説明

計装システム

【課題】冗長化された計測計器のそれぞれが内蔵する電池寿命が同時に尽きることを防止できる計装システムを提供する。
【解決手段】タンク1には二重化された第1の計測計器2と第2の計測計器3が設置され、第1の計測計器2には、第1の無線発信装置4と第1の電池7が設置され、第2の計測計器3には、第2の無線発信装置5と第2の電池8が設置されている。第1の電池7と第2の電池8の設計上の電池寿命を、それぞれ13ヶ月と17ヶ月という互いに素の関係とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、計装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用プラントには監視や制御のための計測計器が複数設置され、これら計測計器と制御装置の間には有線ケーブルが布設され、前記計測計器による計測信号を前記制御装置に送信することにより、産業用プラントの監視や制御が行われてきた。しかし昨今は、布設工事費や建設期間の合理化を目的に有線ケーブルを省略し、無線による電波を利用して信号送信を行うワイアレス方式が採用されつつある。このワイアレス方式のメリットをフルに享受するためには電源供給の方法も見直す必要がある。
【0003】
すなわち、従来においては、制御装置が有線ケーブルを通じて計測計器に電源供給を行ってきたが、ワイアレス方式では計測計器内に電池を内蔵させて電源を供給するように構成されている。ここで問題となるのは電池の寿命であり、電池寿命が尽きる前に計画的に電池交換(又は、電池へのバッテリチャージ)を行う必要があるが、電池の交換作業中には産業用プラントの監視や制御は中断することになる。
【0004】
また、通常、産業用プラントに使用される計測計器のうち、当該計器が故障した場合に該プラントの継続運転を著しく難しくするものは重要な計測計器として取扱われ、計装システム設計における冗長化が計画されている。例えば、主要な制御に使用される計測計器は二重化(2台の計器が設置)が図られ、制御装置内において、1台の計器が故障した場合を判断してもう一方の健常な計器に信号ラインを切り替える等の処置が行なわれ、1台の計器が故障しても制御の継続に支障がないように計画されている。
【0005】
また、さらに重要である保護機能に係わる計測計器においては三重化(3台の計器が設置)が図られ、制御装置内において、3つの計測値の中間値選択や、2 out of 3処理を行うことで、1台の計器が故障しても2台の健常な計器により保護機能には支障がないように計画されている。このように、たとえ計測計器が1台喪失しても、制御や保護機能を維持してプラントの運転継続を図るような冗長化設計が採用されている。なお、上記のような冗長化を採用する場合、通常、計測計器は同一設計(同一仕様、同一型式)のものを二重化、三重化することが原則である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−67829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようなワイアレス方式により計器内に電池を内蔵する計測計器を二重化、三重化した場合に、各計測計器において同一の電池を用いると以下のような問題を生じる可能性がある。例えば、2台又は3台の計測計器の電池寿命が同じ時期にいっせいに尽きてしまう場合があり、せっかく計器自体を冗長化設置したにもかかわらず、制御や保護機能が喪失してプラントの運転継続が不可能になってしまうおそれがある。
【0008】
また、電池寿命を管理して、設計上の電池寿命が尽きる前のタイミングを見計らい、冗長化設置した各計器について順繰りに電池交換(又は、電池へのバッテリチャージ)を施すことも考えられる。しかしながら、設計上の電池寿命は誤差を有するものであり、電池交換予定前にいっせいに電池寿命が尽きてしまう等のリスクは否定できない。
【0009】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、冗長化された計測計器のそれぞれが内蔵する電池寿命が同時に尽きることを防止できる計装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、実施例1の計装システムは、電池を内蔵し、該電池より電源供給を受けて作動する計測計器を多重化して設置した計装システムにおいて、前記多重化して設置された計測計器のそれぞれに内蔵される電池の寿命を互いに異なるものとしたことを特徴とするものである。より具体的には、各電池の寿命を互いに素の関係としたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の計装システムの構成を示す図である。
【図2】実施例2の計装システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る計装システム及び計装システムにおける電池寿命の設定方法の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
(1−1)実施例1の構成
図1は、本実施例にかかる計装システム及び計装システムにおける電池寿命の設定方法の一例を示したものである。すなわち、図1において、タンク1は産業用プラントの一部を成し、この内部圧力を適切に保つことが本産業用プラントの運転には必須のものであるとする。そこで、前記タンク1には冗長化(ここでは二重化)された第1の計測計器2と第2の計測計器3が設置されている。
【0014】
また、前記第1の計測計器2には、第1の無線発信装置4と第1の電池7が設置され、前記第2の計測計器3には、第2の無線発信装置5と第2の電池8が設置されている。そして、これらの電池7、8によって第1の計測計器2と第2の計測計器3のそれぞれに電源が供給されるように構成されている。なお、これらの電池7、8は、一定の電池寿命が尽きると電池交換(又は、電池へのバッテリチャージ)を行う必要が生じるものである。
【0015】
なお、この場合、本実施例においては、第1の電池7と第2の電池8の設計上の電池寿命は、それぞれ13ヶ月と17ヶ月という互いに素の関係とされている。ここで、「互いに素の関係」とは、2つの電池の寿命期間の最大公約数が1であることを意味する。このように設計することにより、両電池の寿命期間の差は4ヶ月あるため、たとえ設計上の電池寿命に誤差があるとしても、2台の計測計器2、3の電池寿命が同時に尽きる可能性を事実上排除することができる。
【0016】
上記のような電池7、8を備えた二重化された計測計器2、3は、いずれもタンク1の内部圧力を計測し、その計測信号を各計測計器2、3に設置された無線発信装置4、5を経由して無線により制御装置6に発信する。そして制御装置6はこれらの計測信号を受信して、図示されない制御回路や制御弁によりタンク1の内部を適正の圧力に保持するように制御することができるように構成されている。
【0017】
なお、本実施例においては、例えば、二重化された一方の計測計器が故障した場合、制御装置6において、図示されない切替回路により健常な他方の計測計器が発信する計測信号を使用するように切替えが行われ、プラントの継続運転に支障がないように構成されている。
【0018】
(1−2)実施例1の作用・効果
上記のような構成を有する本実施例においては、第1の電池7と第2の電池8の設計上の電池寿命はそれぞれ13ヶ月と17ヶ月という互いに素の関係とされているため、第1の電池7と第2の電池8の電池交換の時期が同時に発生することを防止することができる。すなわち、実際的には、保守員が電池交換の時期を管理・記録することで電池寿命が尽きる前に電池交換を行うことになるが、その場合、例えば、第1の電池7と第2の電池8の電池寿命をそれぞれ10ヶ月と15ヶ月という関係にすると、公倍数である30ヶ月目には両電池の寿命が同時に尽きる事態が生じる。
【0019】
これに対して、本実施例のように、第1の電池7と第2の電池8の電池寿命をそれぞれ13ヶ月と17ヶ月という互いに素の関係とすることにより、両電池の寿命が同時に尽きる時期を221ヶ月目(=13×17)という極めて遠い将来に設定することが可能となる。
【0020】
(1−3)実施例1の変形例
上述したような本実施例において、各計測計器の電池電圧を無線により制御装置に発信し、各電池電圧を監視することにより、一方の計器の電池電圧が他方の計器の電池電圧に対し著しく低下したことを検出した場合に、その電池の寿命が尽きたと判断することにより、各電池の交換時期を管理できるように構成することもできる。
【実施例2】
【0021】
(2−1)実施例2の構成
本実施例は、上記実施例1の変形例であって、計測計器が三重化されている場合を示したものである。すなわち、図2に示すように、タンク9は産業用プラントの一部を成し、この内部圧力が適切値を大きく逸脱した場合は、本産業用プラントの運転を停止することが必要であるとする。そこで、タンク9には冗長化された第1の計測計器10、第2の計測計器11及び第3の計測計器12が設置されている。
【0022】
また、前記第1の計測計器10には、第1の無線発信装置13と第1の電池17が設置され、第2の計測計器11には第2の無線発信装置14と第2の電池18が設置され、第3の計測計器12には第3の無線発信装置15と第3の電池19が設置されている。これらの電池17、18、19によって第1の計測計器10、第2の計測計器11、第3の計測計器12のそれぞれに電源が供給されるように構成されている。
【0023】
そして、これら三重化された計測計器10、11、12はいずれもタンク9の内部圧力を計測し、その計測信号を無線発信装置13、14、15を経由して無線により制御装置16に発信する。そして制御装置16はこれらの計測信号を受信し、図示されない保護回路により計測信号の中間値選択処置が施され、その値が適正値を大きく逸脱したことを検知した場合にはプラント運転を停止するように構成されている。
【0024】
なお、この場合、本実施例においては、第1の電池17、第2の電池18及び第3の電池19の設計上の電池寿命は、それぞれ3年、5年、7年という互いに素の関係とされている。このように設計することにより、3つの電池のうち、その2つの電池交換の時期が同時に発生することを防止することができる。すなわち、各電池の寿命期間の差は2年あるので、たとえ、設計上の電池寿命に誤差があるとしても、2台の計測計器が、同時に電池寿命が尽きる可能性を事実上排除することができる。
【0025】
なお、本実施例においては、例えば、第1の計測計器10が故障した場合、前記中間値選択が付与されているので、計測計器11と計測計器12の健常な2台の計測信号に基づいて監視・制御がなされ、保護機能には支障がないように計画されている。
【0026】
(2−2)実施例2の作用・効果
上記のような構成を有する本実施例においては、第1の電池17、第2の電池18及び第3の電池19の設計上の電池寿命は、それぞれ3年、5年、7年という互いに素の関係とされているため、3つの電池のうち、その2つの電池交換の時期が同時に発生することを防止することができる。すなわち、実際的には、保守員が電池交換の時期を管理・記録することで電池寿命が尽きる前に電池交換を行うことになるが、その場合、例えば、第1の電池17、第2の電池18及び第3の電池19の電池寿命をそれぞれ2年、4年、6年という関係にすると、公倍数である4年目には第1の電池17と第2の電池18の寿命が同時に尽きる事態が生じる。
【0027】
これに対して、本実施例のように、第1の電池17、第2の電池18及び第3の電池19の電池寿命をそれぞれ3年、5年、7年という互いに素の関係とすることにより、2つの電池の寿命が同時に尽きる最短時期を15年目という極めて遠い将来に設定することが可能となる。
【0028】
(2−3)実施例2の変形例
上述したような本実施例において、各計測計器の電池電圧を無線により制御装置に発信し、各電池電圧を監視することにより、ある1つの計器の電池電圧が残り2つの計器の電池電圧に対して著しく低下したことを検出した場合に、その電池の寿命が尽きたと判断することにより、各電池の交換時期を管理できるように構成することもできる。
【0029】
なお、上述したように、本明細書においては、本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1…タンク
2…第1の計測計器
3…第2の計測計器
4…第1の無線発信装置
5…第2の無線発信装置
6…制御装置
7…第1の電池
8…第2の電池
9…タンク
10…第1の計測計器
11…第2の計測計器
12…第3の計測計器
13…第1の無線発信装置
14…第2の無線発信装置
15…第3の無線発信装置
16…制御装置
17…第1の電池
18…第2の電池
19…第3の電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を内蔵し、該電池より電源供給を受けて作動する計測計器を多重化して設置した計装システムにおいて、
前記多重化して設置された計測計器のそれぞれに内蔵される電池の寿命を、互いに異なるものとしたことを特徴とする計装システム。
【請求項2】
前記多重化して設置された計測計器のそれぞれに内蔵される電池の寿命を、互いに素の関係としたことを特徴とする請求項1に記載の計装システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−73180(P2012−73180A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219648(P2010−219648)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】