記憶装置
【課題】高速動作が可能であり、且つ消費電力を低減することが可能な記憶装置、及び該記憶装置を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の入力端子、及び第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、第1の信号が入力される第3の入力端子、及び第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第1の入力端子に入力され、第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第2の入力端子に入力される。
【解決手段】第1の入力端子、及び第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、第1の信号が入力される第3の入力端子、及び第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第1の入力端子に入力され、第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第2の入力端子に入力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性の記憶装置、及び当該記憶装置を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、高速動作が必要な場合、データを記憶する記憶部としてSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリが用いられている。一方、電源遮断時において、データを保持する必要が有る場合は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリが用いられている。
【0003】
電源遮断時において、情報の保持を確実に行うため、半導体装置に電源が供給されている時は、SRAM等の高速動作が可能な揮発性メモリを使用し、電源が遮断される直前に低速動作である不揮発性メモリに情報を書き込むバックアップ方式がある。
【0004】
また、揮発性メモリであるSRAMの電源を切ってもデータが保持されるSRAMの不揮発化(不揮発性SRAMともいう)として、メモリセル内に強誘電体キャパシタを設けた不揮発性メモリの研究開発が進められている(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−146048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックアップ方式は、データを保持している揮発性メモリの数が多いと、データのバックアップに時間がかかり、電源遮断前と、電源復帰後にかかる消費電力が多くなる。
【0007】
一方、強誘電体キャパシタ等の不揮発性の記憶素子をメモリセル内に有する記憶装置は、製造コストが高い、書き込み速度が遅いなどのデメリットがあるといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、高速動作が可能であり、且つ消費電力を低減することが可能な記憶装置、及び該記憶装置を有する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、第1の入力端子、及び第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、第1の信号が入力される第3の入力端子、及び第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第1の入力端子に入力され、第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第2の入力端子に入力される。
【0010】
なお、第1のバッファの第3の出力端子と、レベルシフタの第1の入力端子とが接続される第1のノードにおいて、第1のデータを保持し、第2のバッファの第4の出力端子と、レベルシフタの第2の入力端子とが接続される第2のノードにおいて、第2のデータを保持する。また、第1のバッファ及び第2のバッファはそれぞれ、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されている。
【0011】
本発明の一態様は、直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、直列接続する第5のトランジスタ及び第6のトランジスタ、並びに直列接続する第7のトランジスタ及び第8のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、第1のトランジスタ、第4のトランジスタ、及び第7のトランジスタのゲート、並びに、第5のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第6のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、第2のトランジスタ、第3のトランジスタ、及び第5のトランジスタのゲート、並びに、第7のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第8のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、第6のトランジスタのゲートが、第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、第8のトランジスタのゲートが、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードとを有し、第1のノード及び第2のノードにおいて、データを保持する記憶素子を有することを特徴とする。
【0012】
第1のトランジスタ乃至第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、第5のトランジスタ及び第7のトランジスタは、p型のトランジスタであり、第6のトランジスタ及び第8のトランジスタは、n型のトランジスタである。
【0013】
また、本発明の一態様は、直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、直列接続する第5のトランジスタ乃至第7のトランジスタ、及び直列接続する第8のトランジスタ乃至第10のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、第1のトランジスタ、第4のトランジスタ、及び第8のトランジスタのゲート、並びに、第6のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第7のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、第2のトランジスタ、第3のトランジスタ、及び第5のトランジスタのゲート、並びに、第9のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第10のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、第6のトランジスタ及び第7のトランジスタのゲートが、第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、第9のトランジスタ及び第10のトランジスタのゲートが、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードにおいて、データを保持する記憶素子を有することを特徴とする。
【0014】
上記記憶素子は、バッファの出力端子(トランジスタのソース及びドレインの一方)及びレベルシフタの入力端子(トランジスタのゲート)の接続部であるノードにおいて、データを保持する。バッファは、リーク電流が極めて低い酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタで構成される。このため、電源電圧の供給が停止した後も、ノードの電圧を長期間に渡って保持することが可能となる。このため、記憶素子は不揮発性である。
【0015】
また、長期の電源遮断によりノードにおける電位が変動しても、ノードの電位のリフレッシュが容易であるため、データ保持の誤動作を低減することができる。
【0016】
また、電源遮断の後、電源が供給された場合、記憶装置のデータのバックアップをしなくともよいため、半導体装置の即時電源遮断や、電源供給後の高速復帰が可能であり、消費電力を低減できる。
【0017】
また、上記記憶素子を複数有する記憶装置において、データの書込及び読み出しを行わない記憶素子は、電源を選択的に遮断できるため、半導体装置の消費電力を低減できる。
【0018】
記憶素子は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタと、当該トランジスタに接続する、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタとで構成される。このため、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタ上に、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを積層することができ、半導体装置の高集積化が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されたバッファ、及びレベルシフタを用いて記憶素子を構成するため、電源が遮断されても記憶素子にデータを保持することができる。このため、起動時間を短縮することができると共に、低消費電力化が可能である。また、記憶素子において、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタでレベルシフタを形成し、当該レベルシフタ上に酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタでバッファを形成する。即ち、レベルシフタ及びバッファを積層させることができるため、高集積化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一態様に係る記憶素子を説明するブロック図である。
【図2】本発明の一態様に係る記憶素子を説明する回路図である。
【図3】本発明の一態様に係る記憶素子を説明する回路図である。
【図4】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図6】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図7】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図8】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図9】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図10】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図11】本発明の一態様に係る記憶装置を説明する図である。
【図12】本発明の一態様に係る記憶装置を説明する図である。
【図13】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図14】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図15】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図16】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図17】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図18】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図19】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図20】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図21】計算によって得られた電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図22】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図23】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図24】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図25】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図である。
【図26】酸化物半導体膜を用いたトランジスタによって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図27】試料1のトランジスタのBTストレス試験後のドレイン電流を説明する図である。
【図28】試料2であるトランジスタのBTストレス試験後のドレイン電流を説明する図である。
【図29】試料A及び試料BのXRDスペクトルを説明する図である。
【図30】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を説明する図である。
【図31】ドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図32】基板温度としきい値電圧の関係及び基板温度と電界効果移動度の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0023】
「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
【0024】
回路図上は独立している構成要素どうしが電気的に接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0025】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0026】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0027】
(実施の形態1)
記憶装置に含まれる記憶素子の一形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に示す記憶素子を説明するブロック図である。
【0029】
本実施の形態に示す記憶素子Mは、レベルシフタL、バッファB1、及びバッファB2を有する。
【0030】
レベルシフタLは、第1の入力端子INと、第2の入力端子INBと、第1の出力端子OUTと、第2の出力端子OUTBを有する。第2の入力端子INBには、第1の入力端子INに入力される信号の反転信号が入力される。第1の出力端子OUTからは、信号S1が出力される。第2の出力端子OUTBからは、第1の出力端子OUTから出力される信号S1の反転信号S1Bが出力される。
【0031】
バッファB2は、第1の入力端子A2と、第2の入力端子A2Bと、出力端子X2とを有する。第2の入力端子A2Bには、レベルシフタLの第1の出力端子OUTから出力される信号S1が入力される。第1の入力端子A2には、レベルシフタLの第2の出力端子OUTBから出力される信号S1の反転信号S1Bが入力される。出力端子X2からは、信号S2が出力され、当該信号S2がレベルシフタLの第1の入力端子INに入力される。なお、信号S2は信号S1と論理値が同じ(例えば、信号S1及び信号S2の電位がHigh(または1を示す電位))である。
【0032】
バッファB1は、第1の入力端子A1と、第2の入力端子A1Bと、出力端子X1とを有する。第2の入力端子A1Bには、レベルシフタLの第2の出力端子OUTBから出力される信号S1の反転信号S1Bが入力される。第1の入力端子A1には、レベルシフタLの第1の出力端子OUTから出力される信号S1が入力される。出力端子X1からは、信号S2の反転信号S2Bが出力され、当該反転信号S2BがレベルシフタLの第2の入力端子INに入力される。なお、反転信号S2Bも反転信号S1Bと論理値が同じ(例えば、反転信号S1B及び反転信号S2Bの電位がLow(または0を示す電位))である。なお、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタLの第1の出力端子OUTが、図2に示す第1の端子Dと接続する。また、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタLの第2の出力端子OUTBが、図2に示す第2の端子DBと接続する。
【0033】
バッファB1、B2は、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタが直列接続している。また、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタのソース及びドレイン一方の接続部において、出力端子X1、X2を構成する。オフ電流の低いトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体膜、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0034】
本実施の形態に示す記憶素子Mは、バッファB1の出力端子X1及びレベルシフタLの第2の入力端子INBの接続部(ノードN1)において電位(またはそれに対応する電荷量)をデータに応じて制御することにより、第1のデータを保持する。また、バッファB2の出力端子X2及びレベルシフタLの第1の入力端子INの接続部(ノードN2)において電位(またはそれに対応する電荷量)をデータに応じて制御することにより、第1のデータと反転する第2のデータを保持する。例えば、ノードN2に所定の電位が充電された状態を「1」に対応させ、ノードN1に電位が充電されていない状態を「0」に対応させることによって、1ビットのデータを記憶することができる。
【0035】
バッファB1及びバッファB2をそれぞれ、オフ電流が極めて低い、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを直列接続して形成する。また、バッファB1、B2の出力端子X1、X2は、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタのソース及びドレイン一方の接続部であり、当該接続部において、レベルシフタLの入力端子の電位を制御している。このため、電源が遮断されても、第1のデータ及び第2のデータを保持することができることから、記憶素子Mは、不揮発性である。
【0036】
また、レベルシフタLから出力される信号は、バッファB1、B2を介して、レベルシフタLに入力されるため、レベルシフタLの出力データがフィードバックされる。即ち、記憶素子Mは、不揮発性のラッチとなる。また、長期の電源遮断時よりノードN1、N2で保持された電位の変動があっても、電源供給時にノードN1、N2の電位をリフレッシュすることが可能であり、記憶素子のデータの変動を低減することができる。
【0037】
次に、図1に示す記憶素子Mの具体的な回路構成について、図2及び図3を用いて説明する。
【0038】
図2は、記憶素子100の一形態を示す回路図である。記憶素子100は、直列接続する第1のトランジスタ101及び第2のトランジスタ102で構成されるバッファB1と、直列接続する第3のトランジスタ103及び第4のトランジスタ104で構成されるバッファB2と、レベルシフタ109とを有する。レベルシフタ109は、直列接続する第5のトランジスタ105及び第6のトランジスタ106と、直列接続する第7のトランジスタ107及び第8のトランジスタ108とを有する。
【0039】
バッファB1において、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方、並びに第2のトランジスタ102のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB1の出力端子X1である。
【0040】
バッファB2において、第3のトランジスタ103のソース及びドレインの一方、並びに第4のトランジスタ104のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB2の出力端子X2である。
【0041】
レベルシフタ109において、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方、並びに第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ109の第2の出力端子OUTBである。
【0042】
レベルシフタ109において、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方、並びに第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ109の第1の出力端子OUTである。
【0043】
第1のトランジスタ101、第3のトランジスタ103、第5のトランジスタ105、及び第7のトランジスタ107のソース及びドレインの他方は、高電源電位Vddを供給する配線に接続する。
【0044】
第2のトランジスタ102、第4のトランジスタ104、第6のトランジスタ106、及び第8のトランジスタ108のソース及びドレインの他方は、低電源電位Vssを供給する配線に接続する。
【0045】
第2のトランジスタ102のゲート、第3のトランジスタ103のゲート、及び第5のトランジスタ105のゲート、並びに、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方並びに第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子Dと接続する。即ち、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタの第1の出力端子OUTが、第1の端子Dと接続する。
【0046】
また、第1のトランジスタ101のゲート、第4のトランジスタ104のゲート、及び第7のトランジスタ107のゲート、並びに、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方並びに第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子DBと接続する。即ち、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタの第2の出力端子OUTBが、第2の端子DBと接続する。
【0047】
なお、第1の端子Dに入出力される信号は図1に示す信号S1に相当する。また、第2の端子DBに入出力される信号は、図1に示す反転信号S1Bに相当する。即ち、第2の端子DBに入力される信号は、第1の端子Dに入力される信号の反転信号である。また、第2の端子DBから出力される信号は、第1の端子Dから出力される信号の反転信号である。第1の端子D及び第2の端子DBは、外部から同時に信号が入力される。また、第1の端子D及び第2の端子DBから同時に外部に信号を出力する。
【0048】
また、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方並びに第2のトランジスタ102のソース及びドレインの一方の接続部は、第8のトランジスタ108のゲートと接続する。即ち、バッファB1の出力端子X1と、レベルシフタの第2の入力端子INBが接続する。なお、当該接続部をノードN1と示す。
【0049】
また、第3のトランジスタ103のソース及びドレインの一方並びに第4のトランジスタ104のソース及びドレインの一方の接続部は、第6のトランジスタ106のゲートと接続する。即ち、バッファB2の出力端子X2と、レベルシフタの第1の入力端子INが接続する。なお、当該接続部をノードN2と示す。
【0050】
第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104は、オフ電流の低いn型のトランジスタで形成される。オフ電流の低いトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0051】
ここで、オフ電流の低いn型のトランジスタとして、酸化物半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタを用いて説明する。なお、図中では、トランジスタのチャネル領域が酸化物半導体膜で形成されていることを示すため、「OS」の符号を付している。
【0052】
また、第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107は、p型のトランジスタで形成される。第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は、n型のトランジスタで形成される。第5のトランジスタ105乃至第8のトランジスタ108は、後述する半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタである。
【0053】
次に、記憶装置に含まれる記憶素子の別形態について、図3を用いて説明する。本実施の形態で説明する記憶素子110は、図2に示す記憶素子100と比較して、レベルシフタ回路の一部のトランジスタがインバータで構成されている点が異なる。
【0054】
図3は、記憶素子110の一形態を示す回路図である。記憶素子110は、直列接続する第1のトランジスタ111及び第2のトランジスタ112で構成されるバッファB1と、直列接続する第3のトランジスタ113及び第4のトランジスタ114で構成されるバッファB2と、レベルシフタ129とを有する。レベルシフタ129は、直列接続する第5のトランジスタ115、第6のトランジスタ116、及び第7のトランジスタ117と、直列接続する第8のトランジスタ118、第9のトランジスタ119、及び第10のトランジスタ120とを有する。
【0055】
バッファB1において、第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方、並びに第2のトランジスタ112のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB1の出力端子X1である。
【0056】
バッファB2において、第3のトランジスタ113のソース及びドレインの一方、並びに第4のトランジスタ114のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB2の出力端子X2である。
【0057】
レベルシフタ129において、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの一方、並びに第7のトランジスタ117のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ129の第2の出力端子OUTBである。また、第5のトランジスタ115のソース及びドレインの一方と、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの他方が接続する。
【0058】
レベルシフタ129において、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの一方、並びに第10のトランジスタ120のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ129の第1の出力端子OUTである。また、第8のトランジスタ118のソース及びドレインの一方と、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの他方が接続する。
【0059】
第1のトランジスタ111、第3のトランジスタ113、第5のトランジスタ115、及び第8のトランジスタ118のソース及びドレインの他方は、高電源電位Vddを供給する配線に接続する。
【0060】
第2のトランジスタ112、第4のトランジスタ114、第7のトランジスタ117、及び第10のトランジスタ120のソース及びドレインの他方は、低電源電位Vssを供給する配線に接続する。
【0061】
第2のトランジスタ112のゲート、第3のトランジスタ113のゲート、及び第5のトランジスタ115のゲート、並びに、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの一方並びに第10のトランジスタ120のソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子Dと接続する。即ち、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタの第1の出力端子OUTが、第1の端子Dと接続する。
【0062】
また、第1のトランジスタ111のゲート、第4のトランジスタ114のゲート、及び第8のトランジスタ118のゲート、並びに、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの一方並びに第7のトランジスタ117のソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子DBと接続する。即ち、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタの第2の出力端子OUTBが第2の端子DBと接続する。
【0063】
また、第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方並びに第2のトランジスタ112のソース及びドレインの一方の接続部は、第9のトランジスタ119及び第10のトランジスタ120のゲートと接続する。即ち、バッファB1の出力端子X1と、レベルシフタの第2の入力端子INBが接続する。なお、当該接続部をノードN11と示す。
【0064】
また、第3のトランジスタ113のソース及びドレインの一方並びに第4のトランジスタ114のソース及びドレインの一方の接続部は、第6のトランジスタ116及び第7のトランジスタ117のゲートと接続する。即ち、バッファB2の出力端子X2と、レベルシフタの第1の入力端子INが接続する。なお、当該接続部をノードN12と示す。
【0065】
第1のトランジスタ111乃至第4のトランジスタ114は、オフ電流の低いn型のトランジスタで形成される。オフ電流の低いn型のトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体膜、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0066】
また、第5のトランジスタ115、第6のトランジスタ116、第8のトランジスタ118、及び第9のトランジスタ119は、p型のトランジスタで形成される。第7のトランジスタ117及び第10のトランジスタ120は、n型のトランジスタで形成される。また、第6のトランジスタ116及び第7のトランジスタ117でインバータを構成する。また、第9のトランジスタ119及び第10のトランジスタ120でインバータを構成する。第5のトランジスタ115乃至第10のトランジスタ120は、後述する半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタである。
【0067】
図2及び図3に示す記憶素子100、110は、長時間電源を遮断した状態により、ノードの電位が低下しても、レベルシフタにより当該電位を上昇させた電位を出力するため、ノードのデータを読み取ることができる。更に、当該データを元のノードにフィードバックすることで、ノードの電位をリフレッシュすることができる。
【0068】
また、図3に示す記憶素子110は、レベルシフタ129において、高電源電位Vdd及び低電源電位Vssの間にインバータを有するため、高電源電位Vddを供給する配線から低電源電位Vssを供給する配線への貫通電流を低減することができ、図2と比較してさらに消費電力を低減することができる。
【0069】
ここで、本実施の形態に示す記憶素子のリフレッシュ方法について説明する。ここでは、一例として、図2に示す記憶素子100のリフレッシュ動作について、図4〜図10を用いて説明する。
【0070】
図4は、ノードN1にLow(0V)、ノードN2にVholdを印加した状態で電源を遮断した後の、リフレッシュ動作における、高電源電位Vdd、第1の端子D、第2の端子DB、ノードN1、及びノードN2それぞれの電位を実線で示すタイミングチャート図である。また、図5〜図10は、各期間t1〜t6における記憶素子を示す回路図である。図5〜図10において、非導通状態のトランジスタにはバツ印を付す。なお、Vholdは高電源電位Vdd(High)からn型のトランジスタのしきい値電圧(Vth_n)分下がった電圧のことをいい、Low<Vth_n<Vhold<Highである。
【0071】
<電源遮断状態(期間t1)>
図4及び図5を用いて、記憶素子100の電源遮断状態(期間t1)について説明する。
【0072】
例えば、ノードN1にLow(0V)、ノードN2にVholdの電位が書き込まれるが、長時間電源を遮断した状態により、ノードN2の電位が低下し、ノードN2がLowからn型のトランジスタのしきい値電圧(Vth_n)の間の電位となる。なお、電源が遮断されているため、高電源電位Vdd及び低電源電位Vss、並びに第1の端子D及び第2の端子DBの電位は、Lowである。即ち、第1のトランジスタ101乃至第8のトランジスタ108は非導通状態である。
【0073】
<電源供給(期間t2)>
図4及び図6を用いて、記憶素子100に電源を供給した状態(期間t2)について説明する。
【0074】
記憶装置に電源を供給すると、第1のトランジスタ101、第3のトランジスタ103、第5のトランジスタ105、及び第7のトランジスタ107のソース及びドレインの他方が接続する高電源電位Vddを供給する配線にHighが印加される。
【0075】
なお、記憶装置に電源を供給してもしばらくの間は、第1の端子D及び第2の端子DBには電荷が充電されず、第1の端子D及び第2の端子DBの電位はLowである。このため、p型のトランジスタである第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107は導通状態となるが、第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104、及びn型のトランジスタである第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は非導通状態のままである。
【0076】
第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107が導通状態となることで、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方、第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方、第7のトランジスタ107のゲート、及び第2の端子DBが接続するノードN3と、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方、第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方、第5のトランジスタ105のゲート、及び第1の端子Dが接続するノードN4とに、電荷が充電され、ノードN3、N4の電位、即ち第1の端子D、及び第2の端子DBの電位が上昇する。
【0077】
<ノードN1、N2での電荷充電状態(期間t3)>
図4及び図7を用いて、ノードN1、N2への電荷の充電状態(期間t3)について説明する。
【0078】
ノードN3は第2の端子DBと接続し、ノードN4は第1の端子Dと接続するため、ノードN3、N4の電位(即ち、第1の端子D、第2の端子DBの電位)が上昇し、第1のトランジスタ101〜第4のトランジスタ104のしきい値電圧(Vth_os)以上となると、第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104が導通状態となる。
【0079】
第1のトランジスタ101及び第3のトランジスタ103のソース及びドレインの他方はHighが印加される高電源電位Vddを供給する配線に接続するため、第1のトランジスタ101及び第3のトランジスタ103に電流が流れ、ノードN1、N2に電荷が充電され、ノードN1、N2の電位が上昇する。
【0080】
<p型のトランジスタの非導通状態(期間t4)>
図4及び図8を用いて、p型のトランジスタの非導通状態(期間t4)について説明する。
【0081】
期間t3により第1の端子D、第2の端子DBの電位がHighまで上昇する。この結果、p型である第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107が非導通となる。また、n型である第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は非導通状態であるため、ノードN3と第2の端子DBの電位、ノードN4と第1の端子Dの電位は、Highである。
【0082】
<第6のトランジスタの導通及び第1の端子Dの電位の低下(期間t5)>
図4及び図9を用いて、n型である第6のトランジスタの導通及び第1の端子Dの電位の低下(期間t5)について説明する。
【0083】
第1の端子Dの電位及び第2の端子DBの電位がそれぞれHighであるため、第1のトランジスタ101〜第4のトランジスタ104は導通状態となり、電流が流れる。この結果、ノードN1、N2の電位が上昇する。なお、電源遮断状態において、ノードN2はノードN1より電位が高いため、ノードN2の電位がノードN1の電位がn型である第8のトランジスタ108のしきい値電圧(Vth_n)以上に上昇するより先に、n型である第6のトランジスタ106のしきい値電圧(Vth_n)以上に上昇する。ノードN2は第6のトランジスタ106のゲートと接続するため、第6のトランジスタ106が導通状態となる。
【0084】
また、第6のトランジスタ106と直列接続する第5のトランジスタ105は非導通状態であるため、第5のトランジスタ105、第6のトランジスタ106、及び第2の端子DBの接続部であるノードN3の電位が減少する。一方、第1の端子Dが接続するノードN4においては、第7のトランジスタ107及び第8のトランジスタ108が非導通状態であるため、電位は変化しない。
【0085】
<第1のトランジスタ及び第4のトランジスタの非導通、並びにリフレッシュの完了(期間t6)>
図4及び図10を用いて、第1のトランジスタ及び第4のトランジスタの非導通、並びにリフレッシュの完了(期間t6)について説明する。
【0086】
第2の端子DBの電位が減少し、第1のトランジスタ101及び第4のトランジスタ104のしきい値電圧(Vth_os)より低くなると、第2の端子DBにゲートが接続する第1のトランジスタ101及び第4のトランジスタ104は非導通状態となる。このため、ノードN1の電位が減少する。また、ノードN2の電位は、期間t3〜期間t5と比較して、更に高くなる。
【0087】
また、第2の端子DBにゲートが接続する第7のトランジスタ107が導通状態となる。一方、ノードN1の電位が減少するため、第8のトランジスタ108が非導通状態である。これらのため、ノードN4の電位が上昇し、Highとなると、定常状態となる。
【0088】
また、電位がHighである第1の端子Dにゲートが接続する第5のトランジスタ105は非導通状態となる。一方、ノードN2の電位は増加するため、第6のトランジスタ106が導通状態である。これらのため、ノードN3の電位が減少し、Lowとなると、定常状態となる。
【0089】
この結果、ノードN1はLow(0V)となり、第2の端子DBと同様の論理値(Low)となる。また、ノードN2は、Vholdとなり、第1の端子Dと同様の論理値(High)となる。
【0090】
本実施の形態に示す記憶素子は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタのソース及びドレインの一方と、n型のトランジスタまたはp型のトランジスタのゲートとが接続するノードにおいて、データを保持する。酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタは、オフ電流が極めて低いため、電源電圧の供給が停止した後も、ノードの電圧を長期間に渡って保持することが可能となる。このため、記憶素子は不揮発性である。
【0091】
また、電源供給後のリフレッシュが容易であるため、データ保持の誤動作を低減することができると共に、バックアップ動作を必要としないため、起動時間を短くすることができる。
【0092】
ところで、不揮発性の記憶素子として磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた記憶素子とは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る半導体装置との対比を示す。
【0093】
【表1】
【0094】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると強磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0095】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0096】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0097】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0098】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0099】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す記憶素子を有する記憶装置について、図11及び図12を用いて説明する。
【0100】
図11に示す記憶装置は、メモリセルアレイ151、カラムデコーダ152、ローデコーダ153、インターフェース回路(図示しない。)を有する。メモリセルアレイ151は、マトリクス状に配置された複数のメモリセル155を有する。メモリセル155は、ワード線にゲートが接続する第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161、並びに記憶素子157を有する。第1のスイッチ159のソース及びドレインの一方は第1のビット線BL1と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子157の第1の端子Dと接続する。第2のスイッチ161のソース及びドレインの一方は第2のビット線BL2と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子157の第2の端子DBと接続する。なお、第2のビット線BL2には、第1のビット線BL1の反転信号が入力される。
【0101】
インターフェース回路は、外部信号からカラムデコーダ152及びローデコーダ153を駆動するための信号を生成すると共に、読出したメモリセル155のデータを外部に出力する。
【0102】
カラムデコーダ152は、インターフェース回路からメモリセル155を駆動するための信号を受け取り、ビット線BL1、BL2に送る書込みまたは読出しを行うための信号を生成する。ローデコーダ153は、インターフェース回路からメモリセル155を駆動するための信号を受け取り、ワード線WLに送る書込みもしくは読出しを行うための信号を生成する。カラムデコーダ152からビット線BL1、BL2へ出力する信号及びローデコーダ153からワード線WLへ出力する信号により、メモリセルアレイ151の中においてアクセスを行うメモリセルが一意に定まる。
【0103】
記憶素子157に実施の形態1で示した記憶素子M、100、110を適宜用いることができる。
【0104】
図11と異なる記憶装置について、図12を用いて説明する。
【0105】
図12に示す記憶装置は、メモリセルアレイ181、カラムデコーダ152、ローデコーダ153、インターフェース回路(図示しない。)を有する。メモリセルアレイ181は、マトリクス状に配置された複数のメモリセル165を有する。メモリセル165は、第1のワード線WL1にゲートが接続する第1のスイッチ169及び第2のスイッチ171、第2のワード線WL2にゲートが接続する第3のスイッチ170及び第4のスイッチ172、並びに記憶素子167を有する。
【0106】
第1のスイッチ169のソース及びドレインの一方は第1のビット線BL1と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第1の端子Dと接続する。第2のスイッチ171のソース及びドレインの一方は第2のビット線BL2と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第2の端子DBと接続する。第3のスイッチ170のソース及びドレインの一方は第3のビット線BL3と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第1の端子Dと接続する。第4のスイッチ172のソース及びドレインの一方は第4のビット線BL4と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第2の端子DBと接続する。なお、第2のビット線BL2には、第1のビット線BL1の反転信号が入力され、第3のビット線BL3には、第4のビット線BL4の反転信号が入力される。
【0107】
カラムデコーダ152は、インターフェース回路からメモリセル165を駆動するための信号を受け取り、第1のビット線BL1〜第4のBL4に送る書込みまたは読出しを行うための信号を生成する。ローデコーダ153は、インターフェース回路からメモリセル165を駆動するための信号を受け取り、第1のワード線WL1及び第2のワード線WL2に送る書込みもしくは読出しを行うための信号を生成する。カラムデコーダ152から第1のビット線BL1〜第4のBL4へ出力する信号、並びにローデコーダ153から第1のワード線WL1及び第2のワード線WL2へ出力する信号により、メモリセルアレイ181の中においてアクセスを行うメモリセルが一意に定まる。
【0108】
図11及び図12に示す記憶装置は、記憶素子以外の構成は従来のSRAMと同様である。また、記憶素子157、167が不揮発性であるため、本実施の形態に示す記憶装置は、不揮発性SRAMである。
【0109】
ここで記憶装置の書込み及び読み出しについて、説明する。ここでは、代表例として図11に示す記憶装置を用いて説明する。
【0110】
<データの書込>
ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、第1のビット線BL1をHigh、第2のビット線BL2をLowとする。この結果、第1のスイッチ159から記憶素子157の第1の端子DにHighを入力する。また、第2のスイッチ161から記憶素子157の第2の端子DBにLowを入力する。この結果、記憶素子157のノードに電荷を保持し、データを書き込むことができる。例えば、図2の記憶素子100においては、ノードN1に0を書込み、ノードN2に1を書き込むことができる。また、図3の記憶素子110においては、ノードN11に0を書込み、ノードN12に1を書き込むことができる。
【0111】
一方、ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、第1のビット線BL1をLow、第2のビット線BL2をHighとする。この結果、例えば、図2の記憶素子100においては、ノードN1に1を書込み、ノードN2に0を書き込むことができる。また、図3の記憶素子110においては、ノードN11に1を書込み、ノードN12に0を書き込むことができる。
【0112】
<データの保持>
実施の形態1に示す記憶素子は、不揮発性であるため、記憶装置の電源が遮断されても、ノードにデータを保持することができる。
【0113】
<データの読み出し>
一方、カラムデコーダ152内に設けられているプリチャージ回路が、ビット線BL1、BL2の電位を制御した後に、ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、図2の記憶素子100においては、記憶素子157の第1の端子Dを介して、ノードN1に保持された電荷に基づいたデータを第1のビット線BL1から読出し、記憶素子157の第2の端子DBを介して、ノードN2に保持された電荷に基づいたデータを第2のビット線BL2から読み出す。また、図3の記憶素子110においては、記憶素子157の第1の端子Dを介して、ノードN11に保持された電荷に基づいたデータを第1のビット線BL1から読出し、記憶素子157の第2の端子DBを介して、ノードN12に保持された電荷に基づいたデータを第2のビット線BL2から読み出す。
【0114】
なお、第1のビット線BL1及び第2のビット線BL2は、増幅回路に接続され、読み出し回路からデータが出力される。
【0115】
実施の形態1に示す記憶素子は不揮発性であるため、記憶装置において、データの書込み及び読み出しを行わないメモリセルの電源を遮断することができる。このため、従来のSRAMと比較して、消費電力を低減することができる。
【0116】
また、図12に示す記憶装置は、各メモリセルにおいて、それぞれ異なるワード線及びビット線に接続するスイッチを、記憶素子の第1の入力端子側及び第2の入力端子側にそれぞれ2つ設けている。このため、第1のワード線WL1、第1のビット線BL1、及び第2のビット線BL2に書込みデータを入力し、第4のワード線WL4、第3のビット線BL3、及び第4のビット線BL4に読出しデータを入力することで、異なるメモリセルにおいて書込み及び読み出しを同時に行うことができる。
【0117】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0118】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示す記憶装置の作製方法について、図2及び図13〜図16を用いて説明する。ここでは、図2の回路図で示す、酸化物半導体膜にチャネル領域を有する第1のトランジスタ101、p型である第7のトランジスタ107、及びn型である第8のトランジスタ108の作製方法について説明する。なお、図13〜図16において、A−Bに示す断面図は、第1のトランジスタ101、第7のトランジスタ107、及び第8のトランジスタ108が形成される領域の断面図に相当し、C−Dに示す断面図は、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方と、第8のトランジスタ108のゲートの接続領域の断面図に相当する。
【0119】
図13(A)に示すように、n型の半導体基板201に素子分離領域203を形成した後、n型の半導体基板201の一部にpウェル領域205を形成する。
【0120】
n型の半導体基板201としては、n型の導電型を有する単結晶シリコン基板(シリコンウェハー)、化合物半導体基板(SiC基板、サファイア基板、GaN基板等)を用いることができる。
【0121】
また、n型の半導体基板201の代わりに、SOI(Silicon On Insulator)基板として、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作られた所謂SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法や、ELTRAN法(Epitaxial Layer Transfer:キャノン社の登録商標)等を用いて形成したSOI基板を用いてもよい。また、n型の半導体基板201の代わりに、絶縁性基板上に結晶性を有する半導体層が形成される基板を用いてもよい。
【0122】
素子分離領域203は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法またはSTI(Shallow Trench Isolation)法等を用いて形成する。
【0123】
pウェル領域205は、ホウ素等のp型を付与する不純物元素が、5×1015cm−3〜1×1016cm−3程度の濃度で添加されている。pウェル領域205は、半導体基板201の一部にマスクを形成したのち、半導体基板201の一部にp型を付与する不純物元素を添加して、形成される。
【0124】
なお、ここでは、n型の半導体基板を用いているが、p型の半導体基板を用い、p型の半導体基板にn型を付与するリン、ヒ素等の不純物元素が添加されたnウェル領域を形成してもよい。
【0125】
次に、図13(B)に示すように、半導体基板201上にゲート絶縁膜207、208及びゲート電極209、210を形成する。
【0126】
熱処理を行い半導体基板201の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成する。または、熱酸化法により酸化シリコン膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化させることにより、酸化シリコン膜と酸素と窒素を有する膜(酸窒化シリコン膜)との積層構造で形成する。次に、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜の一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207、208を形成する。若しくは、厚さ5〜50nmの酸化シリコン、酸化窒化シリコン、高誘電率物質(high−k材料ともいう)であるタンタル酸化物、酸化ハフニウム、酸化ハフニウムシリケート、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物、または酸化ランタンなどの希土類酸化物等を、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成した後、選択的に一部をエッチングして、ゲート絶縁膜207、208を形成する。
【0127】
ゲート電極209、210は、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、クロム、ニオブ等から選択された金属、またはこれらの金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることが好ましい。また、リン等の不純物を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、金属窒化物膜と上記の金属膜の積層構造でゲート電極209、210を形成してもよい。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物膜を設けることにより、金属膜の密着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。
【0128】
ゲート電極209、210は、導電膜をスパッタリング法、CVD法等により形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして形成される。
【0129】
ここでは、熱処理を行い、半導体基板201上の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成し、該酸化シリコン膜上に窒化タンタル膜及びタングステン膜が積層された導電膜をスパッタリング法により形成した後、酸化シリコン膜及び導電膜のそれぞれ一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207、208及びゲート電極209、210を形成する。
【0130】
次に、図13(C)に示すように、半導体基板201にp型を付与する不純物元素を添加してp型の不純物領域213a、213bを形成する。また、pウェル領域205にn型を付与する不純物元素を添加して、n型の不純物領域211a、211bを形成する。n型の不純物領域211a、211b、及びp型の不純物領域213a、213bにおけるn型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素の濃度は、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下である。n型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素は、イオンドーピング法、イオン注入法等を適宜用いて、半導体基板201及びpウェル領域205に添加する。
【0131】
次に、図13(D)に示すように、半導体基板201、素子分離領域203、ゲート絶縁膜207、208、及びゲート電極209、210上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜215、217を形成する。
【0132】
絶縁膜215、217は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜215をCVD法により形成することで、絶縁膜215の水素含有量が高まるため、加熱処理により、半導体基板を水素化し、水素によりダングリングボンドを終端させ、欠陥を低減することができる。
【0133】
また、絶縁膜217として、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などの無機材料、または、ポリイミド、アクリルなどの有機材料を用いて形成することで、絶縁膜217の平坦性を高めることができる。
【0134】
絶縁膜215または絶縁膜217を形成した後、不純物領域211a、211b、213a、213bに添加された不純物元素を活性化するための熱処理を行う。
【0135】
以上の工程により、図2に示すp型である第7のトランジスタ107及びn型である第8のトランジスタ108を作製することができる。
【0136】
次に、絶縁膜215、217の一部を選択的にエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部にコンタクトプラグ219a〜219dを形成する。代表的には、スパッタリング法、CVD法、メッキ法等により導電膜を形成した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化処理を行い、導電膜の表面の不要な部分を除去して、コンタクトプラグ219a〜219dを形成する。
【0137】
コンタクトプラグ219a〜219dとなる導電膜は、WF6ガスとSiH4ガスからCVD法でタングステンシリサイドを形成し、開口部に導電膜を埋め込むことで形成される。
【0138】
次に、絶縁膜217及びコンタクトプラグ219a〜219d上に、スパッタリング法、CVD法、メッキ法等により絶縁膜を形成した後、該絶縁膜の一部を選択的にエッチングし、溝部を有する絶縁膜221a〜221eを形成する。次に、スパッタリング法、CVD法等により導電膜を形成した後、CMP法等により平坦化処理を行い、該導電膜の表面の不要な部分を除去して、配線223a〜223cを形成する(図14(A)参照)。
【0139】
絶縁膜221a〜221eは、絶縁膜215と同様の材料を用いて形成することができる。
【0140】
配線223a〜223cとして、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0141】
平坦化された絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223cを用いることで、後に形成する酸化物半導体膜を有するトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することができる。また、歩留まり高く酸化物半導体膜を有するトランジスタを形成することができる。
【0142】
次に、加熱処理またはプラズマ処理により、絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223cに含まれる水素、水等を脱離させることが好ましい。この結果、後の加熱処理において、後に形成される絶縁膜及び酸化物半導体膜中に水素、水等が拡散することを防ぐことができる。なお、加熱処理は、不活性雰囲気、減圧雰囲気または乾燥空気雰囲気にて、100℃以上基板の歪み点未満で行う。また、プラズマ処理は、希ガス、酸素、窒素または酸化窒素(亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素など)を用いる。
【0143】
次に、絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223c上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜225を形成する。絶縁膜225としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムを単層または積層して形成する。また、絶縁膜225として、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を用いる。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜は、加熱により酸素が脱離するため、加熱により酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができる。
【0144】
次に、絶縁膜225上に、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等を用いて酸化物半導体膜227を形成する(図14(B)参照)。ここでは、酸化物半導体膜227として、スパッタリング法により、1nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上30nm以下の厚さで酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜227の厚さを上記厚さとすることで、トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。
【0145】
酸化物半導体膜227は、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0146】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0147】
例えば、酸化物半導体として、一元系金属酸化物である酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物、Al−Zn系金属酸化物、Zn−Mg系金属酸化物、Sn−Mg系金属酸化物、In−Mg系金属酸化物、In−Ga系金属酸化物、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Hf−Zn系金属酸化物、In−La−Zn系金属酸化物、In−Ce−Zn系金属酸化物、In−Pr−Zn系金属酸化物、In−Nd−Zn系金属酸化物、In−Sm−Zn系金属酸化物、In−Eu−Zn系金属酸化物、In−Gd−Zn系金属酸化物、In−Tb−Zn系金属酸化物、In−Dy−Zn系金属酸化物、In−Ho−Zn系金属酸化物、In−Er−Zn系金属酸化物、In−Tm−Zn系金属酸化物、In−Yb−Zn系金属酸化物、In−Lu−Zn系金属酸化物、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Hf−Ga−Zn系金属酸化物、In−Al−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Hf−Zn系金属酸化物、In−Hf−Al−Zn系金属酸化物を用いることができる。
【0148】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系金属酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0149】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0150】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0151】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(電界効果移動度、しきい値電圧、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0152】
例えば、In−Sn−Zn系金属酸化物では比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を上げることができる。
【0153】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0154】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0155】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い電界効果移動度を得ることができる。
【0156】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の電界効果移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0157】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0158】
【数1】
【0159】
なお、上記において、S0は、測定面(座標(x1,y1)(x1,y2)(x2,y1)(x2,y2)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Z0は測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0160】
なお、酸化物半導体膜227に形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜227において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度は、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアが生成されることがあり、トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
【0162】
また、酸化物半導体膜227には、5×1018atoms/cm3以下の窒素が含まれてもよい。
【0163】
酸化物半導体膜227は、非晶質構造であってもよい。
【0164】
また、酸化物半導体膜227として、結晶化した部分を有するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductorともいう。)を用いてもよい。
【0165】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0166】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向の断面において金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0167】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0168】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OSが形成される基板面やCAAC−OSの表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0169】
CAAC−OSは、その組成等に応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成等に応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0170】
CAAC−OSに含まれる結晶構造の一例について図17乃至図19を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図17乃至図19は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図17において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0171】
図17(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図17(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図17(A)の上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図17(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0172】
図17(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Ga近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図17(B)の上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図17(B)に示す構造をとりうる。図17(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0173】
図17(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図17(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図17(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0174】
図17(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図17(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0175】
図17(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図17(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図17(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0176】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0177】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図17(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図17(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図17(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0178】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0179】
図18(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図18(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図18(C)は、図18(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0180】
図18(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図18(A)において、Inの上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図18(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0181】
図18(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループを複数結合して大グループを構成する。
【0182】
ここで、3配位のO及び4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図17(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0183】
具体的には、図18(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(In2SnZn3O8)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、In2SnZn2O7(ZnO)m(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0184】
また、このほかにも、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系金属酸化物、In−La−Zn系金属酸化物、In−Ce−Zn系金属酸化物、In−Pr−Zn系金属酸化物、In−Nd−Zn系金属酸化物、In−Sm−Zn系金属酸化物、In−Eu−Zn系金属酸化物、In−Gd−Zn系金属酸化物、In−Tb−Zn系金属酸化物、In−Dy−Zn系金属酸化物、In−Ho−Zn系金属酸化物、In−Er−Zn系金属酸化物、In−Tm−Zn系金属酸化物、In−Yb−Zn系金属酸化物、In−Lu−Zn系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物、Al−Zn系金属酸化物、Zn−Mg系金属酸化物、Sn−Mg系金属酸化物、In−Mg系金属酸化物や、In−Ga系金属酸化物などを用いた場合も同様である。
【0185】
例えば、図19(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0186】
図19(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0187】
図19(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図19(C)は、図19(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0188】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、Zn及びGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0189】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図19(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0190】
具体的には、図19(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO3(ZnO)n(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0191】
n=1(InGaZnO4)の場合は、例えば、図20(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図20(A)に示す結晶構造において、図17(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0192】
また、n=2(InGaZn2O5)の場合は、例えば、図20(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図20(B)に示す結晶構造において、図17(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0193】
ここでは、酸化物半導体膜227として非晶質構造の酸化物半導体膜をスパッタリング法により形成する。
【0194】
スパッタリング法に用いるターゲットとしては、亜鉛を含む金属酸化物ターゲットを用いることができる。ターゲットとしては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、In−Al−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物や、一元系金属酸化物であるZn系金属酸化物、Sn系金属酸化物などのターゲットを用いることができる。
【0195】
ターゲットの一例として、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲットを、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比とする。また、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲット、In2O3:Ga2O3:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。また、In2O3:ZnO=25:1[mol数比]〜1:4の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0196】
また、酸化物半導体膜227としてIn−Ga−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜227を成膜することで、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。
【0197】
また、酸化物半導体膜227としてIn−Sn−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜227を成膜することで、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。
【0198】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスには、水素を含む不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0199】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0200】
なお、酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m3/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。
【0201】
また、酸化物半導体膜を成膜する処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。さらに、水の排気能力の高いクライオポンプまたは水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0202】
酸化物半導体膜を成膜する処理室の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために成膜室の圧力に影響しないが、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0203】
このように、酸化物半導体膜の成膜工程において、更に好ましくは酸化絶縁膜の成膜工程において、処理室の圧力、処理室のリークレートなどにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体膜に含まれる水素を含む不純物の混入を低減することができる。また、酸化絶縁膜から酸化物半導体膜への水素などの不純物の拡散を低減することができる。
【0204】
また、酸化物半導体膜をスパッタリング装置で成膜する前に、スパッタリング装置にダミー基板を搬入し、ダミー基板上に酸化物半導体膜を成膜して、ターゲット表面、または防着板に付着した水素、水を取り除く工程を行ってもよい。
【0205】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した部分)には欠損が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜の成膜工程において、水素を含む不純物を極めて減らすことにより、酸化物半導体膜の欠損を低減することが可能である。このため、不純物をできるだけ除去し、高純度化させた酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0206】
次に、酸化物半導体膜227より水素を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜の界面近傍に拡散させる。この結果、後に形成されるトランジスタにおいて、水素濃度、及び絶縁膜225との界面近傍における酸素欠損が低減された酸化物半導体膜228を形成することができる(図14(C)参照)。
【0207】
該加熱処理の温度は、酸化物半導体膜227から水素を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を放出させ、さらには酸化物半導体膜227に拡散させる温度が好ましく、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
【0208】
また、該加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、酸化物半導体膜からの水素の放出、及び絶縁膜225から酸化物半導体膜への酸素拡散の時間を短縮することができる。
【0209】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。または、減圧雰囲気または不活性ガス雰囲気で加熱処理を行った後、酸素雰囲気で加熱処理を行ってもよい。これは、減圧雰囲気または不活性雰囲気にて加熱処理を行うと、酸化物半導体膜227中の不純物濃度を低減することができるが、同時に酸素欠損も生じてしまうためであり、このとき生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気での加熱処理により低減することができる。
【0210】
酸化物半導体膜227に加熱処理を行うことで、膜中の不純物準位を極めて小さくすることが可能となる。その結果、トランジスタの電界効果移動度を後述する理想的な電界効果移動度近くまで高めることが可能となる。
【0211】
次に、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングして、酸化物半導体膜229を形成する。次に、酸化物半導体膜229上に、スパッタリング法、CVD法等により絶縁膜231を形成する。次に、絶縁膜231上にゲート電極233を形成する(図15(A)参照)。
【0212】
絶縁膜231は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn−O系金属酸化物膜などを用いればよく、積層または単層で設ける。また、絶縁膜231は、絶縁膜225に示すような、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜を用いてもよい。絶縁膜231に加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、後の加熱処理により酸化物半導体膜229に生じる酸素欠損を修復することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
【0213】
また、絶縁膜231として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲート絶縁膜の厚さを薄くしてもゲートリークを低減できる。
【0214】
絶縁膜231の厚さは、10nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下とするとよい。
【0215】
ゲート電極233は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極233は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0216】
また、ゲート電極233は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0217】
ゲート電極233は、印刷法またはインクジェット法により形成される。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、形成される。
【0218】
なお、ゲート電極233と絶縁膜231との間に、絶縁膜231に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリ・オフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜229より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上の窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
【0219】
この後、加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理により、絶縁膜225及び絶縁膜231から酸化物半導体膜229に酸素を拡散させて、酸化物半導体膜229に含まれる酸素欠陥を補填し、酸素欠陥を低減することができる。
【0220】
次に、ゲート電極233をマスクとして、酸化物半導体膜229にドーパントを添加する処理を行う。この結果、図15(B)に示すように、ゲート電極233に覆われ、ドーパントが添加されない第1の領域235aと、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを形成する。ゲート電極233をマスクにしてドーパントを添加するため、セルフアラインで、ドーパントが添加されない第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを形成することができる。なお、ゲート電極233と重畳する第1の領域235aはチャネル領域として機能する。また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cにより、ソース−ドレイン耐圧を高めることができる。また、第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを酸化物半導体膜235と示す。
【0221】
酸化物半導体膜229の第1の領域235aは、水素濃度を5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることが好ましい。酸化物半導体及び水素の結合により、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。これらのため、酸化物半導体膜229の第1の領域235a中の水素濃度を低減することで、しきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
【0222】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cに含まれるドーパントの濃度は、5×1018atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以上5×1019atoms/cm3未満とする。
【0223】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cはドーパントを含むため、キャリア密度または欠陥を増加させることができる。このため、ドーパントを含まない第1の領域235aと比較して導電性を高めることができる。なお、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの導電性を低下させることになる。
【0224】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cは、導電率が0.1S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは10S/cm以上1000S/cm以下とすることが好ましい。
【0225】
酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを有することで、チャネル領域として機能する第1の領域235aの端部に加わる電界を緩和させることができる。このため、トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。
【0226】
酸化物半導体膜229にドーパントを添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。また、添加するドーパントとしては、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の少なくとも一以上がある。または、ドーパントとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの少なくとも一以上がある。または、ドーパントとしては、水素がある。なお、ドーパントとして、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の一以上と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの一以上と、水素とを適宜組み合わしてもよい。
【0227】
また、酸化物半導体膜229へのドーパントの添加は、酸化物半導体膜229を覆って、絶縁膜などが形成されている状態を示したが、酸化物半導体膜229が露出している状態でドーパントの添加を行ってもよい。
【0228】
さらに、上記ドーパントの添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入する以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、ドーパントを添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やCVD装置などを用いることができる。
【0229】
この後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下とする。または、250℃から325℃まで徐々に温度上昇させながら加熱してもよい。
【0230】
当該加熱処理により、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの抵抗を低減することができる。なお、当該加熱処理において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cは、結晶状態でも非晶質状態でもよい。
【0231】
次に、図15(C)に示すように、ゲート電極233の側面にサイドウォール絶縁膜237、及びゲート絶縁膜239、並びに電極241a、241bを形成する。
【0232】
サイドウォール絶縁膜237は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜237として、絶縁膜225と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。
【0233】
ここで、サイドウォール絶縁膜237の形成方法について説明する。
【0234】
まず、絶縁膜231及びゲート電極233上に、後にサイドウォール絶縁膜237となる絶縁膜を形成する。絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。また、当該絶縁膜の厚さは特に限定はないが、ゲート電極233の形状に応じる被覆性を考慮して、適宜選択すればよい。
【0235】
次に、絶縁膜をエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜237を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、サイドウォール絶縁膜237は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことでセルフアラインに形成することができる。
【0236】
また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの幅は、サイドウォール絶縁膜237の幅に対応し、またサイドウォール絶縁膜237の幅は、ゲート電極233の厚さにも対応することから、第2の領域235b、235cの範囲が、所望の範囲となるように、ゲート電極233の厚さを決めればよい。
【0237】
また、サイドウォール絶縁膜237の形成工程と共に、異方性の高いエッチングを用いて絶縁膜251をエッチングし、酸化物半導体膜229を露出させることで、ゲート絶縁膜239を形成することができる。
【0238】
一対の電極241a、241bは配線223a〜223cと同様の材料を適宜用いて形成することができる。なお、一対の電極241a、241bは配線としても機能させてもよい。
【0239】
一対の電極241a、241bは、印刷法またはインクジェット法を用いて形成される。または、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、一対の電極241a、241bを形成する。
【0240】
一対の電極241a、241bは、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239の側面と接するように、形成されることが好ましい。即ち、トランジスタの一対の電極241a、241bの端部がサイドウォール絶縁膜237上に位置し、酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの露出部を全て覆っていることが好ましい。この結果、ドーパントが含まれる一対の第2の領域235b、235cにおいて、一対の電極241a、241bと接する領域がソース領域及びドレイン領域として機能すると共に、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239と重なる領域により、ソース−ドレイン耐圧を高めることができる。また、サイドウォール絶縁膜237の長さによりソース−ドレイン間の距離が制御できるため、酸化物半導体膜229と接する一対の電極241a、241bのチャネル側の端部を、マスクを用いずに形成させることができる。また、マスクを使用しないため、複数のトランジスタにおける加工ばらつきを低減することができる。
【0241】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有するトランジスタ101を作製することができる。
【0242】
次に、図16(A)に示すように、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等により、絶縁膜243及び絶縁膜245を形成する。
【0243】
絶縁膜243、245は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜245として、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、絶縁膜243から脱離する酸素を酸化物半導体膜に供給することができる。外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。また、絶縁膜245として、外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、外部から酸化物半導体膜への水素の拡散を低減することが可能であり、酸化物半導体膜の欠損を低減することができる。外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。また、絶縁膜243として、絶縁膜225と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜と、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜と、酸化絶縁膜との3層構造とすることで、効率よく酸化物半導体膜へ酸素を拡散すると共に、外部への酸素の脱離を抑制することが可能であり、温度及び湿度の高い状態でも、トランジスタの特性の変動を低減することができる。
【0244】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有するトランジスタを作製することができる。
【0245】
次に、絶縁膜215、217、221e、243、245のそれぞれ一部を選択的にエッチングし、開口部を形成すると共に、ゲート電極209及び一対の電極の一方のそれぞれ一部を露出する。次に、開口部に導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、配線249を形成する。配線249は、コンタクトプラグ219a〜219dに示す材料を適宜用いることができる。
【0246】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有する第1のトランジスタ101のソース及びドレインの他方と、n型である第8のトランジスタ108のゲートを接続することができる。
【0247】
記憶装置を構成する記憶素子において、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタ上に、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを積層することができる。この結果、記憶装置の高集積化が可能である。
【0248】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0249】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示す酸化物半導体膜229に、CAAC−OSを用いて形成する方法について、説明する。
【0250】
CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する第1の方法について、以下に説明する。
【0251】
CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する方法は、実施の形態3の図14(B)に示す酸化物半導体膜227となる酸化物半導体膜の方法において、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下とすることで、酸化物半導体膜中への水素、水等の混入を低減しつつ、CAAC−OSを形成することができる。
【0252】
上記形成方法によりCAAC−OSを用いて酸化物半導体膜を形成した後に加熱することで、酸化物半導体膜227からより水素、水等を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜227と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜227の界面近傍に拡散させることができると共に、当該加熱処理により、より結晶性の高いCAAC−OSを有する酸化物半導体膜228を形成することができる。この後、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜229を形成することができる。
【0253】
次に、CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する第2の方法について、以下に説明する。
【0254】
絶縁膜225上に第1の酸化物半導体膜を形成する。第1の酸化物半導体膜は、一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下とする。
【0255】
第1の酸化物半導体膜は、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、さらに好ましくは200℃以上500℃以下とし、酸素ガス雰囲気で成膜する。これにより、成膜時の基板加熱温度が高いほど、得られる酸化物半導体膜の不純物濃度は低くなる。また、形成した第1の酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等の不純物の混入を低減させることができる。また、酸化物半導体膜中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。さらに、酸素ガス雰囲気で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。ただし、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。なお、酸化物半導体膜は薄いほど、トランジスタの短チャネル効果が低減される。ただし、薄くしすぎると界面散乱の影響が強くなり、電界効果移動度の低下が起こることがある。
【0256】
なお、第1の酸化物半導体膜の形成後、第1の加熱処理を行ってもよい。該第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜から、より水素、水等を脱離させることができ、さらに結晶性も向上させることができる。該第1の加熱処理を行うことにより、配向性の高いCAAC−OSを形成することができる。また、該第1の加熱処理は、200℃以上基板の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0257】
また該第1の加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0258】
該第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気及び減圧雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0259】
次に、第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を成膜する。第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜と同様の方法で成膜することができる。
【0260】
第2の酸化物半導体膜を成膜する際、基板加熱しながら成膜することで、第1の酸化物半導体膜を種結晶として、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。このとき、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜が同一の元素から構成されることをホモ成長という。または、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されることをヘテロ成長という。
【0261】
なお、第2の酸化物半導体膜を成膜した後、第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の方法で行えばよい。第2の加熱処理を行うことによって、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜とすることができる。または、第2の加熱処理を行うことによって、第1の酸化物半導体膜を種結晶として、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。
【0262】
以上の方法により、酸化物半導体膜中への水素、水等などの混入を低減しつつ、CAAC−OSからなる酸化物半導体膜227を形成した後の加熱処理により、酸化物半導体膜227からより水素、水等を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜227と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜227の界面近傍とに拡散させることができると共に、当該加熱処理により、より結晶性の高いCAAC−OSを有する酸化物半導体膜228を形成することができる。この後、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングして、酸化物半導体膜229を形成することができる。
【0263】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した部分)には欠損が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜の成膜工程において、不純物を極めて減らすことにより、酸化物半導体膜の欠損を低減することが可能である。このため、不純物をできるだけ除去し、高純度化させたCAAC−OSからなる酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、トランジスタに対する光照射やBT(Bias Temperature)ストレス試験前後でのしきい値電圧の変化量が少ないため、安定した電気的特性を有することができる。
【0264】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態5)
本実施の形態では、酸化物半導体膜を用いてチャネル領域が形成されるトランジスタの電界効果移動度について説明する。
【0266】
酸化物半導体に限らず、実際に測定されるトランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の電界効果移動度よりも低くなる。電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0267】
半導体本来の移動度をμ0、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、電界効果移動度をμは以下の式で表される。
【0268】
【数2】
【0269】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、Eはポテンシャル障壁の高さを以下の式で表される。
【0270】
【数3】
【0271】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体膜であれば、チャネルの厚さは半導体膜の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Idは、以下の式となる。
【0272】
【数4】
【0273】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vdはドレイン電圧である。上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、ドレイン電流Idは以下のようになる。
【0274】
【数5】
【0275】
数5の右辺はVgの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのId―Vg特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm2程度である。
【0276】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数2及び数3よりμ0=120cm2/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される電界効果移動度は40cm2/Vs程度である。しかし、半導体内部及び半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の電界効果移動度μ0は120cm2/Vsとなると予想できる。
【0277】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における電界効果移動度μ1は、以下の式で表される。
【0278】
【数6】
【0279】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。B及びGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×107cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、電界効果移動度μ1は低下することがわかる。
【0280】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの電界効果移動度μ2を計算した結果を図21に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0281】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長及びチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vdは0.1Vである。
【0282】
図21で示されるように、ゲート電圧1V強で電界効果移動度100cm2/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、電界効果移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体膜表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0283】
このような電界効果移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図22乃至図24に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図25に示す。図25に示すトランジスタは酸化物半導体膜にn型の不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cを有する。不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0284】
図25(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101、及び下地絶縁膜1101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成される。トランジスタは不純物半導体領域1103a、不純物半導体領域1103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域1103bと、ゲート電極1105を有する。ゲート電極1105の幅(即ち、チャネル長)を33nmとする。
【0285】
ゲート電極1105と半導体領域1103bの間には、ゲート絶縁膜1104を有し、ゲート電極1105の両側面にはサイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106b、ゲート電極1105の上部には、ゲート電極1105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物1107を有する。サイドウォール絶縁膜の幅は5nmとする。また、不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cに接して、ソース電極1108a及びドレイン電極1108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0286】
図25(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101、及び酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成され、不純物半導体領域1103a、不純物半導体領域1103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域1103bと、幅33nmのゲート電極1105とゲート絶縁膜1104とサイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bと絶縁物1107とソース電極1108a及びドレイン電極1108bを有する点で図25(A)に示すトランジスタと同じである。
【0287】
図25(A)に示すトランジスタと図25(B)に示すトランジスタの相違点は、サイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bの下の半導体領域の導電型である。図25(A)に示すトランジスタでは、サイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bの下の半導体領域はn型の不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cであるが、図25(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域1103bである。すなわち、不純物半導体領域1103a(不純物半導体領域1103c)とゲート電極1105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、サイドウォール絶縁膜1106a(サイドウォール絶縁膜1106b)の幅と同じである。
【0288】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図22は、図25(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)及び電界効果移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0289】
図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図22(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmとしたものであり、図22(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、10μAを超えることが示された。即ち、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。
【0290】
図23は、図25(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図23(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図23(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmとしたものであり、図23(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmとしたものである。
【0291】
また、図24は、図25(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図24(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図24(B)は10nmとしたものであり、図24(C)は5nmとしたものである。
【0292】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、電界効果移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0293】
なお、電界効果移動度μのピークは、図22では80cm2/Vs程度であるが、図23では60cm2/Vs程度、図24では40cm2/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流はオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、10μAを超えることが示された。即ち、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。
【実施例1】
【0294】
本実施例では、酸化物半導体としてIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル領域に用いたトランジスタの電気特性及び信頼性について説明する。
【0295】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0296】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜時または成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0297】
例えば、図26(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vdsは10Vとした。
【0298】
図26(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm2/Vsが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図26(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm2/Vsが得られている。
【0299】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図26(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm2/Vsが得られている。
【0300】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm2/Vsを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0301】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水を放出させ、その熱処理と同時にまたはその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させてもよい。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性のよい非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0302】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/または成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図26(A)と図26(B)の対比からも確認することができる。
【0303】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0304】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0305】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/または成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0306】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT(Bias Temperature)ストレス試験を行った。
【0307】
まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。なお、Vdsはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVgsに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをプラスBTストレス試験と呼ぶ。
【0308】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVgsに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをマイナスBTストレス試験と呼ぶ。
【0309】
試料1のプラスBTストレス試験の結果を図27(A)に、マイナスBTストレス試験の結果を図27(B)に示す。また、試料2のプラスBTストレス試験の結果を図28(A)に、マイナスBTストレス試験の結果を図28(B)に示す。
【0310】
試料1のプラスBTストレス試験及びマイナスBTストレス試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80V及び−0.42Vであった。また、試料2のプラスBTストレス試験及びマイナスBTストレス試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79V及び0.76Vであった。試料1及び試料2のいずれも、BTストレス試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0311】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行ってもよい。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用してもよい。
【0312】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm3以上2×1020/cm3以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0313】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0314】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0315】
XRD分析を行った試料として、試料A及び試料Bを用意した。以下に試料A及び試料Bの作製方法を説明する。
【0316】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0317】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0318】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0319】
図29に試料A及び試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍及び37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0320】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/または成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0321】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素、水酸基、水等を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0322】
図30に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0323】
具体的には、図30に示すように、基板温度Tが125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0324】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素、水等が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素、水等の不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水の放出温度が高いため、好ましくは最初から水の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0325】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0326】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vdsは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃及び150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出し幅をdWと呼ぶ。
【0327】
図31に、Ids(実線)及び電界効果移動度(点線)のVgs依存性を示す。また、図32(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図32(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0328】
図32(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0329】
また、図32(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm2/Vs〜32cm2/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0330】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm2/Vs以上、好ましくは40cm2/Vs以上、より好ましくは60cm2/Vs以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、シリコン半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【0331】
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性の記憶装置、及び当該記憶装置を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、高速動作が必要な場合、データを記憶する記憶部としてSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリが用いられている。一方、電源遮断時において、データを保持する必要が有る場合は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリが用いられている。
【0003】
電源遮断時において、情報の保持を確実に行うため、半導体装置に電源が供給されている時は、SRAM等の高速動作が可能な揮発性メモリを使用し、電源が遮断される直前に低速動作である不揮発性メモリに情報を書き込むバックアップ方式がある。
【0004】
また、揮発性メモリであるSRAMの電源を切ってもデータが保持されるSRAMの不揮発化(不揮発性SRAMともいう)として、メモリセル内に強誘電体キャパシタを設けた不揮発性メモリの研究開発が進められている(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−146048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックアップ方式は、データを保持している揮発性メモリの数が多いと、データのバックアップに時間がかかり、電源遮断前と、電源復帰後にかかる消費電力が多くなる。
【0007】
一方、強誘電体キャパシタ等の不揮発性の記憶素子をメモリセル内に有する記憶装置は、製造コストが高い、書き込み速度が遅いなどのデメリットがあるといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、高速動作が可能であり、且つ消費電力を低減することが可能な記憶装置、及び該記憶装置を有する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、第1の入力端子、及び第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、第1の信号が入力される第3の入力端子、及び第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第1の入力端子に入力され、第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、レベルシフタの第2の入力端子に入力される。
【0010】
なお、第1のバッファの第3の出力端子と、レベルシフタの第1の入力端子とが接続される第1のノードにおいて、第1のデータを保持し、第2のバッファの第4の出力端子と、レベルシフタの第2の入力端子とが接続される第2のノードにおいて、第2のデータを保持する。また、第1のバッファ及び第2のバッファはそれぞれ、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されている。
【0011】
本発明の一態様は、直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、直列接続する第5のトランジスタ及び第6のトランジスタ、並びに直列接続する第7のトランジスタ及び第8のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、第1のトランジスタ、第4のトランジスタ、及び第7のトランジスタのゲート、並びに、第5のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第6のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、第2のトランジスタ、第3のトランジスタ、及び第5のトランジスタのゲート、並びに、第7のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第8のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、第6のトランジスタのゲートが、第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、第8のトランジスタのゲートが、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードとを有し、第1のノード及び第2のノードにおいて、データを保持する記憶素子を有することを特徴とする。
【0012】
第1のトランジスタ乃至第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、第5のトランジスタ及び第7のトランジスタは、p型のトランジスタであり、第6のトランジスタ及び第8のトランジスタは、n型のトランジスタである。
【0013】
また、本発明の一態様は、直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、直列接続する第5のトランジスタ乃至第7のトランジスタ、及び直列接続する第8のトランジスタ乃至第10のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、第1のトランジスタ、第4のトランジスタ、及び第8のトランジスタのゲート、並びに、第6のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第7のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、第2のトランジスタ、第3のトランジスタ、及び第5のトランジスタのゲート、並びに、第9のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第10のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、第6のトランジスタ及び第7のトランジスタのゲートが、第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、第9のトランジスタ及び第10のトランジスタのゲートが、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードにおいて、データを保持する記憶素子を有することを特徴とする。
【0014】
上記記憶素子は、バッファの出力端子(トランジスタのソース及びドレインの一方)及びレベルシフタの入力端子(トランジスタのゲート)の接続部であるノードにおいて、データを保持する。バッファは、リーク電流が極めて低い酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタで構成される。このため、電源電圧の供給が停止した後も、ノードの電圧を長期間に渡って保持することが可能となる。このため、記憶素子は不揮発性である。
【0015】
また、長期の電源遮断によりノードにおける電位が変動しても、ノードの電位のリフレッシュが容易であるため、データ保持の誤動作を低減することができる。
【0016】
また、電源遮断の後、電源が供給された場合、記憶装置のデータのバックアップをしなくともよいため、半導体装置の即時電源遮断や、電源供給後の高速復帰が可能であり、消費電力を低減できる。
【0017】
また、上記記憶素子を複数有する記憶装置において、データの書込及び読み出しを行わない記憶素子は、電源を選択的に遮断できるため、半導体装置の消費電力を低減できる。
【0018】
記憶素子は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタと、当該トランジスタに接続する、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタとで構成される。このため、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタ上に、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを積層することができ、半導体装置の高集積化が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されたバッファ、及びレベルシフタを用いて記憶素子を構成するため、電源が遮断されても記憶素子にデータを保持することができる。このため、起動時間を短縮することができると共に、低消費電力化が可能である。また、記憶素子において、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタでレベルシフタを形成し、当該レベルシフタ上に酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタでバッファを形成する。即ち、レベルシフタ及びバッファを積層させることができるため、高集積化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一態様に係る記憶素子を説明するブロック図である。
【図2】本発明の一態様に係る記憶素子を説明する回路図である。
【図3】本発明の一態様に係る記憶素子を説明する回路図である。
【図4】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図6】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図7】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図8】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図9】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図10】本発明の一態様に係る記憶素子の動作を説明する回路図である。
【図11】本発明の一態様に係る記憶装置を説明する図である。
【図12】本発明の一態様に係る記憶装置を説明する図である。
【図13】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図14】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図15】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図16】本発明の一態様に係る記憶装置の作製方法を説明する断面図である。
【図17】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図18】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図19】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図20】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図である。
【図21】計算によって得られた電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図22】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図23】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図24】計算によって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図25】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図である。
【図26】酸化物半導体膜を用いたトランジスタによって得られたドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図27】試料1のトランジスタのBTストレス試験後のドレイン電流を説明する図である。
【図28】試料2であるトランジスタのBTストレス試験後のドレイン電流を説明する図である。
【図29】試料A及び試料BのXRDスペクトルを説明する図である。
【図30】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を説明する図である。
【図31】ドレイン電流と電界効果移動度のゲート電圧依存性を説明する図である。
【図32】基板温度としきい値電圧の関係及び基板温度と電界効果移動度の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0023】
「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限はない。
【0024】
回路図上は独立している構成要素どうしが電気的に接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0025】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0026】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0027】
(実施の形態1)
記憶装置に含まれる記憶素子の一形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に示す記憶素子を説明するブロック図である。
【0029】
本実施の形態に示す記憶素子Mは、レベルシフタL、バッファB1、及びバッファB2を有する。
【0030】
レベルシフタLは、第1の入力端子INと、第2の入力端子INBと、第1の出力端子OUTと、第2の出力端子OUTBを有する。第2の入力端子INBには、第1の入力端子INに入力される信号の反転信号が入力される。第1の出力端子OUTからは、信号S1が出力される。第2の出力端子OUTBからは、第1の出力端子OUTから出力される信号S1の反転信号S1Bが出力される。
【0031】
バッファB2は、第1の入力端子A2と、第2の入力端子A2Bと、出力端子X2とを有する。第2の入力端子A2Bには、レベルシフタLの第1の出力端子OUTから出力される信号S1が入力される。第1の入力端子A2には、レベルシフタLの第2の出力端子OUTBから出力される信号S1の反転信号S1Bが入力される。出力端子X2からは、信号S2が出力され、当該信号S2がレベルシフタLの第1の入力端子INに入力される。なお、信号S2は信号S1と論理値が同じ(例えば、信号S1及び信号S2の電位がHigh(または1を示す電位))である。
【0032】
バッファB1は、第1の入力端子A1と、第2の入力端子A1Bと、出力端子X1とを有する。第2の入力端子A1Bには、レベルシフタLの第2の出力端子OUTBから出力される信号S1の反転信号S1Bが入力される。第1の入力端子A1には、レベルシフタLの第1の出力端子OUTから出力される信号S1が入力される。出力端子X1からは、信号S2の反転信号S2Bが出力され、当該反転信号S2BがレベルシフタLの第2の入力端子INに入力される。なお、反転信号S2Bも反転信号S1Bと論理値が同じ(例えば、反転信号S1B及び反転信号S2Bの電位がLow(または0を示す電位))である。なお、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタLの第1の出力端子OUTが、図2に示す第1の端子Dと接続する。また、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタLの第2の出力端子OUTBが、図2に示す第2の端子DBと接続する。
【0033】
バッファB1、B2は、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタが直列接続している。また、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタのソース及びドレイン一方の接続部において、出力端子X1、X2を構成する。オフ電流の低いトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体膜、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0034】
本実施の形態に示す記憶素子Mは、バッファB1の出力端子X1及びレベルシフタLの第2の入力端子INBの接続部(ノードN1)において電位(またはそれに対応する電荷量)をデータに応じて制御することにより、第1のデータを保持する。また、バッファB2の出力端子X2及びレベルシフタLの第1の入力端子INの接続部(ノードN2)において電位(またはそれに対応する電荷量)をデータに応じて制御することにより、第1のデータと反転する第2のデータを保持する。例えば、ノードN2に所定の電位が充電された状態を「1」に対応させ、ノードN1に電位が充電されていない状態を「0」に対応させることによって、1ビットのデータを記憶することができる。
【0035】
バッファB1及びバッファB2をそれぞれ、オフ電流が極めて低い、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを直列接続して形成する。また、バッファB1、B2の出力端子X1、X2は、オフ電流の極めて低いn型のトランジスタのソース及びドレイン一方の接続部であり、当該接続部において、レベルシフタLの入力端子の電位を制御している。このため、電源が遮断されても、第1のデータ及び第2のデータを保持することができることから、記憶素子Mは、不揮発性である。
【0036】
また、レベルシフタLから出力される信号は、バッファB1、B2を介して、レベルシフタLに入力されるため、レベルシフタLの出力データがフィードバックされる。即ち、記憶素子Mは、不揮発性のラッチとなる。また、長期の電源遮断時よりノードN1、N2で保持された電位の変動があっても、電源供給時にノードN1、N2の電位をリフレッシュすることが可能であり、記憶素子のデータの変動を低減することができる。
【0037】
次に、図1に示す記憶素子Mの具体的な回路構成について、図2及び図3を用いて説明する。
【0038】
図2は、記憶素子100の一形態を示す回路図である。記憶素子100は、直列接続する第1のトランジスタ101及び第2のトランジスタ102で構成されるバッファB1と、直列接続する第3のトランジスタ103及び第4のトランジスタ104で構成されるバッファB2と、レベルシフタ109とを有する。レベルシフタ109は、直列接続する第5のトランジスタ105及び第6のトランジスタ106と、直列接続する第7のトランジスタ107及び第8のトランジスタ108とを有する。
【0039】
バッファB1において、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方、並びに第2のトランジスタ102のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB1の出力端子X1である。
【0040】
バッファB2において、第3のトランジスタ103のソース及びドレインの一方、並びに第4のトランジスタ104のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB2の出力端子X2である。
【0041】
レベルシフタ109において、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方、並びに第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ109の第2の出力端子OUTBである。
【0042】
レベルシフタ109において、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方、並びに第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ109の第1の出力端子OUTである。
【0043】
第1のトランジスタ101、第3のトランジスタ103、第5のトランジスタ105、及び第7のトランジスタ107のソース及びドレインの他方は、高電源電位Vddを供給する配線に接続する。
【0044】
第2のトランジスタ102、第4のトランジスタ104、第6のトランジスタ106、及び第8のトランジスタ108のソース及びドレインの他方は、低電源電位Vssを供給する配線に接続する。
【0045】
第2のトランジスタ102のゲート、第3のトランジスタ103のゲート、及び第5のトランジスタ105のゲート、並びに、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方並びに第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子Dと接続する。即ち、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタの第1の出力端子OUTが、第1の端子Dと接続する。
【0046】
また、第1のトランジスタ101のゲート、第4のトランジスタ104のゲート、及び第7のトランジスタ107のゲート、並びに、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方並びに第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子DBと接続する。即ち、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタの第2の出力端子OUTBが、第2の端子DBと接続する。
【0047】
なお、第1の端子Dに入出力される信号は図1に示す信号S1に相当する。また、第2の端子DBに入出力される信号は、図1に示す反転信号S1Bに相当する。即ち、第2の端子DBに入力される信号は、第1の端子Dに入力される信号の反転信号である。また、第2の端子DBから出力される信号は、第1の端子Dから出力される信号の反転信号である。第1の端子D及び第2の端子DBは、外部から同時に信号が入力される。また、第1の端子D及び第2の端子DBから同時に外部に信号を出力する。
【0048】
また、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方並びに第2のトランジスタ102のソース及びドレインの一方の接続部は、第8のトランジスタ108のゲートと接続する。即ち、バッファB1の出力端子X1と、レベルシフタの第2の入力端子INBが接続する。なお、当該接続部をノードN1と示す。
【0049】
また、第3のトランジスタ103のソース及びドレインの一方並びに第4のトランジスタ104のソース及びドレインの一方の接続部は、第6のトランジスタ106のゲートと接続する。即ち、バッファB2の出力端子X2と、レベルシフタの第1の入力端子INが接続する。なお、当該接続部をノードN2と示す。
【0050】
第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104は、オフ電流の低いn型のトランジスタで形成される。オフ電流の低いトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0051】
ここで、オフ電流の低いn型のトランジスタとして、酸化物半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタを用いて説明する。なお、図中では、トランジスタのチャネル領域が酸化物半導体膜で形成されていることを示すため、「OS」の符号を付している。
【0052】
また、第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107は、p型のトランジスタで形成される。第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は、n型のトランジスタで形成される。第5のトランジスタ105乃至第8のトランジスタ108は、後述する半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタである。
【0053】
次に、記憶装置に含まれる記憶素子の別形態について、図3を用いて説明する。本実施の形態で説明する記憶素子110は、図2に示す記憶素子100と比較して、レベルシフタ回路の一部のトランジスタがインバータで構成されている点が異なる。
【0054】
図3は、記憶素子110の一形態を示す回路図である。記憶素子110は、直列接続する第1のトランジスタ111及び第2のトランジスタ112で構成されるバッファB1と、直列接続する第3のトランジスタ113及び第4のトランジスタ114で構成されるバッファB2と、レベルシフタ129とを有する。レベルシフタ129は、直列接続する第5のトランジスタ115、第6のトランジスタ116、及び第7のトランジスタ117と、直列接続する第8のトランジスタ118、第9のトランジスタ119、及び第10のトランジスタ120とを有する。
【0055】
バッファB1において、第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方、並びに第2のトランジスタ112のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB1の出力端子X1である。
【0056】
バッファB2において、第3のトランジスタ113のソース及びドレインの一方、並びに第4のトランジスタ114のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がバッファB2の出力端子X2である。
【0057】
レベルシフタ129において、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの一方、並びに第7のトランジスタ117のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ129の第2の出力端子OUTBである。また、第5のトランジスタ115のソース及びドレインの一方と、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの他方が接続する。
【0058】
レベルシフタ129において、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの一方、並びに第10のトランジスタ120のソース及びドレインの一方が接続する。また、当該接続部がレベルシフタ129の第1の出力端子OUTである。また、第8のトランジスタ118のソース及びドレインの一方と、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの他方が接続する。
【0059】
第1のトランジスタ111、第3のトランジスタ113、第5のトランジスタ115、及び第8のトランジスタ118のソース及びドレインの他方は、高電源電位Vddを供給する配線に接続する。
【0060】
第2のトランジスタ112、第4のトランジスタ114、第7のトランジスタ117、及び第10のトランジスタ120のソース及びドレインの他方は、低電源電位Vssを供給する配線に接続する。
【0061】
第2のトランジスタ112のゲート、第3のトランジスタ113のゲート、及び第5のトランジスタ115のゲート、並びに、第9のトランジスタ119のソース及びドレインの一方並びに第10のトランジスタ120のソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子Dと接続する。即ち、バッファB1の第1の入力端子A1、バッファB2の第2の入力端子A2B、及びレベルシフタの第1の出力端子OUTが、第1の端子Dと接続する。
【0062】
また、第1のトランジスタ111のゲート、第4のトランジスタ114のゲート、及び第8のトランジスタ118のゲート、並びに、第6のトランジスタ116のソース及びドレインの一方並びに第7のトランジスタ117のソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子DBと接続する。即ち、バッファB1の第2の入力端子A1B、バッファB2の第1の入力端子A2、及びレベルシフタの第2の出力端子OUTBが第2の端子DBと接続する。
【0063】
また、第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方並びに第2のトランジスタ112のソース及びドレインの一方の接続部は、第9のトランジスタ119及び第10のトランジスタ120のゲートと接続する。即ち、バッファB1の出力端子X1と、レベルシフタの第2の入力端子INBが接続する。なお、当該接続部をノードN11と示す。
【0064】
また、第3のトランジスタ113のソース及びドレインの一方並びに第4のトランジスタ114のソース及びドレインの一方の接続部は、第6のトランジスタ116及び第7のトランジスタ117のゲートと接続する。即ち、バッファB2の出力端子X2と、レベルシフタの第1の入力端子INが接続する。なお、当該接続部をノードN12と示す。
【0065】
第1のトランジスタ111乃至第4のトランジスタ114は、オフ電流の低いn型のトランジスタで形成される。オフ電流の低いn型のトランジスタとは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上と、エネルギーギャップの広い半導体膜でチャネル領域が形成されるトランジスタであり、代表的には、チャネル領域が、酸化物半導体膜、炭化シリコン、窒化ガリウム等で形成されるトランジスタである。
【0066】
また、第5のトランジスタ115、第6のトランジスタ116、第8のトランジスタ118、及び第9のトランジスタ119は、p型のトランジスタで形成される。第7のトランジスタ117及び第10のトランジスタ120は、n型のトランジスタで形成される。また、第6のトランジスタ116及び第7のトランジスタ117でインバータを構成する。また、第9のトランジスタ119及び第10のトランジスタ120でインバータを構成する。第5のトランジスタ115乃至第10のトランジスタ120は、後述する半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタである。
【0067】
図2及び図3に示す記憶素子100、110は、長時間電源を遮断した状態により、ノードの電位が低下しても、レベルシフタにより当該電位を上昇させた電位を出力するため、ノードのデータを読み取ることができる。更に、当該データを元のノードにフィードバックすることで、ノードの電位をリフレッシュすることができる。
【0068】
また、図3に示す記憶素子110は、レベルシフタ129において、高電源電位Vdd及び低電源電位Vssの間にインバータを有するため、高電源電位Vddを供給する配線から低電源電位Vssを供給する配線への貫通電流を低減することができ、図2と比較してさらに消費電力を低減することができる。
【0069】
ここで、本実施の形態に示す記憶素子のリフレッシュ方法について説明する。ここでは、一例として、図2に示す記憶素子100のリフレッシュ動作について、図4〜図10を用いて説明する。
【0070】
図4は、ノードN1にLow(0V)、ノードN2にVholdを印加した状態で電源を遮断した後の、リフレッシュ動作における、高電源電位Vdd、第1の端子D、第2の端子DB、ノードN1、及びノードN2それぞれの電位を実線で示すタイミングチャート図である。また、図5〜図10は、各期間t1〜t6における記憶素子を示す回路図である。図5〜図10において、非導通状態のトランジスタにはバツ印を付す。なお、Vholdは高電源電位Vdd(High)からn型のトランジスタのしきい値電圧(Vth_n)分下がった電圧のことをいい、Low<Vth_n<Vhold<Highである。
【0071】
<電源遮断状態(期間t1)>
図4及び図5を用いて、記憶素子100の電源遮断状態(期間t1)について説明する。
【0072】
例えば、ノードN1にLow(0V)、ノードN2にVholdの電位が書き込まれるが、長時間電源を遮断した状態により、ノードN2の電位が低下し、ノードN2がLowからn型のトランジスタのしきい値電圧(Vth_n)の間の電位となる。なお、電源が遮断されているため、高電源電位Vdd及び低電源電位Vss、並びに第1の端子D及び第2の端子DBの電位は、Lowである。即ち、第1のトランジスタ101乃至第8のトランジスタ108は非導通状態である。
【0073】
<電源供給(期間t2)>
図4及び図6を用いて、記憶素子100に電源を供給した状態(期間t2)について説明する。
【0074】
記憶装置に電源を供給すると、第1のトランジスタ101、第3のトランジスタ103、第5のトランジスタ105、及び第7のトランジスタ107のソース及びドレインの他方が接続する高電源電位Vddを供給する配線にHighが印加される。
【0075】
なお、記憶装置に電源を供給してもしばらくの間は、第1の端子D及び第2の端子DBには電荷が充電されず、第1の端子D及び第2の端子DBの電位はLowである。このため、p型のトランジスタである第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107は導通状態となるが、第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104、及びn型のトランジスタである第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は非導通状態のままである。
【0076】
第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107が導通状態となることで、第5のトランジスタ105のソース及びドレインの一方、第6のトランジスタ106のソース及びドレインの一方、第7のトランジスタ107のゲート、及び第2の端子DBが接続するノードN3と、第7のトランジスタ107のソース及びドレインの一方、第8のトランジスタ108のソース及びドレインの一方、第5のトランジスタ105のゲート、及び第1の端子Dが接続するノードN4とに、電荷が充電され、ノードN3、N4の電位、即ち第1の端子D、及び第2の端子DBの電位が上昇する。
【0077】
<ノードN1、N2での電荷充電状態(期間t3)>
図4及び図7を用いて、ノードN1、N2への電荷の充電状態(期間t3)について説明する。
【0078】
ノードN3は第2の端子DBと接続し、ノードN4は第1の端子Dと接続するため、ノードN3、N4の電位(即ち、第1の端子D、第2の端子DBの電位)が上昇し、第1のトランジスタ101〜第4のトランジスタ104のしきい値電圧(Vth_os)以上となると、第1のトランジスタ101乃至第4のトランジスタ104が導通状態となる。
【0079】
第1のトランジスタ101及び第3のトランジスタ103のソース及びドレインの他方はHighが印加される高電源電位Vddを供給する配線に接続するため、第1のトランジスタ101及び第3のトランジスタ103に電流が流れ、ノードN1、N2に電荷が充電され、ノードN1、N2の電位が上昇する。
【0080】
<p型のトランジスタの非導通状態(期間t4)>
図4及び図8を用いて、p型のトランジスタの非導通状態(期間t4)について説明する。
【0081】
期間t3により第1の端子D、第2の端子DBの電位がHighまで上昇する。この結果、p型である第5のトランジスタ105及び第7のトランジスタ107が非導通となる。また、n型である第6のトランジスタ106及び第8のトランジスタ108は非導通状態であるため、ノードN3と第2の端子DBの電位、ノードN4と第1の端子Dの電位は、Highである。
【0082】
<第6のトランジスタの導通及び第1の端子Dの電位の低下(期間t5)>
図4及び図9を用いて、n型である第6のトランジスタの導通及び第1の端子Dの電位の低下(期間t5)について説明する。
【0083】
第1の端子Dの電位及び第2の端子DBの電位がそれぞれHighであるため、第1のトランジスタ101〜第4のトランジスタ104は導通状態となり、電流が流れる。この結果、ノードN1、N2の電位が上昇する。なお、電源遮断状態において、ノードN2はノードN1より電位が高いため、ノードN2の電位がノードN1の電位がn型である第8のトランジスタ108のしきい値電圧(Vth_n)以上に上昇するより先に、n型である第6のトランジスタ106のしきい値電圧(Vth_n)以上に上昇する。ノードN2は第6のトランジスタ106のゲートと接続するため、第6のトランジスタ106が導通状態となる。
【0084】
また、第6のトランジスタ106と直列接続する第5のトランジスタ105は非導通状態であるため、第5のトランジスタ105、第6のトランジスタ106、及び第2の端子DBの接続部であるノードN3の電位が減少する。一方、第1の端子Dが接続するノードN4においては、第7のトランジスタ107及び第8のトランジスタ108が非導通状態であるため、電位は変化しない。
【0085】
<第1のトランジスタ及び第4のトランジスタの非導通、並びにリフレッシュの完了(期間t6)>
図4及び図10を用いて、第1のトランジスタ及び第4のトランジスタの非導通、並びにリフレッシュの完了(期間t6)について説明する。
【0086】
第2の端子DBの電位が減少し、第1のトランジスタ101及び第4のトランジスタ104のしきい値電圧(Vth_os)より低くなると、第2の端子DBにゲートが接続する第1のトランジスタ101及び第4のトランジスタ104は非導通状態となる。このため、ノードN1の電位が減少する。また、ノードN2の電位は、期間t3〜期間t5と比較して、更に高くなる。
【0087】
また、第2の端子DBにゲートが接続する第7のトランジスタ107が導通状態となる。一方、ノードN1の電位が減少するため、第8のトランジスタ108が非導通状態である。これらのため、ノードN4の電位が上昇し、Highとなると、定常状態となる。
【0088】
また、電位がHighである第1の端子Dにゲートが接続する第5のトランジスタ105は非導通状態となる。一方、ノードN2の電位は増加するため、第6のトランジスタ106が導通状態である。これらのため、ノードN3の電位が減少し、Lowとなると、定常状態となる。
【0089】
この結果、ノードN1はLow(0V)となり、第2の端子DBと同様の論理値(Low)となる。また、ノードN2は、Vholdとなり、第1の端子Dと同様の論理値(High)となる。
【0090】
本実施の形態に示す記憶素子は、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタのソース及びドレインの一方と、n型のトランジスタまたはp型のトランジスタのゲートとが接続するノードにおいて、データを保持する。酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタは、オフ電流が極めて低いため、電源電圧の供給が停止した後も、ノードの電圧を長期間に渡って保持することが可能となる。このため、記憶素子は不揮発性である。
【0091】
また、電源供給後のリフレッシュが容易であるため、データ保持の誤動作を低減することができると共に、バックアップ動作を必要としないため、起動時間を短くすることができる。
【0092】
ところで、不揮発性の記憶素子として磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた記憶素子とは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る半導体装置との対比を示す。
【0093】
【表1】
【0094】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると強磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0095】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0096】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0097】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0098】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0099】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す記憶素子を有する記憶装置について、図11及び図12を用いて説明する。
【0100】
図11に示す記憶装置は、メモリセルアレイ151、カラムデコーダ152、ローデコーダ153、インターフェース回路(図示しない。)を有する。メモリセルアレイ151は、マトリクス状に配置された複数のメモリセル155を有する。メモリセル155は、ワード線にゲートが接続する第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161、並びに記憶素子157を有する。第1のスイッチ159のソース及びドレインの一方は第1のビット線BL1と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子157の第1の端子Dと接続する。第2のスイッチ161のソース及びドレインの一方は第2のビット線BL2と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子157の第2の端子DBと接続する。なお、第2のビット線BL2には、第1のビット線BL1の反転信号が入力される。
【0101】
インターフェース回路は、外部信号からカラムデコーダ152及びローデコーダ153を駆動するための信号を生成すると共に、読出したメモリセル155のデータを外部に出力する。
【0102】
カラムデコーダ152は、インターフェース回路からメモリセル155を駆動するための信号を受け取り、ビット線BL1、BL2に送る書込みまたは読出しを行うための信号を生成する。ローデコーダ153は、インターフェース回路からメモリセル155を駆動するための信号を受け取り、ワード線WLに送る書込みもしくは読出しを行うための信号を生成する。カラムデコーダ152からビット線BL1、BL2へ出力する信号及びローデコーダ153からワード線WLへ出力する信号により、メモリセルアレイ151の中においてアクセスを行うメモリセルが一意に定まる。
【0103】
記憶素子157に実施の形態1で示した記憶素子M、100、110を適宜用いることができる。
【0104】
図11と異なる記憶装置について、図12を用いて説明する。
【0105】
図12に示す記憶装置は、メモリセルアレイ181、カラムデコーダ152、ローデコーダ153、インターフェース回路(図示しない。)を有する。メモリセルアレイ181は、マトリクス状に配置された複数のメモリセル165を有する。メモリセル165は、第1のワード線WL1にゲートが接続する第1のスイッチ169及び第2のスイッチ171、第2のワード線WL2にゲートが接続する第3のスイッチ170及び第4のスイッチ172、並びに記憶素子167を有する。
【0106】
第1のスイッチ169のソース及びドレインの一方は第1のビット線BL1と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第1の端子Dと接続する。第2のスイッチ171のソース及びドレインの一方は第2のビット線BL2と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第2の端子DBと接続する。第3のスイッチ170のソース及びドレインの一方は第3のビット線BL3と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第1の端子Dと接続する。第4のスイッチ172のソース及びドレインの一方は第4のビット線BL4と接続し、ソース及びドレインの他方は記憶素子167の第2の端子DBと接続する。なお、第2のビット線BL2には、第1のビット線BL1の反転信号が入力され、第3のビット線BL3には、第4のビット線BL4の反転信号が入力される。
【0107】
カラムデコーダ152は、インターフェース回路からメモリセル165を駆動するための信号を受け取り、第1のビット線BL1〜第4のBL4に送る書込みまたは読出しを行うための信号を生成する。ローデコーダ153は、インターフェース回路からメモリセル165を駆動するための信号を受け取り、第1のワード線WL1及び第2のワード線WL2に送る書込みもしくは読出しを行うための信号を生成する。カラムデコーダ152から第1のビット線BL1〜第4のBL4へ出力する信号、並びにローデコーダ153から第1のワード線WL1及び第2のワード線WL2へ出力する信号により、メモリセルアレイ181の中においてアクセスを行うメモリセルが一意に定まる。
【0108】
図11及び図12に示す記憶装置は、記憶素子以外の構成は従来のSRAMと同様である。また、記憶素子157、167が不揮発性であるため、本実施の形態に示す記憶装置は、不揮発性SRAMである。
【0109】
ここで記憶装置の書込み及び読み出しについて、説明する。ここでは、代表例として図11に示す記憶装置を用いて説明する。
【0110】
<データの書込>
ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、第1のビット線BL1をHigh、第2のビット線BL2をLowとする。この結果、第1のスイッチ159から記憶素子157の第1の端子DにHighを入力する。また、第2のスイッチ161から記憶素子157の第2の端子DBにLowを入力する。この結果、記憶素子157のノードに電荷を保持し、データを書き込むことができる。例えば、図2の記憶素子100においては、ノードN1に0を書込み、ノードN2に1を書き込むことができる。また、図3の記憶素子110においては、ノードN11に0を書込み、ノードN12に1を書き込むことができる。
【0111】
一方、ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、第1のビット線BL1をLow、第2のビット線BL2をHighとする。この結果、例えば、図2の記憶素子100においては、ノードN1に1を書込み、ノードN2に0を書き込むことができる。また、図3の記憶素子110においては、ノードN11に1を書込み、ノードN12に0を書き込むことができる。
【0112】
<データの保持>
実施の形態1に示す記憶素子は、不揮発性であるため、記憶装置の電源が遮断されても、ノードにデータを保持することができる。
【0113】
<データの読み出し>
一方、カラムデコーダ152内に設けられているプリチャージ回路が、ビット線BL1、BL2の電位を制御した後に、ワード線WLをHighにして、第1のスイッチ159及び第2のスイッチ161を導通状態とする。このとき、図2の記憶素子100においては、記憶素子157の第1の端子Dを介して、ノードN1に保持された電荷に基づいたデータを第1のビット線BL1から読出し、記憶素子157の第2の端子DBを介して、ノードN2に保持された電荷に基づいたデータを第2のビット線BL2から読み出す。また、図3の記憶素子110においては、記憶素子157の第1の端子Dを介して、ノードN11に保持された電荷に基づいたデータを第1のビット線BL1から読出し、記憶素子157の第2の端子DBを介して、ノードN12に保持された電荷に基づいたデータを第2のビット線BL2から読み出す。
【0114】
なお、第1のビット線BL1及び第2のビット線BL2は、増幅回路に接続され、読み出し回路からデータが出力される。
【0115】
実施の形態1に示す記憶素子は不揮発性であるため、記憶装置において、データの書込み及び読み出しを行わないメモリセルの電源を遮断することができる。このため、従来のSRAMと比較して、消費電力を低減することができる。
【0116】
また、図12に示す記憶装置は、各メモリセルにおいて、それぞれ異なるワード線及びビット線に接続するスイッチを、記憶素子の第1の入力端子側及び第2の入力端子側にそれぞれ2つ設けている。このため、第1のワード線WL1、第1のビット線BL1、及び第2のビット線BL2に書込みデータを入力し、第4のワード線WL4、第3のビット線BL3、及び第4のビット線BL4に読出しデータを入力することで、異なるメモリセルにおいて書込み及び読み出しを同時に行うことができる。
【0117】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0118】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示す記憶装置の作製方法について、図2及び図13〜図16を用いて説明する。ここでは、図2の回路図で示す、酸化物半導体膜にチャネル領域を有する第1のトランジスタ101、p型である第7のトランジスタ107、及びn型である第8のトランジスタ108の作製方法について説明する。なお、図13〜図16において、A−Bに示す断面図は、第1のトランジスタ101、第7のトランジスタ107、及び第8のトランジスタ108が形成される領域の断面図に相当し、C−Dに示す断面図は、第1のトランジスタ101のソース及びドレインの一方と、第8のトランジスタ108のゲートの接続領域の断面図に相当する。
【0119】
図13(A)に示すように、n型の半導体基板201に素子分離領域203を形成した後、n型の半導体基板201の一部にpウェル領域205を形成する。
【0120】
n型の半導体基板201としては、n型の導電型を有する単結晶シリコン基板(シリコンウェハー)、化合物半導体基板(SiC基板、サファイア基板、GaN基板等)を用いることができる。
【0121】
また、n型の半導体基板201の代わりに、SOI(Silicon On Insulator)基板として、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作られた所謂SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法や、ELTRAN法(Epitaxial Layer Transfer:キャノン社の登録商標)等を用いて形成したSOI基板を用いてもよい。また、n型の半導体基板201の代わりに、絶縁性基板上に結晶性を有する半導体層が形成される基板を用いてもよい。
【0122】
素子分離領域203は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法またはSTI(Shallow Trench Isolation)法等を用いて形成する。
【0123】
pウェル領域205は、ホウ素等のp型を付与する不純物元素が、5×1015cm−3〜1×1016cm−3程度の濃度で添加されている。pウェル領域205は、半導体基板201の一部にマスクを形成したのち、半導体基板201の一部にp型を付与する不純物元素を添加して、形成される。
【0124】
なお、ここでは、n型の半導体基板を用いているが、p型の半導体基板を用い、p型の半導体基板にn型を付与するリン、ヒ素等の不純物元素が添加されたnウェル領域を形成してもよい。
【0125】
次に、図13(B)に示すように、半導体基板201上にゲート絶縁膜207、208及びゲート電極209、210を形成する。
【0126】
熱処理を行い半導体基板201の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成する。または、熱酸化法により酸化シリコン膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化させることにより、酸化シリコン膜と酸素と窒素を有する膜(酸窒化シリコン膜)との積層構造で形成する。次に、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜の一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207、208を形成する。若しくは、厚さ5〜50nmの酸化シリコン、酸化窒化シリコン、高誘電率物質(high−k材料ともいう)であるタンタル酸化物、酸化ハフニウム、酸化ハフニウムシリケート、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物、または酸化ランタンなどの希土類酸化物等を、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成した後、選択的に一部をエッチングして、ゲート絶縁膜207、208を形成する。
【0127】
ゲート電極209、210は、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、クロム、ニオブ等から選択された金属、またはこれらの金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることが好ましい。また、リン等の不純物を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、金属窒化物膜と上記の金属膜の積層構造でゲート電極209、210を形成してもよい。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物膜を設けることにより、金属膜の密着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。
【0128】
ゲート電極209、210は、導電膜をスパッタリング法、CVD法等により形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして形成される。
【0129】
ここでは、熱処理を行い、半導体基板201上の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成し、該酸化シリコン膜上に窒化タンタル膜及びタングステン膜が積層された導電膜をスパッタリング法により形成した後、酸化シリコン膜及び導電膜のそれぞれ一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207、208及びゲート電極209、210を形成する。
【0130】
次に、図13(C)に示すように、半導体基板201にp型を付与する不純物元素を添加してp型の不純物領域213a、213bを形成する。また、pウェル領域205にn型を付与する不純物元素を添加して、n型の不純物領域211a、211bを形成する。n型の不純物領域211a、211b、及びp型の不純物領域213a、213bにおけるn型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素の濃度は、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下である。n型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素は、イオンドーピング法、イオン注入法等を適宜用いて、半導体基板201及びpウェル領域205に添加する。
【0131】
次に、図13(D)に示すように、半導体基板201、素子分離領域203、ゲート絶縁膜207、208、及びゲート電極209、210上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜215、217を形成する。
【0132】
絶縁膜215、217は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜215をCVD法により形成することで、絶縁膜215の水素含有量が高まるため、加熱処理により、半導体基板を水素化し、水素によりダングリングボンドを終端させ、欠陥を低減することができる。
【0133】
また、絶縁膜217として、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などの無機材料、または、ポリイミド、アクリルなどの有機材料を用いて形成することで、絶縁膜217の平坦性を高めることができる。
【0134】
絶縁膜215または絶縁膜217を形成した後、不純物領域211a、211b、213a、213bに添加された不純物元素を活性化するための熱処理を行う。
【0135】
以上の工程により、図2に示すp型である第7のトランジスタ107及びn型である第8のトランジスタ108を作製することができる。
【0136】
次に、絶縁膜215、217の一部を選択的にエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部にコンタクトプラグ219a〜219dを形成する。代表的には、スパッタリング法、CVD法、メッキ法等により導電膜を形成した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により平坦化処理を行い、導電膜の表面の不要な部分を除去して、コンタクトプラグ219a〜219dを形成する。
【0137】
コンタクトプラグ219a〜219dとなる導電膜は、WF6ガスとSiH4ガスからCVD法でタングステンシリサイドを形成し、開口部に導電膜を埋め込むことで形成される。
【0138】
次に、絶縁膜217及びコンタクトプラグ219a〜219d上に、スパッタリング法、CVD法、メッキ法等により絶縁膜を形成した後、該絶縁膜の一部を選択的にエッチングし、溝部を有する絶縁膜221a〜221eを形成する。次に、スパッタリング法、CVD法等により導電膜を形成した後、CMP法等により平坦化処理を行い、該導電膜の表面の不要な部分を除去して、配線223a〜223cを形成する(図14(A)参照)。
【0139】
絶縁膜221a〜221eは、絶縁膜215と同様の材料を用いて形成することができる。
【0140】
配線223a〜223cとして、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0141】
平坦化された絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223cを用いることで、後に形成する酸化物半導体膜を有するトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することができる。また、歩留まり高く酸化物半導体膜を有するトランジスタを形成することができる。
【0142】
次に、加熱処理またはプラズマ処理により、絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223cに含まれる水素、水等を脱離させることが好ましい。この結果、後の加熱処理において、後に形成される絶縁膜及び酸化物半導体膜中に水素、水等が拡散することを防ぐことができる。なお、加熱処理は、不活性雰囲気、減圧雰囲気または乾燥空気雰囲気にて、100℃以上基板の歪み点未満で行う。また、プラズマ処理は、希ガス、酸素、窒素または酸化窒素(亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素など)を用いる。
【0143】
次に、絶縁膜221a〜221e及び配線223a〜223c上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜225を形成する。絶縁膜225としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムを単層または積層して形成する。また、絶縁膜225として、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を用いる。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜は、加熱により酸素が脱離するため、加熱により酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができる。
【0144】
次に、絶縁膜225上に、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等を用いて酸化物半導体膜227を形成する(図14(B)参照)。ここでは、酸化物半導体膜227として、スパッタリング法により、1nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上30nm以下の厚さで酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜227の厚さを上記厚さとすることで、トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。
【0145】
酸化物半導体膜227は、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0146】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0147】
例えば、酸化物半導体として、一元系金属酸化物である酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物、Al−Zn系金属酸化物、Zn−Mg系金属酸化物、Sn−Mg系金属酸化物、In−Mg系金属酸化物、In−Ga系金属酸化物、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Hf−Zn系金属酸化物、In−La−Zn系金属酸化物、In−Ce−Zn系金属酸化物、In−Pr−Zn系金属酸化物、In−Nd−Zn系金属酸化物、In−Sm−Zn系金属酸化物、In−Eu−Zn系金属酸化物、In−Gd−Zn系金属酸化物、In−Tb−Zn系金属酸化物、In−Dy−Zn系金属酸化物、In−Ho−Zn系金属酸化物、In−Er−Zn系金属酸化物、In−Tm−Zn系金属酸化物、In−Yb−Zn系金属酸化物、In−Lu−Zn系金属酸化物、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Hf−Ga−Zn系金属酸化物、In−Al−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Al−Zn系金属酸化物、In−Sn−Hf−Zn系金属酸化物、In−Hf−Al−Zn系金属酸化物を用いることができる。
【0148】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系金属酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素を含んでいてもよい。
【0149】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0150】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系金属酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0151】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(電界効果移動度、しきい値電圧、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0152】
例えば、In−Sn−Zn系金属酸化物では比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を上げることができる。
【0153】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0154】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0155】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い電界効果移動度を得ることができる。
【0156】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の電界効果移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0157】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0158】
【数1】
【0159】
なお、上記において、S0は、測定面(座標(x1,y1)(x1,y2)(x2,y1)(x2,y2)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Z0は測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0160】
なお、酸化物半導体膜227に形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜227において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度は、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアが生成されることがあり、トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
【0162】
また、酸化物半導体膜227には、5×1018atoms/cm3以下の窒素が含まれてもよい。
【0163】
酸化物半導体膜227は、非晶質構造であってもよい。
【0164】
また、酸化物半導体膜227として、結晶化した部分を有するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductorともいう。)を用いてもよい。
【0165】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0166】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向の断面において金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0167】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0168】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OSが形成される基板面やCAAC−OSの表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0169】
CAAC−OSは、その組成等に応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成等に応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0170】
CAAC−OSに含まれる結晶構造の一例について図17乃至図19を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図17乃至図19は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図17において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0171】
図17(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図17(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図17(A)の上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図17(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0172】
図17(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Ga近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図17(B)の上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図17(B)に示す構造をとりうる。図17(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0173】
図17(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図17(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図17(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0174】
図17(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図17(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0175】
図17(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図17(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図17(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0176】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0177】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図17(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図17(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図17(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0178】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0179】
図18(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図18(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図18(C)は、図18(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0180】
図18(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分及び下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図18(A)において、Inの上半分及び下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図18(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0181】
図18(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループを複数結合して大グループを構成する。
【0182】
ここで、3配位のO及び4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図17(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0183】
具体的には、図18(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(In2SnZn3O8)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、In2SnZn2O7(ZnO)m(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0184】
また、このほかにも、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系金属酸化物、In−La−Zn系金属酸化物、In−Ce−Zn系金属酸化物、In−Pr−Zn系金属酸化物、In−Nd−Zn系金属酸化物、In−Sm−Zn系金属酸化物、In−Eu−Zn系金属酸化物、In−Gd−Zn系金属酸化物、In−Tb−Zn系金属酸化物、In−Dy−Zn系金属酸化物、In−Ho−Zn系金属酸化物、In−Er−Zn系金属酸化物、In−Tm−Zn系金属酸化物、In−Yb−Zn系金属酸化物、In−Lu−Zn系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物、Al−Zn系金属酸化物、Zn−Mg系金属酸化物、Sn−Mg系金属酸化物、In−Mg系金属酸化物や、In−Ga系金属酸化物などを用いた場合も同様である。
【0185】
例えば、図19(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0186】
図19(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分及び下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分及び下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0187】
図19(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図19(C)は、図19(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0188】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、Zn及びGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0189】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図19(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0190】
具体的には、図19(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系の層構造は、InGaO3(ZnO)n(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0191】
n=1(InGaZnO4)の場合は、例えば、図20(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図20(A)に示す結晶構造において、図17(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0192】
また、n=2(InGaZn2O5)の場合は、例えば、図20(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図20(B)に示す結晶構造において、図17(B)で説明したように、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0193】
ここでは、酸化物半導体膜227として非晶質構造の酸化物半導体膜をスパッタリング法により形成する。
【0194】
スパッタリング法に用いるターゲットとしては、亜鉛を含む金属酸化物ターゲットを用いることができる。ターゲットとしては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、In−Al−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物や、一元系金属酸化物であるZn系金属酸化物、Sn系金属酸化物などのターゲットを用いることができる。
【0195】
ターゲットの一例として、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲットを、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比とする。また、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲット、In2O3:Ga2O3:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。また、In2O3:ZnO=25:1[mol数比]〜1:4の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0196】
また、酸化物半導体膜227としてIn−Ga−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Ga−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜227を成膜することで、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。
【0197】
また、酸化物半導体膜227としてIn−Sn−Zn−O系材料をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、または20:45:35で示されるIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いる。前述の原子数比を有するIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて酸化物半導体膜227を成膜することで、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。
【0198】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスには、水素を含む不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0199】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0200】
なお、酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m3/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。
【0201】
また、酸化物半導体膜を成膜する処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。さらに、水の排気能力の高いクライオポンプまたは水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0202】
酸化物半導体膜を成膜する処理室の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために成膜室の圧力に影響しないが、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0203】
このように、酸化物半導体膜の成膜工程において、更に好ましくは酸化絶縁膜の成膜工程において、処理室の圧力、処理室のリークレートなどにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体膜に含まれる水素を含む不純物の混入を低減することができる。また、酸化絶縁膜から酸化物半導体膜への水素などの不純物の拡散を低減することができる。
【0204】
また、酸化物半導体膜をスパッタリング装置で成膜する前に、スパッタリング装置にダミー基板を搬入し、ダミー基板上に酸化物半導体膜を成膜して、ターゲット表面、または防着板に付着した水素、水を取り除く工程を行ってもよい。
【0205】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した部分)には欠損が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜の成膜工程において、水素を含む不純物を極めて減らすことにより、酸化物半導体膜の欠損を低減することが可能である。このため、不純物をできるだけ除去し、高純度化させた酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0206】
次に、酸化物半導体膜227より水素を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜の界面近傍に拡散させる。この結果、後に形成されるトランジスタにおいて、水素濃度、及び絶縁膜225との界面近傍における酸素欠損が低減された酸化物半導体膜228を形成することができる(図14(C)参照)。
【0207】
該加熱処理の温度は、酸化物半導体膜227から水素を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を放出させ、さらには酸化物半導体膜227に拡散させる温度が好ましく、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
【0208】
また、該加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、酸化物半導体膜からの水素の放出、及び絶縁膜225から酸化物半導体膜への酸素拡散の時間を短縮することができる。
【0209】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。または、減圧雰囲気または不活性ガス雰囲気で加熱処理を行った後、酸素雰囲気で加熱処理を行ってもよい。これは、減圧雰囲気または不活性雰囲気にて加熱処理を行うと、酸化物半導体膜227中の不純物濃度を低減することができるが、同時に酸素欠損も生じてしまうためであり、このとき生じた酸素欠損を、酸化性雰囲気での加熱処理により低減することができる。
【0210】
酸化物半導体膜227に加熱処理を行うことで、膜中の不純物準位を極めて小さくすることが可能となる。その結果、トランジスタの電界効果移動度を後述する理想的な電界効果移動度近くまで高めることが可能となる。
【0211】
次に、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングして、酸化物半導体膜229を形成する。次に、酸化物半導体膜229上に、スパッタリング法、CVD法等により絶縁膜231を形成する。次に、絶縁膜231上にゲート電極233を形成する(図15(A)参照)。
【0212】
絶縁膜231は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn−O系金属酸化物膜などを用いればよく、積層または単層で設ける。また、絶縁膜231は、絶縁膜225に示すような、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜を用いてもよい。絶縁膜231に加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、後の加熱処理により酸化物半導体膜229に生じる酸素欠損を修復することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
【0213】
また、絶縁膜231として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲート絶縁膜の厚さを薄くしてもゲートリークを低減できる。
【0214】
絶縁膜231の厚さは、10nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下とするとよい。
【0215】
ゲート電極233は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極233は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0216】
また、ゲート電極233は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0217】
ゲート電極233は、印刷法またはインクジェット法により形成される。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、形成される。
【0218】
なお、ゲート電極233と絶縁膜231との間に、絶縁膜231に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリ・オフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜229より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上の窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
【0219】
この後、加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理により、絶縁膜225及び絶縁膜231から酸化物半導体膜229に酸素を拡散させて、酸化物半導体膜229に含まれる酸素欠陥を補填し、酸素欠陥を低減することができる。
【0220】
次に、ゲート電極233をマスクとして、酸化物半導体膜229にドーパントを添加する処理を行う。この結果、図15(B)に示すように、ゲート電極233に覆われ、ドーパントが添加されない第1の領域235aと、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを形成する。ゲート電極233をマスクにしてドーパントを添加するため、セルフアラインで、ドーパントが添加されない第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを形成することができる。なお、ゲート電極233と重畳する第1の領域235aはチャネル領域として機能する。また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cにより、ソース−ドレイン耐圧を高めることができる。また、第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを酸化物半導体膜235と示す。
【0221】
酸化物半導体膜229の第1の領域235aは、水素濃度を5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることが好ましい。酸化物半導体及び水素の結合により、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。これらのため、酸化物半導体膜229の第1の領域235a中の水素濃度を低減することで、しきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
【0222】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cに含まれるドーパントの濃度は、5×1018atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以上5×1019atoms/cm3未満とする。
【0223】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cはドーパントを含むため、キャリア密度または欠陥を増加させることができる。このため、ドーパントを含まない第1の領域235aと比較して導電性を高めることができる。なお、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの導電性を低下させることになる。
【0224】
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cは、導電率が0.1S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは10S/cm以上1000S/cm以下とすることが好ましい。
【0225】
酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cを有することで、チャネル領域として機能する第1の領域235aの端部に加わる電界を緩和させることができる。このため、トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。
【0226】
酸化物半導体膜229にドーパントを添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。また、添加するドーパントとしては、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の少なくとも一以上がある。または、ドーパントとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの少なくとも一以上がある。または、ドーパントとしては、水素がある。なお、ドーパントとして、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の一以上と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの一以上と、水素とを適宜組み合わしてもよい。
【0227】
また、酸化物半導体膜229へのドーパントの添加は、酸化物半導体膜229を覆って、絶縁膜などが形成されている状態を示したが、酸化物半導体膜229が露出している状態でドーパントの添加を行ってもよい。
【0228】
さらに、上記ドーパントの添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入する以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、ドーパントを添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やCVD装置などを用いることができる。
【0229】
この後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下とする。または、250℃から325℃まで徐々に温度上昇させながら加熱してもよい。
【0230】
当該加熱処理により、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの抵抗を低減することができる。なお、当該加熱処理において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cは、結晶状態でも非晶質状態でもよい。
【0231】
次に、図15(C)に示すように、ゲート電極233の側面にサイドウォール絶縁膜237、及びゲート絶縁膜239、並びに電極241a、241bを形成する。
【0232】
サイドウォール絶縁膜237は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜237として、絶縁膜225と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。
【0233】
ここで、サイドウォール絶縁膜237の形成方法について説明する。
【0234】
まず、絶縁膜231及びゲート電極233上に、後にサイドウォール絶縁膜237となる絶縁膜を形成する。絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。また、当該絶縁膜の厚さは特に限定はないが、ゲート電極233の形状に応じる被覆性を考慮して、適宜選択すればよい。
【0235】
次に、絶縁膜をエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜237を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、サイドウォール絶縁膜237は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことでセルフアラインに形成することができる。
【0236】
また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの幅は、サイドウォール絶縁膜237の幅に対応し、またサイドウォール絶縁膜237の幅は、ゲート電極233の厚さにも対応することから、第2の領域235b、235cの範囲が、所望の範囲となるように、ゲート電極233の厚さを決めればよい。
【0237】
また、サイドウォール絶縁膜237の形成工程と共に、異方性の高いエッチングを用いて絶縁膜251をエッチングし、酸化物半導体膜229を露出させることで、ゲート絶縁膜239を形成することができる。
【0238】
一対の電極241a、241bは配線223a〜223cと同様の材料を適宜用いて形成することができる。なお、一対の電極241a、241bは配線としても機能させてもよい。
【0239】
一対の電極241a、241bは、印刷法またはインクジェット法を用いて形成される。または、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、一対の電極241a、241bを形成する。
【0240】
一対の電極241a、241bは、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239の側面と接するように、形成されることが好ましい。即ち、トランジスタの一対の電極241a、241bの端部がサイドウォール絶縁膜237上に位置し、酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、235cの露出部を全て覆っていることが好ましい。この結果、ドーパントが含まれる一対の第2の領域235b、235cにおいて、一対の電極241a、241bと接する領域がソース領域及びドレイン領域として機能すると共に、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239と重なる領域により、ソース−ドレイン耐圧を高めることができる。また、サイドウォール絶縁膜237の長さによりソース−ドレイン間の距離が制御できるため、酸化物半導体膜229と接する一対の電極241a、241bのチャネル側の端部を、マスクを用いずに形成させることができる。また、マスクを使用しないため、複数のトランジスタにおける加工ばらつきを低減することができる。
【0241】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有するトランジスタ101を作製することができる。
【0242】
次に、図16(A)に示すように、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等により、絶縁膜243及び絶縁膜245を形成する。
【0243】
絶縁膜243、245は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜245として、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、絶縁膜243から脱離する酸素を酸化物半導体膜に供給することができる。外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。また、絶縁膜245として、外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、外部から酸化物半導体膜への水素の拡散を低減することが可能であり、酸化物半導体膜の欠損を低減することができる。外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。また、絶縁膜243として、絶縁膜225と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜と、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜と、酸化絶縁膜との3層構造とすることで、効率よく酸化物半導体膜へ酸素を拡散すると共に、外部への酸素の脱離を抑制することが可能であり、温度及び湿度の高い状態でも、トランジスタの特性の変動を低減することができる。
【0244】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有するトランジスタを作製することができる。
【0245】
次に、絶縁膜215、217、221e、243、245のそれぞれ一部を選択的にエッチングし、開口部を形成すると共に、ゲート電極209及び一対の電極の一方のそれぞれ一部を露出する。次に、開口部に導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、配線249を形成する。配線249は、コンタクトプラグ219a〜219dに示す材料を適宜用いることができる。
【0246】
以上の工程により、酸化物半導体膜を有する第1のトランジスタ101のソース及びドレインの他方と、n型である第8のトランジスタ108のゲートを接続することができる。
【0247】
記憶装置を構成する記憶素子において、半導体基板または絶縁性基板上に設けられた半導体膜を用いたトランジスタ上に、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタを積層することができる。この結果、記憶装置の高集積化が可能である。
【0248】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0249】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示す酸化物半導体膜229に、CAAC−OSを用いて形成する方法について、説明する。
【0250】
CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する第1の方法について、以下に説明する。
【0251】
CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する方法は、実施の形態3の図14(B)に示す酸化物半導体膜227となる酸化物半導体膜の方法において、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下とすることで、酸化物半導体膜中への水素、水等の混入を低減しつつ、CAAC−OSを形成することができる。
【0252】
上記形成方法によりCAAC−OSを用いて酸化物半導体膜を形成した後に加熱することで、酸化物半導体膜227からより水素、水等を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜227と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜227の界面近傍に拡散させることができると共に、当該加熱処理により、より結晶性の高いCAAC−OSを有する酸化物半導体膜228を形成することができる。この後、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜229を形成することができる。
【0253】
次に、CAAC−OSを用いて酸化物半導体膜229を形成する第2の方法について、以下に説明する。
【0254】
絶縁膜225上に第1の酸化物半導体膜を形成する。第1の酸化物半導体膜は、一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下とする。
【0255】
第1の酸化物半導体膜は、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上550℃以下、さらに好ましくは200℃以上500℃以下とし、酸素ガス雰囲気で成膜する。これにより、成膜時の基板加熱温度が高いほど、得られる酸化物半導体膜の不純物濃度は低くなる。また、形成した第1の酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等の不純物の混入を低減させることができる。また、酸化物半導体膜中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。さらに、酸素ガス雰囲気で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。ただし、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。なお、酸化物半導体膜は薄いほど、トランジスタの短チャネル効果が低減される。ただし、薄くしすぎると界面散乱の影響が強くなり、電界効果移動度の低下が起こることがある。
【0256】
なお、第1の酸化物半導体膜の形成後、第1の加熱処理を行ってもよい。該第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜から、より水素、水等を脱離させることができ、さらに結晶性も向上させることができる。該第1の加熱処理を行うことにより、配向性の高いCAAC−OSを形成することができる。また、該第1の加熱処理は、200℃以上基板の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0257】
また該第1の加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0258】
該第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気及び減圧雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0259】
次に、第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を成膜する。第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜と同様の方法で成膜することができる。
【0260】
第2の酸化物半導体膜を成膜する際、基板加熱しながら成膜することで、第1の酸化物半導体膜を種結晶として、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。このとき、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜が同一の元素から構成されることをホモ成長という。または、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されることをヘテロ成長という。
【0261】
なお、第2の酸化物半導体膜を成膜した後、第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の方法で行えばよい。第2の加熱処理を行うことによって、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜とすることができる。または、第2の加熱処理を行うことによって、第1の酸化物半導体膜を種結晶として、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。
【0262】
以上の方法により、酸化物半導体膜中への水素、水等などの混入を低減しつつ、CAAC−OSからなる酸化物半導体膜227を形成した後の加熱処理により、酸化物半導体膜227からより水素、水等を放出させると共に、絶縁膜225に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体膜227と、絶縁膜225及び酸化物半導体膜227の界面近傍とに拡散させることができると共に、当該加熱処理により、より結晶性の高いCAAC−OSを有する酸化物半導体膜228を形成することができる。この後、酸化物半導体膜228の一部を選択的にエッチングして、酸化物半導体膜229を形成することができる。
【0263】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した部分)には欠損が形成されてしまう。このため、酸化物半導体膜の成膜工程において、不純物を極めて減らすことにより、酸化物半導体膜の欠損を低減することが可能である。このため、不純物をできるだけ除去し、高純度化させたCAAC−OSからなる酸化物半導体膜をチャネル領域とすることにより、トランジスタに対する光照射やBT(Bias Temperature)ストレス試験前後でのしきい値電圧の変化量が少ないため、安定した電気的特性を有することができる。
【0264】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態5)
本実施の形態では、酸化物半導体膜を用いてチャネル領域が形成されるトランジスタの電界効果移動度について説明する。
【0266】
酸化物半導体に限らず、実際に測定されるトランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の電界効果移動度よりも低くなる。電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0267】
半導体本来の移動度をμ0、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、電界効果移動度をμは以下の式で表される。
【0268】
【数2】
【0269】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、Eはポテンシャル障壁の高さを以下の式で表される。
【0270】
【数3】
【0271】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体膜であれば、チャネルの厚さは半導体膜の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Idは、以下の式となる。
【0272】
【数4】
【0273】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vdはドレイン電圧である。上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、ドレイン電流Idは以下のようになる。
【0274】
【数5】
【0275】
数5の右辺はVgの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのId―Vg特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm2程度である。
【0276】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数2及び数3よりμ0=120cm2/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される電界効果移動度は40cm2/Vs程度である。しかし、半導体内部及び半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の電界効果移動度μ0は120cm2/Vsとなると予想できる。
【0277】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における電界効果移動度μ1は、以下の式で表される。
【0278】
【数6】
【0279】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。B及びGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×107cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、電界効果移動度μ1は低下することがわかる。
【0280】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの電界効果移動度μ2を計算した結果を図21に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0281】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長及びチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vdは0.1Vである。
【0282】
図21で示されるように、ゲート電圧1V強で電界効果移動度100cm2/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、電界効果移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体膜表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0283】
このような電界効果移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図22乃至図24に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図25に示す。図25に示すトランジスタは酸化物半導体膜にn型の不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cを有する。不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0284】
図25(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101、及び下地絶縁膜1101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成される。トランジスタは不純物半導体領域1103a、不純物半導体領域1103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域1103bと、ゲート電極1105を有する。ゲート電極1105の幅(即ち、チャネル長)を33nmとする。
【0285】
ゲート電極1105と半導体領域1103bの間には、ゲート絶縁膜1104を有し、ゲート電極1105の両側面にはサイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106b、ゲート電極1105の上部には、ゲート電極1105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物1107を有する。サイドウォール絶縁膜の幅は5nmとする。また、不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cに接して、ソース電極1108a及びドレイン電極1108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0286】
図25(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜1101、及び酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成され、不純物半導体領域1103a、不純物半導体領域1103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域1103bと、幅33nmのゲート電極1105とゲート絶縁膜1104とサイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bと絶縁物1107とソース電極1108a及びドレイン電極1108bを有する点で図25(A)に示すトランジスタと同じである。
【0287】
図25(A)に示すトランジスタと図25(B)に示すトランジスタの相違点は、サイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bの下の半導体領域の導電型である。図25(A)に示すトランジスタでは、サイドウォール絶縁膜1106a及びサイドウォール絶縁膜1106bの下の半導体領域はn型の不純物半導体領域1103a及び不純物半導体領域1103cであるが、図25(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域1103bである。すなわち、不純物半導体領域1103a(不純物半導体領域1103c)とゲート電極1105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、サイドウォール絶縁膜1106a(サイドウォール絶縁膜1106b)の幅と同じである。
【0288】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図22は、図25(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)及び電界効果移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0289】
図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図22(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmとしたものであり、図22(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、10μAを超えることが示された。即ち、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。
【0290】
図23は、図25(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図23(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図23(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmとしたものであり、図23(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmとしたものである。
【0291】
また、図24は、図25(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)及び電界効果移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、電界効果移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図24(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図24(B)は10nmとしたものであり、図24(C)は5nmとしたものである。
【0292】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、電界効果移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0293】
なお、電界効果移動度μのピークは、図22では80cm2/Vs程度であるが、図23では60cm2/Vs程度、図24では40cm2/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流はオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、10μAを超えることが示された。即ち、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。
【実施例1】
【0294】
本実施例では、酸化物半導体としてIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル領域に用いたトランジスタの電気特性及び信頼性について説明する。
【0295】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0296】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜時または成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0297】
例えば、図26(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vdsは10Vとした。
【0298】
図26(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm2/Vsが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図26(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm2/Vsが得られている。
【0299】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図26(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm2/Vsが得られている。
【0300】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm2/Vsを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0301】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水を放出させ、その熱処理と同時にまたはその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させてもよい。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性のよい非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0302】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/または成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図26(A)と図26(B)の対比からも確認することができる。
【0303】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0304】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0305】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/または成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0306】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT(Bias Temperature)ストレス試験を行った。
【0307】
まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。なお、Vdsはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVgsに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをプラスBTストレス試験と呼ぶ。
【0308】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVgsに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをマイナスBTストレス試験と呼ぶ。
【0309】
試料1のプラスBTストレス試験の結果を図27(A)に、マイナスBTストレス試験の結果を図27(B)に示す。また、試料2のプラスBTストレス試験の結果を図28(A)に、マイナスBTストレス試験の結果を図28(B)に示す。
【0310】
試料1のプラスBTストレス試験及びマイナスBTストレス試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80V及び−0.42Vであった。また、試料2のプラスBTストレス試験及びマイナスBTストレス試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79V及び0.76Vであった。試料1及び試料2のいずれも、BTストレス試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0311】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行ってもよい。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用してもよい。
【0312】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm3以上2×1020/cm3以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0313】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0314】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0315】
XRD分析を行った試料として、試料A及び試料Bを用意した。以下に試料A及び試料Bの作製方法を説明する。
【0316】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0317】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0318】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0319】
図29に試料A及び試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍及び37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0320】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/または成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0321】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素、水酸基、水等を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0322】
図30に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0323】
具体的には、図30に示すように、基板温度Tが125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0324】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素、水等が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素、水等の不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水の放出温度が高いため、好ましくは最初から水の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0325】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0326】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vdsは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃及び150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出し幅をdWと呼ぶ。
【0327】
図31に、Ids(実線)及び電界効果移動度(点線)のVgs依存性を示す。また、図32(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図32(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0328】
図32(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0329】
また、図32(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm2/Vs〜32cm2/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0330】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm2/Vs以上、好ましくは40cm2/Vs以上、より好ましくは60cm2/Vs以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、シリコン半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【0331】
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子、及び前記第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び前記第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、
前記第1の信号が入力される第3の入力端子、及び前記第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、
前記第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び前記第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、
前記第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、前記レベルシフタの第1の入力端子に入力され、
前記第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、前記レベルシフタの第2の入力端子に入力されることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のバッファの第3の出力端子と、前記レベルシフタの第1の入力端子とが接続される第1のノードにおいて、第1のデータを保持し、
前記第2のバッファの第4の出力端子と、前記レベルシフタの第2の入力端子とが接続される第2のノードにおいて、第2のデータを保持することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のバッファ及び前記第2のバッファはそれぞれ、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されていることを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、
直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、
直列接続する第5のトランジスタ及び第6のトランジスタ、並びに直列接続する第7のトランジスタ及び第8のトランジスタで構成されるレベルシフタ、とを有し、
前記第1のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、及び前記第7のトランジスタのゲート、並びに、前記第5のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第6のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の信号が入力される第1の端子と接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、及び前記第5のトランジスタのゲート、並びに、前記第7のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、前記第1の信号の反転信号が入力される第2の端子と接続し、
前記第6のトランジスタのゲートが、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、
前記第8のトランジスタのゲートが、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードと、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1のトランジスタ乃至前記第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、
前記第5のトランジスタ及び前記第7のトランジスタは、p型のトランジスタであり、
前記第6のトランジスタ及び前記第8のトランジスタは、n型のトランジスタであることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記第1のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第5のトランジスタ、及び前記第7のトランジスタのソース及びドレインの他方は、高電源電位を供給する配線に接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、前記第6のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの他方は、低電源電位を供給する配線に接続することを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、
直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、
直列接続する第5のトランジスタ乃至第7のトランジスタと、並びに直列接続する第8のトランジスタ乃至第10のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、
前記第1のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのゲート、並びに、前記第6のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第7のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、及び前記第5のトランジスタのゲート、並びに、前記第9のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第10のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、
前記第6のトランジスタ及び前記第7のトランジスタのゲートが、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、
前記第9のトランジスタ及び前記第10のトランジスタのゲートが、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードと、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1のトランジスタ乃至前記第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、
前記第5のトランジスタ、前記第6のトランジスタ、前記第8のトランジスタ、及び前記第9のトランジスタは、p型のトランジスタであり、
前記第7のトランジスタ及び前記第10のトランジスタは、n型のトランジスタであることを特徴とする記憶装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記第1のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第5のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの他方は、高電源電位を供給する配線に接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、前記第7のトランジスタ、及び前記第10のトランジスタのソース及びドレインの他方は、低電源電位を供給する配線に接続することを特徴とする記憶装置。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか一項において、
前記第1のノードで第1のデータを保持し、
前記第2のノードで第2のデータを保持することを特徴とする記憶装置。
【請求項1】
第1の入力端子、及び前記第1の入力端子の入力信号の反転信号が入力される第2の入力端子、並びに第1の信号が出力される第1の出力端子、及び前記第1の信号の反転信号が出力される第2の出力端子、を有するレベルシフタと、
前記第1の信号が入力される第3の入力端子、及び前記第1の信号の反転信号が入力される第4の入力端子、並びに第3の出力端子を有する第1のバッファと、
前記第1の信号の反転信号が入力される第5の入力端子、及び前記第1の信号が入力される第6の入力端子、並びに第4の出力端子を有する第2のバッファと、を有し、
前記第1のバッファの第3の出力端子から出力される信号が、前記レベルシフタの第1の入力端子に入力され、
前記第2のバッファの第4の出力端子から出力される信号が、前記レベルシフタの第2の入力端子に入力されることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のバッファの第3の出力端子と、前記レベルシフタの第1の入力端子とが接続される第1のノードにおいて、第1のデータを保持し、
前記第2のバッファの第4の出力端子と、前記レベルシフタの第2の入力端子とが接続される第2のノードにおいて、第2のデータを保持することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のバッファ及び前記第2のバッファはそれぞれ、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタが直列接続されていることを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、
直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、
直列接続する第5のトランジスタ及び第6のトランジスタ、並びに直列接続する第7のトランジスタ及び第8のトランジスタで構成されるレベルシフタ、とを有し、
前記第1のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、及び前記第7のトランジスタのゲート、並びに、前記第5のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第6のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の信号が入力される第1の端子と接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、及び前記第5のトランジスタのゲート、並びに、前記第7のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、前記第1の信号の反転信号が入力される第2の端子と接続し、
前記第6のトランジスタのゲートが、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、
前記第8のトランジスタのゲートが、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードと、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1のトランジスタ乃至前記第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、
前記第5のトランジスタ及び前記第7のトランジスタは、p型のトランジスタであり、
前記第6のトランジスタ及び前記第8のトランジスタは、n型のトランジスタであることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記第1のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第5のトランジスタ、及び前記第7のトランジスタのソース及びドレインの他方は、高電源電位を供給する配線に接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、前記第6のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの他方は、低電源電位を供給する配線に接続することを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
直列接続する第1のトランジスタ及び第2のトランジスタで構成される第1のバッファと、
直列接続する第3のトランジスタ及び第4のトランジスタで構成される第2のバッファと、
直列接続する第5のトランジスタ乃至第7のトランジスタと、並びに直列接続する第8のトランジスタ乃至第10のトランジスタで構成されるレベルシフタと、を有し、
前記第1のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのゲート、並びに、前記第6のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第7のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第1の端子と接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、及び前記第5のトランジスタのゲート、並びに、前記第9のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第10のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部が、第2の端子と接続し、
前記第6のトランジスタ及び前記第7のトランジスタのゲートが、前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第1のノードと、
前記第9のトランジスタ及び前記第10のトランジスタのゲートが、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方及び前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方の接続部と接続する第2のノードと、を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1のトランジスタ乃至前記第4のトランジスタは、酸化物半導体膜にチャネル領域を有するトランジスタであり、
前記第5のトランジスタ、前記第6のトランジスタ、前記第8のトランジスタ、及び前記第9のトランジスタは、p型のトランジスタであり、
前記第7のトランジスタ及び前記第10のトランジスタは、n型のトランジスタであることを特徴とする記憶装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記第1のトランジスタ、前記第3のトランジスタ、前記第5のトランジスタ、及び前記第8のトランジスタのソース及びドレインの他方は、高電源電位を供給する配線に接続し、
前記第2のトランジスタ、前記第4のトランジスタ、前記第7のトランジスタ、及び前記第10のトランジスタのソース及びドレインの他方は、低電源電位を供給する配線に接続することを特徴とする記憶装置。
【請求項10】
請求項4乃至請求項9のいずれか一項において、
前記第1のノードで第1のデータを保持し、
前記第2のノードで第2のデータを保持することを特徴とする記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−8433(P2013−8433A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−106125(P2012−106125)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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