開いており、本発明の支持体全体が、多孔性材料層と中間の貫流可能な空隙、好ましくは溝層から交互に層状に構成された一種の「サンドイッチ構造」である。本発明により、溝若しくは溝状構造物がその長手方向に線状に延びてもよく、又は例えば波状、蛇行状、若しくはジグザグ状でもよく、それにより、2つの材料層の間の空隙内に互いに平行又は交差して延びてもよい。
【0034】
本発明の支持体の外形及び寸法を各用途の目的に従って選択し、それに適合させうる。支持体は、例えば、細長い形状、例えば円柱、多角形柱状、例えば三角柱状又はインゴット形、又はプレート状、又は多角形状、例えば正方形、直方体状、四面体、角錐、八面体、十二面体、二十面体、斜方六面体、角柱状、又は球形、例えばボール形、中空ボール形、球形又は円柱レンズ形、又はディスク形又はリング形から選択される外形を有しうる。
【0035】
本発明の支持体は、意図する用途に基づいて適当な寸法に作製でき、例えば、支持体体積が、1mm3から、好ましくは約10cm3から1m3の範囲である。これが望ましい場合、支持体はまた、もっとかなり大きい寸法に作製されてもよく、又はさらに小さいマイクロスケールの寸法に作製でき、本発明は、支持体の特定の寸法に限定されない。支持体は、約1nm〜1,000m、好ましくは約0.5cm〜50m、特に好ましくは約1cm〜5mの範囲の最長外寸法でもよい。
【0036】
好ましい実施態様において、支持体はディスク形又は円柱で、直径が1nm〜1,000m、好ましくは約0.5cm〜50m、特に好ましくは約1cm〜5mの範囲である。
【0037】
このために、例えば波形材料層が、円柱体に螺旋状に巻き上げられてもよく;このような支持体は、場合により波形、エンボス加工、あるいは他の構造化された材料層が、その形状を維持したまま、互いに積み重ねられている材料層の少なくとも2つの部分の間に貫流可能な空隙が存在し、好ましくは多数の溝状構造物又は溝を有するように螺旋状に配置されるように設計される。
【0038】
又、互いに積み重ねられた状態であるいくつかの材料層はまた、巻き上げによりこのような円柱支持体に形成されてもよい。
【0039】
本発明の支持体の多孔性材料層及び/又は材料層の間の溝壁又は間隔要素は、約1nm〜10cm、好ましくは10nm〜10mm、特に好ましくは50nm〜1mmの範囲の平均細孔サイズを有してもよい。多孔性材料層は場合により半透性であり、概して、3オングストローム〜10cm、好ましくは1nm〜100μm、最も好ましくは10nm〜10μmの厚さである。多孔性の、場合により半透性の材料層の平均細孔直径は、0.1オングストローム〜1mm、好ましくは1オングストローム〜100μm、最も好ましくは3オングストローム〜10μmである。
【0040】
支持体上に固定又は本質的に固定化された触媒単位は、生細胞若しくは生物又は増殖可能な細胞及び生物を除き、触媒活性物質、特に金属、金属化合物、合金、有機金属錯体、及び酵素を含む。特に好ましいのは、元素周期系の主族及び副族金属から選択された触媒活性金属、合金及び金属化合物、特に遷移金属、例えばSc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、並びにランタニド及びアクチニド、それらの合金及び化合物、特に有機金属錯化合物である。好ましい主族金属は、Ge、In、Tl、Ge、Sn、Pb及びビスマス、それらの合金及び化合物、特に有機金属錯化合物である。
【0041】
これらは、本質的に周知の方法により、例えば金属又は金属化合物の蒸気の真空蒸着、スパッタリング、適当な溶剤又は溶剤混合物に溶かした金属、合金、又は金属化合物の溶液、エマルション、又は懸濁液による噴霧又は浸漬方法によって支持体に適用しうる。
【0042】
図1は、本発明の支持体の層状に構成された実施態様を示す。斜視図の図1Aに示された支持体1は、互いに積み重ねて交互に配置されるいくつかの材料層2、3を含み、各々の場合、第1の材料層2が、その上に配置され、場合により構造化された、例えば波形又は折り畳まれた材料層3と接続され、材料層2と3との間に、多数の平行な貫流可能な溝4を含む空隙がある。最も単純な場合、図1Aの支持体は、波形厚紙積層体と考えられてもよい。構造化材料層が角度の偏差であるように、例えば90°で交互に配置される場合、溝4、4’において交差して貫流されうる図lBに示されるような支持体が得られる。この支持体は、その前面で本質的に開かれ、交差オフセットの波形構造層のため、互いにかみ合う支持体の可能な貫流方向が2つある。図1Cに示されるように、本発明の構造化材料層の他の選択肢として、2つ以上の本質的に平らな材料層2、3もまた、互いに積み重ねて配置されてもよく、その2つが各々、間隔要素5によって接続され、材料層2、3の空間に多数の貫流可能な溝が存在する。
【0043】
図2は、本発明の支持体のさらに別の実施態様を示す。図2Aの円柱支持体6の平面図は、螺旋状に巻き上げられた波形材料層7を示す。捲回により、多数の領域が得られ、それにより各場合に、次の捲回で材料層の部分8の上に材料層7のさらに別の部分8’が置かれ、部分8と8’との間に間隙溝9が存在する。図2Bに見られるように、支持体6が、波状構造であるシート材料の捲回又は巻き上げにより円柱状に構成される。各支持体が、例えば波形厚紙の巻き上げにより円柱成形品に巻き上げられうる。各波形厚紙材料の炭化により、円柱の高さ方向に多数の溝9が散在する円柱成形品6が得られうる。ゆえに、本質的に一方向に貫流可能であり円形面を有する円柱支持体7が得られる(図2A)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の支持体の好ましい実施態様において、支持体の材料層は一方の面又は両面で、好ましくは両面で構造化される。材料層の好ましい構造は、材料層の波形であるか又は材料層の全領域にわたって本質的に互いに等距離に配置されるグルーブ又は溝状深部を有する型押しされるか又は他の方法で導入されたグルーブパターンの形状である。グルーブパターンは、材料層の外縁に対して平行に延びてもよく、それに対して任意の角度で配置されてもよく、ジグザグ状パターンか、又は波状であってもよい。さらに、材料層は、両面で構造化される場合、両面で同一のグルーブパターンであるか、又は異なったグルーブパターンでもよい。多孔性材料層が両面で均一に相補的に構造化され、材料層の一方の面のグルーブ深部が材料層の他方の面の輪郭の相応する隆起部分に相応することが好ましい。支持体内の材料層は好ましくは、2つの隣接した材料層のグルーブパターンが互いに本質的に平行に延びるように配置される。
【0045】
さらに、2つの隣接した材料層のグルーブパターン又は波形が斜めに交差し、材料層を互いに積み重ねて配置させて、隣接した材料層のグルーブ構造物の交わる隆起縁の位置で隣接した材料層間に多数の接点が得られるように材料層を配置しうる。このような、交わるグルーブパターンの接点に対応する多くの点での接続の結果、支持体の機械的安定性はかなり増大する。特に、2つの材料層を互いに積み重ねて置くことで、各々2つの隣接した材料層の間の中間領域に、溝又は網目状構造が、多数の溝又はチューブに対応し、できる限り低い支持体において適当な流れ抵抗を確実にするようにグルーブ構造物が選択される。当業者であれば、適当なグルーブパターンを特定の寸法に作製及び選択できるであろう。エンボス加工された材料層の通常のグルーブ構造物は、本発明の支持体において、空隙で溝状又はチューブ状構造物となり、その断面積を各々の使用目的に適合させうる。
【0046】
グルーブ又は溝エンボスの別の選択肢として、材料層はまた、波形に予備成形されるか、又はジグザグハーモニカ状に折られうる。いくつかのこのような材料層を互いに積み重ねて平らに配置することにより、このように、支持体の前平面図において、材料層の平面の方向に溝構造物として続く櫛状構造物が得られる。このような予備成形された材料層が巻き上げられるとき、円柱支持体が得られ、その断面が、円柱の長手方向の寸法に沿って延びる多数の螺旋状に配置された溝を示す。このような円柱/ディスクは、両方の端面の断面積について本質的に開放状態である。
【0047】
さらに、代わりに又は付加的に間隔要素が材料層の間に配置又は設けられてもよい。当該間隔要素により、溝が延びる十分に大きな空隙が材料層の間に確保され、モジュールの好適な低い流れ抵抗が確実となる。当該間隔要素は、中間層の形の多孔性の開放細孔シート材料、網目構造物であるか、又は同じく材料層の端縁又は中央に配置されて材料層の間の特定の最小距離を確実にするスペーサーであってもよい。
【0048】
本発明の支持体は、中間層又は、溝か層の両端の端面において本質的に開放状態である溝若しくは溝層を示す。本発明の好ましい支持体は、材料層の前面又は縁面もしくは溝の入口又は出口において流体に対して閉鎖又は封止されない。
【0049】
上述のように、適宜採寸されたグルーブのエンボス、折れたたみ、又は波形及び特定の角度で2つの隣接した材料層のグルーブ、折れたたみ、又は波形パターンの交差により、隣接した材料層の間の多数の接点が構造物の交わる隆起縁の位置で得られて、材料層の相互の距離が確実となるならば、特に好ましく、それにより、材料層の深部に沿って多数の溝状構造物の形の空隙が確実に形成される。同じく、これはまた、材料層の広範囲で折り目又は波形が交互に異なるように繰り返すことにより達成されてもよい。
【0050】
さらに、材料層は、異なった高さの単一グルーブ縁の隆起をもたらす、材料層上に異なった深さのグルーブエンボス又は折れたたみ又は波形を交互に設けることによって離隔されてもよく、これにより、全体にわたりグルーブ、波形、又は折れたたみ構造物の交わる縁の位置における隣接した材料層の間の接点の数が、存在するグルーブ縁の総数に比べて適当に減少する。これらの位置で材料層を接続することによる、支持体の十分な強度が確実に得られ、好ましい流れ抵抗が確実に得られる。
【0051】
繊維、紙、布、又はポリマー材料ベースの、場合により構造化、エンボス加工、予備処理、及び折畳みシート材料を炭化することにより形成されるモジュール構造物を多孔性支持体として用いることが特に好ましい。本発明の当該支持体は、炭素含有出発原料の熱分解により製造される、炭素をベースとした材料、場合により、また炭素複合材料を含み、本質的に、一種の炭素セラミックス又は炭素をベースとしたセラミックスに相当する。当該材料の製造は、例えば、紙様の出発原料から出発し、高温での熱分解又は炭化により行いうる。当該製造方法は、特にまた炭素複合材料については、国際特許出願国際公開第01/80981号パンフレット、特に14頁10行目〜18頁14行目に記載されており現在有用である。本発明の炭素をベースとした支持体はさらに、国際特許出願国際公開第02/32558号パンフレット、特に6頁5行目〜24頁9行目により製造されうる。これらの国際出願の開示内容を引用によって本願明細書に完全に組み入れるものとする。
【0052】
その開示内容が参照により本願明細書に完全に組み入れられるDE10322182号明細書に記載された、適当に予備製造されたポリマーフィルム又は三次元配置され又は折畳まれたポリマーフィルムパケットの熱分解によっても、本発明の支持体は得られうる。
【0053】
上記特許出願に記載された熱分解方法により、本発明の支持体の特に好ましい実施態様はまた、特に、炭化する前に適切に互いに積み重ねて固定されている波形厚紙、波形厚紙層の炭化によって作製されてもよく、これにより、貫流可能な開放体が得られる。
【0054】
さらに、円柱形の好ましい支持体はまた、円柱体、チューブ、又は棒に、平行又は交差流状に配置される紙又はポリマーフィルム層又は積層体を巻き上げ又は捲回し、さらに上記の最新技術の方法によりそれらを熱分解して得られる。最も単純な場合、これらの「捲回体」は、この層状前駆物質の巻き上げにより円柱に捲回され、次いで捲回された形状で炭化されるグルーブ形成、エンボス加工、折畳み、又は波形の多孔性材料層を含む。これにより得られた円柱支持体は、断面が最も低い流れ抵抗で流れを受ける表面として、その捲回部の間に空隙又は溝が本質的に円柱の高さの方向に延びる断面において螺旋状に又は巻貝状に巻き上げられた多孔性材料層を含む。同様に、互いに積み重ねられている2つ以上の材料層前駆物質を巻き上げ、次いで支持体として炭化しうる。以下の実施例1及び上の図2は、このような円柱成形品を記載する。さらに、捲回体は特に好ましくは、交互に互いに積み重ねられている波形又は平滑な材料の少なくとも2つの層から製造され、巻き上げ時に起こりうる波形相互への滑りを防ぐ。
【0055】
本発明の支持体は、場合により、物理的及び/又は化学生物学的性質を所期の用途に適合させるために改質しうる。本発明の支持体は、例えばフッ素処理、パリレン化(parylenization)により、支持体を付着性促進物質、栄養素媒体、ポリマー等でコーティング又は含浸することにより、その内面及び/又は外面で少なくとも部分的に親水性、疎水性、親油性、又は疎油性に改質されてもよい。
【0056】
多孔性支持体は、モジュール構造物を有する場合は特に好ましく、その開示内容を引用によって本出願に組み入れる国際公開第02/32558号パンフレットに記載されるように、例えば、紙、布、又はポリマーフィルムベースの対応するエンボス加工及び折畳みシート材料の炭化によって形成される。
【0057】
本発明の好ましい実施態様において、炭素ベースの多孔体の外面は、触媒単位及び反応生成物に対して本質的に不透過性であり、反応媒体並びに反応エダクトに対して本質的に透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、残りの外面が存在する場合、封止された外面からは離れている。
【0058】
好ましい実施態様は、半透性分離層及び封止の結果、触媒単位及び反応生成物がもはや触媒ユニットから離れられないが、半透性分離層を介したエダクト及び反応媒体について物質移動が可能となる利点がある。それにより、触媒単位は反応エダクトを提供されるが、生成物は保持され、後の運転工程において触媒ユニットから分離され得る。さらに、触媒単位は、排出及び、例えば機械的負荷のような有害環境の影響から保護される。
【0059】
本発明の本実施態様は、異なる生成物を混合させず、反応媒体と反応エダクトとを含む反応混合物に、異なる触媒単位を含むいくつかの触媒ユニットを浸漬しうる。この実施態様は、同一栄養溶液中に豊富な異なる酵素を使用する場合に特に有利である。異なる酵素が配合された当該触媒ユニットは、例えば、活性剤の製造時に単一栄養媒体に浸漬され、特定時間経過後に栄養媒体から取得され、活性剤の除去のため開放され得る。触媒ユニットは場合により、活性剤の除去のために破壊される必要があるか、可逆的に開閉するように可設計されてもよい。好ましくは、触媒ユニットは可逆的に開閉可能である。
【0060】
例えば抽出による活性剤除去後に、触媒ユニットを清浄し、滅菌し、再利用してもよい。
【0061】
本発明の別の実施態様において、炭素ベースの多孔体の外面は、触媒単位に対して本質的に不透過性であり反応媒体並びに反応エダクト及び反応生成物に対して本質的に透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、残りの外面が存在する場合、封止された外面からは離れている。
【0062】
別の実施態様は、半透性分離層及び封止の結果、触媒単位はもはや支持材料を離れることはできないが、半透性分離層により物質移動ができるという利点がある。それにより、触媒単位に反応エダクトを提供し、反応生成物を連続的に回収できるが、しかしながら、触媒単位は、排出及び有害な環境的影響の可能性、例えば機械的負荷から保護される。
【0063】
通常、反応エダクト及び反応生成物は各々、触媒ユニットの内部(場合により存在する半透性分離層の内側)と外部空隙(場合により存在する半透性分離層の外側)との間に場合により存在する半透性分離層を介して増加する濃度勾配の結果、触媒ユニットの内部又は外部空隙に拡散する。拡散路は、触媒ユニットの外面又は場合により存在する半透性分離層の上の層状境界フィルム及び場合により存在する半透性分離層からなる。拡散により多孔体内にさらにまた物質輸送が起こる。
【0064】
内部と外部空隙の間の濃度勾配は好ましくは、外部空隙の対流による連続的なエダクトの供給及び場合により生成物の回収により維持される。当業者は、Re数の増加による乱流により、触媒ユニットの外面の層状境界フィルムが薄くなり、かつ物質輸送が速くなることを理解する。
【0065】
半透性分離層は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリルコポリマー、セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチラート、セルロースニトレート、ビスコース、ポリエーテルイミド、ポリ(オクチルメチルシラン)、ポリビニリデンクロリド、ポリアミド、ポリ尿素、ポリフラン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はそれらのコポリマー等からなる群から選択されるポリマー膜であってもよい。
【0066】
半透性分離層は好ましくは、炭素繊維、活性化炭素、熱分解炭素、単一壁又は多壁炭素ナノチューブ、炭素分子ふるい、及び特にCVD又はPVDによって堆積された炭素含有材料からなる。
【0067】
さらに、半透性分離層は、ガラス、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、ケイ酸ホウ素、SiC、窒化チタン、及びそれらの組合せ等からなる群からの材料から選択されたセラミック膜であってもよい。
【0068】
好ましくは、半透性分離層と接触していない炭素ベースの多孔性支持体の外面は、本発明により封止される。封止は、不透過性分離層で行なわれうる。この不透過性分離層は、半透性分離層と同じ材料を含んでもよく、細孔サイズだけ半透性分離層と異なってもよい。あるいは、半透性膜を介した物質移動を除き、多孔体の内部と外部空隙の間の物質移動が本質的に確実に生じないいかなる手段を封止に用いてもよい。封止は可逆的であるか又は不可逆的であってもよい。封止は好ましくは不可逆的である。本明細書の不可逆的とは、例えば生成物の除去のために触媒ユニットが破壊される必要があることを意味する。
【0069】
多孔体の直径は、好ましくは、1mまで、好ましくは50cmまで、最も好ましくは10cmまでである。いくつかの用途については、多孔体の内部空隙内の拡散路をできるだけ短く保持するために直径を小さくすることが有利であることを当業者は理解する。他の用途については、より大きな直径を選択することが有利な場合がある。
【0070】
炭素ベースの多孔体は、焼結材料から成形品を製造する公知の方法によりいかなる形で製造されてもよい。本発明の好ましい実施態様において、多孔体は、熱分解性有機材料から製造される。
【0071】
次に、触媒活性単位を導入する前又は後に、本発明の多孔体は場合により、外面に適当な半透性分離層が供され、場合により封止される。炭素繊維、活性化炭素、熱分解炭素、単一壁又は多壁炭素ナノチューブ、炭素分子ふるい、及び特にCVD又はPVDにより堆積された炭素含有材料を含む半透性分離層が特に好ましい。
【0072】
本発明の好ましい実施態様において、半透性分離層を含む多孔体は、一工程で製造される。このような多孔体の製造の詳細な説明は、DE10335131号明細書及び国際特許出願第PCT/EP04/00077号に与えられる。これらの出願の内容は引用により明確に組み入れられる。
【0073】
触媒ユニットは好ましくは、以下の工程を含む本発明の方法により製造される。すなわち、
a)外面が半透性分離層と場合により直接接触する、上に定義したような炭素ベースの多孔性支持体を提供する工程と、
b)触媒単位を多孔体に含有させるためにこの多孔体を触媒単位を含む溶液、エマルション、又は懸濁液と接触させる工程と、
c)溶剤、エマルション、又は懸濁液を除去する工程と、
d)場合により、半透性分離層.と接触していない多孔体の残りの外面に付加的な半透性分離層を適用するか又は封止する工程。
【0074】
前記多孔体は好ましくは、触媒単位が多孔体中に拡散してそれに付着できるように、1秒〜90日までの期間、このような溶液、エマルション又は懸濁液に浸漬する。
【0075】
このように製造された触媒単位、特に金属触媒を含む多孔体は、配合された多孔体の全重量に基づき、触媒単位10-5重量%〜99重量%を含んでもよい。
【0076】
本発明の好ましい実施態様において、炭素ベースの多孔体の外面が触媒単位及び反応エダクトに対して本質的に不透過性であり反応媒体及び反応生成物に対して本質的に透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、残りの外面が存在する場合、封止された外面からは離れている。封止は好ましくは可逆的である。反応後に生成物を除去するためにこのような触媒ユニットを開放できる。生成物の除去後に、これらの触媒ユニットを清浄し、場合により滅菌し、上記方法のために再利用できる。
【0077】
本発明の触媒ユニットを含む反応器
本発明の触媒ユニットは、化学及び/又は生物的反応の反応器中で用いられる。これらの反応器は連続又は回分式に運転しうる。本発明の触媒ユニットは、半透性分離層を含みうる。半透性分離層がない触媒単位は、容器又はハウジング内、好ましくは半透性分離層を含む反応器内に設けられうる。この場合、容器/ハウジングは好ましくは、反応器内の反応混合物と容器の内部との間の物質移動が半透性分離層により制御されるよう設計される。半透性分離層は、多孔体の外面と接触する半透性分離層と同じ分離特性を有しうる。
【0078】
エダクト及び反応媒体に対しての物質移動のみ可能な半透性分離層を含む触媒ユニット又は半透性分離層を含む容器内に配置される触媒ユニットの使用は、回分式運転撹拌型タンク反応器が好ましい。これらの撹拌型タンク反応器は撹拌装置を備え、場合により連続エダクト添加装置を備える。触媒ユニットは、場合により半透性分離層を有する容器内の反応媒体及びエダクトを含む反応混合物に場合により浸漬する。比較的小さい触媒ユニットを用いる場合、それらは好ましくは、容器内の反応混合物に浸漬する。容器は、場合により半透性分離層により反応混合物と接触できるが、反応器内の触媒ユニットが制御されずに分散されるのを防ぐ。
【0079】
反応空隙内の流れは好ましくは乱流であり、層状境界フィルムは好ましくはできる限り薄い。勾配の維持には十分な対流が必要である。エダクトは常に、十分量添加する必要がある。当業者は、完全な混合及び十分な対流をもたらす処置が本発明に適することを理解するであろう。
【0080】
当業者は、乱流の増大(Re数の増加)に伴い、拡散路の縮小により物質移動が速くなることを理解する。拡散路が短縮し、濃度勾配が大きくなるにつれて、内部と外部の空間の物質移動が速くなることを理解する。当業者は、多くの反応の速さが、反応速度ではなく物質移動により決定され、その結果、変換率が物質輸送に直接依存することを理解する。特別な場合のみ、反応速度自体が物質輸送より遅く、反応速度は物質移動ではなく、実際の反応により制限される。
【0081】
あるいは、連続プロセス処理を用いうる。連続プロセス処理は、エダクトを連続的に供給でき、生成物を連続的に回収できるという利点がある。この場合、上述のように、触媒ユニットの内部と外部の空間の濃度勾配を特に良好に維持できる。半透性分離層がないか又はエダクト及び生成物を移動させる半透性分離層がある触媒ユニットをこの実施態様に用いるのが好ましい。半透性分離層を有する触媒ユニットの代替物として、半透性分離層がなく、半透性分離層がある容器内の反応器中に導入される触媒ユニットを用いうる。
【0082】
好ましい反応器は、連続運転撹拌型タンク反応器、管形反応器、及び流動床反応器である。
【0083】
連続運転撹拌型タンク反応器は、エダクト/反応媒体混合物の入口及び主生成物/反応媒体混合物の出口、並びに撹拌装置を備える。撹拌装置は触媒ユニットができる限り周流されるように配置される。流れは好ましくは乱流で、層状境界層はなるべく薄いのが好ましい。容器を使用しない好ましい実施態様では、触媒ユニット自体が流れを良好に促すように設計される。
【0084】
反応器保持時間は反応に従い変化し、反応速度に依存する。当業者は、各反応に従い保持時間を調節するであろう。
【0085】
エダクト流は好ましくは再循環されてもよく、適当な測定用及び制御用装置が、例えば温度、pH値、栄養素又はエダクト濃度を制御するために設けられる。生成物は、循環流から連続的に又は不連続に回収しうる。
【0086】
本発明の触媒ユニットは、撹拌型反応器内に完全に固定され、反応媒体中にゆるやかに浮遊しても、又は反応媒体に浸漬された多孔性容器内に配置されてもよい。多孔体が反応媒体中に自由に浮遊する場合、それらが撹拌型反応器を出られないことが反応器出口で確認される必要がある。例えば、ふるいは出口に取り付けられうる。本発明の触媒ユニットは好ましくは、場合により半透性分離層を設けられる多孔性容器内の反応混合物に浸漬される。この実施態様は、撹拌型反応器が他の反応に必要な場合又は代用品が必要な場合、触媒ユニットを容易に除去できるという利点がさらにある。
【0087】
本発明の他の実施態様において、反応器は管形反応器として設計される。好ましくは、細長い触媒ユニットがこの実施態様において用いられる。これらの触媒ユニットは自由に配置されるか、又は管形反応器内の容器内に集束される。管形反応器の一方の端から、エダクト/反応媒体混合物が導入され、管形反応器の他方の端で、主生成物/反応媒体混合物が回収される。反応混合物が管形反応器を貫流する間、エダクトが、多孔性成形品中へ拡散される。そこで反応が生じ、引き続き、生成物が多孔体から反応媒体に戻って拡散する。管形反応器の長さ、並びに反応媒体の流速、及びそれに対応した保持時間は、行う反応に従い当業者により調節されるだろう。当業者は、管形反応器が、乱流を起こすために流れ撹乱器(flow perturbers)をさらに備えうることを理解するだろう。連続運転撹拌型反応器について上記したように、できる限り大きいRe数である流れが、層状境界層をできる限り小さく保ち、かつ拡散路を狭めるために望ましい。流れディスターバー(flow disturbers)は場合により、特殊形状の多孔性成形品の形で存在してもよい。あるいは、流れディスターバーとなる他の成形品が導入されてもよい。さらに別の実施態様において、反応器が流動床反応器として設計される。適当な形状及びサイズの多孔体を用いることにより通常の流動床反応器を用いてもよい。寸法及び反応器の条件は、行なう反応に従い当業者により調節されるだろう。
【0088】
当業者は、上記の反応器の基本形のほかに、本発明の精神から逸脱することなく、改良された形もまた使用しうることを理解するであろう。
【0089】
本発明の支持体、触媒ユニット、及び反応器は、多数の触媒用途において、例えばオットー又はディーゼルエンジンからの排気ガス用の触媒支持体、特に三元触媒コンバータ及び(酸化)煤フィルター又は粒子燃焼単位として用いてもよく、並びに化学基本材料工業の触媒方法において、例えばオキソ合成、ポリオレフィン重合方法において、エチレンのアセトアルデヒドへの酸化、p−キシレンのテレフタル酸への酸化、SO2のSO3への酸化、アンモニアのNOへの酸化、エチレンのエチレンオキシドへの酸化、プロペンのアセトンへの酸化、ブテンのマレイン酸無水物への酸化、o−キシレンのフタル酸無水物への酸化、脱水素化反応において、例えばエチルベンゼンのスチレンへの脱水素化、イソプロパノールのアセトンへの、ブタンのブタジエンへの脱水素化において、水素化反応において、例えばエステルのアルコールへの、及びアルデヒドのアルコールへの水素化、脂肪硬化において、メタノール又はアンモニアの合成において、メタンの青酸への又はプロペンのアクリロニトリルへのアンモ酸化において、並びに蒸留残留物の分解のための、脱硫化水素(dehydrosulfurization)のための精製方法において、異性化反応において、例えばパラフィンの、又はm−キシレンのo/p−キシレンへの異性化反応において、トルエンのベンゼンへの脱アルキルにおいて、トルエンのベンゼン/キシレンへの不均化において、並びに天然ガス又はガソリンの蒸気分解において、用いてもよい。
【0090】
本発明の支持触媒及び触媒ユニット、並びに本発明のこれらの支持体を含む反応器はまた、その化学的不活性、機械的安定性、及び単一の方法で調整しうる多孔性並びに寸法の結果、あらゆる種類の高温及び高圧反応に特に適し、好ましくはカートリッジシステムを有する。本発明の支持体の他の用途の可能性としては、例えば軽量の精留塔を含む蒸留塔の充填材料、空気又は水精製方法、又、特に触媒排ガス清浄における触媒支持体がある。
【実施例】
【0091】
実施例1
触媒単位の支持材料として、単位面積当たりの質量100g/m2及び乾燥層厚110μmの天然繊維含有ポリマー複合材を長さ150mm及び直径70mmの成形品に巻き上げた。これによって、平均溝直径3mmの半径方向に閉塞した流路を波形成形により長さ約8mの平らな材料から形成し、その後、この単一層波形構造を横断方向に巻き上げ、固定した。これらの成形品を800℃の窒素雰囲気下で48時間炭化させ、多孔度を改良するために空気を端部に加えた。損失重量は61重量%であった。得られた材料は、水中でpH値7.4及び緩衝領域は弱酸性の範囲であった。
【0092】
この炭素材料の直径約60mm及び厚さ20mmの各ディスクは、以下の性質であった。表面対体積比1,700m2/m3、自由流断面積0.6m2/m3、開放構造及び流路長さ20mmのため、水の貫流中で測定できる圧力損失は実験条件下で測定できない。
【0093】
実施例2 交差配列
触媒単位の支持材料として、単位面積当たり質量100g/m2及び乾燥層厚110μmの天然繊維含有ポリマー複合材をグルーで一体に接着して長さ300mm、幅150mm、及び高さ50mmの成形品にした。平均溝直径3mmの半径方向に閉塞した流路を波形成形により平らな材料から形成し、その後、これらの単一層波形構造物を各々、90°互い違いに積層した。これらの成形品を800℃の窒素雰囲気下で48時間炭化させ、多孔度を改良するために空気を端部に加えた。損失重量は61重量%であった。得られた材料は、水中でpH値7.4及び緩衝領域は弱酸性の範囲であった。
【0094】
水ジェット切断で、この炭素材料の、以下の性質の直径35mm及び厚さ40mmの円柱支持体を製造した。表面対体積比1,700m2/m3、自由流断面積0.6m2/m3、開放構造及び流路長20mmため、水の貫流中で測定できる圧力損失は実験条件下で測定できない。
【0095】
実施例3
触媒単位の支持材料として、単位面積当たり質量100g/m2及び乾燥層厚110μmの天然繊維含有ポリマー複合材を、長さ150mm及び直径70mmの成形品に巻き上げた。平均溝直径3mmのS形又は波形の予め半径方向に閉塞した流路を、エンボス及び次の波形成形により平らな材料から製造し、その後、この単一層波形構造を巻き上げた(実施例1を参照)。これらの成形品を800℃の窒素雰囲気下で48時間炭化させ、多孔度を改良するために空気を端部に加えた。損失重量は61重量%であった。得られた材料は、水中でpH値7.4及び緩衝領域は弱酸性の範囲であった。
【0096】
この炭素材料の直径約60mm及び厚さ20mmの各ディスクは以下の性質であった。
【0097】
表面対体積比2,500m2/m3、自由流断面積0.3m2/m3、開放構造及び流路長20mmのため、水の貫流中で測定できる圧力損失は実験条件下で測定できない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】層状構造を含む本発明の支持体の実施態様を図解的に示す。
【図2】流れを受ける円形表面を含む本発明の円柱支持体の実施態様を図解的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)本質的に互いに積み重ねて配置され、それらの間に貫流可能な空隙が存在する少なくとも2つの多孔性材料層、又は
ii)互いに積み重ねられている材料層の少なくとも2つの部分の間に貫流可能な空隙が存在するように、その形状を維持したままそれ自体に巻き上げられるか又は配置される少なくとも1つの多孔性材料層、及び
iii)化学的及び/又は生物学的反応のための、i)又はii)による支持体上に本質的に固定化された触媒活性単位、
を含む、層状構造を含む炭素ベースの多孔性支持体。
【請求項2】
多数の材料層を含むこと、及び互いに積み重ねて配置される各々2つの材料層の間に、少なくとも1つの空隙が存在することを特徴とする、請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
各々2つの材料層の間の、又は1つの巻上げられた材料層の各々2つの部分の間の空隙が、本質的に互いに平行に延びる多数の溝を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の支持体。
【請求項4】
本質的に互いに平行に配置される前記溝が各々、約1nm〜約1m、特に約1nm〜約10cm、好ましくは10nm〜10mm、特に好ましくは50nm〜1mmの範囲の平均溝直径であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項5】
第1及び第2の材料層の間の溝が各々、前記第2の材料層と第3の材料層との間の隣接した層の溝に対して0°より大きく90°まで、好ましくは30〜90°、特に好ましくは45〜90°の角度で角度の偏差であるように配置され、1つについて交互に偏角である溝層を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項6】
本質的に平行に延びる前記溝が、層内で線状、波状、蛇行状、又はジグザグ状であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項7】
前記多孔性材料層及び/又は溝壁が、約1nm〜10cm、好ましくは10nm〜10mm、特に好ましくは50nm〜1mmの範囲の平均細孔サイズであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項8】
繊維、紙、布、又はポリマー材料ベースの、場合により、構造化、巻上げ、エンボス加工、予備処理、及び/又は折られたシート材料の炭化によって製造されるモジュール構造物が多孔性支持体として用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項9】
前記多孔性支持体の外面が、触媒単位に対して本質的に不透過性であり反応媒体並びに反応エダクト及び反応生成物に対して透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、前記支持体の残りの外面が存在する場合、場合により可逆的に封止されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項10】
前記多孔性支持体の外面が、前記触媒単位及び前記反応生成物に対して本質的に不透過性であり前記反応媒体並びに前記反応エダクトに対して透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、前記支持体の残りの外面が存在する場合、場合により可逆的に封止されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項11】
ハウジング内に配置されるか、又は、フラスコ、ビン、撹拌型反応器、固定床反応器、流動床反応器、管形反応器等の化学的又は生物学的反応器の反応器から選択される、適当な容器の中又は上に配置されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項12】
炭素ベースの前記多孔性支持体が、活性化炭素、焼結活性化炭素、非晶質、結晶質、又は半結晶質炭素、黒鉛、熱分解によって製造された炭素含有材料、炭素繊維、又は金属又は非金属のカーバイド、カルボニトリド、オキシカーバイド又はオキシカルボニトリド、並びにそれらの混合物から本質的に成ることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項13】
前記多孔性支持体の平均細孔サイズが約1nm〜10cm、好ましくは約10nm〜10mm、特に約50nm〜1mm、及び特に2オングストローム〜1ミリメートル、好ましくは10ナノメートル〜1マイクロメートル、特に好ましくは1マイクロメートル〜400マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項14】
多孔体として、ポリマー材料の炭化によって製造された成形品が用いられることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項15】
前記半透性分離層が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PTFE、ポリアクリロニトリルコポリマー、セルロース、セルロースアセテート、セルロースブチラート、セルロースニトレート、ビスコース、ポリエーテルイミド、ポリ(オクチルメチルシラン)、ポリビニリデンクロリド、ポリアミド、ポリ尿素、ポリフラン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はそれらのコポリマーからなる群から選択されるポリマー膜を含むことを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項16】
前記半透性分離層が、炭素繊維、活性化炭素、熱分解炭素、単一壁又は多壁炭素ナノチューブ、炭素分子ふるい、及び特にCVD又はPVDによって堆積された炭素含有材料からなることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項17】
前記半透性分離層が、ガラス、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、ケイ酸ホウ素、SiC、窒化チタン、及びそれらの組合せ等からなる群からの材料から選択されたセラミック膜を含むことを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項18】
前記半透性分離層が、3オングストローム〜1mm、好ましくは1nm〜100μm、最も好ましくは10nm〜10μmの厚さであることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項19】
前記半透性分離層の平均細孔直径が3オングストローム〜1mm、好ましくは1nm〜100μm、最も好ましくは10nm〜10μmであることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項20】
前記多孔性支持体が、細長い形状、例えば円柱、多角形柱状、例えば、三角柱状又はインゴット形、又はプレート状、又は多角形状、例えば四面体、角錐、八面体、十二面体、二十面体、斜方六面体、角柱状、又は球形、例えばボール形、球形又は円柱レンズ形、又はリング形であることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項21】
前記触媒単位が、有機金属錯化合物、金属、金属酸化物、合金、酵素、又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項22】
前記支持体の外面が、前記触媒単位に対して本質的に不透過性であり前記反応媒体並びに前記反応エダクト及び反応生成物に対して透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、前記支持体の残りの外面が、存在する場合、封止されることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載の多孔性支持体を含む化学的及び/又は生物学的反応のための触媒ユニット。
【請求項23】
前記支持体の外面が、前記触媒単位及び前記反応生成物に対して本質的に不透過性であり前記反応媒体並びに前記反応エダクトに対して透過性である半透性分離層と少なくとも部分的に直接接触しており、前記支持体の残りの外面が、存在する場合、封止されることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の多孔性支持体を含む化学的及び/又は生物学的反応のための触媒ユニット。
【請求項24】
封止が可逆的である、請求項22又は23に記載の触媒ユニット。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の1つ以上の多孔性支持体を含む、化学的及び/又は生物学的反応のための反応器。
【請求項26】
請求項22〜24のいずれか一項に記載の1つ以上の触媒ユニットを含む、化学的及び/又は生物学的反応のための反応器。
【請求項27】
撹拌装置及び場合によりエダクト添加装置を備える回分式運転撹拌型タンク反応器であることを特徴とする、請求項25又は26に記載の反応器。
【請求項28】
含まれた触媒単位が異なる異なった触媒ユニットを含み、前記触媒単位及び前記生成物に対して不透過性であり前記エダクト及び前記反応媒体に対して透過性である半透性分離層によって反応混合物から分離されることを特徴とする、請求項26に記載の反応器。
【請求項29】
エダクト/反応媒体混合物のための入口及び主生成物/反応媒体混合物のための出口、並びに撹拌装置を含む連続運転撹拌型タンク反応器であり、前記多孔性支持体が、生成物/エダクト/反応媒体混合物によって周流されかつ反応中に前記主生成物/反応媒体混合物と一緒に前記撹拌型タンクを出ることができないように配置されることを特徴とする、請求項25〜28のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項30】
一方の端部において、エダクト/反応媒体混合物が導入され、前記混合物が管形反応器を貫流し、それによって多孔体を周流して反応が起こり、他方の端部において、前記多孔体がそれと一緒に排出されることなく、主生成物/反応媒体混合物として再び出る管形反応器であることを特徴とする、請求項25〜28のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項31】
流動床反応器として設計されることを特徴とする、請求項25〜28のいずれか一項に記載の反応器。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−500589(P2007−500589A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521552(P2006−521552)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008641
【国際公開番号】WO2005/011844
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505257349)ブルー メンブレーンス ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】