説明

記番号認識装置、および紙葉類処理装置

【課題】紙葉類の処理総数に対して、記番号が認識できた紙葉類の枚数の割合である認識可否率を十分に向上させた記番号認識装置を提供する。
【解決手段】画像処理部34は、処理対象の桁の文字について、第1の記番号領域における文字画像、および第2の記番号領域における文字画像を読み出し(s32)、これらの論理和画像を生成する(s33)。画像処理部34は、s33で作成した論理和画像におけるドット片の数が複数であれば(s34)、各ドット片の周囲長さを検出する(s35)。そして、周囲長さが最大であるドット片を、対象文字として抽出する(s36)。画像処理部34は、s36で生成したドット片にかかる文字を認識し、ここで認識できた文字を、対象桁の文字に設定する(s37)。画像処理部34は、未処理の桁があれば(s38)、s31に戻り、上述した処理を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有の記番号が記載されている紙幣や証券等の紙葉類を処理し、その紙葉類に記載されている記番号を認識する記番号認識装置、および、この記番号認識装置を適用した紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固有の記番号が記載されている紙幣や証券等の紙葉類を処理し、その紙葉類に記載されている記番号を認識する装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。記番号は、複数桁の数字や記号で構成される文字列である。認識した記番号は、偽造券、盗難券等の識別に用いることができる。
【0003】
また、記番号が2箇所に記載されている紙葉類に対して、一方の領域(以下、記番号領域と言う。)に記載されている記番号のいずれかの文字が汚れや、かすれ等で認識できなかった場合、他方の記番号領域に記載されている記番号の対応する文字を認識することにより、その紙葉類の記番号を認識する装置もある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−154256号公報
【特許文献2】特開2007−219817号公報
【特許文献3】特開昭62−280993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の構成であっても、2つの記番号領域に記載されている記番号において、汚れや、かすれ等で同じ桁の文字が認識できない場合、その記番号を認識することができない。すなわち、紙葉類の処理総数に対して、記番号が認識できた紙葉類の枚数の割合である認識可否率の十分な向上が図れていないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、紙葉類の処理総数に対して、記番号が認識できた紙葉類の枚数の割合である認識可否率を十分に向上させた記番号認識装置、および、この記番号認識装置を適用した紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の記番号認識装置は、上記課題を解決するために、以下のように構成している。
【0008】
画像取得手段が、少なくとも2箇所に固有の文字列からなる記番号が記載されている紙葉類の画像を取得する。紙幣や、証券に記載されている記番号は、通常大文字のアルファベットや、数字を組み合わせた文字列である。大文字のアルファベットや、数字は、連続する一塊のドット群で構成される文字である。
【0009】
なお、分離している複数のドット群で構成される文字としては、例えば小文字のアルファベットである「i」、「j」がある。
【0010】
記番号領域切出手段が、画像取得手段が取得した紙葉類の画像から、固有の記番号が記載されている2つの記番号領域の画像を切り出す。文字切出手段が、記番号領域切出手段が切り出した2つの記番号領域の画像から、その記番号領域に記載されている記番号について、各桁の文字を切り出す。文字合成画像生成手段が、文字切出手段が2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像を用いて、連続する一塊のドット群を、その桁の文字画像として生成する。
【0011】
例えば、文字合成画像生成手段は、2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像の論理和をとった、論理和画像を生成し、連続するドット群の塊が複数あれば、周囲長が最長であるドット群を、その桁の文字合成画像とする。
【0012】
したがって、2つの記番号領域に記載されている記番号において、汚れや、かすれ等で同じ桁の文字が認識できない場合であっても、生成された、この桁の文字合成画像を認識することにより、記番号を認識することができる。すなわち、紙葉類の処理総数に対して、記番号が認識できた紙葉類の枚数の割合である認識可否率の十分な向上が図れる。
【0013】
また、2つの記番号領域の一方について、記載されている記番号を認識し、このときに、認識できなかった桁の文字を、他方の記番号領域に記載されている文字によって認証する構成としてもよい。この場合には、両方の記番号領域において、同じ桁の文字が認証できなかったときに、文字合成画像生成手段により、その桁の文字合成画像を生成し、認証することで、処理時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、紙葉類の処理総数に対して、記番号が認識できた紙葉類の枚数の割合である認識可否率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】紙幣処理装置の内部構成を示す図である。
【図2】紙幣処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】識別ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】識別ユニットの撮像部の構成を示す概略図である。
【図5】紙幣に記載されている記番号を示す図である。
【図6】記番号領域情報を示す図である。
【図7】取扱可能紙幣であるかどうかを判定する識別処理を示すフローチャートである。
【図8】記番号認識処理を示すフローチャートである。
【図9】記番号を構成する文字の切出を説明する図である。
【図10】記番号を構成する文字の切出を説明する図である。
【図11】合成処理を示すフローチャートである。
【図12】文字画像の合成手順を説明する図である。
【図13】合成処理を示すフローチャートである。
【図14】文字画像の合成手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態である紙幣処理装置について説明する。
【0017】
この紙幣処理装置は、金融機関の店舗に設置されている現金自動預け払い機(ATM)等に適用される。図1は、この紙幣処理装置の内部構成を示す図である。図2は、この紙幣処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。この紙幣処理装置1は、メイン制御ユニット2と、識別ユニット3と、搬送ユニット4と、操作・表示ユニット5と、を備えている。
【0018】
メイン制御ユニット2は、紙幣処理装置1本体に設けられている各ユニットの動作を制御する。識別ユニット3には、この発明の実施形態にかかる記番号認識ユニット30が適用されている。記番号認識ユニット30は、処理対象の紙幣に記載されている、固有の記番号を認識する。識別ユニット3は、処理対象の紙幣毎に、その紙幣の金種、真偽等を識別する。
【0019】
搬送ユニット4は、紙幣処理装置1本体内部に形成された紙幣搬送路40に沿って、紙幣を搬送する。紙幣搬送路40は、入出金紙幣収納部41、識別ユニット3、一時保留部42、金種別カートリッジ43(43A、43B、43C)、回収カートリッジ44、および、補充カートリッジ45を結んでいる。紙幣搬送路40には、搬送されている紙幣を検知するセンサが複数配置されている。
【0020】
入出金口には、入出金紙幣収納部41に対する入金紙幣の投入や、出金紙幣の取り出しを制限するシャッタ41aが設けられている。一時保留部42は、入金紙幣を一時的に保留する。金種別カートリッジ43は、対応する金種(千円、5千円、1万円)の紙幣を収納する。例えば、金種別カートリッジ43Aは、千円紙幣を収納する。金種別カートリッジ43Bは、五千円紙幣を収納する。金種別カートリッジ43Cは、一万円紙幣を収納する。回収カートリッジ44は、出金紙幣として使用するのに適していない紙幣を収納する。補充カートリッジ45は、金種別カートリッジ43に補充する出金紙幣を収納する。補充カートリッジ45には、補充紙幣回収カートリッジ(不図示)が備えられている。補充紙幣回収カートリッジには、補充カートリッジ45から繰り出された紙幣であって、出金紙幣として使用するのに適していない紙幣が収納される。
【0021】
操作・表示ユニット5は、本体に対する入力操作にかかる案内画面の表示や、操作者による入力操作を受け付ける。
【0022】
図3は、識別ユニットの概略の構成を示すブロック図である。上述したように、この識別ユニット3には、この発明の実施形態にかかる記番号認識ユニット30が適用されている。識別ユニット3は、制御部31と、撮像部32と、磁気パターン読取部33と、画像処理部34と、を備えている。
【0023】
制御部31は、識別ユニット3が備える各部の動作を制御する。撮像部32は、紙幣搬送路40に沿って搬送されている、紙幣の表面および裏面を撮像する。撮像部32は、図4に示すように、紙幣搬送路40を挟んだ上下両側に、それぞれラインセンサ321A,322A、および光源321B、322Bを配置している。紙幣搬送路40を搬送される紙幣の向きは、4通りある。具体的には、紙幣の表面の向き(ラインセンサ321A、またはラインセンサ322Aのどちらに対向しているか)と、紙幣の搬送方向に対する紙幣の向きと、の違いによる4通りである。撮像部32は、ラインセンサ321A、またはラインセンサ322Aの一方が紙幣の表面を撮像し、他方が紙幣の裏面を撮像する。
【0024】
磁気パターン読取部33は、紙幣搬送路40を搬送されている紙幣の磁気パターンを読み取る。画像処理部34は、撮像部32が撮像した紙幣の表面画像、および裏面画像を処理し、金種を判別するとともに、その紙幣に記載されている固有の記番号を認識する。記番号は、複数桁の記号や数字からなる文字列である。記番号に用いられる記号や数字は、分離したドット片を有さない文字である。具体的には、大文字のアルファベットや、0〜9の数字である。
【0025】
なお、小文字アルファベットである「i」や「j」等が、分離したドット片を有する文字である。
【0026】
また、画像処理部34は、撮像部32が撮像した紙幣の画像を処理し、この紙幣の反射光パターンを検出する。紙幣には、表面の左上、および右下に記番号が記載されている(図5参照)。以下の説明では、表面左上に記番号が記載されている領域を第1の記番号領域と言い、表面右下に記番号が記載されている領域を第2の記番号領域と言う。
【0027】
紙幣搬送路40を搬送されている紙幣の向きは、上述したように4通りある。また、撮像部32は、紙幣搬送路40を挟んだ両側にラインセンサ321A,322Aを配置しているので、紙幣搬送路40を搬送されている紙幣の向きに関係なく、当該紙幣の表面の撮像画像、および裏面の撮像画像を得ることができる。
【0028】
また、画像処理部34は、金種別に、紙幣搬送路40を搬送されている紙幣の4つの向きについて、その紙幣の表面の撮像画像上における、第1の記番号領域、および第2の記番号領域の位置を示す記番号領域情報を記憶している(図6参照)。この記番号領域情報は、紙幣の表面の撮像画像において、予め定めた紙幣の角(例えば、撮像画像における紙幣の右上の角)を基準座標(0,0)とし、撮像画像上での第1の記番号領域の右上の角の座標位置を示す第1の開始座標(第1の領域開始X座標、および第1の領域開始Y座標)、撮像画像上での第1の記番号領域のX方向の長さ(第1の領域サイズX)、撮像画像上での第1の記番号領域のY方向の長さ(第1の領域サイズY)、撮像画像上での第2の記番号領域の右上の角の座標位置を示す第2の開始座標(第2の領域開始X座標、および第2の領域開始Y座標)、撮像画像上での第2の記番号領域のX方向の長さ(第2の領域サイズX)、および、撮像画像上での第2の記番号領域のY方向の長さ(第2の領域サイズY)を、登録した情報である。図6では、1万円紙幣についての、記番号領域情報についてのみ示しているが、5千円紙幣や、千円紙幣についても、この記番号領域情報を記憶している。
【0029】
ここで、紙幣処理装置1における紙幣の搬送経路について、簡単に説明しておく。まず、入金紙幣は、操作者によって入出金紙幣収納部41に投入される。入出金紙幣収納部41に投入された紙幣は、1枚ずつ繰り出され、識別ユニット3に搬送される。識別ユニット3では、金種や真偽等の識別を行い、当該紙幣が入金可能な紙幣(取扱可能紙幣)であるかどうかが判定される。識別ユニット3が入金可能であると判定した紙幣は、一時保留部42に搬送される。一方、入金不可能であると判定した紙幣は、入出金紙幣収納部41に戻される。入出金紙幣収納部41に戻した紙幣は、操作者に返却される。
【0030】
その後、一時保留部42に収納した紙幣は、1枚ずつ繰り出し、再度、識別ユニット3に搬送し、再度、入金可能紙幣であるかどうかの判定を行う。識別ユニット3が入金可能であると判定した紙幣は、対応する金種の金種別カートリッジ43に搬送し、入金不可能であると判定した紙幣は、回収カートリッジ44に搬送する。
【0031】
次に、出金紙幣について説明する。出金紙幣は、金種毎に、出金枚数に応じた紙幣を、該当する金種の金種別カートリッジ43から1枚ずつ繰り出し、識別ユニット3に搬送し、出金可能紙幣(取扱可能紙幣)であるかどうかの判定を行う。識別ユニット3が出金可能であると判定した紙幣は、入出金紙幣収納部41に搬送し、出金不可能であると判定した紙幣は、回収カートリッジ44に搬送する。また、回収カートリッジ44に紙幣を搬送する毎に、対応する金種別カートリッジ43から繰り出す紙幣を1枚追加する。
【0032】
最後に、補充紙幣について説明する。補充紙幣は、補充カートリッジ45から1枚ずつ繰り出し、識別ユニット3に搬送し、出金可能紙幣であるかどうかの判定を行う。識別ユニット3が出金可能であると判定した紙幣は、対応する金種の金種別カートリッジ43に搬送し、出金不可能であると判定した紙幣は、補充回収カートリッジに搬送する。
【0033】
つぎに、取扱可能紙幣であるかどうかを判定する識別処理の詳細について説明する。図7は、この識別処理を示すフローチャートである。識別ユニット3では、搬送路40に沿って搬送されてきた処理対象の紙幣毎に、撮像部32が表面、および裏面を撮像する(s1)。また、磁気パターン読取部33が、処理対象の紙幣の磁気パターンを読み取る(s2)。識別ユニット3は、撮像部32が撮像した紙幣の撮像画像と、各金種の紙幣の登録画像と、を照合し、金種を判別する(s3)。さらに、予め定められた紙幣の反射光検出領域における反射光パターンと、当該金種の紙幣の登録反射光パターンとの類似度、および紙幣の磁気パターン検出領域における磁気パターンと、当該金種の紙幣の登録磁気パターンとの類似度が、ともに予め定めた値を超えているかどうかによって、当該紙幣の真偽を判別する第1の真偽判別を行う(s4)。s4で、反射光パターン、または磁気パターンの少なくとも一方の類似度が、予め定めた値を超えていなければ、取扱不可紙幣(入金不可紙幣、または出金不可紙幣)と判定する(s5)。
【0034】
識別ユニット3は、s4で、反射光パターン、および磁気パターンの両方の類似度が、予め定めた値を超えていれば、その紙幣の記番号を認識する記番号認識処理を行う(s6)。このs6にかかる記番号認識処理の詳細については後述する。識別ユニット3で記番号が認識できなければ(s7)、s5で取扱不可紙幣と判定する。
【0035】
識別ユニット3で記番号が認識できると(s7)、その記番号の紙幣が偽券、または盗難券(取扱不可紙幣)であるかどうかを判定する第2の真偽判別を行う(s8)。s8は、今回認識した処理対象の紙幣の記番号を、予め登録されている偽券や盗難紙幣の記番号と照合し、その照合結果により判定する処理である。記番号の照合は、偽券や盗難紙幣の記番号を登録した情報を識別ユニット3に記憶しておき、この識別ユニット3で行う構成としてもよいし、今回認識した記番号を上位装置に通知し、この上位装置で照合する構成としてもよい。
【0036】
識別ユニット3は、s8にかかる第2の真偽判別で、処理対象の紙幣が偽券、または盗難券でないと判定すると、この処理対象の紙幣を取扱可能紙幣と判定する(s9)。一方、s8にかかる第2の真偽判別で、処理対象の紙幣が偽券、または盗難券であると判定すると、s5で、この処理対象の紙幣を取扱不可紙幣と判定する。
【0037】
識別ユニット3は、s5、またはs9における判定結果を、メイン制御ユニット2に通知する(s10)。
【0038】
次に、s6にかかる記番号認識処理について説明する。図8は、この記番号認識処理を示すフローチャートである。画像処理部34は、撮像部32が撮像した紙幣の撮像画像から、第1の記番号領域、および第2の記番号領域を切り出す(s11)。このとき、識別ユニット3は、撮像画像から、紙幣搬送路40における紙幣の向きを検出している。第1の記番号領域、および第2の記番号領域の位置は、図6に示した記番号領域情報から得られる。s11では、切り出した第1の記番号領域、および第2の記番号領域の画像がカラー画像であれば、これを2値化画像に変換する2値化処理も行う。
【0039】
画像処理部34は、s11で切り出した第1の記番号領域に記載されている記番号を構成する文字を1文字ずつ切り出す(s12)。文字の切出は、図9に示すように、文字の高さ方向における黒ドットの分布を取り、各文字について幅方向の位置を検出する。次に、幅方向の位置を決定した文字毎に、図10に示すように、幅方向における黒ドットの分布を取り、各文字について高さ方向の位置を検出する。画像処理部34は、s12で切り出した各文字を、公知のパターンマッチングにより認識する(s13)。画像処理部34は、全ての文字が認識できると、その認識結果に基づいて処理対象の紙幣の記番号に設定する(s14、s20)。
【0040】
一方、s13で全ての文字が認識できなかったときには、s11で切り出した第2の記番号領域に記載されている記番号を構成する文字を1文字ずつ切り出す(s15)。このs15にかかる処理は、上述したs12にかかる処理と同じである。そして、画像処理部34は、s15で切り出した各文字を、公知のパターンマッチングにより認識する(s16)。画像処理部34は、全ての文字が認識できると、その認識結果に基づいて処理対象の紙幣の記番号に設定する(s17、s20)。
【0041】
なお、s12〜s14にかかる処理と、s15〜s17にかかる処理とは、どちらが先に行われる構成であってもよい。
【0042】
画像処理部34は、s16で全ての文字が認識できなかったときには、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、文字が認識できなかった桁があるかどうかを判定する(s18)。画像処理部34は、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった桁がなかった場合、一方の記番号領域に記載されている記番号で認識できなかった桁の文字を、他方の記番号領域に記載されている記番号で認識できた桁の文字に置き換え(s19)、これを処理対象の紙幣の記番号に設定する(s20)。
【0043】
画像処理部34は、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった桁がある場合、その桁について合成処理を行う(s21)。以下、s21にかかる合成処理について説明する。
【0044】
図11は、s21にかかる合成処理を示すフローチャートである。画像処理部34は、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった桁を処理対象桁に設定する(s31)。画像処理部34は、s31で設定した処理対象の桁の文字について、第1の記番号領域における文字画像、および第2の記番号領域における文字画像を読み出し(s32)、これらの論理和画像を生成する(s33)。
【0045】
ここで、処理対象の桁の記番号「I」であり、第1の記番号領域では、図12に示す汚れによるドット片があり、第2の記番号領域では、図12に示すかすれによる分断が生じていたために、文字が認識できなかった場合を例にする。s33では、これらの文字画像の論理和画像が作成される。
【0046】
画像処理部34は、s33で作成した論理和画像におけるドット片の数が複数であれば(s34)、各ドット片の周囲長さを検出する(s35)。そして、周囲長さが最大であるドット片を、対象文字として抽出する(s36)。
【0047】
なお、s33で作成した論理和画像におけるドット片の数が1つであれば、s35にかかる処理を行うことなく、そのドット片を対象文字として抽出する。
【0048】
画像処理部34は、s36で生成したドット片にかかる文字を認識し、ここで認識できた文字を、対象桁の文字に設定する(s37)。画像処理部34は、未処理の桁があれば(s38)、s31に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0049】
画像処理部34は、s21にかかる合成処理で、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった各桁の文字が、全て認識できていれば、これらの文字を、この合成処理で認識した文字に置き換え(s22、s23)、これを処理対象の紙幣の記番号に設定する(s20)。
【0050】
なお、他の桁の文字については、第1の記番号領域に記載されている記番号、または第2の記番号領域に記載されている記番号によって、認識されている。
【0051】
また、s21にかかる合成処理で、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった各桁の文字のうち、いずれかの文字が認識できていなけれれば、記番号認識不良にする(s22、s24)。
【0052】
したがって、2つの記番号領域に記載されている記番号において、汚れや、かすれ等で同じ桁の文字が認識できない場合であっても、その桁の文字を認識することができる。これにより、紙幣の処理総数に対して、記番号が認識できた紙幣の枚数の割合である認識可否率を向上させることができる。
【0053】
また、上述したs21にかかる合成処理は、以下に示す処理に置き換えてもよい。図13は、この合成処理を示すフローチャートである。画像処理部34は、第1の記番号領域に記載されている記番号、および第2の記番号領域に記載されている記番号の両方において、認識できなかった桁を処理対象桁に設定する(s41)。画像処理部34は、s41で設定した処理対象の桁の文字について、第1の記番号領域における文字画像、および第2の記番号領域における文字画像を読み出し(s42)、これらの排他的論理和画像を生成するとともに、論理積画像を生成する(s43、s44)。
【0054】
ここで、上述して例と同様に、処理対象の桁の記番号「I」であり、第1の記番号領域では、図14に示す汚れによるドット片があり、第2の記番号領域では、図14に示すかすれによる分断が生じていたために、文字が認識できなかった場合を例にする。s43では、これらの文字画像の排他的論理和画像が作成される。また、s44では、これらの文字画像の論理積画像が作成される。
【0055】
画像処理部34は、s43で生成した排他的論理和画像に存在するドット片毎に、s44で生成した論理積画像に存在するいずれかのドット片と隣接しているかどうか判定する(s45)。画像処理部34は、s45で、論理積画像に存在するいずれかのドット片に隣接していると判定した、ドット片と、s44で生成した論理積画像と、の論理和画像を生成する(s46)。
【0056】
画像処理部34は、s46で生成した論理和画像にかかる文字を認識し、ここで認識できた文字を、対象桁の文字に設定する(s47)。画像処理部34は、未処理の桁があれば(s48)、s41に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0057】
このように、この図13に示す処理においても、2つの記番号領域に記載されている記番号において、汚れや、かすれ等で同じ桁の文字が認識できない場合であっても、その桁の文字を認識することができる。
【0058】
なお、本願発明は、証券等の紙葉類を処理する装置にも適用できる。
【0059】
また、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1…紙幣処理装置
2…メイン制御ユニット
3…識別ユニット
30…記番号認識ユニット
31…制御部
32…撮像部
321A,322A…ラインセンサ
321B,322B…光源
33…磁気パターン読取部
34…画像処理部
4…搬送ユニット
40…紙幣搬送路
5…表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2箇所に固有の文字列からなる記番号が記載されている紙葉類の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段が取得した紙葉類の画像から、固有の記番号が記載されている2つの記番号領域の画像を切り出す記番号領域切出手段と、
前記記番号領域切出手段が切り出した2つの記番号領域の画像から、その記番号領域に記載されている記番号について、各桁の文字を切り出す文字切出手段と、
前記文字切出手段が2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像を用いて、その桁の文字合成画像を生成する文字合成画像生成手段と、
前記文字合成画像生成手段が生成した文字を認識する認識手段と、を備え、
前記文字合成画像生成手段は、連続する一塊のドット群を、その桁の文字画像として生成する手段である、記番号認識装置。
【請求項2】
前記文字合成画像生成手段は、2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像の論理和をとった論理和画像を生成し、連続するドット群の塊が複数あれば、予め定めた条件に基づいて、1つのドット群を、その桁の文字合成画像とする手段である、請求項1に記載の記番号認識装置。
【請求項3】
前記文字合成画像生成手段は、2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像の論理和をとった論理和画像を生成し、連続するドット群の塊が複数あれば、周囲長が最長であるドット群を、その桁の文字合成画像とする手段である、請求項1に記載の記番号認識装置。
【請求項4】
前記文字切出手段が2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像を、ともに認識することができなかった場合に、前記文字合成画像生成手段により、その桁の文字合成画像を生成する手段である、請求項1〜3のいずれかに記載の記番号認識装置。
【請求項5】
前記文字合成画像生成手段は、2つの記番号領域の画像から切り出した対応する桁の文字画像について、排他的論理和をとった排他的論理和画像、および論理積をとった論理積画像を生成するとともに、ここで生成した排他的論理和画像、および論理積画像によって、連続する一塊のドット群を生成し、これを、その桁の文字合成画像とする手段である、請求項1に記載の記番号認識装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の記番号認識装置を備え、
前記記番号認識装置が認識した紙葉類に記載されている記番号を用いて、当該紙葉類が取扱可能な紙葉類であるかどうかを判定する取扱可否判定手段を備えた紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−39821(P2011−39821A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187155(P2009−187155)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】