説明

触感呈示装置および触感呈示装置の制御方法

【課題】消費電力を低減できる触感呈示装置および触感呈示装置の制御方法を提供する。
【解決手段】タッチセンサ11と、タッチセンサ11のタッチ面を振動させる触感呈示部13と、触感呈示部13の駆動を制御する触感呈示制御部14と、タッチセンサ11の出力に基づいて触感呈示制御部14の動作を制御する主制御部17と、を備え、主制御部17は、タッチセンサ11の出力に基づいてタッチ面の所定領域へのオブジェクトのタッチの有無を判定し、オブジェクトが所定領域にタッチされていると判定すると、触感呈示制御部14の動作を開始させ、オブジェクトが所定領域にタッチされていないと判定すると、触感呈示制御部14の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを備える触感呈示装置および触感呈示装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やゲーム機等の携帯機器、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)等には、操作者による入力操作を受け付ける操作部等の入力装置として、タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置が広く使用されている。
【0003】
タッチセンサには、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の種々の方式が知られている。しかし、いずれの方式のタッチセンサにおいても、指やスタイラスペン等の押下対象(オブジェクト)によるタッチ入力(入力操作)を受け付けるものであって、タッチセンサ自体は、タッチされても、押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない。
【0004】
そこで、例えば、タッチセンサの所定領域への所定の押下荷重以上の入力を検出し、これによりタッチセンサを振動させて、操作者の指先に触覚をフィードバックする入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−293644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の入力装置は、タッチセンサへの入力操作にかかわらず、タッチセンサにかかる押下荷重を常時検出している。つまり、タッチセンサへの入力操作がない場合でも、また、所定領域外の入力の場合でも、タッチセンサへの押下荷重を検出している。このため、消費電力が多くなり、特に携帯機器においては電池の消耗が早くなることが懸念される。
【0007】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、消費電力を低減できるように適切に構成した触感呈示装置および触感呈示装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する第1の観点に係る触感呈示装置の発明は、
タッチセンサと、
該タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
該触感呈示部の駆動を制御する触感呈示制御部と、
前記タッチセンサの出力に基づいて前記触感呈示制御部の動作を制御する主制御部と、を備え、
前記主制御部は、前記タッチセンサの出力に基づいて前記タッチ面の所定領域へのオブジェクトのタッチの有無を判定し、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていると判定すると、前記触感呈示制御部の動作を開始させ、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていないと判定すると、前記触感呈示制御部の動作を停止させる、ことを特徴とするものである。
【0009】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る触感呈示装置において、
前記タッチセンサに対する押下荷重を検出する荷重検出部をさらに備え、
前記触感呈示制御部は、動作を開始すると、前記荷重検出部の出力に基づいて、前記触感呈示部の駆動を制御する、ことを特徴とするものである。
【0010】
第3の観点に係る発明は、第1または2の観点に係る触感呈示装置において、
前記タッチセンサによるタッチ入力画面を表示する表示部を、さらに有することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、上記目的を達成する第4の観点に係る触感呈示装置の制御方法の発明は、
タッチセンサと、
該タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
該触感呈示部の駆動を制御する触感呈示制御部と、を備える触感呈示装置の制御方法であって、
前記タッチセンサの出力に基づいて前記タッチ面の所定領域へのオブジェクトのタッチの有無を判定し、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていると判定すると、前記触感呈示制御部の動作を開始させ、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていないと判定すると、前記触感呈示制御部の動作を停止させるように前記触感呈示制御部の動作を制御する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オブジェクトがタッチセンサの所定領域をタッチしていない場合、触感呈示制御部の動作が停止されるので、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る触感呈示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示したタッチセンサの支持構造の二つの例の概略構成を示す平面図である。
【図3】図1に示した触感呈示装置における主制御部および触感呈示制御部の第1動作例を示すシーケンス図である。
【図4】図1に示した触感呈示装置における主制御部および触感呈示制御部の第2動作例を示すシーケンス図である。
【図5】図1に示した触感呈示装置における主制御部および触感呈示制御部の第3動作例を示すシーケンス図である。
【図6】タッチパネルに対するオブジェクトの操作例を説明する図である。
【図7】図1に示した触感呈示装置における主制御部および触感呈示制御部の第4動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る触感呈示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。この触感呈示装置は、タッチセンサ11、タッチセンサ制御部12、圧電素子13、触感呈示制御部14、表示部15、表示制御部16、および、主制御部17を有する。タッチセンサ11は、表示部15に対する指などの押下物(オブジェクト)によるタッチ入力を受け付けるもので、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のタッチパネルやタッチスイッチ等により構成される。このタッチセンサ11のタッチ面11a(図2参照)に対する押下物による入力位置情報は、タッチセンサ11の出力に基づいてタッチセンサ制御部12で検出される。この検出された入力位置情報は、主制御部17に供給される。
【0016】
圧電素子13は、タッチセンサ11のタッチ面11aを振動させる触感呈示部と、タッチセンサ11に対する押下荷重を検出する荷重検出部とを構成する。圧電素子13により検出される押下荷重は、触感呈示制御部14に供給される。触感呈示制御部14は、圧電素子13で検出される押下荷重に基づいて、圧電素子13の駆動を制御する。
【0017】
触感呈示制御部14は、専用のプロセッサ(例えば、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)) によって構成され、主制御部17からの指示により、動作の開始および停止が制御される。すなわち、触感呈示制御部14は、主制御部17からの動作開始指示により、動作状態をノンアクティブ状態からアクティブ状態に遷移し、主制御部17からの動作停止指示により、動作状態をアクティブ状態からノンアクティブ状態に遷移する。そして、アクティブ状態では、主制御部17から動作開始指示とともに送信される後述のパラメータテーブルに基づいて、圧電素子13による押下荷重の検出および圧電素子13の駆動を制御し、ノンアクティブ状態では、押下荷重の検出および圧電素子13の駆動の制御を停止する。また、触感呈示制御部14は、アクティブ状態において、圧電素子13を駆動してタッチセンサ11を振動させると、主制御部17に振動通知を送信する。
【0018】
表示部15は、主制御部17により表示制御部16を介して制御される。これにより、表示部15は、アプリケーションやOS(Operating System)に基づく画面を表示する。そして、その画面において、例えば、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のような入力ボタン等のタッチ入力画面を表示する。表示部15は、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成される。
【0019】
主制御部17は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサで構成されるもので、アプリケーション処理部21を有する。アプリケーション処理部21は、描画出力部22、オブジェクト位置検出部23、触感呈示エリア判定部24および描画更新部25を有する。描画出力部22は、表示制御部16を介して表示部15に描画する画像情報を出力する。オブジェクト位置検出部23は、タッチセンサ制御部12からの入力位置情報に基づいてオブジェクトの位置を検出する。触感呈示エリア判定部24は、オブジェクト位置検出部23によるオブジェクトの位置検出結果に基づいて、描画中の触感呈示エリアにおけるオブジェクトの有無を判定する。つまり、オブジェクトが触感呈示エリアに進入したか否かを判定する。描画更新部25は、触感呈示制御部14からの振動通知に基づいて、アプリケーションに応じて表示部15に描画する画像情報を更新する。この描画更新部25で更新された画像情報は、描画出力部22から表示制御部16に出力される。
【0020】
主制御部17は、触感呈示エリア判定部24による判定結果に基づいて、触感呈示制御部14に対して動作開始指示や動作停止指示を送信して、動作の開始や停止を制御する。
【0021】
主制御部17は、さらに、触感呈示用の複数のパラメータテーブルを格納する記憶部26を有する。パラメータテーブルには、押下段数、リリース段数、押下閾値、リリース閾値、押下振動パターン、リリース振動パターン、振動の強さ、キャリブレーション用パラメータ等の各種のパラメータが含まれる。
【0022】
押下段数は、オブジェクトによるタッチセンサ11の押下中に、オブジェクトに与える触感(押下触感)の段数(回数)を設定する。リリース段数は、オブジェクトがタッチセンサ11からリリース中にオブジェクトに与える触感(リリース触感)の段数を設定する。押下閾値およびリリース閾値は、押下段数およびリリース段数の各段に対応する荷重の閾値を設定する。押下振動パターンおよびリリース振動パターンは、押下触感およびリリース触感を呈示するために圧電素子13に与える駆動信号パターンを設定する。この押下振動パターンやリリース振動パターンによって、押しボタンスイッチを押した際に得られるクリック触感、押し込み触感等が呈示される。振動の強さは、押下振動パターンおよびリリース振動パターンの各々の振動の強さを設定する。キャリブレーション用パラメータは、触感呈示エリアのエリアごとの振動強度や入力感度等を設定する。
【0023】
記憶部26は、これらのパラメータの組み合わせをパラメータテーブルとして格納する。そして、主制御部17は、触感呈示制御部14への動作開始指示とともに、当該触感呈示エリアに対応するパラメータテーブルを触感呈示制御部14に送信する。
【0024】
また、主制御部17は、触感呈示制御部14に対して動作開始指示を送信してから所定時間経過した時点で、触感呈示制御部14から振動通知を受信しない場合、触感呈示制御部14に対して、所定のパラメータテーブルとともに強制駆動指示を与える。なお、主制御部17と触感呈示部14との間の通信は、公知のUART (Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、GPIO(General Purpose Input/Output)を用いて実行される。
【0025】
図2(a)および(b)は、図1に示したタッチセンサ11の支持構造の二つの例の概略構成を示す平面図である。図2(a)に示す支持構造は、平面視長方形のタッチパネル11を、その裏面側の四隅の四点でそれぞれ支持部材31を介して表示部15(図1参照)上に湾曲可能に支持したものである。また、タッチセンサ11の裏面側には、仮想線で示す表示部15の表示領域15aの外側で、対向する2つの長辺の中央部に、短冊状の圧電素子32a,32bが対応する辺に沿って貼付されている。圧電素子32a,32bは、図1の圧電素子13を構成する。
【0026】
これにより、タッチセンサ11は、タッチ面11aが押下されると微小湾曲する。そして、その湾曲変形により圧電素子32a,32bに電荷が蓄積されて電圧が発生する。また、圧電素子32a,32bに外部から電圧を印加すると、圧電素子32a,32bが湾曲変位して、タッチセンサ11は四点の支持部材31を節として湾曲振動する。
【0027】
図2(b)に示す支持構造は、平面視長方形のタッチパネル11を、その裏面側で、四隅の四点と、対向する2つの長辺の中央部の二点との合計六点でそれぞれ支持部材31を介して表示部15(図1参照)上に湾曲可能に支持したものである。また、タッチセンサ11の裏面側には、表示部15の表示領域15aの外側で、対向する2つの短辺の中央部に、図1の圧電素子13を構成する短冊状の圧電素子32a,32bが、対応する辺に沿って貼付されている。
【0028】
これにより、図2(a)の場合と同様に、タッチセンサ11は、タッチ面11aが押下されると微小湾曲する。そして、その湾曲変形により圧電素子32a,32bに電荷が蓄積されて電圧が発生する。また、圧電素子32a,32bに外部から電圧を印加すると、圧電素子32a,32bが湾曲変位して、タッチセンサ11は六点の支持部材31を節として湾曲振動する。
【0029】
以下、図1に示した触感呈示装置における主制御部17および触感呈示制御部14の動作例について説明する。なお、以下の説明において、表示部15には、既に、主制御部17のアプリケーション処理部21に設けられた描画出力部22から、表示制御部16を介して、アプリケーションに応じた所要の触感呈示エリアを含む画像が描画されているものとする。
【0030】
(第1動作例)
図3は、第1動作例のシーケンス図である。この第1動作例は、触感呈示エリアにおいて、押下時とリリース時とでそれぞれ1段の触感を呈示するものである。先ず、主制御部17は、オブジェクト位置検出部23により、タッチセンサ制御部12から定期的に入力位置情報を取得して、タッチセンサ11に対する指などのオブジェクトの位置を検出する(S101)。そして、主制御部17は、オブジェクト位置検出部23によるオブジェクトの位置検出結果に基づいて、触感呈示エリア判定部24により、オブジェクトが表示部15に描画中の触感呈示エリアに進入したのを検知すると(S103)、触感呈示制御部14に対して動作開始指示を送信する。また、主制御部17は、動作開始指示に付加して、当該触感呈示エリアに対応する上記の押下段数およびリリース段数が各1段のパラメータテーブルを記憶部26から読み出して、触感呈示制御部14に送信する。
【0031】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作開始指示を受信すると、動作状態をノンアクティブ状態からアクティブ状態に遷移して、動作開始指示とともに受信したパラメータテーブルを図示しない内蔵メモリに格納する。その後、触感呈示制御部14は、圧電素子13の出力電圧を定期的に取得して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する(S201)。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている押下閾値に達したのを検知すると(S203)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている押下振動パターンを出力する(S205)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して押下の振動通知を送信する。
【0032】
また、触感呈示制御部14は、振動通知後、引き続き圧電素子13の出力電圧を監視して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されているリリース閾値に達したのを検知すると(S207)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されているリリース振動パターンを出力する(S209)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対してリリースの振動通知を送信する。
【0033】
一方、主制御部17は、触感呈示制御部14に対する動作開始指示およびパラメータテーブルの送信後、触感呈示制御部14から最初の振動通知(この場合、押下の振動通知)を受けると、アプリケーションに応じて描画更新部25により、表示部15に描画する画像情報を更新する(S105)。その後、主制御部17は、触感呈示制御部14から次の振動通知(この場合、リリースの振動通知)を受け、さらに、触感呈示エリア判定部24により、オブジェクトが当該触感呈示エリアから外れたのを検知すると(S107)、触感呈示制御部14に対して動作停止指示を送信する。
【0034】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作停止指示を受けると、内蔵メモリに格納したパラメータテーブルを消去して、動作状態をアクティブ状態からノンアクティブ状態に遷移し、押下荷重の検出および圧電素子13の駆動の制御を停止する。
【0035】
(第2動作例)
図4は、第2動作例のシーケンス図である。この第2動作例は、触感呈示エリアにおいて、押下時とリリース時とでそれぞれ2段の触感を呈示するものである。この場合、主制御部17は、動作開始指示とともに、検知された触感呈示エリアに対応する上記の押下段数およびリリース段数が各2段のパラメータテーブルを記憶部26から読み出して、触感呈示制御部14に送信する。なお、図4の主制御部17におけるS101およびS103の処理は、図3のS101およびS103の処理と同じである。
【0036】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作開始指示を受信すると、第1動作例と同様に、動作状態をアクティブ状態にして、動作開始指示とともに受信したパラメータテーブルを内蔵メモリに格納する。その後、触感呈示制御部14は、第1動作例と同様に、タッチセンサ11にかかる押下荷重を定期的に検出する(S211)。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている1段目の押下閾値に達したのを検知すると(S213)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている1段目に対応する押下振動パターンを出力する(S215)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して1段目押下の振動通知を送信する。
【0037】
また、触感呈示制御部14は、1段目押下の振動通知後、引き続き圧電素子13の出力電圧を監視して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている2段目の押下閾値に達したのを検知すると(S217)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている2段目に対応する押下振動パターンを出力する(S219)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して2段目押下の振動通知を送信する。
【0038】
さらに、触感呈示制御部14は、2段目押下の振動通知後、引き続き圧電素子13の出力電圧を監視して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている2段目のリリース閾値に達したのを検知すると(S221)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている2段目に対応するリリース振動パターンを出力する(S223)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して2段目リリースの振動通知を送信する。
【0039】
その後、触感呈示制御部14は、2段目リリースの振動通知後、引き続き圧電素子13の出力電圧を監視して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する。そして、触感呈示制御部14は、押下荷重がパラメータテーブルに設定されている1段目のリリース閾値に達したのを検知すると(S225)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されている1段目に対応するリリース振動パターンを出力する(S227)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して1段目リリースの振動通知を送信する。
【0040】
一方、主制御部17は、触感呈示制御部14に対する動作開始指示およびパラメータテーブルの送信後、触感呈示制御部14から1段目押下に対応する振動通知を受けると、第1動作例と同様に、アプリケーションに応じて表示部15に描画する画像情報を更新する(S105)。次に、主制御部17は、触感呈示制御部14から2段目押下に対応する振動通知を受けると、同様に、アプリケーションに応じて表示部15に描画する画像情報を更新する(S106)。
【0041】
その後、主制御部17は、触感呈示制御部14から2段目リリースおよび1段目リリースにそれぞれ対応する振動通知を受け、さらに、触感呈示エリア判定部24により、オブジェクトが当該触感呈示エリアから外れたのを検知すると(S107)、触感呈示制御部14に対して動作停止指示を送信する。
【0042】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作停止指示を受けると、第1動作例と同様に、内蔵メモリに格納したパラメータテーブルを消去して、動作状態をアクティブ状態からノンアクティブ状態に遷移し、押下荷重の検出および圧電素子13の駆動の制御を停止する。
【0043】
(第3動作例)
図5は、第3動作例のシーケンス図である。この第3動作例は、触感呈示エリアにおいて、押下時に2段、リリース時に1段の触感を呈示するものである。この場合、主制御部17は、動作開始指示とともに、検知された触感呈示エリアに対応する上記の押下段数およびリリース段数のパラメータテーブルを記憶部26から読み出して、触感呈示制御部14に送信する。なお、図5の主制御部17におけるS101およびS103の処理は、図3のS101およびS103の処理と同じである。
【0044】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作開始指示を受信すると、図4のS211、S213およびS215と同様の処理を実行して、主制御部17に対して1段目押下の振動通知を送信する。その後、触感呈示制御部14は、図4のS217およびS219と同様の処理を実行して、主制御部17に対して2段目押下の振動通知を送信する。
【0045】
そして、触感呈示制御部14は、2段目押下の振動通知後、押下荷重がパラメータテーブルに設定されているリリース閾値に達したのを検知すると(S231)、圧電素子13に対してパラメータテーブルに設定されているリリース振動パターンを出力する(S233)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対してリリースの振動通知を送信する。
【0046】
一方、主制御部17は、触感呈示制御部14に対する動作開始指示およびパラメータテーブルの送信後、触感呈示制御部14から1段目押下に対応する振動通知を受けると、第1動作例と同様に、アプリケーションに応じて表示部15に描画する画像情報を更新する(S105)。その後、主制御部17は、触感呈示制御部14からリリースに対応する振動通知を受け、さらに、触感呈示エリア判定部24により、オブジェクトが当該触感呈示エリアから外れたのを検知すると(S107)、触感呈示制御部14に対して動作停止指示を送信する。
【0047】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作停止指示を受けると、第1動作例と同様に、内蔵メモリに格納したパラメータテーブルを消去して、動作状態をアクティブ状態からノンアクティブ状態に遷移し、押下荷重の検出および圧電素子13の駆動の制御を停止する。
【0048】
上述した第1動作例〜第3動作例によると、指などのオブジェクトが、表示部15に描画されている触感呈示エリアに対応するタッチセンサ11の所定の領域に直接進入した場合、すなわち、オブジェクトがタッチした時点のタッチセンサ11の位置が触感呈示エリアに対応する位置である場合は、直ちに触感呈示制御部14がアクティブ状態となって触感呈示制御が実行される。そして、この触感呈示エリアからオブジェクトがスライドすることなく直接離間すると、つまり、オブジェクト位置検出部23がオブジェクトの位置を検出しなくなると、直ちに触感呈示制御部14がノンアクティブ状態となる。
【0049】
また、図6に示すように、描画されたボタン等の触感呈示エリア35を横切るように、タッチセンサ11上でオブジェクト36が矢印で示すようにスライドされた場合は、オブジェクト36の位置が触感呈示エリア35に進入したのが検知されると、主制御部17から触感呈示制御部14に動作開始指示が送信されて、触感呈示制御部14がアクティブ状態となる。また、オブジェクト36の位置が触感呈示エリア35から外れたのが検知されると、主制御部17から触感呈示制御部14に動作停止指示が送信されて、触感呈示制御部14がノンアクティブ状態となる。したがって、この場合は、オブジェクト36が触感呈示エリア35に位置する間において、押下閾値の荷重が検出されれば触感が呈示され、押下閾値の荷重が検出されなければ触感が呈示されることなく、オブジェクトが触感呈示エリアを通過した時点で、触感呈示制御部14はノンアクティブ状態となる。
【0050】
このように、第1動作例〜第3動作例においては、オブジェクトが、触感呈示エリアに対応するタッチセンサ11の所定の領域に位置する間、触感呈示制御部14をアクティブ状態として圧電素子13による触感呈示動作を制御し、それ以外は触感呈示制御部14をノンアクティブ状態として圧電素子13による触感呈示動作の制御を停止している。したがって、不要な電力消費を防止でき、消費電力を低減することができる。
【0051】
(第4動作例)
図7は、第4動作例のシーケンス図である。この第4動作例は、主制御部17が触感呈示制御部14に対して動作開始指示を送信した後、所定時間経過しても、触感呈示制御部14から振動通知が得られない場合、圧電素子13を強制振動させて触感を呈示するものである。図7において、主制御部17は、上述した第1動作例〜第3動作例におけるS101およびS103の処理により、触感呈示エリアを検知すると、当該触感呈示エリアに対応するパラメータテーブルを記憶部26から読み出して、触感呈示制御部14に送信する。
【0052】
触感呈示制御部14は、主制御部17から動作開始指示を受信すると、上記動作例と同様に、圧電素子13の出力電圧を定期的に取得して、タッチセンサ11にかかる押下荷重を検出する(S235)。
【0053】
一方、主制御部17は、触感呈示制御部14に対する動作開始指示およびパラメータテーブルの送信後、触感呈示制御部14からの振動通知を監視する。その結果、動作開始指示から所定時間(例えば、60秒)が経過しても振動通知が受信されない場合、主制御部17は、触感呈示制御部14に対して強制振動指示を送信するとともに、強制振動用のパラメータテーブルを送信する。強制振動用のパラメータテーブルには、例えば、強制振動パターン、振動の強さ、触感呈示エリアのキャリブレーション用パラメータ等のパラメータが設定される。
【0054】
触感呈示制御部14は、主制御部17からの強制振動指示および強制振動用のパラメータテーブルを受信すると、内蔵メモリを受信した強制振動用のパラメータテーブルに更新する。そして、触感呈示制御部14は、強制振動用のパラメータテーブルに従って圧電素子13に強制振動パターンを出力して、圧電素子13を強制振動させる(S237)。それと同期して、触感呈示制御部14は、主制御部17に対して振動通知を送信する。
【0055】
そして、主制御部17は、触感呈示制御部14からの振動通知を受信すると、オブジェクトが触感呈示エリアに位置していても、触感呈示制御部14に対して動作停止指示を送信する。これにより、触感呈示制御部14の動作状態をアクティブ状態からノンアクティブ状態に遷移させて、押下荷重の検出および圧電素子13の駆動の制御を停止させる。
【0056】
このように、第4動作例では、触感呈示制御部14は、触感呈示部(圧電素子13)によりタッチ面11aを振動させると、主制御部17に振動通知を送信し、主制御部17は、触感呈示制御部14の動作を開始させてから、所定時間経過した時点で、触感呈示制御部14から振動通知を受信しない場合、触感呈示制御部14に対して強制振動指示を与え、その後、触感呈示制御部14からの振動通知を受信してから触感呈示制御部14の動作を停止させる。
【0057】
この第4動作例によると、触感呈示エリアに対応するタッチセンサ11の所定の領域に、オブジェクトが軽くタッチされて、押下閾値に達しない状態が維持されていると、当該領域へのタッチから所定時間が経過した時点でオブジェクトに触感が呈示される。これにより、操作者に対し、触感呈示エリアに長時間触れていることを認識させることができる。また、圧電素子で押下荷重を検出する場合、押下荷重を緩やかに増加させると、圧電素子に荷重(変位)に比例した電荷が蓄積されない。そのため、実際には、押下閾値を超える荷重で押下していても触感が呈示されず、操作者に不安感を与えることが想定される。このような場合、タッチセンサ11を強制振動させて触感を呈示すれば、操作者に対して操作のやり直しを促すことができ、利便性を向上できる。しかも、強制振動後、触感呈示制御部14はノンアクティブ状態となるので、消費電力の低減が図れる。
【0058】
なお、上記第1動作例〜第4動作例において、主制御部17は、触感呈示制御部14をアクティブ状態にした後、振動通知の受信の有無にかかわらず、オブジェクトが触感呈示エリアから離れたのを検知すると、その時点で触感呈示制御部14に対して動作停止指示を送信して触感呈示制御部14をノンアクティブ状態とする。
【0059】
本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、主制御部17の記憶部26に格納された触感呈示用の複数のパラメータテーブルを、触感呈示制御部14にも格納し、主制御部17から使用するパラメータテーブルの番号を指示して、触感呈示制御部14側において指示されたパラメータテーブルを使用するように構成することも可能である。
【0060】
また、上記実施の形態では、圧電素子13により触感呈示部および荷重検出部を構成したが、触感呈示部および荷重検出部は、分離して設けてもよい。この場合、触感呈示部は、圧電素子に限らず、偏心モータやソレノイド等の他の公知の振動手段を用いることが可能である。また、タッチセンサを積層型の圧電素子を介して支持することも可能である。同様に、荷重検出部についても、圧電素子に限らず、歪センサ等の他の公知の荷重検出手段を用いることが可能である。さらに、荷重検出部は、省略することも可能である。また、本発明は、表示部を備えず、タッチセンサ上に触感呈示エリアが印刷等により直接描画されている場合も、適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
11 タッチセンサ
11a タッチ面
12 タッチセンサ制御部
13 圧電素子
14 触感呈示制御部
15 表示部
16 表示制御部
17 主制御部
21 アプリケーション処理部
22 描画出力部
23 オブジェクト位置検出部
24 触感呈示エリア判定部
25 描画更新部
26 記憶部
32a,32b 圧電素子
35 触感呈示エリア
36 オブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサと、
該タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
該触感呈示部の駆動を制御する触感呈示制御部と、
前記タッチセンサの出力に基づいて前記触感呈示制御部の動作を制御する主制御部と、を備え、
前記主制御部は、前記タッチセンサの出力に基づいて前記タッチ面の所定領域へのオブジェクトのタッチの有無を判定し、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていると判定すると、前記触感呈示制御部の動作を開始させ、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていないと判定すると、前記触感呈示制御部の動作を停止させる、ことを特徴とする触感呈示装置。
【請求項2】
前記タッチセンサに対する押下荷重を検出する荷重検出部をさらに備え、
前記触感呈示制御部は、動作を開始すると、前記荷重検出部の出力に基づいて、前記触感呈示部の駆動を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の触感呈示装置。
【請求項3】
前記タッチセンサによるタッチ入力画面を表示する表示部を、さらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の触感呈示装置。
【請求項4】
タッチセンサと、
該タッチセンサのタッチ面を振動させる触感呈示部と、
該触感呈示部の駆動を制御する触感呈示制御部と、を備える触感呈示装置の制御方法であって、
前記タッチセンサの出力に基づいて前記タッチ面の所定領域へのオブジェクトのタッチの有無を判定し、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていると判定すると、前記触感呈示制御部の動作を開始させ、前記オブジェクトが前記所定領域にタッチされていないと判定すると、前記触感呈示制御部の動作を停止させるように前記触感呈示制御部の動作を制御する、
ことを特徴とする触感呈示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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