説明

記憶増強化合物のアッセイとしての神経突起伸長

開示する本発明は、正常個体および記憶に障害がある個体において記憶を増強する化合物を同定するために有用な細胞ベーススクリーニングアッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年12月27日に出願された米国特許仮出願第61/017,134号の優先権の恩典を主張する。上述の出願の全教示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
ここに開示する発明は、記憶機能を増強および改善する化合物のスクリーニングとしての神経突起伸長アッセイの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
ニューロンは成人脳において増殖し続けていることを示す一連の証拠が増え増えてきている。(Arsenijevic,Y. et al.,Exp. Neurol,170: 48-62(2001);Vescovi,A. L. et al.,Biomed. Pharmacother.,55:201-205(2001);Cameron,H. A. and McKay,R. D.,J. Comp. Neurol.,435:406-417(2001);およびGeuna,S. et al.,Anat. Rec,265: 132-141(2001))。実験ストラテジーは、現在、種々の治療適応症のための成人脳へのニューロン幹の移植へと進行中である(Kurimoto,Y. et al.,Neurosci. Lett.,306:57-60(2001);Singh,G.,Neuropathology,21 :110-114(2001);およびCameron,H. A. and McKay,R. D.,Nat. Neurosci.,2:894-897(1999))。発生の胚段階での神経発生に関して既に多くが公知である(Saitoe,M. and Tully,T.,"Making connections between synaptic and behavioral plasticity in Drosophila",In Toward a Theory of Neuroplasticity,J. McEachem and C. Shaw編(New York: Psychology Press.),pp. 193-220(2000))。神経の分化、神経突起の伸長および初期シナプス標的認識はすべて、活性非依存的様式で起こるようである。
【0004】
成人であれ青年であれ、学習および記憶を改善する機能を果たす化合物は、即時に受け入れられ、市場で使用されよう。
【0005】
本出願は、神経突起伸長およびその記憶に対する効果を増強する化合物の共通部分(intersection)を探求するものである。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
長期記憶は、CREB経路活性を刺激し、神経突起伸長を増強する化合物により増強することができる。開示した発明の一態様は、神経突起伸長を誘導し、また、CREB経路機能を増強する候補化合物をライブラリーから選択する工程を含み、ここで、神経突起伸長を誘導し、かつCREB経路機能を増強する化合物は、記憶を増強する化合物と同定される、記憶を増強する化合物を同定するための方法に関する。神経突起伸長を誘導する候補化合物の選択工程は、神経突起宿主細胞に候補化合物または対照化合物いずれかを提供する工程;候補化合物および対照化合物に応答した細胞増殖を測定する工程;および候補化合物と対照化合物間の細胞増殖の差を観察する工程を含み;ここで、細胞増殖に正の変化をもたらす候補化合物は、神経突起伸長を増強する化合物と同定される。該方法に使用される神経突起宿主細胞は、Neuroscreen 1細胞、マウス海馬ニューロン、または神経芽細胞腫Neuro2a細胞であり得る。宿主細胞は、さらにCREBレポーター構築物を含み得、候補化合物は、CREBレポーター構築物もまた上方調節する。
【0007】
該態様の一局面において、CREB経路機能を増強する候補化合物の選択工程は、CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞を候補化合物と接触させ、それにより試験試料を得る工程;試験試料を最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させる工程;前記試験化合物および前記CREB機能刺激剤を接触させた前記宿主細胞におけるインジケーター活性を測定する工程;インジケーター活性を、前記CREB機能刺激剤と接触させ、前記試験化合物とは接触させなかった対照細胞におけるインジケーター活性と比較する工程;ならびに: 1)工程c)で測定されたインジケーター活性が前記CREB機能刺激剤と接触させたが、前記試験化合物とは接触させなかった前記対照細胞におけるインジケーター活性と比べて増加している場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触させなかったが、前記試験化合物とは接触させた対照細胞におけるインジケーター活性が、前記CREB機能刺激剤と接触させず、前記試験化合物とも接触させなかった対照細胞におけるインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合、前記試験化合物を選択する工程を含む。
【0008】
該態様の別の局面は、さらに、工程e)で選択された前記試験化合物の異なる濃度範囲で工程a)〜e)を繰り返す工程;1)インジケーター活性が、前記CREB機能刺激剤と接触させたが、前記試験化合物とは接触させなかった前記対照細胞におけるインジケーター活性と比べ、前記試験化合物の該異なる濃度範囲において増大している場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触させなかったが、前記異なる濃度範囲の前記試験化合物を導入した対照細胞におけるインジケーター活性が、前記CREB経路機能刺激剤と接触させず、前記試験化合物とも接触させなかった対照細胞におけるインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合、前記試験化合物を選択し、それにより候補化合物を選択する工程;神経起源の細胞を、工程g)で選択された前記候補化合物および最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させる工程;前記候補化合物および前記CREB機能刺激剤と接触させた細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現を評価する工程;工程i)で評価された内因性CREB依存性遺伝子発現を、前記CREB機能刺激剤と接触させたが、前記候補化合物とは接触させなかった対照細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現と比較する工程;工程i)で評価された内因性CREB依存性遺伝子発現が、前記CREB機能刺激剤と接触させたが、前記候補化合物とは接触させなかった対照細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現と比べて増大している場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触させなかったが、前記候補化合物とは接触させた対照細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現が、前記CREB機能刺激剤と接触させず、前記候補化合物とも接触させなかった対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて有意に異ならない場合、前記候補化合物を選択し、それにより、確認候補化合物を選択する工程;1)工程k)で選択された前記確認候補化合物を動物に投与する工程;前記確認候補化合物が投与された前記動物を、前記動物において長期記憶形成がもたらされるのに適切な条件下で訓練する工程;工程m)で訓練された前記動物における長期記憶形成を評価する工程;ならびに工程n)で評価された長期記憶形成を、前記確認候補化合物が投与されなかった対照動物においてもたらされた長期記憶形成と比較する工程を含む。別の局面において、宿主細胞はヒト神経芽細胞腫細胞であり、前記神経起源の細胞はニューロンである。また、ニューロンは、一次海馬細胞であってもよい。インジケーター遺伝子はルシフェラーゼをコードし得る。別の局面において、CREB機能刺激剤はフォルスコリンであり、工程a)〜e)は、工程e)で選択された前記試験化合物の4つの異なる濃度範囲で繰り返され、または動物は哺乳動物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A〜Cは、相対光単位(RLU)で測定したCRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子に対するCREB過剰発現およびロリプラムの効果を示す棒グラフを示す。
【図2】図2A〜Bは、CREB増強により、最大長期記憶を達成するのに必要とされる訓練の量が減少することを示す棒グラフを示す。
【図3】図3A〜Cは、神経突起長に対するCREB増強因子の影響を示す棒グラフを示す。
【図4】図4A〜Bは、マウス海馬ニューロンの神経突起伸長および海馬記憶に対するHT-2175および新規CREB増強因子の効果を示す。
【図5】図5A〜Cは、神経突起伸長および記憶に対するGpr12 siRNAの効果を示す棒グラフを示す。
【図6】図6A〜Dは、神経突起伸長および文脈記憶に対するGalR3レセプターアンタゴニストHT-2157の効果を示す折れ線グラフおよび棒グラフを示す。
【図7】図7A〜Bは、NS1細胞内の神経突起伸長に対するGABA-レセプター(HT-1974)およびモノアミンオキシダーゼB(HT-1060)インヒビターの効果を示す棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
開示した発明は、正常個体および記憶障害個体の記憶を増強する化合物を同定するのに有用な細胞系スクリーニングアッセイに関する。生化学記憶を解明するため、分子試験を始めた。記憶は、一般に、長期記憶(LTM)または固定記憶と、短期記憶(STM)または作動記憶とに分けられる。この2つの記憶の型の有意な表現型の違いの1つは、LTMが新たなタンパク質の合成を伴うことである。したがって、LTMの生成は、STMで利用されるものとは異なる生化学的経路を伴う。
【0011】
開示した発明では、LTM獲得に関与する生化学的経路に対する活性を有する化合物が迅速に同定される多工程スクリーニング法を使用する。これらのスクリーニング法によって同定される化合物は、正常被験体、記憶障害被験体または両方において記憶を増強し得る。
【0012】
本明細書に記載の方法は、増強された記憶、環状アデノシン一リン酸(cAMP)応答エレメント結合(CREB)系、および神経突起伸長間に観察された相関性を利用している。CREB経路を活性化し、神経突起伸長を誘導する化合物は、記憶、特にLTM記憶を増強するための有用性を有すると予想される。
【0013】
CREB経路アッセイ
記載のスクリーニング法の一工程は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)応答エレメント結合(CREB)スクリーニング系の使用を伴う。CREB経路活性の増大をモニタリングまたは報告し得る任意の系が、開示した方法で使用され得る。例示的な系は、表題が「認知増強因子のスクリーニング方法」の米国特許出願第10/527,950号に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0014】
該方法において、CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞を試験化合物と接触させ、それにより試験試料を得る。次いで、試験試料を最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させ、宿主細胞内のインジケーターの活性を、インジケーター活性と対照細胞のインジケーター活性を比較することにより測定する。
【0015】
ここに記載の方法は、CREB経路を増強し、神経突起伸長を促進する化合物を同定またはスクリーニングするのに有用であり、該化合物を本明細書において記憶増強因子と称する。記載の方法は、CREB経路機能を増大することにより作用する記憶増強因子の同定またはスクリーニングのためのハイスループット細胞系方法(アッセイ)を提供する。
【0016】
記憶増強因子は、さまざまな機構によってCREB経路機能を増大、増強または改善し得る。例えば、記憶増強因子は、シグナル伝達経路に影響を及ぼし得、これによりCREB依存性遺伝子発現の誘導がもたらされる。CREB依存性遺伝子発現の誘導は、例えば、CREB機能の正のエフェクターの上方調節および/またはCREB機能の負のエフェクターの下方調節によって達成され得る。CREB機能の正のエフェクターとしては、アデニル酸シクラーゼおよびCREBアクチベータが挙げられる。CREB機能の負のエフェクターとしては、cAMPホスホジエステラーゼ(cAMP PDE)およびCREBリプレッサーが挙げられる。
【0017】
記憶増強因子は、CREBタンパク質のアクチベータ形態もしくはリプレッサー形態および/または転写複合体を含むCREBタンパク質の生化学的に上流に作用することにより、またはこれらに直接作用することによりCREB経路機能を増大、増強または改善し得る。例えば、CREB経路機能は、転写時、転写後または転写時と転写後の両方でCREBタンパク質レベルを増大させることにより、例えば、CREB結合タンパク質(CBPタンパク質)などの転写複合体の他の必要な成分に対するCREBタンパク質の親和性を改変することにより;プロモーター領域内のDNA CREB応答性エレメントに対する転写複合体を含むCREBタンパク質の親和性を改変することにより;またはCREBタンパク質アイソフォームに対して受動もしくは能動免疫のいずれか誘導することにより影響され得る。記憶増強因子がCREB経路機能を増大、増強または改善する具体的な機構は、開示した方法の実施に重要ではない。
【0018】
「CREB経路機能を増大」または「CREB経路機能を増強」により、CREB依存性遺伝子発現を増大、増強または改善する能力を意味する。「CREB経路機能を調節する」は、CREB依存性遺伝子発現を調節する能力を意味する。CREB依存性遺伝子発現は、内因性CREB生成を増大させることにより、例えば、内在遺伝子を直接または間接的に刺激して増大量のCREBを生成させることにより、または機能性(生物学的に活性な)CREBを増大させることにより増大、増強または改善され得る。例えば、米国特許第5,929,223号;米国特許第6,051,559号;および国際特許出願公開公報番号WO96/11270(1996年4月18日公開)を参照のこと、これらの参考文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。「機能性(生物学的に活性な)CREBの増大」は、DNA結合能、リン酸化状態、タンパク質安定性、細胞内局在などを増大させる能力を含むことを意味する。CREB依存性遺伝子発現は、内因性CREB生成を増大または減少させることにより、例えば、内在遺伝子を直接または間接的に刺激して増大量または減少量のCREBを生成させることにより、または機能性(生物学的に活性な)CREBを増大または減少させることにより調節され得る。
【0019】
好ましくは、記憶増強因子を同定またはスクリーニングするための方法は、記憶増強因子として作用する候補化合物を同定するために使用される細胞系方法を含む。
【0020】
かかるスクリーニングの一例は、(a)CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞を、試験化合物および最適下限用量のCREBへのシグナル伝達経路を活性化する刺激剤と接触させる工程;(b)試験化合物および刺激剤と接触させた宿主細胞のインジケーター活性を測定する工程;(c)工程(b)で測定されたインジケーター活性を、刺激剤と接触させたが試験化合物とは接触させなかった対照細胞(刺激剤単独と接触させた対照細胞)のインジケーター活性と比較する工程;(d)(1)工程(b)で測定されたインジケーター活性が、工程(c)の対照細胞のインジケーター活性と比べて統計学的に有意に増大している場合、および(2)刺激剤と接触させなかったが試験化合物とは接触させた対照細胞(試験化合物単独と接触させた対照細胞)のインジケーター活性が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞(いずれにも接触させなかった対照細胞)のインジケーター活性と比べて統計学的に有意に異ならない場合、試験化合物を選択する工程;(e)工程(d)で選択された試験化合物の異なる濃度範囲で工程(a)〜(d)を繰り返す工程;ならびに(f)(1)インジケーター活性が、前記試験化合物の該異なる濃度範囲において、刺激剤単独と接触させた対照細胞のインジケーター活性と比べて比例的に統計学的に有意に増大している場合、および(2)該異なる濃度範囲の試験化合物単独が導入された対照細胞のインジケーター活性が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞のインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合、試験化合物を選択する工程、ここで、試験化合物は候補化合物と同定される、を含む。特定の態様において、試験化合物は工程(f)で、(1)インジケーター活性が、試験化合物の異なる濃度の線形範囲において比例的に有意に増大している場合、および(2)該異なる濃度範囲の試験化合物単独が導入された対照細胞のインジケーター活性が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞のインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合に選択される。別の態様において、刺激剤と接触させる前に、宿主細胞を試験化合物と接触させる。
【0021】
代替的な態様において、スクリーニングは、(a)宿主細胞を、試験化合物および最適下限用量のCREBへのシグナル伝達経路を活性化する刺激剤と接触させる工程;(b)試験化合物および刺激剤と接触させた宿主細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現を評価する工程;(c)工程(b)で評価された内因性CREB依存性遺伝子発現を、刺激剤と接触させたが試験化合物とは接触させなかった対照細胞(刺激剤単独と接触させた対照細胞)における内因性CREB依存性遺伝子発現と比較する工程;(d)(1)工程(b)で測定された内因性CREB依存性遺伝子発現が、工程(c)の対照細胞における内因性CREB依存性遺伝子発現と比べて統計学的に有意に増大している場合、および(2)刺激剤と接触させなかったが試験化合物とは接触させた対照細胞(試験化合物単独と接触させた対照細胞)におけるCREB依存性遺伝子発現が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞(いずれにも接触させなかった対照細胞)におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて統計学的に有意に異ならない場合、試験化合物を選択する工程;(e)工程(d)で選択された試験化合物の異なる濃度範囲で工程(a)〜(d)を繰り返す工程;ならびに(f)(1)CREB依存性遺伝子発現が、前記試験化合物の該異なる濃度範囲において、刺激剤単独と接触させた対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて比例的に統計学的に有意に増大している場合、および(2)該異なる濃度範囲の試験化合物単独が導入された対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて有意に異ならない場合、試験化合物を選択する工程、ここで、試験化合物は候補化合物と同定される、を含む。特定の態様において、工程(f)で、(1)CREB依存性遺伝子発現が、試験化合物の異なる濃度の線形範囲において比例的に有意に増大している場合、および(2)該異なる濃度範囲の試験化合物単独が導入された対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現が、刺激剤または試験化合物のいずれとも接触させなかった対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて有意に異ならない場合に試験化合物は選択される。別の態様において、刺激剤と接触させる前に、宿主細胞を試験化合物と接触させる。
【0022】
好ましくは、一次スクリーニングに使用される「CREBへのシグナル伝達経路を活性化する刺激剤」は、CREB機能刺激剤である。CREB機能刺激剤は、CREB経路機能を刺激し得る薬剤である。「CREB経路機能を刺激する」により、内因性CREB生成を刺激することにより、例えば、内在遺伝子を直接または間接的に刺激して増大量のCREBを生成させることにより、または機能性(生物学的に活性な)CREBを増大することによってCREB依存性遺伝子発現を刺激する能力を意味する。例えば、米国特許第5,929,223号;米国特許第6,051,559号;および国際特許出願公開公報番号WO96/11270(1996年4月18日公開)を参照のこと、これらの参考文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。「CREB機能刺激剤」としては、薬物、化合物、イオン化合物、有機化合物、有機リガンド、例えば、補因子、糖類、組換えおよび合成ペプチド、タンパク質、ペプトイド、核酸配列、例えば、遺伝子、核酸産物、ならびに他の分子および組成物が挙げられる。CREB機能刺激剤は、アデニル酸シクラーゼ1(AC1)のアクチベータ(例えば、フォルスコリン);細胞透過性cAWPアナログ(例えば、8-ブロモcAW);限定されないが、アドレナリン作動性レセプターおよびオピオイドレセプターならびにそのリガンド(例えば、イソプロテレノール、フェネチルアミン)などのG-タンパク質結合レセプターに影響を及ぼす薬剤(神経伝達物質);細胞内カルシウム濃度の調節因子(例えば、塩化カリウム、タプシガルジン、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアゴニスト);cAMP分解を引き起こすホスホジエステラーゼのインヒビター(アンタゴニスト)(例えば、ロリプラム(これは、ホスホジエステラーゼ4を阻害する)、イソ-ブト-メト-キサンチン(IBMX)(これは、ホスホジエステラーゼ1および2を阻害する));CREBタンパク質活性化およびCREB依存性遺伝子発現を媒介するタンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼの調節因子(アゴニスト)であり得る。また、CREB機能刺激剤は、中枢神経系(CNS)のCREB機能を増強し得る化合物であり得る。かかる化合物としては、限定されないが、膜安定性および流動性および特定の免疫刺激に影響を及ぼす化合物が挙げられる。
【0023】
CREBを活性化するシグナル伝達経路としては、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路およびタンパク質キナーゼA(PKA)が挙げられる。したがって、CREBへのシグナル伝達経路を活性化する刺激剤としては、MAPK/Erkキナーゼ(MEK)のインヒビターが挙げられる。CREBへのシグナル伝達経路を活性化する他の刺激剤は公知であり、当業者に容易に利用可能である。
【0024】
別の態様において、CREB経路のスクリーニングは、ショウジョウバエを用いたスクリーニング法と置き換えることができ、ここで、前記スクリーニング法は、(a)CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を有するショウジョウバエに、試験化合物を投与する工程;(b)試験化合物が投与されたショウジョウバエにおいてインジケーター活性を評価する工程;および(c)工程(b)で評価されたインジケーター活性を、試験化合物が投与されなかった対照ショウジョウバエにおけるインジケーター活性と比較する工程を含む。試験化合物が投与されなかった対照ショウジョウバエにおけるインジケーター活性と比較したときの、工程(b)におけるインジケーター活性の統計学的有意差により、試験化合物が候補化合物として同定される。
【0025】
CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞は、CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含むDNA構築物を細胞内に導入することにより製造され得る。DNA構築物は細胞内に、当該技術分野で公知の方法(例えば、形質転換、直接取込み、リン酸カルシウム 沈殿、エレクトロポレーション、プロジェクタイルボンバードメント(projectile bombardment)、リポソームの使用)に従って導入され得る。かかる方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(New York: Cold Spring Harbor University Press)(1989);およびAusubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology(New York: John Wiley & Sons)(1998)に、より詳細に記載されている。
【0026】
本明細書で用いる場合、細胞は動物細胞をいう。細胞は幹細胞または体細胞であり得る。適当な動物細胞は、例えば、哺乳動物起源であり得る。哺乳動物細胞の例としては、ヒト(HeLa細胞など)、ウシ、ヒツジ、プタ、齧歯類(例えば、ラット、マウス(胚性幹細胞など)、ウサギなど)およびサル(COS1細胞など)の細胞が挙げられる。好ましくは、細胞は神経起源のものである(神経芽細胞腫、ニューロン、神経幹細胞、グリア細胞など)が挙げられる。また、細胞は胚性細胞、骨髄幹細胞または他の前駆細胞であり得る。細胞が体細胞である場合、細胞は、例えば、上皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、血球(例えば、造血細胞、赤血球、T細胞、B細胞など)、腫瘍細胞、心筋細胞、マクロファージ、樹状細胞、神経細胞(例えば、グリア細胞または星状細胞)、または病原体感染細胞(例えば、細菌、ウイルス、ウイルソイド、寄生虫もしくはプリオンに感染したもの)であり得る。細胞は市販により、もしくは寄託機関から得られ得るか、または動物から直接(生検など)得られ得る。
【0027】
CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含むショウジョウバエは、Belvin et al.,Neuron、22(4):777-787(1999)に記載のようにして作製され得る。
【0028】
CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含むDNA構築物は、例えば、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology(New York: John Wiley & Sons)(1998);およびSambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(New York: Cold Spring Harbor University Press(1989)に記載のようにして製造され得る。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「プロモーター」は、通常構造遺伝子のコード領域の上流(5’)であるDNAの配列をいい、RNAポリメラーゼおよび転写の開始に必要とされ得る他の因子に対して認識部位および結合部位を提供することによりコード領域の発現を制御する。CREプロモーターは当該技術分野で公知である。
【0030】
用語「インジケーター遺伝子」は、本明細書で使用するように、ルシフェラーゼをコードする遺伝子などのその産物が、例えば、酵素反応生成物として比色定量的に容易にアッセイされ得る核酸配列をいう。広く使用されているインジケーター遺伝子の他の例としては、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ(glucoronidase)およびβ-グルコシダーゼなどの酵素;緑色蛍光タンパク質およびホタルルシフェラーゼなどの蛍光分子;ならびにHis3pおよびUra3pなどの栄養素要求性マーカーをコードするものが挙げられる。例えば、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology(New York: John Wiley & Sons,Inc.)、第9章(1998))を参照のこと。
【0031】
試験化合物および/またはCREB機能刺激剤と接触させた細胞(例えば、宿主細胞、神経起源の細胞など)は、試験化合物および/またはCREB機能刺激剤を取り込む。
【0032】
「CREB機能刺激剤の最適下限用量」は、記憶増強因子での誘導によるCREB経路機能のさらなる統計学的に有意な増大が測定され得、この測定が天然の細胞機能に帰属しないか、または天然の細胞性変動の結果としての変動でないような、CREB経路機能を、内因性(基底)レベルより上のレベルに刺激(誘導)するのに必要とされるCREB機能刺激剤の量または用量を意味する。CREB機能刺激剤の最適下限用量は、効果(インジケーター活性、CREB依存性遺伝子発現)の量が用量または濃度に比例する用量または濃度であって、該用量または濃度が変化しても該効果の量が変化しない用量または濃度である。CREB機能刺激剤の最適下限用量は、経験的に決定され、さまざまな要素、例えば、具体的なCREB機能刺激剤の薬力学的特性および接触させる具体的な細胞に応じて異なる。例えば、CREB機能刺激剤の最適下限用量は、(a)CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞の種々の試料を、種々の濃度のCREB機能刺激剤と接触させる工程;および(b)宿主細胞の試料においてインジケーター活性を評価することによりベースラインから最大応答までインジケーター活性に影響を及ぼすのに必要とされるCREB機能刺激剤の濃度範囲を決定する工程により決定され得る。CREB機能刺激剤の最適下限用量は、(1)50%以下の最大インジケーター活性および(2)天然の細胞性変動より大きいインジケーター活性をもたらす任意の濃度である。CREB機能刺激剤の最適下限用量の決定は、充分、当業者の能力の範囲内である。「CREBへのシグナル伝達経路を活性化する刺激剤の最適下限用量」は、CREBへのシグナル伝達経路を刺激(誘導)するのに必要とされる刺激剤の量または用量を意味する。
【0033】
「試験化合物の異なる濃度範囲」は、試験化合物の2つ以上(すなわち、2、3、4、5など)の異なる濃度を意味する。選択される濃度範囲は、一般に、工程(a)の一次スクリーニングでの試験化合物の濃度の両側である(flank)。「線形範囲の(異なる)濃度」は、効果(インジケーター活性、CREB依存性遺伝子発現)が濃度とともに増大する場合の濃度であって、該効果が濃度の変化とともに変化しなくなる前の濃度を意味する。濃度範囲の選択は、充分、当業者の能力の範囲内である。
【0034】
「機能性(生物学的に活性な)CREB」は、タンパク質のDNA結合能、リン酸化状態、タンパク質安定性、細胞内局在などを含むことを意味する。
【0035】
「CREB依存性遺伝子発現」はまた、本明細書において、「CRE媒介性遺伝子発現」をいう。CREB依存性遺伝子発現は、当該技術分野で公知の方法(例えば、ノザンブロット、ウエスタンブロット)によって測定され得る。かかる方法は、例えば、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology(New York: John Wiley & Sons)(1998);およびSambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(New York: Cold Spring Harbor University Press(1989)に、より詳細に記載されている。
【0036】
「内因性CRE媒介性遺伝子」は、本明細書において「内因性CREB依存性遺伝子」とも称する。かかる遺伝子は当該技術分野で公知であり、例えば、c-fos、プロダイノルフィン、tPAおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)(Barco,A. et al.,Cell、108(5):689-703(2002))が挙げられる。また、CRE媒介性遺伝子は、当該技術分野で公知の容易に利用可能な方法を使用し、当業者によって同定され得る(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology(New York: John Wiley & Sons)(1998);およびSambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(New York: Cold Spring Harbor University Press(1989)参照のこと)。
【0037】
本明細書において企図される方法は、さらに、CREB経路スクリーニングにおいて同定された候補化合物と神経起源の宿主細胞の使用などの、さらなるスクリーニングまたは二次スクリーニングの使用を含む。一態様において、CREB経路スクリーニングにおける宿主細胞は、神経芽細胞腫細胞などの増殖中の細胞であり、二次スクリーニングにおける細胞は、非増殖性の神経起源の分化細胞(ニューロン(例えば、一次海馬細胞)およびグリア細胞など)である。特定の態様において、一次スクリーニングにおけるCRE媒介性遺伝子は、CRE媒介性インジケーター遺伝子(CRE媒介性導入遺伝子)であり、二次スクリーニングにおけるCRE媒介性遺伝子は、内因性CRE媒介性遺伝子である。
【0038】
レポーター系を含む宿主細胞内のCREB経路を活性化することが観察された化合物を、「活性確認化合物」または「候補化合物」と称する。候補化合物は、例えば、(a)ニューロン(特に、海馬細胞)を活性確認化合物(または候補化合物)と接触させ、それにより試料をもたらす工程;(b)試料を最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させる工程;(c)活性確認化合物(または候補化合物)およびCREB機能刺激剤と接触させたニューロンにおける内因性CREB依存性遺伝子発現を評価する工程;ならびに(d)工程(c)で評価された内因性CREB依存性遺伝子発現を、CREB機能刺激剤と接触させたが活性確認化合物(または候補化合物)とは接触させなかった対照ニューロンにおける内因性CREB依存性遺伝子発現と比較する工程により、内因性CRE媒介性遺伝子発現(内因性CREB依存性遺伝子発現)に対する効果について評定または評価され得る。対照細胞におけるCREB依存性遺伝子発現と比較した工程(c)で評価されたCREB依存性遺伝子発現における統計学的有意差により、活性確認化合物(または候補化合物)がCREB依存性遺伝子発現に対して効果を有し、確認候補化合物であると同定される。好ましくは、CREB機能刺激剤または活性確認化合物(候補化合物)のいずれとも接触させなかった対照細胞(いずれにも接触させなかった対照細胞)におけるCREB依存性遺伝子発現と比べて、CREB機能刺激剤と接触させなかったが活性確認化合物(または候補化合物) とは接触させた対照細胞(活性確認化合物(または候補化合物)単独と接触させた対照細胞)におけるCREB依存性発現において有意差は得られない。
【0039】
本明細書に記載のように、いくつかの種類に由来する確認候補化合物および記憶増強因子を、記憶形成のインビボモデルへと進める。
【0040】
CREB経路機能を増大する化合物の能力について評価または評定される化合物、例えば薬剤、薬物、化合物、イオン化合物、有機化合物、補因子を含む有機リガンド、多糖類、組換えおよび合成ペプチド、タンパク質、ペプトイド、遺伝子、核酸産物を含む核酸配列、ならびに他の分子および組成物を個々にスクリーニングし得るか、または本発明の方法に従って、CREB経路機能を増大する能力について1つ以上の化合物を同時に試験し得る。化合物の混合物を試験する場合、記載される方法により選択された化合物は、適切な方法(例えば、クロマトグラフィー、配列決定、PCR)により分離(適切な場合)および同定され得る。試験試料中にCREB経路機能を増大する能力を有する1つ以上の化合物が存在することも、これらの方法により決定され得る。CREB経路機能を増大する能力についてスクリーニングされる化合物は、一般的に、約10-9M〜約10-3Mの濃度である。
【0041】
コンビナトリアル化学合成または他の方法により製造される化合物(例えば、有機化合物、組換えまたは合成ペプチド、ペプトイド、核酸)の大きなコンビナトリアルライブラリーを試験し得る(例えば、Zuckerman, R. N. et al., J. Med. Chem., 37:2678-2685 (1994)および本明細書に引用される参考文献参照;また、Ohlmeyer, M. H. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:10922-10926 (1993)およびタグ付加化合物に関するDeWitt, S. H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909-6913 (1993);Rutter, W. J. et al. 米国特許第5,010,175号;Huebner, V. D. et al., 米国特許第5,182,366号;ならびにGeysen, H. M., 米国特許第4,833,092号参照)。これらの参考文献の教示は、参照により本明細書に援用される。コンビナトリアルライブラリーから選択された化合物が特有のタグを保有する場合、クロマトグラフィー法による個々の化合物の同定が可能である。
【0042】
化学ライブラリー、微生物培養液およびファージディスプレイライブラリーも、CREB経路機能を増強し得る1つ以上の化合物の存在について、本発明の方法に従って試験(スクリーニング)し得る。
【0043】
確認された候補化合物はまた、神経突起伸長を評価するために評定される。
【0044】
神経突起伸長アッセイ
スクリーニング方法の別の工程には、CREB経路活性を示して神経突起伸長を誘導する、活性確認化合物または候補化合物の能力を決定することが含まれる。当該技術分野には、神経突起細胞突起の長さの増大を測定する種々の神経突起伸長アッセイが知られている。例えば、全体において参照により本明細書に援用される米国特許第7,282,340号および第7,452,863号には、神経突起伸長アッセイが記載されている。該アッセイには、種々の細胞型、例えばラット副腎髄質の褐色細胞腫由来のPC12細胞を使用し得る。PC12細胞は、神経分化のモデル系として有用であることが知られている。一態様において、神経突起伸長アッセイには、NGFなどの特定の化合物への曝露の際に、長軸索様突起を生じることが知られている神経芽腫細胞が使用される。
【0045】
長期記憶形成
CREB経路活性を増大して神経突起伸長を誘導するとして同定された化合物は、次いで長期記憶形成に影響を及ぼす能力について試験される。文脈的恐怖条件付けは、LTM形成を評価する方法の一例である。典型的に、長期記憶形成試験は、動物モデルを使用して行われ、(a)上述のアッセイにおいて同定された有効量の確認候補化合物を動物(例えば、ヒト、他の哺乳動物、脊椎動物または無脊椎動物)に投与する工程;(b)確認候補化合物を投与された動物を、動物において長期記憶形成を生じるのに適した条件下で訓練する工程;(c)工程(b)で訓練された動物における長期記憶形成を評価する工程;および(d)工程(c)で評価された長期記憶形成を、確認候補化合物が投与されていない対照動物で生じた長期記憶形成と比較する工程を含む。対照動物における評価された長期記憶形成と比較して、確認候補化合物で処理された動物で評価された長期記憶形成の増強が示される場合、確認候補化合物を記憶増強因子として同定する。他の認知機能不全について、行動方法(モデル)を使用した、同様のプロトコルのLTMスクリーニングが利用可能である。
【0046】
これらのアッセイの組み合わせにより、神経突起伸長の刺激およびCREB経路への影響の両方を行う化合物の同定が可能になる。これらのシステムの両方に効果を示し得る化合物は、正常被験体および種々の記憶障害に苦しむ被験体の記憶を改善する。
【0047】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1
CREBアッセイ
CREB活性アッセイを行った。標準的な分子生物学的技術を使用して、Neuro2A細胞をCREB発現ベクターまたは対照ベクターでトランスフェクトした。フォルスコリン(PKAアクチベーター)の存在または非存在下で、CRE-ルシフェラーゼ活性をモニタリングした。この実験のデータを図1Aに示す。CREB過剰発現により、CRE-レポーター構築物の活性化の増大がもたらされた(群当たりn=3、*はp<0.05を示す)。従って、CRE-ルシフェラーゼレポーターにより、CREB経路の活性化が測定される。図1BにCREB活性化におけるロリプラムの効果を示す。Neuro2A細胞をPDE4インヒビターロリプラムで処理して、CRE-ルシフェラーゼ活性化によりCREB活性化をモニタリングした。ロリプラムはCREB依存的転写を活性化するので、CREB増強因子として同定される(群当たりn=8、p<0.001)。
【0049】
CREB活性化におけるロリプラムの効果を0.5μMフォルスコリンの存在下でアッセイした。Neuro2A細胞をPDE4インヒビターロリプラムで処理して、0.5μMフォルスコリンの存在下でCRE-ルシフェラーゼ(liciferase)活性化によりCREB活性化をモニタリングした。再度、CREB過剰発現(図1A)と同様に、ロリプラムはCREB依存的転写を活性化する(ビヒクルについてn=7、ロリプラムについてn=8、p<0.001)。これらのデータによりロリプラムをCREB増強因子として同定する。
【0050】
実施例2
CREB増強およびLTM
長期記憶(LTM)におけるCREB増強化合物の投与の効果を試験した。
【0051】
生化学実験および行動実験に、若い成体(10〜12週齢)C57BL/6雄マウス(Taconic, NY)を使用した。到着した際に、マウスをグループに分けて、標準的な実験室ケージで12:12時間の明暗周期を維持して収容した(5マウス)。実験は常に周期の明期の間に行った。実験開始の前日、マウスをそれぞれ個別のケージで単独で収容し、実験の終わりまでそのままにした。訓練時および試験時以外は、マウスは自由に餌および水にありつけた。
【0052】
文脈的記憶を評価するために、標準的な文脈的恐怖条件付け課題(Bourtchuladze, et al., Cell 79(1):59-68(1994))を使用した。訓練の日、2秒間の0.5mAフットショックの無条件刺激(US)の開始2分前に、マウスを条件付けチャンバー(Med Associates, Inc., VA)に移した。ショックの間に1分間の試行間インターバルをおいてUSを繰り返した。最後の訓練試行の後、条件付けチャンバー中にマウスをさらに30秒間放置し、次いでそれぞれのホームケージに戻した。訓練の1または4日後、記憶保持を試験した。結果は両方の時点で同じであった。マウスを同じ訓練チャンバーに移して、行動の完全な欠如で規定される硬直(freezing)行動をスコアリンして条件付けを評価した。総試験時間は3分間持続した。それぞれの実験の進行を撮影した。それぞれの実験主題の後、実験装置を75%エタノール、水で完全に洗浄して乾燥し、換気した。
【0053】
1、2、5または10回試行の文脈的条件付けでマウスを訓練した。4日後に、硬直行動をスコアリングして文脈的記憶を試験した。データを図2Aに示す。1回試行後の記憶と比較した場合、多数回試行の訓練は、文脈的記憶を有意に促進する。最大記憶は5回訓練試行で達成された。次に、マウスに弱い訓練(2回試行)を与えて最大以下の記憶を誘導したか、または強い訓練(5回試行)を与えて最大記憶を誘導した。訓練の直後、海馬にCREB増強因子ロリプラムまたはビヒクルを注射した。訓練の4日後に硬直行動をスコアリングして文脈的記憶を試験した。CREB増強因子ロリプラムは、弱い訓練後、用量依存的に最大以下文脈的記憶を促進するが、強い訓練後の最大記憶には影響を及ぼさない。従って、CREB増強は、最適下限訓練後の記憶形成の促進に十分であるが、最大記憶には影響を及ぼさない。
【0054】
実施例3
CREB増強因子および神経突起伸長
NS1細胞の神経突起伸長におけるCREB増強因子の効果をアッセイした。インビトロ試験(NS1細胞における神経突起伸長)には、オンターゲットsiRNA(Dharmacon Inc., Lafayette, USA)を使用した。Dharmafect 3を使用して、製造業者の説明書に従いNeuroscreen 1(NS1)細胞(Cellomics Inc.)をトランスフェクトした。
【0055】
Neuroscreen 1(NS1)細胞をコラーゲンI型コート75cm2プラスチックフラスコ(Biocoat, Becton Dickinson)上で、湿潤インキュベーター中、37℃、5% CO2で培養した。細胞を、10%熱不活性化ウマ血清(Invitrogen)、5%熱不活性化ウシ胎仔血清(Cellgro)、および2mM L-グルタミン(Cambrex)を添加したRPMI完全細胞培養倍地(Cambrex)中で培養した。拡大のために、細胞をトリプシン処理し、80%コンフルエントで分割した。2〜3日おきに細胞培養培地を交換した。
【0056】
NS1細胞を継代したものとして回収し、Coulter counter(Becton Dickinson Coulter Z1)を使用して計数した。細胞を、96ウェルコラーゲンIコートプレートに、ウェル当たり2000細胞の密度で200μlの容量で播種した。RPMI培地に200ng/ml神経成長因子(NGFβ、Sigma)を添加した。NS1細胞を72時間インキュベートして、神経表現型に分化させた。次いで、NGFβを50ng/mlに希釈して、それぞれ指示用量のsiRNAまたは化合物で細胞を処理した。
【0057】
神経突起伸長アッセイは、Cellomics Arrayscan II Vti HCSスキャナーを使用して行った。HitKitTM HCS試薬キット(Cellomics)を使用して、製造業者の説明書に従って細胞を染色した。該アッセイは、神経突起および神経細胞体の両方を特異的に標識することが検証された抗体を使用する免疫蛍光に基づいている。簡潔に、細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定し、核をヘキスト色素で染色した。次いで、細胞を神経突起伸長バッファで洗浄し、神経突起を、Cellomics専売の神経突起伸長高含有スクリーニング用の一次抗体で染色した。一次抗体とのインキュベーションの1時間後、再度細胞を洗浄して、蛍光標識した二次抗体溶液と1時間インキュベートした。抗体染色した96ウェルプレートをスキャンまで、4℃、暗所に保存した。Cellomics ArrayScan II Vti HCSスキャナーを使用してプレートをスキャンした。神経突起伸長アッセイには、スキャンを実行するための2つのチャンネルを使用する。チャンネル1は、ヘキスト色素を検出し、細胞の同定および自動フォーカスのためのソフトウェアで使用される。チャンネル2は、二次抗体のFITC蛍光を検出し、神経突起に関して生成された全てのデータを計算するためのソフトウェアで使用される。
【0058】
実験の第1の組において、NS1細胞における神経突起伸長についてのPDE4d(ロリプラムの標的)に対するsiRNAの効果を試験した。NS1細胞を、ビヒクル単独(Dharmafect 3)、非標的化siRNA、またはPDE4d siRNAで処理し、48時間後に神経突起の長さを測定した。これらの実験のデータを図3Aに示す。ビヒクル単独と比較した場合、PDE4d siRNAで処理したNS1細胞は有意に長い神経突起を有した。対照的に、非標的化対照siRNAは神経突起伸長に効果を示さなかった。これらの所見は、CREB増強因子ロリプラムの標的であるPDE4dのノックダウンにより神経突起伸長が促進されることを示す。
【0059】
実験の次の組では、NS細胞における神経突起伸長に対するCREB増強因子ロリプラムの効果を試験した。NS1細胞を、ビヒクルまたは5μMフォルスコリンの存在下で増加用量のロリプラムで処理した。結果を図3Bに示す。NS1細胞における神経突起の長さの増加で測定した場合に、ロリプラムは、用量依存的に神経突起伸長を増加させる。
【0060】
NS1細胞における神経突起伸長についてのCREB増強因子ロリプラムの効果。NS1細胞を、ビヒクルまたは5μMフォルスコリンの存在下で増加用量のロリプラムで処理した。NS1細胞における神経突起分岐点の増加で測定した場合、ロリプラムは、用量依存的に神経突起伸長を増加させる。全ての実験について、8回の実験反復ウェル(それぞれ少なくとも100個のNS1細胞の神経突起の長さを測定)の平均+/-SEMを示す。
【0061】
実施例4
マウス海馬ニューロンにおける神経突起伸長および海馬記憶についてのCREB増強因子の効果
海馬内のロリプラム注射またはGpr12 siRNA処理のために、マウスを20mg/kgアバーティンで麻酔して、33ゲージガイドのカニューレを背側海馬に両側から埋め込んだ(座標:A=-1.8mm、L= 1.2mmの深さ+/-1.5mm)(Franklin and Paxinos, 1997)。手術から回復して5〜9日後、動物に薬物またはビヒクル対照を注射した。2μlの薬物またはビヒクルをそれぞれ、ポリスチレンチューブでマイクロシリンジに連結された注入カニューレを通して海馬に注射した。約2分かけて完全注入法を行い、ストレスを最小限にするために動物を慎重に扱った。
【0062】
HT2175をビヒクルに溶解して、訓練の20分前に、指示用量で腹腔内(I.P.)投与した。対照動物にはビヒクルのみを与えた。それぞれの訓練および薬物注射手順について、実験的にナイーブな群の動物を使用した。ロリプラムの海馬内注射のために、1μLの指示用量のロリプラム(PBS中0.1%のDMSOに溶解)を行動訓練の直後に注射した。
【0063】
文脈的記憶を評価するために、標準化された文脈的恐怖条件付け課題(Bourtchuladze, et al., Cell 79(1):59-68(1994))を使用した。訓練日、無条件刺激(US)、2秒間の0.5mAフットショックの開始の2分前に、マウスを条件付けチャンバー(Med Associates, Inc., VA)に移した。ショックの間に1分間の試行間インターバルをおいて、USを繰り返した。最後の訓練試行の後、さらに30秒間マウスを条件付けチャンバー内に残し、その後それぞれのホームケージに戻した。訓練の1または4日後に記憶保持を試験した。結果は両方の時点で同じであった。マウスを同じ訓練チャンバーに移して、行動の完全な欠如で規定される硬直行動をスコアリングして、条件付けを評価した。総試験時間は3分間持続した。それぞれの実験の進行を撮影した。各実験主題の後、実験装置を75%エタノール、水で完全に洗浄し、乾燥させ、換気した。
【0064】
全ての行動実験はバランスのとれた様式で設計し、実施した。つまり、(i)それぞれの実験条件(例えば、具体的用量効果)について、本発明者らは等数の実験マウスおよび対照マウスを使用した:(ii)それぞれの実験条件は数回繰り返し、繰り返し日数を加えて最終被験体数とした。それぞれの期間の進行を撮影した。それぞれの実験において、実験者には、訓練および試験中の被験体の処理を知らせずに(盲目)行った。ソフトウェアパッケージ(StatView 5.0.1; SAS Institute, Inc)を使用して、スチューデント非対称t検定でデータを解析した。生化学データはANOVAで解析した。示される以外は、本文および図面中の全ての値は、平均+SEMで表す。
【0065】
図4A〜Bには、マウス海馬ニューロンの神経突起伸長および海馬記憶についてのHT-2175および新規のCREB増強因子の効果を示す。図Aには、海馬ニューロンにおける神経突起伸長についてのロリプラムおよびHT-2175の効果を示す。マウス海馬ニューロンを3日間培養して、次いでHT-2175またはロリプラムで24時間処理した。神経突起当たりの分岐点の有意な増強により測定した場合、HT-2175およびロリプラムは、神経突起伸長を促進する。8回の実験反復ウェル(それぞれ少なくとも100個のニューロンの神経突起の長さを測定)の平均+/-SEMを示す。図4Bには、弱い行動訓練(2回試行)で誘導される文脈的記憶についてのHT-2175の効果を示す。マウスをHT-2175またはビヒクルで処理し、次いで文脈的条件付けで訓練した。マウス海馬ニューロンにおける神経突起伸長についてのHT-2175の効果で予想されたように、HT-2175は、用量依存的に文脈的記憶を促進する。
【0066】
実施例5
神経突起伸長および記憶についてのGpr12 siRNAの効果
インビボsiRNA注射を使用して、神経突起伸長および記憶についてのGpr12 siRNAの効果を試験した。マウスCNSにおけるGpr12機能の評価のために、インビボ等級のsiSTABLE siRNA(Dharmacon Inc., Lafayette, USA)を使用した。siRNAを化学的に修飾して、安定性を高めた。21塩基のsiSTABLE非標的化siRNAを対照として使用した。最初の試験は、Neuro2a細胞を使用して、bDNAアッセイ(QuantiGene bDNAアッセイキット、Bayer)インビトロでGpr12に対するいくつかの未修飾(siGENOME)siRNAを使用して実施した。siRNAは、多成分合理的設計アルゴリズム(Reynolds et al., 2004)を使用して設計し、BLASTサーチによりGpr12に対する特異性について制御した。さらなるインビボ特徴づけのために、以下のsiRNA:
Gpr12 siRNA2センス鎖GAGGCACGCCCAUCAGAUAUU (配列番号:1);
Gpr12 siRNA2アンチセンス鎖UAUCUGAUGGGCGUGCCUCUU (配列番号:2);
非標的化siRNAセンス鎖UAGCGACUAAACACAUCAAUU (配列番号:3);および
非標的化siRNAアンチセンス鎖UUGAUGUGUUUAGUCGCUAUU (配列番号:4)
を選択した。
【0067】
Gpr12に対するsiSTABLE siRNAおよび非標的化対照siRNAを5%グルコース中1μl当たり0.5μgに希釈して、6当量の22kDa直鎖ポリエチレンイミン(Fermentas)と混合した。室温で10分のインキュベーション後、ポリエチレンチューブでマイクロシリンジに連結された注入カニューレを通して、2μlをそれぞれの海馬に注射した。約2分かけて完全注入法を行い、ストレスを最小限にするために動物を慎重に扱った。3日かけて、全部で3回のsiRNAの注入を行った(lμg siRNA/海馬/日)。
【0068】
NS1細胞を、48時間、Gpr12 siRNAまたは非標的化対照siRNAで処理した。神経突起の長さを、ビヒクル単独で処理した細胞および未処理細胞と比較した。神経突起の長さの増加で測定した場合、Gpr12 siRNAは、神経突起伸長を有意に増強した。非標的化対照siRNAまたはビヒクル単独は、神経突起の長さに影響を及ぼさなかった。結果を図5Aに示す。8回の実験反復ウェル(それぞれ少なくとも100個のNS1細胞の神経突起の長さを測定)の平均+/-SEMを示す。図5Bには、分岐点についてのGpr12 siRNAの効果を示す。NS1細胞を、48時間、Gpr12 siRNAまたは非標的化対照siRNAで処理した。神経突起の長さを、ビヒクル単独で処理した細胞および未処理細胞と比較した。分岐点の数の増加で測定した場合、Gpr12 siRNAは、神経突起伸長を有意に増強した。非標的化対照siRNAまたはビヒクル単独は分岐点に影響を及ぼさなかった。8回の実験反復ウェル(それぞれ少なくとも100個のNS1細胞の神経突起の長さを測定)の平均+/-SEMを示す。図5Cには、記憶についてのGpr12 siRNAの効果を示す。マウスの海馬にGpr12 siRNA(n=20)または対照siRNA(n=19)を繰り返し注射し、次いで弱い訓練パラダイム(2回試行)を使用して文脈的恐怖条件付けで訓練した。24時間後に硬直行動をスコアリングして記憶を評価した。神経突起伸長についての効果から予測されるように、Gpr12 siRNAは文脈的記憶を促進する。
【0069】
実施例6
神経突起伸長および文脈的記憶についてのGalR3受容体アンタゴニストHT-2157の効果
薬物投与当たり8回の実験反復およびビヒクル当たり16回の実験反復の平均± semを示す。それぞれに実験について少なくとも100個の細胞の神経突起伸長を測定した。図6Aには、NS1細胞における神経突起伸長についてのHT-2157の効果を定量したデータを示す。CREB増強因子ロリプラムと同様に、細胞当たりの神経突起の全長の増加で示される場合、HT-2157は、神経突起伸長を促進する。図6Bには、NS1細胞における神経突起伸長についてのHT-2157の効果を定量したデータを示す。樹状突起当たりの分岐点の数の増加で示される場合、HT-2157は神経突起伸長を促進する。図6Cには、マウス海馬ニューロンにおける神経突起伸長についてのHT-2157の効果を定量したデータを示す。分岐点の数の増加で示される場合、HT-2157は、用量依存的に神経突起伸長を促進する。図6Dには、文脈的記憶についてのHT-2157の効果に関するデータが示されている。指示用量のHT-2157または対照ビヒクルでマウスを処理し、2回の試行で文脈的恐怖条件付けにおいて訓練した。神経突起伸長アッセイから予想されたように、HT-2157は、用量依存的に文脈的記憶を促進する。
【0070】
実施例7
NS1細胞における神経突起伸長についてのGABA受容体およびモノアミンオキシダーゼBインヒビターの効果
凍結保存されたNS1ニューロンをオタワ大学からから購入した。ニューロンを、2% B27、500μM L-グルタミンおよび1mMピルビン酸を添加した血清非含有Neurobasal培地中、ポリDリシンコート96ウェルプレート上で培養した。播種密度はウェル当たり20,000ニューロンとした。神経突起伸長アッセイのために、ニューロンを2〜3日間培養し、次いでロリプラム、HT-2175、またはHT-2157それぞれで24時間処理した。
【0071】
図7Aには、NS1細胞における神経突起の長さについてのインバースアゴニストHT-1974(GABA受容体のα5サブユニットに特異的)の効果の定量を示す。0.03μMの濃度のHT-1974での神経突起の長さの増加で示される場合、HT-1974は、神経突起伸長を促進する。図7Bには、NS1細胞における神経突起の長さについてのモノアミンオキシダーゼインヒビターHT-1060の効果の定量を示す。神経突起の長さの増加で示される場合、HT-1060は、神経突起伸長を促進する。薬物投与およびビヒクル(0.2% DMSO)当たり2回の実験反復の平均±semを示す。それぞれの実験反復について、少なくとも250個の細胞の神経突起伸長を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライブラリーから、神経突起伸長を誘導し、CREB経路機能も増強する候補化合物を選択する工程、ここで神経突起伸長を誘導し、CREB経路機能を増強する化合物を、記憶を増強する化合物として同定する、
を含む、記憶を増強する化合物を同定する方法。
【請求項2】
神経突起伸長を誘導する候補化合物を選択する工程が、
a)神経突起宿主細胞に候補化合物または対照化合物のいずれかを提供する工程;
b)候補化合物および対照化合物に応答した細胞増殖を測定する工程;ならびに
c)候補化合物と対照化合物の間の細胞増殖の差を観察する工程;ここで細胞増殖に正の変化をもたらす候補化合物を、神経突起伸長を増強する化合物として同定する、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
神経突起宿主細胞が、Neuroscreen 1細胞である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
神経突起宿主細胞が、マウス海馬ニューロンである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
神経突起宿主細胞が、神経芽腫Neuro2a細胞である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
宿主細胞が、CREBレポーター構築物をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
候補化合物が、CREBレポーター構築物の上方制御も行う、請求項6記載の方法。
【請求項8】
CREB経路機能を増強する候補化合物を選択する工程が、
a)CREプロモーターに作動可能に連結されたインジケーター遺伝子を含む宿主細胞を候補化合物と接触させ、それにより試験試料を生成する工程;
b)試験試料を最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させる工程;
c)前記試験化合物および前記CREB機能刺激剤と接触された前記宿主細胞におけるインジケーター活性を測定する工程;
d)インジケーター活性を、前記CREB機能刺激剤と接触され、前記試験化合物と接触されていない対照細胞におけるインジケーター活性と比較する工程;ならびに
e) 1)工程c)で測定されたインジケーター活性が、前記CREB機能刺激剤と接触され、前記試験化合物と接触されていない前記対照細胞におけるインジケーター活性と比べて高い場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触されておらず、前記試験化合物と接触された対照細胞におけるインジケーター活性が、前記CREB機能刺激剤と接触されておらず、前記試験化合物と接触されていない対照細胞におけるインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合、前記試験化合物を選択する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
さらに、
工程e)で選択された前記試験化合物の異なる濃度範囲で工程a)〜e)を繰り返す工程;
g) 1)前記試験化合物について異なる濃度範囲におけるインジケーター活性が、前記CREB機能刺激剤と接触され、前記試験化合物と接触されていない前記対照細胞におけるインジケーター活性と比べて高い場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触されておらず、前記異なる濃度範囲の試験化合物が導入された対照細胞におけるインジケーター活性が、前記CREB経路機能刺激剤と接触されておらず、前記試験化合物と接触されていない対照細胞におけるインジケーター活性と比べて有意に異ならない場合、前記試験化合物を選択し、それにより候補化合物を選択する工程;
h)神経起源の細胞を、前記工程g)で選択された候補化合物および最適下限用量のCREB機能刺激剤と接触させる工程;
i)前記候補化合物および前記CREB機能刺激剤と接触された細胞における内因性CREB依存的遺伝子発現を評価する工程;
j)工程i)で評価された内因性CREB依存的遺伝子発現を、前記CREB機能刺激剤と接触され、前記候補化合物と接触されていない対照細胞における内因性CREB依存的遺伝子発現と比較する工程;
k) 1)工程i)において評価された内因性CREB依存的遺伝子発現が、前記CREB機能刺激剤と接触され、前記候補化合物と接触されていない対照細胞における内因性CREB依存的遺伝子発現と比べて高い場合、および2)前記CREB機能刺激剤と接触されておらず、前記候補化合物と接触された対照細胞における内因性CREB依存的遺伝子発現が、前記CREB機能刺激剤と接触されておらず、前記候補化合物と接触されていない対照細胞におけるCREB依存的遺伝子発現と比べて有意に異ならない場合、前記候補化合物を選択して、それにより確認候補化合物を選択する工程;
l)前記工程k)で選択された確認候補化合物を動物に投与する工程;
m)前記確認候補化合物を投与された動物を、前記動物において長期記憶形成を生じるのに適した条件下で訓練する工程;
n)前記工程m)で訓練された動物における長期記憶形成を評価する工程;ならびに
o)工程n)で評価された長期記憶形成を、前記確認候補化合物が投与されていない対照動物において生じた長期記憶形成と比較する工程
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記宿主細胞がヒト神経芽腫細胞であり、前記神経起源の細胞がニューロンである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ニューロンが一次海馬細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記インジケーター遺伝子がルシフェラーゼをコードする、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記CREB機能刺激剤がフォルスコリンである、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記工程e)で選択された試験化合物の4種類の異なる濃度範囲で工程a)〜e)を繰り返す、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記動物が哺乳動物である、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511621(P2011−511621A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540931(P2010−540931)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/088477
【国際公開番号】WO2009/086532
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508171860)ヘリコン セラピューティクス,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】