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計測方法及び計測装置
説明

計測方法及び計測装置

【課題】共鳴角が容易に検出される計測方法及び計測装置を提供する。
【解決手段】センサーチップは、プリズム、金膜、抗原捕捉膜及び流路形成物を備える。2種類以上の抗原捕捉膜及び2種類以上の測定液において抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせが決定される。測定液は、共鳴角が検出される場合及び表面プラズモン励起蛍光の光量が測定される場合に流路に満たされる。2種類以上の抗原捕捉膜から特定の種類の抗原捕捉膜が選択された場合は、特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液が選択される。抗原捕捉膜の種類と測定液の種類とは、抗原捕捉膜の種類の違いによる共鳴角の違いが解消するように組み合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン励起蛍光分光法により計測を行う計測方法及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体媒体の内部を進行する励起光が金属膜と誘電体媒体との界面に全反射条件を満たして入射する場合は、界面からエバネッセント波がもれだし、金属膜の表面のプラズモンとエバネッセント波とが干渉する。界面への励起光の入射角が共鳴角に設定されプラズモンとエバネッセント波とが共鳴する場合にエバネッセント波の電場は著しく増強される。表面プラズモン励起蛍光分光法(SPFS)による計測においては、この増強された電場が用いられる。
【0003】
SPFSによる計測においては、金属膜の表面に抗原捕捉膜が形成され、抗原捕捉膜に抗原が捕捉され、捕捉された抗原に蛍光標識が付加される。増強された電場が蛍光標識を励起し、蛍光標識から表面プラズモン励起蛍光が放射される。表面プラズモン励起蛍光の光量が測定され、抗原の有無、抗原の濃度等が求められる。
【0004】
特許文献1は、表面プラズモン励起蛍光による計測における共鳴角の検出に関する。共鳴角の検出においては、界面への励起光の入射角が走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−354092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SPFSによる計測においては、計測の対象の抗原の種類に応じて抗原捕捉膜の種類が選択される。例えば、計測の対象の抗原の種類に応じて抗原捕捉膜に固定される抗体の種類及び密度が選択される。
【0007】
一方、抗原捕捉膜の種類が変化した場合は、他の計測の条件が同じときには、共鳴角も変化する。
【0008】
これらのことから、計測の対象の抗原の種類が変化した場合は、共鳴角も変化する。共鳴角が変化する場合は、共鳴角の検出において界面への励起光の入射角の走査範囲が広がり、共鳴角の検出が容易でなくなる。例えば、計測に必要な時間が長くなる、計測に必要な装置が複雑になる等の問題が生じる。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するためになされる。本発明の目的は、抗原捕捉膜の種類の違いによる共鳴角の違いが減少し、共鳴角が容易に検出される計測方法及び計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1から第4までの局面は、表面プラズモン励起蛍光分光法により計測を行う計測方法に向けられる。
【0011】
本発明の第1の局面においては、計測の対象の抗原と結合する抗体が固定された2種類以上の抗原捕捉膜及び2種類以上の測定液において抗原捕捉膜の種類の違いによる共鳴角の違いが解消するように抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせが決定される。
【0012】
2種類以上の抗原捕捉膜から特定の種類の抗原捕捉膜が選択される。決定された組み合わせにおいて特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液が選択される。特定の種類の抗原捕捉膜を備えるセンサーチップが準備される。
【0013】
センサーチップは、誘電体媒体、導電体膜、特定の種類の抗原捕捉膜及び流路形成物を備える。誘電体媒体は、入射面、反射面及び出射面を備える。励起光が入射面に入射し反射面に反射され出射面から出射するように入射面、反射面及び出射面は配置される。流路形成物には流路が形成される。特定の種類の抗原捕捉膜は流路の内部に露出する。導電体膜は、第1の主面及び第2の主面を備える。反射面は、第1の主面に密着する。特定の種類の抗原捕捉膜は、第2の主面に定着する。
【0014】
試料液が流路に満たされる。試料液が流路に満たされる前又は満たされた後に特定の種類の測定液が流路に満たされ、その状態において共鳴角が検出される。
【0015】
試料液が流路に満たされた後であって特定の種類の測定液が流路に満たされ共鳴角が検出された後に、抗原と結合する蛍光標識抗体を含む蛍光標識液が流路に満たされる。
【0016】
蛍光標識液が流路に満たされた後に、特定の種類の測定液が流路に満たされ、その状態において表面プラズモン励起蛍光の光量が測定される。
【0017】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、2種類以上の測定液において屈折率を異ならせることにより抗原捕捉膜の種類の違いによる共鳴角の違いが解消される。
【0018】
本発明の第3の局面は、本発明の第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第3の局面においては、2種類以上の測定液において添加物の有無、添加物の種類及び添加物の濃度の全部又は一部を異ならせることにより屈折率が異ならせられる。
【0019】
本発明の第4の局面は、本発明の第1から第3までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第4の局面においては、抗原捕捉膜の種類を識別する識別子が付与されたセンサーチップが準備される。識別子が読み取られ、抗原捕捉膜の種類が識別される。識別された特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液が選択される。
【0020】
本発明の第5の局面は、表面プラズモン励起蛍光分光法により計測を行う計測装置に向けられる。
【0021】
本発明の第5の局面においては、組み合わせ記憶部、センサーチップ、測定機構、識別機構、送液機構、測定液選択部、1次免疫反応進行部、共鳴角検出部、2次免疫反応進行部及び測定部が設けられる。
【0022】
組み合わせ記憶部は、計測の対象の抗原と結合する抗体が固定された2種類以上の抗原捕捉膜及び2種類以上の測定液における抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせを記憶する。組み合わせは、抗原捕捉膜の種類の違いによる共鳴角の違いが解消するように決定される。
【0023】
センサーチップは、誘電体媒体、導電体膜、特定の種類の抗原捕捉膜及び流路形成物を備える。誘電体媒体は、入射面、反射面及び出射面を備える。励起光が入射面に入射し反射面に反射され出射面から出射するように入射面、反射面及び出射面は配置される。流路形成物には流路が形成される。特定の種類の抗原捕捉膜は流路の内部に露出する。導電体膜は、第1の主面及び第2の主面を備える。反射面は、第1の主面に密着する。特定の種類の抗原捕捉膜は、第2の主面に定着する。特定の種類の抗原捕捉膜は、先述の2種類以上の抗原捕捉膜から選択される。
【0024】
測定機構は、共鳴角を検出するとともに表面プラズモン励起蛍光の光量を測定する。
【0025】
識別機構は、抗原捕捉膜の種類を識別する。
【0026】
測定液選択部は、記憶された組み合わせを参照し、識別された特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液を選択する。
【0027】
送液機構は、試料液、蛍光標識液及び特定の種類の測定液のいずれかで流路を満たす。蛍光標識液は、抗原と結合する蛍光標識抗体を含む。
【0028】
1次免疫反応進行部は、送液機構を制御し、試料液を流路に満たさせる。
【0029】
共鳴角検出部は、試料液が流路に満たされる前又は満たされた後に、送液機構を制御し、特定の種類の測定液を流路に満たさせ、測定機構を制御し、特定の種類の測定液が流路に満たされた状態において共鳴角を検出させる。
【0030】
2次免疫反応進行部は、試料液が流路に満たされた後であって特定の種類の測定液が流路に満たされ共鳴角が検出された後に、送液機構を制御し、蛍光標識液を流路に満たさせる。
【0031】
測定部は、蛍光標識液が流路に満たされた後に、送液機構を制御し、特定の種類の測定液を流路に満たさせ、測定機構を制御し、表面プラズモン励起蛍光の光量を測定させる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、共鳴角の検出の範囲が狭くなり、共鳴角が容易に検出される。
【0033】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】計測装置の模式図である。
【図2】センサーチップの斜視図である。
【図3】センサーチップの横断面図である。
【図4】センサーチップの縦断面図である。
【図5】試薬チップの模式図である。
【図6】抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせの例を示す図である。
【図7】入射角と光量との関係を示すグラフである。
【図8】濃度と屈折率との関係を示すグラフである。
【図9】センサーチップの抗原捕捉膜の近傍の断面図である。
【図10】センサーチップの抗原捕捉膜の近傍の断面図である。
【図11】センサーチップの抗原捕捉膜の近傍の断面図である。
【図12】センサーチップの抗原捕捉膜の近傍の断面図である。
【図13】バーコードラベルの平面図である。
【図14】コントローラーのブロック図である。
【図15】計測の流れを示すフローチャートである。
【図16】計測の流れを示すフローチャートである。
【図17】組製品の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(概略)
この望ましい実施形態は、表面プラズモン励起蛍光分光法(SPFS)により計測を行う計測方法及び計測装置に関する。
【0036】
(計測装置の構成物)
図1の模式図は、計測装置を示す。
【0037】
図1に示すように、計測装置1000は、本体1020、センサーチップ1022及び試薬チップ1024を備える。本体1020は、測定機構1042、送液機構1044、支持機構1046、バーコードリーダー1048、操作ボタン1050及びコントローラー1052を備える。
【0038】
測定機構1042は、レーザーダイオード1060、直線偏光板1062、ミラー1064、ミラー駆動機構1066、光電子増倍管1080、バンドパスフィルター1082、バンドパスフィルター駆動機構1084及びフォトダイオード1086を備える。
【0039】
これらの構成物以外の構成物が計測装置1000に付加されてもよい。これらの構成物の一部が計測装置1000から省略されてもよい。
【0040】
(センサーチップの構成物)
図2から図4までの模式図は、センサーチップを示す。図2から図4までは、それぞれ、斜視図、横断面図及び縦断面図である。
【0041】
図2から図4までに示すように、センサーチップ1022は、プリズム1100、金膜1102、抗原捕捉膜1104、流路形成物1106及びバーコードラベル1108を備える。流路形成物1106は、流路形成シート1120及び流路形成蓋1122を備える。プリズム1100は、入射面1140、反射面1142及び出射面1144を備える。流路形成物1106には、流路1160が形成される。抗原捕捉膜1104には計測の対象の抗原と特異的に結合する抗体が固定される。
【0042】
これらの構成物以外の構成物がセンサーチップ1022に付加されてもよい。
【0043】
(試薬チップの構成物)
図5の模式図は、試薬チップを示す。
【0044】
図5に示すように、試薬チップ1024は、検体容器1180、希釈容器1182、希釈液容器1184、蛍光標識液容器1186、2個の測定液容器1188及び洗浄液容器1190を備える。検体容器1180には検体1210が収容され、希釈容器1182には試料液1212が収容され、希釈液容器1184には希釈液1214が収容され、蛍光標識液容器1186には蛍光標識液1216が収容され、2個の測定液容器1188には2種類の測定液1218が収容され、洗浄液容器1190には洗浄液1220が収容される。測定液1218は、共鳴角θrが検出される場合及び表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される場合に流路1160に満たされる。
【0045】
これらの構成物以外の構成物が試薬チップ1024に付加されてもよい。
【0046】
(抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせ)
図6は、抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせの例を示す。
【0047】
図6に示すように、計測に先立って、実際に使用される抗原捕捉膜1104の候補になる2種類の抗原捕捉膜A及びB並びに実際に使用される測定液1218の候補になる2種類の測定液A’及びB’が想定され、2種類の抗原捕捉膜A及びB並びに2種類の測定液A’及びB’において抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせが決定される。例えば、抗原捕捉膜Aと試料液A’とが組み合わされ、抗原捕捉膜Bと試料液B’とが組み合わされる。
【0048】
2種類の抗原捕捉膜A及びBから実際に使用される特定の種類の抗原捕捉膜1104が選択された場合は、特定の種類の抗原捕捉膜1104と組み合わされた特定の種類の測定液1218が選択され実際に使用される。例えば、抗原捕捉膜Aを備えるセンサーチップ1022が本体1020に取り付けられる場合は、測定液A’が流路1160に満たされ、抗原捕捉膜Bを備えるセンサーチップ1022が本体1020に取り付けられる場合は、測定液B’が流路1160に満たされる。
【0049】
抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせは、抗原捕捉膜1104の種類の違いによる共鳴角θrの違いが解消するように決定される。これにより、共鳴角θrの検出の範囲が他の原因による共鳴角θrのばらつきの範囲と同程度にまで狭くなり、共鳴角θrが容易に検出される。
【0050】
3種類以上の抗原捕捉膜1104の候補が想定されてもよく、3種類以上の測定液1218の候補が想定されてもよい。一般的には、実際に使用される抗原捕捉膜1104の候補になる2種類以上の抗原捕捉膜1104及び実際に使用される測定液1218の候補になる2種類以上の測定液1218が想定され、2種類以上の抗原捕捉膜1104及び2種類以上の測定液1218において抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わされが決定される。
【0051】
3種類以上の抗原捕捉膜1104の候補が想定される場合は、抗原捕捉膜1104の種類の数と測定液1218の種類の数とが異なってもよい。例えば、抗原捕捉膜A及びBに試料液A’が組み合わされ、抗原捕捉膜Cに試料液C’が組み合わされてもよい。
【0052】
2種類以上の抗原捕捉膜1104においては、固定される抗体の種類、密度等が抗原捕捉膜1104により異なる。2種類以上の抗原捕捉膜1104からの特定の種類の抗原捕捉膜1104の選択は、計測の目的に応じて行われる。例えば、計測の対象の抗原に応じて、当該抗原と特異的に結合する抗体が固定された特定の種類の抗原捕捉膜1104が選択される。抗体の種類、例えば、抗体の分子量は、共鳴角θrに影響を与える。抗体の密度も共鳴角θrに影響を与える。抗体の種類、密度等による共鳴角θrの違いは約5°に達する場合もある。
【0053】
共鳴角θrは、プリズム1100、金膜1102、抗原捕捉膜1104及び測定液1218の屈折率(n及びk)に依存する。このため、2種類以上の測定液1218において屈折率を異ならせることにより抗原捕捉膜1104の種類の違いによる共鳴角θrの違いを解消できる。
【0054】
望ましくは、2種類以上の測定液1218において添加物の有無、添加物の種類及び添加物の濃度の全部又は一部を異ならせることにより屈折率が調整される。これにより、屈折率の調整が容易になる。ただし、これ以外により屈折率が調整されてもよい。例えば、溶媒の種類を異ならせることにより屈折率が調整されてもよい。
【0055】
添加物は、望ましくは糖であり、さらに望ましくはショ糖である。これにより、屈折率の調整が容易になる。また、抗体、抗原、蛍光標識抗体等へ与える影響が小さくなる。さらに、添加物の入手が容易になる。加えて、添加物の取り扱いが容易になる。ただし、抗体、抗原、蛍光標識抗体等に与える影響が小さい限り、添加物がショ糖以外の糖であってもよく、添加物が糖以外であってもよい。
【0056】
(組み合わせの具体例)
図7のグラフは、励起光の入射角と表面プラズモン励起蛍光の光量との関係を示す。図7のグラフは、抗原捕捉膜に固定された抗体の種類のみが異なる2種類のセンサーチップの各々について励起光の入射角と表面プラズモン励起蛍光の光量との関係を示す。図7のグラフに示す励起光の入射角と表面プラズモン励起蛍光の光量との関係の測定においては、検体から抽出されたAFP(α−フェトプロテイン)抗原濃度が1.0ng/mlの試料液が用いられ、抗原捕捉膜の種類以外は同一の条件で測定が行われている。
【0057】
図7に示すように、抗体Aの場合は、光量が極大になる入射角は58.4度であり、抗体Bの場合は、光量が極大になる入射角は61.3度であり、抗体A及びBを比較した場合に光量が極大になる入射角に2.9度の差が生じる。このように、抗原が同一であり抗原の濃度が同一である場合でも共鳴角θrは抗原捕捉膜1104の種類によって異なる。抗原捕捉膜1104の種類、抗原の種類等によっては、さらに大きな差が共鳴角θrに生じる場合もある。
【0058】
プリズム1100の屈折率がn=1.52であり、金膜1102の屈折率がn=0.26,k=3.63である場合は、測定液1218の屈折率がn=0.01だけ大きくなると共鳴角θrは1.58度大きくなる。
【0059】
したがって、抗体Aが固定された抗原捕捉膜と組み合わされる測定液の屈折率よりも抗体Bが固定された抗原捕捉膜と組み合わされる測定液の屈折率を0.018だけ小さくすることにより、抗体の種類の違いによる共鳴角θrの違いを解消できる。
【0060】
図8のグラフは、ショ糖の濃度と屈折率との関係を示す。
【0061】
図8に示すように、ショ糖の濃度が高くなるほど測定液1218の屈折率が大きくなる。図8からは、ショ糖の濃度の差を約10%だけ大きくすることにより屈折率を0.018だけ大きくできることがわかる。
【0062】
(1次免疫反応の進行)
計測が行われる場合は、図9に示すように、送液機構1044により試料液1212が流路1160に満たされ、抗原1242が抗原捕捉膜1104に捕捉される。抗原1242の捕捉は、抗原捕捉膜1104に固定された抗体1240と試料液1212に含まれる抗原1242とを結合させる1次免疫反応(抗原−抗体反応)により行われる。
【0063】
(共鳴角の検出)
抗原1242が捕捉された後に、図10に示すように、送液機構1044により測定液1218が流路1160に満たされ、測定液1218が流路1160に満たされた状態において測定機構1042により共鳴角θrが検出される。抗原捕捉膜1104の種類の違いによる共鳴角θrの違いが解消するように抗原捕捉膜1104の種類に応じて測定液1218の種類が選択された場合は、抗原捕捉膜1104の種類によらず共鳴角θrはほぼ一定である。このため、共鳴角θrの検出の範囲は概ね0〜1°と狭く、共鳴角θrの検出は容易である。このことは、共鳴角θrの検出に必要な時間を短くすること、共鳴角θrの検出に必要な機構を小型化すること等に寄与する。抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類とは、典型的には共鳴角θrが約70°になるように組み合わされる。ただし、共鳴角θrの目標は、プリズム1100の材質、形状等のセンサーチップ1022の材質、構造に応じて設定される。
【0064】
(2次免疫反応の進行)
共鳴角θrが検出された後に、図11に示すように、送液機構1044により蛍光標識液1216が流路1160に満たされ、抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242に蛍光標識抗体1244が付加される。蛍光標識抗体1244の付加は、抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242と蛍光標識液1216に含まれる蛍光標識抗体1244とを結合させる2次免疫反応(抗原−抗体反応)により行われる。
【0065】
(表面プラズモン励起蛍光の光量の測定)
蛍光標識抗体1244が付加された後に、図12に示すように、送液機構1044により測定液1218が流路1160に満たされ、測定液1218が流路1160に満たされた状態において測定機構1042により表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される。
【0066】
(センサーチップの構造)
図2から図4までに示すように、反射面1142は金膜1102の一方の主面1260に密着させられ、抗原捕捉膜1104は金膜1102の他方の主面1262に定着させられる。流路形成物1106は、金膜1102及び抗原捕捉膜1104が形成されたプリズム1100に接合される。
【0067】
センサーチップ1022は、「検査チップ」「分析チップ」「バイオチップ」「試料セル」等とも呼ばれる。センサーチップ1022は、望ましくは各辺の長さが数mmから数cmまでの範囲内にある構造物であるが、より小型の又はより大型の構造物であってもよい。
【0068】
(プリズム)
図2から図4までに示すように、プリズム1100は、台形柱体である。プリズム1100は、望ましくは等脚台形柱体である。プリズム1100の一方の傾斜側面は入射面1140になる。プリズム1100の幅広の平行側面は反射面1142になる。プリズム1100の他方の傾斜側面は出射面1144になる。
【0069】
励起光ELが入射面1140へ入射し反射面1142に反射され出射面1144から出射するように入射面1140、反射面1142及び出射面1144が配置される。励起光ELは、全反射条件を満たして反射面1142に入射する。
【0070】
プリズム1100の形状は、励起光ELを共鳴角θrで反射面1142に入射させることができるように決められる。この条件が満たされる限り、プリズム1100が台形柱体以外でもよく、プリズム1100が「プリズム」とは呼びがたい形状物に置きかえられてもよい。例えば、プリズム1100が半円柱体であってもよく、プリズム1100が板に置きかえられてもよい。
【0071】
プリズム1100は、励起光ELに対して透明な誘電体からなる誘電体媒体である。プリズム1100の材質は、樹脂、ガラス等である。プリズム1100の材質が樹脂である場合は、プリズム1100は、望ましくは射出成型により作製される。
【0072】
(金膜)
金膜1102は、薄膜である。金膜1102の膜厚は、望ましくは100nm以下であり、さらに望ましくは40〜50nmである。ただし、金膜1102の膜厚がこの範囲外であってもよい。
【0073】
金膜1102が表面プラズモン共鳴を発生させる他の種類の導電体からなる導電体膜に置きかえられてもよい。例えば、金膜1102が銀、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの金属を含む合金からなる導電体膜に置きかえられてもよい。
【0074】
金膜1102は、スパッタリング、蒸着、メッキ等により形成される。
【0075】
(抗原捕捉膜)
図3及び図4に示すように、抗原捕捉膜1104は、流路1160の内部に露出する。このため、液体が流路1160に満たされた場合は、流路1160に満たされた液体が抗原捕捉膜1104に接触する。計測の対象の抗原1242を含む試料液1212が抗原捕捉膜1104に接触した場合は、抗原捕捉膜1104に固定された抗体1240と試料液1212に含まれる抗原1242とが結合する。計測の対象の抗原1242が抗原捕捉膜1104に捕捉された状態において蛍光標識抗体1244を含む蛍光標識液1216が抗原捕捉膜1104に接触した場合は、抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242と蛍光標識液1216に含まれる蛍光標識抗体1244とが結合する。
【0076】
抗原捕捉膜1104は、非流動体からなる。したがって、液体が抗原捕捉膜1104に接触しても、抗原捕捉膜1104は移動しない。
【0077】
抗原捕捉膜1104は、ラバー製のアプリケーターによりパターニングされ、金膜1102の他方の主面1262の一部にのみ定着する。抗原捕捉膜1104が他の方法によりパターニングされてもよい。抗原捕捉膜1104の平面形状は、円形、多角形等である。抗原捕捉膜1104の径は、望ましくは数mmである。抗原捕捉膜1104の厚さは、望ましくは100nm以下であり、さらに望ましくは60nm以下である。
【0078】
抗原捕捉膜1104が形成される場合は、金膜1102の他方の主面1262に自己組織化(SAM)膜が形成され、自己組織化膜上に固相支持体層が形成され、固相支持体層に抗体1240が固定される。
【0079】
自己組織化膜が形成される場合は、自己組織化膜を構成する物質が溶解又は分散させられた液体に金膜1102が形成されたプリズム1100が浸漬される。例えば、11−アミノ−1−ウンデカンチオール等のアルカンチオール誘導体のエタノール溶液に金膜1102が形成されたプリズム1100が浸漬される。
【0080】
固相支持体層が形成される場合は、固相支持体層を構成する物質が溶解又は分散させられた液体に金膜1102が形成されたプリズム1100が浸漬される。例えば、カルボキシメチルデキストラン(CMD)が溶解させられたバッファー液に金膜1102が形成されたプリズム1100が浸漬される。バッファー液は、例えば、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)及び塩化ナトリウム(NaCl)の水溶液である。
【0081】
(流路形成物)
図4に示すように、流路1160は、一方の開口1300から流路形成物1106の内部を経由して他方の開口1302へ至る。流路1160の一部は接合面に露出する。
【0082】
流路形成シート1120には反応室1322が形成される。流路形成蓋1122には経路1340及び1342が形成される。反応室1322並びに経路1340及び1342により流路1160が構成される。
【0083】
反応室1322は、流路形成シート1120の両主面を貫通する孔である。一方の経路1340は、一方の開口1300から反応室1322の一端へ至る孔である。他方の経路1342は、反応室1322の他端から他方の開口1302へ至る孔である。
【0084】
流路形成シート1120は、ポリエチレンテレフタラート等からなる基材の両主面にアクリル系粘着剤等の粘着剤からなる層が形成された両面粘着シートであり、金膜1102及び抗原捕捉膜1104が形成されたプリズム1100と流路形成蓋1122とを接合する。
【0085】
流路形成蓋1122は、表面プラズモン励起蛍光FLに対して透明な材質からなる。流路形成蓋1122は、例えば、樹脂、ガラス等からなる。流路形成蓋1122が樹脂である場合は、流路形成蓋1122は、望ましくは射出成型により作製される。
【0086】
流路形成シート1120及び流路形成蓋1122が一体物であってもよい。
【0087】
(バーコードラベル)
図13の模式図は、バーコードラベルの平面図である。
【0088】
図13に示すように、バーコードラベル1108には、バーコード1360が描かれる。バーコードラベル1108は、センサーチップ1022の構成物に貼られる。バーコードラベル1108は、励起光EL及び表面プラズモン励起蛍光FLの光路を遮らず開口1300及び1302を塞がない場所に貼られる。
【0089】
バーコード1360は、抗原捕捉膜1104の種類を識別する識別子となる。バーコード1360が他の種類の識別子に置き換えられてもよい。例えば、バーコード1360がホログラム、2次元コード、文字、記号等に置き換えられてもよい。
【0090】
ラベルを構成物に貼る以外の方法によりセンサーチップ1022に識別子が付されてもよい。例えば、識別子がセンサーチップ1022の構成物に直接的に描かれてもよい。センサーチップ1022の構成物に識別子となる切り欠き等の構造が形成されてもよい。
【0091】
(バーコードリーダー)
バーコードリーダー1048は、イメージセンサーによりバーコード1360を読み取り、抗原捕捉膜1104の種類を識別する。バーコード1360が他の種類の識別子に置き換えられる場合は、当該他の種類の識別子の識別に適した識別機構が設けられる。例えば、識別子として切り欠き等の構造が形成される場合は、当該構造を検出するリミットスイッチ、光センサー等が設けられる。
【0092】
(支持機構)
図1に示すように、支持機構1046は、センサーチップ1022を支持し、センサーチップ1022を一定の位置に位置づける。センサーチップ1022は、支持機構1046に着脱可能であり、計測ごとに交換される。支持機構1046に支持されるセンサーチップ1022が備える抗原捕捉膜1104の種類は、計測ごとに異なる可能性がある。しかし、計測装置1000においては、抗原捕捉膜1104の種類に応じて測定液1218の種類が選択され、抗原捕捉膜1104の種類が異なっても共鳴角θrがほぼ一定になる。
【0093】
(送液機構)
図1に示すように、送液機構1044は、液体を試薬チップ1024からセンサーチップ1022へ供給し、液体をセンサーチップ1022から回収する。液体がセンサーチップ1022へ供給される場合は、一方の開口1300へ液体が供給され、流路1160が液体で満たされ、液体が抗原捕捉膜1104に接触する。液体がセンサーチップ1022から回収される場合は、一方の開口1300から液体が回収され、流路1160が空又は空に近い状態になる。
【0094】
送液機構1044は、例えば、ポンプにより送液元から液体を吸引し、送液元から送液先へポンプを搬送し、ポンプにより送液先へ液体を吐出する。送液元から送液先へ至る配管に液体が流されてもよい。
【0095】
(レーザーダイオード)
図1に示すように、レーザーダイオード1060は励起光ELを放射する。
【0096】
レーザーダイオード1060が他の形式の光源に置きかえられてもよい。例えば、レーザーダイオード1060が発光ダイオード、水銀灯、レーザーダイオード以外のレーザー等に置きかえられてもよい。
【0097】
光源から放射される光が平行光線でない場合は、レンズ、ミラー、スリット等により光が平行光線へ変換される。光が直線偏光でない場合は、直線偏光板等により光が直線偏光へ変換される。光が単色光でない場合は、回折格子等により光が単色光へ変換される。
【0098】
(直線偏光板)
図1に示すように、直線偏光板1062は、励起光ELの光路上に配置され、レーザーダイオード1060から放射された励起光ELを直線偏光へ変換する。励起光ELの偏光方向は、励起光ELがプリズム1100の反射面1142に対してp偏光になるように選択される。これにより、エバネッセント波のもれだしが増加し、表面プラズモン励起蛍光FLの光量が増加し、計測の精度及び感度が向上する。
【0099】
(ミラー及びミラー駆動機構)
図1に示すように、ミラー1064は、励起光ELの光路上に配置され、直線偏光板1062を通過した励起光ELを反射する。ミラー1064により反射された励起光ELは、プリズム1100に照射される。プリズム1100に照射された光は、図3に示すように、入射面1140へ入射し、反射面1142に反射され、出射面1144から出射する。反射面1142への励起光ELの入射角θは、臨界角θcより大きい。
【0100】
ミラー駆動機構1066は、圧電アクチュエーター、電磁モーター等の駆動力源を備え、ミラー1064を回転させ、ミラー1064の姿勢を調整する。また、ミラー駆動機構1066は、リニアステッピングモーター等の駆動力源を備え、レーザーダイオード1060の光軸方向にミラー1064を移動させ、ミラー1064の位置を調整する。これにより、反射面1142における励起光ELの入射位置を抗原捕捉膜1104が定着する領域の裏側に維持したまま反射面1142への励起光ELの入射角θを調整できる。
【0101】
測定機構1042のミラー1064以外の構成物又はセンサーチップ1022の位置又は姿勢を調整することにより入射角θが調整されてもよい。
【0102】
(光電子増倍管)
図1に示すように、光電子増倍管1080は、センサーチップ1022から出射する表面プラズモン励起蛍光FLの光路上に配置され、表面プラズモン励起蛍光FLの光量を測定する。光電子増倍管1080が他の形式の光量センサーに置きかえられてもよい。例えば、光電子増倍管1080が電荷結合素子(CCD)センサー等に置きかえられてもよい。
【0103】
(バンドパスフィルター)
図1に示すように、バンドパスフィルター1082は表面プラズモン励起蛍光FLの光路上に配置される。バンドパスフィルター1082は、通過域に含まれる波長の光を透過し、阻止域に含まれる波長の光を減衰させる。通過域が表面プラズモン励起蛍光FLの波長を含み阻止域が励起光ELの波長を含むようにバンドパスフィルター1082の仕様は選択される。
【0104】
散乱された励起光EL(以下では「散乱光」という。)はバンドパスフィルター1082により減衰し、散乱光のごく一部が光電子増倍管1080に到達するが、表面プラズモン励起蛍光FLはバンドパスフィルター1082を透過し、表面プラズモン励起蛍光FLの大部分が光電子増倍管1080に到達する。これにより、相対的に小さい表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される場合に散乱光の影響が抑制され、計測の精度が向上する。バンドパスフィルター1082がローパスフィルターに置きかえられてもよい。
【0105】
(バンドパスフィルター駆動機構)
図1に示すように、バンドパスフィルター駆動機構1084は、バンドパスフィルター1082が表面プラズモン励起蛍光FLの光路上に配置された状態とバンドパスフィルター1082が表面プラズモン励起蛍光FLの光路上に配置されない状態とを切り替える。
【0106】
(フォトダイオード)
図1に示すように、フォトダイオード1086は、プリズム1100と金膜1102との界面において反射された励起光EL(以下では「反射光」という)の光路上に配置され反射光の光量を測定する。フォトダイオード1086が他の形式の光量センサーに置きかえられてもよい。例えば、フォトダイオード1086がフォトトランジスター、フォトレジスター等に置きかえられてもよい。反射光の光量によらずに共鳴角θrが検出される場合はフォトダイオード1086が省略されてもよい。
【0107】
(試薬チップ)
試薬チップ1024は、希釈液1214、蛍光標識液1216、2種類の測定液1218及び洗浄液1220が収容された状態で作業者に提供される。希釈液1214、蛍光標識液1216、2種類の測定液1218及び洗浄液1220の全部又は一部が作業者により試薬チップ1024に収容されてもよい。検体1210は、作業者により試薬チップ1024に収容される。試料液1212は、計測装置1000の内部において検体1210及び希釈液1214から調製される。2種類の測定液1218が作業者により又は計測装置1000の内部において調製されてもよい。
【0108】
(検体)
検体1210は、典型的には、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液、唾液、体腔液等の人間からの採取物であるが、人間以外の生物からの採取物であってもよく、非生物からの採取物であってもよい。体腔液には、髄液、腹水、胸水等がある。
【0109】
(測定液)
測定液1218は、抗体1240、抗原1242及び蛍光標識抗体1244を失活させないpHを維持する緩衝能を持つバッファー液である。抗体1240、抗原1242及び蛍光標識抗体1244を失活させず表面プラズモン励起蛍光FLの光量の測定を阻害しない限り、バッファー液に代えて緩衝能を持たない液が用いられてもよい。望ましくは、測定液の1218の温度は一定に維持される。
【0110】
(蛍光標識液)
蛍光標識液1216には、計測の対象の抗原1242と特異的に結合する蛍光標識抗体1244が含まれる。蛍光標識抗体1244には、エバネッセント波の電場により励起される蛍光標識が付加される。
【0111】
(洗浄液)
洗浄液1220には、望ましくは、界面活性剤が添加される。
【0112】
(計測の対象の抗原)
計測の対象の抗原1242は、核酸、タンパク質、アミノ酸、糖質、脂質等であってもよく、これらを修飾することにより得られる修飾分子であってもよく、これらのうちの2種類以上の複合体であってもよい。核酸は、一本鎖及び二本鎖のいずれであってもよい。核酸は、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等であってもよく、ヌクレオシド、ヌクレオチド等であってもよく、ヌクレオシド、ヌクレオチド等を修飾することにより得られる修飾分子であってもよく、ヌクレオシド、ヌクレオチド等のうちの2種類以上の複合体であってもよい。タンパク質には、ポリペプチド、オリゴペプチド等がある。アミノ酸には、修飾アミノ酸も含まれる。計測の対象の抗原1242は、具体的には、AFP等のがん胎児性抗原又は腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモン等であるが、これら以外であってもよい。
【0113】
(コントローラー)
コントローラー1052は、制御プログラムを実行する組み込みコンピューターである。1個の組み込みコンピューターがコントローラー1052の機能を担ってもよいし、2個以上の組み込みコンピューターが分担してコントローラー1052の機能を担ってもよい。組み込みコンピューターにはCPU及びメモリーが設けられる。ソフトウエアを伴わないハードウエアがコントローラー1052の全部又は一部の機能を担ってもよい。ハードウエアは、例えば、オペアンプ、コンパレーター等の電子回路であるが、リンク機構等の機械的な機構がハードウエアに含まれてもよい。コントローラー1052による処理の全部又は一部が、手作業により実行されてもよく、計測装置1000の外部において実行されてもよい。コントローラー1052は、測定機構1042、送液機構1044、バーコードリーダー1048等の計測装置1000の構成物を制御する。
【0114】
図14のブロック図は、コントローラーを示す。
【0115】
図14に示すように、コントローラー1052は、試料液準備部1380、組み合わせ記憶部1382、測定液選択部1386、1次免疫反応進行部1388、洗浄部1390、共鳴角検出部1392、2次免疫反応進行部1394及び測定部1396を備える。組み合わせ記憶部1382には、抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせが記憶される。組み合わせ記憶部1382以外のブロックによる制御の内容は、計測の流れの欄において説明される。コントローラー1052がこれらのブロックによる制御以外の制御を行ってもよい。
【0116】
(計測の流れ)
図15及び図16のフローチャートは、計測の流れを示す。
【0117】
(組み合わせの決定)
図15及び図16に示すように、本計測に先立って、抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせが決定される(ステップS100)。決定された抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせは、本体1000に入力され、組み合わせ記憶部1382に記憶される。抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせは、事前測定により実験的に決定されてもよいし、理論的に決定されてもよい。抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせの決定は、計測ごとに行われる必要はない。決定された抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせは、2回以上の計測において繰り返し参照される。
【0118】
計測が行われる場合は、計測の対象の抗原と特異的に結合する抗体が固定された特定の種類の抗原捕捉膜1104が選択される(ステップS101)。
【0119】
(本体、センサーチップ及び試薬チップの準備)
特定の種類の抗原捕捉膜1104が選択された後に、本体1020、センサーチップ1022及び試薬チップ1024が準備される(ステップS102)。本体1020は、抗原捕捉膜1104の種類と測定液1218の種類との組み合わせが組み合わせ記憶部1382に記憶された状態で提供される。センサーチップ1022は、選択された特定の種類の抗原捕捉膜1104を備えるものが選択される。
【0120】
(センサーチップ及び試薬チップの取り付け)
本体1020、センサーチップ1022及び試薬チップ1024が準備された後に、センサーチップ1022及び試薬チップ1024が本体1020に取り付けられる(ステップS103)。
【0121】
(試料液の調製)
センサーチップ1022及び試薬チップ1024が取り付けられた後に、試料液1212が調製される(ステップS104)。試料液1212が調製される場合は、試料液準備部1380が送液機構1044を制御し、送液機構1044により検体1210及び希釈液1214が混合される。検体1210がそのまま試料液1212とされてもよい。試料液1212が手作業で調製されてもよい。試料液1212が手作業で調製される場合は、当該手作業は計測装置1000の内部で行われてもよいし外部で行われてもよい。調製された試料液1212は希釈容器1182に収容される。試料液1212が調製される場合に希釈以外の前処理が行われてもよい。例えば、血球分離、試薬の混合等の前処理が行われてもよい。
【0122】
(抗原捕捉膜の種類の識別)
センサーチップ1022及び試薬チップ1024が取り付けられた後に、バーコードリーダー1048によりバーコード1360が読み取られ、抗原捕捉膜1104の種類が識別される(ステップS105)。操作ボタン1050により抗原捕捉膜1104の種類の入力が受け付けられ、入力の結果から抗原捕捉膜1104の種類が識別されてもよい。操作ボタン1050が他の種類の入力デバイスに置き換えられてもよい。例えば、操作ボタン1050がキーボード、タッチパネル等に置き換えられてもよい。測定液1218が作業者の手動操作により選択される場合は、バーコードリーダー1048による抗原捕捉膜1104の種類の識別が省略されてもよい。
【0123】
(測定液の選択)
抗原捕捉膜1104の種類が識別された後に、測定液選択部1386が、組み合わせ記憶部1382に記憶された組み合わせを参照し、バーコードリーダー1048により識別された特定の種類の抗原捕捉膜1104と組み合わされた特定の種類の測定液1218を選択する(ステップS106)。2種類の測定液1218があらかじめ準備される必要はなく、特定の種類の抗原捕捉膜1104と組み合わされた特定の種類の測定液1218が計測ごとに調製されてもよい。
【0124】
(1次免疫反応の進行)
試料液1212が準備された後に、1次免疫反応進行部1388が送液機構1044を制御し、送液機構1044により試料液1212がセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収され、1次免疫反応が進行させられる(ステップS107)。試料液1212がセンサーチップ1022へ供給されてからセンサーチップ1022から回収されるまでの間、試料液1212が流路1160に満たされる。これにより、試料液1212が抗原捕捉膜1104に接触し、試料液1212に含まれる抗原1242が抗原捕捉膜1104に捕捉される。試料液1212は、試料液1212が抗原捕捉膜1104に十分に接触する程度に流路1160に満たされればよい。すなわち、主に反応室1322が試料液1212で満たされればよく、流路1160の全体が試料液1212で満たされることは必ずしも必要がない。
【0125】
1次免疫反応は、抗原捕捉膜1104の種類の識別及び測定液1218の選択の前若しくは後に又は抗原捕捉膜1104の種類の識別及び測定液1218の選択と並行して進行させられる。
【0126】
(流路の洗浄)
1次免疫反応の後に、洗浄部1390が送液機構1044を制御し、送液機構1044により洗浄液1220がセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収され、流路1160が洗浄される(ステップS108)。これにより、未反応の抗原1242、不要物等が流路1160から除去される。未反応の抗原1242、不要物の残存が無視できるほど少ない場合は、流路1160の洗浄が省略されてもよい。
【0127】
(共鳴角の検出)
流路1160が洗浄された後に、共鳴角検出部1392が測定機構1042及び送液機構1044を制御し、共鳴角が検出される(ステップS109)。
【0128】
共鳴角が検出される場合は、選択された特定の種類の測定液1218が送液機構1044によりセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収される。測定液1218がセンサーチップへ供給されてからセンサーチップから回収されるまでの間、測定液1218が流路1160に満たされる。測定液1218は、エバネッセント波がもれだす空間を埋める程度に流路1160に満たされればよい。
【0129】
流路1160が測定液1218で満たされた状態において、測定機構1042によりプリズム1100に励起光ELが照射される。励起光ELは、入射面1140に入射し、全反射条件を満たして反射面1142に入射し、反射面1142に反射され、反射光になって出射面1144から出射する。このとき、ミラー駆動機構1066により予想される共鳴角θrの付近において入射角θが走査される。入射角θが走査されている間に、反射光の光量がフォトダイオード1086により測定される。反射光の光量が極小になる入射角θ又はその補正値は、電場増強度が極大になる共鳴角θrであるとみなされる。反射光の光量が極小になる入射角θと電場増強度が極大になる入射角θとのずれを無視できない場合は、反射光の光量が極小になる入射角θに微小角を加算又は減算する補正が行われる。これ以外の方法により共鳴角θrが検出されてもよい。例えば、散乱光の光量が極大になる入射角θから共鳴角θrが検出されてもよい。散乱光の光量は、光電子増倍管1080により測定されてもよいし、光電子増倍管1080及びフォトダイオード1086とは別の光量センサーにより測定されてもよい。散乱光の光量が光電子増倍管1080により測定される場合は、バンドパスフィルター駆動機構1084によりバンドパスフィルター1082が表面プラズモン励起蛍光FLの光路から退避させられる。
【0130】
1次免疫反応の後に共鳴角θrが検出される場合は、抗原1242の捕捉による共鳴角θrの変化の影響がなくなり、計測の精度及び感度が向上する。ただし、1次免疫反応の前に共鳴角θrが検出されてもよい。
【0131】
(2次免疫反応の進行)
共鳴角θrが検出された後に、2次免疫反応進行部1394が送液機構1044を制御し、送液機構1044により蛍光標識液1216がセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収され、2次免疫反応が進行させられる(ステップS110)。蛍光標識液1216がセンサーチップ1022へ供給されてから回収されるまでの間、蛍光標識液1216が流路1160に満たされる。これにより、蛍光標識液1216が抗原捕捉膜1104に接触し、抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242に蛍光標識抗体1244が付加される。
【0132】
(流路の洗浄)
2次免疫反応の後に、洗浄部1390が送液機構1044を制御し、送液機構1044により洗浄液1220がセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収され、流路1160が洗浄される(ステップS111)。これにより、未反応の蛍光標識抗体1244、不要物等が流路1160から除去される。未反応の蛍光標識抗体1244、不要物の残存が無視できるほど少ない場合は、流路1160の洗浄が省略されてもよい。
【0133】
(測定)
流路1160が洗浄された後に、測定部1396が測定機構1042及び送液機構1044を制御し、表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される(ステップS112)。
【0134】
表面プラズモン励起蛍光FLの光量が測定される場合は、送液機構1044により測定液1218がセンサーチップ1022へ供給されセンサーチップ1022から回収される。測定液1218がセンサーチップ1022へ供給されてからセンサーチップ1022から回収されるまでの間、測定液1218が流路1160に満たされる。測定液1218は、エバネッセント波がもれだす空間を埋める程度に流路1160に満たされればよい。
【0135】
流路1160が測定液1218に満たされた状態において、測定機構1042によりプリズム1100に励起光ELが照射される。励起光ELは、入射面1140に入射し、共鳴角θrで反射面1142に入射し、反射面1142に反射され、出射面1144から出射する。反射面1142への励起光ELの入射角は共鳴角θrに設定される。このとき、図12に示すように、プリズム1100と金膜1102との界面から金膜1102の側へエバネッセント波EWがもれだし、エバネッセント波EWと金膜1102の表面のプラズモンとが共鳴し、エバネッセント波EWの電場が増強される。抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242に付加された蛍光標識抗体1244が増強されたエバネンセント波EWの電場により励起され、抗原捕捉膜1104に捕捉された抗原1242に付加された蛍光標識抗体1244から表面プラズモン励起蛍光FLが放射される。励起光ELが照射されている間に、センサーチップ1022から出射する表面プラズモン励起蛍光FLの光量が光電子増倍管1080により測定される。測定された表面プラズモン励起蛍光FLの光量は、抗原1242の捕捉量、抗原1242の捕捉の有無等を特定するために用いられる。
【0136】
(組製品の提供)
図5に示す試薬チップ1024には2種類の測定液1218が収容され、計測装置1000においては支持機構1046に保持されたセンサーチップ1022が備える抗原捕捉膜1104の種類に応じて2種類の測定液1218から特定の種類の測定液1218が選択される。
【0137】
ただし、試薬チップに収容される測定液の種類を1種類のみとすることもできる。例えば、図17の模式図に示すように、センサーチップ1022と試薬チップ1024aとが対になった組製品1410が提供され、センサーチップ1022の抗原捕捉膜1104の種類及び試薬チップ1024aの1種類だけ提供される測定液1218の種類が先述の組み合わせにしたがって選択されている場合は、対をなすセンサーチップ1022及び試薬チップ1024aを計測装置1000に取り付けることにより、抗原捕捉膜の種類の識別及び試料液の選択が行われなくても、共鳴角θrをほぼ一定にできる。センサーチップ1022と試薬チップ1024aとを組製品にするためには、センサーチップ1022及び試薬チップ1024aが一体的に包装されてもよいし、センサーチップ1022と試薬チップ1024aとが対になることを示す識別子がセンサーチップ1022及び試薬チップ1024aに付与されてもよい。
【0138】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であり、この発明は上記の説明に限定されない。例示されない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0139】
1022 センサーチップ
1042 測定機構
1044 送液機構
1048 バーコードリーダー
1104 抗原捕捉膜
1160 流路
1212 試料液
1216 蛍光標識液
1218 測定液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン励起蛍光分光法により計測を行う計測方法であって、
(a) 計測の対象の抗原と結合する抗体が固定された2種類以上の抗原捕捉膜及び2種類以上の測定液において抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせを決定する工程と、
(b) 前記2種類以上の抗原捕捉膜から特定の種類の抗原捕捉膜を選択する工程と、
(c) 誘電体媒体、導電体膜、特定の種類の抗原捕捉膜及び流路形成物を備え、前記誘電体媒体が入射面、反射面及び出射面を備え、励起光が前記入射面に入射し前記反射面に反射され前記出射面から出射するように前記入射面、前記反射面及び前記出射面が配置され、前記流路形成物に流路が形成され、前記特定の種類の抗原捕捉膜が前記流路の内部に露出し、前記導電体膜が第1の主面及び第2の主面を備え、前記反射面が前記第1の主面に密着し、前記特定の種類の抗原捕捉膜が前記第2の主面に定着するセンサーチップを準備する工程と、
(d) 前記組み合わせにおいて前記特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液を選択する工程と、
(e) 試料液を前記流路に満たす工程と、
(f) 前記工程(e)の前又は後に前記特定の種類の測定液を前記流路に満たし、前記特定の種類の測定液が前記流路に満たされた状態において共鳴角を検出する工程と、
(g) 前記工程(e)及び前記工程(f)の後に前記抗原と結合する蛍光標識抗体を含む蛍光標識液を前記流路に満たす工程と、
(h) 前記工程(g)の後に前記特定の種類の測定液を前記流路に満たし、前記特定の種類の測定液が前記流路に満たされた状態において表面プラズモン励起蛍光の光量を測定する工程と、
を備え、
前記工程(a)は、
前記抗原捕捉膜の種類の違いによる前記共鳴角の違いが解消するように抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせを決定する
計測方法。
【請求項2】
請求項1の計測方法において、
前記工程(a)は、
前記2種類以上の測定液において屈折率を異ならせることにより前記抗原捕捉膜の種類の違いによる前記共鳴角の違いを解消する
計測方法。
【請求項3】
請求項2の計測方法において、
前記工程(a)は、
前記2種類以上の測定液において添加物の有無、添加物の種類及び添加物の濃度の全部又は一部を異ならせることにより前記屈折率を異ならせる
計測方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの計測方法において、
前記工程(c)は、
抗原捕捉膜の種類を識別する識別子が付与された前記センサーチップを準備し、
(i) 前記識別子を読み取り、抗原捕捉膜の種類を識別する工程、
をさらに備え、
前記工程(d)は、
前記工程(i)において識別された前記特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液を選択する
計測方法。
【請求項5】
表面プラズモン励起蛍光分光法により計測を行う計測装置であって、
計測の対象の抗原と結合する抗体が固定された2種類以上の抗原捕捉膜及び2種類以上の測定液における抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせを記憶する組み合わせ記憶部と、
誘電体媒体、導電体膜、特定の種類の抗原捕捉膜及び流路形成物を備え、前記誘電体媒体が入射面、反射面及び出射面を備え、励起光が前記入射面に入射し前記反射面に反射され前記出射面から出射するように前記入射面、前記反射面及び前記出射面が配置され、前記特定の種類の抗原捕捉膜が前記2種類以上の抗原捕捉膜から選択され、前記流路形成物に流路が形成され、前記特定の種類の抗原捕捉膜が前記流路の内部に露出し、前記導電体膜が第1の主面及び第2の主面を備え、前記反射面が前記第1の主面に密着し、前記特定の種類の抗原捕捉膜が前記第2の主面に定着するセンサーチップと、
共鳴角を検出するとともに表面プラズモン励起蛍光の光量を測定する測定機構と、
抗原捕捉膜の種類を識別する識別機構と、
前記組み合わせを参照し、前記識別機構により識別された前記特定の種類の抗原捕捉膜と組み合わされた特定の種類の測定液を選択する測定液選択部と、
試料液、前記抗原と結合する蛍光標識抗体を含む蛍光標識液及び前記特定の種類の測定液で前記流路を満たす送液機構と、
前記送液機構を制御し、前記試料液を前記流路に満たさせる1次免疫反応進行部と、
前記試料液が前記流路に満たされる前又は満たされた後に、前記送液機構を制御し、前記特定の種類の測定液を前記流路に満たさせ、前記測定機構を制御し、前記特定の種類の測定液が前記流路に満たされた状態において前記共鳴角を検出させる共鳴角検出部と、
前記試料液が前記流路に満たされた後であって前記特定の種類の測定液が前記流路に満たされ前記共鳴角が検出された後に、前記送液機構を制御し、前記蛍光標識液を前記流路に満たさせる2次免疫反応進行部と、
前記蛍光標識液が前記流路に満たされた後に、前記送液機構を制御し、前記特定の種類の測定液を前記流路に満たさせ、前記測定機構を制御し、前記表面プラズモン励起蛍光の光量を測定させる測定部と、
を備え、
前記組み合わせ記憶部は、
前記抗原捕捉膜の種類の違いによる前記共鳴角の違いが解消する抗原捕捉膜の種類と測定液の種類との組み合わせを記憶する
計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−113769(P2013−113769A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261848(P2011−261848)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】