説明

計測装置および計測方法

【課題】表面形状と内部構造との双方を計測する。
【解決手段】実施形態によれば、計測装置は、電磁波照射手段と検出手段とデータ処理手段と膜構造変換手段と膜構造計測手段とを持つ。電磁波照射手段は電磁波を生成して前記基体へ照射する。検出手段は、前記基体で散乱されまたは反射した電磁波の強度を測定する。データ処理手段は、前記検出手段からの信号を処理して散乱プロファイルを作成して解析し、前記周期構造の表面形状を算出する。膜構造変換手段は、前記周期構造の表面構造に関する仮想的膜構造を算出し、参照データから前記周期構造の内部構造に関する仮想的膜構造を算出する。膜構造計測手段は、前記仮想的膜構造から測定条件を設定し、該測定条件に従って前記周期構造について実測による反射率プロファイルを取得して解析し、前記周期構造を構成する各層の膜厚を算出し、算出された前記膜厚と前記仮想的膜構造とを用いて前記周期構造の形状を再構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、計測装置および計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、パターン幅や高さ、側壁角や配線のトップ部およびボトム部の微小な形状を計測する技術が要求されている。非破壊および非接触の検査装置として、反射型のCD−SAXSであるGISAXS(Grazing Incidence Small Angle X−ray Scattering)は、X線の小角散乱を利用して形状を計測する装置で、基板表面でX線を全反射させるため、表面形状の計測には特に優れている。しかし、基板表面で全反射をさせるために、構造体内部へはX線が入らず、内部の積層構造の計測ができないという欠点がある。
【0003】
この一方、積層構造の計測技術としてはXRR(X−ray Reflectometer)技術がある。この技術は、X線の各層の反射による干渉を利用するものである。一般的に、パターン構造が無い状態での内部積層構造の計測に用いられる。パターン構造がある場合は該パターン構造によって干渉条件が変化してしまい、また、表面散乱の影響をも受けるため、内部構造の膜厚を計測することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−349849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、表面形状と内部構造との双方を計測できる計測装置および計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の計測装置は、ステージと、ステージ制御手段と、電磁波照射手段と、角度制御手段と、検出手段と、データ処理手段と、膜構造変換手段と、膜構造計測手段とを持つ。前記ステージは、計測対象の周期構造が形成された基体を支持する。前記ステージ制御手段は前記ステージの位置と高さを制御する。前記電磁波照射手段は電磁波を生成して前記基体へ照射する。前記角度制御手段は前記電磁波の仰角を制御する。前記検出手段は、前記基体で散乱されまたは反射した電磁波の強度を測定する。前記データ処理手段は、前記検出手段からの信号を処理して第1の散乱プロファイルを作成し、前記周期構造についてシミュレーションにより予め得られた第2の散乱プロファイルと前記第1の散乱プロファイルとのフィッティングにより、前記周期構造の表面形状を算出する。前記膜構造変換手段は、算出された前記表面形状から前記周期構造の表面構造に関する仮想的膜構造を算出し、前記周期構造に関する参照データから前記周期構造の内部構造に関する仮想的膜構造を算出する。前記膜構造計測手段は、前記仮想的膜構造から測定条件を設定し、該測定条件に従って前記ステージ制御手段、前記電磁波照射手段、前記角度制御手段および前記検出手段を制御し、前記周期構造について実測による第1の反射率プロファイルを取得し、前記内部構造に関する仮想的膜構造を用いたシミュレーションにより得られた第2の反射率プロファイルとのフィッティングにより前記周期構造を構成する各層の膜厚を算出し、算出された前記膜厚と前記仮想的膜構造とを用いて前記周期構造の形状を再構築する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の一形態による計測装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】X線の経路とパターンの方向との関係を示す平面図。
【図3】二次元検出器の受光部の外観を示す斜視図。
【図4】積層膜をなす周期構造にX線を照射して得られる反射率プロファイルの一例を示す図。
【図5】実施の一形態による計測方法が適用される周期構造の一例を示す断面図。
【図6】図5の周期構造についてGISAXSにより得られた表面形状の測定値から再構築された表面構造の一例を示す図。
【図7】変形例による計測方法が適用される周期構造の一例を示す断面図。
【図8】実施の一形態による計測方法の概略手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A)計測装置
(1)装置構成
図1は、実施の一形態によるパターン計測装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の計測装置は、X線微小角入射小角散乱による測定(以下、「GISAXS測定」という)機能とX線反射率法による測定(以下、「XRR測定」という)機能の双方を有する。
【0009】
具体的には、図1の計測装置は、主要な構成要素として、ステージ2と、X線管球4と、光源制御部11と、ゴニオメータ5と、モノクロメータ6と、アッテネータ7と、二次元検出器3と、データ処理部12と、形状算出部14と、ゴニオメータ制御部15と、ステージ制御部13と、膜構造変換部16と、膜厚算出部17と、を備える。
【0010】
X線管球4は、光源制御部11を介して形状算出部14および膜厚算出部17に接続される。二次元検出器3は、データ処理部12を介して形状算出部14および膜厚算出部17に接続される。形状算出部14はまた、ステージ制御部13と膜構造変換部16に接続される。膜構造変換部16は膜厚算出部17に接続される。膜厚算出部17はまた、ゴニオメータ制御部15およびステージ制御部13にも接続される。
【0011】
ステージ2は、その上面にウェーハWが載置されてこれを支持する。ステージ2はまた、ステージ制御部13から制御信号を与えられ、図示しないアクチュエータにより、X,Y,Zの三次元空間内でウェーハWを移動させる他、ウェーハWを任意の回転角だけ回転させる。
図2は、X線の経路とパターンの方向との関係を示す平面図である。図2に示すように、ウェーハWの表面には、検査対象である周期構造PSが形成されている。周期構造としては、図2に示すライン・アンド・スペース構造の他、例えば一方向もしくは互いに直交する2方向に所定ピッチで配置された穴パターン構造、または穴パターンとラインパターンとが混在する構造などが含まれる。ウェーハWは、本実施形態において例えば基体に対応する。基体としては、ウェーハWに限ることなく、例えばガラス基板、化合物半導体基板、セラミック基板なども含まれる。
【0012】
X線管球4は、光源および凹面鏡(図示せず)を含む。光源としてはX線を生成するものであれば特に限定されないが、本実施形態では、例えばCuのKα線を光源として利用する場合について説明する。
【0013】
X線管球4は、光源制御部11から制御信号を与えられて、例えば1nm以下の波長のX線Liを生成する。生成したX線Liは、X線管球4内の凹面鏡によって光路が調整され、所望の仰角α(図1参照)で周期構造PSへX線Liを照射する。本実施形態において、X線管球4および光源制御部11は、例えば電磁波照射手段に対応する。しかしながら、電磁波としてはX線に限ることなく、検査対象の周期構造のピッチが例えば1μm以上と広い場合には、300nm〜700nmの可視光を用いてもよい。
【0014】
ゴニオメータ5は、ゴニオメータ制御部15から制御信号を与えられ、凹面鏡とともにX線Liの仰角αの値を調整する。仰角αとしては、GISAXS測定の場合には、X線LiがウェーハWを透過することなく全反射が生じる1°以下の角度が選択され、望ましくは0.2°以下である。また、XRR測定の場合には、ゴニオメータ5はX線Liの照射中、入射角と反射角が等しい状態で0度から10度まで所定の角度間隔ごとに仰角αを変更させる。これにより、X線は、そのコヒーレント長の点から周期構造PSのライン方向に垂直に入射する。
【0015】
仰角αは、ゴニオメータ5に代えて、またはこれと併用して可動式のアームを設けて調整することとしてもよい。本実施形態において、ゴニオメータ5およびゴニオメータ制御部15は、例えば角度制御手段に対応する。
【0016】
モノクロメータ6は、X線管球4で生成されたX線Liから所望の波長成分のみを取り出し、これによりX線Liは単色で平行なビームになってウェーハWに照射する。
アッテネータ7は、X線Liが照射したパターンPで反射したX線Loを所望の強度に減衰させる。
【0017】
二次元検出器3は、周期構造PSから十分に離れた位置に配置され、X線Liが照射した周期構造PSにより散乱されたX線Lo、または周期構造PSで反射しアッテネータ7により適切な強度に調整されたX線Loを受光素子で検出し、その強度を測定する。二次元検出器3の受光部の外観を図3の斜視図に示す。
【0018】
二次元検出器3の受光部では受光素子が二次元に配置され、各受光素子は、GISAXS測定の場合には周期構造PSにより回折されたX線Loの強度を測定し、測定した強度を自身の位置に対応付けることにより、受光部全体としてX線散乱強度の二次元画像を作成する。測定中は、ステージ2を0°〜10°回転させながらX線Liを照射するので(図2参照)、散乱されたX線Lsの露光が継続しており、受光部は、継続して検出されるX線Loの散乱強度を積算する。
【0019】
二次元検出器3の各受光素子はまた、XRR測定の場合は、ゴニオメータ5により所定の測定角度範囲、例えば0度から10度までで所定の角度間隔ごとに仰角αを変更しながら周期構造PSに入射して反射したX線Loの強度を測定し、測定した強度を自身の位置に対応付けることにより、受光部全体としてX線反射強度の二次元画像を作成する。
【0020】
データ処理部12は、二次元検出器3の各受光素子が測定した散乱強度を足し合わせることにより、GISAXS測定の場合には二次元のX線散乱プロファイルを作成し、XRR測定の場合には、ゴニオメータ5の調整による0度から10度まで所定間隔ごとの仰角αでの反射強度を足し合わせた反射率プロファイルを作成する。
【0021】
GISAXS測定において、取り込まれる散乱強度画像には、方位角方向、仰角方向にブラッグの回折条件で決まる角度に干渉縞が現れている。データ処理部12は、二次元の散乱強度画像を方位角方向、仰角方向に分割し、それぞれの方向での散乱プロファイルを算出する。ここで、方位角方向のプロファイルとは入射X線Liの仰角と散乱X線Lsの仰角が等しいときの散乱プロファイルをいい、仰角方向のプロファイルとは回折ピークの仰角方向の強度変化をいう。
【0022】
ラインパターンの長手方向に対して平行に近い方位角で、かつ、0.2°以下の仰角を持ったX線Liをラインパターンに照射させると、X線Liはパターンによって散乱される。散乱されたX線Lsが干渉することにより、方位角方向の散乱プロファイルには回折ピークが現われ、仰角方向にはその回折ピークごとに干渉縞が現われる。
【0023】
また、XRR測定において、ウェーハWに設けられた周期構造が積層膜になっている場合は、ウェーハWの表面や周期構造内の膜と膜との界面でX線が反射され、それらが干渉を引き起こす。仰角αの角度間隔毎に強度をプロットすると、角度によって強度の大小がある干渉縞が観察され、図4に例示するような反射率プロファイルが得られる。これら干渉縞を含む反射率プロファイルは、光学条件と積層情報から計算により取得することが可能である。XRR測定における光学条件は、入射X線の波長、入射角(仰角方向)を含む。また、積層情報は、膜厚、界面ラフネスおよび電子密度を含む。X線の波長、入射角度と積層膜中の界面と界面の距離から行路差を計算することにより、シミュレーションで反射率プロファイルを求めることができる。
【0024】
形状算出部14は、データ処理部12から実測による散乱プロファイルを与えられ、シミュレーションで得られたプロファイル(以下、「シミュレーションプロファイル」という)と照合し、両者の差異が最小となるようにフィッティングを行い、フィッティング誤差が最小となるときの形状パラメータの値を周期構造PSの表面形状の計測値として出力し、膜構造変換部16へ与える。本実施形態において、実測による散乱プロファイルは例えば第1の散乱プロファイルに対応し、シミュレーションプロファイルは例えば第2の散乱プロファイルに対応する。
【0025】
シミュレーションプロファイルは、光学条件とパターン情報から計算により得ることができる。より具体的には、計測対象である周期構造PSについて、断面形状と材料を含むパターン情報と光学条件から断面モデルを設定し、その断面形状を体積積分することにより断面モデルからシミュレーションプロファイルを求める。シミュレーションプロファイルは、予め求めたものを形状算出部14に取り込んでもよいし、形状算出部14自身で作成することとしてもよい。このようにシミュレーションにより作成されたX線散乱プロファイルは、本実施形態において、例えば第2の散乱プロファイルに対応する。
【0026】
光学条件とは、ウェーハWに入射するX線Liの波長、入射角(方位角方向、仰角方向)などをいい、パターン情報には、断面形状と電子密度を含む。断面形状は、表面パターンの輪郭部分を意味し、ピッチ、CD、高さ、側壁角、トップラウンディング、ボトムラウンディングの形状パラメータよって表わされる関数である。
【0027】
膜構造変換部16は、形状算出部14から周期構造PSの表面形状の計測値を与えられ、後に詳述する手順により、周期構造PSの表面構造に関する仮想的膜構造を算出し、膜厚算出部17へ与える。膜構造変換部16はまた、図示しない入力部から周期構造PSの参照データを与えられて周期構造PSの内部構造に関して、表面構造とは異なる電子密度を有する積層モデル(以下、「内部構造に関する仮想的膜構造」という)を算出し、膜厚算出部17へ与える。参照データとしては、周期構造PSの設計データを用いてもよいし、良好に形成された周期構造PSについて得られた断面SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)から算出したデータでもよい。
【0028】
膜厚算出部17は、膜構造変換部16から与えられた仮想的膜構造の膜厚情報から測定角度範囲およびステップ角度などのXRR測定の条件を決定し、この測定条件をゴニオメータ制御部15に送るとともに、入射X線の波長などの光学条件に従って光源制御部11およびステージ制御部13を制御してXRR測定を行い、データ処理部12からパターンPについて実測による反射率プロファイル(以下、「実測反射率プロファイル」という)を送られる。そして、膜厚算出部17は、得られた実測反射率プロファイルを解析することにより、パターンPの内部構造における各層の膜厚を算出する。解析に際し、膜厚算出部17は、膜構造変換部16から与えられた内部構造に関する仮想的膜構造についてシミュレーションにより反射率プロファイルを取得し(以下、「シミュレーション反射率プロファイル」という)、実測反射率プロファイルをシミュレーション反射率プロファイルと照合し、両者の差が最小となるようにフィッティングを行う。そして、膜厚算出部17は、フィッティング誤差が最小となるときの各積層膜の膜厚および界面ラフネスの値を求め、断面構造内部の膜厚測定値として出力する。本実施形態において、実測反射率プロファイルは例えば第1の反射率プロファイルに対応し、シミュレーション反射率プロファイルは例えば第2の反射率プロファイルに対応する。
【0029】
膜厚算出部17はさらに、算出した各層の膜厚と膜構造変換部16から与えられた仮想的膜構造の膜厚情報とから周期構造PSの全体形状を再構築する。本実施形態において、膜厚算出部17は例えば膜構造計測手段に対応する。
【0030】
本実施形態の測定装置によれば、GISAXS測定に基づいて周期構造の表面形状を測定する形状算出部14と、その測定結果に基づいてXRR測定を行って得られた反射率プロファイルを解析する膜厚算出部17とを備えるので、周期構造の表面構造と内部構造の双方を高い精度で測定することができる。
【0031】
(2)周期構造の計測
図1に示す計測装置を用いて周期構造PSを計測する方法のいくつかについて、図5乃至図8を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する計測方法の特徴の一つは、GISAXS測定とXRR測定の両方を順次に行い、GISAXSからは表面パターンの形状を算出し、その算出結果に基づいてXRR測定を行い、得られた反射率プロファイルの解析により周期構造PSの表面構造および内部構造を再構築する点にある。以下、順を追って説明する。
【0032】
図5は、本実施形態による計測方法が適用される周期構造の一例を示す断面図である。
図5に示す周期構造PS1は、ウェーハWの表面に成膜された膜34と、紙面垂直方向に延在するライン状のパターン33と、膜32と、紙面垂直方向に延在するライン状のパターン31とを有する。
【0033】
パターン33は、膜34と同一の材料で形成され、膜34上に所定周期(ピッチ)で設けられる。膜32は、ウェーハW上で膜34およびパターン33の全面を覆うように成膜される。パターン31は、パターン33の頂面に対応するよう位置合せされて膜32上に形成される。
【0034】
ここで、パターン31の材料の材質をA、膜32の材料の材質をB、パターン33および膜34の材料の材質をCとする。また、計測対象を、膜32のうちでパターン31とパターン32に挟まれた領域の膜厚FTとする。
【0035】
まず、GISAXS測定により、周期構造の表面形状を計測する。具体的には、形状算出部14が各種制御信号を生成して光源制御部11、データ処理部12、ステージ制御部13およびゴニオメータ制御部15に送り、X線管球4から周期構造PSのライン方向に対して平行に所望の仰角αでX線Liを入射し、二次元検出器3を介してデータ処理部12で得られる実測の散乱プロファイルを形状算出部14が与えられ、これを形状算出部14が解析することにより、周期構造PSの表面形状が得られる。
【0036】
散乱プロファイルの解析は、前述した通り、シミュレーションプロファイルとの照合およびフィッティングで最適の形状パラメータを求めることにより行う。 形状パラメータとしては、ラインパターン31のトップおよびボトムの各曲率半径や側壁角度などが求められる。
【0037】
形状算出部14は、このようにして得られた形状パラメータの情報から周期構造PSの表面構造を再構築し、そのデータを膜構造変換部16へ送る。
【0038】
GISAXS測定により得られた表面形状の測定値から再構築された表面構造の一例を図6に示す。図6から分かるように、材質Aと材質Bからなる表面形状が得られる。
【0039】
次に、膜構造変換部16は、再構築された周期構造PSの表面構造を密度勾配のある層と見なして仮想膜構造を算出する。
【0040】
より具体的には、図6の表面形状を高さ方向に複数の領域に分割し、各領域での材質A、B、空気の体積比を求める。得られた体積比と、材料A、Bそれぞれの電子密度から、各領域での有効的な電子密度を決定する。そして、周期構造PSの表面構造を構成する各層の膜厚と電子密度を求めることにより仮想膜構造を算出する。算出された仮想膜構造は、膜構造変換部16から膜厚算出部17へ送られる。
【0041】
膜構造変換部16はまた、図示しない入力部から周期構造PSの参照データを与えられて周期構造PSの内部構造に関して、表面構造とは異なる電子密度を有する内部構造に関する仮想的膜構造を算出し、膜厚算出部17へ与える。参照データとしては、周期構造PS1の設計データを用いてもよいし、良好に形成された周期構造PS1について得られた断面SEMまたはTEMから得られたデータでもよい。内部構造に関する仮想的構造の算出に際し、複数の材料が混在する層がある場合、例えば図5の周期構造PS1に示すように材料Bと材料Cが混在する層がある場合は、仮想的膜構造を算出する際にラインパターンの線幅の比を求めておき、その混合層の有効な電子密度を算出し、その結果を内部構造に関する仮想的膜構造の算出に使用する。
【0042】
GISAXS測定に引き続いてXRR測定を行う。まず、膜厚算出部17が膜構造変換部16から送られた仮想膜構造の膜厚情報から、XRR測定においてX線LiをウェーハWに照射する際に変化させるべき仰角αの角度範囲と角度間隔とを設定し、測定条件としてゴニオメータ制御部15に送る。
【0043】
次に、膜厚算出部17は、膜構造変換部16から与えられた内部構造に関する仮想的膜構造についてシミュレーションにより反射率プロファイルを作成する。
【0044】
次いで、膜厚算出部17は、ゴニオメータ制御部15を介してゴニオメータ5を制御させながら、かつ、ステージ制御部13を介してステージ2を移動させながら光源制御部11を介してX線管球4からX線Liを上述の測定条件でウェーハWに照射させ、二次元検出器3によりウェーハWからの反射X線Loの強度を測定し、データ処理部12が作成した実測反射率プロファイルを与えられる。
【0045】
次に、膜厚算出部17は、実測反射率プロファイルをシミュレーション反射率プロファイルと照合し、両者の差が最小となるようにフィッティングを行い、フィッティング誤差が最小となるときの各積層膜の膜厚および界面ラフネスの値を求め、周期構造内部の膜厚測定値として出力する。
【0046】
最後に、膜厚算出部17は、表面構造および内部構造を含む周期構造PS1の全体構造を再構築する。これにより、表面構造および内部構造の双方について計測が可能になる。測定対象とした膜厚FT(図5参照)も、再構築された周期構造PS1の全体構造から容易に算出できる。
【0047】
測定対象の周期構造において、表面のパターンの高さが小さい場合、例えば約2〜3nmの場合は、上述したように表面構造を密度勾配がある層とみなすよりは、高さばらつきが大きい膜とみなした方が、より適切な仮想的膜構造を算出することができる。このような周期構造についての計測を本実施形態の変形例として説明する。
【0048】
このような表面パターンの高さが小さい周期構造の一例を図7の断面図に示す。このような周期構造PS2についても図1の計測装置で計測可能である。
【0049】
まず、前述した計測方法と同様にGISAXS測定により周期構造PS2の表面構造を測定する。形状算出部14にて線幅、高さ、側壁角、トップ、ボトムの曲率半径などの各種形状パラメータを求め、膜構造変換部16へ送る。膜構造変換部16は、与えられた形状パラメータの情報から、表面パターン構造の断面積を求め、これをピッチで割って表面パターンの仮想的な膜厚を算出する。
【0050】
表面パターン構造の各点の高さと最表面層の膜厚との差分から表面ラフネスを求める。このようにして得られた膜厚およびラフネスを用いて仮想的膜構造を算出する。
【0051】
そして、前述した計測方法と同様にしてGISAXS測定に引き続いてXRR測定を実行して周期構造PS2内部の膜厚を測定し、周期構造PS2の全体構造を再構築する。
【0052】
最後に、再構築された周期構造PS2の全体構造から、膜厚等の必要な形状パラメータを算出する。
【0053】
このように、本変形例によれば、変化に乏しい表面形状を有する場合でも、表面構造と内部構造の双方を高い精度で測定することができる。
【0054】
(B)計測方法
実施の一形態による計測方法について図8のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、GISAXS測定により計測対象である周期構造の表面形状を測定する(ステップS11)。
【0055】
次に、測定結果から周期構造の表面構造を再構築し(ステップS12)、これに基づいて仮想的膜構造を算出する(ステップS21)。仮想的膜構造の算出に際しては、上述したとおり、周期構造の表面構造を密度勾配がある層とみなして表面構造を構成する各層の膜厚と電子密度を求める方法の他、表面パターンの高さが小さい場合に、表面構造を高さばらつきが大きい膜とみなして膜厚と高さばらつきを求める方法とがある。
【0056】
次いで、仮想的膜構造から測定条件を決定する(ステップS31)。
続いて、周期構造の設計データや断面TEMからの測定値などによる参照データを用いて周期構造の内部構造に関する仮想的膜構造を算出し(ステップS32)、シミュレーション反射率プロファイルを作成する(ステップS33)。
【0057】
次に、ステップS31で決定した測定条件に従ってX線を周期構造に照射し(ステップS34)、周期構造からの反射光を二次元検出器で検出してその強度を測定し(ステップS35)、実測反射率プロファイルを作成する(ステップS36)。
【0058】
次いで、得られた実測反射率プロファイルをシミュレーション反射率プロファイルと照合し、フィッティングにより周期構造内部の各層の膜厚や界面ラフネスの値を算出する(ステップS38)。
【0059】
最後に、ステップS21により得られた仮想的膜構造とステップS38により得られた内部構造の測定値から周期構造全体の膜構造を再構築する(ステップS39)。
【0060】
上記手順では、シミュレーション反射率プロファイルを作成してから実測反射率プロファイルを作成したが、この順序に限定されることなく、先に実測反射率プロファイルを作成し、その後にシミュレーション反射率プロファイルを作成して実測反射率プロファイルと照合・フィッティングを行ってもよい。
【0061】
本実施形態の測定方法によれば、GISAXS測定により周期構造の表面形状を測定し、その測定結果に基づいてXRR測定を行って得られた反射率プロファイルを解析するので、表面構造と内部構造の双方を高い精度で測定することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
2…ステージ、3…二次元検出器、4…X線管球、5…ゴニオメータ、6…モノクロメータ、7…アッテネータ、11…光源制御部、12…データ処理部、13…ステージ制御部、14…形状算出部、15…ゴニオメータ制御部、16…膜構造変換部、17…膜厚算出部、Li…X線(入射光)、Lo…X線(散乱光または反射光)、P,P1,P2…パターン、PS1,PS2…周期構造、W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の膜を有する周期構造が形成された基体を支持するステージと、
前記ステージの位置と高さを制御するステージ制御手段と、
電磁波を生成し、前記基体へ照射する電磁波照射手段と、
前記電磁波の仰角を制御する角度制御手段と、
前記基体で散乱されまたは反射した電磁波を検出してその強度を測定する検出手段と、
前記検出手段からの信号を処理して第1の散乱プロファイルを作成し、前記周期構造についてシミュレーションにより予め得られた第2の散乱プロファイルと前記第1の散乱プロファイルとのフィッティングにより、前記周期構造の表面形状を算出するデータ処理手段と、
算出された前記表面形状から前記周期構造の表面構造に関する仮想的膜構造を算出し、前記周期構造に関する参照データから前記周期構造の内部構造に関する仮想的膜構造を算出する膜構造変換手段と、
前記仮想的膜構造から測定条件を設定し、該測定条件に従って前記ステージ制御手段、前記電磁波照射手段、前記角度制御手段および前記検出手段を制御し、前記周期構造について実測による第1の反射率プロファイルを取得し、前記内部構造に関する仮想的膜構造を用いたシミュレーションにより得られた第2の反射率プロファイルとのフィッティングにより前記周期構造を構成する各層の膜厚を算出し、算出された前記膜厚と前記仮想的膜構造とを用いて前記周期構造の形状を再構築する膜構造計測手段と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記膜構造変換手段は、
前記周期構造の表面構造を構成する各材料の材質データと、前記データ処理手段により算出された前記周期構造の表面形状と、に基づいて前記表面構造を高さ方向に複数の領域に分割し、 分割された前記領域のそれぞれについて、材質の体積比と各材料の電子密度から前記表面構造の各層での有効的な電子密度を算出し、密度勾配のある複数の層の膜厚と電子密度とを求めることにより前記内部構造に関する仮想的膜構造を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記膜構造変換手段は、
前記周期構造の表面構造の断面積を前記周期構造の周期で除算することにより前記表面構造の仮想的な膜厚を求め、得られた膜厚の値と前記表面構造の各点との差分から前記表面構造の高さばらつきを求めることにより前記表面構造に関する仮想的膜構造を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
複数の膜を有する周期構造が形成された基体に電磁波を照射し、散乱された電磁波の強度を測定して得られた信号を処理して前記周期構造の表面形状を算出する工程と、
算出された前記表面形状から前記周期構造の表面構造に関する仮想的膜構造を算出する工程と、
前記周期構造に関する参照データから前記周期構造の内部構造に関する仮想的膜構造を算出する工程と、
前記仮想的膜構造から光学条件を設定する工程と、
設定された光学条件に従って前記基体に前記電磁波を照射し、散乱された電磁波の強度を検出して得られた信号を処理して前記周期構造について実測による第1の反射率プロファイルを取得する工程と、
前記第1の反射率プロファイルと、前記内部構造に関する仮想的膜構造を用いたシミュレーションにより得られた第2の反射率プロファイルとのフィッティングにより前記周期構造の内部を構成する各層の膜厚を算出する工程と、
算出された前記膜厚と前記仮想的膜構造とを用いて前記周期構造の形状を再構築する工程と、
を備える計測方法。
【請求項5】
前記内部構造に関する仮想的膜構造を算出する工程は、
算出された前記周期構造の表面形状と、前記周期構造の表面構造を構成する各材料の材質データと、に基づいて前記表面構造を高さ方向に複数の領域に分割する工程と、
分割された前記領域のそれぞれについて、材質の体積比と各材料の電子密度から前記表面構造の各層での有効的な電子密度を算出する工程と、
密度勾配のある複数の層の膜厚と電子密度とを求める工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の計測方法。
【請求項6】
前記表面構造に関する仮想的膜構造を算出する工程は、
前記周期構造の表面構造の断面積を前記周期構造の周期で除算することにより前記表面構造の仮想的な膜厚を求める工程と、
得られた膜厚の値と前記表面構造の各点との差分から前記表面構造の高さばらつきを求める工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104682(P2013−104682A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246559(P2011−246559)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】