説明

記録テープカートリッジ

【課題】ダイカストで製造され、パーティングライン部に平面部が形成されたリーダーピンを板バネによって適切に押さえられるようにする。
【解決手段】ダイカストによって製造されるとともに、記録テープTの自由端部Tfに取り付けられ、ケース12に形成された開口18から引き出されるリーダーピン30と、リーダーピン30がケース12内から脱落しないようにリーダーピン30の軸方向両端部34を押さえるとともに、リーダーピン30がケース12に対して着脱される際には、両端部34に押されることで弾性変形し、リーダーピン30の着脱動作を許容する板バネ27と、リーダーピン30のパーティングライン部を除去するようにリーダーピン30に形成された平面部34Cと、を有し、リーダーピン30は、自由端部Tfの張力方向Sに対し、両端部34に形成された平面部34Cが板バネ27に接触しない角度で、その自由端部Tfに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンピューター等の記録再生媒体として使用される磁気テープ等の記録テープが巻装されたリールを単一で収容してなる記録テープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体(データバックアップ)として使用される磁気テープ等の記録テープをリールに巻装し、そのリールをケース内に単一で収容してなる記録テープカートリッジが知られている。この記録テープ又は記録テープに接続されたリーダーテープの自由端部には、ドライブ装置の引出部材が係合して引き出すためのリーダーピンが取り付けられており、そのリーダーピンが、金属合金のダイカストによって製造されることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−250873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属合金のダイカストによって製造されたリーダーピンは、その軸方向のパーティングライン部にバリや段差エッジが形成される。このようなバリや段差エッジが軸方向に形成されていると、記録テープ又は記録テープに接続されたリーダーテープの自由端部が、そのバリや段差エッジで損傷される懸念がある。したがって、リーダーピンのパーティングライン部には、その損傷防止のために、軸方向に平面部(所謂Dカット)が形成される。
【0005】
しかしながら、ケース内に収容されたリーダーピンの両端部を押さえる板バネの先端部が、その両端部のパーティングライン部に形成された平面部に接触するように、リーダーピンが記録テープ又は記録テープに接続されたリーダーテープの自由端部に取り付けられている場合には、ケースに収容されているリーダーピンの両端部に対する板バネの先端部のバネ力が不安定になるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ダイカストで製造され、パーティングライン部に平面部が形成されたリーダーピンがケース内に収容された際、そのリーダーピンを板バネによって適切に押さえられる記録テープカートリッジを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の記録テープカートリッジは、記録テープが巻回されたリールと、前記リールを回転可能に単一で収容するケースと、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金の何れかのダイカストによって製造されるとともに、前記記録テープ又は該記録テープに接続されたシート状部材の自由端部に取り付けられ、前記ケースに形成された開口からドライブ装置の引出部材によって引き出されるリーダーピンと、前記リーダーピンが前記ケース内から脱落しないように該リーダーピンの軸方向両端部を押さえるとともに、前記リーダーピンが前記ケースに対して着脱される際には、前記両端部に押されることで弾性変形し、前記リーダーピンの着脱動作を許容する板バネと、前記リーダーピンのパーティングライン部を除去するように該リーダーピンに形成された平面部と、を有し、前記リーダーピンは、前記自由端部の張力方向に対し、前記両端部に形成された前記平面部が前記板バネに接触しない角度で、前記自由端部に取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ダイカストで製造され、パーティングライン部に平面部が形成されたリーダーピンは、記録テープ又は記録テープに接続されたシート状部材の自由端部の張力方向に対し、軸方向両端部に形成された平面部が板バネに接触しない角度で、その自由端部に取り付けられる。したがって、そのリーダーピンを、板バネによって適切に押さえることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の記録テープカートリッジは、記録テープが巻回されたリールと、前記リールを回転可能に単一で収容するケースと、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金の何れかのダイカストによって製造されるとともに、前記記録テープ又は該記録テープに接続されたシート状部材の自由端部に取り付けられ、前記ケースに形成された開口からドライブ装置の引出部材によって引き出されるリーダーピンと、前記リーダーピンが前記ケース内から脱落しないように該リーダーピンの軸方向両端部を押さえるとともに、前記リーダーピンが前記ケースに対して着脱される際には、前記両端部に押されることで弾性変形し、前記リーダーピンの着脱動作を許容する板バネと、前記リーダーピンの少なくとも前記両端部におけるパーティングライン部に相当する部分に形成された平面部と、を有し、前記リーダーピンは、前記自由端部の張力方向に対し、前記両端部に形成された前記平面部が前記板バネに接触しない角度で、前記自由端部に取り付けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ダイカストで製造され、少なくとも軸方向両端部におけるパーティングライン部に相当する部分に平面部が形成されたリーダーピンは、記録テープ又は記録テープに接続されたシート状部材の自由端部の張力方向に対し、その軸方向両端部に形成された平面部が板バネに接触しない角度で、その自由端部に取り付けられる。したがって、そのリーダーピンを、板バネによって適切に押さえることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の記録テープカートリッジは、請求項1又は請求項2に記載の記録テープカートリッジであって、前記リーダーピンは、前記両端部に形成され、前記板バネが押さえる厚板状のヘッド部と、前記ヘッド部よりも軸方向内側に形成された薄板状のフランジ部と、前記フランジ部同士の間であり、前記自由端部が取り付けられる本体部と、を有し、前記ヘッド部に形成される前記平面部の幅は、前記本体部に形成される前記平面部の幅よりも大きいことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ヘッド部に形成される平面部の幅が、本体部に形成される平面部の幅よりも大きいため、記録テープ又は記録テープに接続されたシート状部材の自由端部をリーダーピンに取り付ける際、そのヘッド部における平面部を下にして平坦面上に置くことにより、そのリーダーピンの周方向の位置決めができる。したがって、その自由端部をリーダーピンに取り付ける作業がし易くなる。
【0013】
また、請求項4に記載の記録テープカートリッジは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の記録テープカートリッジであって、前記リーダーピンは、ポリテトラフルオロエチレン加工を含む表面処理がなされていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、低摩擦性に優れたリーダーピンが得られる。
【0015】
また、請求項5に記載の記録テープカートリッジは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の記録テープカートリッジであって、前記板バネは、ポリテトラフルオロエチレン加工を含む表面処理がなされていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、低摩擦性に優れた板バネが得られる。
【0017】
また、請求項6に記載の記録テープカートリッジは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の記録テープカートリッジであって、前記リーダーピンは、前記板バネが押さえる前記両端部のみが樹脂コーティングされていることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも板バネに接触する両端部(ヘッド部)の低摩擦性が向上されたリーダーピンが得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ダイカストで製造され、パーティングライン部に平面部が形成されたリーダーピンがケース内に収容された際、そのリーダーピンを板バネによって適切に押さえられる記録テープカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】リーダーピンを備えた記録テープカートリッジの概略斜視図
【図2】リーダーピンの斜視図
【図3】リーダーピンを製造するための固定側の金型を示す斜視図
【図4】リーダーピンを製造するための可動側の金型を示す斜視図
【図5】可動側の金型から押し出された直後のリーダーピンを示す斜視図
【図6】金型から押し出されたリーダーピンのヘッド部を拡大して示す斜視図
【図7】(A)リーダーピンのヘッド部のパーティングライン部に形成された平面部の大きさを示す断面図、(B)リーダーピンの係合部のパーティングライン部に形成された平面部の大きさを示す断面図、(C)リーダーピンの取付部のパーティングライン部に形成された平面部の大きさを示す断面図
【図8】クリップによって記録テープ又はリーダーテープの自由端部が取り付けられる前のリーダーピンを示す分解斜視図
【図9】(A)クリップによって記録テープ又はリーダーテープの自由端部が取り付けられた後の本実施形態に係るリーダーピンを示す断面図、(B)クリップによって記録テープ又はリーダーテープの自由端部が取り付けられた後の比較例に係るリーダーピンを示す断面図
【図10】(A)本実施形態に係るリーダーピンがケースに収容されている状態を示す平面図、(B)本実施形態に係るリーダーピンがケースに戻されるときの状態を示す平面図
【図11】比較例に係るリーダーピンがケースに収容されている状態を示す平面図、(B)比較例に係るリーダーピンがケースに戻されるときの状態を示す平面図
【図12】比較例に係るリーダーピンがケースに収容されている状態を示す平面図、(B)比較例に係るリーダーピンがケースに戻されるときの状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1において、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印FRで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印FRと直交する矢印RI方向を右方向(右側)とする。また、矢印FR方向及び矢印RI方向と直交する方向を矢印UPで示し、それを記録テープカートリッジ10の上方向(上側)とする。まず、記録テープカートリッジ10の全体構成について説明する。
【0022】
図1で示すように、この記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、ビス止め等によって接合されて構成されている。そして、このケース12の内部には、樹脂製のリール20が1つだけ回転可能に収容されるようになっている。
【0023】
このリール20は、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ22と、その下端部に設けられる下フランジ26と、その上端部に設けられる上フランジ24とで構成されており、リールハブ22の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻回され、上フランジ24及び下フランジ26によって、その巻回された記録テープTの幅方向の端部が保持されるようになっている。
【0024】
また、リールハブ22の底壁の下面には、リールギア(図示省略)が環状に形成されており、下ケース16の略中央部には、そのリールギアを外部に露出するためのギア開口(図示省略)が穿設されている。そして、このギア開口から露出されるリールギアが、ドライブ装置の回転シャフト(図示省略)に形成された駆動ギア(図示省略)に噛合されて回転駆動されることにより、ケース12内において、リール20がケース12に対して相対回転可能とされている。
【0025】
また、ケース12の右壁12Aには、リール20に巻装された記録テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される記録テープT又は記録テープTに接続されたシート状部材の一例としてのリーダーテープ(図示省略)の自由端部Tf(図8参照)には、ドライブ装置の引出部材(図示省略)によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダーピン30が固着されている。
【0026】
図2で詳細に示すように、このリーダーピン30は、円柱状とされた本体部31の軸方向両端部に、厚板状のヘッド部34が一体に形成されており、このヘッド部34の軸方向内側における本体部31の所定位置には、薄板状のフランジ部32が所定間隔を隔てて一体に形成されている。
【0027】
そして、このフランジ部32間における本体部31(以下「取付部31A」という)に、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfが取り付けられる(固着される)構成になっており、フランジ部32とヘッド部34との間における本体部31(以下「係合部31B」という)が、ドライブ装置の引出部材のフック等が係止される環状溝部33となっている。
【0028】
また、図1で示すように、ケース12の開口18の内側、即ち上ケース14の天板14A内面及び下ケース16の底板16A内面には、ケース12内においてリーダーピン30のヘッド部34を位置決めして保持する上下一対のピン保持部19が設けられている(図10〜図12も参照)。
【0029】
このピン保持部19は、記録テープTの引き出し側が開放された略半円形状をしており、直立状態のリーダーピン30のヘッド部34は、その開放側からピン保持部19内に出入可能とされている。なお、このヘッド部34のピン保持部19に接触する軸方向における外面34A(図2参照)は、略球面形状に形成されている。
【0030】
また、ピン保持部19の近傍には、板バネ27(図10〜図12参照)が配置されるようになっている。この板バネ27の二股状の先端部27Aは、平面視略円弧状に折り曲げられており、その先端部27Aの平面視略円弧状に折り曲げられた部位が、ヘッド部34の円弧状の曲面である周面部34B(図2参照)にそれぞれ係合(圧接)して、リーダーピン30をピン保持部19に保持する(押さえる)ようになっている。
【0031】
なお、リーダーピン30(ヘッド部34)が、ピン保持部19に対して出入する(着脱される)際には、板バネ27の先端部27Aが、ヘッド部34によって、リーダーピン30の移動方向(着脱方向)と平面視で直交する方向に押されることで弾性変形し、リーダーピン30の移動(着脱動作)を許容するようになっている。
【0032】
また、リーダーピン30(ヘッド部34)が、ピン保持部19に収容されているとき(記録テープカートリッジ10の不使用時)、そのリーダーピン30(ヘッド部34)は、板バネ27によって常時付勢されていてもよいし、付勢されていなくてもよい(所謂「遊び」がある状態であってもよい)。
【0033】
また、その開口18は、ドア28によって開閉される。このドア28は、開口18を閉塞可能な大きさの略矩形板状に形成され、その開口18を閉塞する方向へ、図示しない付勢部材によって付勢されている。そして、ドア28の前端部には、開閉操作用の凸部28Aが外方に向かって突設されている。この凸部28Aが、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填に伴い、そのドライブ装置の開閉部材(図示省略)と係合するようになっており、これによって、ドア28が付勢部材の付勢力に抗して開放されるようになっている。
【0034】
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次にそのリーダーピン30について詳細に説明する。図3〜図5で示すように、このリーダーピン30は、金属合金のダイカストによって製造されるようになっている。すなわち、このリーダーピン30は、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金のうちの何れかの金属合金を材料とし、図3、図4で示す金型40によって製造されるようになっている。
【0035】
金型40は、金属製の鋳型で、図3で示す固定側であるコア42と、図4で示す可動側であるキャビティ44とで構成されており、図示しない移動機構により、キャビティ44がコア42に対して接近移動及び離隔移動するように構成されている。そして、コア42及びキャビティ44の合わせ面42A、44Aには、リーダーピン30を成形するための凹部46、48がそれぞれ形成されている。
【0036】
したがって、例えば亜鉛合金のリーダーピン30を製造する場合には、コア42の合わせ面42Aにキャビティ44の合わせ面44Aを合わせて型締めし、溶融した亜鉛合金を凹部46、48内に圧入する。そして、リーダーピン30の形状が形成された後、キャビティ44をコア42から離隔させる。
【0037】
すると、そのリーダーピン30(後述するオーバーフロー部36やランナー38を含む)は、キャビティ44側に固定された状態でコア42から取り出され、その後、図5で示すように、キャビティ44に設けられている複数の押出ピン49により押し出されて(突き出されて)、キャビティ44から取り出される。そして、後述するオーバーフロー部36やランナー38が除去され、後述する所定の加工(メッキ等)が施されることで、図2で示すような製品としてのリーダーピン30が製造される。
【0038】
ここで、リーダーピン30(後述するオーバーフロー部36やランナー38を含む)をキャビティ44から取り出すときには、製品としてのリーダーピン30の形状が押出ピン49によって損なわれないように(押出ピン49が押圧することにより、段差等の突き出し跡が、製品としてのリーダーピン30に形成されないように)するために、その押出ピン49が押し出す(突き出す)箇所は、リーダーピン30のヘッド部34に一体に接合されているオーバーフロー部(被突き出し部)36とされている(図5参照)。
【0039】
つまり、金属合金のダイカストでリーダーピン30を製造する場合には、図6で示すように、ヘッド部34の外面34Aにおける周縁部近傍(角部近傍)に、所定の大きさとされたオーバーフロー部36が2個ずつ略左右対称に接合された形状に成形されることが望ましく、そのうちの1つ(これがゲートGになる)は、溶融した亜鉛合金を圧入させる経路によってできたランナー38(図5参照)に接合されている。
【0040】
各オーバーフロー部36は、図6で示すように、押出ピン49で押し出される方向の板厚D1が比較的厚くなるように形成されており、押出ピン49で押し出されるときのオーバーフロー部36の剛性が確保されるようになっている。つまり、各オーバーフロー部36は、押出ピン49で押し出される方向に加えられる力に対しては強度があり、押出ピン49で押し出されるときの押圧力に充分に耐え得る形状(厚さ)に形成されている。
【0041】
また、各オーバーフロー部36は、押出ピン49で押し出される方向から見て、ヘッド部34の外面34Aに接合される接合部36A側が鋭角に尖った略楔型形状に形成されている。すなわち、各オーバーフロー部36は、押出ピン49で押し出される方向と直交する方向における接合部36Aの板厚D2が極力薄くなるように形成されている。
【0042】
これにより、各オーバーフロー部36が、ヘッド部34の外面34Aから簡単に除去(切断)可能となる構成である。つまり、各オーバーフロー部36における接合部36Aは、押出ピン49で押し出される方向と直交する方向から加えられる力に対しては脆弱な形状となっており、その方向から加えられる力によって簡単に切断(除去)されるようになっている。
【0043】
また、リーダーピン30のヘッド部34の外面34Aにおいて、各オーバーフロー部36の接合部36Aが接合されている部位を含む周縁部の一部(角部を含む)には、そのヘッド部34を減肉させるような切欠部35が所定の大きさ(深さ)で形成されている。すなわち、各切欠部35内に、各オーバーフロー部36の接合部36Aが接合される構成になっている。
【0044】
これにより、各オーバーフロー部36が除去(切断)されてできた跡(ゲートGの跡も含む)が、リーダーピン30のヘッド部34の外面34Aから突出しないようにできる構成である。つまり、リーダーピン30のヘッド部34がケース12内のピン保持部19に保持される際に、ゲートGの跡が邪魔にならないようにできる構成である。
【0045】
なお、この切欠部35は、リーダーピン30のヘッド部34において、少なくともオーバーフロー部36(ゲートGを含む)が接合される場合に形成されていればよい。換言すれば、この切欠部35は、リーダーピン30のヘッド部34において、オーバーフロー部36が接合されない場合には形成しなくてもよい。
【0046】
また、こうしてできたリーダーピン30の表面(本体部31の周面やヘッド部34の周面等)には、その軸方向に沿ってパーティングライン部L(図9(B)参照)が形成される。そして、このパーティングライン部Lには、図9(B)で示すように、バリ39が形成されたり、コア42とキャビティ44の加工寸法差や、コア42とキャビティ44が相対的に位置ずれして型締めされたときには、段差エッジ29が形成されたりする。したがって、図2、図7で示すように、このリーダーピン30は、そのパーティングライン部Lに相当する部位が僅かに減肉されるようになっている。
【0047】
すなわち、このリーダーピン30は、取付部31A、係合部31B、ヘッド部34の各パーティングライン部Lに相当する部位が、それぞれ軸方向に沿って所定量H1、H2、H3(H1<H2<H3であり、0.005mm≦(H1、H2、H3)≦0.04mm、好ましくは、H1=0.01mm、H2=0.02mm、H3=0.03mm)だけ平坦にカットされ(所謂Dカットされ)、各部位にそれぞれ順に平面部31C、31D、34Cが左右対称に形成されるようになっている。そして、図7で示すように、各平面部31C、31D、34Cの幅W1、W2、W3は、W1<W2<W3となっている。
【0048】
また、図8、図9で示すように、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfは、リーダーピン30の取付部31Aに巻き付けられるとともに、その取付部31Aの周面に、断面視略「C」字状とされたクランプ部材としての樹脂製のクリップ37が嵌合されることで取り付けられる(固着される)ようになっている。
【0049】
つまり、このクリップ37は、そのスリット部37Aを拡開するように弾性変形可能になっており、その弾性復元力により、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfを取付部31Aとの間で狭持(押圧保持)できるようになっている。
【0050】
そして、このクリップ37は、リーダーピン30(ヘッド部34)が、ケース12内のピン保持部19から引き出されるとき、及び記録テープTがリール20に巻き戻されてケース12内のピン保持部19に収容されるときにおいて(自由端部Tfに張力が加わるときにおいて)も、リーダーピン30に対して相対回転不能になっている。
【0051】
また、図7で示したように、ヘッド部34における平面部34Cの幅W3及び係合部31Bにおける平面部31Dの幅W2は、取付部31Aにおける平面部31Cの幅W1よりも大きくされている。そのため、図8で示すように、リーダーピン30の取付部31Aに記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfを取り付ける際には、そのヘッド部34の平面部34Cを下にして、リーダーピン30を支持台50の平坦面50A上に置くことにより、そのリーダーピン30の周方向の位置決めができる。
【0052】
つまり、これにより、図9(A)で示すように、取付部31Aにおける平面部31Cがクリップ37のスリット部37Aに対向するように、換言すれば、図10で示すように、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfの張力方向Sに対し、ヘッド部34に形成された平面部34Cが、板バネ27の先端部27Aに接触しない角度となるように(ヘッド部34の周面部34Bのみが、板バネ27の先端部27Aに接触する角度となるように)、その自由端部Tfを取付部31Aに取り付けることができる。
【0053】
なお、図2、図8で示すように、リーダーピン30を支持台50の平坦面50A上に置く際に、フランジ部32が、その平坦面50Aに干渉しないように、フランジ部32のパーティングライン部Lに相当する部位にも平面部32Aが形成されることが望ましい。これによれば、支持台50の平坦面50A上に置かれるリーダーピン30をより確実に安定させることができる。
【0054】
以上のような構成のリーダーピン30において、次にその作用について説明する。上記したように、このリーダーピン30は、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金のうちの何れかの金属合金を材料として、ダイカスト製法により(金型40により)製造されている。
【0055】
ここで、上記金属合金は、熱伝導率がプラスチックよりも大きく、比熱がプラスチックよりも小さいことから、2秒〜10秒で1ショットの加工が可能である。つまり、上記金属合金のダイカストによって製造するリーダーピン30の場合は、ステンレス鋼を切削加工して製造するリーダーピン(図示省略)の場合よりも、その生産性を向上させることができる。
【0056】
しかも、このリーダーピン30は、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金のうちの何れかの金属合金を材料とすることから、安価に製造でき、金属で製造されることから、プラスチック(カーボンファイバーなどによる繊維強化プラスチックを含む)でできたリーダーピン(図示省略)よりも強度、剛性、低摩擦性、耐摩耗性に優れる。そして、上記金属合金で製造されるリーダーピン30は、耐食性においても比較的優れる。
【0057】
特に、銅合金を材料とした場合には、耐食性、低摩擦性、耐摩耗性に優れ、亜鉛合金を材料とした場合には、ダイカスト時の寸法精度に優れるとともに、金型40の耐久性の点でも優れ、リサイクル性にも優れる。また、アルミニウム合金やマグネシウム合金を材料とした場合には、より軽量に製造できるため、記録テープカートリッジ10が落下衝撃を受けた際に、リーダーピン30に掛かる慣性力が小さくなり、リーダーピン30がピン保持部19から外れ難くなる。
【0058】
つまり、亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金のうちの何れかの金属合金を材料としてダイカスト製法によって製造された本実施形態に係るリーダーピン30は、生産性と各種特性のバランスが良好であり、かつ安価に製造することができる。したがって、このリーダーピン30を採用することにより、記録テープカートリッジ10の製造コストを低減することができる。
【0059】
なお、こうしてできたリーダーピン30の表面をニッケルメッキ加工又は硬質クロムメッキ加工することが望ましく、更にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)加工することが望ましい。これにより、リーダーピン30の低摩擦性、耐摩耗性を向上させることができる。また、このリーダーピン30の表面をクロムメッキ加工又はクロメート処理してもよい。これにより、リーダーピン30の耐食性(耐久性)を向上させることができる。
【0060】
また、リーダーピン30に対してだけではなく、板バネ27に対して上記と同様の加工を施しても構わない。これにより、リーダーピン30との低摩擦性、耐摩耗性を向上させることができる。また、リーダーピン30全体に電気化学処理を施し、その後、射出成形により、ヘッド部34にのみ樹脂コーティングを施すようにしてもよい。これによれば、少なくとも板バネ27の先端部27Aに接触するヘッド部34の低摩擦性を向上させることができる。なお、この場合の樹脂材としては、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられる。
【0061】
ところで、このリーダーピン30は、取付部31A、係合部31B、ヘッド部34の各平面部31C、31D、34Cの幅W1、W2、W3が、W1<W2<W3とされている。したがって、図8で示したように、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfを、クリップ37によって取付部31Aに取り付ける際に、そのヘッド部34の平面部34Cにより、リーダーピン30を支持台50の平坦面50A上に安定して置くことができる。
【0062】
つまり、これにより、リーダーピン30の周方向の位置決めができるので、取付部31Aに対するクリップ37の装着(嵌合)作業がし易くなり、取付部31Aに対して、クリップ37を常に特定の方向から嵌合することができる。すなわち、図9(A)で示したように、取付部31Aにおける平面部31Cが、クリップ37のスリット部37Aに常に対向するように、そのクリップ37を取付部31Aに相対回転不能に嵌合する(固着する)ことができる。
【0063】
ここで、図9(B)で示すように、取付部31Aのパーティングライン部Lに相当する部位に、平面部31Cが形成されていない比較例に係るリーダーピン30’の場合には、クリップ37と取付部31Aとで狭持(押圧保持)された自由端部Tfが、その取付部31Aのパーティングライン部Lに形成されたバリ39や段差エッジ29によって、ダメージ(損傷)を受けたり、切断されたりするおそれがある。
【0064】
しかしながら、図9(A)で示すように、本実施形態に係るリーダーピン30の場合には、その取付部31Aのパーティングライン部Lに相当する部位に、平面部31Cが形成されて、バリ39や段差エッジ29が除去されているため、リーダーピン30の取付部31Aに巻き付けられる自由端部Tfが、クリップ37によって押圧保持されても、ダメージ(損傷)を受けたり、切断されたりするおそれはない。
【0065】
しかも、ヘッド部34のパーティングライン部Lに相当する部位に平面部34Cが形成されることで、そのヘッド部34からもバリ39や段差エッジ29が除去されているので、ヘッド部34の外径(軸方向に直交する方向の直径)が、バリ39や段差エッジ29によって大きくなり、ピン保持部19内へのヘッド部34の挿入力及び離脱力にばらつきが生じるのも防止することができる。
【0066】
また、図11で示す比較例では、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfの張力方向Sに対して、ヘッド部34に形成された平面部34Cが、板バネ27の先端部27Aに接触する角度となるように、リーダーピン30の取付部31Aに、その自由端部Tfが取り付けられている。
【0067】
したがって、この比較例の場合、リーダーピン30(ヘッド部34)がケース12内のピン保持部19に対して着脱されるときには、そのヘッド部34に対する板バネ27の先端部27Aのバネ力が不安定になるおそれがあり、そのヘッド部34を適切に押さえることができないおそれがある。
【0068】
しかしながら、本実施形態に係るリーダーピン30は、図9(A)、図10で示したように、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfの張力方向Sに対して、ヘッド部34に形成された平面部34Cが、板バネ27の先端部27Aに接触しない角度となるように、リーダーピン30の取付部31Aに、その自由端部Tfが取り付けられている。
【0069】
換言すれば、記録テープT又は記録テープTに接続されたリーダーテープの自由端部Tfの張力方向Sに対して、ヘッド部34の平面視円弧状(リーダーピン30の軸方向から見て円弧状)とされた周面部34Bのみが、板バネ27の先端部27Aに接触する角度となるように、リーダーピン30の取付部31Aに、その自由端部Tfが取り付けられている。
【0070】
したがって、金属合金のダイカストで製造され、パーティングライン部Lに平面部31C、31D、34Cが形成されたリーダーピン30が、ケース12内のピン保持部19に収容されたときに、そのヘッド部34を、板バネ27の先端部27Aによって適切に押さえることができる。つまり、これにより、リーダーピン30のヘッド部34に係合させる板バネ27の先端部27Aの係合不良を抑制又は防止することができる。
【0071】
なお、図12で示す比較例のように、ヘッド部34の平面部34Cの幅W3が大きすぎてもよくない。すなわち、この場合には、リーダーピン30(ヘッド部34)をケース12内のピン保持部19に収容する際に、その平面部34Cと周面部34Bとの境界部分(以下「エッジ部34D」という)が板バネ27の先端部27Aに強く当たって擦れてしまい、リーダーピン30のヘッド部34が板バネ27の先端部27Aによって摩耗されてしまうおそれがある。
【0072】
そのため、ヘッド部34の平面部34Cの幅W3は、リーダーピン30(ヘッド部34)がケース12内のピン保持部19に対して着脱される際に、ヘッド部34のエッジ部34Dが、板バネ27の先端部27Aに干渉しないように(周面部34Bのみが先端部27Aに当たるように)、その上限値が決められている(幅W3を決めるDカット量H3の上限値が0.04mmとされている)。これにより、リーダーピン30のヘッド部34の摩耗を抑制又は防止することができる。
【0073】
以上、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10について図面を基に説明したが、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10は図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更可能なものである。例えば、支持台50の形状によっては、ヘッド部34の平面部34Cではなく、係合部31Bの平面部31Dを支持するようにしてもよい。
【0074】
また、図7(A)で示すヘッド部34の平面部34Cは、それぞれ左右対称に同じ幅で形成されているが、スリット部37Aと対向しない側の平面部34Cの幅を、スリット部37Aと対向する側の平面部34Cの幅よりも小さくして、板バネ27の先端部27Aがヘッド部34の周面部34Bにより確実に係合する構成にしてもよい。つまり、各平面部31C、31D、34Cは、左右対称にそれぞれ同じ幅で形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
18 開口
20 リール
27 板バネ
30 リーダーピン
31 本体部
31A 取付部
31B 係合部
31C 平面部
31D 平面部
32 フランジ部
33 環状溝部
34 ヘッド部(端部)
34B 周面部
34C 平面部
T 記録テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録テープが巻回されたリールと、
前記リールを回転可能に単一で収容するケースと、
亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金の何れかのダイカストによって製造されるとともに、前記記録テープ又は該記録テープに接続されたシート状部材の自由端部に取り付けられ、前記ケースに形成された開口からドライブ装置の引出部材によって引き出されるリーダーピンと、
前記リーダーピンが前記ケース内から脱落しないように該リーダーピンの軸方向両端部を押さえるとともに、前記リーダーピンが前記ケースに対して着脱される際には、前記両端部に押されることで弾性変形し、前記リーダーピンの着脱動作を許容する板バネと、
前記リーダーピンのパーティングライン部を除去するように該リーダーピンに形成された平面部と、
を有し、
前記リーダーピンは、前記自由端部の張力方向に対し、前記両端部に形成された前記平面部が前記板バネに接触しない角度で、前記自由端部に取り付けられていることを特徴とする記録テープカートリッジ。
【請求項2】
記録テープが巻回されたリールと、
前記リールを回転可能に単一で収容するケースと、
亜鉛合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金の何れかのダイカストによって製造されるとともに、前記記録テープ又は該記録テープに接続されたシート状部材の自由端部に取り付けられ、前記ケースに形成された開口からドライブ装置の引出部材によって引き出されるリーダーピンと、
前記リーダーピンが前記ケース内から脱落しないように該リーダーピンの軸方向両端部を押さえるとともに、前記リーダーピンが前記ケースに対して着脱される際には、前記両端部に押されることで弾性変形し、前記リーダーピンの着脱動作を許容する板バネと、
前記リーダーピンの少なくとも前記両端部におけるパーティングライン部に相当する部分に形成された平面部と、
を有し、
前記リーダーピンは、前記自由端部の張力方向に対し、前記両端部に形成された前記平面部が前記板バネに接触しない角度で、前記自由端部に取り付けられていることを特徴とする記録テープカートリッジ。
【請求項3】
前記リーダーピンは、
前記両端部に形成され、前記板バネが押さえる厚板状のヘッド部と、
前記ヘッド部よりも軸方向内側に形成された薄板状のフランジ部と、
前記フランジ部同士の間であり、前記自由端部が取り付けられる本体部と、
を有し、
前記ヘッド部に形成される前記平面部の幅は、前記本体部に形成される前記平面部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録テープカートリッジ。
【請求項4】
前記リーダーピンは、ポリテトラフルオロエチレン加工を含む表面処理がなされていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の記録テープカートリッジ。
【請求項5】
前記板バネは、ポリテトラフルオロエチレン加工を含む表面処理がなされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の記録テープカートリッジ。
【請求項6】
前記リーダーピンは、前記板バネが押さえる前記両端部のみが樹脂コーティングされていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の記録テープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−216252(P2012−216252A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79243(P2011−79243)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)