説明

記憶装置及び履歴情報書き込み方法

【課題】出荷された後の履歴情報の秘匿性を保ちつつ履歴情報の管理を容易に行うこと。
【解決手段】ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置は、履歴情報を記憶領域の一部に書き込むデータ書き込み手段と、記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするアクセス不可手段と、ユーザアクセス不可とした一部の領域をアクセス可能にする開放手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記憶する記憶装置及びその履歴情報書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等のデータを記憶する記憶装置が知られている。このような記憶装置の製造元は、工場における検査結果及び出荷日等の履歴情報を記憶装置毎にデータベースに保管しておき、保守等の際に必要に応じて履歴情報を参照している。
【0003】
また、記憶装置の製造過程において、工程進捗情報をサーバで管理するとともに記憶装置の管理領域に書き込み、更に、これらの工程進捗情報を利用することにより、記憶装置の品質管理の効率化を図る技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−54549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造元から出荷された記憶装置、又は記憶装置を含む情報処理装置が販売された後、市場から返却或いは回収等によって記憶装置の戻入があった場合、管理者は既述の履歴情報のデータベースをサーチして保守作業に必要な情報を取得する必要がある。このサーチ作業は管理者に負担をかけるとともに、情報を入手するまでに時間を要する原因になっていた。特に、製造元で情報の種類毎に管理する部門が異なる場合には、必要な情報を管理する部門を特定するための時間もかかるため、情報を入手するまでの時間も余計にかかってしまっていた。
【0006】
また、特許文献1記載の技術は製造工程における工程進捗情報を管理するものであり、記憶装置の戻入があった場合に、履歴情報のデータベースをサーチする負担を軽減するものではない。
【0007】
ところで履歴情報を直接記憶装置に書き込めば記憶装置から履歴情報を読み出すことが可能になり、履歴情報のデータベースをサーチする負担を無くすことができるとも考えられる。
【0008】
しかしながら、履歴情報は製造元にとって極秘の情報であり、履歴情報の内容が記憶装置を使用するユーザに知られてしまうことを防止する必要がある。このように履歴情報の秘匿性の観点から記憶装置に履歴情報を書き込むことはできなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、履歴情報の管理を容易にしつつ履歴情報の秘匿性を保つことができる記憶装置及び履歴情報書き込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置であって、履歴情報を記憶領域の一部に書き込むデータ書き込み手段と、当該記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするアクセス不可手段と、ユーザアクセス不可とした一部の領域をアクセス可能にする開放手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、履歴情報の管理を容易にしつつ履歴情報の秘匿性を保つことができる記憶装置及び履歴情報書き込み方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る記憶装置の一例を示す図である。
【図2】同実施の形態に係る出荷前の記憶装置の記憶領域を示す図である。
【図3】同実施の形態に係る出荷後の記憶装置の記憶領域を示す図である。
【図4】同実施の形態に係る履歴情報の一例を示す図である。
【図5】同実施の形態に係る出荷前に記憶装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図6】同実施の形態に係る戻入後に記憶装置が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、記憶装置10の一例を示す図である。記憶装置10は、例えば、HDD又はSSDであり、制御部11及び記憶領域12を有している。また、記憶装置10は上位装置(図示を省略する。)と通信可能に接続できるようになっている。なお、記憶装置10の他の構成については従来技術と同様であるため図示を及び詳細な説明を省略する。
【0014】
制御部11は、上位装置からの指示に基づいてユーザが使用できる記憶領域を制限する処理、データを書き込む処理及びデータを読み出す処理等を制御する。
【0015】
制御部11の記憶領域12を制限する処理は、例えばATA(Advanced Technology Attachment)デバイスの場合は、Set Max Addressコマンドを使用し、SCSI(
Small Computer System Interface)デバイスの場合、Mode Selectコマンドを使用する。
これらのコマンドを使用して、論理ブロックアドレスの上限値(MAX LBA)を設定した場合、物理的な実容量よりも少ない値がMAX LBAとなり、ユーザが使用できる記憶領域が制限される。
【0016】
また、物理的な実容量とMAX LBAとの差分の領域を、例えばHPA(Host Protected Area)13と称する。このHPA13は、上位装置がコマンドでアクセスしてもエラー応答する(アクセス不可手段)。したがって、記憶装置10を使用するユーザに対してHPA13に記憶される情報は秘匿される。
【0017】
例えば、図2示すように、物理的な記憶容量(ユーザデータ領域)12が600,000,123,392バイトの記憶装置に対して、123,392バイト分のHPA13を生成するように、上位装置から既述のコマンドが送信された場合、ユーザが使用できる記憶装置の記憶容量(ユーザデータ領域)は、図3に示すように、600,000,000,000バイトとなる。HPA13の記憶容量は指示に従って123,392バイトになり、この領域には、ユーザはアクセスできないようになる。
【0018】
また、制御部11は、上位装置からの指示(例えば、Set Max Extコマンド)に基づいて、既述のように生成したHPA13を開放することが可能である。このようにHPA13が開放された場合、記憶装置10のデフォルトの記憶容量、例えば、図2及び図3に示した記憶装置10の例では、ユーザデータ領域の記憶容量が600,000,000,000バイトから600,000,123,392バイトに戻る。したがって、上位装置は、HPA13であった領域へアクセスできるようになる。
【0019】
次に、既述のようにHPA13を設定する前に、記憶装置10に上位装置から書き込まれる履歴情報20について説明する。
【0020】
図4は、履歴情報20の一例を示す図である。履歴情報20は、製品基本情報21、出荷検査情報22、保守情報23及び詳細情報24を有している。製品基本情報21及び出荷検査情報22は記憶装置10が市場に出荷される前に書き込まれる情報であり、保守情報23は保守が行われた後に書き込まれる出荷後情報である。詳細情報は、記憶装置10の管理者が任意に書き込むことができる情報である。
【0021】
製品基本情報21は、記憶装置10に関する固有の情報であり、図4に示すように、例えば、Nコード、Fコード、トレーサビリティコード、シリアルナンバを示す情報である。
【0022】
出荷検査情報22は、出荷のために検査した情報であり、図4に示すように、例えば、検査実施日、検査開始時間、検査終了時間、検査結果、検査情報(例えば、検査後のリスト登録数)及び出荷日を示す情報である。
【0023】
保守情報23は、保守に関する情報であり、例えば、図4に示すように、保守交換日、リペア戻入日、リペア結果、回転回数及びリペア出荷日を示す情報である。
【0024】
詳細情報24は、例えば、製品基本情報21、出荷検査情報22及び保守情報23のいずれかに関連する情報であり、記憶装置10の管理者が検査、保守等の作業に関連して得た情報を書き込む。これにより、検査結果だけでなく、幅広い情報を記憶装置10に履歴情報20として持たせることが可能になる。
【0025】
次に、記憶装置10に履歴情報20を書き込む流れについて図5及び図6を参照しながら説明する。図5は記憶装置10が製造元から出荷される前に、記憶装置10の制御部11が上位装置から指示を受けて行う処理を示している。また、図6は記憶装置10が戻入された後に、記憶装置10の制御部11が上位装置からの指示を受けて行う処理を示している。
【0026】
記憶装置10を出荷する前に、管理者は、上位装置を用いて履歴情報20(製品基本情報21及び出荷検査情報22)を記憶領域12の一部に書き込む(S101:データ書き込み手段)。この際、管理者は、詳細情報24を履歴情報20に追加しても良い。
【0027】
次に、管理者は、上位装置を用いて既述のコマンド(例えば、Set Max Addressコマンド)を送信し、履歴情報20が書き込まれた記憶領域12のうちの既述の一部の領域をHPA13に設定する(S102:アクセス不可手段)。このようにHPA13が設定された記憶装置10は、市場へと出荷され、ユーザに販売される。履歴情報20はHPA13に記憶されているため、ユーザは履歴情報20にアクセスすることができない。
【0028】
また、保守等により記憶装置10の戻入があった場合、管理者は、上位装置から記憶装置10へ既述のコマンド(例えば、Set Max Extコマンド)を送信し、HPA13の設定を開放する(S201:開放手段)。これにより、HPA13がアクセス可能になるため、上位装置は、管理者の指示に基づいて、HPA13に記憶されている履歴情報20を読み出し(S202)、その履歴情報20を表示する(S203)。管理者は、この表示内容を視認することにより、記憶装置10の履歴情報20を直ちに確認することが可能になる。
【0029】
そして、管理者が保守を行った後、上位装置を介して保守の内容を履歴情報20(保守情報23)として書き込む(S101:データ書き込み手段)。なお、この際、詳細情報24を履歴情報20に追加しても良い。
【0030】
保守情報23を履歴情報20として追加した後、上位装置は、既述のコマンド(例えば、Set Max Addressコマンド)を送信し、履歴情報20が記憶された記憶領域12のうちの一部の領域を再びHPA13に設定する(S102:アクセス不可手段)。そして、記憶装置10はユーザの元へ再び出荷される。
【0031】
ユーザの元へ出荷された記憶装置10が再び戻入された場合、管理者は、既述の操作を行うことにより、記憶装置10に記憶された履歴情報20を直ちに表示し、履歴情報20の内容を確認することができる。この際、作業者は、製品基本情報21及び出荷検査情報22だけでなく、保守情報23等の内容も直ちに確認することができる。
【0032】
以上のように構成された記憶装置10によると、出荷された後の履歴情報20の秘匿性を保ちつつ履歴情報20の管理を容易にすることができる。より詳細には、記憶装置10は、履歴情報20が記憶される記憶領域12の一部の領域をHPA13に設定することによりユーザに対して履歴情報20の内容を秘匿することができるとともに、履歴情報20を記憶装置10に記憶することにより履歴情報20の管理を容易にすることができる。
【0033】
また、記憶装置10に保守情報23を含む履歴情報20が記憶されているため、履歴情報20が読み出せないほど故障している場合を除き、保守の際に、記憶装置10に関する情報について、履歴情報のデータベースをサーチする必要がなくなる。このため、管理者は履歴情報20を入手するまでの時間を短縮することができる。よって、記憶装置10の製造元にとっても、記憶装置10の効率の良い管理を行うことが可能になる。
【0034】
更に、管理者が履歴情報20を容易に入手することができるため、戻入された記憶装置10の保守情報23をデータ化することにより、記憶装置10の故障傾向等を分析することができる。この分析結果は、例えば、製造元が記憶装置10の品質状況を把握するために用いることができる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その実施に際して様々な変形が可能である。
【0036】
上記実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0037】
(付記1)
ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置であって、
履歴情報を前記記憶領域の一部に書き込むデータ書き込み手段と、
前記記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするアクセス不可手段と、
前記ユーザアクセス不可とした前記一部の領域をアクセス可能にする開放手段と、
を有することを特徴とする記憶装置。
【0038】
(付記2)
前記履歴情報は、出荷後の保守に関する保守情報を含む、ことを特徴とする付記1記載の記憶装置。
【0039】
(付記3)
ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置への履歴情報書き込み方法であって、
履歴情報を前記記憶領域の一部に書き込むステップと、
前記記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするステップと、
前記ユーザアクセス不可とした前記一部の領域をアクセス可能にするステップと、
を有することを特徴とする記憶装置への履歴情報書き込み方法。
【0040】
(付記4)
前記履歴情報は、出荷後の保守に関する保守情報を含む、ことを特徴とする付記3記載の履歴情報書き込み方法。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、記憶装置及び記憶装置への出荷後情報書き込む方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・記憶装置
11・・・制御部
12・・・記憶領域
13・・・HPA
20・・・履歴情報
21・・・製品基本情報
22・・・出荷検査履歴情報
23・・・保守情報
24・・・詳細情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置であって、
履歴情報を前記記憶領域の一部に書き込むデータ書き込み手段と、
前記記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするアクセス不可手段と、
前記ユーザアクセス不可とした前記一部の領域をアクセス可能にする開放手段と、
を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記履歴情報は、出荷後の保守に関する保守情報を含む、ことを特徴とする請求項1記載の記憶装置。
【請求項3】
ユーザがデータを書き込む記憶領域を有する記憶装置への履歴情報書き込み方法であって、
履歴情報を前記記憶領域の一部に書き込むステップと、
前記記憶領域の一部へのユーザアクセスを不可にするステップと、
前記ユーザアクセス不可とした前記一部の領域をアクセス可能にするステップと、
を有することを特徴とする記憶装置への履歴情報書き込み方法。
【請求項4】
前記履歴情報は、出荷後の保守に関する保守情報を含む、ことを特徴とする請求項3記載の履歴情報書き込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185886(P2012−185886A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48270(P2011−48270)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】