説明

計量槽およびこれを備えた処理設備

【課題】簡単な構造であり、凝集機能付きの計量槽を提供する。
【解決手段】計量槽1には、被処理液Uと凝集剤溶液Cとが混合・攪拌される流路10が形成されている。流路10は、流路内壁の左右に交互にずらして設けられた障壁13によってジグザグ状に形成されている。そして、流路10の内壁床面および天面と、障壁13の表面には尖面を除した略円錐状の突起14が複数設けられている。突起14は、障壁13を裏側からの押し出しによって成形され、また流路10の床面および天面の突起14も同様に成形されている。この障壁13と突起14とによって形成されたジグザグ状の流路10を被処理液Uと凝集剤溶液Cとが通過することによって、これらを効率よく均一に混合・攪拌・反応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し尿や浄化槽汚泥等の処理設備に配され、被処理液の流量を調整するための計量槽に関し、特に、凝集反応機能を追加した計量槽に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、し尿や浄化槽汚泥等の被処理液の処理は、前処理(被処理液中の夾雑物及び浮遊物質SSを除去)だけして、下水道に放流する方式が多くなってきている。なお、下水道に放流する場合、被処理液中の油分(ノルマルヘキサンなど)は規制値以下に抑えなければならないので、油分の除去が必要となる。そこで、し尿や浄化槽汚泥に凝集剤を投入して、夾雑物、浮遊物質、油分をフロックにした後にスクリーンで固液分離し、固形物は脱水処理して焼却され、ろ液(液体)は下水道に放流する方式が採用されている。
【0003】
この種のし尿や浄化槽汚泥等の処理設備では、これら被処理液と凝集剤とを攪拌・反応させる凝集反応槽と、被処理液と凝集剤との混合液の流量を調整する計量槽と、混合液を夾雑物(し渣等)とろ液とに分離するスクリーンと、夾雑物を脱水処理するスクリュープレスとを備えたものが一般的である。
【0004】
たとえば特許文献1は、汚泥水(被処理液)と凝集剤とを反応させる2つの反応槽1、2と、脱水機4と、計量槽5とを主要な構成とする処理装置である。被処理液と第1凝集剤とを第1反応槽1で混合させて計量槽5に移送し、計量槽5で流量を調整した後に第2反応槽2で、混合液と第2凝集剤とを攪拌羽根54によってさらに混合・攪拌してフロック化し脱水機4に移送され、脱水機4で脱水される。
【0005】
このように、汚泥等の被処理液と凝集剤とを反応させる場合には、攪拌羽根を設けた反応槽を用いて混合・攪拌させるものが一般的である。また、この種の攪拌羽根を設けた装置は、たとえば特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−275912号公報(図1,図5参照)
【特許文献2】特許第3317949号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、し尿や浄化槽汚泥には人の糞尿に加えてトイレットペーパー等の繊維が多く含まれているため、従来の攪拌羽根を設けた反応槽を通過する際、この繊維が攪拌羽根に絡まるという課題があった。また、攪拌羽根で攪拌されると、フロックが非常に細かく破砕されるため、スクリーンを通過する際、細かい凝集フロックがスクリーンの隙間から落ちてろ液とともに排水として処理されてしまうという課題があった。また、反応槽において攪拌羽根が届かない場所をフロックが通過することもあり、被処理液の攪拌・反応が十分されないままに反応槽を通過するという課題もあった。また、攪拌羽根を設けた反応槽は、容積・重量が大きく、かつ、コストが高い。
【0008】
一方、処理設備における計量槽は、被処理液の流量調整に用いられるもので、具体的には、汚泥等の被処理液を計量槽で流量調整して、所定量を反応槽やスクリーン、脱水機などに移送する。なお、従来の計量槽は、箱形で内部がいくつかの部屋に区画され、各部屋間に堰が設けられており、水面が一定の高さ以上になると次の部屋へ被処理液が移送されるという単純なもので、移送量の調整のみを行う極めて簡単な構造であった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、攪拌羽根が不要で、被処理液と凝集剤とが全体に均一に攪拌・混合・反応でき、かつ、簡単な構造でコストを抑えた、反応槽の機能を有する計量槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明にかかる計量槽は、し尿や浄化槽汚泥等の被処理液の処理設備において、被処理液の移送量を所定量に調整するための計量槽であって、被処理液を内部に供給するための被処理液供給口と、被処理液と混合する凝集剤溶液を内部に供給するための凝集剤溶液供給口と、被処理液および凝集剤溶液が通過する流路と、被処理液と凝集剤溶液との混合液を外部に排出するための混合液排出口とを備え、前記流路は、障壁が交互に設けられ、ジグザグ状の流路として形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、被処理液と凝集剤溶液とがジグザグ状の流路を通過する過程で十分に混合され、凝集反応を促進できる。また被処理液と凝集剤溶液とを全体に均一に混合・攪拌することができる。
【0012】
また、反応槽や攪拌装置、攪拌羽根やこれを動かす動力などが不要となるため、処理設備全体の省スペース化が可能となる上、機器コスト、電力コストなど種々コストを大幅に抑えることができる。
【0013】
また、し尿や浄化槽汚泥には人の糞尿に加えてトイレットペーパー等の繊維が多く含まれるところ、本発明の計量槽ならびに処理設備は、攪拌装置や攪拌羽根を必要としないため、凝集反応や攪拌時における攪拌羽根への繊維の絡まりがなく、攪拌装置等の機能停止を防ぎ、処理設備全体としても不用意な機能停止のリスクを抑えることができる。
【0014】
ここで、ジグザグ状の流路とは、たとえば上面視矩形の凝集反応室に対して、その左右内壁に障壁を左右交互にずらして配置することによって形成される蛇腹状の流路をいう。なお、障壁は前記凝集反応室内の両側壁に左右交互に配置する以外に、凝集反応室内の床面および天面に上下交互に配置してもよい。
【0015】
また、凝集剤溶液は、硫酸アルミニウムや硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などを主原料としてなり、汚泥等の被処理液に分散している粒子を集合させ、フロック化(固形化、沈殿)させることを目的として用いられるものである。
【0016】
また、計量槽内における被処理液(凝集剤溶液およびこれらの混合液を含む)の流速は0.3〜0.5m/sとすることが好ましい。低速すぎると混合・攪拌が効率よくできず、高速すぎるとフロックの破損の原因となる。
【0017】
請求項2にかかる計量槽は、その内部が、被処理液が供給される受入室と、前記流路が形成される凝集反応室と、少なくとも2室に区画され、前記受入室と前記凝集反応室とが、前記被処理液の移送量を調整するための第1の堰によって区画されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1の堰によって被処理液の移送量を調整して、被処理液を所定量ずつ凝集反応室に送ることができる。そして、凝集反応室の流路において、被処理液と凝集剤溶液とを反応、混合させる。
【0019】
請求項3にかかる計量槽は、前記障壁および前記流路の内壁のうち少なくとも一方に複数の突起が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ジグザグ状の流路に突起が存在することとなり被処理液と凝集剤溶液との攪拌・混合・反応がさらに促進される。くわえて、障壁や流路内壁に設けられた複数の突起によって乱流が発生するため、混合・攪拌がより促進される。なお、突起を障壁および流路内壁の双方に設けた場合、片方のみの場合よりも混合・攪拌をさらに促進できる。
【0021】
請求項4にかかる計量槽は、前記突起が尖部を有さない形状であることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、前記突起に尖部がないため、繊維が突起に絡まりにくく、繊維を含む被処理液がスムーズに流路を通過できる。もし突起に繊維が絡まると、その部分で繊維の塊が徐々に大きくなり、流路がつまるおそれがある。
【0023】
突起の形状としては、たとえば、略半球形状や略球形状、頂部を丸くした略円錐形状、頂部および角部を除した略直方体形状などが考えられる。
【0024】
請求項5にかかる計量槽は、前記障壁の側端部が、前記被処理液の流れの方向に沿って、折り曲げられていることを特徴とする。
【0025】
ここで、「障壁の側端部が、前記被処理液の流れの方向に沿って、折り曲げられている」とは、障壁の側端部を流路内における被処理液の流れの方向に沿って少し折り曲げることをいい、障壁が上面視で略L字形状となる。
【0026】
この構成によれば、被処理液に含まれる繊維が前記障壁の側端部に絡まりにくい。つまり、障壁の側端部がまっすぐに形成されていたり、流れに抗して折れ曲げて形成されていたりする場合、繊維が障壁の側端部に絡まって流路がせき止められるおそれがある。
【0027】
請求項6にかかる計量槽は、前記障壁が、交換可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、被処理液の粘性や流速、凝集剤溶液との混合・攪拌の度合いなどにより、障壁の数を変えることができ、流路断面や流路長を変更することが可能となる。ここで、「交換可能に」とは、たとえば障壁を凝集反応室の流路内壁にネジ止めして取り付け・取り外し可能としたり、あらかじめ流路内壁に障壁取り付け用の溝を設け、そこに障壁を取り付け・取り外しできる構造としたりしてもよい。
【0029】
請求項7にかかる計量槽は、前記凝集反応室が、複数段の部屋で構成されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、たとえば部屋を2段とすれば被処理液が流動する流路長を略2倍にでき、3段とすれば流路長を略3倍とできる。このようにすれば、粘性が高い被処理液を処理する場合などにも、混合・攪拌を十分に行うことができ、被処理液と凝集剤溶液とをより確実に反応させることができる。
【0031】
請求項8にかかる計量槽は、前記受入室に流入した前記被処理液が所定量を超えた場合に、前記受入室からオーバーフローさせて前記被処理液の流量を調整する第2の堰と、第2の堰から前記被処理液が流入するリターン室と、前記リターン室に、前記被処理液を外部に排出する被処理液排出口と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、第2の堰によって受入室からの被処理液の溢れを防止できる。なお、第2の堰によりオーバーフローした被処理液は、元の被処理液の貯留槽(受入槽)へ戻る。
【0033】
これにより、前記計量槽内は第1および第2の堰によって少なくとも3部屋に区画される。すなわち、前記被処理液が流入する受入室と、第2の堰を通過しオーバーフローした被処理液をためるリターン室と、第1の堰を通過して凝集剤溶液と混合・攪拌する流路が形成された凝集反応室とに区画されることとなる。
【0034】
また、第2の堰は可動堰とすることが好ましい。第2の堰を可動堰とすることで、被処理液の粘性や流速等に応じて、被処理液をオーバーフローさせる境界量を変更することができる。なお、可動堰とは上下動可能な堰をいい、オーバーフローさせる水面高さを調整する。
【0035】
請求項9にかかる計量槽は、その内部を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給口を備えたことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、被処理液の処理工程が終了した後や開始前に、計量槽内部を洗浄することができる。ここで洗浄水供給口は各部屋の上部に設けることが好ましい。
【0037】
請求項10にかかる処理設備は、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の計量槽を備えたことを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、凝集反応槽や攪拌装置が不要となるため、処理設備全体を省スペース化できる上、機能停止のリスクも軽減できる。また、これら凝集反応槽や攪拌装置の機器コストや、ランニング時の電力コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の計量槽は、障壁や突起により被処理液と凝集剤溶液とを混合・攪拌する流路が計量槽内に形成されるため、凝集反応槽や攪拌装置がなくとも、被処理液と凝集剤溶液とを十分に反応させることができる。また、この計量槽を備えた処理設備は、凝集反応槽や攪拌装置が不要なため、処理設備の省スペース化が可能で、かつ、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態にかかる計量槽の構造概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる計量槽を示す図であって、(a)は上面図である。(b)は正面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる計量槽を示すAA線断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる計量槽の流路部分を示す図であって、(a)は上側の流路を示すDD線断面図である。(b)は下側の流路を示すEE線断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる計量槽を示すBB線断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる計量槽を示すCC線断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる計量槽を有する処理設備の構成図である。
【図8】従来の一般的な処理設備の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態にかかる計量槽および該計量槽を有する処理設備について、図面に基づき説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0042】
1.[計量槽の構成]
図1〜図6は本実施形態にかかる計量槽を示す図である。図1に示すように、本実施形態にかかる計量槽1は、外形を略直方体の形状とし、その内部が受入室2と、リターン室3と、凝集反応室4とに分かれる。各部屋2、3、4は、それぞれが隔壁によって区画されている。なお、詳細は後述するが被処理液Uのおおまかな流れは、被処理液Uが貯留されている被処理液受入槽(以下、単に「受入槽」という)から計量槽1の受入室2に被処理液Uが流入し、受入室2から被処理液Uと凝集剤溶液Cとが混合・攪拌される凝集反応室4へ流入する。そして、凝集反応室4で被処理液Uと凝集剤溶液Cとが混合・攪拌された混合液Mは、細目スクリーンへと流れる。一方、受入室2から溢れた被処理液Uは、リターン室3へとオーバーフローして、元の受入槽へリターンする。
【0043】
また、受入室2とリターン室3との隔壁には可動堰5が設けられ、受入室2と凝集反応室4との隔壁には固定堰6が設けられている。そして、可動堰5の上部には可動堰5を上下させる流量調整ハンドル18が設けられている。流量調整ハンドル18により、被処理液Uをオーバーフローする水面位置を調整して、流量を調整する。
【0044】
また、受入室2には被処理液U(し尿・浄化槽汚泥など)が流入する被処理液供給口7が下面に配され、リターン室3にはオーバーフローした被処理液Uを受入槽に戻すためのリターン口8が下面に配されている。
【0045】
凝集反応室4は、上下二部屋(凝集反応室4Aと4B)で構成され、これらが通孔によって繋がっている。そして、上側の凝集反応室4Aには、凝集剤溶液Cが流入する凝集剤溶液供給口9と、被処理液Uと凝集剤溶液Cとが混合・攪拌される流路10Aと、下側の凝集反応室4Bへの通孔11とが配されており、下側の凝集反応室4Bには被処理液Uと凝集剤溶液Cとが混合・攪拌される流路10Bと、これらの混合液Mを排出する混合液排出口12とが配されている。
【0046】
また、凝集反応室4に形成された流路10(A・B)は、流路内壁の左右に交互にずらして設けられた障壁13によって、ジグザグ状に形成されている。障壁13は、混合液Mの流れの方向に沿って端部が折り曲げられ、上面視略L字状となっている。これにより、被処理液Uに含まれる繊維が、障壁13端部に絡まりにくい。また、本実施形態における障壁13の材質はSUSである。なお、障壁13の材質は、SUS以外にもFRPやPVCであってもよい。
【0047】
そして、流路10の内壁床面および天面と、障壁13の表面には尖面を除した略円錐状の突起14が複数設けられている。突起14は、障壁13を裏側からの押し出しによって成形され、また流路10の床面および天面の突起14も同様に成形されている。
【0048】
また、受入室2とリターン室3と凝集反応室4との上方には空間が設けられ、その空間に洗浄ノズル15が配される。洗浄ノズル15は、計量槽1内を洗浄水(水や洗浄液)により洗浄するためのもので、具体的には、被処理液の処理開始前または処理終了後に、洗浄ノズル15から洗浄水を噴射して各部屋2、3、4を洗浄する。なお、計量槽1には洗浄ノズル15へ洗浄水を供給する洗浄水供給口16が設けられている。
【0049】
また、計量槽1には、内部に籠もる被処理液の臭気を外部へ排出する臭気口17を備える。
【0050】
2.[計量槽内の被処理液フロー]
次に、図1を参照しつつ、計量槽1内における被処理液Uの処理フローについて説明する。なお、図1中の矢印は被処理液U(凝集剤溶液Cとの混合液Mを含む)の流れを示す。まず、し尿や浄化槽汚泥である被処理液Uがバキュームカー等によって受入槽20に貯められる。そして、被処理液Uは、受入槽20から計量槽1に送られる。
【0051】
(1)処理液Uは、被処理液供給口7から受入室2に流入し、受入室2の被処理液Uが貯まっていく。
【0052】
(2)そして、被処理液Uが受入室2を満たしていき固定堰6に到達すると、被処理液Uは固定堰6を通過して凝集反応室4(上側の凝集反応室4A)に送られる。
【0053】
一方、それと同時に、受入室2の被処理液Uがさらに貯まり可動堰5に到達すると、その被処理液Uは可動堰5を通過してリターン室3に送られる(オーバーフロー)。リターン室3にオーバーフローした被処理液Uは、リターン口8から受入槽20に戻される(矢印点線)。
【0054】
(3)上側の凝集反応室4Aに送られた被処理液Uは、凝集反応室4の上部に配された凝集剤溶液供給口9から流入する凝集剤溶液Cと混合され混合液Mとなる。凝集剤溶液供給口9の先端には、噴射ノズルを取り付け、被処理液Uとの混合を効率よく促進させている。これら被処理液Uと凝集剤溶液Cとの混合液Mは、上側の凝集反応室4Aのジグザグ状の流路10Aを通過する課程で、障壁13や突起14に衝突して、混合・攪拌され反応する。この時、突起14によって乱流が起こり、混合・攪拌・反応がより促進される。
【0055】
続き、混合液Mは通孔11を通り、下側の凝集反応室4Bへ送られる。ここでも混合液Mはジグザグ状の流路10Bを通過する課程で、混合液Mは、さらに混合・攪拌・反応される。これらの課程で混合液Mは十分に混合・攪拌・反応がなされる。
【0056】
(4)最後に、混合液Mは、下側の凝集反応室4Bの流路10Bを通過した後、混合液排出口12からドラムスクリーン(細目スクリーン)40へと送られる。
【0057】
3.[処理設備全体の構成]
(1)次に、計量槽1を含む処理設備Xの全体構成について図7に基づき説明する。
本実施形態の処理設備Xは、計量槽1と、受入槽20と、破砕投入ポンプ30と、ドラムスクリーン40と、スクリュープレス50と、ろ液貯留槽60と、凝集剤溶解装置80と、凝集剤注入ポンプ90とを備える。
【0058】
受入槽20は、バキュームカー等から運ばれる被処理液Uを計量槽1に送る前に一端貯めておくものである。破砕投入ポンプ30は、被処理液Uを受入槽20から計量槽1へ送る際に、これを介して被処理液Uの固形成分をある程度細かく破砕するためのものである。ドラムスクリーン40は、計量槽1から送られた混合液Mのうち、比較的大きめの固形分を除去するためのものです。この固形分はスクリュープレス50へ送られる。一方、ろ液はろ液貯留槽60へ送られる。
【0059】
スクリュープレス50は脱水機であって、固形分を脱水して、さらにろ液と固形分とに分離する。ここで分離されたろ液は、ろ液貯留槽60へ送られ、固形分は、し渣ホッパ70へと送られる。
【0060】
これら工程は、被処理液Uを液体成分(ろ液)と固形成分に分離して、それぞれ適した処理をするためである。ろ液はろ液貯留槽60から下水放流され、固形成分は一旦し渣ホッパ70に貯められた後、焼却等処理される。
【0061】
なお、凝集剤溶解装置80と凝集剤注入ポンプ90は、凝集剤溶液Cを製造して計量槽1に凝集剤溶液Cを流入させるためのものである。
【0062】
(2)一方、処理設備Yは図8に示すように、計量槽101にくわえ、攪拌装置111を有する凝集反応槽110を備えた従来の処理設備である。
【0063】
(3)上記のように、本発明の処理設備Xは、従来のように攪拌装置111や凝集反応槽110を別途設置する必要がないため、処理設備全体の省スペース化が可能であり、機器コストやランニング時の電力コストを抑えることができる。くわえて、攪拌装置に被処理液Uに含まれる繊維が引っかかり攪拌装置が故障することや、凝集反応装置が何らかの理由によって停止することがない。したがって、これら故障による処理設備全体の停止のリスクを軽減できる。
【0064】
4.むすび
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。特に、計量槽1の部屋数や、流路10を配した区画の段数、流路10を形成する障壁13の配置や形状、突起14の個数や配置や形状など、種々変更してもよい。また、本発明は、し尿や浄化槽汚泥以外の被処理液や、その他一般的な水処理設備においても適用できる。汚水や汚泥にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 計量槽
2 受入室
3 リターン室
4 凝集反応室(4A 上側の凝集反応室/4B 下側の凝集反応室)
5 可動堰
6 固定堰
7 被処理液供給口
8 リターン口
9 凝集剤溶液供給口
10 流路(10A 上側流路/10B 下側流路)
11 通孔
12 混合液排出口
13 障壁
14 突起
15 洗浄ノズル
16 洗浄水供給口
17 臭気口
18 流量調整ハンドル
20 受入槽
30 破砕投入ポンプ
40 ドラムスクリーン
50 スクリュープレス
60 ろ液貯留槽
70 し渣ホッパ
80 凝集剤溶解装置
90 凝集剤注入ポンプ
U 被処理液
C 凝集剤溶液
M 混合液
X 本発明の処理設備
Y 従来の処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
し尿や浄化槽汚泥等の被処理液の処理設備において、被処理液の移送量を所定量に調整するための計量槽であって、
被処理液を内部に供給するための被処理液供給口と、
被処理液と混合する凝集剤溶液を内部に供給するための凝集剤溶液供給口と、
被処理液および凝集剤溶液が通過する流路と、
被処理液と凝集剤溶液との混合液を外部に排出するための混合液排出口とを備え、
前記流路は、障壁が交互に設けられ、ジグザグ状の流路として形成されていることを特徴とする計量槽。
【請求項2】
請求項1記載の計量槽において、
その内部が、被処理液が供給される受入室と、前記流路が形成される凝集反応室と、少なくとも2室に区画され、
前記受入室と前記凝集反応室とが、前記被処理液の移送量を調整するための第1の堰によって区画されていることを特徴とする計量槽。
【請求項3】
前記障壁および前記流路の内壁のうち少なくとも一方に複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の計量槽。
【請求項4】
前記突起が、尖部を有さない形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の計量槽。
【請求項5】
前記障壁の側端部が、前記流路内における前記被処理液の流れの方向に沿って、折り曲げられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の計量槽。
【請求項6】
前記障壁が、交換可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の計量槽。
【請求項7】
前記凝集反応室が、複数段の部屋で構成されていることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項記載の計量槽。
【請求項8】
前記受入室に流入した前記被処理液が所定量を超えた場合に、前記受入室からオーバーフローさせて前記被処理液の流量を調整する第2の堰と、
第2の堰から前記被処理液が流入するリターン室と、
前記リターン室に、前記被処理液を外部に排出する被処理液排出口と、を備えていることを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1項記載の計量槽。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の計量槽において、
その内部を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給口を備えたことを特徴とする計量槽。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の計量槽を備えたことを特徴とする被処理液の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−217907(P2012−217907A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85080(P2011−85080)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599073320)大機エンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】