説明

計測システム

【課題】容易に現場の測量が可能となる計測システムの提供。
【解決手段】所定の幅の辺を有する四角形状の基準プレート10と、基準プレート10を含んだ被測定風景を撮影し、撮影データをデジタル画像データ化するカメラ部104と、カメラ部104と通信して撮影画像P10を取得し、基準プレート10の形状情報をもとに撮影画像P10に所定間隔で複数の仮想線を加えた合成画像G10を形成する中央演算装置106と、中央演算装置106から合成画像G10を取得して表示する液晶ディスプレイ101と、液晶ディスプレイ101に示された情報に対応して合成画像G10上のポイントを指定するキーボード102及びタッチパネル103と、キーボード102及びタッチパネル103によって指定された複数のポイント間の距離を計算手段によって計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場、又は工事をする前の現場において、例えば道路の幅や歩道の幅、マンホールの位置などを測量する技術に関するものであり、具体的にはAR(Augmented Reality)技術を用いて現場の測量を容易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の一部を掘削して、ガス管などを埋設する場合には、その埋設位置の状況の把握のために測量作業をすることは不可欠な作業となっている。従来、これらの測量作業には複数の人間によって行われていた。しかし、測量作業には手間がかかるので、作業効率などを高めることが求められている。
【0003】
特許文献1には、写真計測システム及び写真計測方法に関する技術が開示されている。事故現場や工事作業現場において、異なる地点に配置された複数のポイントマークを撮影対象として含む写真画像データと、複数のポイントマークの位置を特定する複数の位置データとを入力し、写真画像データに含まれる複数のポイントマークそれぞれと複数の位置データとを対応づける位置データ対応付け部と、位置データ対応付け部が複数のポイントマークそれぞれへ対応づけた複数の位置データを用いて、複数のポイントマークが所定の位置関係になるように写真画像データを変換して、変換画像データを生成する変換部と、変換部が生成した変換画像データを格納する変換画像データメモリを備えた写真計測システムを用いることで、例えば工事現場の構造物と構造物の設計図面とが一致しているかを確認することができる。
【0004】
また、工事現場の測量を目的とした技術ではないが、特許文献2に示されるステレオ3次元計測システムに関する技術や、特許文献3に示されるマーカーの3次元位置計測方法及びシステムに関する技術を流用することでも、測量作業の作業効率向上は可能であるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−362333号公報
【特許文献2】特開2008−275366号公報
【特許文献3】特開2010−032282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から特許文献3に開示される技術を用いて、現場の測量を行うことを想定すると、以下に説明する課題があると考えられる。
【0007】
特許文献1に開示される技術において、複数のポイントマークの位置を特定する複数の位置データの取得はGPS技術を利用することを前提として考えられている。しかしGPS技術を用いた計測は、GPSの誤差を修正するために複数の機器を使用するか、長時間GPS信号を受信するなどの工夫を必要とする。しかし、現場での作業軽減という点から考えると、これらの複数の機器を使用したり長時間現場に居る必要があったりということは、あまり望ましい方法とは言えない。また、屋根のあるような場所など、GPSの電波を受信しにくい等の条件が重なる現場では使えないなどの問題も考えられる。
【0008】
特許文献2及び特許文献3に開示される技術では、カメラを2台用いることで精度の良い計測結果が期待出来る。しかし、マーカーの設置や高精度なレーザー距離計測器などの機器を用いる必要があるため、比較的大型な装置を用いる必要性があるため、可搬性に課題があると考えられる。現場での作業軽減という点では、こうした装置の大型化はデメリットであると言える。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、容易に現場の測量が可能となる計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による計測システムは以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)所定の幅の辺を有する四角形状の基準プレートと、前記基準プレートを含んだ被測定風景を撮影し、撮影データをデジタル画像データ化する撮影手段と、前記撮影手段と通信して前記デジタル画像データを取得し、前記基準プレートの形状情報をもとに3次元空間情報を構築し、前記デジタル画像データに仮想平面を合成した加工データを構成する計算手段と、前記デジタル画像データを表示する画像表示手段と、前記画像表示手段に示された情報に対応して前記加工データが有する前記仮想平面上に任意の第1ポイントと第2ポイントとを指定するデータ入力手段と、を有し、前記計算手段により、前記仮想平面上に指定された前記第1ポイント及び前記第2ポイントを、前記3次元空間情報に投影し、前記第1ポイントと前記第2ポイントとの差を前記計算手段によって計測することを特徴とする。
【0012】
(2)(1)に記載の計測システムにおいて、前記加工データには、前記仮想平面上に等間隔に配置されたグリッド線が含まれ、前記第1ポイントは、前記グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで前記第1グリッド線上に取得され、前記第2ポイントが、前記グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで前記第2グリッド線上に取得され、前記第1グリッド線と前記第2グリッド線との差を計算することで、前記被測定風景から得たい距離を取得することを特徴とする。
【0013】
(3)(1)に記載の計測システムにおいて、前記加工データには、前記仮想平面上に一点を起点とするグリッド線を放射線上に配置し、前記第1ポイントは、前記グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで前記第1グリッド線上に取得され、前記第2ポイントが、前記グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで前記第2グリッド線上に取得され、前記第1グリッド線と前記第2グリッド線との差を計算することで、前記被測定風景から得たい角度を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴を有する本発明の一態様による現場測量システムにより、以下のような作用、効果が得られる。
【0015】
上記(1)に記載される発明の態様は、所定の幅の辺を有する四角形状の基準プレートと、基準プレートを含んだ被測定風景を撮影し、撮影データをデジタル画像データ化する撮影手段と、撮影手段と通信してデジタル画像データを取得し、基準プレートの形状情報をもとに3次元空間情報を構築し、デジタル画像データに仮想平面を合成した加工データを構成する計算手段と、デジタル画像データを表示する画像表示手段と、画像表示手段に示された情報に対応して加工データが有する仮想平面上に任意の第1ポイントと第2ポイントとを指定するデータ入力手段と、を有し、計算手段により、仮想平面上に指定された第1ポイント及び第2ポイントを、3次元空間情報に投影し、第1ポイントと第2ポイントとの差を計算手段によって計測するものである。
【0016】
画像表示手段によって表示された加工データによって被測定風景が視覚的に示され、データ入力手段によってポイントを指定することで、被測定風景の測定が可能となる。デジタル画像データは、2次元平面に保管された映像データであるが、基準プレートの形状情報を元にデジタル画像データの映像データに対応した3次元空間情報を構築することができる。この3次元空間情報は2次元平面の情報と対応させているため、画像表示手段によって表示される加工データが有する仮想平面上に第1ポイントと第2ポイントとを指定することで、第1ポイントと第2ポイントとの差を計測値として得ることが出来る。この際、第1ポイント及び第2ポイントは2次元平面上で指定するが、仮想平面上にあるものとして3次元空間情報に投影して計算するため、例えば被測定風景となる工事現場の溝の幅や道路の幅、或いは建物の高さ等が計測可能となる。このような計測作業は、従来複数の作業者によって行われてきたが、撮影手段を用いて写真を撮りデジタル画像データを取得することで目的の距離や角度を測定することが可能となるので、作業の簡易化を図ることが可能となり作業効率が向上する。
【0017】
また、(2)に記載される発明の態様は、(1)に記載の計測システムにおいて、加工データには、仮想平面上に等間隔に配置されたグリッド線が含まれ、第1ポイントは、グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで第1グリッド線上に取得され、第2ポイントが、グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで第2グリッド線上に取得され、第1グリッド線と第2グリッド線との差を計算することで、被測定風景から得たい距離を取得するものである。
【0018】
具体的には、例えばデジタルカメラで撮影した撮影データを元に、画像表示手段に加工データとして等間隔のグリッド線を表示し、このグリッド線を選択させることでグリッド線の間隔をデジタル画像データとして保存される被測定風景の中で得たい距離として取得することができる。したがって、比較的容易に現場の測量が可能となる。
【0019】
また、(3)に記載される発明の態様は、(1)に記載の計測システムにおいて、加工データには、仮想平面上に一点を起点とするグリッド線を放射線上に配置し、第1ポイントは、グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで第1グリッド線上に取得され、第2ポイントが、グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで第2グリッド線上に取得され、第1グリッド線と第2グリッド線との差を計算することで、被測定風景から得たい角度を取得するものである。
【0020】
仮想平面上の角度を得る場合には、同一の点から放射線上に配置された第1グリッド線と第2グリッド線とを選択することで、2つのグリッド線が作り出す角度を得ることが可能となる。仮想平面と起点を任意の位置に定義できるようにすれば、撮影データを元に被測定風景の中で得たい角度を取得することができる。したがって、比較的容易に現場の測量が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の、ポータブルパソコンの斜視図である。
【図2】本実施形態の、基準プレートの平面図である。
【図3】本実施形態の、ポータブルパソコンの構成概略図である。
【図4】本実施形態の、現場での作業及びポータブルパソコン内での処理に関連するフロー図である。
【図5】本実施形態の、掘削が行われた現場の様子を示した模式図である。
【図6】本実施形態の、図5にグリッド線が合成された合成画面である。
【図7】本実施形態の、パソコン内部でのフローである。
【図8】本実施形態の、パソコン内部処理に関する概念図である。
【図9】本実施形態の、説明のために用意した取得画像の模式図である。
【図10】本実施形態の、交差点の様子を示した模式図である。
【図11】本実施形態の、図10で基準プレートを配置した模式図である。
【図12】本実施形態の、図10にグリッド線が合成された合成画面である。
【図13】本実施形態の、幅の広い道路の様子を撮影した模式図である。
【図14】本実施形態の、図13のマンホールと基準プレートの位置を示した模式図である。
【図15】本実施形態の、マンホール同士の距離を示した模式図である。
【図16】本実施形態の、別の交差点の様子を撮影した模式図である。
【図17】本実施形態の、別の交差点の様子を撮影した模式図である。
【図18】本実施形態の、図10の交差点に対応した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1に、本実施形態のポータブルパソコン100の斜視図を示す。図3に、ポータブルパソコン100の構成概略図を示す。なお、図3に示す概略構成図では、説明に不要な要素を省略している。ポータブルパソコン100は、画像表示手段として液晶ディスプレイ101と、データ入力手段としてキーボード102とタッチパネル103を備えている。また、計算手段となる中央演算装置106と内部での演算処理に使用する領域としてのメモリ107を備えている。また、図示しない背面に備える撮影手段となるカメラ部104を備えている。
【0024】
カメラ部104によって撮影した画像は、ポータブルパソコン100に備えられるハードディスクや不揮発性メモリなどの内部記憶装置105に保管される。ポータブルパソコン100にインストールされるソフトウェアによって、撮影した画像を加工し、必要に応じて液晶ディスプレイ101に表示する。なお、カメラ部104からの画像はリアルタイムに内部記憶装置105に入力されるが、説明のために撮影ボタンなどを押す操作を行った結果得られる画像をデジタル画像データとして話を進める。
【0025】
図2に、基準プレート10の平面図を示す。基準プレート10は、一辺の長さが寸法Aの正方形であり、所定の厚みのあるプレートである。寸法Aは200mm程度を想定している。基準プレート10は現場に持ち込み、ポータブルパソコン100に備えるカメラ部104によって基準プレート10と現場の様子を一緒に撮影する為に用いる。この基準プレート10のデザインは四隅に太く濃い色彩で縁取り部11が設けられ、白抜き部12の中央にマーク13が設けられている。縁取り部11と白抜き部12はハッキリ区別出来るよう縁取り部11は所定の幅を有している。なお、縁取り部11の外周には基準プレート10のエッジ検出を助けるために白枠が設けられていることが望ましい。
【0026】
次に、現場での作業の流れについてフロー図を用いて説明する。図4に、現場での作業及びポータブルパソコン100内での処理を1つのフローで示す。説明しない詳細部分は省略している。現場では作業員が一人でポータブルパソコン100を用いて現場の測量作業を行う。
【0027】
S10では、カメラ部104で現場を撮影する。作業員はポータブルパソコン100の背面に用意されるカメラ部104で、測量の必要な現場の風景を撮影する。図5に、掘削が行われた現場の様子を表した模式図を示す。ガス管の新規埋設工事又は保全工事のために道路の一部を掘削した状況をカメラ部104で取り込みポータブルパソコン100の液晶ディスプレイ101にて表示した状態が図5の様子であり、液晶ディスプレイ101には操作メニューD10とカメラ部104で捉えた映像を示す撮影ウィンドD50が表示されている。この状態でカメラ部104の撮影ボタンを押すと、撮影ウィンドD50に示された風景がポータブルパソコン100の内部記憶装置105に保存される。撮影ウィンドD50には基準プレート10が含まれる状態で写真が撮影されることが望ましい。次にS11の処理に移行する。
【0028】
S11では、計測面の選択を行う。図5に示される操作メニューD10にある「平面」、「縦面」、「角度」から計測をする方法を選択する。図5では「縦面」を選択している。縦面を選択されることで、ポータブルパソコン100は基準プレート10に対して直行する面を形成するようにグリッド線GLを配置するよう選択されたことになる。次にS12の処理に移行する。
【0029】
S12では、撮影画像にグリッド線を合成する。ポータブルパソコン100の内部において、メモリ107に呼び出されたプログラムが内部記憶装置105に保存された撮影画像P10を解析して、撮影画像P10に一緒に撮影されている基準プレート10を検出する。基準プレート10の大きさのデータは内部記憶装置105に保存されているので、P10に撮影された基準プレート10の大きさを基準にしてグリッド線GLを撮影画像P10に合成し、合成画像G10を生成する。S11で「縦面」が選択されているので、基準プレート10に対して直行する面上にグリッド線GLを配置する。次にS13の処理に移行する。
【0030】
S13では、グリッド線を合成した合成画面をディスプレイに表示する。図6に、図5にグリッド線GLが合成された合成画面を示す。グリッド線GLは撮影ウィンドD50に表示される撮影画像P10の上に等間隔に配置される。グリッド線GLは、「縦面」が選択されているので、基準プレート10に対して直行する仮想面の上に生成される。グリッド線GLは仮想面上に等間隔に配置され図6の撮影ウィンドD50に示されるように格子状の模様の面を形成することになる。実際には撮影画像P10と合成するため、遠近法の手法によって立体的に感じられるようにグリッド線GLが描かれることになる。なお、グリッド線GLは「表示」「非表示」を切り替えることが可能である。また、グリッド線GLの間隔は変更が可能であることが好ましい。次にS14の処理に移行する。
【0031】
S14では、「始点」を選択されたかを判断する。具体的には操作メニューD10にある「始点」のボタンを押した後、キーボード102又はタッチパネル103にて「始点」となる第1選択グリッド線GL1が、仮想面上に配置されたグリッド線GLの中から作業者によって選択される。第1選択グリッド線GL1の位置は、掘削溝20の一端に最も近い位置を選択する必要がある。「始点」が選択されなければ、「始点」が選択されるまでS14をループする。「始点」が選択されればS15に移行する。
【0032】
S15では、「終点」が選択されたかを判断する。「始点」と同様に操作メニューD10にある「終点」のボタンを押した後、キーボード102又はタッチパネル103にて「終点」となる第2選択グリッド線GL2が、等間隔のグリッド線GLの中から作業者によって選択される。第2選択グリッド線GL2の位置は、掘削溝20の他端に最も近い位置を選択する必要がある。「終点」が選択されなければ、「終点」が選択されるまでS15をループする。「終点」が選択されればS16に移行する。
【0033】
S16では、グリッドの間隔を計算する。「始点」である第1選択グリッド線GL1と「終点」である第2選択グリッド線GL2との間隔を調べる。第1選択グリッド線GL1と第2選択グリッド線GL2との間隔は、グリッド線GLが等間隔に並べられているので、ポータブルパソコン100によってすぐに把握することが可能である。次にS17に移行する。
【0034】
S17では、掘削溝20の幅を算出する。第1選択グリッド線GL1と第2選択グリッド線GL2の間隔は既に把握されているので、この距離をもって掘削溝20の幅とする。したがって、ポータブルパソコン100で被測定現場の風景を撮影した後は、ポータブルパソコン100の内部で被測定風景の任意の対象の距離を算出することが可能となる。こうして処理を終了する。この例では撮影画像P10として、配管工事現場の掘削した地面の溝を計測するように説明したが、「縦面」であれば、掘削溝20の深さも計測することが可能である。
【0035】
次に、ポータブルパソコン100内での処理について説明する。図7に、パソコン内部でのフローを示す。図8に、パソコン内部処理に関する概念図を示す。図9に、説明のために用意した取得画像の模式図を示す。なお、ポータブルパソコン100及びポータブルパソコン100に接続されるカメラ部104は、図8では図1と異なる形状をしているが、形状の違いだけで機能は同じである。また、上記では第1選択グリッド線GL1と第2選択グリッド線GL2の距離を測定しているが、ここではクリックされて指定された「始点」と「終点」との距離を計算する手法について説明する。以下にポータブルパソコン100内での処理を簡単に説明する。
【0036】
S20では、カメラ部104から映像を取得する。S10の後に来るポータブルパソコン100の内部処理にあたる。図9に示す取得画像D6が、カメラ部104で撮影されてデジタルデータ化され、ポータブルパソコン100の内部記憶装置105に保存される。そして、S21に移行する。
【0037】
S21では、取得した映像を液晶ディスプレイ101に投影する。ポータブルパソコン100の液晶ディスプレイ101に、図9に示す取得画像D6が表示される。なお、取得画像D6にはグリッド線GLが格子状に描画されているが、この段階ではグリッド線GLは存在していない。そして、S22に移行する。
【0038】
S22では、カメラ部104で基準プレート10の情報を取得する。なお、基準プレート10の情報は、S20で取得した取得画像D6から取得しても良い。何れにしてもほぼ同じ情報を取得することになる。また、基準プレート10の寸法データは既にポータブルパソコン100の内部記憶装置105に格納されているので、撮影ウィンドD50からもしくはカメラ部104から直接取得した基準プレート10の情報を、格納データと対比させることで、基準プレート10の3次元的な位置を把握する。そして、S23に移行する。
【0039】
S23では、カメラ部104の位置姿勢を取得する。図8ではポータブルパソコン100の上部に固定され、カメラ部104の姿勢を取得することで、S22で基準プレート10の情報の補正をし、ポータブルパソコン100内に構築する3次元データの投影平面D2を正確に定義する。カメラ部104の姿勢は、取得画像D6を利用して取得することが出来る。そして、S24に移行する。
【0040】
S24では、撮影ウィンドD50のカメラ映像にグリッド線GLを重畳表示する。図8に示す投影平面D2に、グリッド線GLは等間隔に描画される。グリッド線GLは基準プレート10の寸法情報及びカメラ部104から取得される基準プレート10の位置を常時検出し、カメラ部104の位置姿勢の情報で補正する事により、仮想平面DS上に配置される。仮想平面DSは図9においては基準プレート10の上面を含む平面として定義されているが、これは図5に示される「平面」を選択した場合であり、「縦面」を選択した場合には基準プレート10に対して直交する平面が選択される。図9にはグリッド線GLとして、格子状に描かれている様子が示されている。そして、S25に移行する。
【0041】
S25では、画面上の計測を開始する。そして、S26に移行する。S26では、「始点」が選択されたか否かを判断する。始点PSは第1選択グリッド線GL1上に選択されている。クリックされて選択された画面上の座標をP(x,y)とすると、ポータブルパソコン100内部で仮想的に構築される3次元空間では、基準平面D1とその原点として第1原点P1(x,y,0)と投影平面D2とその原点として第2原点P2(x,y,a)が設定される。ここで用いられるaは0以外の数字であり、第1実施形態ではa=10000としている。次に第1原点P1と第2原点P2とを基準プレート10を基準とする3次元座標に変換する。
【0042】
この3次元座標は、第1原点P1と第2原点P2の座標に対して、行列Mの逆数を掛けて算出される。つまり、第1原点Pz1は行列Mの逆数掛ける第1原点P1で求められ、第1原点Pz2は行列Mの逆数を掛ける第2原点P2で求められる。この第1原点Pz1と第1原点Pz2とを結ぶ直線Lと予め定めた仮想平面DSの交点を算出することで、始点PSの座標は(x1,y1,z1)として求められる。なお、基準平面D1は、図9に示されるように液晶ディスプレイ101上に示される取得画像D6が示す面と同一である。始点PSが選択されればS27に移行し、選択されなければ選択されるまでループする。
【0043】
S27では、「終点」が選択されたか否かを判断する。終点PEは第2選択グリッド線GL2上に選択されている。終点PEも基準平面D1上にクリックされて選択されるものであり、始点PSと同様にして行列Mを用いて算出される。終点PEの座標は(x2,y2,z2)として求められる。終点PEが選択されればS28に移行し、選択されなければ選択されるまでループする。
【0044】
S28では、「始点」と「終点」の2点間の距離の算出を行う。始点PSと終点PEとの座標は前述の計算により取得されているので、始点PSと終点PEとの間の距離を算出することが出来る。上述の第1選択グリッド線GL1と第2選択グリッド線GL2との距離を算出する場合も、同様の手順で算出することが可能である。その後、ポータブルパソコン100の内部処理を終了する。
【0045】
次に、別の現場での運用についても説明を行う。
【0046】
配管工事は掘削作業だけではなく、マンホールの中での作業が必要となるケースもある。図10に、交差点の様子を示した模式図を示す。図11に、図10で基準プレート10を配置した模式図を示す。図12に、図10にグリッド線GLが合成された合成画面を示す。図10から図12では、交差点にある第1マンホール15及び第2マンホール16の位置を確認するケースを説明する。現場の様子を示した図10の撮影ウィンドD50には撮影画像P20として交差点の風景が映し出されている。そして、操作メニューD10にて「平面」を選択している。この状態で、撮影画像P20に「平面」のグリッド線GLを合成されることが選択される。図4のS11にあたるタイミングである。
【0047】
そして、図11に示される撮影画像P20に対して、撮影画像P20に写された基準プレート10に対して平行にグリッド線GLを形成する。そして、画面上の被測定物である第1マンホール15と第2マンホール16の距離を、第1マンホール15の直近を通る第1選択グリッド線GL1と第2マンホール16の直近を通る第2選択グリッド線GL2とを選択することで、計測することが可能となる。
【0048】
図13に、幅の広い道路の様子を撮影した模式図を示す。図14に、図13のマンホールと基準プレートの位置を示した模式図を示す。図15に、マンホール同士の距離を示した模式図を示す。撮影画像P20は交差点での第1マンホール15及び第2マンホール16の位置を計測しているが、撮影画像P30のような4車線の道路においても同様の操作で第1マンホール15と第2マンホール16の距離を検出することが可能である。
【0049】
図16に、交差点の様子を撮影した模式図を示す。図16の交差点は図10の交差点とは別の現場の様子を示している。図16の撮影ウィンドD50に示された合成画像G40は、交差点に基準プレート10を配置した状況で、角度検出用のグリッド線GLを合成したものである。操作メニューD10に示される「角度」のボタンを選択することで、基準プレート10の角を基準にグリッド線GLが放射線状に形成される。どの角を指定するかについては、キーボード102又はタッチパネル103を用いて選択が可能である。グリッド線GLは基準プレート10の面を基準にして放射線上にグリッド線GLが形成されるので、実質上は交差点の地面の上に放射線上のグリッド線GLが形成されるのと同じこととなる。図16には、第1マンホール15と第2マンホール16が示されており、基準プレート10に対して、第1マンホール15及び第2マンホール16がどのような角度で配置されるのかを計測することが可能である。
【0050】
図17に、交差点の様子を撮影した模式図を示す。図17の交差点は図10及び図16の交差点とは別の現場の様子を示している。図17の撮影ウィンドD50に示された合成画像G50は交差点の様子を示し、基準プレート10を基準にZ軸方向の角度を示すグリッド線GLが描かれている。これによって、高さ方向の角度を計測することが可能である。
【0051】
第1実施形態の計測システムは上記構成であるので、以下に示すような作用効果を奏する。まず、現場の測量が容易に出来るようになるという効果が挙げられる。所定の幅の辺を有する四角形状の基準プレート10と、基準プレート10を含んだ被測定風景を撮影し、撮影データをデジタル画像データ化する撮影手段であるカメラ部104と、カメラ部104と通信してデジタル画像データである撮影画像P10を取得し、基準プレート10の形状情報をもとに撮影画像P10に所定間隔で複数の仮想線を加えた加工データである合成画像G10を形成する計算手段となる中央演算装置106と、中央演算装置106から合成画像G10を取得して表示する画像表示手段となる液晶ディスプレイ101と、液晶ディスプレイ101に示された情報に対応して合成画像G10上のポイントを指定するデータ入力手段となるキーボード102及びタッチパネル103と、キーボード102及びタッチパネル103によって指定された複数のポイント間の距離を計算手段によって計測するものである。
【0052】
ポータブルパソコン100に備えられた液晶ディスプレイ101に合成画像G10を表示して、キーボード102又はタッチパネル103により第1選択グリッド線GL1及び第2選択グリッド線GL2を選択することで、撮影画像P10としてカメラ部104で撮影された現場の特定の位置の距離を計測することが可能となる。すなわち拡張現実技術により、グリッド線GLを風景写真にオーバーレイし、第1選択グリッド線GL1及び第2選択グリッド線GL2を選択させることで、具体的な距離の計測を可能としている。従来は、複数の作業員がメジャーなどを用いて計測していたが、第1実施形態の測量システムを用いることで作業効率は大幅に向上する。なお、測量精度は0.1%程度の誤差で測量が可能であるので、従来の方法と比較しても測量精度を向上させることが可能である。
【0053】
また、現場が交通量の多い道路であったり、測量したい地点が道路の真ん中にあったりするなどの場合にも、第1実施形態の測量システムを用いることで、作業員は安全に測量をすることが可能となる。
【0054】
また、ポータブルパソコン100に他のソフトを導入しておくことで、更に測量の幅を広げることが可能となる。例えば、図5及び図6に示される掘削溝20は、幅と深さを「縦面」で測量し、そして奥行き方向の距離を「平面」で計測することで、掘削溝20の容積を算出することが可能となる。
【0055】
これまでは、作業員が計測した寸法を元に容積を計算するなどの手間をかけていたが、ポータブルパソコン100に必要なソフトを導入すれば、幅、深さ、奥行きの寸法を取得することで、容積を算出することは容易である。このような容積は埋め戻しに必要な概算の骨材料を判明できれば良く、簡易な方法で容積を取得できれば、作業員の作業負担を軽減し、作業効率を向上させることが可能である。
【0056】
また、必要な距離を計測することで、図10から図12の交差点の第1マンホール15及び第2マンホール16の位置を平面図に落とすことも可能である。図18に、交差点の平面図を示す。図18の交差点は図10から図12の交差点に対応しており、寸法aから寸法iや、第1マンホール15及び第2マンホール16の基準プレート10の角を起点とした角度を計測することで、図18に示すような平面図を生成することも可能である。図18に示すような平面図のデータは、交差点のパターンを複数用意して、その中に寸法を記入する方式を採用するなど、それ程複雑な処理を必要とせずに図にすることが可能である。
【0057】
このような現場の見取り図も、やはり従来は作業員が作図していたが、それなりの時間と手間を要するため、簡易な方法でこのような図面を取得できることで、作業員の作業負担を軽減し、作業効率を向上させることが可能である。
【0058】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0059】
例えば、基準プレート10のデザインを例示しているが、周囲の風景に対して所定の寸法及び角度を得られる形状、彩色であれば、例示された以外の基準プレート10を用いることを妨げない。基準プレート10が長方形であっても良いし、四角形以外の多角形、或いは円形等であっても流用が可能である。要は寸法の基準となる共通の形状、サイズのプレートが用意されれば、足りる。ただし、正方形である方が都合の良い場合が多い。
【0060】
また、撮影画像P10から撮影画像P30等複数の事例を挙げたが、この例に限定されずに様々な現場での測量が可能である。また、ポータブルパソコン100のようなハンディータイプのパソコンでなくとも、撮影手段としてのデジタルカメラとそのデジタルカメラで撮影したデータを加工データに合成処理する計算手段としてのパソコン或いは専用機械があれば良い。また、別の実施形態として、デジタルカメラで取得した映像を撮影者とは別の作業員の持つ端末に転送し、別の作業員が計測デジタルカメラ行うような形態であっても運用が可能である。
【0061】
また、本実施形態ではグリッド線GLを格子状に形成するように示しているが、液晶ディスプレイ101においてグリッド線GLが同一平面上に等距離に配置されるドットで表す、或いはグリッドを表示せずに平面を表示し平面上のポイントを取得できるようにしても良い。ポータブルパソコン100の内部の処理上は、仮想のグリッド線GLを設けて距離の算出を行なう結果となれば良い。つまり、基準プレート10の寸法Aを基準としてポータブルパソコン100が距離を把握し、指定点間の距離を算出できれば良いのであるから、グリッド線GL以外の形態を示すことを妨げない。
【0062】
また、本実施形態において取得画像D6あるいは撮影ウィンドD50に含まれる撮影画像P10は静止したもの1つに対して座標計算や角度算出を行っているが、複数の静止画像或いは動画からであっても、計算が可能である。複数の静止画像を用いる場合でも、基準プレート10が画面のどこかに含まれれば計算が可能であるので、例えばカメラ部104による撮影範囲を基準プレート10が入るようにポータブルパソコン100を動かすことで(基準プレート10を動かさないことが前提である)、適用範囲を広げることも可能である。動画を用いる場合も、同様のことが言える。よって、このような運用をすることを妨げない。
【符号の説明】
【0063】
10 基準プレート
100 ポータブルパソコン
101 液晶ディスプレイ
102 キーボード
103 タッチパネル
104 カメラ部
105 内部記憶装置
106 中央演算装置
D10 操作メニュー
D50 撮影ウィンド
G10 合成画像
GL グリッド線
P10 撮影画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅の辺を有する四角形状の基準プレートと、
前記基準プレートを含んだ被測定風景を撮影し、撮影データをデジタル画像データ化する撮影手段と、
前記撮影手段と通信して前記デジタル画像データを取得し、前記基準プレートの形状情報をもとに3次元空間情報を構築し、前記デジタル画像データに仮想平面を合成した加工データを構成する計算手段と、
前記デジタル画像データを表示する画像表示手段と、
前記画像表示手段に示された情報に対応して前記加工データが有する前記仮想平面上に任意の第1ポイントと第2ポイントとを指定するデータ入力手段と、を有し、
前記計算手段により、前記仮想平面上に指定された前記第1ポイント及び前記第2ポイントを、前記3次元空間情報に投影し、前記第1ポイントと前記第2ポイントとの差を前記計算手段によって計測することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計測システムにおいて、
前記加工データには、前記仮想平面上に等間隔に配置されたグリッド線が含まれ、
前記第1ポイントは、前記グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで前記第1グリッド線上に取得され、
前記第2ポイントが、前記グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで前記第2グリッド線上に取得され、
前記第1グリッド線と前記第2グリッド線との差を計算することで、前記被測定風景から得たい距離を取得することを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の計測システムにおいて、
前記加工データには、前記仮想平面上に一点を起点とするグリッド線を放射線上に配置し、
前記第1ポイントは、前記グリッド線のうち第1グリッド線を選択することで前記第1グリッド線上に取得され、
前記第2ポイントが、前記グリッド線のうち第2グリッド線を選択することで前記第2グリッド線上に取得され、
前記第1グリッド線と前記第2グリッド線との差を計算することで、前記被測定風景から得たい角度を取得することを特徴とする計測システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−194002(P2012−194002A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57011(P2011−57011)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(500248010)ウエストユニティス株式会社 (1)