説明

記憶回路、信号処理回路、電子機器

【課題】新たな構成の不揮発性の記憶回路を用いた信号処理回路を提供する。
【解決手段】酸化物半導体を用いて形成されたトランジスタと、該トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続された容量素子を用いて、不揮発性の記憶回路を構成する。記憶回路に予めハイレベル電位を書き込んでおき、退避させるデータがハイレベル電位の場合は、そのままの状態を維持し、退避させるデータがローレベル電位の場合は、ローレベル電位を記憶回路に書き込むことで、書き込み速度を向上させた信号処理回路を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源を切っても記憶している論理状態が消えない不揮発性の記憶回路に関する。また、当該記憶回路を用いた、記憶装置や信号処理回路に関する。更に当該信号処理回路を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタやキャッシュメモリなど、各種の記憶回路が設けられている。
【0003】
レジスタやキャッシュメモリ等の記憶回路は、メインメモリよりも高速でデータの読み書きを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップが、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電圧の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶回路が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データの入出力が行われない期間において信号処理回路への電源電圧の供給を一時的に停止するという方法が提案されている。その方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶回路の周辺に不揮発性の記憶回路を配置し、上記データをその不揮発性の記憶回路に一時的に記憶させる。こうして、信号処理回路において電源電圧の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等はデータを保持する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、信号処理回路において長時間の電源電圧の供給停止を行う際には、電源電圧の供給停止の前に、揮発性の記憶回路内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたような信号処理回路では、不揮発性の記憶回路を構成する記憶素子として強誘電体が用いられている。強誘電体を用いた記憶素子では、データの書き込みを繰り返すことによって、強誘電体材料が疲労し、書き込み不良となる等の問題があり、書き換え回数が制限される。また、データの処理速度(以下、アクセススピードとも呼ぶ)、例えば、読み書きの速度が遅い。
【0008】
また、不揮発性の記憶回路として、フラッシュメモリを用いた場合、高電圧を印加してトンネル電流により電子を注入または放出する動作を行うため、データの書き換えを繰り返すことによる各記憶素子の劣化が激しい等の問題があり、書き換え回数が制限される。また、アクセススピードが遅い。
【0009】
また、信号処理回路において、電源電圧の供給を停止する間、外部記憶装置に揮発性の記憶回路のデータを記憶させる信号処理回路では、外部記憶装置から揮発性の記憶回路にデータを戻すための時間を要する。よって、このような信号処理回路は、消費電力の低減を目的とした短時間の電源停止には適さない。
【0010】
上述の課題に鑑み、本発明は、電源を切っても記憶している論理状態が消えない、新たな構成の記憶回路を用いた信号処理回路を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体を用いて形成されたトランジスタと、該トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続された容量素子を用いて、不揮発性の記憶回路を構成する。酸化物半導体を用いて形成されたトランジスタは、その材料の物性により、nチャネル型のトランジスタとなりやすい。nチャネル型のトランジスタは、原理的にローレベル電位の書き込み速度よりも、ハイレベル電位の書き込み速度が遅い。したがって、書き込み速度を向上させるには、記憶回路に予めハイレベル電位を書き込んでおき、退避させるデータがハイレベル電位の場合は、そのままの状態を維持し、退避させるデータがローレベル電位の場合は、ローレベル電位を記憶回路に書き込むことで、書き込み速度を向上させた信号処理回路を実現できる。より詳細には以下の通りである。
【0012】
本発明の一態様は、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第1の回路と、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第2の回路と、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第3の回路と、第1のスイッチと、酸化物半導体を用いて形成された第1のトランジスタと、第1の容量素子と、第1のインバータと、第2のインバータと、を有し、第1の回路の入力端子の一方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、第1の回路の入力端子の他方は、第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第1の回路の出力端子は、第1のスイッチの入力端子と接続され、第2の回路の入力端子の一方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、第2の回路の入力端子の他方は、第1のスイッチの出力端子と接続され、第2の回路の出力端子は、第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、第3の回路の入力端子の一方は、第1のインバータの出力端子と接続され、第3の回路の入力端子の他方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、第3の回路の出力端子は、第2のインバータの入力端子、及び第1のスイッチの第1の制御端子と接続され、第2のインバータの出力端子は、第1のスイッチの第2の制御端子と接続され、第1のトランジスタのゲート電極は、制御信号が与えられる信号線と接続され、制御信号が与えられる信号線は、第1のインバータの入力端子と接続され、第1の容量素子の一方の電極は、第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第1の容量素子の他方の電極は、接地され、第2の回路の入力端子のいずれか一方に、電源電圧の供給停止前までローレベル電位が供給され、第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と、第1の容量素子と、の間にハイレベル電位が供給されることを特徴とする記憶回路である。
【0013】
上記構成において、第1のトランジスタは、In、Ga及びZnを含んでなる酸化物半導体材料により形成されることが好ましい。In、Ga及びZnを含んでなる酸化物半導体材料は、オフ電流を極めて小さくすることができる。
【0014】
本発明の他の一態様は、上記構成の記憶回路と、第2のスイッチと、第3のインバータと、第3のスイッチと、第4のインバータと、第4のスイッチと、第5のインバータと、第6のインバータと、を有し、第2のスイッチの入力端子は、入力信号が与えられる信号線と接続され、第2のスイッチの出力端子は、第3のインバータの入力端子と、第4のインバータの出力端子と接続され、第3のインバータの出力端子は、第3のスイッチの入力端子と接続され、第3のスイッチの出力端子は、第4のインバータの入力端子と、第4のスイッチの入力端子に接続され、第4のスイッチの出力端子は、第5のインバータの入力端子と、第6のインバータの出力端子と接続され第5のインバータの出力端子は、第6のインバータの入力端子に接続され、記憶回路が、第3のスイッチに接続されることを特徴とする信号処理回路である。
【0015】
また、上記構成において、第1の回路は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、を有し、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、第2のトランジスタと第3のトランジスタのゲート電極は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、第5のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、第5のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、第5のトランジスタのゲート電極は、第4のトランジスタのゲート電極と接続され、第4のトランジスタのゲート電極に第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方が接続されることが好ましい。
【0016】
また、上記構成において、第1の回路は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、第2のトランジスタと第3のトランジスタのゲート電極は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、第2の容量素子の電極の一方は、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、第2の容量素子の電極の他方は、接地され、第4のトランジスタのゲート電極に第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方が接続されることが好ましい。
【0017】
上記構成の記憶回路、及び信号処理回路を用いることによって、電源電圧の供給を停止する際に、データを記憶回路に退避させることができる。したがって、必要な場合にのみ電源電圧を供給する(以下、ノーマリ・オフとも呼ぶ)駆動方法を採用することが可能となり、このような駆動方法を用いることによって、記憶回路、及び信号処理回路の消費電力を大幅に低減することができる。
【0018】
ここで上記の記憶回路は、オフ電流が極めて小さい第1のトランジスタと、当該第1のトランジスタがオフ状態となることによってフローティングとなるノード(以下、FNという)に一対の電極のうちの一方が接続された第1の容量素子とを有する構成とする。当該記憶回路では、第1の容量素子の一対の電極のうちの一方の電位(またはそれに対応する電荷量)をデータに応じて制御することによって、データを記憶する。例えば、第1の容量素子に所定の電荷(例えば、ハイレベル電位)が充電された状態を「1」に対応させ、第1の容量素子に電荷が充電されていない状態(ローレベル電位)を「0」に対応させることによって、1ビットのデータを記憶することができる。
【0019】
このような記憶回路では、オフ電流が極めて小さい第1のトランジスタをオフ状態とすることにより、電源電圧の供給が停止した後も、第1の容量素子の一対の電極のうちの一方の電位を長期間に渡って保持することが可能となる。そのため、上記構成の記憶回路を用いたメモリでは、定期的なデータの再書き込み動作(以下、リフレッシュ動作とも呼ぶ)が不要、若しくはリフレッシュ動作を行う頻度を非常に低くすることが可能となる。すなわち、不揮発性の記憶回路とみなすことができる。
【0020】
また、このような記憶回路では、データに対応する信号電位を所定のノードに入力し、オフ電流が極めて小さいトランジスタをオフ状態として、当該ノードをフローティング状態とすることにより、データを記憶する構成である。そのため、当該記憶回路において、データの書き換えを繰り返すことによる疲労は少なく、データの書き換え可能な回数を多くすることができる。
【0021】
また、電源電圧の供給停止前に、予め記憶回路にハイレベル電位を書き込んでおき、退避させたいデータがハイレベル電位のときは、そのままの状態を維持し、退避させたいデータがローレベル電位のときは、電源電圧の供給停止前に、ローレベル電位に書き換えてデータを保持する。このような構成とすることで、書き込み速度を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、上記構成の記憶回路、及び信号処理回路を用いた電子機器である。
【0023】
なお、本発明の信号処理回路は、CPU、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ALU(Arithmetic logic unit)等が、適用の範疇に含まれる。メモリは、データやプログラムを記憶するメインメモリとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記した新たな構成の不揮発性の記憶回路を信号処理回路に用いることによって、電源電圧の供給を停止した後も信号処理回路はデータを長期間にわたって保持し続けることができる。よって、ノーマリ・オフの駆動方法を行うことができる。したがって、信号処理回路の消費電力を大幅に低減することができる。そして、電源電圧の供給が選択された際、信号処理回路は直ぐに保持されたデータを用いて所定の処理を開始することができる。そのため、信号処理回路において、電源電圧の供給が選択された後に所定の処理を開始する迄の時間を短くすることができる。
【0025】
また、電源電圧の供給停止前に、記憶回路に予めハイレベル電位を書き込んでおき、退避させたいデータがハイレベル電位のときは、そのままの状態を維持し、退避させたいデータがローレベル電位のときは、電源電圧の供給停止前に、ローレベル電位に書き換えてデータを保持する。このような構成とすることで、書き込み速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】信号処理回路の構成を示す図。
【図2】信号処理回路の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図3】信号処理回路の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図4】信号処理回路の構成を示す図。
【図5】記憶処理装置の構成を示す図。
【図6】CPUの構成を示す図。
【図7】信号処理回路の作製工程を示す図。
【図8】信号処理回路の作製工程を示す図。
【図9】信号処理回路の作製工程を示す図。
【図10】信号処理回路に用いることができるトランジスタの断面図。
【図11】信号処理回路に用いることができるトランジスタの断面図。
【図12】携帯用の電子機器のブロック図。
【図13】電子書籍のブロック図。
【図14】酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【図15】酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【図16】酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【図17】基板加熱温度と欠陥密度の関係を示す図。
【図18】酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度を説明する図。
【図19】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図20】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図21】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図22】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図23】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図24】酸化物半導体膜を用いたトランジスタ特性のグラフ。
【図25】試料1のトランジスタのBT試験後のV−I特性を示す図。
【図26】試料2であるトランジスタのBT試験後のV−I特性を示す図。
【図27】試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す図。
【図28】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図29】Iおよび電界効果移動度のV依存性を示す図。
【図30】基板温度としきい値電圧の関係および基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【図31】半導体装置の上面図及び断面図。
【図32】半導体装置の上面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0028】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0029】
また、電圧は、ある電位と基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、本明細書において、電圧、電位、電位差を、各々、電位、電圧、電圧差と言い換えることが可能である。
【0030】
「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0031】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0033】
(実施の形態1)
本発明の一形態について、図1を用いて説明を行う。図1(A)、及び図1(B)は、本発明の記憶回路、及び信号処理回路の回路構成を示している。
【0034】
〈記憶回路の回路構成〉
図1(A)に示す記憶回路100は、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第1の回路102と、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第2の回路104と、二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第3の回路105と、第1のスイッチ106と、酸化物半導体により形成された第1のトランジスタ108と、第1の容量素子110と、第1のインバータ109と、第2のインバータ111と、を有する。なお、記憶回路100は、第3のスイッチ114の制御端子と、第3のスイッチ114の出力端子に接続されており、第3のスイッチ114の入力端子は、第3のインバータ112と接続されている。
【0035】
第1の回路102の入力端子の一方は、読み出し信号(RE)が与えられる信号線と接続され、第1の回路102の入力端子の他方は、第1のトランジスタ108のソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、第1の回路102の出力端子は、第1のスイッチ106の入力端子と接続されている。
【0036】
また、第2の回路104の入力端子の一方は、読み出し信号(RE)が与えられる信号線と接続され、第2の回路104の入力端子の他方は、第3のスイッチ114の出力端子に与えられる電位と同電位が与えられる信号線と接続され、第2の回路104の出力端子は、第1のトランジスタ108のソース電極およびドレイン電極の他方と接続されている。
【0037】
また、第3の回路105の入力端子の一方は、第1のインバータ109の出力端子と接続され、第3の回路105の入力端子の他方は、読み出し信号(RE)が与えられる信号線と接続され、第3の回路105の出力端子は、第2のインバータ111の入力端子、及び第1のスイッチ106の第1の制御端子と接続されている。
【0038】
また、第2のインバータ111の出力端子は、第1のスイッチ106の第2の制御端子、及び第3のスイッチ114の第1の制御端子と接続され、第3のスイッチ114の第2の制御端子は、第1のスイッチ106の第1の制御端子と接続されている。また、第3のインバータ112の入力端子は、信号(D)が与えられる信号線と接続されている。
【0039】
なお、第1のスイッチ106の出力端子と、第3のスイッチ114の出力端子との接続箇所をノードDBとし、ノードDBに与えられた信号(DB)が第2の回路104の入力端子の他方に与えられる。
【0040】
また、第2の回路104は、読み出し信号(RE)と信号(DB)のいずれか一方でも、ローレベル電位が与えられた場合にハイレベル電位を出力する。例えば、読み出し信号(RE)がハイレベル電位で、且つ信号(DB)がローレベル電位の場合、または、読み出し信号(RE)がローレベル電位で、且つ信号(DB)がハイレベル電位の場合、または、読み出し信号(RE)と信号(DB)が共にローレベル電位の場合に、ハイレベル電位を出力する。
【0041】
また、第1のトランジスタ108のゲート電極には、制御信号(G)が与えられる信号線と接続されている。なお、制御信号(G)は独立に制御することができる。また、制御信号(G)は、第1のインバータ109の入力端子に与えられる。
【0042】
また、第1のトランジスタ108は、酸化物半導体(OS:Oxide Semiconductor)により形成されているため、図中の第1のトランジスタ108のシンボルは、一般的なトランジスタのシンボルと異なり、チャネル領域に相当する部分を破線で示している。
【0043】
また、第1のトランジスタ108のソース電極またはドレイン電極の一方は、第1の容量素子110の一方の電極と接続されており、第1の容量素子110の他方の電極は接地されている。なお、図中において、第1のトランジスタ108のソース電極またはドレイン電極の一方と、第1の容量素子110の一方の電極の接続箇所にはFN(フローティングノード)を付記してある。第1のトランジスタ108をオフ状態とすることで、FN、及び第1の容量素子110の一方の電極に与えられた電位を保持することができる。
【0044】
また、第1のトランジスタ108は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いることで、極めてオフ電流が小さいトランジスタである。酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ108のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下のオフ電流であるため、第1のトランジスタ108のリークによる、FNに蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ108により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶回路を実現することが可能である。
【0045】
ここで、第1の回路102に用いることのできる回路構成について、図4(A)を用いて説明を行う。
【0046】
〈第1の回路の回路構成〉
図4(A)に示す第1の回路102は、NAND回路を構成しており、第2のトランジスタ202と、第3のトランジスタ204と、第4のトランジスタ206と、第5のトランジスタ207と、を有する。
【0047】
第2のトランジスタ202、および第5のトランジスタ207は、一導電型(例えば、pチャネル型)で構成され、第3のトランジスタ204、及び第4のトランジスタ206は、第2のトランジスタ202、および第5のトランジスタ207とは異なる導電型(例えば、nチャネル型)を用いることができる。
【0048】
また、第2のトランジスタ202は、ソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が供給される電位線に接続され、ソース電極またはドレイン電極の他方は、第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の一方に接続され、第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の他方は、第4のトランジスタ206のソース電極またはドレイン電極の一方に接続されており、第4のトランジスタ206のソース電極またはドレイン電極の他方は、接地されている。また、第2のトランジスタ202のゲート電極、及び第3のトランジスタ204のゲート電極は、読み出し信号(RE)が与えられる電位線として用いることができる。
【0049】
また、第4のトランジスタ206のゲート電極は、FN、及び第5のトランジスタ207のゲート電極に接続され、第5のトランジスタ207のソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が供給される電位線に接続され、第5のトランジスタ207のソース電極またはドレイン電極の他方は、第2のトランジスタ202のソース電極またはドレイン電極の他方、及び第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の一方と接続されている。
【0050】
なお、第2のトランジスタ202、第3のトランジスタ204、第4のトランジスタ206、及び第5のトランジスタ207に用いることのできる材料は、特に限定されない。例えば、トランジスタが高速動作できるものが好ましく、単結晶シリコン、酸化物半導体等を用いて形成することができる。
【0051】
次に、図1(B)に示す信号処理回路の回路構成について以下説明を行う。
【0052】
〈信号処理回路の回路構成〉
図1(B)に示す信号処理回路は、第2のスイッチ116と、第3のインバータ112と、第3のスイッチ114と、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120と、第5のインバータ122と、第6のインバータ124と、記憶回路100と、を有する。
【0053】
第2のスイッチ116の入力端子は、入力信号(IN)が与えられる信号線と接続され、第2のスイッチ116の出力端子は、第3のインバータ112の入力端子と、第4のインバータ118の出力端子と接続される。また、第3のインバータ112の出力端子は、第3のスイッチ114の入力端子と接続され、第3のスイッチ114の出力端子は、第4のインバータ118の入力端子と、第4のスイッチ120の入力端子に接続される。
【0054】
また、第4のスイッチ120の出力端子は、第5のインバータ122の入力端子と、第6のインバータ124の出力端子と接続され、第5のインバータ122の出力端子は、第6のインバータ124の入力端子に接続される。なお、第5のインバータ122と第6のインバータ124の接続箇所の電位は、出力信号(OUT)として出力される。
【0055】
また、第2のスイッチ116と第3のインバータ112の接続部をノードDとする。また、第3のスイッチ114と第4のインバータ118の接続部をノードDBとする。また、第4のスイッチ120と第5のインバータ122の接続部をノードD2とする。また、第5のインバータ122と第6のインバータ124の接続部をノードD2Bとする。
【0056】
ここで、ノードDBには、ノードDに与えられた信号(D)の反転した信号(DB)が与えられ、ノードD2Bには、ノードD2に与えられた信号(D2)の反転した信号(D2B)が与えられる。
【0057】
なお、本実施の形態において、反転した信号とは、入力された信号の電位がハイレベル電位(高電位ともいう)の場合には、ローレベル電位(低電位ともいう)を示し、入力された信号の電位がローレベル電位の場合には、ハイレベル電位を示す。
【0058】
なお、図1(B)に示す回路構成においては、電源電圧が供給され、且つ記憶回路100の第1のトランジスタ108がオン状態の場合には、第3のインバータ112と、第4のインバータ118で帰還ループが形成されている。
【0059】
電源電圧の供給が停止する際に、ノードDBに保持されたデータ、すなわち信号(DB)を記憶回路100に退避させて、データを保持することができる。また、電源電圧が再供給した際に、記憶回路100から、ノードDBにデータを戻すことで復元することができる。
【0060】
また、図1(B)に示す回路構成においては、第2のスイッチ116と、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120と、第6のインバータ124と、にクロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)がそれぞれ入力される構成である。
【0061】
なお、第2のスイッチ116と第6のインバータ124は、クロック信号(C)がローレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がハイレベル電位の時にオン状態となり、クロック信号(C)がハイレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がローレベル電位の時にオフ状態となる。また、第4のインバータ118と第4のスイッチ120は、クロック信号(C)がハイレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がローレベル電位の時にオン状態となり、クロック信号(C)がローレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がハイレベル電位の時にオフ状態となる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、上記のような電位の時に、第2のスイッチ116、第4のインバータ118、第4のスイッチ120、及び第6のインバータ124の動作について説明したが、これに限定されない。例えば、第2のスイッチ116と第6のインバータ124は、クロック信号(C)がハイレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がローレベル電位の時にオン状態となり、クロック信号(C)がローレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がハイレベル電位の時にオフ状態となり、第4のインバータ118と第4のスイッチ120は、クロック信号(C)がローレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がハイレベル電位の時にオン状態となり、クロック信号(C)がハイレベル電位、且つ反転クロック信号(CB)がローレベル電位の時にオフ状態となる構成としてもよい。
【0063】
ここで、図1(A)、及び図1(B)に示す記憶回路、及び信号処理回路において、電源電圧の供給の後、消費電力を削減するために電源電圧の供給を停止し、再び電源電圧を供給する場合の駆動方法について、図1(A)、図1(B)、図2、及び図3を用いて説明を行う。
【0064】
〈記憶回路、及び信号処理回路の駆動方法〉
図2、及び図3は、図1(A)、及び図1(B)に示す記憶回路、及び信号処理回路の駆動方法を現すタイミングチャートである。なお、図2においては、電源電圧の供給の後、保持されるデータがハイレベル電位の場合についてのタイミングチャートを示しており、図3においては、電源電圧の供給の後、保持されるデータがローレベル電位の場合についてのタイミングチャートを示している。
【0065】
また、図2、及び図3に示すタイミングチャートにおいて、Vddは電源電圧(Vdd)を示し、Gは制御信号(G)を示し、Cはクロック信号(C)を示し、CBは反転クロック信号(CB)を示し、INは入力端子に入力されるデータ信号(IN)を示し、DはノードDにおける信号(D)を示し、DBは、ノードDの反転信号(DB)を示し、D2はノードD2における信号(D2)を示し、D2B OUTはノードD2の反転信号(D2B)、及び出力端子から出力される信号(OUT)を示し、FNは、ノードFNの信号(FN)を示し、REは、読み出し信号(RE)を示す。なお、Vddが0(図中、ローレベル電位に対応)のときは、電源電圧が供給されていない場合に相当する。
【0066】
なお、図2、及び図3において、第1の期間(図中、T1と表記)は、電源電圧供給前の初期状態の期間であり、第2の期間(図中、T2と表記)は、電源電圧供給後の通常動作を行う期間であり、第3の期間(図中、期間T3と表記)は、電源電圧供給停止中の期間であり、第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開後の期間を示している。
【0067】
また、図2、及び図3において、第1の期間(T1)乃至第4の期間(T4)には、それぞれ、各期間内の時刻を表すため、時刻t1乃至時刻t18を付記してある。
【0068】
また、図2、及び図3において、図中Xは、信号電位が不定の状態を表している。不定の状態とは、クロック信号(C)がハイレベル電位で固定されているため、第2のスイッチ116がオフ状態となっており、ハイレベル電位とローレベル電位のどちらの可能性もある状態を表している。
【0069】
〈初期状態期間、通常動作期間〉
まず、図2に示す第1の期間(T1)から、第2の期間(T2)にするために、電源電圧(Vdd)を供給した状態(0Vより大きい電源電圧とした状態)で、ハイレベル電位とローレベル電位との間で信号電位が周期的に変化するクロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)を供給する(時刻t2)。なお、クロック信号(C)については、電源電圧(Vdd)と同時に立ち上がる場合に、不安定な動作となる可能性があるため、電源電圧(Vdd)よりも事前に立ち上がるような構成としてもよい。
【0070】
また、信号電位(G)をハイレベル電位とし、第1のトランジスタ108をオン状態とする。これにより、第1のトランジスタ108のソース電極またはドレイン電極に接続された第2の回路104の出力電位がFN、及び第1の容量素子110に供給される(時刻t2)。
【0071】
第2の期間(T2)では、第2のスイッチ116に、入力信号(IN)が与えられる。また、第2のスイッチ116に、反転クロック信号(CB)のハイレベル電位が入力された際に、第2のスイッチ116がオン状態となる。第2のスイッチ116がオン状態となることで、ノードDに入力信号(IN)と同電位の信号が与えられる(時刻t3〜時刻t4等)。
【0072】
また、ノードDに与えられた電位は、第3のインバータ112の入力端子に与えられる。第3のインバータ112は、位相反転回路であり、入力された信号の反転した信号を出力する。また、第3のスイッチ114は、読み出し信号(RE)がローレベル電位でオン状態となる。なお、実際には信号遅延があるため、ノードDの信号電位が変化した時点から遅延して、第3のスイッチ114と、記憶回路100の接続箇所であるノードDBの電位が変化する。
【0073】
次に、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120にノードDBの信号(DB)が入力される。第4のインバータ118と、第4のスイッチ120にクロック信号(C)のハイレベル電位が入力された際に、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120は、オン状態となる。第4のスイッチ120がオン状態となることで、ノードD2に信号(D2)が与えられる。また、ノードD2に与えられた信号(D2)は、第5のインバータ122と、第6のインバータ124に入力される。第5のインバータ122は、ノードD2Bに信号(D2B)を出力し、ノードD2Bに与えられた信号(D2B)は、出力(OUT)される(時刻t4〜時刻t5等)。
【0074】
〈電源電圧供給停止前の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧の供給が停止する期間である。第3の期間(T3)の直前の第2の期間(T2)においては、電源電圧の供給を停止する前に、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)を固定する(時刻t9〜時刻t10)。すなわち、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)を、所定のデータが帰還ループによって保持された状態のクロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)のままとする。つまり、通常動作では、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)は、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化する信号であるが、この変化をさせないクロック信号固定期間を設ける。
【0075】
また、第1のトランジスタ108のゲートには、クロック信号(C)や反転クロック信号(CB)とは異なる制御信号(G)が入力されている。つまり、第1のトランジスタ108のオン状態及びオフ状態は、クロック信号(C)や反転クロック信号(CB)とは異なる制御信号(G)によって、独立したタイミングで制御することが可能である。そのため、信号処理回路への電源電圧の供給を停止する前に、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベルを一定に保った状態で第1のトランジスタ108をオフ状態とすることができる。こうして、データを正確にノードFN、及び第1の容量素子110に保持させることができる。
【0076】
なお、図2においては、読み出し信号(RE)にハイレベル電位を入力した際に、信号(DB)がローレベル電位であるため、第2の回路104の出力は、ハイレベル電位を出力し、ノードFN、及び第1の容量素子110にはハイレベル電位が保持される(時刻t8)。
【0077】
〈電源電圧供給停止の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧供給停止の期間である。第2の期間(T2)と、第3の期間(T3)の間で電源電圧の供給を停止する(時刻t10)。なお、第1のトランジスタ108はオフ状態である。信号処理回路への電源電圧(Vdd)の供給が停止した後においても、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号が、ノードFN、及び第1の容量素子110に保持される。ここで、第1のトランジスタ108は、リーク電流が極めて小さいため、ノードFN、及び第1の容量素子110によって保持された信号(電位)が変動することを抑制することができる。
【0078】
〈電源電圧供給再開の動作〉
第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開の動作を行う期間である。電源電圧(Vdd)の供給再開後においては、電源電圧(Vdd)の供給停止時に固定された、クロック信号(C)、反転クロック信号(CB)を供給する(時刻t13)。
【0079】
次に、ノードFN、及び、第1の容量素子110に電源電圧がオフする前に保持されたデータの読み出しを行う。読み出しは読み出し信号(RE)にハイレベル電位を与えることで行う(時刻t14〜時刻t15)。
【0080】
読み出しによって、ノードFNに保持されたハイレベル電位の信号が第1の回路102の入力端子の一方に供給される。また、第1の回路102の他方の入力端子に入力される読み出し信号(RE)がハイレベル電位であるため、第1の回路102の出力はローレベル電位となる。また、読み出し信号(RE)がハイレベル電位の時、第3のスイッチ114がオフ状態となり、第1のスイッチ106がオン状態となるため、ノードDBの電位は、第1の回路102の出力と同電位となる。これにより、不定XであったノードD、ノードDB、ノードD2、及びノードD2Bが、電源停止前の状態に戻る(時刻t14)。
【0081】
次に、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)の固定を解除する(時刻t15)。すなわち、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)を、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化する通常の信号に戻す。
【0082】
次に、データの読み出し終了後、第1のトランジスタ108のゲートに制御信号(G)を与え、第1のトランジスタ108をオン状態とする(時刻t16)。こうして、再びノードFNにハイレベル電位が書き込まれる。
【0083】
このように、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベルを一定に保った状態で、電源電圧(Vdd)の供給を再開することによって、帰還ループ中のデータを保持するノードの電位の変動を抑制することができる。
【0084】
以上が、図1(A)、及び図1(B)に示した記憶回路、及び信号処理回路について、図2に示すタイミングチャートの駆動方法の説明である。
【0085】
次に、図1(A)、及び図1(B)に示す記憶回路、及び信号処理回路の駆動方法について、図3を用いて説明を行う。図3においては、電源電圧(Vdd)の供給が停止する前に、ノードFNにローレベル電位を書き込む際のタイミングチャートになる。図2で説明した部分と同様の箇所については、その説明を省略する。
【0086】
〈初期状態期間、通常動作期間〉
まず、図3に示す第1の期間(T1)から、第2の期間(T2)にするために、電源電圧(Vdd)を供給した状態(0Vより大きい電源電圧とした状態)で、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化するクロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)を供給する(時刻t2)。なお、クロック信号(C)については、電源電圧(Vdd)と同時に立ち上がる場合に、不安定な動作となる可能性があるため、電源電圧(Vdd)よりも事前に立ち上がるような構成としてもよい。
【0087】
また、制御信号(G)をハイレベル電位とし、第1のトランジスタ108をオン状態とする。これにより、第1のトランジスタ108のソース電極またはドレイン電極に接続された第2の回路104の出力電位がノードFN、及び第1の容量素子110に供給される(時刻t2)。
【0088】
次に、第2のスイッチ116に、入力信号(IN)が与えられる。また、第2のスイッチ116に、反転クロック信号(CB)のハイレベル電位が入力された際に、第2のスイッチ116がオン状態となる。第2のスイッチ116がオン状態となることで、ノードDに入力信号(IN)と同電位の信号が与えられる(時刻t3〜時刻t4等)。
【0089】
また、ノードDに与えられた電位は、第3のインバータ112の入力端子に与えられる。第3のインバータ112は、位相反転回路であり、入力された信号の反転した信号を出力する。また、第3のスイッチ114は、読み出し信号(RE)がローレベル電位でオン状態となる。なお、実際には信号遅延があるため、ノードDの信号電位が変化した時点から遅延して、第3のスイッチ114と、記憶回路100の接続箇所であるノードDBの電位が変化する。
【0090】
次に、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120にノードDBの信号(DB)が入力される。第4のインバータ118と、第4のスイッチ120にクロック信号(C)のハイレベル電位が入力された際に、第4のインバータ118と、第4のスイッチ120は、オン状態となる。第4のスイッチ120がオン状態となることで、ノードD2に信号(D2)が与えられる。また、ノードD2に与えられた信号(D2)は、第5のインバータ122と、第6のインバータ124に入力される。第5のインバータ122は、ノードD2Bに信号(D2B)を出力し、ノードD2Bに与えられた信号(D2B)は、出力(OUT)される(時刻t4〜時刻t5等)。
【0091】
〈電源電圧供給停止前の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧の供給が停止する期間である。第3の期間(T3)の直前の第2の期間(T2)においては、電源電圧の供給を停止する前に、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)を固定する(時刻t9〜時刻t10)。すなわち、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)を、所定のデータが帰還ループによって保持された状態のクロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)のままとする。つまり、通常動作では、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)は、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化する信号であるが、この変化をさせないクロック信号固定期間を設ける。
【0092】
また、第1のトランジスタ108のゲートには、クロック信号(C)や反転クロック信号(CB)とは異なる制御信号(G)が入力されている。つまり、第1のトランジスタ108のオン状態及びオフ状態は、クロック信号(C)や反転クロック信号(CB)とは異なる制御信号(G)によって、独立したタイミングで制御することが可能である。そのため、信号処理回路への電源電圧の供給を停止する前に、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベルを一定に保った状態で第1のトランジスタ108をオフ状態とすることができる。こうして、データを正確にノードFN、及び第1の容量素子110に保持させることができる。
【0093】
なお、図3においては、読み出し信号(RE)にハイレベル電位を入力した際に、信号(DB)がハイレベル電位であるため、第2の回路104の出力は、ローレベル電位を出力し、ノードFN、及び第1の容量素子110にはローレベル電位が保持される(時刻t8)。
【0094】
〈電源電圧供給停止の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧供給停止の期間である。第2の期間(T2)と、第3の期間(T3)の間で電源電圧の供給を停止する(時刻t10)。なお、第1のトランジスタ108はオフ状態である。信号処理回路への電源電圧(Vdd)の供給が停止した後においても、帰還ループによって保持されていたデータに対応する信号が、ノードFN、及び第1の容量素子110に保持される。ここで、第1のトランジスタ108は、リーク電流が極めて小さいため、ノードFN、及び第1の容量素子110によって保持された信号(電位)が変動することを抑制することができる。
【0095】
〈電源電圧供給再開の動作〉
第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開の動作を行う期間である。電源電圧(Vdd)の供給再開後においては、電源電圧(Vdd)の供給停止時に固定された、クロック信号(C)、反転クロック信号(CB)を供給する(時刻t13)。
【0096】
次に、ノードFN、及び、第1の容量素子110に電源電圧がオフする前に保持されたデータの読み出しを行う。読み出しは読み出し信号(RE)にハイレベル電位を与えることで行う(時刻t14〜時刻t15)。
【0097】
読み出しによって、ノードFNに保持されたハイレベル電位の信号が、第1の回路102の入力端子の一方に供給される。また、第1の回路102の他方の入力端子に入力される読み出し信号(RE)がハイレベル電位であるため、第1の回路102の出力はローレベル電位となる。また、読み出し信号(RE)がハイレベル電位の時、第3のスイッチ114はオフ状態となり、第1のスイッチ106はオン状態となるため、ノードDBの電位は、第1の回路102の出力と同電位となる。これにより、不定XであったノードD、ノードDB、ノードD2、及びノードD2Bが、電源停止前の状態に戻る(時刻t14)。
【0098】
次に、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)のレベル(信号電位)の固定を解除する(時刻t15)。すなわち、クロック信号(C)、及び反転クロック信号(CB)を、ハイレベル電位とローレベル電位との間でレベル(信号電位)が周期的に変化する通常の信号に戻す。
【0099】
次に、データの読み出し終了後、第1のトランジスタ108のゲートに制御信号(G)を与え、第1のトランジスタ108をオン状態とする(時刻t16)。こうして、再びノードFNにハイレベル電位が書き込まれる。
【0100】
このように、クロック信号(C)及び反転クロック信号(CB)のレベルを一定に保った状態で、電源電圧(Vdd)の供給を再開することによって、帰還ループ中のデータを保持するノードの電位の変動を抑制することができる。
【0101】
以上が、図1(A)、及び図1(B)に示した記憶回路、及び信号処理回路について、図3に示すタイミングチャートの駆動方法の説明である。
【0102】
以上のように、本実施の形態に示した記憶回路、及び信号処理回路においては、事前にハイレベル電位を記憶回路中のノードFNに書き込んでおき、退避させたいデータがハイレベル電位のときは、そのままの状態を維持し、退避させたいデータがローレベル電位のときは、電源オフ直前にローレベル電位に書き換えてデータを保持することが可能となる。このような構成とすることで、書き込み速度を向上させることができる。
【0103】
また、このような記憶回路、及び信号処理回路を、レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、信号処理回路全体、もしくは信号処理回路を構成する一または複数の論理回路において、待機状態のときに短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる信号処理回路、及び消費電力を抑えることができる当該信号処理回路の駆動方法を提供することができる。
【0104】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0105】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示した第1の回路102に用いることのできる回路構成として、図4(A)とは異なる回路構成について、図4(B)を用いて説明を行う。なお、先の実施の形態1で説明した部分と同様の箇所については、同様の符号を用い、その説明を省略する。
【0106】
図4(B)に示す第1の回路102の回路構成は、第2のトランジスタ202と、第3のトランジスタ204と、第4のトランジスタ206と、第2の容量素子208と、により構成されている。
【0107】
第2のトランジスタ202は、一導電型(例えば、pチャネル型)で構成され、第3のトランジスタ204、及び第4のトランジスタ206は、第2のトランジスタ202とは異なる導電型(例えば、nチャネル型)を用いることができる。
【0108】
また、第2のトランジスタ202と、第3のトランジスタ204と、第4のトランジスタ206と、は直列に接続されており、第2のトランジスタ202のゲート電極と、第3のトランジスタ204のゲート電極とが接続されており、実施の形態1における読み出し信号(RE)が与えられる電位線として用いることができる。また、第4のトランジスタ206のゲート電極は、FNと接続されている。
【0109】
また、第2のトランジスタ202は、ソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が供給される電位線に接続され、ソース電極またはドレイン電極の他方は、第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の一方に接続され、第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の他方は、第4のトランジスタ206のソース電極またはドレイン電極の一方に接続されており、第4のトランジスタ206のソース電極またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0110】
また、第2のトランジスタ202のソース電極またはドレイン電極の他方と、第3のトランジスタ204のソース電極またはドレイン電極の一方と、は第2の容量素子208の一方の電極に接続されており、第2の容量素子208の他方の電極は、接地されている。
【0111】
なお、第2のトランジスタ202、第3のトランジスタ204、及び第4のトランジスタ206に用いることのできる材料は、特に限定されない。例えば、トランジスタが高速動作できるものが好ましく、単結晶シリコン、酸化物半導体等を用いて形成することができる。
【0112】
また、先の実施の形態1に示したように、FNは、電源電圧の供給を停止するまでにハイレベル電位が与えられている。また、読み出し信号(RE)は、データの読み出し時以外は、ローレベル電位が与えられており、第2のトランジスタ202がpチャネル型のトランジスタで形成されているため、第2のトランジスタ202がオン状態となり、電源電圧(Vdd)は、第2の容量素子208に与えられる。
【0113】
なお、本実施の形態に示した図4(B)の回路構成とすることで、図4(A)の回路構成と比較してトランジスタの個数を低減できるため好適である。また、図4(A)の回路構成と比較して、消費電力を低減させることができる。例えば、図4(A)に示した第1の回路102を使用した場合においては、読み出し信号(RE)にハイレベル電位が与えられた場合、第2のトランジスタ202がオフ状態となり、第3のトランジスタ204がオン状態となる。また、ノードFNがハイレベル電位を保持しているため、第4のトランジスタ206のゲート電極には、ハイレベル電位が与えられている。したがって、第5のトランジスタ207、及び第4のトランジスタ206を介して電源電圧(Vdd)が貫通電流として流れる懸念があり、貫通電流が生じた際には、消費電力が大きくなる可能性がある。図4(B)に示した回路構成においては、第5のトランジスタ207を有していないため、貫通電流による消費電力の増大を抑制できるため好ましい。
【0114】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0115】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した記憶回路、及び信号処理回路を用いて、複数の回路により構成された記憶処理装置について、図5を用いて説明を行う。
【0116】
図5に、本発明の一態様に係る記憶処理装置の一例を示す。記憶処理装置は、一または複数の演算回路と、一または複数の記憶回路とを少なくとも有する。具体的に、図5に示す記憶処理装置150は、演算回路151と、演算回路152と、記憶回路153と、記憶回路154と、記憶回路155と、制御回路156と、電源制御回路157と、を有する。
【0117】
演算回路151、及び演算回路152は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算回路などを含む。そして、記憶回路153は、演算回路151における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶回路154は、演算回路152における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0118】
また、記憶回路155は、メインメモリとして用いることができ、制御回路156が実行するプログラムをデータとして記憶する、または演算回路151、及び演算回路152からのデータを記憶することができる。
【0119】
制御回路156は、記憶処理装置150が有する演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155の動作を統括的に制御する回路である。
【0120】
実施の形態1で示した記憶回路、及び信号処理回路を記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155に用いることで、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155への電源電圧の供給を停止しても、データを保持することができる。よって、記憶処理装置150全体への電源電圧の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。または、記憶回路153、記憶回路154、または記憶回路155のいずれか一つまたは複数への電源電圧の供給を停止し、記憶処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給をオフする前に、高速でデータの書き込みができ、且つ電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0121】
また、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155とデータのやり取りを行う演算回路151、演算回路152または制御回路156への、電源電圧の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算回路151と記憶回路153において、動作が行われない場合、演算回路151及び記憶回路153への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0122】
また、電源制御回路157は、記憶処理装置150が有する演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、及び制御回路156へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源電圧の供給を停止する場合、電源電圧の供給を停止するためのスイッチング素子は、電源制御回路157に設けられていても良いし、演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、及び制御回路156のそれぞれに設けられていても良い。
【0123】
なお、メインメモリである記憶回路155と、演算回路151、演算回路152、及び制御回路156の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶回路を設けても良い。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶装置にも、上述した信号処理回路を用いることで、記憶処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給をオフする前に、高速でデータの書き込みができ、且つ電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0124】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0125】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理回路の一つである、CPUの構成について説明する。
【0126】
図6に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図6に示すCPUは、基板9900上に、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Timing・Controller9905、Register9906、Register・Controller9907、Bus・I/F9908、書き換え可能なROM9909、ROM・I/F9920と、を主に有している。なお、ALUは、Arithmetic logic unitであり、Bus・I/Fは、バスインターフェースであり、ROM・I/Fは、ROMインターフェースである。ROM9909、及びROM・I/F9920は、別チップに設けても良い。もちろん、図6に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0127】
Bus・I/F9908を介してCPUに入力された命令は、Instruction・Decoder9903に入力され、デコードされた後、ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905に入力される。
【0128】
ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALU・Controller9902は、ALU9901の動作を制御するための信号を生成する。また、Interrupt・Controller9904は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。Register・Controller9907は、Register9906のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてRegister9906の読み出しや書き込みを行なう。
【0129】
またTiming・Controller9905は、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばTiming・Controller9905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0130】
本実施の形態のCPUでは、Register9906に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶回路、及び信号処理回路が設けられている。Register・Controller9907は、ALU9901からの指示に従い、Register9906の記憶回路に、一時的にデータの保持を行うことができる。
【0131】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0132】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理回路はCPUに限定されず、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP、FPGA等のLSIにも応用可能である。
【0133】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0134】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、実施の形態1の図1に示した回路構成、及び実施の形態2の図4(B)に示した回路構成の記憶回路100の作製方法について説明を行う。なお、図4(B)に示した第4のトランジスタ206と、酸化物半導体を用いて形成された第1のトランジスタ108と、第1の容量素子110とを例に挙げて図7乃至図10を用いて説明する。また、記憶回路100に含まれるその他の素子も、第4のトランジスタ206、第1のトランジスタ108、及び第1の容量素子110と同様に作製することができる。
【0135】
なお、本実施の形態では、第4のトランジスタ206に用いる材料が単結晶シリコンである場合を例に挙げて、以下作製方法について説明する。
【0136】
まず、図7(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0137】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0138】
なお、半導体膜702の具体的な単結晶の半導体膜の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0139】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、又はパターニングにより形成された半導体膜702に対しても行っても良い。
【0140】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0141】
次に、図7(B)に示すように、半導体膜702上にゲート絶縁膜703を形成する。
【0142】
ゲート絶縁膜703は、高密度プラズマ処理、熱処理などを行うことにより半導体膜702の表面を酸化又は窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成できる。
【0143】
また、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム又は酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、又は積層させることで、ゲート絶縁膜703を形成しても良い。
【0144】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0145】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0146】
次いで、図7(B)に示すように、ゲート電極704を形成する。
【0147】
ゲート電極704は、導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、形成することができる。上記導電膜の形成にはPE−CVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を含む合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。又は、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0148】
なお、本実施の形態ではゲート電極704を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極704は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0149】
また、ゲート電極704は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0150】
次に、図7(C)に示すように、ゲート電極704をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体膜702に添加することで、ゲート電極704と重なるチャネル形成領域706と、チャネル形成領域706を間に挟む一対の不純物領域705とが、半導体膜702に形成される。
【0151】
本実施の形態では、半導体膜702にn型を付与する不純物元素(例えばリン)を添加する場合を例に挙げる。
【0152】
次いで、図8(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極704を覆うように、絶縁膜707、絶縁膜708を形成する。具体的に、絶縁膜707、絶縁膜708は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜707、絶縁膜708に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜707、絶縁膜708に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0153】
本実施の形態では、絶縁膜707として酸化窒化珪素、絶縁膜708として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極704上に絶縁膜707、絶縁膜708を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極704上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0154】
次いで、図8(B)に示すように、絶縁膜707、及び絶縁膜708にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、ゲート電極704の表面を露出させる。なお、後に形成される第1のトランジスタ108の特性を向上させるために、絶縁膜707、絶縁膜708の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0155】
以上の工程により、第4のトランジスタ206を形成することができる。
【0156】
次いで、第1のトランジスタ108の作製方法について説明する。まず、図8(C)に示すように、絶縁膜708上に酸化物半導体層709を形成する。
【0157】
酸化物半導体層709は、絶縁膜707、及び絶縁膜708上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、金属酸化物ターゲットとして用いて、スパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0158】
用いる酸化物半導体膜としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0159】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0160】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0161】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0162】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0163】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0164】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0165】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0166】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0167】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0168】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0169】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0170】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0171】
【数1】

【0172】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0173】
また、酸化物半導体膜は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物半導体、In−Sn−Zn系酸化物半導体、In−Al−Zn系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn系酸化物半導体、Al−Ga−Zn系酸化物半導体、Sn−Al−Zn系酸化物半導体、Hf−In−Zn系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系酸化物半導体、Sn−Zn系酸化物半導体、Al−Zn系酸化物半導体、Zn−Mg系酸化物半導体、Sn−Mg系酸化物半導体、In−Mg系酸化物半導体、In−Ga系酸化物半導体や、In系酸化物半導体、Sn系酸化物半導体、Zn系酸化物半導体などを用いることができる。
【0174】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比が、原子数比で、In:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、又はIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0175】
また、酸化物半導体膜として、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法により得られるIn−Sn−Zn系酸化物半導体の薄膜を用いてもよい。酸化物半導体として、In−Sn−Zn系の酸化物材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1、或いは20:45:35などを用いる。
【0176】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたアルゴンガス、及び酸素ガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。なお、スパッタリングガスとしては、高純度化されたガスを用いると好ましい。具体的には、アルゴンガスについては、純度が9N(99.9999999%)であり、露点が−121℃であり、HO含有量が0.1ppb以下であり、H含有量が0.5ppb以下であると好ましい。また、酸素ガスについては、純度が8N(99.999999%)であり、露点−112℃であり、HO含有量が1ppb以下、H含有量が1ppb以下であると好ましい。このような高純度化されたガスを用いることで、成膜される酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減できる。
【0177】
また、成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0178】
また、基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜の欠陥密度が低下するため好ましい。酸化物半導体膜の欠陥密度は、トランジスタの電界効果移動度に影響を与える。
【0179】
なお、酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0180】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、以下の式で表現できる。
【0181】
【数2】

【0182】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
【0183】
【数3】

【0184】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Iは、以下の式となる。
【0185】
【数4】

【0186】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。上式の両辺をVで割り、更に両辺の対数を取ると、以下のようになる。
【0187】
【数5】

【0188】
数5の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(I/V)、横軸を1/Vとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0189】
欠陥密度は酸化物半導体の成膜時の基板温度に依存する。図17は基板加熱温度と欠陥密度の関係を示す。酸化物半導体としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Ga:Zn=1:1:1のものを用いた。基板加熱温度が高いものは室温で成膜したものよりも欠陥密度が低下することが示される。
【0190】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数2および数3よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い理想的な酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsと予想できる。
【0191】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、以下の式で表される。
【0192】
【数6】

【0193】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0194】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した第1の結果を図18に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、3.15電子ボルト、4.6電子ボルト、15、30nmとした。さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは30nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0195】
図18で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度50cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。
【0196】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した第2の結果を図19に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0197】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0198】
図19で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0199】
計算した上記第2の結果のような移動度を有する酸化物半導体を用いて、微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図20乃至図22に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図23に示す。図23に示すトランジスタは酸化物半導体層にnの導電型を呈する半導体領域1103aおよび半導体領域1103cを有する。半導体領域1103aおよび半導体領域1103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0200】
図23(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101と、下地絶縁膜1101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成される。トランジスタは半導体領域1103a、半導体領域1103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域1103bと、ゲート電極1105を有する。ゲート電極1105の幅を33nmとする。
【0201】
ゲート電極1105と半導体領域1103bの間には、ゲート絶縁膜1104を有し、また、ゲート電極1105の両側面には側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106b、ゲート電極1105の上部には、ゲート電極1105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物1107を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域1103aおよび半導体領域1103cに接して、ソース電極1108aおよびドレイン電極1108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0202】
図23(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成され、半導体領域1103a、半導体領域1103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域1103bと、幅33nmのゲート電極1105とゲート絶縁膜1104と側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bと絶縁物1107とソース電極1108aおよびドレイン電極1108bを有する点で図23(A)に示すトランジスタと同じである。
【0203】
図23(A)に示すトランジスタと図23(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bの下の半導体領域の導電型である。図23(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域1103aおよび半導体領域1103cであるが、図23(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域1103bである。すなわち、図23(B)に示す半導体層において、半導体領域1103a(半導体領域1103c)とゲート電極1105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物1106a(側壁絶縁物1106b)の幅と同じである。
【0204】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図20は、図23(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(I、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(V、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0205】
図20(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図20(B)は10nmとしたものであり、図20(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流I(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流I(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は、記憶回路で用いられるトランジスタの特性として十分な10μAを超えることが示された。
【0206】
図21は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧V依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図21(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図21(B)は10nmとしたものであり、図21(C)は5nmとしたものである。
【0207】
また、図22は、図23(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図22(B)は10nmとしたものであり、図22(C)は5nmとしたものである。
【0208】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0209】
なお、移動度μのピークは、図20では80cm/Vs程度であるが、図21では60cm/Vs程度、図22では40cm/Vs程度と、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は、記憶回路で用いられるトランジスタの特性として十分な10μAを超えることが示された。
【0210】
酸化物半導体膜の成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0211】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0212】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0213】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜707、及び絶縁膜708までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0214】
なお、酸化物半導体層709を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0215】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0216】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0217】
酸化物半導体層709を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0218】
なお、スパッタリング等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体層709に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、などにおいて、加熱処理を施す。
【0219】
酸化物半導体層709に加熱処理を施すことで、酸化物半導体層709中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0220】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0221】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0222】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0223】
以上の工程により、酸化物半導体層709中の水素濃度を低減することができる。なお、酸化物半導体層709中の水素濃度は、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下とする。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。
【0224】
なお、上記の脱水化または脱水素化の加熱処理後に、酸化性雰囲気において、さらに加熱処理を行うことが望ましい。脱水化または脱水素化の加熱処理において、酸化物半導体層709中に生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気にて加熱処理を行うことで、酸化物半導体層709中に酸素を供給し、酸素欠損を補填することができる。このように、酸化物半導体層709に酸素を供給することができることから、酸化性雰囲気にて加熱処理を加酸素化ということもできる。例えば、加酸素化は、100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。なお、脱水化または脱水素化の加熱処理と、加酸素化の加熱処理は連続して行うことが好ましい。連続して行うことで生産性を向上させることができる。
【0225】
なお、酸化性雰囲気とは、酸化性ガス(酸素ガス、オゾンガス、酸化窒素ガスなど)の雰囲気であって、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、導入する酸化性ガスの純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよく、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。
【0226】
なお、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を有する酸化物半導体層としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜を用いることができる。
【0227】
CAAC−OS膜とは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、または正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む酸化物をいう。
【0228】
なお、CAAC−OS膜は単結晶ではないが、また、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OS膜は結晶化した部分(結晶部分)、または結晶化した領域(結晶領域)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界、または1つの結晶領域と他の結晶領域の境界を明確に判別できないこともある。
【0229】
また、CAAC−OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル、または表面の法線ベクトルに平行な方向)に揃っていてもよい。
【0230】
CAAC−OS膜は、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0231】
このようなCAAC−OS膜の例として、膜状に形成され、膜表面または形成される基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子、または、金属原子と酸素原子(あるいは窒素原子)の層状配列が認められる酸化物を挙げることもできる。
【0232】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図14乃至図16を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図14乃至図16は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図14において丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸は3配位のOを示す。
【0233】
図14(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図14(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図14(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図14(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0234】
図14(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図14(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図14(B)に示す構造をとりうる。図14(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0235】
図14(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、による構造を示す。図14(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図14(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図14(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0236】
図14(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図14(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図14(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0237】
図14(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図14(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図14(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0238】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0239】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図14(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図14(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは、上方向に1個の近接Gaを有する。図14(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0240】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように小グループが結合して中グループを構成する。
【0241】
図15(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図15(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図15(C)は、図15(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0242】
図15(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図15(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図15(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0243】
図15(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0244】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snからなる小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図14(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個あれば、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0245】
また、Inは5配位および6配位のいずれもとることができるものとする。具体的には、図15(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0246】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、などを用いた場合も同様である。
【0247】
例えば、図16(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0248】
図16(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0249】
図16(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図16(C)は、図16(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0250】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0251】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図16(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0252】
また、CAAC−OS膜は、非晶質の酸化物半導体膜と比較して、金属と酸素の結合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体膜が非晶質の場合は、個々の金属原子によって配位数が異なることも有り得るが、CAAC−OS膜では金属原子に配位している酸素原子の数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)やアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0253】
また、酸化物半導体が極めて薄い膜厚(例えば、5nm)でもCAAC−OS膜とすることができる。このような膜厚でCAAC−OS膜とすることにより、例えばL長が短い(例えば、L長=30nm)トランジスタを作製する場合においても、高い信頼性の酸化物半導体を用いたトランジスタとすることができる。
【0254】
また、CAAC−OS膜を形成する場合においては、下地膜(ここでは、絶縁膜708)の表面の平坦性を良好にすることが好ましい。表面の平坦性は、原子レベルで平坦化された絶縁膜(ALF:Atominc Layer Flatnessともいう)とすればよく、例えば、絶縁膜708の平均面粗さ(Ra)を0.1nm以上0.5nm未満とすることが好ましい。絶縁膜708の表面の平坦性が良好であると、CAAC−OS膜の結晶性を向上させることができる。
【0255】
以上により酸化物半導体層709を形成することができる。
【0256】
次いで、図9(A)に示すように、ゲート電極704と接し、なおかつ酸化物半導体層709とも接する導電膜710と、酸化物半導体層709と接する導電膜711とを形成する。導電膜710、及び導電膜711は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0257】
具体的に、導電膜710、及び導電膜711は、ゲート電極704、絶縁膜707、絶縁膜708、及び酸化物半導体層709を覆うようスパッタリング法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、形成することができる。
【0258】
導電膜710、及び導電膜711となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側もしくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウム又は銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0259】
また、導電膜710、及び導電膜711となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜710、及び導電膜711に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電膜710、及び導電膜711との密着性を高めることができる。
【0260】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0261】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層709がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体層709の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0262】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と、水とを、5:2:2の体積比で混合したアンモニア過水を用いる。または、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0263】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0264】
また、酸化物半導体層709と、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710、及び導電膜711との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0265】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのパターニングと、導電膜710、及び導電膜711を形成するためのパターニングとを一括で行うようにしても良い。
【0266】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体層709と導電膜710、及び導電膜711の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。
【0267】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層709の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0268】
なお、プラズマ処理を行った後、図9(B)に示すように、絶縁膜708、酸化物半導体層709、導電膜710、及び導電膜711を覆うように、ゲート絶縁膜712を形成する。そして、ゲート絶縁膜712上において、酸化物半導体層709と重なる位置にゲート電極713を形成し、導電膜710と重なる位置に導電膜714を形成する。
【0269】
ゲート絶縁膜712は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜712は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜712に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層709へ侵入し、又は水素が酸化物半導体層709中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層709が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜712はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記のゲート絶縁膜712には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。
【0270】
例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体層709に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜710、導電膜711、及び酸化物半導体層709と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層709内、ゲート絶縁膜712内、或いは、酸化物半導体層709と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体層709に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が酸化物半導体層709に接するのを防ぐことができる。
【0271】
本実施の形態では、スパッタリング法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタリング法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜712を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0272】
なお、ゲート絶縁膜712を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、又は希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。
【0273】
本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電膜710、及び導電膜711を形成する前に、水分又は水素を低減させるための酸化物半導体層に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜712が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体層709に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体層709に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜712から酸化物半導体層709に酸素が供与される。そして、酸化物半導体層709に酸素が供与されることで、酸化物半導体層709において、酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。酸化物半導体層709には、化学量論的組成比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。
【0274】
その結果、酸化物半導体層709をi型(真性)に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、オフ電流の極めて小さいトランジスタを実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜712の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体層709をi型に近づけることができる。
【0275】
また、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体層709に酸素を添加することで、酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体層709に添加すれば良い。
【0276】
また、ゲート電極713、及び導電膜714は、ゲート絶縁膜712上に導電膜を形成した後、該導電膜をパターニングすることで形成することができる。ゲート電極713、及び導電膜714は、ゲート電極704、或いは導電膜710、及び導電膜711と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0277】
ゲート電極713、及び導電膜714の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いてスパッタリング法により150nmの導電膜を形成した後、該導電膜を所望の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、ゲート電極713、及び導電膜714を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0278】
以上の工程により、第1のトランジスタ108が形成される。
【0279】
なお、ゲート絶縁膜712を間に挟んで導電膜710と導電膜714とが重なる部分が、第1の容量素子110に相当する。
【0280】
また、第1のトランジスタ108はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0281】
なお、酸化物半導体層709に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜712が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0282】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0283】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0284】
また、酸化物半導体層709に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0285】
例えば、酸化物半導体層709に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0286】
また、酸化物半導体層709に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0287】
また、酸化物半導体層709に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0288】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、又は酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0289】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層709に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層709に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体層709を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0290】
また、酸化物半導体層709の上層又は下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がSiO(X=2+α、0<α<1)の酸化シリコンとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0291】
また、酸化物半導体層709に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層709の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層709の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層709の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0292】
次に、図9(C)に示すように、ゲート絶縁膜712、ゲート電極713、導電膜714を覆うように、絶縁膜715を形成する。絶縁膜715は、スパッタリング法やPE−CVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜715には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜715の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜715を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0293】
以上の工程により、記憶回路に用いる第1のトランジスタ108を作製することができる。なお、本実施の形態に示した作製方法では、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710、及び導電膜711が、酸化物半導体層709の後に形成されている。しかし、第1のトランジスタ108は、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜が、酸化物半導体層709の下、すなわち、酸化物半導体層709と絶縁膜708の間に設けられていても良い。
【0294】
また、図10に、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710及び導電膜711が、酸化物半導体層709と、絶縁膜708の間に設けられている場合の、第1のトランジスタ108、第1の容量素子110、及び第4のトランジスタ206の断面図を示す。図10に示す第1のトランジスタ108は、絶縁膜708を形成した後に導電膜710及び導電膜711の形成を行い、次いで酸化物半導体層709の形成を行うことで、得ることができる。
【0295】
このように酸化物半導体を用いたトランジスタによって、不揮発性の記憶回路を構成することができる。また、不揮発性の記憶回路を用いた半導体装置としては、例えば不揮発性のランダムアクセスメモリがある。
【0296】
ところで、不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが並行であれば低抵抗状態、反並行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた記憶回路とは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る記憶回路との対比を示す。
【0297】
【表1】

【0298】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0299】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0300】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0301】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0302】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0303】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5とは異なる構造を有した、酸化物半導体層を用いたトランジスタについて図11を用いて説明する。
【0304】
図11(A)に示すトランジスタ801は、絶縁膜802上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体層803と、酸化物半導体層803上に形成されたソース電極804と、酸化物半導体層803上に形成されたドレイン電極805と、酸化物半導体層803、ソース電極804、及びドレイン電極805上のゲート絶縁膜806と、ゲート絶縁膜806上において酸化物半導体層803と重なる位置に設けられたゲート電極807とを有する。
【0305】
図11(A)に示すトランジスタ801は、ゲート電極807が酸化物半導体層803の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極804と、ドレイン電極805とが酸化物半導体層803の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ801は、ソース電極804、及びドレイン電極805と、ゲート電極807とが重なっていない。すなわち、ソース電極804、及びドレイン電極805とゲート電極807との間には、ゲート絶縁膜806の膜厚よりも大きい間隔が設けられている。よって、トランジスタ801は、ソース電極804、及びドレイン電極805とゲート電極807との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができるので、高速動作を実現することができる。
【0306】
また、酸化物半導体層803は、ゲート電極807が形成された後に酸化物半導体層803にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域808を有する。また、酸化物半導体層803のうち、ゲート絶縁膜806を間に挟んでゲート電極807と重なる領域がチャネル形成領域809である。酸化物半導体層803では、一対の高濃度領域808の間にチャネル形成領域809が設けられている。高濃度領域808を形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えば窒素、リン、ボロンなどを用いることができる。
【0307】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域808中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0308】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域808は、酸化物半導体層803中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域808を酸化物半導体層803に設けることで、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。
【0309】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体層803に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下で1時間程度加熱処理を施すことにより、高濃度領域808中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域808中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域808の導電性を高め、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域808中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0310】
また、酸化物半導体層803は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体層803がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層803の導電率を高めることができるので、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。
【0311】
そして、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることで、トランジスタ801の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ801の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0312】
図11(B)に示すトランジスタ811は、絶縁膜812上に形成されたソース電極814と、絶縁膜812上に形成されたドレイン電極815と、ソース電極814とドレイン電極815上に形成された活性層として機能する酸化物半導体層813と、酸化物半導体層813、ソース電極814と、ドレイン電極815上のゲート絶縁膜816と、ゲート絶縁膜816上において酸化物半導体層813と重なる位置に設けられたゲート電極817とを有する。
【0313】
図11(B)に示すトランジスタ811は、ゲート電極817が酸化物半導体層813の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極814、及びドレイン電極815が酸化物半導体層813の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ811は、トランジスタ801と同様に、ソース電極814、及びドレイン電極815と、ゲート電極817とが重なっていないので、ソース電極814またはドレイン電極815とゲート電極817との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0314】
また、酸化物半導体層813は、ゲート電極817が形成された後に酸化物半導体層813にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域818を有する。また、酸化物半導体層813のうち、ゲート絶縁膜816を間に挟んでゲート電極817と重なる領域がチャネル形成領域819である。酸化物半導体層813では、一対の高濃度領域818の間にチャネル形成領域819が設けられている。
【0315】
高濃度領域818は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域818を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0316】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域818中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0317】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域818は、酸化物半導体層813中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域818を酸化物半導体層813に設けることで、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。
【0318】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体層813に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域818中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域818中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域818の導電性を高め、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域818中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0319】
また、酸化物半導体層813は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体層813がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層813の導電率を高めることができるので、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。
【0320】
そして、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることで、トランジスタ811の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ811の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0321】
図11(C)に示すトランジスタ821は、絶縁膜822上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体層823と、酸化物半導体層823上に形成されたソース電極824と、酸化物半導体層823上に形成されたドレイン電極825と、酸化物半導体層823、ソース電極824と、ドレイン電極825上のゲート絶縁膜826と、ゲート絶縁膜826上において酸化物半導体層823と重なる位置に設けられたゲート電極827とを有する。さらに、トランジスタ821は、ゲート電極827の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール830を有する。
【0322】
図11(C)に示すトランジスタ821は、ゲート電極827が酸化物半導体層823の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極824と、ドレイン電極825とが酸化物半導体層823の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ821は、トランジスタ801と同様に、ソース電極824、及びドレイン電極825と、ゲート電極827とが重なっていないので、ソース電極824またはドレイン電極825とゲート電極827との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0323】
また、酸化物半導体層823は、ゲート電極827が形成された後に酸化物半導体層823にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域828と、一対の低濃度領域829とを有する。また、酸化物半導体層823のうち、ゲート絶縁膜826を間に挟んでゲート電極827と重なる領域がチャネル形成領域831である。酸化物半導体層823では、一対の高濃度領域828の間に一対の低濃度領域829が設けられ、一対の低濃度領域829の間にチャネル形成領域831が設けられている。そして、一対の低濃度領域829は、酸化物半導体層823中の、ゲート絶縁膜826を間に挟んでサイドウォール830と重なる領域に設けられている。
【0324】
高濃度領域828及び低濃度領域829は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域828を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0325】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域828中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域829中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0326】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域828は、酸化物半導体層823中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域828を酸化物半導体層823に設けることで、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域829をチャネル形成領域831と高濃度領域828の間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0327】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体層823に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域828中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域829も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域828中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域828の導電性を高め、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域828中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0328】
また、酸化物半導体層823は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体層823がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層823の導電率を高めることができるので、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。
【0329】
そして、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることで、トランジスタ821の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ821の微細化により、当該トランジスタを用いたメモリセルの占める面積を縮小化し、セルアレイの単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0330】
図11(D)に示すトランジスタ841は、絶縁膜842上に形成されたソース電極844と、絶縁膜842上に形成されたドレイン電極845と、ソース電極844と、ドレイン電極845上に形成された活性層として機能する酸化物半導体層843と、酸化物半導体層843、ソース電極844、ドレイン電極845上のゲート絶縁膜846と、ゲート絶縁膜846上において酸化物半導体層843と重なる位置に設けられたゲート電極847とを有する。さらに、トランジスタ841は、ゲート電極847の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール850を有する。
【0331】
図11(D)に示すトランジスタ841は、ゲート電極847が酸化物半導体層843の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極844、及びドレイン電極845が酸化物半導体層843の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ841は、トランジスタ801と同様に、ソース電極844またはドレイン電極845と、ゲート電極847とが重なっていないので、ソース電極844またはドレイン電極845とゲート電極847との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0332】
また、酸化物半導体層843は、ゲート電極847が形成された後に酸化物半導体層843にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域848と、一対の低濃度領域849とを有する。また、酸化物半導体層843のうち、ゲート絶縁膜846を間に挟んでゲート電極847と重なる領域がチャネル形成領域851である。酸化物半導体層843では、一対の高濃度領域848の間に一対の低濃度領域849が設けられ、一対の低濃度領域849の間にチャネル形成領域851が設けられている。そして、一対の低濃度領域849は、酸化物半導体層843中の、ゲート絶縁膜846を間に挟んでサイドウォール850と重なる領域に設けられている。
【0333】
高濃度領域848及び低濃度領域849は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域848を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0334】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域848中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域849中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0335】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域848は、酸化物半導体層843中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域848を酸化物半導体層843に設けることで、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域849をチャネル形成領域851と高濃度領域848の間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0336】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体層843に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域848中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域849も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域848中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域848の導電性を高め、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域848中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0337】
また、酸化物半導体層843は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体層843がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層843の導電率を高めることができるので、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。
【0338】
そして、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることで、トランジスタ841の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ841の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0339】
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度領域をセルフアラインプロセスにて作製する方法の一つとして、酸化物半導体層の表面を露出させて、アルゴンプラズマ処理をおこない、酸化物半導体層のプラズマにさらされた領域の抵抗率を低下させる方法が開示されている(S. Jeon et al. ”180nm Gate Length Amorphous InGaZnO Thin Film Transistor for High Density Image Sensor Applications”, IEDM Tech. Dig., pp.504−507, 2010.)。
【0340】
しかしながら、上記作製方法では、ゲート絶縁膜を形成した後に、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分を露出するべく、ゲート絶縁膜を部分的に除去する必要がある。よって、ゲート絶縁膜が除去される際に、下層の酸化物半導体層も部分的にオーバーエッチングされ、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分の膜厚が小さくなってしまう。その結果、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加し、また、オーバーエッチングによるトランジスタの特性不良が起こりやすくなる。
【0341】
トランジスタの微細化を進めるには、加工精度の高いドライエッチング法を採用する必要がある。しかし、上記オーバーエッチングは、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の選択比が十分に確保できないドライエッチング法を採用する場合に、顕著に起こりやすい。
【0342】
例えば、酸化物半導体層が十分な厚さであればオーバーエッチングも問題にはならないが、チャネル長を200nm以下とする場合には、短チャネル効果を防止する上で、チャネル形成領域となる部分の酸化物半導体層の厚さは20nm以下、好ましくは10nm以下であることが求められる。そのような薄い酸化物半導体層を扱う場合には、酸化物半導体層のオーバーエッチングは、上述したような、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加、トランジスタの特性不良を生じさせるため、好ましくない。
【0343】
しかし、本実施の形態に示すように、酸化物半導体層へのドーパントの添加を、酸化物半導体層を露出させず、ゲート絶縁膜を残したまま行うことで、酸化物半導体層のオーバーエッチングを防ぎ、酸化物半導体層への過剰なダメージを軽減することができる。また、加えて、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の界面も清浄に保たれる。従って、トランジスタの特性及び信頼性を高めることができる。
【0344】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0345】
(実施の形態7)
本実施の形態においては、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることで、消費電力の低い電子機器について説明を行う。特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間が長くなるといったメリットが得られる。
【0346】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【0347】
本発明の一態様に係る信号処理回路を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯用の電子機器に応用した場合について図12、及び図13を用いて説明する。
【0348】
図12は、携帯用の電子機器のブロック図である。図12に示す携帯用の電子機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェース(IF)909を有している。上記実施の形態で示した信号処理回路を、例えばCPU907に採用することによって、消費電力を低減することができる。
【0349】
図13は電子書籍のブロック図である。電子書籍はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。マイクロプロセッサ1003はCPU1011、DSP1012、インターフェース1013を有している。上記実施の形態で示した信号処理回路を、例えばCPU1011に採用することで、消費電力を低減することが可能になる。
【0350】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0351】
(実施の形態8)
上記の実施の形態1乃至7で記載された、酸化物半導体を用いたトランジスタについて詳しく説明する。
【0352】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体膜を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0353】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0354】
例えば、図24(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0355】
図24(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図24(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0356】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図24(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0357】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0358】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0359】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図24(A)と図24(B)の対比からも確認することができる。
【0360】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0361】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0362】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0363】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0364】
まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。なお、Vはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜608に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0365】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜608に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0366】
試料1のプラスBT試験の結果を図25(A)に、マイナスBT試験の結果を図25(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図26(A)に、マイナスBT試験の結果を図26(B)に示す。
【0367】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。
試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0368】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0369】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0370】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0371】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0372】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0373】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0374】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0375】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0376】
図27に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0377】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0378】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0379】
図28に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0380】
具体的には、図28に示すように、基板温度Tが125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0381】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0382】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0383】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極とチャネル長方向に重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のチャネル幅方向へのはみ出しをdWと呼ぶ。
【0384】
図29に、I(実線)および電界効果移動度(点線)のV依存性を示す。また、図30(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図30(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0385】
図30(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0386】
また、図30(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0387】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【実施例1】
【0388】
本実施例では、In−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの一例について、図31などを用いて説明する。
【0389】
図31は、コプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図31(A)にトランジスタの上面図を示す。また、図31(B)は図31(A)の一点鎖線A1−A2に対応する断面図である。
【0390】
図31(B)に示すトランジスタは、基板500と、基板500上に設けられた下地絶縁膜502と、下地絶縁膜502の周辺に設けられた保護絶縁膜504と、下地絶縁膜502および保護絶縁膜504上に設けられた高抵抗領域506aおよび低抵抗領域506bを有する酸化物半導体膜506と、酸化物半導体膜506上に設けられたゲート絶縁膜508と、ゲート絶縁膜508を介して酸化物半導体膜506と重畳して設けられたゲート電極510と、ゲート電極510の側面と接して設けられた側壁絶縁膜512と、少なくとも低抵抗領域506bと接して設けられた一対の電極514と、少なくとも酸化物半導体膜506、ゲート電極510および一対の電極514を覆って設けられた層間絶縁膜516と、層間絶縁膜516に設けられた開口部を介して少なくとも一対の電極514の一方と接続して設けられた配線518と、を有する。
【0391】
なお、図示しないが、層間絶縁膜516および配線518を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜516の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【実施例2】
【0392】
本実施例では、上記とは異なるIn−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの他の一例について示す。
【0393】
図32は、本実施例で作製したトランジスタの構造を示す上面図および断面図である。図32(A)はトランジスタの上面図である。また、図32(B)は図32(A)の一点鎖線B1−B2に対応する断面図である。
【0394】
図32(B)に示すトランジスタは、基板600と、基板600上に設けられた下地絶縁膜602と、下地絶縁膜602上に設けられた酸化物半導体膜606と、酸化物半導体膜606と接する一対の電極614と、酸化物半導体膜606および一対の電極614上に設けられたゲート絶縁膜608と、ゲート絶縁膜608を介して酸化物半導体膜606と重畳して設けられたゲート電極610と、ゲート絶縁膜608およびゲート電極610を覆って設けられた層間絶縁膜616と、層間絶縁膜616に設けられた開口部を介して一対の電極614と接続する配線618と、層間絶縁膜616および配線618を覆って設けられた保護膜620と、を有する。
【0395】
基板600としてはガラス基板を、下地絶縁膜602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
【0396】
なお、図32(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極610と一対の電極614とチャネル長方向に重畳する幅をLovと呼ぶ。また、酸化物半導体膜606に対する一対の電極614のチャネル幅方向へのはみ出しをdWと呼ぶ。
【符号の説明】
【0397】
100 記憶回路
102 第1の回路
104 第2の回路
105 第3の回路
106 第1のスイッチ
108 第1のトランジスタ
110 第1の容量素子
109 第1のインバータ
111 第2のインバータ
112 第3のインバータ
114 第3のスイッチ
116 第2のスイッチ
118 第4のインバータ
120 第4のスイッチ
122 第5のインバータ
124 第6のインバータ
150 記憶処理装置
151 演算回路
152 演算回路
153 記憶回路
154 記憶回路
155 記憶回路
156 制御回路
157 電源制御回路
202 第2のトランジスタ
204 第3のトランジスタ
206 第4のトランジスタ
207 第5のトランジスタ
208 第2の容量素子
500 基板
502 下地絶縁膜
504 保護絶縁膜
506 酸化物半導体膜
506a 高抵抗領域
506b 低抵抗領域
508 ゲート絶縁膜
510 ゲート電極
512 側壁絶縁膜
514 電極
516 層間絶縁膜
518 配線
600 基板
602 下地絶縁膜
606 酸化物半導体膜
608 ゲート絶縁膜
610 ゲート電極
614 電極
616 層間絶縁膜
618 配線
620 保護膜
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 ゲート電極
705 不純物領域
706 チャネル形成領域
707 絶縁膜
708 絶縁膜
709 酸化物半導体層
710 導電膜
711 導電膜
712 ゲート絶縁膜
713 ゲート電極
714 導電膜
715 絶縁膜
801 トランジスタ
802 絶縁膜
803 酸化物半導体層
804 ソース電極
805 ドレイン電極
806 ゲート絶縁膜
807 ゲート電極
808 高濃度領域
809 チャネル形成領域
811 トランジスタ
812 絶縁膜
813 酸化物半導体層
814 ソース電極
815 ドレイン電極
816 ゲート絶縁膜
817 ゲート電極
818 高濃度領域
819 チャネル形成領域
821 トランジスタ
822 絶縁膜
823 酸化物半導体層
824 ソース電極
825 ドレイン電極
826 ゲート絶縁膜
827 ゲート電極
828 高濃度領域
829 低濃度領域
830 サイドウォール
831 チャネル形成領域
841 トランジスタ
842 絶縁膜
843 酸化物半導体層
844 ソース電極
845 ドレイン電極
846 ゲート絶縁膜
847 ゲート電極
848 高濃度領域
849 低濃度領域
850 サイドウォール
851 チャネル形成領域
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェース(IF)
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ
1011 CPU
1012 DSP
1013 インターフェース
1101 下地絶縁膜
1102 埋め込み絶縁物
1103a 半導体領域
1103b 半導体領域
1103c 半導体領域
1104 ゲート絶縁膜
1105 ゲート電極
1106a 側壁絶縁物
1106b 側壁絶縁物
1107 絶縁物
1108a ソース電極
1108b ドレイン電極
9900 基板
9901 ALU
9902 ALU・Controller
9903 Instruction・Decoder
9904 Interrupt・Controller
9905 Timing・Controller
9906 Register
9907 Register・Controller
9908 Bus・I/F
9909 ROM
9920 ROM・I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第1の回路と、
二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第2の回路と、
二つの入力端子と一つの出力端子を具備する第3の回路と、
第1のスイッチと、
酸化物半導体を用いて形成された第1のトランジスタと、
第1の容量素子と、第1のインバータと、第2のインバータと、を有し、
前記第1の回路の入力端子の一方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、前記第1の回路の入力端子の他方は、前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、前記第1の回路の出力端子は、前記第1のスイッチの入力端子と接続され、
前記第2の回路の入力端子の一方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、前記第2の回路の入力端子の他方は、前記第1のスイッチの出力端子と接続され、前記第2の回路の出力端子は、前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、
前記第3の回路の入力端子の一方は、前記第1のインバータの出力端子と接続され、前記第3の回路の入力端子の他方は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、前記第3の回路の出力端子は、前記第2のインバータの入力端子、及び前記第1のスイッチの第1の制御端子と接続され、前記第2のインバータの出力端子は、前記第1のスイッチの第2の制御端子と接続され、
前記第1のトランジスタのゲート電極は、制御信号が与えられる信号線と接続され、
前記制御信号が与えられる信号線は、前記第1のインバータの入力端子と接続され、
前記第1の容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、前記第1の容量素子の他方の電極は、接地され、
前記第2の回路の入力端子のいずれか一方に、電源電圧の供給停止前までローレベル電位が供給され、
前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と、前記第1の容量素子と、の間にハイレベル電位が供給されることを特徴とする記憶回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のトランジスタは、In、Ga及びZnを含んでなる酸化物半導体材料により形成された記憶回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の前記記憶回路と、
第2のスイッチと、第3のインバータと、第3のスイッチと、第4のインバータと、第4のスイッチと、第5のインバータと、第6のインバータと、を有し、
前記第2のスイッチの入力端子は、入力信号が与えられる信号線と接続され、前記第2のスイッチの出力端子は、前記第3のインバータの入力端子と、前記第4のインバータの出力端子と接続され、
前記第3のインバータの出力端子は、前記第3のスイッチの入力端子と接続され、
前記第3のスイッチの出力端子は、前記第4のインバータの入力端子と、前記第4のスイッチの入力端子に接続され、
前記第4のスイッチの出力端子は、前記第5のインバータの入力端子と、前記第6のインバータの出力端子と接続され、
前記第5のインバータの出力端子は、前記第6のインバータの入力端子に接続され、
前記記憶回路が、前記第3のスイッチに接続されることを特徴とする信号処理回路。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の回路は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、
前記第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、
前記第2のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲート電極は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、
前記第5のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、
前記第5のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、
前記第5のトランジスタのゲート電極は、前記第4のトランジスタのゲート電極と接続され、
前記第4のトランジスタのゲート電極に前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方が接続される記憶回路。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の回路は、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、電源電位が与えられる信号線と接続され、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続され、
前記第4のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、
前記第2のトランジスタと前記第3のトランジスタのゲート電極は、読み出し信号が与えられる信号線と接続され、
前記第2の容量素子の電極の一方は、前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と接続され、
前記第2の容量素子の電極の他方は、接地され、
前記第4のトランジスタのゲート電極に前記第1のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方が接続される記憶回路。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記記憶回路、または前記信号処理回路を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−8432(P2013−8432A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99438(P2012−99438)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】