説明

記里鼓車

【課題】安価で簡単に組立てることができる記里鼓車の提供をする。
【解決手段】記里鼓車1に、本体10と、本体10の所定位置に夫々軸支された複数の歯車5と、一つの歯車5を軸支する差動軸4と、差動軸4と一体回転可能に支持された第一軸11と、第一軸11に支持され、差動軸4に軸支された歯車5と噛合する歯車5と噛合しない歯車5とが夫々取付けられた一対の筒状の第二軸12と、取付けられた歯車5によって回転を伝達させる一個の第三軸13と、取付けられた歯車5によって回転を伝達させる二個の第四軸14と、第四軸14の歯車5と噛合する歯車5が固定された第五軸15と、第三軸13の歯車5と噛合する歯車5が固定された第六軸16と、第六軸16に固定された第一車輪2と、第一車輪2から車輪の直径分離れた位置で第五軸15に固定された第二車輪3と、第一軸11が一回転すると音を発生させる発報手段6とを主に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定距離を移動する毎に音を発する記里鼓車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、左右に車輪を有した車体と、車体に載置された太鼓と、車輪の回転を伝達させて車体が一定距離を移動する毎に太鼓を鳴らす伝達機構と、を有し、車体を押したり引いたりして車体が一定距離を移動する毎に太鼓が鳴ることで車体が進んだ距離を知らせる記里鼓車が知られている。一方、左右に車輪を有した車体と、車体に載置された人形と、車輪の回転を人形へ伝達させる伝達機構と、を有し、車体がどの方向を向いても人形の向きが変わらず、人形によって同じ方向を示すことができる指南車も知られている(例えば、特許文献1、2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、記里鼓車等の伝達機構は、種類や大きさの異なる複数の歯車を用いているので、車軸や伝達軸等に取付ける各歯車が限定されており、組立てに手間が係ると共に、組立てミスが発生する虞があった。また、使用する歯車の種類が多いので、記里鼓車等にかかるコストが高くなる問題があった。
【0004】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、安価で簡単に組立てることができる記里鼓車の提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の記里鼓車は、
「移動させるための取手部を有する本体と、
該本体の所定位置に夫々回転可能に支持され、平板状で平行に配置された一対の歯面と、一対の該歯面の先端同士を繋ぐ半円形状の歯先面とを備えた複数の歯を有すると共に、前記歯先面の間隔が前記歯における前記歯面同士の間隔に対して1〜2倍の間隔となるように複数の前記歯を周方向へ列設した複数の歯車と、
一つの該歯車を回転可能に支持する差動軸と、
該差動軸における前記歯車を軸支した位置から該歯車の半径分離れた位置を中心として直角方向両側へ延び前記差動軸と一体回転可能に前記本体に支持された第一軸と、
該第一軸の外周に回転可能に支持されると共に前記差動軸を挟んで両側に配置され、該差動軸に軸支された前記歯車と噛合する前記歯車と、噛合しない前記歯車とが夫々取付けられた一対の筒状の第二軸と、
何れか一方の該第二軸における前記差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、取付けられた前記歯車によって回転を順次伝達させ、前記本体に回転可能に支持されると共に前記第二軸と同じ方向へ延びた所定数個の第三軸と、
該第三軸とは前記第二軸を挟んで反対側の位置で前記本体に回転可能に支持されると共に前記第二軸と同じ方向へ延び、何れか他方の該第二軸における前記差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、取付けられた前記歯車によって回転を順次伝達させ、前記第三軸を含む一方の前記第二軸からの回転を伝達させる軸の数が奇数個であれば偶数個、偶数個であれば奇数個とされ、前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車が前記第三軸における最後に回転が伝達される前記歯車と同一面上に配置された第四軸と、
該第四軸における前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車と前記第四軸を挟んで前記第二軸とは反対側で噛合する前記歯車が固定され、前記第二軸に対して直角方向へ延びると共に前記本体に回転可能に支持された第五軸と、
該第五軸と同じ方向へ延びると共に前記本体に前記第五軸と同軸上に回転可能に支持され、前記第三軸における前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車と前記第三軸を挟んで前記第二軸とは反対側で噛合する前記歯車が固定された第六軸と、
該第六軸に固定された第一車輪と、
該第一車輪と同径とされ、前記第五軸に固定された第二車輪と、
該第二車輪及び前記第一車輪の少なくとも一方の回転に伴って回転する前記第一軸が前記本体に対して所定角度回転すると音を発生させる発報手段と
を具備する」
ことを特徴として主に構成されている。
【0006】
ここで、歯車における各歯の間隔を、一対の歯面同士の間隔に対して1〜2倍の間隔としているのは、1倍よりも小さいと相手側の歯車の歯を挿入することができず互に歯合させることができなくなるためであり、2倍よりも大きいと噛合させた歯車を回転させた時に、次に噛合する歯同士を噛合させることができなくなって回転を伝達させることができなくなる虞があるためである。なお、各歯の間隔を一対の歯面同士の間隔に対して1.2〜1.8倍の間隔とすることが望ましく、これにより、より良好な状態で回転を伝達させることができる。また、歯車における歯の基端から先端(歯先)までの長さ(歯丈)及び歯車の厚みは、良好に回転を伝達させることができる長さであれば良く、例えば、歯丈は、一対の歯面同士の間隔に対して1.4〜2.0倍の長さ、歯車の厚みは、歯丈に対して0.3〜1.0倍の厚みとすることが望ましい。
【0007】
また、歯車を軸に対して「固定する」とは、歯車が軸と一体回転すると共に軸に対してスライド不能とされたもののことである。一方、歯車を軸に対して「取付ける」とは、歯車が軸と一体回転すると共に軸方向へスライド可能又はスライド不能としたもののことである。
【0008】
また、発報手段は、音を発生させるものであれば良く、例えば、槌体が鐘や太鼓等を打撃して打撃音を発生させる機械的な機構のものでも良いし、第一軸の回転をセンサで検知して設置されたスピーカ等から電子音を発生させる電気的な機構のものでも良い。また、第一軸の「所定回転角度」としては、例えば、一回転毎、半回転毎、複数回転毎、等としても良い。
【0009】
本発明の記里鼓車における歯車は、一対の歯面が平行に配置され、歯先面の間隔が歯面同士の間隔に対して1〜2倍の間隔としているため、平行な軸で噛合させる場合だけでなく、直交する軸で噛合させる場合でも、相手側の歯車の歯を歯の間に挿入することができると共に、歯面を平板状としているため、どの向きで噛合させても、噛合する歯同士を線接触或いは面接触とすることができ、確実に回転を伝達させることができる。
【0010】
本発明の記里鼓車は、本体を直進移動させると、第一車輪が固定された第六軸と第二車輪が固定された第五軸とは同一方向へ同一速度で回転する。このとき、第五軸の歯車に噛合する第四軸の歯車と第六軸の歯車に噛合する第三軸の歯車とは、互に異なる方向へ回転することとなるが、第三軸と第四軸とでは偶数、奇数でその数が異なっているので、第三軸によって回転が伝達される一方の第二軸の歯車と、第四軸によって回転が伝達される他方の第二軸の歯車とが、互に同一方向へ同一速度で回転することとなる。そして、差動軸に軸支された歯車の両側に噛合する第二軸の歯車が同一方向へ同一速度で回転するので、差動軸に軸支された歯車は、差動軸に対して回転することは無く、そのままの状態で第二軸の歯車と共に公転することとなり、差動軸の歯車が公転することで第一軸が第二軸と同一方向へ同一速度で回転することとなる。
【0011】
一方、本体を曲線移動させると、蓋然的に、第一車輪と第二車輪との回転数が異なることとなり、本体全体の動きとしては、第一車輪と第二車輪とが同じ数(回転角度)だけ回転した分(重複回転数とも称す)と、第一車輪と第二車輪の何れか一方が余分に回転した分(余剰回転数とも称す)とに分けて考えることができる。この重複回転数は、第一車輪及び第二車輪における少ない方の回転数に相当し、第一車輪と第二車輪の回転数が同じなので、直線移動したものとみなすことができ、上記と同様の理由により、第一軸が重複回転数と同じだけ回転することとなる。
【0012】
これに対して、余剰回転数は、第一車輪又は第二車輪の何れか一方のみが回転している場合に相当するので、差動軸に軸支された歯車と噛合した一対の歯車の何れか一方のみが回転することとなる。この状態では、差動軸に軸支された歯車は、回転する第二軸の歯車の回転によって、反対側の停止した第二軸の歯車との噛合した位置を接点として差動軸周りに回転させられると同時に、停止した第二軸の歯車に沿って周方向へ移動(公転)することとなるが、差動軸が一対の第二軸における停止した歯車と回転する歯車との中央に位置しているので、差動軸は回転する第二軸の歯車の回転に対して半分だけ回転(第二軸周りを公転)することとなり、第一軸が余剰回転数の半分だけ回転することとなる。この余剰回転数による第一軸の回転は、換言すると、第一車輪と第二車輪との中央に同径の架空の車輪を配置した場合に、その架空の車輪の回転数と一致するものである。
【0013】
このように、この記里鼓車は、本体を直線移動或いは曲線移動させると、第一軸が、第一車輪と第二車輪との中央に配置された架空の車輪の回転数と同じ数だけ回転することとなる。これにより、第一車輪と第二車輪の直径をDとした場合、第一車輪と第二車輪が一回転した時の本体の移動距離はD×πとなるので、例えば、発報手段において第一軸が一回転する毎に音を発するようにした場合、第一軸が回転して音が鳴る毎に本体(第一車輪と第二車輪との中央位置)がD×πの距離を移動したことが判り、発報手段によって本体の移動距離を知らせることができる。
【0014】
従って、本発明の記里鼓車によれば、第一車輪や第二車輪からの回転を第一軸へ伝達させる歯車を、平行な軸でも直交する軸でも噛合させることが可能な歯車を用いて全て同一の歯車としているので、歯車にかかるコストを可及的に低減させることができると共に、組立ての際に歯車を間違えることが無く確実に組立てることができる記里鼓車を提供することができる。
【0015】
また、同一の歯車で記里鼓車を構成するようにしており、上述したように、組立てミスをなくして誰でも簡単に組立てられる記里鼓車とすることができるので、例えば、教育用の組立キットとして、歯車による伝達機構の教材に好適な記里鼓車を提供することができる。
【0016】
更に、本発明の記里鼓車は、上記構成に加え、
「前記第一軸を上下方向に向けると共に、前記第三軸の数を奇数個とし、更に、前記第五軸及び前記第六軸を前記第一軸よりも下側へ配置すると共に、前記第一車輪及び前記第二車輪を前記歯車の直径の2倍以上の直径とし、前記第一車輪と前記第二車輪との間隔を前記第一車輪及び前記第二車輪の直径と同じ間隔とした上で、
前記第一軸の上端に取付けられる指示部と、
前記第二軸から前記第五軸へ回転を伝達させる前記第四軸の数を奇数個に変更する伝達個数変更手段と
を更に具備する」ものであっても構わない。
【0017】
ここで、「指示部」としては、「所定の人物や動物等を模した人形」、「矢印状に形成されたもの」、等が挙げられ、第一軸に対して回動不能に取付けても良いし、回動位置を任意に変更可能に取付けても良い。
【0018】
また、「伝達個数変更手段」としては、「取付けられた歯車が互いに噛合できる位置に配置された三つの第四軸を有し、取付けられた歯車を軸方向へスライドさせて噛合する歯車同士を変更可能とすることで、回転を伝達させる第四軸の数を変更可能としたもの」、「取付けられた歯車が互いに噛合できる位置に配置された二つの第四軸と一つの第二軸とを有し、取付けられた歯車を軸方向へスライドさせて噛合する歯車同士を変更可能とすることで、回転を伝達させる第四軸の数を変更可能としたもの」、「本体に予め複数の第四軸を脱着できるように構成し、噛合する歯車が取付けられた第四軸を変更する個数に合わせて適宜脱着して変更するようにしたもの」、等が挙げられる。
【0019】
本発明の記里鼓車は、第一軸(第二軸)を上下方向へ向けた上で、第三軸を奇数個とすると共に、第四軸を伝達個数変更手段によって偶数個から奇数個に変更しているので、進行方向に対して左側の車輪の回転が伝達される第二軸の歯車は平面視で左回転し、右側の車輪の回転が伝達される第二軸の歯車は平面視で右回転することとなる。そして、本体が
直進移動する時は、差動軸に軸支された歯車を挟むように噛合する二つの第二軸の歯車が、互いに異なる方向へ同一速度で回転するので、差動軸に軸支された歯車はそのままの位置で差動軸周りに回転し、第二軸に対して公転することは無い。つまり、第一軸は、本体に対して相対回転しない。
【0020】
また、記里鼓車の本体を曲線移動させた場合、例えば、進行方向に対して左側の車輪が2回転、右側の車輪が2.5回転するように曲線移動させた場合、上述したように、重複回転数と余剰回転数とに分けて考えることができるので、重複回転数は2回転、余剰回転数は右側の車輪で0.5回転となる。そして、重複回転数の分は、直進移動と同じなので、重複回転数の分については第一軸は回転しないことになる。更に、余剰回転数の分については、余分に回転する右側の車輪から回転が伝達される第二軸の歯車が、余剰回転数(ここでは0.5回転)だけ平面視で右回転するので、差動軸に軸支された歯車はその半分の0.25回転だけ右方向へ公転することとなり、第一軸が0.25回転だけ右回転することとなる。従って、上記の曲線移動の場合、全体としては、第一軸が本体に対して0.25回転だけ右回転することとなる。
【0021】
一方、記里鼓車の本体自体の向きは、重複回転数の分については直線移動とみなされるので本体の向きは変化することが無く、余剰回転数の分についてのみ考えれば良いことになる。この場合では、右側の車輪のみが0.5回転した時の本体の向きであるが、本発明では、左右の車輪(第一車輪と第二車輪)の間隔を車輪の直径と同じ間隔としているので、一方の車輪のみが2回転すると本体が1回転することとなり、右側の車輪のみが0.5回転した場合では、本体は平面視で左側へ半分の0.25回転することとなる。
【0022】
これにより、記里鼓車全体としては、第一軸が本体に対して右側へ0.25回転すると同時に、本体が左側へ0.25回転するので、第一軸は記里鼓車が移動する地面に対しては回転しないこととなり、第一軸に取付けられた指示部が地面に対しては同一方向を向いた状態で維持されることとなる。つまり、記里鼓車をどの方向へ移動させても、指示部が地面に対して同一方向を向き続けることができ、記里鼓車が、所謂、指南車に変更されることとなる。
【0023】
従って、本発明の記里鼓車によると、第三軸を奇数個とした上で、伝達個数変更手段によって第四軸を偶数個から奇数個に変更することができるようにしているので、第四軸を奇数個に変更すると、記里鼓車における第一軸に取付けられた指示部が本体の向きに関わらず地面に対して同一方向を向き続ける指南車とすることができ、第四軸を偶数個とすると記里鼓車とすることができ、一つの車両で用途や目的に応じて使い分けることができると共に、教材としての教育効果のより高い記里鼓車とすることができる。
【0024】
更に、本発明の記里鼓車は、上記構成に加え、
「前記伝達個数変更手段は、
互に前記歯車の直径と略同じ距離離れた、三つの前記第四軸又は、何れか他方の前記第二軸と二つの前記第四軸、に夫々取付けられた前記歯車を軸方向へスライド可能とすると共に、二つの前記第四軸に対して夫々二つの前記歯車を一体回転可能に取付け、各軸に取付けられた前記歯車を適宜スライドさせることで、回転を伝達させる前記第四軸の数を変更するものである」ものであっても構わない。
【0025】
ここで、「互に歯車の直径と略同じ距離離れた」とは、三つの軸に取付けられた歯車が互に噛合可能な距離のことであり、三つの軸の中心が正三角形の頂点に配置された状態のことである。
【0026】
また、「回転を伝達させる第四軸の数を変更」としては、「第一軸に近い側の軸に軸方向へスライド可能に歯車を取付け、残りの二つの軸には互に噛合する歯車と、噛合しない歯車とを夫々取付けた上で、第一軸に近い側の軸に取付けられた歯車をスライドさせて、残りの二つの軸における互いに噛合しない歯車の何れか一方と噛合させることで第四軸の数を変更するもの」、「第一軸に近い側の軸に歯車を固定し、残りの二つの軸には互に噛合する歯車と、噛合せずに軸方向へスライド可能な歯車とを夫々取付けた上で、残りの二つの軸における何れか一方のスライド可能な歯車を第一軸に近い側の軸の歯車と噛合させることで第四軸の数を変更するもの」、等が挙げられる。
【0027】
従って、本発明の記里鼓車によると、伝達個数変更手段を、上述の構成としているので、三つの各軸にスライド可能に取付けられた歯車を適宜位置へスライドさせることで、噛合させる歯車を簡単に変更して回転を伝達させる第四軸の数を変更することができ、上述した作用効果を確実に具現化することができる。また、軸に対して歯車をスライドさせることで回転を伝達させる第四軸の数を変更するようにしているので、別途第四軸を取付けたり取外したりして回転を伝達させる第四軸の数を変更するようにした場合と比較して、変更に係る手間を簡略化することができる。
【0028】
更に、本発明の記里鼓車は、上記構成に加え、
「前記第一軸を上下方向に向けると共に、前記第五軸及び前記第六軸を前記第一軸よりも下側へ配置し、前記第一車輪及び前記第二車輪を前記歯車の直径の2倍以上の直径とし、前記第一車輪と前記第二車輪との間隔を前記第一車輪及び前記第二車輪の直径と同じ間隔とした上で、
一つの前記歯車を回転可能に支持する第二差動軸と、
該第二差動軸における前記歯車を軸支した位置から該歯車の半径分離れた位置を中心として上下方向両側へ延び前記第二差動軸と共に一体回転可能に前記本体に支持された第八軸と、
該第八軸の外周に回転可能に支持されると共に前記第二差動軸を挟んで両側に配置され、前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合する前記歯車と、噛合しない前記歯車とが夫々固定された一対の筒状の第九軸と、
前記第八軸の上端に取付けられた指示部と
を更に具備し、
何れか一方の前記第九軸における前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、前記第三軸を含む奇数個の軸を介して前記第六軸に固定された前記歯車へ回転を伝達させ、何れか他方の前記第九軸における前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、前記第四軸を含む奇数個の軸を介して前記第五軸に固定された前記歯車へ回転を伝達させる」ものであっても構わない。
【0029】
この記里鼓車は、第二差動軸、第八軸、及び第九軸の構成が、上述の差動軸、第一軸、及び第二軸の構成と同じ構成となっており、一対の第九軸の歯車に対して、第五軸及び第六軸へ回転を伝達させる第四軸及び第三軸の個数を夫々奇数個としているので、進行方向に対して左側の車輪の回転が伝達される第九軸の歯車は平面視で左回転し、右側の車輪の回転が伝達される第九軸の歯車は平面視で右回転することとなる。従って、第八軸は記里鼓車をどの方向へ移動させても、地面に対して回転することは無く、第八軸に取付けられた指示部は地面に対して同一方向を向き続けることとなる。
【0030】
従って、本発明の記里鼓車によると、記里鼓車を移動させると、第一車輪及び第二車輪の回転により第一軸が回転して一定距離進む毎に発報手段から音を発すると共に、第八軸に取付けられた指示部が記里鼓車の向きに関わらず地面に対して同じ方向を向き続けるので、一台で記里鼓車と指南車の機能を同時に発揮させることができると共に、教材としての教育効果のより高い記里鼓車とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明によれば、安価で簡単に組立てることができる記里鼓車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態である記里鼓車を示す斜視図である。
【図2】図1の記里鼓車を分解して示す斜視図である。
【図3】図1の記里鼓車における第一軸の断面を示す断面図である。
【図4】図1における歯車の歯を拡大して示す正面図である。
【図5】(a)は図1における偶数個の第四軸を介して回転が伝達される状態を示す斜視図であり、(b)は図1における奇数個の第四軸を介して回転が伝達される状態を示す斜視図であり、(c)は図1における歯車の伝達箇所を示す上面図である。
【図6】図1とは異なる本発明の記里鼓車の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である記里鼓車1について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態である記里鼓車を示す斜視図であり、図2は図1の記里鼓車を分解して示す斜視図であり、図3は図1の記里鼓車における第一軸の断面を示す断面図であり、図4は図1における歯車の歯を拡大して示す正面図であり、図5(a)は図1における偶数個の第四軸を介して回転が伝達される状態を示す斜視図であり、図5(b)は図1における奇数個の第四軸を介して回転が伝達される状態を示す斜視図であり、図5(c)は図1における歯車の伝達箇所を示す上面図であり、図6は図1とは異なる本発明の記里鼓車の実施形態を示す斜視図である。
【0034】
本実施形態の記里鼓車1は、一定距離を移動する毎に音を発することができるものであり、図示するように、移動させるための取手部9を有する本体10と、本体10の所定位置に夫々回転可能に支持される複数の歯車5と、を備えている。この歯車5は、図4に示すように、平板状で平行に配置された一対の歯面7と、一対の歯面7の先端同士を繋ぐ半円形状の歯先面8とを備えた複数の歯を有すると共に、歯先面8の間隔Vが歯における歯面7同士の間隔に対して約1.7倍の間隔となるように複数の歯を周方向へ列設されている。また、歯車5は、中心に貫通した歯車孔21を備えている。
【0035】
また、記里鼓車1は、一つの歯車5を回転可能に支持する差動軸4と、差動軸4における歯車5を軸支した位置から歯車5の半径分離れた位置を中心として直角方向上下側へ延び差動軸4と一体回転可能に本体10に支持された第一軸11と、第一軸11の外周に回転可能に支持されると共に差動軸4を挟んで上下側に配置され、差動軸4に軸支された歯車5と噛合する歯車5と、噛合しない歯車5とが夫々取付けられた一対の筒状の第二軸12と、上側の第二軸12における差動軸4に軸支された歯車5と噛合しない歯車5から、取付けられた歯車5によって回転を順次伝達させ、本体10に回転可能に支持されると共に上下方向へ延びた一個の第三軸13と、第三軸13とは第二軸12を挟んで反対側の位置で本体10に回転可能に支持されると共に上下方向へ延び、下側の第二軸12における差動軸4に軸支された歯車5と噛合しない歯車5から、取付けられた歯車5によって回転を順次伝達させる二個の第四軸14と、を備えている。
【0036】
更に、記里鼓車1は、第四軸14における第二軸12から最後に回転が伝達される歯車5と噛合する歯車5が固定され、第二軸12に対して直角方向へ延びると共に本体10に回転可能に支持された第五軸15と、第五軸15と同じ方向へ延びると共に本体10に第五軸15と同軸上に回転可能に支持され、第三軸13から最後に回転が伝達される歯車5と噛合する歯車5が固定された第六軸16と、第六軸16に固定され歯車5の直径の約3.3倍の直径とされた第一車輪2と、第一車輪2と同径とされ、第六軸16における第一車輪2から第一車輪2の直径分離れた位置で第五軸15に固定された第二車輪3と、第二車輪3及び第一車輪2の一方の回転に伴って回転する第一軸11が本体10に対して1回転すると音を発生させる発報手段6と、を具備するものである。
【0037】
また、本例の記里鼓車1は、発報手段6よりも上側で第一軸11に固定され第一軸11に対して直角方向へ放射状に延びた複数の棒状部材を有した飾体25と、飾体25よりも上側で第一軸11の上端に固定された板状で外径が人型に形成された指示部17と、を備えている。
【0038】
なお、本例の記里鼓車1は、差動軸4及び第一軸11が、歯車5の歯車孔21よりも小径の円柱状とされている。また、記里鼓車1は、第二軸12、第三軸13、第四軸14、第五軸15、及び第六軸16が、歯車5の歯車孔21と外径が略同径で内径が差動軸4等よりも大径とされた円筒状とされており、歯車孔21へ圧入されることで、一体回転可能とされると共に、歯車5を軸方向へスライドさせることができるようになっている。
【0039】
本例の記里鼓車1の本体10は、略水平方向へ延びた平面視が矩形状の上面板35、上面板35の前端から下方へ垂下した前面板34、前面板34と同じ高さとされ上面板35の左右両端から下方へ垂下した右面板36及び左面板37、右面板36及び左面板37の後端同士を結び上面板35よりも上方へ延出した背面板24を有し、下面が開放された箱状の基台22と、基台22における背面板24の上端から上面板35と平行に延びた板状の上壁23とを備えている。また、この基台22には前面板34の中央から前方へ突出した棒状の取手部9が取付けられている。この本体10の基台22は、左右方向の幅が歯車5のピッチ円径の2倍よりも若干大きく形成されており、下面から上面板35までの高さが歯車5の外径よりも若干大きい高さとされている。
【0040】
この本体10は、基台22における右面板36及び左面板37に、前後方向の所定位置で同軸上に貫通した車軸孔を有している。この車軸孔は、上面板35の上面から歯車5のピッチ円径の半分以下の位置に形成されている。また、本体10は、基台22の上面板35と上壁23に、互に対向した四つの軸孔を備えている。具体的には、三つの軸孔は、前後方向の位置が車軸孔と同位置とされており、左右方向の中央と、その左右両側に歯車5のピッチ円径離れた位置に夫々配置されている。残りの軸孔は、三つの軸孔よりも前側で、平面視で中央と左側の軸孔から夫々歯車5のピッチ円径離れた位置に配置されている。
【0041】
なお、車軸孔及び軸孔は、夫々同じ径とされており、第一軸11や後述する車軸20等を軸支することができる径とされている。また、詳細な図示は省略するが、これら軸孔のうち上面板35における前側に配置された軸孔は、上方のみへ開口した止り孔とされており、その他の軸孔は、上下に貫通した貫通孔とされている。更に、中央の軸孔に対して左右両側の軸孔は、右面板36及び左面板37によって下端開口の一部が閉鎖された状態となっている。
【0042】
また、本体10は、基台22の車軸孔に挿通され第一車輪2及び第二車輪3の直径と等しい長さの車軸20と、基台22の上面板35と上壁23における中央の軸孔を除いた軸孔に夫々両端が挿通される三つの棒部材32とを備えている。この車軸20及び棒部材32は、互に同径(差動軸4及び第一軸11とも同径)で、円柱状とされている。また、車軸20は、両端に螺子孔が形成されている。
【0043】
本例の記里鼓車1の第一軸11は、図1乃至図3に示すように、本体10の基台22の上面板35と上壁23における中央に配置された軸孔に挿通されることで回転可能に支持されており、第一軸11の上端が上壁23を貫通して上方へ延び出している。この第一軸11を本体10に支持した状態で、両端に螺子孔が形成された差動軸4が、第一軸11における上面板35と上壁23との略中央の位置に取付けられている。差動軸4には、第二軸12等と同径で差動軸4よりは若干短い円筒状の筒部材が挿入されており、筒部材の先端に歯車5の歯車孔21が圧入固定されている。この筒部材は、差動軸4の先端に取付けられるビスと第一軸11とによって差動軸4から抜けないようになっており、筒部材を介して差動軸4の周りに歯車5を回転可能に支持するようになっている。
【0044】
記里鼓車1の二つの第二軸12は、上面板35と上壁23との間の距離の半分よりも若干短い長さの円筒状とされており、第一軸11における差動軸4の上下両側に挿入することで、第一軸11の周りを回転可能に支持されるようになっている。上側の第二軸12には、差動軸4に軸支された歯車5と噛合する歯車5が下側に、噛合しない歯車5が上端付近に夫々固定されている。一方、下側の第二軸12には、差動軸4に軸支された歯車5と噛合する歯車5が上側に、噛合しない歯車5が下端から歯車5の厚さよりも充分に上側の位置に夫々圧入固定されている。また、下側の第二軸12は、下端が上面板35に当接すると共に、上端が差動軸4に軸支された筒部材に当接するようになっており、これにより、第一軸11が本体10から下方へ抜けないようになっている。
【0045】
記里鼓車1における第三軸13は、上面板35と上壁23との間の距離と略同じ長さの円筒状とされており、上面板35と上壁23とにおける平面視で中央よりも右側の軸孔に支持された棒部材32に挿入することで本体10に対して回転可能に支持されるようになっている。この第三軸13には、上側の第二軸12における上側の歯車5と同じ高さと、下端に夫々歯車5が圧入固定されている。これにより、上側の第二軸12における上側の歯車5は、第三軸13における上側の歯車5と噛合し、上側の第二軸12と第三軸13との間で回転が伝達されるようになっている。
【0046】
また、二つの第四軸14は、第三軸13と同様に、上面板35と上壁23との間の距離と略同じ長さの円筒状とされており、上面板35と上壁23とにおける平面視で中央よりも左側の軸孔に支持された棒部材32と、前側の軸孔に支持された棒部材32とに挿入することで本体10に対して回転可能に支持されるようになっている。第一軸11の左側に支持された第四軸14には、下側の第二軸12における二つの歯車5の間の高さと、下端に夫々歯車5が圧入されており、上側の歯車5が上下にスライド可能に取付けられている。一方、第一軸11の前側に支持された第四軸14には、下側の第二軸12における下側の歯車5と同じ高さと、下端に夫々歯車5が圧入されており、上側の歯車5が上下にスライド可能に取付けられている。これにより、下側の第二軸12における下側の歯車5は、前側の第四軸14における上側の歯車5と噛合し、前側の第四軸14における下側の歯車5は、左側の第四軸14における下側の歯車5と噛合するので、下側の第二軸12と左側の第四軸14との間で、前側の第四軸14と介して回転が伝達されるようになっている。
【0047】
更に、記里鼓車1における第五軸15及び第六軸16は、本体10(基台22)の左右方向の中央と車軸20の中央とを一致させた状態で、基台22から外側へ突出した長さと略同じ長さの円筒状とされ、外側端部に第二車輪3及び第一車輪2が夫々固定されており、車軸20へ挿入することで本体10に対して回転可能に支持されるようになっている。これら、第五軸15及び第六軸16は、車軸20へ挿入した状態で、車軸20の両端に取付けられたビスによって車軸20から抜けないようになっていると共に、本体10の基台22を両側から挟むようになっている。これにより、本体10に対して、第五軸15及び第六軸16の第二車輪3及び第一車輪2の位置が規定されるようになっている。
【0048】
また、第五軸15及び第六軸16には、左側の第四軸14における下側の歯車5及び右側の第三軸13における下側の歯車5と夫々直交した状態で噛合する位置に夫々歯車5が圧入固定されている。これにより、第一車輪2と上側の第二軸12との間で、第三軸13を介して回転が伝達されるようになっていると共に、第二車輪3と下側の第二軸12との間で、二つの第四軸14を介して回転が伝達されるようになっている。
【0049】
記里鼓車1における発報手段6は、本体10における上壁23の上側に配置されており、第一軸11と共に回転可能に固定され第一軸11に対して直角方向へ延びた板状のカム部材27と、平面視でカム部材27の旋回範囲内に配置され下端が上壁23の上面に取付けられると共に上端がカム部材27よりも上方へ延出したコイルバネ33と、コイルバネ33の上端に取付けられた槌体28と、槌体28と略同じ高さの位置で第一軸11に固定される鐘26とを備えている。この発報手段6は、第一軸11と共に回転するカム部材27がコイルバネ33に当接すると、カム部材27の回転によってコイルバネ33が撓み、更にカム部材27が回転してコイルバネ33との当接が解除されると、撓んだコイルバネ33の復元力によって、コイルバネ33の上端の槌体28が鐘26を打撃することで音を発することができるようになっている。
【0050】
因みに、本実施例における歯車5は、材質が樹脂で形成され、一対の歯面7の幅Wは約3mm、歯丈Yの長さは約5mm、外径は約35mm、厚みは約3mm、歯車孔21の直径は8mmである。また、歯数は12個、歯先面8の間隔Vは約5mmであり、歯車5のピッチ円直径Zは約30mmである。また、本実施例における差動軸4の円筒部材の長さは約15mmであり、本実施例における第一車輪2及び第二車輪3の直径は、約115mmである。更に、本実施例における本体10は、材質が樹脂で形成され、左右方向の幅は、約73mmであり、基台22における上面板35、右面板36、左面板37、前面板34、背面板24、及び上壁23は、厚みが約5mmである。
【0051】
次に、本実施形態の記里鼓車1の動きについて説明する。まず本体10を直進移動させると、第一車輪2が取付けられた第六軸16と第二車輪3が取付けられた第五軸15とは同一方向へ同一速度で回転する。このとき、第五軸15の歯車5に噛合する左側の第四軸14の歯車5と第六軸16の歯車5に噛合する第三軸13の歯車5とは、互に異なる方向へ回転することとなるが、第三軸13は1個、第四軸14は2個であり、奇数、偶数で異なっているので、第三軸13によって回転が伝達される上側の第二軸12の歯車5と、第四軸14によって回転が伝達される下側の第二軸12の歯車5とが、互に同一方向へ同一速度で回転することとなる。そして、差動軸4に軸支された歯車5の両側に噛合する第二軸12の歯車5が同一方向へ同一速度で回転するので、差動軸4に軸支された歯車5は、差動軸4に対して回転することは無く、そのままの状態で第二軸12の歯車5と共に公転することとなり、差動軸4の歯車5が公転することで第一軸11が同一方向へ同一速度で回転することとなる。
【0052】
一方、本体10を曲線移動させると、蓋然的に、第一車輪2と第二車輪3との回転数が異なることとなるが、本体10全体の動きとしては、第一車輪2と第二車輪3とが同じ数だけ回転した重複回転数と、第一車輪2と第二車輪3の何れか一方が余分に回転した余剰回転数とに分けて考えることができる。この重複回転数は、直線移動したものとみなすことができ、上記と同様の理由により、第一軸11が重複回転数と同じだけ回転することとなる。
【0053】
これに対して、余剰回転数は、差動軸4に軸支された歯車5と噛合した一対の第二軸12の歯車5の何れか一方のみが回転することとなり、この状態では、回転する第二軸12の歯車5の回転に対して差動軸4が半分だけ回転(第二軸12周りを公転)するので、第一軸11が余剰回転数の半分だけ回転することとなる。この余剰回転数による第一軸11の回転は、換言すると、第一車輪2と第二車輪3との中央に同径の架空の車輪を配置した場合に、その架空の車輪の回転数と一致するものである。
【0054】
このように、この記里鼓車1は、本体10を直線移動或いは曲線移動させると、第一軸11が、第一車輪2と第二車輪3との中央に配置された架空の車輪の回転数と同じ数だけ回転することとなる。これにより、第一車輪2と第二車輪3の直径をDとした場合、第一車輪2と第二車輪3が一回転した時の本体10の移動距離はD×πとなり、本例では、発報手段6において第一軸11が一回転する毎に音を発するようにしているので、第一軸11が回転して音が鳴る毎に本体10(第一車輪2と第二車輪3との中央位置)がD×πの距離を移動したことが判り、発報手段6によって本体10の移動距離を知らせることができる。
【0055】
ところで、本例では、二つの第四軸14における上側の歯車5を軸方向へスライドさせることができるようになっているので、前側の第四軸14における上側の歯車5を下方へスライドさせることで下側の第二軸12における下側の歯車5との歯合を解除し、左側の第四軸14の上側の歯車5を下方へスライドさせて下側の第二軸12における下側の歯車5と歯合させるようにすることで、前側の第四軸14を介さずに、下側の第二軸12と左側の第四軸14との間で回転を伝達させることができる。つまり、回転を伝達させる第四軸14の個数を、一個(奇数個)に変更させることができるようになっている。従って、本例の記里鼓車1における下側の第二軸12と、二つの第四軸14とは、本発明の伝達個数変更手段に相当している。
【0056】
本例の記里鼓車1は、回転を伝達させる第四軸14の個数を、一個に変更させた状態で本体10を直線移動させると、右側の第一車輪2から回転が伝達される上側の第二軸12は平面視で右回転し、左側の第二車輪3から回転が伝達される下側の第二軸12は平面視で左回転することとなり、夫々の第二軸12は互に異なる方向へ同一速度で回転することとなる。これにより、差動軸4に軸支された歯車5の上下で歯合する第二軸12の歯車5が、互に異なる方向へ同一速度で回転するので、差動軸4に軸支された歯車5はそのままの位置で差動軸4の周りを回転することとなり、第二軸12つまり第一軸11に対して公転することは無く、第一軸11は本体10に対して相対回転しない。
【0057】
また、本体10を例えば、右側の第一車輪2が2.5回転、左側の第二車輪3が2回転するような曲線移動させた場合、この場合も余剰回転数のみを考えれば良く、右側の第一車輪2のみが0.5回転すると、上側の第二軸12のみが平面視で右方向へ0.5回転することとなり、上記と同様の理由により、第一軸11が本体10に対して右方向へ第二軸12の半分の0.25回転し、第一軸11と共に指示部17が本体10に対して右方向へ0.25回転する。
【0058】
一方、本体10が上述の曲線移動した時の地面に対する本体10の向きは、余剰回転数の分だけ考えれば良い。ところで、本例では、第一車輪2と第二車輪3との間隔Tは、第一車輪2及び第二車輪3の直径Dと、同じとしており、一方の車輪のみが2回転すると本体10が1回転することとなるので、右側の第一車輪2のみが0.5回転した場合では、本体10は平面視で左側へ半分の0.25回転することとなる。
【0059】
従って、記里鼓車1全体としては、第一軸11が本体10に対して右側へ0.25回転すると同時に、本体10が左側へ0.25回転するので、第一軸11は記里鼓車1が移動する地面に対しては回転しないこととなり、第一軸11に取付けられた指示部17が地面に対しては同一方向を向いた状態で維持されることとなる。つまり、記里鼓車1をどの方向へ移動させても、指示部17が地面に対して同一方向を向き続けることができ、本例の記里鼓車1を、所謂、指南車に変更することができる。
【0060】
従って、本発明の記里鼓車1によると、第一車輪2や第二車輪3からの回転を第一軸11へ伝達させる歯車5を、平行な軸でも直交する軸でも噛合させることが可能な歯車5を用いて全て同一の歯車5としているので、歯車5にかかるコストを可及的に低減させることができると共に、組立ての際に歯車5を間違えることが無く確実に組立てることができる記里鼓車1を提供することができる。
【0061】
また、同一の歯車5で記里鼓車1を構成するようにしており、上述したように、組立てミスをなくして誰でも簡単に組立てられる記里鼓車1とすることができるので、例えば、教育用の組立キットとして、歯車5による伝達機構の教材に好適な記里鼓車1を提供することができる。
【0062】
また、本発明の記里鼓車1によると、伝達個数変更手段によって第四軸14を偶数個から奇数個に変更することができるようにしているので、第四軸14を奇数個に変更すると、記里鼓車1における第一軸11に取付けられた指示部17が本体10の向きに関わらず地面に対して同一方向を向き続ける指南車とすることができ、第四軸14を偶数個とすると記里鼓車1とすることができ、一つの車両で用途や目的に応じて使い分けることができると共に、教材としての教育効果のより高い記里鼓車1とすることができる。
【0063】
更に、本実施形態の記里鼓車1によると、第一軸11と共に一体回転する飾体25を備えているので、第一軸11が回転しているのを目視で認識させることができると共に、飾体25の複数の棒状部材を所定角度の間隔で放射状に延びた形状にさせることで、第一軸11が一回転する毎に音を発する発報手段6に加えて、第一軸11が一回転するまでの間の第一軸11の回転角度を知らせることができ、記里鼓車1の移動距離をより細かく知ることができる。
【0064】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0065】
すなわち、本実施形態の記里鼓車1は、第三軸13を一個、第四軸14を二個、備えたものを示したが、これに限定するものではなく、第三軸13を奇数の複数個とすると共に第四軸14を偶数の複数個としても良く、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
また、本実施形態の記里鼓車1は、歯先面8の間隔が歯における歯面7同士の間隔Vに対して約1.7倍のものを示したが、これに限定されるものではなく、1〜2倍の範囲の中であれば良い。これよりも小さいと相手側の歯車5の歯を挿入することができず互に歯合させることができなくなり、2倍よりも大きいと噛合させた歯車5を回転させた時に、次に噛合する歯同士を噛合させることができなくなって回転を伝達させることができなくなる虞がある。
【0067】
また、本実施形態の記里鼓車1は、第一車輪2及び第二車輪3の直径が歯車5の直径の約3.3倍とされたものを示したが、これに限定されるものではなく、歯車5の直径の2倍以上の直径であれば良い。これよりも小さいと、第三軸13における第二軸12から最後に回転が伝達される歯車5と、第四軸14における第二軸12から最後に回転が伝達される歯車5とが干渉して、これらの歯車5が配置できなくなる。なお、倍率が大き過ぎると、車輪に対して、歯車5の大きさが小さくなり過ぎるため、5倍以下が望ましい。
【0068】
また、本実施形態の記里鼓車1は、本体10が樹脂で形成されたものを示したが、これに限定されるものではなく、厚紙等で形成しても良い。これにより、より安価なものとすることができる。特に、組立キットとして教材に使用する場合は、好適である。
【0069】
また、本実施形態の記里鼓車1は、放射線状に延びた複数の棒状部材を有した飾体25を示したが、これに限定されるものではなく、目盛が描かれた度数板等でも良い。これにより、第一軸11が一回転する間のより正確な回転度数を知ることができる。
【0070】
また、本実施形態の記里鼓車1は、鐘26を槌体28で打撃して音を発するものを示したが、これに限定されるものではなく、第一軸11の回転をセンサで検知して設置されたスピーカ等から電子音を発生させる電気的な機構としても構わない。これにより、音量の調節を可能としたり、サイズを小さくしたりすることができる。
【0071】
更に、本実施形態の記里鼓車1は、伝達個数変更手段によって、記里鼓車としたり、指南車としたりすることができるものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、図6に示すような、記里鼓車と指南車の機能を同時に発揮することができる記里鼓車30としても良い。ここで、図6は図1とは異なる本発明の記里鼓車の実施形態を示す斜視図である。なお、上記した実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。
【0072】
この記里鼓車30は、本体10の基台22及び上壁23が、記里鼓車1よりも後方へ長く延びた形態とされており、第一車輪2及び第二車輪3の軸線に対して第一軸11が平面視で歯車5のピッチ円径の2倍分後に配置されている。なお、本例では、上壁23よりも上側の第一軸11には、発報手段6と飾体25のみが取付けられている。
【0073】
また、記里鼓車30は、一つの歯車5を回転可能に支持する第二差動軸31と、第二差動軸31における歯車5を軸支した位置から歯車5の半径分離れた位置を中心として上下方向両側へ延び、第二差動軸31と共に一体回転可能に本体10に支持された第八軸18と、第八軸18の外周に回転可能に支持されると共に第二差動軸31を挟んで両側に配置され、第二差動軸31に軸支された歯車5と噛合する歯車5と、噛合しない歯車5とが夫々固定された一対の筒状の第九軸19と、上壁23よりも上側で第八軸18の上端に取付けられる板状で外形が人型に形成された指示部17とを備えている。本例では、第八軸18及び第九軸19が、第一車輪2及び第二車輪3の直上で左右方向の中央に配置されていると共に、第二差動軸31、第八軸18、及び第九軸19が、差動軸4、第一軸11、及び第二軸12と同様の構成で本体10に支持されている。なお、上側の第九軸19における上側の歯車5は、上側の第二軸12における上側の歯車5よりも下側に配置されている。また、下側の第九軸19における下側の歯車5は、下側の第二軸12いおける下側の歯車5と同じ高さに配置されている。
【0074】
この記里鼓車30では、第八軸18の右側と、第八軸18と第一軸11との中央と、第八軸18と第一軸11との中央及び第一軸11から右側へ歯車5のピッチ円径離れた位置(第一軸11から斜め右前の位置)と、の三箇所に第三軸13が棒部材32により本体10に対して回転可能に支持されている。第八軸18の右側の第三軸13には、下端と、上側の第九軸19における上側の歯車5と同じ高さの位置に歯車5が夫々圧入されている。第八軸18と第一軸11との中央の第三軸13には、上側の第九軸19における上側の歯車5と同じ高さの位置に歯車5が圧入されている。更に、第一軸11から斜め右前の位置の第三軸13には、上側の第九軸19における上側の歯車5と同じ高さと、上側の第二軸12における上側の歯車5と同じ高さとに夫々歯車5が圧入されている。これにより、第一車輪2からの回転は、上側の第九軸19に対しては一つの第三軸13(奇数個の軸)を介して伝達され、上側の第二軸12に対しては三つの第三軸13と一つの第九軸19(偶数個の軸)を介して伝達されるようになっている。
【0075】
また、記里鼓車30は、第八軸18の左側と、第一軸11の左側と、それらの中央(中央の第三軸13の左側)とに夫々第四軸14が棒部材32により本体10に対して回転可能に支持されている。第八軸18の左側の第四軸14には、下端と、下側の第九軸19における下側の歯車5と同じ高さの位置とに、夫々歯車5が圧入されている。中央の第四軸14には、下側の第九軸19(第二軸12)における下側の歯車5と同じ高さの位置に歯車5が圧入されている。更に、第一軸11の左側の第四軸14には、下側の第九軸19(第二軸12)における下側の歯車5と同じ高さの位置に歯車5が圧入されている。これにより、第二車輪3からの回転は、下側の第二軸12に対しては一つの第四軸14(奇数個の軸)を介して伝達され、下側の第二軸12に対しては三つの第四軸14(奇数個の軸)を介して伝達されるようになっている。
【0076】
この記里鼓車30は、上側の第二軸12に対しては四つ(偶数個)の軸を介して回転が伝達されると共に、下側の第二軸12に対しては三つの(奇数個)の軸を介して回転が伝達されるので、第一軸11が本体10の移動距離に対応した分だけ回転し、第一軸11が一回転する毎に発報手段6から音が発生する。一方、上下の第九軸19に対しては、夫々一つ(奇数個)の軸を介して回転が伝達されるので、第八軸18は、本体10がどの方向を向いても地面に対して回転することがなく、第八軸18の上端に取付けられた指示部17が地面に対して同一方向を向き続けることができる。
【0077】
この記里鼓車30によると、記里鼓車30を移動させると、第一車輪2及び第二車輪3の回転により第一軸11が回転して一定距離進む毎に発報手段6から音を発すると共に、第八軸18に取付けられた指示部17が記里鼓車30の向きに関わらず地面に対して同じ方向を向き続けるので、一台で記里鼓車と指南車の機能を同時に発揮させることができると共に、教材としての教育効果のより高い記里鼓車とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 記里鼓車
2 第一車輪
3 第二車輪
4 差動軸
5 歯車
6 発報手段
7 歯面
8 歯先面
9 取手部
10 本体
11 第一軸
12 第二軸
13 第三軸
14 第四軸
15 第五軸
16 第六軸
17 指示部
18 第八軸
19 第九軸
20 車軸
22 基台
23 上壁
26 鐘
27 カム部材
28 槌体
30 記里鼓車
31 第二差動軸
32 棒部材
T 車輪の間隔
D 車輪の直径
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2000−142150号公報
【特許文献2】特開2000−318614号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動させるための取手部を有する本体と、
該本体の所定位置に夫々回転可能に支持され、平板状で平行に配置された一対の歯面と、一対の該歯面の先端同士を繋ぐ半円形状の歯先面とを備えた複数の歯を有すると共に、前記歯先面の間隔が前記歯における前記歯面同士の間隔に対して1〜2倍の間隔となるように複数の前記歯を周方向へ列設した複数の歯車と、
一つの該歯車を回転可能に支持する差動軸と、
該差動軸における前記歯車を軸支した位置から該歯車の半径分離れた位置を中心として直角方向両側へ延び前記差動軸と一体回転可能に前記本体に支持された第一軸と、
該第一軸の外周に回転可能に支持されると共に前記差動軸を挟んで両側に配置され、該差動軸に軸支された前記歯車と噛合する前記歯車と、噛合しない前記歯車とが夫々取付けられた一対の筒状の第二軸と、
何れか一方の該第二軸における前記差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、取付けられた前記歯車によって回転を順次伝達させ、前記本体に回転可能に支持されると共に前記第二軸と同じ方向へ延びた所定数個の第三軸と、
該第三軸とは前記第二軸を挟んで反対側の位置で前記本体に回転可能に支持されると共に前記第二軸と同じ方向へ延び、何れか他方の該第二軸における前記差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、取付けられた前記歯車によって回転を順次伝達させ、前記第三軸を含む一方の前記第二軸からの回転を伝達させる軸の数が奇数個であれば偶数個、偶数個であれば奇数個とされ、前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車が前記第三軸における最後に回転が伝達される前記歯車と同一面上に配置された第四軸と、
該第四軸における前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車と前記第四軸を挟んで前記第二軸とは反対側で噛合する前記歯車が固定され、前記第二軸に対して直角方向へ延びると共に前記本体に回転可能に支持された第五軸と、
該第五軸と同じ方向へ延びると共に前記本体に前記第五軸と同軸上に回転可能に支持され、前記第三軸における前記第二軸から最後に回転が伝達される前記歯車と前記第三軸を挟んで前記第二軸とは反対側で噛合する前記歯車が固定された第六軸と、
該第六軸に固定された第一車輪と、
該第一車輪と同径とされ、前記第五軸に固定された第二車輪と、
該第二車輪及び前記第一車輪の少なくとも一方の回転に伴って回転する前記第一軸が前記本体に対して所定角度回転すると音を発生させる発報手段と
を具備することを特徴とする記里鼓車。
【請求項2】
前記第一軸を上下方向に向けると共に、前記第三軸の数を奇数個とし、更に、前記第五軸及び前記第六軸を前記第一軸よりも下側へ配置すると共に、前記第一車輪及び前記第二車輪を前記歯車の直径の2倍以上の直径とし、前記第一車輪と前記第二車輪との間隔を前記第一車輪及び前記第二車輪の直径と同じ間隔とした上で、
前記第一軸の上端に取付けられる指示部と、
前記第二軸から前記第五軸へ回転を伝達させる前記第四軸の数を奇数個に変更する伝達個数変更手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の記里鼓車。
【請求項3】
前記伝達個数変更手段は、
互に前記歯車の直径と略同じ距離離れた、三つの前記第四軸又は、何れか他方の前記第二軸と二つの前記第四軸、に夫々取付けられた前記歯車を軸方向へスライド可能とすると共に、二つの前記第四軸に対して夫々二つの前記歯車を一体回転可能に取付け、各軸に取付けられた前記歯車を適宜スライドさせることで、回転を伝達させる前記第四軸の数を変更するものであることを特徴とする請求項2に記載の記里鼓車。
【請求項4】
前記第一軸を上下方向に向けると共に、前記第五軸及び前記第六軸を前記第一軸よりも下側へ配置し、更に、前記第一車輪及び前記第二車輪を前記歯車の直径の2倍以上の直径とし、前記第一車輪と前記第二車輪との間隔を前記第一車輪及び前記第二車輪の直径と同じ間隔とした上で、
一つの前記歯車を回転可能に支持する第二差動軸と、
該第二差動軸における前記歯車を軸支した位置から該歯車の半径分離れた位置を中心として上下方向両側へ延び前記第二差動軸と共に一体回転可能に前記本体に支持された第八軸と、
該第八軸の外周に回転可能に支持されると共に前記第二差動軸を挟んで両側に配置され、前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合する前記歯車と、噛合しない前記歯車とが夫々固定された一対の筒状の第九軸と、
前記第八軸の上端に取付けられる指示部と
を更に具備し、
何れか一方の前記第九軸における前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、前記第三軸を含む奇数個の軸を介して前記第六軸に固定された前記歯車へ回転を伝達させ、何れか他方の前記第九軸における前記第二差動軸に軸支された前記歯車と噛合しない前記歯車から、前記第四軸を含む奇数個の軸を介して前記第五軸に固定された前記歯車へ回転を伝達させることを特徴とする請求項1に記載の記里鼓車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188895(P2011−188895A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55303(P2010−55303)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(310002086)株式会社ユニ研 (1)
【Fターム(参考)】