説明

計量供給及び乾式噴霧のための装置

本発明は、第1のアタッチメント片と第2のアタッチメント片とを有する噴霧チャネル(3)を有しておりかつ、キャリヤガス圧力パルスを噴霧チャネルに送るために、弁(16)を解して第1のアタッチメント片に接続された圧縮キャリヤガス源とを有する、噴霧可能な材料(12)の計量供給及び乾式噴霧のための装置(1)に関する。この装置は、第1のアタッチメント片と第2のアタッチメント片との間でかつ噴霧チャネルの上方において、噴霧可能な材料(12)を含む、噴霧チャネルに向かってのみ開放した貯蔵容器(10)が、環境に対して気密であるように噴霧チャネルに接続されており、弁が閉じられている時には、噴霧チャネル及び貯蔵容器において圧力補償(22)が生じる。本発明は、このような装置によるこのような噴霧可能な材料の計量供給及び乾燥噴霧のための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に抗感染薬及び免疫調整剤を含むグループから選択された、噴霧可能な材料の計量供給及び乾燥噴霧のための装置及び方法に関する。
【0002】
発明の背景
噴霧可能な材料の乾式噴霧のための装置は当業者に知られている。これらの装置において、噴霧可能な材料、例えば粉末薬剤は、特別に提供されたチャンバにおいて圧縮ガス又はキャリヤガスによって作用され、このチャンバ内で、ドライミストと呼ばれる状態に変換される。材料の粒子は、この場合、圧縮ガス又はキャリヤガスの全容積に亘って好適には均一な及び微細に分散された状態で存在し、次いで、チャンバからこの状態で適切な装置を介して排出される。
【0003】
このような装置は、特に、自発的に換気する又は換気される患者への吸入される投与のための薬剤を形成するために使用される。自発的に換気する患者における使用のために、装置は概して、適切なマウスピース又は呼吸マスクに接続される。侵襲的使用において、すなわち、換気される患者において、これらの装置は人工呼吸器に組み込まれる。
【0004】
しかしながら、噴霧可能な材料の乾式噴霧のためのこれまでに知られた装置において、一般的に見られる問題は、あるとしても、機器に関する著しい支出で、例えば大規模な機械的な計量供給装置を用いて、大量の薬剤が患者に供給されることのみができるということである。概して、公知の装置は、約1μg〜約20mgの薬剤量の噴霧に適していた。患者における、例えば約100mg〜3gの特に大量の粉末薬剤の乾燥噴霧のための単純なシステムがこれまでに提供されている。
【0005】
慣用の乾式噴霧器において、しばしば見られる問題は、貯蔵容器、例えば市販の薬瓶に緩い充填物として存在する噴霧可能な材料が、表面性質及び/又は含水量によって凝集する傾向があり、瓶の比較的狭幅な開口断面を詰まらせるということである。このような詰まりは、通常、かなり長期間に亘って噴霧可能な材料の連続的な計量供給を保証するために、適切な機械的手段によってのみ排除されることができる。さらに、噴霧可能な材料の凝集された粒子は、概して、肺にアクセスすることができない。
【0006】
特に集中治療における患者の緊急処置において、噴霧可能な材料としての薬剤の、肺胞に到達可能な形式での、一定の用量での肺内への、迅速な連続でかつ数分間に亘って、迅速かつ高い用量の投与を保証する必要がある。しかしながら、従来技術において、例えば大量の薬剤このような投与は不可能であるか、あるとしても、機器に関する著しい支出を伴う。
【0007】
発明の開示
したがって、本発明の目的は、従来技術より知られた欠点を克服する、装置、及びこの装置による、大量の薬剤、特に抗感染性薬剤及び免疫調節薬、の計量供給及び乾式噴霧のための方法を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備える装置及び請求項20の特徴を備える方法によって達成された。本発明の有利な実施形態は、個々の従属請求項に示されている。
【0009】
本発明の意味において、噴霧可能な材料の乾式噴霧は、エーロゾル化、すなわちキャリヤガスによって搬送される状態への変換、として理解される。
【0010】
本発明によれば、装置が提供され、この装置において、ジェットポンプの原理にしたがって、貯蔵容器に貯蔵された噴霧可能な材料が、貯蔵容器内の負圧によって噴霧チャネル内へ吸入され、このチャネルにおいて圧縮ガスによって噴霧化される。貯蔵容器内の負圧は、この場合、貯蔵容器と噴霧チャネルとの間の接続部を流過する圧縮ガスによって生ぜしめられる。
【0011】
本発明による乾式噴霧器は、自発的に換気する患者における急性治療のために使用されることができる。この目的のために、噴霧チャネルの第2のアタッチメント片は、アタッチメント片を介して、自発的に換気する患者への投与のための装置に接続されることができる。このような装置の例はマウスピース及び呼吸マスクである。
【0012】
換気される患者において使用される場合、すなわち侵襲的使用において、乾式噴霧器は人工呼吸器に組み込まれる。噴霧チャネルの第2のアタッチメント片は、この場合、好適には、人工呼吸器の呼吸空気取入れライン、特に人工呼吸器のサイドポート、に接続される。
【0013】
本発明によれば、圧縮キャリヤガス源からの圧力パルスの継続時間及び/又は時間は、好適には、侵襲的使用の場合には、人工呼吸器の呼吸速度と同調させられるように、及び自発的に換気する患者における使用の場合には、患者の呼吸速度と同調させられるように調整される。本発明によれば、圧縮ガスと材料との混合物、すなわち噴霧可能材料と圧縮キャリヤガスとの組合せが、吸入サイクルの前又はその間に患者に到達し、これにより、患者によるドライミストの直接摂取が可能である場合に、同調した制御が常に保証される。もちろん、制御は、患者によるドライミストの直接摂取がx回の呼吸ごとに可能であるようになっていることもできる。制御は、制御信号が、噴霧チャネル及び/又は、自発換気する患者への投与のための装置へのあらゆる人工呼吸器アタッチメント又はアタッチメント片の長さに応じて、及び呼吸チューブへのドライミストの所望の進入時間に応じて設定されるようになっている。
【0014】
つまり、本発明によれば、圧縮キャリヤガス源からの圧力パルスの間、すなわち弁が開いている時、貯蔵容器に負圧が存在し、この負圧が、圧力パルスの間に、すなわち弁が閉じているときに、逆流するガスによって補償されるような装置が提供される。本発明による乾燥噴霧器の侵襲的使用において、逆流ガスは、人工呼吸器において使用された呼吸ガスであることができる。自発換気する患者における使用において、逆流ガスは周囲空気であることもできる。
【0015】
本発明によれば、貯蔵容器は、噴霧チャンバの上方に配置されており、噴霧チャネルへの接続部を有する。この接続部は、環境に対して気密であるように構成されている。この接続部は、1つ又は2つ以上の開口から成ることができる。噴霧チャネルの上方に貯蔵容器を配置することによって、貯蔵容器に封入された噴霧可能な材料は、重力によって貯蔵容器の開口の領域に集まり、そこでチャージを形成し、このチャージは、噴霧可能な材料の表面性質と、開口のための適切な直径の選択とにより、貯蔵容器が圧力パルスの出力なしに噴霧チャネル内へ放出するのを阻止する。ここでは噴霧可能な材料の粒子の摩擦効果が重要な役割を果たす。弁が圧縮キャリヤガス源へ開かれているときに、噴霧可能な材料が噴霧チャネルに吸入されることができかつ、弁が閉じているときに貯蔵容器が噴霧チャネル内へ放出しない限りは、噴霧チャネルへの貯蔵容器の接続に対する特定の制限はない。
【0016】
貯蔵容器の開口において低圧が提供されると、噴霧可能な材料だけでなく、貯蔵容器内に貯蔵されたガスも、噴霧チャネルに吸入される。その結果、貯蔵容器の開口の上方に配置されたチャージの凝集が生じる。しかしながら、本発明によれば、このような凝集は、圧力パルスの間の装置における圧力補償によって破壊される。なぜならば、噴霧チャネル内へ逆流する周囲空気及び/又は呼吸空気も、貯蔵容器における圧力補償を生じるために貯蔵容器におけるチャージを通過するからである。
【0017】
本発明による装置は、弁が閉じているときに、噴霧チャネル及び貯蔵容器において圧力補償が生じるように設計されている。このことは、好適には、圧力補償が生じることができるように圧縮キャリヤガス源が弁を介して噴霧チャネルの第1のアタッチメントに接続されていることによって達成される。好適な実施形態によれば、圧力補償は、噴霧チャネルが第1のアタッチメント片において十分に気密に閉鎖されていることによって可能にされている。このことは、圧力補償が、例えば第1のアタッチメント片を介してではなく、少なくともほとんどが噴霧チャネル及び貯蔵容器において生じることを保証する。
【0018】
このように、本発明によれば、それぞれの圧力補償の後に、噴霧可能材料の均一に緩いチャージが提供され、その結果、材料の段階的に増大する圧縮が回避され、かなりの期間に亘って均一な計量供給が保証される。つまり、本発明による装置によって、噴霧可能な材料は、大きな量で、極めて再現可能な形式で、好適には機械的な部品なしに容易に計量供給される。さらに、圧力補償の間、チャージの弛緩、及び適切ならば、噴霧可能な材料の解凝集が達成される。したがって、圧縮ガスと材料との混合物は、大部分は粒子、好適には排他的に、噴霧可能な材料の一次粒子の寸法に相当する粒子を含むことが可能である。この程度まで、本発明による装置は、好適には完全に機械的部品から解放されて、一次粒子の寸法までも、噴霧可能な材料の最適な分散を可能にする。
【0019】
噴霧可能な材料の一次粒子の寸法は、好適には、粒子が肺、すなわち肺胞における作用部位にアクセスすることができるように、空気力学的質量中央径(MMAD)に相当する。肺にアクセスすることができる粒子の典型的なMMADは1〜10μmである。その結果、圧縮ガスと材料との混合物における粒子の所望のMMAD範囲は、本発明によれば、1〜10μm、好適には1〜5μm、特に好適には1〜3μmである。
【0020】
したがって、本発明は、装置と、方法とを提供し、これらによって、噴霧可能な材料の一定の計量供給がかなりの期間に亘って保証され、例えば数グラムの多量の薬剤が、比較的短時間に亘る、例えば15分未満の吸入によって患者に投与されることもできる。
【0021】
したがって、本発明による装置は、好適には圧力パルスごとの圧縮ガス出力の量及びこの圧力パルスの継続時間だけに基づき噴霧されるべき材料の量を計量供給する。さらに、本発明による装置において機械的計量供給装置は必要とされない。
【0022】
本発明による装置の有利な実施形態において、計量供給チャンバは貯蔵容器と噴霧チャネルとの間に配置されている。噴霧チャネルに向かってこの計量供給チャンバの容積及び開口直径を適切に選択することにより、圧力パルスごとに出力されるべき噴霧可能材料の量の計量供給は、有利には、計量供給チャンバに向かった貯蔵容器自体の開口に関するいかなる制限もなしに生じることができる。特に有利な形式において、開口及び貯蔵容器及びこの開口の下方に位置する計量供給チャンバの直径は、計量供給チャンバ内に存在する噴霧可能材料の量が正確に圧力パルスの間に噴霧されるように、互いに適合させられている。
【0023】
本発明による装置における圧縮ガス源は、制御可能な弁を介して噴霧チャネルに接続されている。ここでは制御可能な弁は特に好適にはソレノイド弁であり、このソレノイド弁は、当業者に知られた形式で、噴霧チャネルへの圧力パルスの時間及び継続時間を制御する。弁は、患者の呼吸又は換気速度に適応された形式で制御され、本発明による装置の好適な実施形態において、弁のための制御信号は、侵襲的使用においては人工呼吸器の内部に配置された圧力センサによって発せられる。
【0024】
本発明によれば、噴霧チャネル及び貯蔵容器、及び適当であるならば計量供給チャンバにおいて圧力パルスと圧力パルスとの間に圧力補償が生じる。この圧力補償は、装置における適切な手段によって、周囲空気の導入によって生じることができる。しかしながら、装置の有利な実施形態において、この圧力補償は、噴霧チャネル及び貯蔵容器への圧力パルスの方向とは逆の呼吸空気又は換気空気の導入によって生じる。このように、有利な形式において、周囲空気における微生物又は汚染物による汚染が安全に回避されることができる、閉鎖された、好適には無菌のシステムが提供されることができる。
【0025】
圧縮ガスは有利には、特に好適には0.8〜1mm、極めて好適には約1mmの内径を有する毛管を介して噴霧チャネルに導入されることができる。本発明の特に有利な実施形態において、毛管の出口は、貯蔵容器又は計量供給チャンバと噴霧チャネルとの間の接続部の下方の領域において噴霧チャネルに配置されている。このように、有利な形式において、毛管から出る圧縮ガスの旋回が、噴霧チャネルにおける噴霧可能な材料の旋回、その結果ドライミストの発生、を支持する装置が提供される。この旋回は付加的に、噴霧可能な材料の可能な凝集を破壊し、これにより、噴霧可能な材料のほとんど排他的に一次粒子が、圧縮ガスと材料との得られた混合物に存在する。
【0026】
本発明による装置の噴霧チャネルの第2のアタッチメント片は有利には、(侵襲的使用の場合)人工呼吸器アタッチメント片に又は(非侵襲的使用の場合)自発的に換気する患者への投与のための装置へのアタッチメント片に接続されており、ドライミスト、すなわち圧縮ガスと材料との混合物は、前記混合物が逸らせ面又はその他の障害物に衝突することなく、患者に引き渡される。装置のこのような構成において、ドライミストは、妨げられることなく人工呼吸器の換気ガス内に進入し、そこで換気ガスと組み合わされることができる。このように、ギャリヤガスによって搬送される噴霧可能な材料が、障害物に衝突し、この障害物に定着し、ひいては肺における作用部位に到達することができないという状況を回避することができる。特に、人工呼吸器アタッチメント、又は自発的に換気する患者への投与のための装置へのアタッチメント片への噴霧チャネル及び好適には分散ノズルの平行かつ極めて特に同心状の配列により、例えば呼吸器アタッチメントの内壁(例えば人工呼吸器サイドポート又は呼吸チューブ)又はマウスピースの内壁への噴霧された材料の付着は安全に抑制される。
【0027】
本発明による装置において、30〜180mlの圧縮ガスが好適には、圧力パルスごとに噴霧チャネルに導入されることができる。このように、噴霧可能な材料の所望の量の噴霧のために特に有利な圧縮ガスの量を提供することが可能であり、この量は、問題になる患者の肺によって取り込まれることができる噴霧可能な材料の量を噴霧するのに十分である。これと同時に、このような容積の圧縮キャリヤガスを用いて噴霧されるべき量は十分に小さく、患者の呼吸又は換気が不都合に影響される可能性を排除する。
【0028】
本発明による装置の別の有利な実施形態において、粉末化された材料の所定の量、好適には10〜50mg、特に好適には10〜30mgは、圧力パルスごとに噴霧されることができる。つまり、特に単純な形式において、患者の肺の取込み能力に有利には適応させられた量で、粉末材料の均一に計量供給された噴霧を可能にする装置が提供される。
【0029】
噴霧可能な材料のための貯蔵容器が、装置に接続されており、好適には、注入可能な薬剤のための慣用の瓶である。貯蔵容器の外径は通常は2cmの範囲である。瓶が本発明による装置に取り付けられる前に、瓶の閉鎖片、通常はゴムストッパ、が取り外される。
【0030】
本発明による装置の別の好適な実施形態において、貯蔵容器は、0.1〜3g、より好適には0.5〜3g、特に好適には1〜2gの噴霧可能な材料を含んでいる。これは、特に有利な形式において、装置によって噴霧されるべき材料の量が、粉末薬剤の吸入された投与において特に集中治療薬剤において必要とされる投与の用量及び継続時間に適応させられることができる。
【0031】
出願の意味の中で、噴霧可能な材料は、本発明による装置の作動中に少なくとも一部が、キャリヤガスによって搬送された状態に変換するような材料として理解される。
【0032】
本発明によれば、噴霧可能な材料は、特に吸入によって投与されることができる大量薬剤である。この薬剤は有利には、粉末状である、例えば微粉化された粉末である。例えば微粉化プロセスによるこの種の粉末薬剤の製造は当業者に知られている。噴霧可能な材料は例えば、肺サーファクタントを除く薬剤であることができる。噴霧可能な材料は好適には、抗感染薬及び免疫調整薬を含むグループから選択される。本願の意味において、"抗感染薬"は、感染因子を阻止又は殺す全ての物質を含むと理解されるべきである。抗感染薬の例は、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬及び抗原虫薬である。ここでは、"抗生物質"は、静菌性又は殺菌作用を備える物質と理解される。出願の意味において、"免疫調整薬"は、免疫系、例えば免疫抑制因子に対して調整効果を有する物質である。もちろん、噴霧可能な材料はこのような物質の混合物も含むことができる。
【0033】
使用されることができる抗生物質の例は、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、β−ラクタム、テトラサイクリン、アミノグリコシド、ジャイレース阻害剤、又はこれらのあらゆる所望の組合せである。使用されることができるペニシリンの例は、アモキシリン、アンピシリン、アジドシリン、ベンジルペニシリン、フルクロキサシリン、フェノキシメチルペニシリン及びピペラシリンである。使用されることができるセファロスポリンの例は、セファクロール、セフェピム、セフィキシム、セフォタキシム、セフォチアム、セフポドキシムプロキセチル、セフタジジム、セフチブテン、セトリアキソン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セファドロキシル、セファレキシン、ゼファゾリン、及びロラカルベフである。カルバペネムの例は、エルタペネム及びメロペネムである。使用されることができるモノバクタムの例は、アズトレオナムである。使用されることができるテトラシクリンの例は、ドキシシクリン及びミノシクリンである。本発明による噴霧可能な材料として使用されることができるアミノグリコシドの例は、アミカシン、トブラミシン、ネチルミシン、ゲンタマイシン、及びストレプトマイシンである。適切なジャイレース阻害剤は、例えば、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン及びオフロキサシンである。抗生物質のその他の例は、フォスフォマイシン、テリスロマイシン及びリネゾリドである。
【0034】
免疫調整薬の例は、シクロスポリン及びアザチオプリンである。
【0035】
抗感染薬として使用されることができる抗原虫薬の例は、ペンタミジン及びアトバクオンである。
【0036】
全ての場合において、これらの物質及びその他の物質のあらゆる所望の混合物が、これらの混合物の少なくとも幾つかが、本発明による装置の作動中にキャリヤガスによって搬送される状態に変換されることができる限り、噴霧可能な材料として使用されることができる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、前記装置による、噴霧可能な材料の計量供給及び乾式噴霧のための方法が提供される。この方法は、噴霧可能な材料のための貯蔵容器内における負圧と、噴霧チャネル内への噴霧可能な材料の副次的量の結果的吸引と、噴霧チャネル内でのこの副次的量のエールゾル化とを生ぜしめるために、噴霧チャネルに圧力パルスを導入するステップを含む。圧縮ガスと噴霧可能な材料との混合物が拡散ノズルを通って呼吸チューブ又は同様のものへ流入すると、各圧力パルスの完了後に圧力補償が生じ、この圧力補償において、外部及び/又は呼吸空気からの導入された空気が、呼吸チューブ又は同様のものから噴霧チャネル及び貯蔵容器内へ逆流する。
【0038】
本発明によれば、この圧力補償の間、ガスは、貯蔵容器の開口の上方及び適切であるならば計量供給チャンバの開口の上方に配置されておりかつそこで場合によっては圧縮及び凝集されている材料のチャージを流過し、これにより、材料は弛緩及び解凝集させられる。
【0039】
前の圧力パルスの間に、使用された計量供給チャンバが完全に空にされると、貯蔵容器の開口の上方における凝集された材料のチャージが、計量供給チャンバに落下し、噴霧チャネルへの計量供給チャンバの開口の上方においてチャージを形成する。したがって、特に単純な手段によって、装置内の薬剤の目標の定まった計量供給が達成される。
【0040】
本発明による方法の別の好適な実施形態において、上記ステップを反復することによって、貯蔵容器の内容物は、好適には15分未満、特に好適には10分未満の規定された時間内に患者に完全に噴霧及び供給される。このように、特に有利には、薬剤の高い用量の迅速な投与が必要である、患者の集中治療又は患者の緊急治療における要求を満足する方法が提供される。
【0041】
図面の簡単な説明
本発明は、図1から図5までを参照しながら例として以下に詳細に説明される。図示された装置は単に、発明の有利な実施形態を示しており、発明の根底をなす概念を全く限定しようとするものではない。
【0042】
図において:
図1は、本発明による装置の第1の実施形態の概略図を示している。
【0043】
図2は、本発明による装置の第1の実施形態の部分的に断面で示された側面図である。
【0044】
図3は、噴霧チャンバへの圧力パルスの出力の間における本発明による装置の状態を示している。
【0045】
図4は、2つの圧力パルスの間の期間における本発明による装置の状態を示している。
【0046】
図5は、本発明による装置の第2の実施形態の部分的に断面で示された側面図である。
【0047】
発明の実施形態
図1には装置1の部分的に断面で示された斜視図が示されており、この装置には噴霧チャネル3がノズルブロック2の内部に配置されている。第1の端部(図1では左側)において、ノズルブロック2は毛管座部4を有しており、この毛管座部に、毛管13を支持した毛管ホルダ14が嵌合されている。この毛管ホルダ14自体は、ソレノイド弁16へ開放した接続ライン15に接続されており、ソレノイド弁は、参照符号17によって概略的に示された制御システムによって調整される。圧縮空気アタッチメントライン18から毛管13内への圧縮ガスの流れが、制御システム17によって調整される。第2の端部(図1では右側)において、噴霧チャネル3が拡散ノズル5へ開放しており、拡散ノズルの断面積は、毛管13から離れる方向で連続的に増大している。拡散ノズル5自体は、ノズルブロック2の一体的な構成部分であるアタッチメント片2aへ開放しており、このアタッチメント片には、人工呼吸器アタッチメント片6、又は自発的に換気する患者に投与するための装置へのアタッチメント片7が嵌合されている。装置1は、噴霧チャネルの上方に、薬剤貯蔵容器10のための受容座部9をも有している。貯蔵容器10の上側縁部11は、ノズルブロック2に設けられた受容座部9に嵌合されており、貯蔵容器10の開口19は、円錐状にテーパした計量供給チャンバ8の上方に配置されている。この開口19の上方には、薬剤12のチャージが配置されており、この薬剤は、噴霧可能な材料12の粒子がほとんど計量供給チャンバ8に進入しないように凝集させられている。
【0048】
図2は、図1に示された装置1の部分的に断面図で示された側面図を示しているが、図1とは異なり、計量供給チャンバ8は既に充填されている。装置1のこの状態において、貯蔵容器10内の材料12が、それ以上の材料12が計量供給チャンバ8に滑り込むことができない程度に圧縮されるまで、計量供給チャンバ8は、開口19を通って落下する材料によって充填されている。図2に示された時点では、制御システム17はソレノイド弁16にいかなる信号をも発進していないので、圧縮空気は、弁16及び毛管13を通って噴霧チャンバ3内へ流入しない。
【0049】
図3は、制御システム17が開放信号をソレノイド弁16に送った後の装置1の部分的に断面図で示された側面図を示している。この時点から、圧縮空気はソレノイド弁16及び毛管13を通って噴霧チャネル3へ流入する。噴霧チャネル3において、貯蔵容器10及び計量供給チャンバ8において圧縮空気の流れによって負圧が生ぜしめられ、この負圧によって、少なくとも計量供給チャンバ8内の材料12のチャージが、白い矢印によって示された圧縮空気の流れに捕捉される。噴霧チャネル3において、噴霧可能な材料12は圧縮空気によってエーロゾル化され、黒い矢印及び白い矢印によって示されたドライミストが、人工呼吸器アタッチメント6及びアタッチメント片7内に案内される。このようにして生ぜしめられたドライミストは、呼吸空気又は換気ガスと共に患者の肺内へ搬送されることができる。
【0050】
図4は、制御システム17がソレノイド弁16に開放信号を送信せず、その結果、圧縮ガス源(図示せず)から噴霧チャネル3内への圧縮ガスの流れも中断されている時点における、本発明による装置1の第1の実施形態の部分的に断面図で示された側面図を示している。例えば、人工呼吸器、又は自発的に換気する患者への投与のための装置の、呼吸空気取入れラインと、装置1との間の圧力勾配により、換気空気又は呼吸空気は、噴霧チャネル3へ流入し、計量供給チャンバ8を通って貯蔵容器10に流入する。計量供給チャンバ8及び貯蔵容器10内の材料の個々のチャージを通る空気流(矢印22によって示されている)によって、チャージは弛緩され、あらゆる凝集が破壊され、これにより、圧力補償が生じ、流れることができる噴霧可能な材料12が装置1に存在する。
【0051】
図5は、本発明による装置1の実施形態を示しており、この実施形態において、装置1は、円筒状の呼吸チューブ21に対して同心状に配置されている。この実施形態においても、制御システム17によって調整されるソレノイド弁16が開かれた後に、圧縮ガスは、圧縮空気アタッチメント片18及び毛管13を通って噴霧チャネル3に流入する。この場合にも、毛管13の開放端部のすぐ上方に、計量供給チャンバ8の開口が配置されており、計量供給チャンバの上方に、貯蔵容器10が、この貯蔵容器のために設けられた受容座部9に位置決めされている。この実施形態において、噴霧チャネル3の長手方向軸線は、呼吸チューブ21の長手方向軸線上に位置しておりかつ多数の呼吸空気取入れ開口23に対して平行に位置しており、これらの呼吸空気取入れ開口を通って、呼吸空気が、供給源(図示せず)から呼吸チューブ21を通って案内される。最後に、装置1から遠い方の端部において、呼吸チューブ21は、概略的に示されたマウスピース24において終わっており、このマウスピースの周囲に、患者は、ドライミストが付加された呼吸吸気を吸入するために、唇を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による装置の第1の実施形態の概略図を示している。
【図2】本発明による装置の第1の実施形態の部分的に断面で示された側面図である。
【図3】噴霧チャンバへの圧力パルスの出力の間における本発明による装置の状態を示している。
【図4】2つの圧力パルスの間の期間における本発明による装置の状態を示している。
【図5】本発明による装置の第2の実施形態の部分的に断面で示された側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 装置、 2 ノズルブロック、 3 噴霧チャネル、 4 毛管座部、 5 拡散ノズル、 6 人工呼吸器アタッチメント片、 7 アタッチメント片、 8 計量供給チャンバ、 9 受容座部、 10 貯蔵容器、 11 縁部、 12 噴霧可能な材料、 13 毛管、 14 毛管ホルダ、 15 接続ライン、 16 ソレノイド弁、 17 制御システム、 18 圧縮空気アタッチメントライン、 19 開口、 21 呼吸チューブ、 23 呼吸空気取入れ開口、 24 マウスピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗感染薬及び免疫調整剤を含むグループから選択された噴霧可能な材料(12)の計量供給及び乾燥噴霧のための装置(1)であって、
第1のアタッチメント片と第2のアタッチメント片とを有する噴霧チャネル(3)と、キャリヤガス圧力パルスを前記噴霧チャネル内に送るために弁(16)を介して前記第1のアタッチメント片に接続された圧縮キャリヤガス源とが設けられている形式のものにおいて、
前記第1のアタッチメント片と前記第2のアタッチメント片との間においてかつ噴霧チャネルの上方において、噴霧可能な材料(12)を含む、噴霧チャネルに向かってのみ開放した貯蔵容器(10)が、環境に対して気密であるように噴霧チャネルに接続されており、弁が閉じられているときに、前記噴霧チャネル及び前記貯蔵容器において圧力補償が生じるようになっていることを特徴とする、抗感染薬及び免疫調整剤を含むグループから選択された噴霧可能な材料(12)の計量供給及び乾燥噴霧のための装置。
【請求項2】
前記噴霧チャネルの前記第2のアタッチメント片が、拡散ノズル(5)として設計されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記貯蔵容器と前記噴霧チャネルとの間に計量供給チャンバ(8)が配置されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記弁(16)が、調整されることができる弁である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記噴霧チャネルに毛管(13)が設けられており、前記弁が開いている時にキャリヤガスが前記毛管(13)を通って噴霧チャネルに流入するようになっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記毛管が、0.8〜1mmの内径を有する、請求項5記載の装置。
【請求項7】
圧力パルスと圧力パルスとの間に、該圧力パルスの方向とは逆方向に呼吸空気又は換気空気が噴霧チャネル及び貯蔵容器に流入することができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記噴霧チャネルの前記第2のアタッチメント片が、人工呼吸器のアタッチメント片(6)に接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
人工呼吸器の呼吸速度と調和させられるように、キャリヤガスの圧力パルスの継続時間及び/又は時間が前記弁(16)を介して調整されることができる、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記噴霧チャネルの前記第2のアタッチメント片が、自発的に換気する患者への投与のための装置へのアタッチメント片(7)を介して接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
自発的に換気する患者への投与のための装置を介して呼吸する患者の呼吸速度と同調させられるように、キャリヤガスの圧力パルスの継続時間及び/又は時間が前記弁(16)を介して調整されることができる、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記噴霧チャネル及び好適には拡散ノズルが、人工呼吸器のアタッチメント、又は自発的に換気する患者への投与のための装置へのアタッチメント片に同心状に接続されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
圧力パルス毎に30〜180mlのキャリヤガスが噴霧チャネルに導入されることができる、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
圧力パルス毎に所定の量の、好適には10〜50mgの噴霧可能な材料が噴霧されることができる、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記貯蔵容器(10)が、注入可能な薬剤のための慣用の瓶である、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記貯蔵容器(10)が、0.1〜3gの噴霧可能な材料を含んでいる、請求項1から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記噴霧可能な材料(12)が粉末状である、請求項1から16までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
抗感染薬が、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬及び抗原虫薬を含むグループから選択される、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記抗生物質が、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、モノバクタム、テトラシクリン、アミノグリコシド及びジャイレース阻害剤のグループ、又はこれらの組合せから選択される、請求項18記載の装置。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の装置(1)によって、抗生物質、抗感染薬、抗ウイルス薬及び抗原虫薬を含むグループから選択された噴霧可能な材料の計量供給及び乾燥噴霧のための方法において、
弁(16)を開いてキャリヤガスの圧力パルスを噴霧チャネル(3)に送りかつ貯蔵容器(10)に負圧を生ぜしめるステップと、
噴霧材料(12)の副次的な量を貯蔵容器又は計量供給チャンバ(8)から噴霧チャネル内へ吸い込むステップと、
前記噴霧可能な材料の副次的な量を前記噴霧チャネルにおいて噴霧化するステップと、
圧縮ガスと材料との混合物を噴霧チャネルを通って、適当であるならば人工呼吸器アタッチメント片(6)又は、自発的に換気する患者への投与のための装置へのアタッチメント片(7)に送るステップと、
前記噴霧チャネル及び前記貯蔵容器における圧力補償のために前記弁(16)を閉じるステップとを含むことを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の装置(1)によって、抗生物質、抗感染薬、抗ウイルス薬及び抗原虫薬を含むグループから選択された噴霧可能な材料の計量供給及び乾燥噴霧のための方法。
【請求項21】
前記弁(16)が圧力補償のために閉じられている場合、呼吸ガス又は換気ガスが、貯蔵容器内へ逆流し、貯蔵容器(10)に配置された噴霧可能な材料(12)を流過する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
呼吸ガス又は換気ガスが噴霧可能な材料(12)を流過する場合、噴霧可能な材料は弛緩されかつ、適切であるならば解凝集される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
貯蔵容器(10)の内容物が規定された時間内、好適には15分未満でほとんど完全に噴霧化される、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
圧縮キャリヤガス源が弁(16)を介して第1のアタッチメント片に接続されており、これにより、弁が閉じられている場合に、噴霧チャネル及び貯蔵容器において圧力補償が生じるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項25】
前記弁(16)を介する、噴霧チャネルの第1のアタッチメント片への圧縮キャリヤガス源の接続が十分に気密である、請求項24記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−534194(P2008−534194A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504695(P2008−504695)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003172
【国際公開番号】WO2006/105980
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507229021)ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (90)
【氏名又は名称原語表記】Nycomed GmbH
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2, D−78467 Konstanz, Germany
【Fターム(参考)】