説明

計測器

【課題】計測器がアラーム状態になった場合には、専用のソフトウエアを用いることなくパソコンでアラーム音を発生させることができる計測器を実現すること。
【解決手段】インターネットによるパソコンとの通信機能を有する計測器において、
アラーム設定値に対する測定値のアラーム状態を検出するアラーム検出手段と、前記パソコンの汎用ウェブブラウザに対して周期的に計測器に固有の測定画面を出力する画面出力手段と、前記アラーム検出手段がアラーム状態を検出することにより前記汎用ウェブブラウザ上で所望のアラーム音を発生させるアラーム音出力手段、を設けたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測器に関し、詳しくは、インターネットによるパソコンとの通信機能を有する記録計などの計測器の改良に関するものである。
【0002】
近年のインターネットの普及に伴い、たとえば特許文献1にも記載されているように、計測器にインターネットによる通信機能を組み込むことが広く行われている。
【0003】
図4は、特許文献1に記載されている従来の測定システムの一例を示すブロック図である。計測器1と通信端末2はそれぞれ少なくとも1台がネットワーク3を介して相互に接続されている。
【0004】
計測器1には、測定対象4の信号を測定する測定機能1a、計測器1がイベント発生を検知したときに所定のアドレス先に電子メールを送信するSMTP(Simple Mail Transfer Protocol/簡易メール転送プロトコル)クライアント機能1b、計測器1がイベント発生を検知したときにイベント発生前後の測定画面情報を個々のアドレスを有するウェブ画像ファイルとして格納するHTTP(Hyper Text Transfer Protocol/ハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル)サーバー機能1c、計測器1がイベント発生を検知したときに各イベントに応じて電子メールを送信すべきアドレス先が格納されたイベント別アドレス格納部1dなどが設けられている。
【0005】
測定対象4の温度や圧力などが外部から制御可能な場合には、測定対象制御機能1eを設けてもよい。
【0006】
通信端末2は、ネットワーク3を介して計測器1との間で電子メールの授受やウェブ画像ファイルの閲覧を行うものであり、ノートパソコン・携帯電話・PHS・パームトップ型の携帯端末などを用いる。なお、パソコンはデスクトップ型であってもよい。
【0007】
図4の構成において、計測器1がイベント発生を検知すると、そのイベントの内容に応じて、イベント別アドレス格納部1dに格納されている所定のアドレス先に電子メールで発生したイベントの内容を通知する。
【0008】
電子メールで通知する内容は、たとえばレコーダにおいて測定値が予め設定されている警報設定値を超えたアラームが発生した場合には、アラーム発生時刻、アラームが発生した測定チャンネルのアラーム発生要因と測定値、アラームが発生した状態のトレンド画面を格納しているURLアドレスなどである。
【0009】
作業者は、通信端末2に組み込まれているブラウザを用いて電子メールで送られてきたURLアドレスにアクセスすることで、計測器1から離れた場所であっても、アラームが発生した状態の計測器1のトレンド画面を目視確認できる。
【0010】
なお、URLアドレスで示す画面は、トレンド画面に限るものではなく、デジタル測定値の表示画面やバーグラフ表示画面、あるいは計測器の測定条件を設定する画面であってもよい。
【0011】
また、測定対象4に対する制御機能1eを備えている場合には、機能的なシステム構成図を表示してアラーム発生部分を模式的に表示してもよい。
【0012】
ネットワーク3に接続する計測器1と通信端末2はいずれも1台に限るものではなく、必要に応じてそれぞれ複数N台を接続することによって、計測器1と通信端末2との関係が1:N、N:1あるいはN:Nのさまざまな規模の計測システムが実現できる。すなわち、このような計測システム構成とすることにより、1台あるいは複数N台の計測器1の測定状況を1台あるいは複数N台の通信端末2でモニターできることになる。
【0013】
なお、計測システムを構成する計測器は単一種類に限るものではなく、たとえばレコーダとデジタルオシロスコープを混在させるなど複数種類を組み合わせることができる。
【0014】
特許文献1に記載されている構成によれば、計測器の設置場所から離れた場所で作業したり移動中の作業者に対して、専用のソフトウェアを用いることなく既存の電子メール機能を計測器に組み込むことで、計測器のアラームなどのイベント発生状況を確実に通知できる。
【0015】
また、屋内の通常のネットワークを用いる場合においても、計測器のアラームなどのイベントが発生した時だけネットワークを介して一般的に負荷の大きい画像データは添付しないで通信負荷の軽いテキストだけを電子メールで送信し、画像データは必要に応じて見たい人だけがブラウザで見るようにしているので、従来のシステム構成に比べてネットワークの利用効率を高めることができる。
【0016】
そして、電子メールで通知する内容に計測器のイベント発生時を含む画面イメージの画像ファイルにアクセスするためのURLアドレスを入れているので、電子メールとウェブブラウザとを連携させることができる。
【0017】
ところで、インターネットによる通信機能を有し図4の測定システムを構成する計測器1において、計測器1のアラーム状態を通信端末2としてのパソコンのアラーム音で通知できると、オペレータは計測器1やパソコンの表示画面をモニターしていなくても聴覚でアラーム状態を確認できるので、オペレータはアラーム監視作業と並行して他の作業を効率よく行うことができる。
【0018】
図4の測定システムにおいて、パソコン上のアラーム音で知らせるためには、図5に示すように計測器1としての記録計に専用のソフトウエアをパソコン2にインストールし、監視対象となる記録計1への接続やパソコン2上でアラームを出すための設定をする必要がある。
【0019】
具体的には、たとえば図6に示すように、
1)パソコン2のアラーム確認部21から記録計1の専用サービスポート11にアラーム状態の問い合わせコマンドを送信する
2)記録計1の専用サービスポート11はアラーム状態の問い合わせコマンドに基づきアラーム検出部12のアラーム状態を参照する
3)記録計1の専用サービスポート11からパソコン2のアラーム確認部21にアラーム検出部12のアラーム状態を送信する
4)パソコン2のアラーム確認部21はアラーム検出部12のアラーム状態に基づきアラーム音発生部22からアラーム音を発生させる
という一連の処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2001−338380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、従来の構成によれば、パソコン上のアラーム音で知らせるためには、前述のようにパソコン2に記録計1に専用のソフトウエアをインストールしなければならない。
【0022】
また、ある記録計を複数台のパソコンで遠隔監視したいとき、専用ソフトウエアは記録計に専用のサービスを使うため、監視できるパソコンの台数が制限されてしまう。
【0023】
また、その記録計の専用サービスの通信資源が全て使われていたときは遠隔監視できなくなる。
【0024】
さらに、1台のパソコンで複数台の記録計の遠隔監視をするときは、監視できる記録計の台数の上限は専用ソフトウエアの仕様によって制限されてしまう。
【0025】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、その目的は、計測器がアラーム状態になった場合には、専用のソフトウエアを用いることなくパソコンでアラーム音を発生させることができる計測器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、
インターネットによるパソコンとの通信機能を有する計測器において、
アラーム設定値に対する測定値のアラーム状態を検出するアラーム検出手段と、
前記パソコンの汎用ウェブブラウザに対して周期的に計測器に固有の測定画面を出力する画面出力手段と、
前記アラーム検出手段がアラーム状態を検出することにより前記汎用ウェブブラウザ上で所望のアラーム音を発生させるアラーム音出力手段、
を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の計測器において、
前記アラーム音出力手段は、
前記アラーム検出手段がアラーム状態を検出することにより前記汎用ウェブブラウザ上にアラームポップアップウインドウを表示させ、このアラームポップアップウインドウを閉じることによりアラーム音を止めることを特徴とする。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の計測器において、
前記アラームポップアップウインドウには、アラーム音をON/OFFするスイッチ機能を設けたことを特徴とする。
【0029】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の計測器において、
前記パソコンは複数台接続されていることを特徴とする。
【0030】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の計測器において、
前記パソコンには複数台の計測器が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、計測器がアラーム状態になった場合には、専用のソフトウエアを用いることなくパソコンでアラーム音を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に基づく計測器を用いた測定システムの具体例を示すブロック図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】図1および図2の具体例を示すブロック図である。
【図4】従来の測定システムの一例を示すブロック図である。
【図5】図4の簡略説明図である。
【図6】図5の主要部説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は本発明に基づく計測器を用いた測定システムの具体例を示すブロック図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図4との相違点は、計測器1に画面出力機能1hとアラーム音出力機能1iが設けられ、パソコン2には汎用ブラウザ2cが設けられていることである。
【0034】
図2は図1の動作説明図であり、以下のようなシーケンスで動作する。
1)ブラウザ2cから計測器としての記録計1のウェブサーバ1cに定周期(たとえば約10秒)でアクセスする。
2)記録計1のウェブサーバ1cは画面出力機能1hを介して記録計1に固有の測定画面を出力しブラウザ2cに表示する。
3)ブラウザ2cは記録計1のアラーム状態を検出するとアラームポップアップウインドウ2dを新たに開いてアラーム音を発生させる。
4)アラームポップアップウインドウ2dを閉じるとアラーム音は止まる。
【0035】
このようなシーケンスを繰り返して実行する過程で、ブラウザ2cが再度記録計1のアラームを検出すると、アラームポップアップウインドウ2dを新たに開いてアラーム音を発生させる。
【0036】
なお、図2のブラウザ2cの表示画面において、測定画面Aとしてグループ1に属する6系統のトレンドが表示され、操作パネル画面Bにはインターネットを介して記録計1を実際に操作設定するための複数のスイッチ類が設けられ、画面設定領域Cには画面サイズを調整したり画面自動更新機能やアラーム音をON/OFF設定するスイッチなどが設けられ、リンク領域Dには記録計1からアラームサマリや全測定データや動作履歴のログなどを読み出して表示するための各種のリンクが設けられている。
【0037】
図3は図1および図2の具体例を示すブロック図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、記録計1のHTTPポート1jには、画面出力用CGI(Common Gateway Interface)1k、本体画面画像ファイル1m、アラーム音用CGI1nおよびアラーム音出力ファイル1oが接続され、画面出力用CGI1kにはアラーム検出部1gが接続されている。
【0038】
このような構成において、ブラウザ2cから記録計1のウェブサーバにアクセスされることにより、記録計1の画面出力用CGI1kおよびアラーム音出力ファイル1oもアクセスされて、記録計1がアラーム状態の場合にパソコン2側でアラーム音を鳴らす機能が実現される。なお、画面出力用CGI1kは、ブラウザ2cから1回アクセスされると、その後は定周期でリロードされるものとする。
【0039】
画面出力用CGI1kに記述されるレスポンスのHTML文は、以下のような内容になる。
画面出力用CGI1kが定周期でブラウザ2cからアクセスされるために、HTMLヘッダ部に以下のようなRefreshのメタ文を記述する。
<META HTTP−EQUIV=”Refresh” CONTENT=・・・”>
【0040】
アラーム検出部1gを参照した結果、アラーム状態の時は、「<BODY>のonloadで「アラームポップアップウインドウ」を開き、アラーム音出力CGIを出力する」というJavaScript(Javaは登録商標)を起動する記述をする。なお、アラーム状態でない場合は<BODY>のonloadのアクションは記述しない。
【0041】
そして、HTMLボディ部には、本体画面の画像ファイル(png形式)を参照する記述をする。
【0042】
これにより、記録計1の本体画像ファイル1mがブラウザ2cからアクセスされることになる。
【0043】
一方、アラーム音用CGI1nは、ブラウザ2cが、前述のJavaScript「<BODY>のonloadで「アラームポップアップウインドウ」を開き、アラーム音出力CGIを出力する」を実行することによりアクセスされる。
【0044】
アラーム音用CGI1nのレスポンスのHTML文には、記録計1の本体内のたとえばwav形式のアラーム音ファイル1oを参照する記述があり、ブラウザ2cがこのアラーム音ファイル1oをアクセスすることによって、パソコン2のブラウザ2c上で所定のアラーム音が発生することになる。
【0045】
これらの実施例から明らかなように、パソコンに専用ソフトウエアを使うことなく汎用ブラウザで、記録計にアラーム状態が発生したことを、オペレータにアラーム音で知らせることができる。
【0046】
そして、汎用ブラウザのマルチウインドウを使うことにより、1台のパソコンで複数の記録計の監視が行える。
【0047】
また、パソコンにおけるウェブのアプリケーションであることから、基本的に1台の記録計に接続されるパソコンの台数制限はなく、離れている複数個所のそれぞれのパソコンに本機能を持たせて、複数個所から1台の記録計を監視することもできる。
【0048】
また、ウェブのアラーム音機能をON/OFFするスイッチを設けることにより、パソコンのアラーム音による通知を使用するか否かを選択できる。
【0049】
また、アラームポップアップウインドウ2dを閉じてパソコン2上のアラーム音を止めたあとでも一定時間アラーム状態が解除されない場合には、再度アラームポップアップウインドウ2dを開いてアラーム音を鳴らすようにしてもよい。
【0050】
また、アラームポップアップウインドウ2dを開かずに、ウインドウ上にアラーム発生を示すアイコンを表示させてもよい。そして、このアイコンをクリックするとアラーム音が止まるようにしたり、アイコンを点滅させてもよい。
【0051】
さらに、アラームポップアップウインドウ2dが開いてアラーム音を発生している状態で記録計のアラーム状態が解除されたときには、自動的にアラームポップアップウインドウ2dを閉じてアラーム音を止めるようにしてもよい。
【0052】
なお、上記実施例では、計測器が記録計の例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、アラーム検出機能およびインターネットによるパソコンとの通信機能を有するものであれば、波形測定器や電力測定器などにも適用できる。
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、計測器がアラーム状態になった場合には、専用のソフトウエアを用いることなくパソコンでアラーム音を発生させることができ、効率よくアラーム監視が行える。
【符号の説明】
【0054】
1 計測器(記録計)
1c ウェブサーバ
1g アラーム検出部
1h 画面出力機能
1i アラーム音出力機能
1j HTTPポート
1k 画面出力用CGI
1m 本体画面画像ファイル
1n アラーム音用CGI
1o アラーム音出力ファイル
2 パソコン
2b アラーム音出力部
2c 汎用ブラウザ
2d アラームポップアップウインドウ
3 インターネット
4 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットによるパソコンとの通信機能を有する計測器において、
アラーム設定値に対する測定値のアラーム状態を検出するアラーム検出手段と、
前記パソコンの汎用ウェブブラウザに対して周期的に計測器に固有の測定画面を出力する画面出力手段と、
前記アラーム検出手段がアラーム状態を検出することにより前記汎用ウェブブラウザ上で所望のアラーム音を発生させるアラーム音出力手段、
を設けたことを特徴とする計測器。
【請求項2】
前記アラーム音出力手段は、
前記アラーム検出手段がアラーム状態を検出することにより前記汎用ウェブブラウザ上にアラームポップアップウインドウを表示させ、このアラームポップアップウインドウを閉じることによりアラーム音を止めることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記アラームポップアップウインドウには、アラーム音をON/OFFするスイッチ機能を設けたことを特徴とする請求項2に記載の計測器。
【請求項4】
前記パソコンは複数台接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の計測器。
【請求項5】
前記パソコンには複数台の計測器が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の計測器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−150385(P2011−150385A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8705(P2010−8705)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】