説明

記録テープカートリッジの包装方法及び包装体

【課題】輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止するとともに、収納ケースのコンパクト化を図る。
【解決手段】上ケース14と下ケース16とからなり、記録テープTが巻装されたリール20を収容するケース12を備えた記録テープカートリッジ10を収納ケース104に複数個収納する包装方法及び包装体102であって、上ケース14及び下ケース16の少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジ100を、収納ケース104に少なくとも1個収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ等の記録テープが巻装されたリールを収容した記録テープカートリッジの包装方法及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体(データバックアップ)として使用される磁気テープ等の記録テープを合成樹脂製のリールに巻装し、そのリールをケース内に単一で収容してなる記録テープカートリッジが知られている。このような記録テープカートリッジは、収納ケースに複数個ずつ収納されて輸送されるが、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響(吸湿膨張)防止のため、その収納ケース内には調湿部材が配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−78829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録テープカートリッジを複数個ずつ収納する収納ケースに調湿部材が配置される構成では、収納ケースに調湿部材を配置するスペースが必要となるため、収納ケースのコンパクト化が阻害される。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止できるとともに、収納ケースのコンパクト化が図れる記録テープカートリッジの包装方法及び包装体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の記録テープカートリッジの包装方法は、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備えた記録テープカートリッジを収納ケースに複数個収納する包装方法であって、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジを、前記収納ケースに少なくとも1個収納することを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る請求項6に記載の記録テープカートリッジの包装体は、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備えた記録テープカートリッジが収納ケースに複数個収納されてなる包装体であって、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジが、前記収納ケースに少なくとも1個収納されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1又は請求項6に記載の発明によれば、上ケース及び下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジにより、収納ケース内を調湿できる。したがって、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止することができる。すなわち、記録テープの吸湿膨張による腐食及びそれに伴うドライブ装置の記録再生ヘッドでの読取書込エラーを軽減することができる。また、別途調湿部材を収納ケース内に設ける必要がないので、収納ケースのコンパクト化を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の記録テープカートリッジの包装方法は、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された第1の記録テープカートリッジと、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースが、調湿効果を備えていない樹脂材で成形された複数個の第2の記録テープカートリッジと、を収納ケースに収納する包装方法であって、前記第1の記録テープカートリッジを少なくとも1個収納することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る請求項7に記載の記録テープカートリッジの包装体は、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された第1の記録テープカートリッジと、上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースが、調湿効果を備えていない樹脂材で成形された複数個の第2の記録テープカートリッジと、が収納ケースに収納されてなる包装体であって、前記第1の記録テープカートリッジが少なくとも1個収納されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2又は請求項7に記載の発明によれば、上ケース及び下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された第1の記録テープカートリッジにより、収納ケース内を調湿できる。したがって、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止することができる。すなわち、記録テープの吸湿膨張による腐食及びそれに伴うドライブ装置の記録再生ヘッドでの読取書込エラーを軽減することができる。また、別途調湿部材を収納ケース内に設ける必要がないので、収納ケースのコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、請求項3に記載の記録テープカートリッジの包装方法は、請求項2に記載の記録テープカートリッジの包装方法において、前記上ケース及び前記下ケースが互いに突き合わせる周壁を有し、該周壁を外側に向けた状態で前記第1の記録テープカートリッジ及び前記第2の記録テープカートリッジを前記収納ケースに収納することを特徴としている。
【0013】
また、請求項8に記載の記録テープカートリッジの包装体は、請求項7に記載に記録テープカートリッジの包装体において、前記上ケース及び前記下ケースが互いに突き合わせる周壁を有し、該周壁を外側に向けた状態で前記第1の記録テープカートリッジ及び前記第2の記録テープカートリッジが前記収納ケースに収納されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3又は請求項8に記載の発明によれば、収納ケース内に収納された記録テープカートリッジの束全体を調湿することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の記録テープカートリッジの包装方法は、請求項3に記載の記録テープカートリッジの包装方法において、前記第1の記録テープカートリッジの数量が2個以上のときには、前記第1の記録テープカートリッジを少なくとも前記収納ケースの両端部に収納することを特徴としている。
【0016】
また、請求項9に記載の記録テープカートリッジの包装体は、請求項8に記載の記録テープカートリッジの包装体において、前記第1の記録テープカートリッジの数量が2個以上のときには、前記第1の記録テープカートリッジが、少なくとも前記収納ケースの両端部に収納されることを特徴としている。
【0017】
請求項4又は請求項9に記載の発明によれば、第1の記録テープカートリッジの数量が2個以上のときに、収納ケース内に収納された記録テープカートリッジの束全体をより効果的に調湿することができる。
【0018】
また、請求項5に記載の記録テープカートリッジの包装方法は、請求項3に記載の記録テープカートリッジの包装方法において、前記第1の記録テープカートリッジの数量が前記第2の記録テープカートリッジの数量よりも少ないときには、前記第1の記録テープカートリッジを前記第2の記録テープカートリッジで挟むようにして収納することを特徴としている。
【0019】
また、請求項10に記載の記録テープカートリッジの包装体は、請求項8に記載の記録テープカートリッジの包装体において、前記第1の記録テープカートリッジの数量が前記第2の記録テープカートリッジの数量よりも少ないときには、前記第1の記録テープカートリッジが、前記第2の記録テープカートリッジで挟まれるようにして収納されることを特徴としている。
【0020】
請求項5又は請求項10に記載の発明によれば、第1の記録テープカートリッジの数量が第2の記録テープカートリッジの数量よりも少ないときに、収納ケース内に収納された記録テープカートリッジの束全体をより効果的に調湿することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止できるとともに、収納ケースのコンパクト化が図れる記録テープカートリッジの包装方法及び包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】記録テープカートリッジの概略斜視図
【図2】記録テープカートリッジを上方から見た場合の概略分解斜視図
【図3】記録テープカートリッジを下方から見た場合の概略分解斜視図
【図4】記録テープカートリッジを収納ケースの両端部に収納する様子を示す概略斜視図
【図5】記録テープカートリッジの包装体の概略斜視図
【図6】記録テープカートリッジを収納ケースの中央部に収納する様子を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1において、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。また、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、それを記録テープカートリッジ10の上方向(上側)とする。
【0024】
まず、調湿効果を備えていない樹脂材で成形された記録テープカートリッジ10(第2の記録テープカートリッジ)について説明する。なお、本実施形態において、調湿効果を備えていない樹脂材とは、後述する耐熱性層状シリカ多孔体が混合されていない樹脂材(ポリカーボネート等の汎用エンジニアプラスチック)である。
【0025】
図1〜図3で示すように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、ポリカーボネート(PC)等の樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた(突き合わせた)状態で、超音波溶着やビス止め等によって接合されて構成されている。
【0026】
すなわち、例えば上ケース14及び下ケース16には、ビスボス15がそれぞれ各コーナー部近傍に形成されており、下ケース16の下面側から、そのビスボス15に図示しないビスが螺合されることにより、ケース12が組み立てられるようになっている。そして、ケース12の内部には、ポリカーボネート(PC)等の樹脂材で成形され、記録テープTが巻装されたリール20が1つだけ回転可能に収容されている。
【0027】
このリール20は、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ22と、その下端部に設けられる下フランジ26とが一体に成形され、上フランジ24がリールハブ22の上端部に超音波溶着されて構成されている。そして、そのリールハブ22の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻回され、上フランジ24及び下フランジ26によって、その巻回された記録テープTの幅方向両端部が保持されている。
【0028】
また、リールハブ22の底壁(底部)28の下面(外面)には、リールギア44が環状に形成されており、下ケース16の略中央部には、そのリールギア44を外部に露出させるためのギア開口部40が穿設されている。このギア開口部40から露出されるリールギア44が、ドライブ装置の回転シャフト(図示省略)に形成された駆動ギア(図示省略)に噛合されて回転駆動されることにより、ケース12内において、リール20がケース12に対して相対回転可能とされている。
【0029】
また、底壁28の下面におけるリールギア44の径方向内側には、磁性材料でできた環状金属板であるリールプレート46が、インサート成形により、同軸的かつ一体的に固着されており、ドライブ装置の回転シャフトに設けられた環状のマグネット(図示省略)の磁力によって吸着・保持されるようになっている。更に、リール20は、上ケース14及び下ケース16の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口部40と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁42によってガタつかないように保持されている。
【0030】
また、ケース12の右壁12Bには、リール20に巻装された記録テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される記録テープTの自由端部には、ドライブ装置の引出部材(図示省略)によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダー部材としてのリーダーピン30が固着されている。リーダーピン30の記録テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝32が形成されており、この環状溝32が引出部材のフック等に係止されるようになっている。
【0031】
また、ケース12の開口18の内側、即ち上ケース14の天板14A内面及び下ケース16の底板16A内面には、ケース12内において、リーダーピン30を位置決めして保持する上下一対のピン保持部36が設けられている。このピン保持部36は、記録テープTの引き出し側が開放された略半円形状をしており、直立状態のリーダーピン30の両端部34は、その開放側からピン保持部36内に出入可能とされている。
【0032】
また、ピン保持部36の近傍には、板バネ38が固定配置されるようになっており、この板バネ38の二股状の先端部がリーダーピン30の上下両端部34にそれぞれ係合してリーダーピン30をピン保持部36に保持するようになっている。なお、リーダーピン30がピン保持部36に出入する際には、板バネ38の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン30の移動を許容する構成である。
【0033】
また、その開口18は、ドア50によって開閉される。このドア50は、開口18を閉塞可能な大きさの略矩形板状に形成され、ケース12の右壁12Bに沿って移動できるように、開口18内側の天板14A及び底板16Aには、ドア50の上下端部を摺動可能に嵌入させる溝部64が形成されている。
【0034】
また、ドア50の後端部中央には、シャフト52が突設されており、そのシャフト52には、コイルバネ58が挿嵌されている。そして、シャフト52の後端には、そのコイルバネ58を脱落防止とする拡開部54が形成されている。また、下ケース16には、そのシャフト52に挿嵌されたコイルバネ58の後端を係止する係止部62を有する支持台60が突設されている。
【0035】
したがって、ドア50は、シャフト52が支持台60上に摺動自在に支持されるとともに、コイルバネ58の後端が係止部62に係止されることにより、そのコイルバネ58の付勢力によって、常時開口18の閉塞方向へ付勢される構成である。なお、開口18の開放時、シャフト52を支持する支持台66を支持台60の後方側に更に突設しておくことが好ましい。
【0036】
また、ドア50の前端部には、開閉操作用の凸部56が外方に向かって突設されている。この凸部56が、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填に伴い、そのドライブ装置側の開閉部材(図示省略)と係合するようになっている。これにより、ドア50がコイルバネ58の付勢力に抗して開放される構成である。
【0037】
また、図2、図3で示すように、ケース12の左後部には、記録テープTへの記録可・不可が設定されるライトプロテクト70が左右方向にスライド可能に設けられており、ケース12の後壁12Dには、このライトプロテクト70を人手で操作するための操作突起72を突出させる開孔68が形成されている。この開孔68は、上ケース14と下ケース16とを接合したときに、上ケース14の周壁14Bに形成された切欠部68Aと、下ケース16の周壁16Bに形成された切欠部68Bとによって形成される構成である。
【0038】
また更に、下ケース16には、ライトプロテクト70の突部74が露出される長孔69が左右方向に長く穿設されており、記録テープカートリッジ10がドライブ装置に装填されたときに、そのドライブ装置側でライトプロテクト70の位置を検知して、記録テープTへの記録可・不可が自動的に判断されるようになっている。なお、この突部74は下ケース16の下面から突出することはない。また、図2で示すように、ケース12の右後部には、記録容量、記録形式等の各種情報が記憶されたメモリーボードMが所定の傾斜角度(例えば45度)で配置されるようになっている。
【0039】
また、図2、図3で示すように、リールハブ22の底壁28の上面周縁には、係合ギア48が所定の間隙を隔てて(等間隔に)複数(例えば120度間隔で3個)立設されており、その係合ギア48の間で、リールギア44上となる所定位置には、貫通孔28Aが複数(この場合は120度間隔で3個)穿設されている。そして、そのリールハブ22の内部には、樹脂材で成形された略円板状の制動部材80が挿設されている。
【0040】
制動部材80の下面80A周縁には、係合ギア48と噛合可能な制動ギア84が環状に形成されており、制動部材80の上面には、上ケース14の天板14A内面から下方へ向かって突設された平面視略十字状の回転規制リブ76が内部に挿入される平面視略十字状の係合突起86が、その回転規制リブ76の高さよりも若干高くなるように立設されている。これにより、制動部材80は、ケース12(上ケース14)に対して回転不能とされるとともに、リールハブ22内において、上下方向に移動可能とされる構成である。
【0041】
また、上ケース14と制動部材80との間には、圧縮コイルスプリング98が配設されている。すなわち、この圧縮コイルスプリング98は、その一端が上ケース14の回転規制リブ76の外側に突設された環状突起78の内側(回転規制リブ76と環状突起78の間)に当接し、他端が制動部材80の上面に設けられた環状溝88内に当接した状態で配設されている。そして、この圧縮コイルスプリング98の付勢力により、制動部材80は、常時下方に向かって付勢されるようになっている。
【0042】
したがって、記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填されないとき)において、常時制動ギア84が係合ギア48と噛合する状態とされて、リール20のケース12に対する相対回転が阻止された回転ロック状態とされる構成である。そして、リール20は、この付勢力によって下ケース16側に押し付けられ、リールギア44をギア開口部40から露出させるようになっている。
【0043】
また、リールハブ22の内部で、かつ制動部材80の下側(底壁28と制動部材80との間)には、樹脂材で成形された平面視略正三角形状の解除部材90が挿設されている。解除部材90には、適宜位置に所定の形状とされた貫通孔92が複数(3つ)穿設されており、解除部材90の軽量化が図られている。そして、解除部材90の下面で、かつ各頂点部分には、貫通孔28Aに挿通されて底壁28の下面からリールギア44上に所定高さで突出する脚部94が突設されている。
【0044】
また、解除部材90の上面90A中央には平面状の支持凸部96が形成されており、制動部材80の下面80A中央に突設された略半球状の解除突起82が当接するようになっている(図2、図3参照)。これにより、制動部材80と解除部材90との接触面積が低減され、使用時(リール20の回転時)における摺動抵抗が軽減される構成である。なお、制動部材80の材質としては、例えばポリアセタール(POM)が用いられ、解除部材90の材質としては、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられる。
【0045】
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次にその作用について説明する。不使用時(保管時や運搬時等)において、記録テープカートリッジ10の開口18は、ドア50によって閉塞されている。そして、圧縮コイルスプリング98の付勢力によって、制動部材80が回転ロック位置に位置して制動ギア84を係合ギア48に噛合させている。これにより、リール20は、ケース12に対する回転が阻止されている。
【0046】
記録テープTを使用する際には、前壁12Aを先頭にして記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿って、ドライブ装置内へ装填する。すると、まず、そのドライブ装置側に設けられた開閉部材が、ドア50の凸部56に係合する。そして、この状態で、記録テープカートリッジ10が更に矢印A方向へ移動すると、開閉部材が凸部56をコイルバネ58の付勢力に抗しつつ相対的に後方へ移動させる。すると、その凸部56が突設されているドア50は、右壁12Bに沿って溝部64内を後側へ摺動し、開口18を開放する。
【0047】
こうして、記録テープカートリッジ10がドライブ装置に所定深さ装填され、開口18が完全に開放されると、記録テープカートリッジ10は所定高さ下降し、ドライブ装置の位置決め部材(図示省略)が、下ケース16に形成された位置決め用の穴部(図示省略)に挿入される。これにより、記録テープカートリッジ10がドライブ装置内における所定位置に正確に位置決めされ、ドア50のそれ以上の摺動(後方への移動)が規制される。
【0048】
また、この記録テープカートリッジ10の下降動作によって、回転シャフトが相対的にギア開口部40から進入し、駆動ギアをリールギア44に噛合させる。すると、その駆動ギアがリールギア44と噛合する動作に伴って、リールギア44上に突出している脚部94が、圧縮コイルスプリング98の付勢力に抗して押し上げられ、解除部材90を介して制動部材80が上方へ押し上げられて、制動ギア84と係合ギア48との噛合が解除される。
【0049】
そして、駆動ギアとリールギア44とが完全に噛合した状態で、リールプレート46が、駆動ギアの内側に設けられた環状のマグネットの磁力によって吸着・保持されることにより、リール20は、駆動ギアに対するリールギア44の噛合が維持されつつ、ケース12内で、そのケース12に対して相対回転可能となるロック解除状態とされる。
【0050】
一方、開放された開口18からは、ドライブ装置側に設けられた引出部材がケース12内に進入し、ピン保持部36に位置決め保持されたリーダーピン30を把持して引き出す。なお、このとき、記録テープカートリッジ10はドライブ装置内において正確に位置決めされているので、引出部材は確実にリーダーピン30の環状溝32にそのフックを係止させることができる。また、リール20は、その回転ロック状態が解除されているので、リーダーピン30の引出動作に伴って回転できる。
【0051】
こうして、開口18から抜き出されたリーダーピン30は、図示しない巻取リールに収容される。そして、その巻取リールとリール20とを同期して回転駆動することにより、記録テープTは、巻取リールに巻き取られつつ順次ケース12から引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド(図示省略)によって情報の記録や再生が行われる。
【0052】
情報の記録や再生が終了した記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、まず、回転シャフトが逆回転することにより、記録テープTがリール20に巻き戻される。そして、記録テープTがリール20に最後まで巻き戻されて、リーダーピン30がピン保持部36に保持されると、記録テープカートリッジ10は所定高さ上昇し、位置決め部材が位置決め用の穴部から抜き出されるとともに、回転シャフトがギア開口部40から抜き出され、リールギア44に対する駆動ギアの噛合が解除される。
【0053】
すると、圧縮コイルスプリング98の付勢力により、制動部材80及び解除部材90が下方に向かって押圧され、貫通孔28Aに挿通されている脚部94が底壁28の下面からリールギア44上に所定高さ突出するとともに、制動ギア84が係合ギア48に噛合する。これにより、リール20は、再度ケース12内での相対回転が阻止された回転ロック状態となり、その後、記録テープカートリッジ10は、図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動される。
【0054】
すると、この移動に伴って、ドア50はコイルバネ58の付勢力によって開口18の閉塞方向へ摺動し、開口18を完全に閉塞する(初期状態に復帰する)。こうして、リール20のケース12に対する相対回転がロックされ、開口18が閉塞された記録テープカートリッジ10は、ドライブ装置内から完全に排出される。
【0055】
以上のような記録テープカートリッジ10において、次にその輸送時における包装方法及び包装体102について説明する。なお、図4〜図6において示す矢印FRを包装体102の前方向、矢印RIを包装体102の右方向、矢印UPを包装体102の上方向とする。図4、図5で示すように、輸送時には、記録テープカートリッジ10(後述する記録テープカートリッジ100を含む)は、例えばダンボールでできた矩形箱状の収納ケース104に複数個(図示のものは5個)ずつ収納されて包装される。
【0056】
すなわち、各記録テープカートリッジ10は、周壁14B、16B(前壁12A、右壁12B、左壁12C、後壁12D)を外側(上下方向及び前後方向)に向けた所謂縦置き状態で(天板14Aと底板16Aとを左右方向に重ね合わせるような状態で)収納ケース104内に収納されるようになっており、この収納ケース104は、複数個(例えば5個)の記録テープカートリッジ10(後述する記録テープカートリッジ100を含む)が、ほぼ隙間無く収納される程度の大きさに形成されている。
【0057】
そして、この収納ケース104は、複数個(例えば5個)の記録テープカートリッジ10(後述する記録テープカートリッジ100を含む)が、ほぼ隙間無く(収納ケース104内において、前後方向、上下方向、左右方向に殆ど隙間が無い状態で)収納された後、その上側の開口部106が、収納ケース104の後壁104Bに連設されている蓋体108によって封止されることで、図5で示すような包装体102を構成するようになっている。
【0058】
なお、複数個の記録テープカートリッジ10(後述する記録テープカートリッジ100を含む)が、ほぼ隙間無く収納ケース104に収納されていても、その収納ケース104(包装体102)を開封し易いように、収納ケース104の前壁104A側における開口部106の辺縁中央部には、手指を蓋体108の先端に連設されている差込フラップ109に掛けられるようにするための半円弧状の切欠部107が形成されている(図4〜図6参照)。
【0059】
また、このような包装体102(収納ケース104内)には、上ケース14及び下ケース16の少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材(後述)で成形された記録テープカートリッジ100(第1の記録テープカートリッジ)が、少なくとも1個は混入されて収納されるようになっている。したがって、収納ケース104内(包装体102)は、この記録テープカートリッジ100(ケース12)によって調湿される。
【0060】
ここで、その調湿効果を備えた樹脂材について説明する。この樹脂材は、例えば層状シリケート界面活性剤を作用させて合成した、ハニカム状多孔構造を有する耐熱性層状シリカ多孔体を、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の合成樹脂に混合することで得られる。
【0061】
耐熱性層状シリカ多孔体は、含水率10重量%以上の結晶性層状珪酸塩中の層間に存在するアルカリ金属イオンを有機物陽イオンとイオン交換して、その有機陽イオンを層間に導入し、イオン交換により遊離したアルカリ金属イオンを除去した結晶性層状珪酸塩を600℃〜1200℃の酸化雰囲気中で焼成して有機物陽イオンを燃焼させることにより得られる。
【0062】
なお、結晶性層状珪酸塩は、非晶質珪酸塩から合成できる。非晶質珪酸塩としては、市販の粉末珪酸ナトリウム等がある。具体的には、結晶性層状珪酸塩としては、例えばカネマイト(NaHSi・3HO)、ジ珪酸ナトリウム(NaSi)、マカタイト(NaSi・5HO)、アイラアイト(NaSi17・XHO)、マガディアイト(NaSi1429・XHO)、ケニヤイト(NaSi2041・XHO)などがある。
【0063】
次に、その記録テープカートリッジ100が混入された包装体102の作用について説明する。上記したように、この包装体102は、調湿効果を備えた樹脂材でケース12(上ケース14及び下ケース16の少なくとも一方)が成形された記録テープカートリッジ100が、少なくとも1個、調湿効果を備えた樹脂材でケース12が成形されていない複数個の記録テープカートリッジ10と共に、収納ケース104に収納されて構成されている。
【0064】
すなわち、各記録テープカートリッジ10、100は、上記したように、周壁14B、16B(前壁12A、右壁12B、左壁12C、後壁12D)を外側(上下方向及び前後方向)に向けた縦置き状態で(天板14Aと底板16Aとを左右方向に重ね合わせるような状態で)収納ケース104内に収納されている。したがって、少なくとも調湿効果を備えた樹脂材で成形されたケース12の前壁12A、右壁12B、左壁12C、後壁12Dによって、収納ケース104内を調湿することができる。
【0065】
つまり、縦置き状態で収納された記録テープカートリッジ100では、常に前壁12A、右壁12B、左壁12C、後壁12Dを外気に触れさせる(収納ケース104の内壁面に対向させる)ことができるので、それによって、収納ケース104内(記録テープカートリッジ10、100の束全体)を調湿することができる。
【0066】
したがって、この包装体102では、輸送時の湿度変化によるテープ性能への影響を防止することができ、記録テープTの吸湿膨張による腐食及びそれに伴うドライブ装置の記録再生ヘッドでの読取書込エラーを軽減することができる。よって、このような包装体102は、高容量化のために薄く長く形成された記録テープTにとって特に有効となる。
【0067】
また、この包装体102では、別途調湿部材を収納ケース104内に設ける必要がなくなるため、収納ケース104のコンパクト化を図ることができる。つまり、収納ケース104は、複数個(例えば5個)の記録テープカートリッジ10、100が、ほぼ隙間無く収納できる程度の大きさに形成されていればよいので、必要最小限の大きさで済む。また、これにより、収納ケース104を製造するための材料費を低減することができるので、その製造コストを低減することができる。
【0068】
なお、調湿効果を備えた樹脂材でケース12(上ケース14及び下ケース16の少なくとも一方)が成形された記録テープカートリッジ100の数量が2個以上のときには、図4、図5で示すように、各記録テープカートリッジ100を収納ケース104の両端部に(両端部を含んで)それぞれ収納することが望ましい。
【0069】
これによれば、調湿効果を備えた樹脂材で成形された一方の記録テープカートリッジ100の上ケース14(天板14A及び周壁14Bを含む)と、調湿効果を備えた樹脂材で成形された他方の記録テープカートリッジ100の下ケース16(底板16A及び周壁16Bを含む)とが、それぞれ外気に触れる(収納ケース104の内壁面に対向する)ことになるので、収納ケース104内(記録テープカートリッジ10、100の束全体)をより効果的に調湿することができる。
【0070】
また、調湿効果を備えた樹脂材でケース12が成形された記録テープカートリッジ100の数量が、調湿効果を備えた樹脂材でケース12が成形されていない記録テープカートリッジ10の数量よりも少ないとき、例えば記録テープカートリッジ100が1個のときには、図6で示すように、その記録テープカートリッジ100を各記録テープカートリッジ10で挟むようにして収納することが望ましい。つまり、この場合は、収納ケース104の左右方向中央部に収納することが望ましい。
【0071】
これによれば、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジ100のケース12の前壁12A、右壁12B、左壁12C、後壁12D(周壁14B、16B)が、収納ケース104の左右方向中央部で外気に触れる(収納ケース104の内壁面に対向する)ことになるので、その収納ケース104内(記録テープカートリッジ10、100の束全体)をほぼ均等に(より効果的に)調湿することができる。
【0072】
なお、収納ケース104は、上記したダンボール製に限定されるものではなく、例えば透明な薄いプラスチック製等であってもよい。また、ドア50を、調湿効果を備えた樹脂材で成形してもよい。但し、リール20は、その寸法精度に高精度が要求されるため、調湿効果を備えた樹脂材で成形しない方が望ましい。また、2色成形等により、周壁14B、16Bの少なくとも一部を、調湿効果を備えた樹脂材で成形するようにしてもよい。
【0073】
以上、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10、100の包装方法及び包装体102について説明したが、本実施形態に係る包装方法及び包装体102は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、収納ケース104内には、調湿効果を備えた樹脂材でケース12が成形された記録テープカートリッジ100のみを収納するようにしてもよい。
【0074】
また、リール20に巻回される記録テープTは、情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、リール20を収容する記録テープカートリッジ10が、如何なる記録再生方式の記録テープTにも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
14 上ケース
16 下ケース
20 リール
30 リーダーピン
40 ギア開口部
50 ドア
80 制動部材
90 解除部材
100 記録テープカートリッジ
102 包装体
104 収納ケース
106 開口部
107 切欠部
108 蓋体
109 差込フラップ
T 記録テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備えた記録テープカートリッジを収納ケースに複数個収納する包装方法であって、
前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジを、前記収納ケースに少なくとも1個収納することを特徴とする記録テープカートリッジの包装方法。
【請求項2】
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された第1の記録テープカートリッジと、
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースが、調湿効果を備えていない樹脂材で成形された複数個の第2の記録テープカートリッジと、
を収納ケースに収納する包装方法であって、
前記第1の記録テープカートリッジを少なくとも1個収納することを特徴とする記録テープカートリッジの包装方法。
【請求項3】
前記上ケース及び前記下ケースが互いに突き合わせる周壁を有し、該周壁を外側に向けた状態で前記第1の記録テープカートリッジ及び前記第2の記録テープカートリッジを前記収納ケースに収納することを特徴とする請求項2に記載に記録テープカートリッジの包装方法。
【請求項4】
前記第1の記録テープカートリッジの数量が2個以上のときには、前記第1の記録テープカートリッジを少なくとも前記収納ケースの両端部に収納することを特徴とする請求項3に記載の記録テープカートリッジの包装方法。
【請求項5】
前記第1の記録テープカートリッジの数量が前記第2の記録テープカートリッジの数量よりも少ないときには、前記第1の記録テープカートリッジを前記第2の記録テープカートリッジで挟むようにして収納することを特徴とする請求項3に記載の記録テープカートリッジの包装方法。
【請求項6】
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備えた記録テープカートリッジが収納ケースに複数個収納されてなる包装体であって、
前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された記録テープカートリッジが、前記収納ケースに少なくとも1個収納されていることを特徴とする記録テープカートリッジの包装体。
【請求項7】
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースの少なくとも一方が、調湿効果を備えた樹脂材で成形された第1の記録テープカートリッジと、
上ケースと下ケースとからなり、記録テープが巻装されたリールを収容するケースを備え、前記上ケース及び前記下ケースが、調湿効果を備えていない樹脂材で成形された複数個の第2の記録テープカートリッジと、
が収納ケースに収納されてなる包装体であって、
前記第1の記録テープカートリッジが少なくとも1個収納されていることを特徴とする記録テープカートリッジの包装体。
【請求項8】
前記上ケース及び前記下ケースが互いに突き合わせる周壁を有し、該周壁を外側に向けた状態で前記第1の記録テープカートリッジ及び前記第2の記録テープカートリッジが前記収納ケースに収納されていることを特徴とする請求項7に記載に記録テープカートリッジの包装体。
【請求項9】
前記第1の記録テープカートリッジの数量が2個以上のときには、前記第1の記録テープカートリッジが、少なくとも前記収納ケースの両端部に収納されることを特徴とする請求項8に記載の記録テープカートリッジの包装体。
【請求項10】
前記第1の記録テープカートリッジの数量が前記第2の記録テープカートリッジの数量よりも少ないときには、前記第1の記録テープカートリッジが、前記第2の記録テープカートリッジで挟まれるようにして収納されることを特徴とする請求項8に記載の記録テープカートリッジの包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235907(P2011−235907A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106621(P2010−106621)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】