説明

記憶装置

【課題】ホスト機器に接続されて用いられる記憶装置に保存されている動画データについて、不正なデータ複製を防止するために、記憶装置に保存されている動画データを暗号化し、再生時に復号化する方法が用いられている。しかし、この方法では、ホスト機器での復号化のための処理が必要となるため、ユーザの利便性を妨げるという課題がある。
【解決手段】記憶装置1の備えるUSB−SATA変換基板11は、一定時間内に読み出しコマンドに応じて転送されたデータ量を保持するデータ転送量カウンタを備える。そして、データ転送量カウンタに保持される値から、動画再生時に必要とされるデータ転送速度より速い速度で記憶装置1からホスト機器2へデータが転送されていると判断される場合、データの転送を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト機器に接続され用いられる記憶装置に関する。特に、記憶装置に保存されるデータの不正コピーを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像作品や、音楽作品などのコンテンツデータを記録することができる様々な記憶装置が普及している。また、外付けハードディスクドライブやUSBフラッシュメモリ等、USB(Universal Serial Bus)等の汎用的なインターフェースを通じてホスト機器に接続される記憶装置の大容量化・低価格化が進んでいる。
【0003】
近年、予め動画データが保存された記憶装置を頒布することで、インターネット等のネットワークを用いることなく、更に、多量の動画データを頒布する方法が用いられている。この様な動画データの頒布方法を用いた場合、そのままでは記憶装置から不正に動画データが複製されてしまう虞がある。そこで、この様な不正なデータ複製を防止するために、記憶装置に保存されている動画データを暗号化し、再生時に復号化する方法が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記暗号化によるデータの複製防止技術を用いた場合、ホスト機器での復号化のための処理が必要となるため、汎用的な動画再生ソフトウェアや、汎用的なメディアプレーヤー機器での再生が不可能となり、ユーザの利便性を妨げるという課題がある。本願に開示の発明は、上記従来技術における課題を解決するために用いられ、不正なデータの複製を防止するとともに、ユーザの利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ホスト機器に接続される記憶装置であって、記憶装置からホスト機器に転送される所定時間あたりのデータ転送量を監視するデータ転送量監視部と、データ転送量監視部により監視される所定時間あたりのデータ転送量が所定量以上の場合、記憶装置からホスト機器へのデータ転送を抑止するデータ転送部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
記憶装置に保存されている動画データをホスト機器により再生する場合、単位時間あたりのデータ転送量即ちデータ転送速度は、主に動画のビットレートに依存する。一方、記憶装置に保存されているデータをホスト機器が内蔵する記憶媒体などに複製する場合、データ転送速度は、記憶装置の備えるハードディスクなどの記憶媒体、ホスト機器の処理速度、及び、記憶装置とホスト機器の間を接続するインターフェース等ハードウェアに依存する。
【0007】
例えば、Blu−ray Disk(登録商標)に記録されている動画データのビットレートは、最大54Mbps(Mega bit per secondsの略)である。Blu−ray Disk(登録商標)に記録されている動画データを再生する際に必要とされるホスト機器と記憶装置との間のデータ転送速度は、動画のビットレートと近しい速度である。また、記憶装置とホスト機器の間を接続するインターフェースとして、USB2.0を用いた場合、最大データ転送速度は480Mbpsである。記憶装置に保存されているデータをホスト機器が内蔵する記憶媒体などに複製する場合のデータ転送速度は、インターフェースの最大データ転送速度と近しい速度である。この様に、動画を再生する際に必要とされるデータ転送速度と、データ複製時のデータ転送速度とは大きく異なり、動画再生時に必要とされるデータ転送速度の方が遅い。
【0008】
本願に係る発明は、データ転送量監視部により、所定時間あたりのデータ転送量を監視する。そして、所定時間あたりのデータ転送量から、動画データを再生するために記憶装置からホスト機器へデータの転送がなされていると判断される場合、データ転送部は、かかるデータの転送を許可する。所定時間あたりのデータ転送量が、動画データのビットレートを明らかに超過しており、記憶装置からデータの複製が行われていると判断される場合、データ転送部はデータ転送を抑止する。
【0009】
また、本願に係る発明は、記憶装置からホスト機器へデータ転送が行われるのに応じ、記憶装置の備える所定の記憶領域からデータが読み出されたことを判断する読み出し領域判断部を備え、読み出し領域判断部により所定の記憶領域からデータが読み出された場合にのみ記憶装置からホスト機器へのデータ転送を抑止してもよい。
【0010】
記憶装置が複数の記憶領域を複数個備えている場合において、そのうちの一または複数の論理的な記憶領域が動画データを保存するための動画領域であるとする。そして、ユーザは動画領域でない記憶領域へデータを書き込み可能であるとする。そして、データの読み出し時に、読み出し領域判断部の判断によりデータの読み出し対象が動画領域でないとされた場合、自由にデータを読み出し可能とする。以上の動作により、ユーザが動画領域以外の記憶領域へデータを書き込んだ場合、そのデータについて、複製等の処理を自由に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る発明は、不正なデータの複製を防止するとともに、接続されるホスト機器に依存することなく動画データの再生を行うことを可能とし、ユーザの利便性を向上するという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例の備えるハードウェア構成図
【図2】本実施例の動作フロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本実施例の備えるハードウェアの構成図を示す。記憶装置1は、ホスト機器2にUSB(Universal Serial Bus)を通じて接続される。
【0014】
記憶装置1は、USB−SATA変換基板11及びハードディスクユニット12を備える。USB−SATA変換基盤11は、ホスト機器2とUSBにより接続され、ハードディスクユニット12とSATA(Serial Advanced Technology Attachmentの略)により接続される。
【0015】
USB−SATA変換基板11は、CPU111を備える。記憶装置1の備えるハードディスクユニット12は、1個または複数個でもよく、さらに、それぞれのハードディスクユニット12が論理的な記憶領域を複数個備えていてもよい。
【0016】
USB−SATA変換基板11は、ホスト機器2よりUSBを通じて入力されるコマンドの種別を判断するコマンド判別部を備える。また、USB−SATA変換基板11は、コマンド判別部により、ホスト機器2より入力されたコマンドが、読み出しコマンドであった場合、読み出し対象となる記憶領域が動画データを保存する領域であるか否かを判断する読み出し領域判断部を備える。
【0017】
また、USB−SATA変換基板11は、一定時間内に、読み出しコマンドに応じて転送されたデータ量を保持するデータ転送量カウンタを備える。また、USB−SATA変換基板11は、データ転送量カウンタの値に基づき、許容されるデータ転送速度より速い速度でデータが転送されている時間が、予め定められる許容時間以内であるか否かを判断する許容時間判断部を備える。ここで、許容されるデータ転送速度とは、動画再生時に必要とされるデータ転送速度より速く、データ複製時のデータ転送速度より遅い速度である。
【0018】
図2に本実施例に係る記憶装置1の動作フロー図を示す。ステップ0において、ホスト機器2と記憶装置1が起動する。そして、ホスト機器2からUSBを通じて、記憶装置1の備えるUSB−SATA変換基板11へコマンドが発行されるまで、記憶装置1はコマンド待ち状態となる(S2)。
【0019】
ホスト機器2からUSB−SATA変換基板11へコマンドが発行されると(S2:YES)、USB−SATA変換基板11の備えるコマンド判別部は、発行されたコマンドの種類が読み出しコマンドであるか否かを判別する(S4)。ここで、ホスト機器2からUSB−SATA変換基板11へ発行される読み出しコマンドの一例は、USBバスを通じて発行されるSCSI(Small Computer System Interfaceの略)コマンドの一つであるREAD(10)コマンドである。
【0020】
ステップS4において、USB−SATA変換基板11へ発行されたコマンドがREAD(10)コマンドでないと判断された場合(S4:NO)、USB−SATA変換基板11は、発行されたコマンドに基づき通常の処理を行い(S18)、ステップS2のコマンド待ち状態へと移行する。
【0021】
ステップS4において、USB−SATA変換基板11へ発行されたコマンドがREAD(10)コマンドであると判断された場合(S4:YES)、USB−SATA 変換基板11の備える読み出し領域判断部は、READ(10)コマンドによるデータの読み出し対象を判断する(S6)。ここで、記憶装置1が複数のハードディスクユニット12または、論理的な記憶領域を複数個備えている場合において、そのうちの一または複数の論理的な記憶領域が動画データを保存するための動画領域であるとする。ステップS6における判断の結果、データの読み出し対象が、動画領域でなかった場合(S6:NO)、通常通りデータの読み出しを行い(S18)、ステップS2の待ち状態へと移行する。
【0022】
ステップS6による判断の結果、READ(10)コマンドによるデータの読み出し対象が、動画領域であると判断される場合(S6:YES)、ステップS8からステップS16からなる転送レート監視制御を行う。
【0023】
ステップS8において、READ(10)コマンドによるデータの転送量を、USB−SATA変換基板11の備えるデータ転送量カウンタに追加する。次に、予め定められた時間より前に、READ(10)コマンドにより読み出されたデータの転送量をデータ転送量カウンタから減算する(S10)。そして、データ転送量カウンタの値を予め定められた規定値と比較する(S12)。ここで、ステップS12における予め定められた規定値をステップS8における予め定められた時間で割った値が、本実施例において許容されるデータ転送速度に相当する。よって、ステップS8における予め定める時間及びステップS12における予め定める規定値は、許容されるデータ転送速度に基づいて定められる。
【0024】
ステップS12において、データ転送量カウンタの値が規定値を超えていない場合(S12:NO)、すなわち、許容されるデータ転送速度以下の速度でデータが読み出されている場合、通常通りデータを読み出し(S18)、ステップS2のコマンド待ち状態へと移行する。データ転送量カウンタの値が規定値を超えている場合(S12:YES)、すなわち、許容されるデータ転送速度より速い速度でデータが読み出されている場合、USB−SATA変換基板11の備える許容時間判断部は、許容されるデータ転送速度より速い速度でデータが転送されている時間が許容時間以内か否かを判断する(S14)。
【0025】
ステップS14において、許容されるデータ転送速度より速い速度でデータが転送されている時間が許容時間以内である場合(S14:NO)、通常の読み出し処理を行い(S18)、コマンド待ち状態へ移行する(S2)。ステップS14において、禁止されているデータ転送速度以上の速度でデータが転送されている時間が許容時間を超えている場合(S14:YES)、ダミーデータをホスト機器2へと転送する(S16)。そして、コマンド待ち状態(S2)へと移行する。
【0026】
ステップS14において、許容時間を設ける理由は、例えば、動画再生開始時等にデータ転送速度が一時的に許容されるデータ転送速度より速くなる場合があるためである。また、ステップS16において転送されるダミーデータは空のデータや、無効なデータ等である。
【0027】
以下、本実施例の奏する作用効果について記載する。本実施例に係る記憶装置1の備えるデータ転送量カウンタは、所定時間あたりの記憶装置1からホスト機器2へのデータ転送量を監視する。そして、所定時間あたりのデータ転送量が、動画データのビットレートを超過せず、動画再生を行っていると判断される場合、USB−SATA変換基板11は、データの転送を許可する。所定時間あたりのデータ転送量が、動画データのビットレートを超過し、記憶装置1のデータを複製していると判断される場合、USB−SATA変換基板11は、データ転送を抑止する。以上の動作により、不正なデータの複製を防止するとともに、ホスト機器2によらずに動画データの再生を行うことを可能とし、ユーザの利便性を向上するという作用効果を奏する。
【0028】
記憶装置1が複数のハードディスクユニット12または、複数の論理的な記憶領域を備えている場合において、そのうちの一または複数の論理的な記憶領域が動画データを保存するための動画領域であるとする。そして、ユーザは動画領域でない記憶領域へデータを書き込み可能とする。また、記憶装置1の備えるUSB−SATA変換基板11が、データの読み出し対象となる記憶領域が動画領域であるか否かを判断する読み出し領域判断部を備える。そして、データの読み出し対象が動画領域でない場合、データ転送量カウンタによる記憶装置1からホスト機器2へのデータ転送量の監視を行わない。以上の動作により、ユーザが動画領域以外の記憶領域へデータを書き込んだ場合、そのデータについて、複製等の処理を自由に行うことが可能となる。
【0029】
また、図2に示す動作フローのステップS14において、許容時間以内では、許容されるデータ転送速度より速い速度でのデータ転送を許可する。これにより、動画再生開始後、一時的にデータ転送量が増加するような場合であっても、動画再生を許可しつつ、不正なデータの複製を防止することが可能となる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。例えば、ハードディスクユニット12に格納される動画データを暗号化しておき、ホスト機器2へのデータ転送時にUSB−SATA変換基板11が復号化する処理を追加するという改良が可能である。復号化に係る処理をUSB−SATA変換基板11において行うことで、ユーザが記憶装置1を分解し、ハードディスクユニット12を取り出した場合であっても、ハードディスクユニット12に保存されている動画データは暗号化されているため、不正なデータの複製を防止することが可能となる。
【0031】
また、動画データを保存する動画領域は読み出しのみ可能とすることで、ユーザによる誤った動画データの削除を防止することが可能となる。
【0032】
また、USBのような世代間で下位互換性を有する規格の場合、下位規格を用いたデータ転送の速度と動画データの読み出しに係るデータ転送の速度はどちらも上位規格でのデータ転送の速度より遅い。このため、下位規格を用いたデータ転送と動画データの読み出しに係るデータ転送をその転送速度から判別することは困難である。よって、下位互換性を有する規格において、転送速度の遅い下位規格での動作を禁止する。例えば、記憶装置1がUSB3.0対応機器である場合に、USB2.0及びUSB1.1接続でのデータの読み出しを禁止する。これにより、下位互換性を有する規格において、動画データの読み出し動作とデータのコピーに係る動作の判別が可能となる。
【0033】
なお、実施例におけるUSBは、ホスト機器2と記憶装置1を接続するために用いられるインターフェースの一例である。例えば、IEEE1394等の他のインターフェースでもよい。また、USB−SATA変換基板11とハードディスクユニット12を接続するために用いられるSATAは、ハードディスクユニット12と接続するために用いられるインターフェースの一例である。例えば、Serial Attached SCSI等の他のインターフェースでもよい。また、ハードディスクユニット12はデジタル情報を記憶するために用いられる記憶媒体の一例であり、当然、SSD(Solid State Driveの略)等、他の記憶媒体でもよい。また、USB−SATA変換基板11は、ホスト機器2の備えるインターフェースと、ハードディスクユニット12の備えるインターフェースとを変換する回路の一例であり、データ転送部の一例である。また、データ転送量カウンタはデータ転送量監視部の一例である。
【符号の説明】
【0034】
1 記憶装置
11 USB−SATA変換基板
111 CPU
12 ハードディスクユニット
2 ホスト機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト機器に接続される記憶装置であって、
前記記憶装置から前記ホスト機器に転送される所定時間あたりのデータ転送量を監視するデータ転送量監視部と、
前記データ転送量監視部により監視される前記所定時間あたりのデータ転送量が所定量以上の場合、
前記記憶装置から前記ホスト機器へのデータ転送を抑止するデータ転送部と、
を備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記記憶装置から前記ホスト機器へデータ転送が行われるのに応じ、前記記憶装置の備える所定の記憶領域からデータが読み出されたことを判断する読み出し領域判断部を備え、
前記読み出し領域判断部により前記所定の記憶領域からデータが読み出された場合にのみ前記記憶装置から前記ホスト機器へのデータ転送を抑止することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68809(P2012−68809A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212119(P2010−212119)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】