説明

訓練システム

【課題】 建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができる訓練システムを提供する。
【解決手段】 アドホックルーティングによって事前に建物内に通信ルートが構築されて、受信器1での受信状況の情報に応じて制御装置2が損耗度を算出して信号に含めて送信器3から電波で送信し、事前に構築されたルートに従って標的装置4が電波を受信し、測定した受信電界レベルから受信電界レベル/損耗度テーブルに基づき損耗度Aを取得すると共に、受信信号に含まれる送信元の損耗度Bを取得し、当該標的装置4における損耗度C(=A×B/100)を算出して信号に含めて電波で送信する訓練システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内への攻撃訓練を行う訓練システムに係り、特に、建物内の標的装置での適正な損耗度を得ることができる訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の建物内への攻撃を行う訓練システムは、建物外に設けられた受信装置に攻撃装置からのレーザーを照射し、受信装置での受信状況に応じて制御信号を建物内の送信装置に送信し、建物内の送信装置が制御信号に応じて建物内の標的装置にレーザーを照射するようになっていた。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010−121838号公報「射撃訓練システム」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]がある。
特許文献1には、レーザー受信装置によって受信された射撃用レーザーの射撃の効果を判定できる射撃訓練システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−121838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の訓練システムでは、建物内に複数の標的装置が点在する場合に各々の標的装置における損耗度(損耗率)を適正に得ることが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができる訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、建物の屋外に設置され、レーザーを受光する受信器と、受信器からの信号を建物内の標的装置に送信する送信器とを有する訓練システムであって、受信器からの信号に基づいて第1の損耗度を取得して送信器に出力する制御装置を有し、受信器が、レーザーの受光状況の情報を制御装置に出力し、送信器が、制御装置からの信号を標的装置に電波で送信し、標的装置が、建物内に複数設けられ、構築された通信ルートに従い電波が順次伝搬されるものであり、各標的装置が、電波によって受信した信号の受信電界強度を測定し、測定した受信電界強度のレベルに対応した第2の損耗度を取得し、第1の損耗度と第2の損耗度から当該標的装置における第3の損耗度を演算して信号に含め、電波にて送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信器が、レーザーの受光状況の情報を制御装置に出力し、制御装置が、受信器からの信号に基づいて第1の損耗度を取得して送信器に出力し、送信器が、制御装置からの信号を標的装置に電波で送信し、標的装置が、建物内に複数設けられ、構築された通信ルートに従い電波が順次伝搬され、各標的装置が、電波によって受信した信号の受信電界強度を測定し、測定した受信電界強度のレベルに対応した第2の損耗度を取得し、第1の損耗度と第2の損耗度から当該標的装置における第3の損耗度を演算して信号に含め、電波にて送信する訓練システムとしているので、建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る訓練システムの構成ブロック図である。
【図2】標的装置の構成ブロック図である。
【図3】受信電界レベル/損耗度テーブルの概略図である。
【図4】標的装置での処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る訓練システムは、受信器が、レーザーの受光状況の情報を制御装置に出力し、制御装置が、受信器からの信号に基づいて第1の損耗度を取得して送信器に出力し、送信器が、制御装置からの信号を標的装置に電波で送信し、標的装置が、建物内に複数設けられ、構築された通信ルートに従い電波が順次伝搬され、各標的装置が、電波によって受信した信号の受信電界強度を測定し、測定した受信電界強度のレベルに対応した第2の損耗度を取得し、第1の損耗度と第2の損耗度から当該標的装置における第3の損耗度を演算して信号に含め、電波にて送信するものであり、建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができるものである。
【0011】
[訓練システム:図1]
本発明の実施の形態に係る訓練システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る訓練システムの構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る訓練システム(本訓練システム)は、図1に示すように、受信器1と、制御装置2と、送信器3と、複数の標的装置4とから構成されている。
【0012】
[本訓練システムの各部:図2]
本訓練システムの各部について具体的に説明する。
[受信器1]
受信器1は、建物外に設けられ、攻撃装置からのレーザーを受信し、受信したことを示す情報を制御装置2に出力する。
特に、受信器1は、レーザーの受信回数と受信箇所の情報を制御装置2に出力する。
【0013】
[制御装置2]
制御装置2は、アドホックルーティング部と損耗度付与部を備えている。
制御装置2のアドホックルーティング部は、マルチキャストのOLSR(the Optimized Link State Routing)プロトコルを用いて通信に先立って標的装置(ノード)との通信経路(リンク)を構築する。
【0014】
制御装置2の損耗度付与部は、レーザーの火器情報、受信回数、受信箇所の情報(受信状況の情報)に基づいて損耗度を演算し、送信信号に当該損耗度の情報を含めて送信器3に出力する。
火器情報とは、攻撃装置の種類を示すもので、例えば、大型の攻撃装置を想定した場合には損耗度を大きくし、小型の攻撃装置を想定した場合には損耗度を小さく設定する。
また、受信回数が多い場合、受信箇所が例えば中心に近い場合に、損耗度を大きくし、受信回数が少ない場合、受信箇所が中心から離れている場合に、損耗度を小さく設定する。
損耗度は、演算式で求めてもよいし、予め火器情報、受信回数、受信箇所に基づいて損耗度をテーブル等に記憶しておき、当該テーブルに基づいて損耗度を求めてもよい。
【0015】
[送信器3]
送信器3は、制御装置2から損耗度が含まれた信号を入力し、アドホックネットワークで構築されたリンクに基づいたノードに対して電波により当該信号を送信する。
図1では、リンク先となる標的装置(1)4-1と標的装置(2)4-2に電波が届くことになる。
【0016】
[標的装置4]
標的装置4は、アドホックルーティングによりアドホックネットワークのリンクが構築されており、第1のルートとして、標的装置(1)4-1、標的装置(3)4-3、標的装置(5)4-5の経路で信号が伝搬され、第2のルートとして、標的装置(2)4-2、標的装置(4)4-4、標的装置(6)4-6の経路で信号が伝搬される。
【0017】
また、標的装置4は、電波を受信し、受信した信号の電界強度を測定し、電界強度のレベルに対応した損耗度を求め、受信信号に含まれる損耗度と乗算することで、標的装置自体の損耗度を算出し、次に伝搬する標的装置に向けて算出した損耗度を信号に含めて電波で送信する。
【0018】
[標的装置:図2]
次に、標的装置4の具体的構成について図2を参照しながら説明する。図2は、標的装置の構成ブロック図である。
標的装置4は、図2に示すように、受信部11と、制御部12と、記憶部13と、送信部14とを備えている。
【0019】
受信部11は、リンク元(送信装置)からの電波を受信し、受信した信号を制御部12に出力する。
また、受信部11は、受信信号の電界強度を測定しており、測定した電界強度の受信電界レベルを制御部12に出力する。
【0020】
制御部12は、アドホックルーティング部を備え、マルチキャストのOLSR(MOLSR)プロトコルにより通信前にリンクを構築する。
また、制御部12は、受信部11から入力された受信電界レベルに対応する損耗度を記憶部13に記憶する受信電界レベル/損耗度テーブルから求め、受信信号に含まれる損耗度と乗算して標的装置での損耗度を演算し、演算した損耗度を含む信号を送信部14に出力する。
また、制御部12は、標的の損壊状態(損壊度)を演算する。損壊度は、100−(累積損耗度)により求められる。損壊度が「0」になれば、物であれば「全壊」となり、人であれば訓練からの退場を意味する。
【0021】
記憶部13は、後述する受信電界レベル/損耗度テーブルを記憶すると共に、電波受信毎に演算された損耗度を記憶している。若しくは、記憶部13は、電波受信毎の受信電界レベルに対応する損耗度と受信信号に含まれる損耗度を組で記憶するようにしてもよい。
そして、記憶部13は、制御部12で演算された累積損耗度と損壊度も記憶してもよい。
【0022】
送信部14は、制御部12で演算された損耗度を含む信号をリンク先(受信装置)のノードとなる標的装置4に電波で送信する。
【0023】
[受信電界レベル/損耗度テーブル:図3]
次に、記憶部13に記憶されている受信電界レベル/損耗度テーブルについて図3を参照しながら説明する。図3は、受信電界レベル/損耗度テーブルの概略図である。
受信電界レベル/損耗度テーブルは、図3に示すように、測定された受信信号の受信電界レベルと損耗度の対応関係を記憶するテーブルである。例えば、受信電界レベルが「4」の場合が損耗度「80」と、受信電界レベルが「3」の場合が損耗度「60」と設定されている。
【0024】
[標的装置の処理フロー:図4]
次に、標的装置4の制御部12における処理フローについて図4を参照しながら説明する。図4は、標的装置での処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御部12は、受信部11で自機宛の電波を受信したか否かを判定し(S1)、受信していなければ(Noの場合)、判定処理S1を繰り返す。
電波を受信したのであれば(Yesの場合)、受信部11で測定された受信電界レベルを入力し(S2)、測定された受信電界レベルを基に記憶部13の受信電界レベル/損耗度テーブルを参照し、当該テーブルから損耗度Aを取得する(S3)。
【0025】
次に、送信装置の損耗度Bを受信信号から取得し(S4)、標的装置の損耗度Cを算出する(S5)。損耗度Cは、C=(A×B)/100で算出される。
そして、損壊度Dを算出する(S6)。損壊度Dは、D=100−Cで算出される。
更に、本標的装置の損耗度Cを信号に含めて次の標的装置(受信装置)に送信し(S7)、処理を終了する。
【0026】
[具体例]
図1において、制御装置2における損耗度が「70」であるとすると、送信器3からの信号にその損耗度「70」が含まれて送信され、標的装置(1)4-1で、受信電界レベルが「4」であると、受信電界レベル/損耗度テーブルから損耗度「80」となり、標的装置(1)4-1自体の損耗度は「56」(=70×80/100)が算出され、次に標的装置(3)4-3に送信される。
【0027】
更に、標的装置(3)4-3では、受信電界レベルが「3」であると、受信電界レベル/損耗度テーブルから損耗度「60」となり、標的装置(3)4-3自体の損耗度は「33.6」(=56×60/100)が算出され、次に標的装置(5)4-5に送信される。
このようにして、各標的装置での消耗度が容易に演算される。
【0028】
[実施の形態の効果]
本訓練システムによれば、アドホックルーティングによって事前に建物内に通信ルートが構築されて、受信器1での受信状況の情報に応じて制御装置2が損耗度を算出して信号に含めて送信器3から電波で送信し、事前に構築されたルートに従って標的装置4が電波を受信し、測定した受信電界レベルから受信電界レベル/損耗度テーブルに基づき損耗度Aを取得すると共に、受信信号に含まれる送信元の損耗度Bを取得し、当該標的装置4における損耗度C(=A×B/100)を算出して信号に含めて電波で送信するようにしているので、建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、建物内の標的装置における損耗度を適正に得ることができる訓練システムに好適である。
【符号の説明】
【0030】
1...受信器、 2...制御装置、 3...送信器、 4...標的装置、 11...受信部、 12...制御部、 13...記憶部、 14...送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋外に設置され、レーザーを受光する受信器と、前記受信器からの信号を建物内の標的装置に送信する送信器とを有する訓練システムであって、
前記受信器からの信号に基づいて第1の損耗度を取得して前記送信器に出力する制御装置を有し、
前記受信器は、レーザーの受光状況の情報を前記制御装置に出力し、
前記送信器は、前記制御装置からの信号を前記標的装置に電波で送信し、
前記標的装置は、建物内に複数設けられ、構築された通信ルートに従い電波が順次伝搬されるものであり、前記各標的装置は、電波によって受信した信号の受信電界強度を測定し、測定した受信電界強度のレベルに対応した第2の損耗度を取得し、前記第1の損耗度と前記第2の損耗度から当該標的装置における第3の損耗度を演算して信号に含め、電波にて送信することを特徴とする訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202576(P2012−202576A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65834(P2011−65834)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】