説明

計測評価用食器、計測評価用下敷き部材、食事の計測装置およびその計測評価システム

【課題】 肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や健康管理のために、個人が日常摂取する食事の種類および量を、高い精度で計測する。
【解決手段】食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器1であって、食器の内面に計測評価用の模様(2,4)が描かれており、模様は、食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である構成とする。また、食事摂取量の画像解析による計測評価用に用いられ、食器の下敷きとなる部材であって、食器を置く領域における下敷き部材の表面に、所定の大きさの升目模様が描かれており、升目模様は、食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の内容物の容積の計量を容易にするパターンの模様である計測評価用下敷き部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常的な食事を計測および評価する手法に用いる計測評価用食器、計測評価用下敷き部材、食事の計測装置および食事の計測評価システムに関し、特に、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣の実態を管理するために、医学・健康管理的観点から個人が日常的に摂取する食事の種類と量を、高い精度で容易に計測および評価する目的で用いる、内面に計測評価用の模様を有する計測評価用食器、計測評価用下敷き部材、食事の計測装置およびその計測評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
急速に進みつつある高齢化社会を目前にして、過度の肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、肝臓疾患、心臓病、拒食・過食症、腎臓・胆嚢障害など、いわゆる生活習慣病患者とその予備軍の数は、厚生労働省の統計で既に1600万人を越すほどに増大しており、30兆円に達している国民医療費を、毎年1兆円規模で増大させている重要な要因を形成している。
【0003】
上記の生活習慣病患者の大部分は、治療の一部として食事の管理および制限を強いられており、日常的な食事の摂食量を記録する方法の現状としては、3度の食事の種類や量などの食事内容を特定のカードに目測による単位方式で記入しており、1ヶ月に1〜2回程の割合でその結果に基づいて医師や栄養士が評価および指導している。
【0004】
上記の日常的な食事の摂食量を記録する方法では、摂食状況の計量精度、評価する日数間隔、患者毎の嗜好特性や生活環境などへのきめ細かな対応が困難であり、また一方患者側からは、記入作業に要する手間やQOL(食生活の快適性)が失われてしまうことから、記録の手抜き(不記録)や意識的な誤記録が起こるなどの問題が多く、簡便で計測精度の高い個人別の摂食記録法の開発が切望されてきた。
【0005】
上記の課題を解決するため、特許文献1には、普及の著しいデジタルカメラを用いて、食前および食後に基準尺を一緒に写し込むなどの一定の方法により食事内容を撮影し、お代わりなどの追加のある場合には食中においても撮影し、夜間に所定の摂食画像解析センターに当該画像を電送して、該センターで各被験者の摂食状況を画像から、食事の種類、容積および重量などを半自動的に計測し、食品成分表等を基に週程度の間隔で摂取された栄養素を計測した上で、医師等の指導も受けながら食生活の指導を各個人別に還元および反映させる食事の計測評価システムが開示されている。
【0006】
上記の計測評価システムを実施するにあたって、茶碗、どんぶり、お椀等の側面が不透明な容器に盛り込まれている食品の摂食量を簡易かつ精度良く計測することが困難であった。このため、特に空の当該食器の容積を斜め上の位置から撮影した画像より、その内容積を容易かつ精度良く計測する具体的な方法が求められていた。
2眼カメラを使用して、茶碗、どんぶり、お椀等の立体画像を撮影し、解析することで内容積を計測する方法も考えられるが、市中に普及が進んでおり、小型かつ可搬で、安価である1眼カメラを使用して、容易に内容積を計測することが求められている。
【0007】
陶器あるいはプラスチック製の茶碗等の不透明容器に米飯等の食品が適度に盛り込まれている状態で撮影された2次元平面画像から、該食器や食品の容積を計測するためには、内面の立体形状を精度良く計測する過程が不可欠であるものの、一般に利用されている食器の多くは内面に模様が無く、あるいは何かの模様が有ったとしても幾何学的な計測には使えず、平面画像からは奥行きと歪みの識別が困難なために、食器内面の立体形状の計測精度が低下する問題があった。
【特許文献1】特開2001−258890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、被験者の肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣を管理するために、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に、被験者が日常的に摂取する食事の種類と量(以下、単に食事摂取量とも称する)を計測および評価することを可能にする計測評価用食器および計測評価用下敷き部材を提供することである。
また、本発明の計測評価用食器を用いた食事の計測装置と、食事の計測評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の計測評価用食器は、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
【0010】
本発明の計測評価用食器は、模様が食器の内面に描かれている。この模様としては、食器を斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
【0011】
上記の本発明の計測評価用食器は、好適には、前記模様は、前記食器の内面の底部に描かれた中心点と、前記中心点を中心とし、高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含む。
また、好適には、前記食器が対称軸および/または対称面を有し、前記模様は、内面の底部に描かれた対称中心点と、前記対称中心点を中心とした軸を前記対称軸とし、および/または、前記対称中心点を含む面を前記対称面として、前記対称中心点を通る放射状に伸びる線とを含む。
また、好適には、前記模様は、前記食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含む。
さらに好適には、上記の特徴の中から、適宜組み合わせた特徴を有する模様である。
【0012】
上記の本発明の計測評価用食器は、好適には、前記模様が、第1の色調の模様と、前記第1の色調と異なる第2の色調の模様とを含む。
また、好適には、任意の画像から立体像の定量性を補助する基準尺が同じ画面に写されて用いられる。さらに好適には、前記基準尺は折りたたみ可能である。
【0013】
本発明の計測評価用食器は、被験者のQOLを損なわない範囲で、食器内面に奥行きや歪みを識別し易い明確な模様が描かれており、任意の角度から撮影した2次元平面画像から、食器内面の立体形状を容易に計測することが可能である。本発明の食器を用いると、画像による個人別摂食量を容易かつ精度良く測定できる。
【0014】
広く利用されている任意の食器内面に描く奥行きや歪みを識別し易い模様としては、前記食器の内面の底部に描かれた中心点と、前記中心点を中心とし、高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含むこと、前記食器が対称軸および/または対称面を有し、前記模様は、内面の底部に描かれた対称中心点と、前記対称中心点を中心とした軸を前記対称軸とし、および/または、前記対称中心点を含む面を前記対称面として、前記対称中心点を通る放射状に伸びる線とを含むこと、および、前記模様は、前記食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含むという特徴から選択された特徴や、あるいはこれから適宜組み合わされた特徴を有する。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明の計測評価用下敷き部材は、トレー、食卓マット、テーブルクロスなどの食器の下敷きとなる部材であって、食事摂取量の画像解析による計測評価用に用いられ、食器の下敷きとなる部材であって、前記食器を置く領域における前記下敷き部材の表面に、所定の大きさの升目模様が描かれており、前記升目模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の内容物の容積の計量を容易にするパターンの模様である。
上記の計測評価用下敷き部材は、好適には、前記下敷き部財の表面に、第1の色調および前記第1の色調と異なる第2の色調を含む色基準部が描かれている。
【0016】
また、上記の課題を解決するため、本発明の食事の計測装置は、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である計測評価用食器と、前記計測評価用食器に盛り付けられた内容物を含む食器を撮影するためのカメラとを有し、食事摂取量の画像解析による計測評価のために、前記カメラにより、前記模様とともに前記食器内の内容物を撮影する。
【0017】
また、好適には、内容物を含む食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボを有し、前記ストロボを用いて連写画像を撮影する。
上記の本発明の食事の計測装置は、好適には、前記カメラによって撮影された食器の内容物の画像の色および大きさを補正するために、基準となる複数の色および大きさを有する基準試料をさらに有し、前記カメラにより前記基準試料とともに前記食器および内容物を撮影する。
【0018】
また、上記の課題を解決するため、本発明の食事の計測評価システムは、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である計測評価用食器と、前記計測評価用食器に盛り付けられた内容物を含む食器を撮影するためのカメラとを有し、食事摂取量の画像解析による計測評価のために、前記カメラにより、前記模様とともに前記食器内の内容物を撮影する計測部と、前記計測部に接続され、前記計測部において撮影された画像データを送信する送信部と、前記送信部に接続され、前記送信部から前記画像データを受信して、前記画像データの画像解析により食事の摂取量を評価する評価部とを有する。
【0019】
上記の本発明の食事の計測評価システムは、好適には、前記送信部と前記評価部が電気通信回線を通じて接続されている。
また好適には、前記計測部は、内容物を含む食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボを有し、前記ストロボを用いて連写画像を撮影する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の計測評価用食器を用いると、底部中心が写る角度で撮影された任意の2次元平面画像から画像解析により計測評価用食器の内面の立体形状を精度良く計測でき、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣を管理するために、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
【0021】
本発明の食事の計測装置は、本発明の計測評価用食器を用いることで、食前、食中(お代わりがある場合)、食後(空の容器または食べ残しの内容物に対して)の2〜3回の撮影から、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
【0022】
本発明の計測評価用下敷き部材を用いることで、計測評価用食器と同様に、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
【0023】
本発明の食事の計測評価システムは、本発明の計測評価用食器を用いることで、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る計測評価用食器と、これを用いた計測装置および計測評価システムについて図面を参照して説明する。
【0025】
第1実施形態
図1は、本実施形態に係る計測評価用食器1の斜視図であり、通常この食器と並べて同一画像に写し込んで用いられる基準尺3をも同時に示している。
【0026】
計測評価用食器1は、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、内面に計測評価用の模様として、食器の内面の底部に描かれた中心点4と、中心点を中心とし、例えば10mm間隔などの高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含む模様が描かれている。
この模様は、食器を斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
【0027】
図2は、本実施形態に係る計測評価用食器1の上面図であり、計測評価用食器1の内面を示している。計測評価用食器1の内面は、中心点4を通る垂直な軸を回転軸とする軸対象な形状であり、等高線状の線模様2は、中心点4を中心とする同心円状であることが示されている。
【0028】
本実施形態に係る計測評価用食器は、図1および図2に示しているように、内面に同心円状のパターンである等高線状の線模様2が描かれている。この模様は、食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
従って、底部の中心点4が写るように斜め上方の角度から撮影した2次元平面画像であって、この画像を基に中心点4の位置および線模様2の配置と変形を該画像から読み取ることで、該食器1の内面の立体形状を簡単で精度良く計測することが可能になる。従って、食事前後の計測評価用食器を斜め上方から撮影した画像を解析することで、食器内の内容物の量を定量することができ、被験者の食事摂取量を計測および評価することが可能となっている。
【0029】
さらに、予め模様の撮影および画像解析をして計測評価用食器内面の奥行きや模様の歪みを計測しておくと、食器内に内容物があって上記の線模様2および中心点4を含む模様の一部または全部が内容物により覆われているときに、露出している部分の模様と内容物の量とを関連付けることが可能となり、内容物の定量、即ち、被験者の食事摂取量を計測および評価することが可能である。
【0030】
図3は、本実施形態に係る計測評価用食器1の内面の形状を示すプロファイルであり、内面に描かれている中心点4を原点としており、即ち、横軸(x)は図2における中心点4からの径であり、縦軸(y)は中心点4を基準とした高さに対応する。また、図面上、食器1の内面に描かれている等高線状の線模様2の位置についても示されている。
線模様2の配置や変形と底部の中心点4を読み取ることで、計測評価用食器1の内面の立体形状を簡単で精度良く計測し、この結果、図3に示すような計測評価用食器1の内面の立体形状を得ることができる。中心軸に回転対称形である一般の食器では、得られた断面形状を円筒座標系で積分することにより、該食器の内容積が計算できる。
このように、底部の中心点4が写るように斜め上方の角度から撮影した2次元平面画像であって、この画像を基に中心点4の位置および線模様2の配置と変形を該画像から読み取ることで、該食器1の内面の立体形状を簡単で精度良く計測することが可能になる。
【0031】
図4(A)は基準尺3の側面図であり、図4(B)は上面図である。
基準尺3は、例えば食事画像を日常的に撮影する際に食品を盛り込んだ計測評価用食器の左右に2個以上立てた状態で置かれ、食器とともに撮影される、X−Y軸の2次元L字型の物体であり、任意の画像から立体像の定量性を補助する。
図4(A)および(B)に示すように、例えばL字型の2方向がそれぞれ10cmの長さであり、1cmの間隔の目盛り3aが設けられており、特に全長の半分である5cmの位置には識別しやすい太線の目盛りが設けられている。
この基準尺を並べて計測評価用食器を撮影すると、得られる2次元平面画像において基準尺の画像上の形状を解析することにより、計測評価用食器の奥行きや模様の歪みを含む立体形状や撮影角度を定量化する際に利用することができる。
基準尺は、X−Y−Z軸の3次元L字型構造など、その他の構造とすることもできる。
また、L字型の角の部分に蝶番や分離・差し込み機能を持たせることで、折りたたみ可能となっていることが好ましい。この場合、撮影時に食器の側に立てる時以外は折りたたんで、ポケットやハンドバッグにも収納可能になる。
【0032】
また、目盛りを有する基準尺に限らず、基準となる複数の色および/または大きさを有する基準試料を食器に並べて撮影しても良い。基準試料に設けられた基準となる色や大きさを基に、カメラによって撮影された食器の内容物の画像の色および大きさを補正することができる。
【0033】
食器の内容物の画像を撮影するための計測装置(計測部)は、上記の本実施形態の計測評価用食器と、計測評価用食器に盛り付けられた食器の内容物を撮影するためのカメラとを有し、食事摂取量の画像解析による計測評価のために、カメラにより、模様とともに食器内の内容物を撮影する構成である。
【0034】
好適には、内容物を含む食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボを有し、ストロボを用いて連写画像を撮影する。
また、好適には、カメラによって撮影された食事の画像の色および大きさを補正するために、基準となる複数の色および大きさを有する基準試料をさらに有し、カメラにより前記基準試料とともに食器および内容物を撮影する。
【0035】
例えば、被写体である被験者の内容物を含む食器に対して、所定の間隔でカメラが設置され、このカメラで食事を撮影するのに適切な位置に、所定の間隔で、白色光ストロボ、赤色光ストロボ、緑色光ストロボおよび青色光ストロボが配置されている。
複数の色のストロボを用いて、それぞれ異なる光の入射角と色調の下で、連写状態で撮影することにより、各色での影の位置を含む画像を得ることができ、例えば基準となる色を備えた基準試料をともに撮影することで、例えば白色ストロボ1個で撮影した場合に比べて、より精密に画像の色補正を行うことができ、より正確な食事の内容物の種類判定を行うことができる。
【0036】
食事の摂取量を計測および評価する計測評価システムは、上記の本実施形態の計測評価用食器と、計測評価用食器に盛り付けられた食器の内容物を撮影するためのカメラとを有し、食事摂取量の画像解析による計測評価のために、カメラにより、模様とともに食器内の内容物を撮影する構成である計測部と、計測部に接続され、計測部において撮影された画像データを送信する送信部と、送信部に接続され、送信部から画像データを受信して、画像データの画像解析により食事の摂取量を評価する評価部とを有する。
【0037】
好適には、送信部と評価部が電気通信回線を通じて接続されている。
また好適には、計測部は、内容物を含む食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボを有し、ストロボを用いて連写画像を撮影する。
【0038】
図5は、本実施形態に係る食事の計測評価システムの具体的構成を示す模式説明図である。
このシステムは、地域Aを含む通信網1−1、地域Bを含む通信網1−2、および通信網2を備える。通信網1−1は、地域Aに含まれる適宜の被験者の食事(食物、飲み物等の食品)3−1、この食事3−1を撮影するデジタルカメラ4−1、このデジタルカメラ4−1に接続され、撮影された画像データを受信し、評価部にデータを送信する送信部であるホームターミナル5−1を備え、さらに評価部として、このホームターミナル5−1からのデータを受信する基地局6−1、このデータを格納するローカルコンピュータ7−1、ローカルコンピュータ7−1に接続され、データを分析する分析センター8−1を備える。
【0039】
また、同様に、通信網1−2は、地域Bに含まれる適宜の被験者の食事3−2、この食事3−2を撮影するデジタルカメラ4−2、このデジタルカメラ4−2に接続され、撮影された画像データを受信するホームターミナル5−2、このホームターミナル5−2からのデータを受信する基地局6−2、このデータを格納するローカルコンピュータ7−2、ローカルコンピュータ7−2に接続され、データを分析する分析センター8−2を備える。
各通信網は、電話回線網、インターネット網、無線回線網、移動体網、専用回線網、ISDN網等の各種の電気通信回線網を適宜用いることができる。
【0040】
通信網2は、全体が評価部に相当し、基地局6−1および6−2から送信されたデータを送受信する送受信機9、この送受信機9に接続され、送信されたデータを格納する中央コンピュータ10、さらに、専門家によるサポートセンター11を備える。なお、上述した各種端末は、データを双方向又は片方向に通信できればよいので、物理的に接続される必要はなく、無線であっても良い。
【0041】
ここで、このシステムの動作を説明する。但し、説明の重複を避けるため、地域Aについてのみ説明する。まず、地域Aに含まれる被験者の食事3−1を、デジタルカメラ4−1によって撮影する(この撮影システムは、後述する)。デジタルカメラ4−1によってデジタル化されたデジタル画像は、ホームターミナル5−1に送信される。このデジタル画像は、ホームターミナル5−1から基地局6−1を経由して、ローカルコンピュータ7−1に伝送される。このローカルコンピュータ7−1に伝送された画像データは、分析センター8−1に送信され、各種基準データに基づいて簡単に分析される。この分析センター8−1の分析結果は、基地局6−1を経由し、再びホームターミナル5−1に伝送され、被験者又は看護者に提供される。
【0042】
また、被験者等が再分析を希望する又は詳細分析を要する場合、この画像データは、基地局6−1を経由して、通信網2内の送受信機9に送信される。さらに、画像データは、専門家によるサポートセンター11によって、詳細に分析される。この分析結果は、送受信機9、基地局6−1を経由して、ホームターミナル5−1に伝送され、被験者又は看護者等に提供される。
【0043】
上記の画像データの解析は、例えば、以下のようにして行う。
まず、画像に写された計測評価用食器の内面の模様を解析することで、摂取した食器内容物の容積(摂取容積)を計量する。このようにして得られた摂取容積と、予め設定されているか、または画像から推定された食器内容物の密度から、摂取した食器内容物の重量(摂取重量)を算出する。
一方、画像データにおいて、各色のストロボを用いて撮影した画像での画像解析などから色調補正を行い、摂取した食器内容物の種類を判定する。
上記のようにして得られた摂取重量と、判定された食器内容物の種類とから、食品標準成分表を勘案して、被験者が摂取した栄養素などの食事摂取量を推定する。
【0044】
本実施形態の計測評価用食器を用いると、底部中心が写る角度で撮影された任意の2次元平面画像から画像解析により計測評価用食器の内面の立体形状を精度良く計測でき、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣を管理するために、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
また、本実施形態の食事の計測装置と計測評価システムによれば、本実施形態の計測評価用食器を用いることで、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
【0045】
第2実施形態
図6(A)は、本実施形態に係る計測評価用食器1の斜視図であり、図6(B)は上面図である。
計測評価用食器1は、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、対称軸および/または対称面を有する形状であり、内面に計測評価用の模様として、内面の底部に描かれた対称中心点4と、対称中心点4を中心とした軸を対称軸とし、および/または、対称中心点4を含む面を対称面として、対称中心点4を通る放射状に伸びる線模様2とを含む模様が描かれている。
この模様は、食器を斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
例えば、食器1の内面に、食器の持つ対象軸を通る平面と食器内面との交点に、回転軸を中心に45°間隔で放射状に伸びる線模様4が描かれている。
底部の中心点4が写るように斜め上方の角度から2次元平面画像を撮影し、例えば図6(A)のように得られた画像を解析して線模様の配置と変形を読み取ることで、計測評価用食器1の内面の立体形状を簡単で精度良く計測することが可能になる。
【0046】
本実施形態の計測評価用食器用いると、底部中心が写る角度で撮影された任意の2次元平面画像から画像解析により計測評価用食器の内面の立体形状を精度良く計測でき、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣を管理するために、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
本実施形態の計測評価用食器は、第1実施形態と同様の計測装置や計測評価システムに適用することができる。
【0047】
第3実施形態
図7(A)は、本実施形態に係る計測評価用食器1の斜視図であり、図7(B)は上面図である。
計測評価用食器1は、食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含む。
例えば、食器1の内面に径8mmの円形模様5が、放射状かつ等高線状の幾何学的な等間隔に描かれている。
この模様は、食器を斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の奥行きおよび/または歪みの識別を容易にするパターンの模様である。
該食器1内面の立体形状を簡単で精度良く計測することが可能になる。
模様5の形は、読み取りの容易な幾何学的な同一模様であれば、円形の他にも正三角形、正四角形などが考えられ、被験者のQOLを損なわず日常的に利用できる。
【0048】
本実施形態の計測評価用食器用いると、底部中心が写る角度で撮影された任意の2次元平面画像から画像解析により計測評価用食器の内面の立体形状を精度良く計測でき、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣を管理するために、被験者のQOLを損なわずに高い精度で容易に被験者の日常的な食事摂取量を計測および評価することができる。
本実施形態の計測評価用食器は、第1実施形態と同様の計測装置や計測評価システムに適用することができる。
【0049】
第4実施形態
上記の第1〜第3実施形態においては、計測評価用食器の内面の模様が、食器の内面の底部に描かれた中心点と、この中心点を中心とし、高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含むこと、計測評価用食器が対称軸および/または対称面を有し、食器の得内面の模様が、内面の底部に描かれた対称中心点と、対称中心点を中心とした軸を対称軸とし、および/または、対称中心点を含む面を対称面として、この対称中心点を通る放射状に伸びる線とを含むこと、および、食器内面の模様が、食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含むという特徴からそれぞれ1つ選んだ特徴を有する食器であるが、これらの特徴から適宜選択して組み合わせた複数の重畳させた特徴を有する食器を採用することもでき、より簡単に精度良く内容積を計測することができる。
【0050】
第5実施形態
広く使われている食器には、回転対象軸を持つ形態の容器が殆どであり、回転対称性を持たない形状の食器であっても、対称面は持つものは多い。
面対称性を持つ食器の場合は、底部中心が写るように斜め上方の角度から撮影し、かつ第1実施形態と同様の複数の基準尺を含めた状態で2次元平面画像が得られれば、この画像を基に上記と同様にして食器の内面の各種の模様の配置とその変形を読み取ることで、該食器内面の立体形状の断面を図3と同様に計量し、各食器の対称面に合わせた積分を行うことで、簡単に精度良く内容積を計測することが可能になる。
【0051】
第6実施形態
図1に示す第1実施形態の計測評価用食器において、内面に同心円状の等高線型の線模様2を5mm間隔で描き、底部の中心点4も含めて模様の色を1本置きに例えば赤と青などに変えることにより、自動的に底部中心からの高さが0.5cm,1.5cm,2.5cm…/1.0cm,2.0cm,3.0cm…と区別しながら容易に識別できる。
このように、計測評価用食器の内面の模様が、第1の色調の模様と、第1の色調と異なる第2の色調の模様とを含むことにより、計測評価用食器の内面の立体形状を簡単でより精度高くかつ迅速に計測できる。
【0052】
第7実施形態
図8は本実施形態に係る下敷き部材6に食器9を置いた状態を示す図である。
下敷き部材6は、例えばトレーであり、食事摂取量の画像解析による計測評価用に用いられ、食器9の下敷きとなる部材であって、食器9を置く領域における下敷き部材の表面に、例えば5cm間隔の所定の大きさの升目模様7が描かれており、この升目模様は、食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、食器の内容物の容積の計量を容易にするパターンの模様である。
第1実施形態のような計測評価用食器を用いる代わりに、本実施形態に係る計測評価用の下敷き部材に食器を置いて用いることによっても、第1実施形態の計測評価用食器を用いるのと同様に、食器の内容物の容積の計量を容易に行うことができるという効果を得ることができる。
【0053】
さらに、下敷き部財6の表面に、第1の色調および前記第1の色調と異なる第2の色調を含む色基準部8が描かれていると、色基準部8とともにとともに食器9および内容物を撮影することで、色基準部を基に画像の色補正を行うことができ、より正確な食事の内容物の種類判定を行うことができる。
尚、本実施形態においては特に模様の施されていない食器を用いることも可能であり、また、第1実施形態などに示した、食器の奥行きおよび/または模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様が描かれている食器も用いることができる。
また、本実施形態は、上記のようなトレーに限らず、食卓マットやテーブルクロスなどにも適用することができる。
【0054】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
例えば、大きさの異なる食器を複数撮影する場合に、小さい食器については、例えば5mm間隔のより密な線模様を描き、大きな食器については例えば10mm間隔のより疎な線模様を描いて、大きさにみあった線模様とすることができる。この場合、例えば5mm間隔の線と10mm間隔の線の色調を異ならせて画像解析において容易に区別できるようにすると、より迅速に精度良く計測することができる。
その他、本発明の観点を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の計測評価用食器は、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣の実態を管理するために、医学・健康管理的観点から個人が日常的に摂取する食事の種類と量を、高い精度で容易に計測および評価する目的で用いる食器に適用できる。
また、本発明の食事の計測装置および計測評価システムは、肥満、糖尿病、高血圧症、高脂血症、拒食・過食症等の治療や食生活習慣の実態を管理するために、医学・健康管理的観点から個人が日常的に摂取する食事の種類と量を、高い精度で容易に計測および評価する計測装置および計測評価システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は第1実施形態に係る計測評価用食器の斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態に係る計測評価用食器の上面図である。
【図3】図3は第1実施形態に係る計測評価用食器の内面の形状を示すプロファイルである。
【図4】図4(A)は第1実施形態で用いる基準尺の側面図であり、図4(B)は上面図である。
【図5】図5は第1実施形態に係る食事の計測評価システムの具体的構成を示す模式説明図である。
【図6】図6(A)は第2実施形態に係る計測評価用食器の斜視図であり、図6(B)は上面図である。
【図7】図7(A)は第3実施形態に係る計測評価用食器の斜視図であり、図7(B)は上面図である。
【図8】図8は第7実施形態に係る下敷き部材(トレー)に食器を置いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1…計測評価用食器
2…線模様
3…基準尺
4…中心点
5…円形模様
6…トレー
7…升目模様
8…色基準部
9…食器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、
前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、
前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である
計測評価用食器。
【請求項2】
前記模様は、前記食器の内面の底部に描かれた中心点と、前記中心点を中心とし、高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含む
請求項1に記載の計測評価用食器。
【請求項3】
前記食器が対称軸および/または対称面を有し、
前記模様は、内面の底部に描かれた対称中心点と、前記対称中心点を中心とした軸を前記対称軸とし、および/または、前記対称中心点を含む面を前記対称面として、前記対称中心点を通る放射状に伸びる線とを含む
請求項1に記載の計測評価用食器。
【請求項4】
前記模様は、前記食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含む
請求項1に記載の計測評価用食器。
【請求項5】
前記模様が、前記食器の内面の底部に描かれた中心点と、前記中心点を中心とし、高さ方向に所定の間隔で描かれた複数の等高線状の線模様とを含むこと、前記食器が対称軸および/または対称面を有し、前記模様が、内面の底部に描かれた対称中心点と、前記対称中心点を中心とした軸を前記対称軸とし、および/または、前記対称中心点を含む面を前記対称面として、前記対称中心点を通る放射状に伸びる線とを含むこと、および、前記模様が、前記食器の内面において所定の間隔で幾何学的に配置して描かれた所定の形状の模様を含むことの中から、適宜組み合わせた特徴を有する模様である
請求項1〜4のいずれかに記載の計測評価用食器。
【請求項6】
前記模様が、第1の色調の模様と、前記第1の色調と異なる第2の色調の模様とを含む
請求項1〜5のいずれかに記載の計測評価用食器。
【請求項7】
任意の画像から立体像の定量性を補助する基準尺を同じ画面に写されて用いられる
請求項1〜6のいずれかに記載の計測評価用食器。
【請求項8】
前記基準尺は折りたたみ可能である
請求項7に記載の計測評価用食器。
【請求項9】
食事摂取量の画像解析による計測評価用に用いられ、食器の下敷きとなる部材であって、
前記食器を置く領域における前記下敷き部材の表面に、所定の大きさの升目模様が描かれており、
前記升目模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の内容物の容積の計量を容易にするパターンの模様である
計測評価用下敷き部材。
【請求項10】
前記下敷き部財の表面に、第1の色調および前記第1の色調と異なる第2の色調を含む色基準部が描かれている
請求項9に記載の計測評価用下敷き部材。
【請求項11】
食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である計測評価用食器と、
前記計測評価用食器に盛り付けられた内容物を含む食器を撮影するためのカメラと
を有し、
食事摂取量の画像解析による計測評価のために、前記カメラにより、前記模様とともに前記食器内の内容物を撮影する
食事の計測装置。
【請求項12】
内容物を含む食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボをさらに有し、前記ストロボを用いて連写画像を撮影する
請求項11に記載の食事の計測装置。
【請求項13】
前記カメラによって撮影された食器の内容物の画像の色および大きさを補正するために、基準となる複数の色および/または大きさを有する基準試料をさらに有し、前記カメラにより前記基準試料とともに前記食器および内容物を撮影する
請求項11に記載の食事の計測装置。
【請求項14】
食事摂取量の画像解析による計測評価用の食器であって、前記食器の内面に計測評価用の模様が描かれており、前記模様は、前記食器を任意の角度で斜め上方から撮影して得られる画像において、前記食器の奥行きおよび/または前記模様の歪みの識別を容易にするパターンの模様である計測評価用食器と、前記計測評価用食器に盛り付けられた内容物を含む食器を撮影するためのカメラとを有し、食事摂取量の画像解析による計測評価のために、前記カメラにより、前記模様とともに前記食器内の内容物を撮影する計測部と、
前記計測部に接続され、前記計測部において撮影された画像データを送信する送信部と、
前記送信部に接続され、前記送信部から前記画像データを受信して、前記画像データの画像解析により食事の摂取量を評価する評価部と
を有する食事の計測評価システム。
【請求項15】
前記送信部と前記評価部が電気通信回線を通じて接続されている
請求項14に記載の食事の計測評価システム。
【請求項16】
前記計測部が、前記内容物を含む前記食器に対して所定の位置および角度で配置された複数色の複数のストロボをさらに有し、前記ストロボを用いて連写画像を撮影する
請求項14に記載の食事の計測評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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