記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法
【課題】溶着によるフィルターの固定において、十分な溶着強度を確保すると共に、バリやフィラー材が異物となってインクの通路内に侵入することのない記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法を提供すること。
【解決手段】第2の突起部7の高さを第1の突起部6の高さよりも低くして、第2の突起部の第2の先端部7aの溶融量を第1の突起部の第1の先端部6aよりも少なくする構成とした。これにより、バリやフィラー材がインク流路8内に侵入することを防ぎつつ、フィルター5の溶着強度を十分に確保することができる。
【解決手段】第2の突起部7の高さを第1の突起部6の高さよりも低くして、第2の突起部の第2の先端部7aの溶融量を第1の突起部の第1の先端部6aよりも少なくする構成とした。これにより、バリやフィラー材がインク流路8内に侵入することを防ぎつつ、フィルター5の溶着強度を十分に確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を用いて記録動作を行う記録装置に用いられる記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法に関する。本発明は、一般的なプリント装置の他、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等にも適用することができる。
【0002】
本発明は特に、インク流路中にゴミ等を除去するためのフィルターを有する記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
インクジェット記録装置においては、高画質化の要求に伴い、インクを小液滴化させるためにインクの吐出口が小径化される。例えば、インクの液滴は、約5pl(ピコリットル)であり、この液滴により形成されるドット径は40〜50μmである。このため、吐出口内に進入する異物に対する管理・対策が大きな課題である。このようなインクジェット記録ヘッドには、インク流路内および吐出口内への異物の侵入を阻止するため、インク流路内にフィルターが固定されている。従来のフィルターの固定方法の一例を図14および図15に示す。(特許文献1及び2参照。)
【0004】
図14は、フィルター101をフィルター固定部102に対して固定する際の断面図である。フィルター固定部102は、加熱することで溶融する樹脂により形成されている。フィルター固定部102を貫くようにインク流路104が設けられ、フィルター固定部102の下部には、記録ヘッド内にインクを供給するためのインク供給口105が設けられている。フィルター固定部102の上部には、インク流路104およびインク供給口105を囲むように環状の突起部106が設けられており、またフィルター固定部102には側壁107が設けられている。
【0005】
フィルター101のフィルター固定部102への固定について説明する。まず予め熱せられた熱溶着ホーン103が、フィルター101を吸着して保持する。熱溶着ホーン103によってフィルター101を加熱、保持したまま、その熱溶着ホーン103を押し下げて、フィルター101をフィルター固定部102における突起部106に接触させる。
【0006】
これにより、樹脂によって形成された突起部106の先端部が溶融しフィルター101の内部に入り込む。その後、熱溶着ホーン103がフィルター101の保持を止めフィルター101から遠ざかることで、フィルター101に対する加熱が終わる。そして、フィルター101内部の温度が下がることにより、フィルター101内部で溶融した突起部106の先端部が固化する。こうして、フィルター101がフィルター固定部104に対して溶着される。
【0007】
また、従来技術における他のフィルターの固定方法を図16および図17に示す。図16は、フィルター108をフィルター固定部109に対して固定する際の断面図である。フィルター固定部109は、加熱することで溶融する樹脂により形成されている。
【0008】
インク流路111はフィルター固定部109を貫くように設けられ、フィルター固定部109の下部には、記録ヘッド内にインクを供給するためのインク供給口112が設けられている。フィルター固定部109上部には、側壁113と、この側壁113に隣接する第1の突起部114が設けられている。フィルター固定部109の上部における第1の突起部114よりも内側の位置には、第2の突起部115が形成されている。第2の突起部115は、第1の突起部114よりも低く形成されている。第1の突起部114および第2の突起部115は、インク流路111およびインク供給口112を取り囲むように環状に形成されている。
【0009】
フィルター108のフィルター固定部109への固定に際しては、まず予め熱せられた熱溶着ホーン110が、フィルター108を吸着させて保持する。熱溶着ホーン110によってフィルター108を加熱、保持したまま、その熱溶着ホーン110を押し下げて、フィルター108をフィルター固定部109における第1の突起部114に接触させる。
【0010】
このときフィルター108は熱溶着ホーン110によって熱せられており高温となっているので、樹脂により形成された第1の突起部114の先端部は溶融してフィルター108の内部に入り込む。その後、熱溶着ホーン110がフィルター108の保持を止めてフィルター108から遠ざかることで、フィルター108に対する加熱が終わる。そして、フィルター108内部の温度が下がることにより、フィルター108内部で溶融した突起部106の先端部が固化する。こうして、フィルター101がフィルター固定部104に対して溶着される。第2の突起部115は、第1の突起部114よりも低く形成されており、フィルター108と第1の突起部114とは接触して溶着されるが、フィルター108と第2の突起部115とは接触せず溶着されない。
【0011】
【特許文献1】特開平8−80616号公報
【特許文献2】特許第3175266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図14、図15の固定方法の場合には、フィルターを溶着する際に、フィルター101内部に入りきれない溶融した突起部106の樹脂がフィルター101の下部にバリ116となってはみ出すおそれがある。はみ出したバリ116は、インクの流通時などにおいて剥がれ落ちてインク流路104内に侵入するおそれがある。
【0013】
特に、突起部106を含むフィルター固定部102が、剛性を向上させるためにガラスフィラー等のフィラー材を含む樹脂によって形成されている場合には、突起部106を溶融した際にフィラー材が浮き出て、樹脂から剥がれて異物になりやすい。仮に、突起部106における先端部の溶融量を減らして、フィルター101下部周囲のバリ116のはみ出しを無くした場合には、フィルター101とフィルター固定部102との溶着面積が十分にとれない。したがって、この場合には、溶着強度が低くなり、フィルター101がフィルター固定部102から剥がれてしまうおそれがある。
【0014】
一方、図16、図17の固定方法の場合には、第1の突起部114の内側に第2の突起部115を設けることで、第1の突起部114の溶着時に発生するバリ117およびフィラー材を第2の突起部115によって遮断することができる。しかし、第2の突起部115がフィルター108に接触していないため、それらの間には隙間が存在する。従って、フィルター108と第2の突起部115との隙間よりも小さいバリ117やフィラー材が、インク流路111内およびインク供給口112内へ侵入することは防ぐことができない。
【0015】
本発明の目的は、溶着によるフィルターの固定において、十分な溶着強度を確保すると共に、バリやフィラー材が異物となってインクの通路内に侵入することのない記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の記録ヘッドは、インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられた記録ヘッドにおいて、前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のインクタンクは、インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられたインクタンクにおいて、前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の記録ヘッドの製造方法は、インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定される記録ヘッドの製造方法において、前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のインクタンクの製造方法は、インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定されるインクタンクの製造方法において、前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とするインクタンクの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の突起部と第2の突起部とで溶融量に差を持たせて、前者よりも後者の溶融量を少なくすることで、第1の突起部の溶融部においては、溶融部がフィルターの下面からはみ出す程度にまで溶着面積を大きく取ることができる。一方、第2の突起部の溶融部においては、溶融部がフィルターからはみ出すことのない程度に溶融量を少なくすることができる。これにより、バリやフィラー材がインク流路内に侵入することを防ぎつつ、十分な溶着強度を確保することができる。その結果、良好な歩留りで記録ヘッド及びインクタンクを製造することができ、安価な記録ヘッド及びインクタンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明を適用可能な記録ヘッドの基本構成を図9から図13に基づいて説明する。
【0023】
(記録ヘッドの基本構成)
本例の記録ヘッドは、インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドである。
【0024】
記録ヘッド1000は電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生手段を用いて、インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドである。本例の記録ヘッド1000は、吐出エネルギー発生手段として電気熱変換体を備えており、電気信号に応じて電気熱変換対が発熱することによりインクが発泡する。その発泡エネルギーを利用して、インク吐出口からインクが吐出される。また、本例の記録ヘッド1000は、電気熱変換体とインク吐出口とが対向するように配置された、いわゆるサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0025】
本例の記録ヘッドは、インクタンクと一体のインクジェットカートリッジを構成している。図9および図10は本発明の記録ヘッド1000を有するインクジェットカートリッジ1100の外観斜視図であり、図11および図12はインクジェットカートリッジ1100を構成するそれぞれの要素を示す分解斜視図である。図9において、インクジェットカートリッジ1100の下部には装着ガイド1001が設けられており、記録ヘッド1000の交換を行う際にインクジェット記録装置本体に対してインクジェットヘッド1100の位置決め手段となる。インクジェットカートリッジ1100の下部および側面には、取り付けられた際に折り曲げられてL字状となる可撓性の電気配線テープ1002が設けられている。
【0026】
また、図11に示すように、電気配線テープ1002は、記録ヘッド1000の記録素子基板1003に接続されている。記録ヘッド1000における記録素子基板1003との対向部分には、第1のインク供給口1004が設けられている。本例の場合、第1のインク供給口1004は3つ設けられており、それぞれのインク供給口1004が3色のカラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)の供給を行う。
【0027】
電気配線テープ1002には、電極端子1005および記録素子基板1003を組み込むための開口部1006が設けられており、またインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号回路が形成されている。電気配線テープ1002には、インクジェット記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子1007が形成されており、電極端子1005と外部信号入力端子1007とは連続した銅箔の配線パターンでつながれている。
【0028】
第1の封止材1008および第2の封止材1009は、電気配線テープ1002と記録素子基板1003との電気接続部分を封止し、インクによる腐食や外的衝撃から電気接続部分を保護している。
【0029】
記録素子基板1003を一部破断した斜視図を図13に示す。本実施形態における記録素子基板1003は、厚さ0.5〜1mmのSi基板1010と、Si基板1010の上方にSi基板1010を覆うように設けられた天井部1018とから構成されている。Si基板1010は、インク流路である長溝状の第2のインク供給口1011がSiの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成されている。
【0030】
記録素子基板1003の天井部1018には、インク吐出口列1012a、1012b、1012c、1012d、1012e、1012fがそれぞれ2列ずつ3組、計6列設けられている。それぞれのインク吐出口列1012a、1012b、1012c、1012d、1012e、1012fは、本実施形態においては説明の便宜上12個のインク吐出口1013からなる。インク吐出口列1012a、1012bの間、およびインク吐出口列1012c、1012dの間、およびインク吐出口列1012e、1012fの間のそれぞれには第2のインク供給口1011が計3つ設けられている。
【0031】
それぞれのインク吐出口1013に対向するように電気熱変換素子1014がSi基板1010に形成されている。電気熱変換素子1014もインク吐出口1012と同様に、2列ずつ3組の電気熱変換素子列1015a、1015b、1015c、1015d、1015e,1015fを形成している。3つの第2のインク供給口1011のそれぞれには3色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエローのインク)が供給され、対応するインク吐出口1013から吐出される。
【0032】
インク吐出口1013および電気熱変換素子1014は、それぞれ各列千鳥状に配列されている。すなわち、各列のインク吐出口1013および電気熱変換素子1014は、その並び列方向に直交する方向に並ばないように半ピッチずれて配置されている。また、記録素子基板1003には、電気熱変換素子1014に電力を供給するAlなどからなる不図示の電気配線が形成されている。
【0033】
記録素子基板1003の側辺部には、電気熱変換素子1014の駆動信号等を供給するための電極部1016が設けられている。電極部1016上にはAuなどからなるバンプ1017が形成されている。
【0034】
天井部1018は樹脂材料により形成されており、天井部1018におけるインク流路壁1019およびインク吐出口1013は、フォトリソグラフィ技術によって形成されている。
【0035】
記録素子基板1003の電極部1016に形成されたバンプ1017と電気配線テープ1002に形成された電極端子1005とは、熱超音波圧着法により電気接合されている。
【0036】
また、図12に示すように、インクジェットカートリッジ1100には3つの部屋からなるインク収納部1020、1021、1022が設けられている。その内部には、3種類のカラーインクのそれぞれを吸収するインク保持部材1023、1024、1025が収容されるようになっている。記録ヘッド1000とインク収納部1020、1021、1022との間のインク流路中にフィルター1026、1027、1028が取り付けられる。インク収納部1020、1021、1022の上方開口部には、蓋部材1029が取り付けられる。蓋部材1029には、インク収納部1020、1021、1022内の圧力変動を逃がすための細口1030、1031、1032と、それぞれの細口1030、1031、1032に一端が連通する微細溝1033、1034、1035が設けられている。
【0037】
微細溝1033および1034の他端は微細溝1035の途中に合流している。また、細口1030、1031、1032および微細溝1033、1034、1035のほとんどはシール部材1036によって覆われており、微細溝1035の他端を開口することで大気連通口を形成している。また蓋部材1029には、記録ヘッド1000をインクジェット記録装置本体に対して固定するための係合部1037が設けられている。蓋部材1029は、インク収納部1020、1021、1022を含むインクタンク1038の上部開口部に溶着される。
【0038】
インクタンク1038は樹脂材料により形成されている。本実施形態においては、剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料によりインクタンク1038が形成されている。
【0039】
各インク収納部1020、1021、1022は、内部にカラーインクを保持し、負圧を発生するためのインク保持部材1023、1024、1025を有することでインクタンクとしての機能を有している。インク保持部材1023、1024、1025としてはPP(ポリプロピレン)繊維を圧縮したもの、あるいはウレタン繊維を圧縮したものでもよい。インク収納部1020、1021、1022に収納されたインク保持部材1023、1024、1025に保持されているカラーインクは、第1のインク供給口1004に供給される。その後、第1のインク供給口1004から記録素子基板1003上の第2のインク供給口1011に供給される。インク吐出口1013は、電気熱変換素子1014に対向して配置されている。従って、第2のインク供給口1011から供給されたカラーインクは、各電気熱変換素子1014の発熱によって発生した気泡の圧力によって各電気熱変換素子1014に対向するインク吐出口1013から吐出される。
【0040】
(特徴的な構成)
以下、本実施形態についての要部についての説明を行う。
図1は、前述したインクジェット記録ヘッドの一部の外観斜視図である。前述のインクジェットカートリッジ1100に対応するインクジェットカートリッジ50は、前述の記録ヘッド1000に対応するインクジェット記録ヘッド1を有している。またインクジェットカートリッジ50は、前述のインク収納部1020、1021、1022に対応する3つのインク収納部2a,2b,2cを有している。インクジェット記録ヘッド1と、インク収納部2a,2b,2cとが、一体に形成されたインクジェットカートリッジ50として構成されている。それぞれのインク収納部2a,2b,2cには、カラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)のそれぞれを保持するための3つのカラーインク保持部材が収容可能である。また、インクジェット記録ヘッド1は、インクジェット記録装置本体に対して着脱可能となっており、インクタンク内のカラーインクが消費されるとインクジェット記録ヘッド1は交換される。
【0041】
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。前述のフィルター1026、1027、1028に対応するフィルター5は、後述するように、熱溶着ホーン4を用いてインクジェット記録ヘッド1のフィルター固定部3に固定される。フィルター固定部3に、外側に環状の第1の突起部6を有しており、内側に環状の第2の突起部7が一体成型されている。また、フィルター固定部3は樹脂により成型され、その樹脂材料には、剛性を向上させるためにフィラー材としてガラスフィラーが5〜40%混入されている。
【0042】
フィルター固定部に形成されたインク流路8は、前述した第1のインク供給口1004に対応するインク供給口9に連通する。第1の突起部6および第2の突起部7のそれぞれは、インク流路8およびインク供給口9を囲むように環状に形成されている。内側に位置する第2の突起部7の高さH2は、外側に位置する第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されている。本例の場合、第2の突起部7の高さH2は、第1の突起部6の高さH1のおよそ2分の1である。フィルター5は、SUS金属繊維焼結により形成されている。
【0043】
インク収納部2a,2b,2cに収容されたカラーインクは、インク流路8およびインク供給口9を通ってインクジェット記録ヘッド1の内部に供給され、そして記録データに応じてインク吐出口(1013)から吐出される。フィルター5は、フィルター固定部3に固定されることにより、カラーインクに含まれるゴミ等を除去する。
【0044】
次に、フィルター5をフィルター固定部3に対して固定する工程について説明する。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、高さ検知装置10を用いて第2の突起部7の高さの検知を行う。これにより、後述する溶着完了時の熱溶着ホーン4の移動位置(溶着完了位置)を決定する。それから、予め熱せられた熱溶着ホーン4をフィルター5に当接させ、図3(b)に示すように、熱溶着ホーン4内の空気を矢印方向に吸い込んでフィルター5を吸引保持する。熱溶着ホーン4の熱がフィルター5へ伝わり、フィルター5が加熱される。
【0046】
熱溶着ホーン4にフィルター5を吸引保持したまま、図3(c)に示すように、フィルター5を第1の突起部6の第1の先端部6aに接触させてから第2の突起部7の第2の先端部7aに接触させる。このとき、フィルター5は熱溶着ホーン4によって加熱されているので、樹脂により形成された第1の突起部6の第1の先端部6aと第2の突起部7の第2の先端部7aは溶融する。それらの溶融した第1の先端部6aと第2の先端部7aは、フィルター5の内部に入り込む。
【0047】
その後、熱溶着ホーン4は、フィルター5の吸引保持を止めてから、上昇してフィルター5から離れる。熱溶着ホーン4がフィルター5から離れることで、時間の経過と共にフィルター5内の温度が低下し、溶融した第1の先端部6aおよび第2の先端部7aが固化する。この結果、フィルター5は、第1の先端部6a,第2の先端部7aの溶着によって第1の突起部6および第2の突起部7に固定される。図3(d)は、第1の突起部6および第2の突起部7の要部の拡大図である。
【0048】
ところで、フィルター5を熱溶着ホーン4で保持したまま押し下げる際には、まず、図3(a)の高さ検知装置10により取得した第2の突起部7の高さH2、およびフィルター5の厚さWを基に、溶着完了位置を設定する。その溶着完了位置は、フィルター5を図3(d)のような固定位置にまで押し下げるときの熱融着ホーン4の移動位置である。
【0049】
第2の突起部7の高さH2が第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されているので、加熱されたフィルター5は、第2の突起部7よりも先に第1の突起部6と接触する。その後、さらにフィルター5を押し下げると、フィルター5が第2の突起部7と接触する。熱溶着ホーン4を溶着完了位置まで移動させることにより、図3(d)のように、第1、第2の突起部6、7の第1の先端部6a,第2の先端部7aのそれぞれが溶融する。第2の突起部7の高さH2は第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されているので、第2の突起部の第2の先端部7aの溶融量は第1の突起部の第1の先端部6aよりも少ない。
【0050】
第1の突起部6の第1の先端部6aにおける溶融部6bはフィルター5の下面からはみ出す程度にまで溶着面積を大きくすることにより、十分な溶着強度を確保することができる。これに対して、第2の突起部7の第2の先端部7aにおける溶融部7bは、フィルター5からはみ出さない程度に溶融量を抑えることができる。従って、その第2の突起部7からはバリやフィラー材が発生しない。
【0051】
一方、第1の突起部6の第1の先端部6aにおける溶融部6bはフィルター5の下面からはみ出る程度にまで溶着されている。しかし、第2の突起部7の第2の先端部7aがフィルター5の内部にまで到達しているため、第1の突起部6からバリやフィラー材が発生したとしても、それらは第2の突起部7によって遮断されてインク流路8内への侵入が防止される。これらの結果、バリやフィラー材がインク流路8内に侵入することを防ぎつつ、フィルター5の溶着強度を十分に確保することができる。
【0052】
また、高さ検知装置10により検知した第2の突起部7の高さH2およびフィルター5の厚さWから、溶着完了位置を設定するため、第2の突起部7の第2の先端部7aの溶融の程度をフィルター5の下部からはみ出ない程度に適確に調整することができる。高さ検知装置10は、第2の突起部7の高さH2及びフィルター5の厚さWを検出できればよく、例えば、光学的または機械的な接触方式等の種々のものを用いることができる。
【0053】
第2の突起部7の溶融前の高さH2と溶融後の高さとの差を溶融高さH(図3(d)参照)とする。本実施形態においては、その溶融高さHを50μmとして、フィルター固定部3に含まれている後述するフィラー材の長手方向長さ(例えば、100μm)よりも小さくした。従って、第2の突起部7の溶融部7bからフィラー材が脱落することがない。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
図4に、第2の実施形態における要部の断面図を示す。
第1の実施形態と同様に、熱溶着ホーン11を用いてフィルター12を加熱、保持し、フィルター固定部13に対してフィルター12を溶着する。
【0055】
フィルター固定部13は樹脂により形成され、外側に環状の第1の突起部14を有しており、内側に環状の第2の突起部15を有している。内側に位置された第2の突起部15の幅W2は、外側に位置された第1の突起部14の幅W1よりも小さく設定されている。インクジェット記録ヘッド16の下部には、インク流路17およびインク供給口18が設けられている。第1の突起部14および第2の突起部15は、それぞれがインク流路17およびインク供給口18を取り囲むように環状に形成されている。図5に示すように、第1の突起部14および第2の突起部15を形成する樹脂に含まれたフィラー材19は、ガラスにより形成されているため長片状になっており、長手方向の長さLを有している。本例の場合、その長さLは約100μmである。
【0056】
フィルター12をフィルター固定部13に固定させる際には、熱溶着ホーン11が、フィルター12を加熱したまま第1の突起部14および第2の突起部15に接触させる。本実施形態においては第1の突起部14と第2の突起部15とがほぼ同じ高さのため、第1の突起部14と第2の突起部15とはほぼ同時にフィルター12と接触する。従って、第1の突起部14と第2の突起部15とがほぼ同時に溶融を開始し、フィルター12の内部に、第1の突起部14と第2の突起部15との溶融部分14a、15aが入り込む。
【0057】
ここで、第1の突起部14の幅W1は第2の突起部15の幅W2よりも広いため、第1の突起部14においては、第2の突起部15よりも多くの樹脂が溶融される。そのため、図のように、第1の突起部14における溶融部14aは、第2の突起部15における溶融部15aよりも大きく形成される。第1の突起部14においてはフィルター12の内部に入りきれない樹脂がフィルター12の下面にはみ出す程度にまで溶着面積が大きく形成される。従って、フィルター12と第1の突起部14との溶着強度が十分に確保される。
【0058】
一方、第2の突起部15の幅W2は、フィルター内部に入り込む溶融部15aがフィルター12の下面からはみ出ない程度に狭く設定されている。従って、第2の突起部15からは、バリやフィラー材が発生しない。
【0059】
また、図6のように、第2の突起部15の先端がフィルター12の内部に入り込んでいるので、第1の突起部14からバリやフィラー材が発生したとしても、それらは第2の突起部15によって遮断される。そのため、バリやフィラー材のインク流路17への侵入が防止される。
【0060】
これらの結果、バリやフィラー材がインク流路17内に侵入することを防ぎつつ、十分な溶着強度を確保することができる。
【0061】
第2の突起部15における溶融高さH(図6参照)は、フィルター固定部13に含まれるフィラー材19の長手方向の長さLの約100μmよりも小さい約50μmとした。こうすることで、第2の突起部15の溶融部からのフィラー材19の脱落を防止することができる。
【0062】
また、第2の突起部15の幅W2は、フィラー材19の長さLの約100μmよりも小さくした。これにより、第2の突起部15に含まれるフィラー材19は、図5のように、第2の突起部15の高さ方向とほぼ平行に配置されることになる。従って、第2の突起部15の溶融部15aからのフィラー材19の脱落をより確実に防止することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。
図7に、本実施形態における要部の断面図を示す。熱溶着ホーン20を用いてフィルター21を加熱、保持し、フィルター固定部22に対してフィルター21の溶着を行う。フィルター固定部22は樹脂により形成され、外側に環状の第1の突起部23を有しており、内側に環状の第2の突起部23を有している。インクジェット記録ヘッド25の下部にはインク流路26およびインク供給口27が設けられている。第1の突起部23および第2の突起部24は、それぞれがインク流路26およびインク供給口27を取り囲むように環状に形成されている。
【0064】
本実施形態においては、第1の突起部23と第2の突起部23とはほぼ同形状であり、ほぼ同じ高さと幅とを有している。フィルター21には、予めプレスにより段差が形成されており、第1の突起部23に対応する部分21aは、図7中の下方側に位置するように低く形成されており、第2の突起部23に対応する部分21bは、図7中の上方側に位置するように高く形成されている。フィルター21は、SUS金属繊維焼結により形成されている。
【0065】
フィルター21をフィルター固定部22に固定させる際には、熱溶着ホーン20が、フィルター21を加熱したまま第1の突起部23および第2の突起部23に接触させる。本実施形態においては、フィルター21に段差が設けてあるため、フィルター21の部分21aが第1の突起部23に早く到達し、第2の突起部24の部分21bが第2の突起部24に接触する。そのため、第2の突起部24に比べて第1の突起部23の方がフィルター21の内部に入り込む量が多くなる。従って、フィルター21を所定量押し下げることにより、第1の突起部23の方が第2の突起部24に比べより多くの樹脂が溶融され、図8のように、前者の溶融部23aは後者の溶融部24aよりも大きく形成される。第1の突起部23においては、フィルター21の内部に入りきれない樹脂がフィルター21の下面にはみ出す程度にまで溶融し、第1の突起部23とフィルター21との溶着面積が大きく形成される。従って、フィルター21と第1の突起部23との溶着強度は確保される。
【0066】
第1の突起部23における溶融から遅れて、第2の突起部24も溶融を開始する。第2の突起部24における溶融部24aがフィルター21内部に入り込む量だけ溶融して、フィルター21の下面からはみ出ないように、フィルター21の段差が形成されている。そのため、第2の突起部24の溶融部24aがフィルター21からはみ出ない程度に溶融し、その溶融部24aからバリやフィラー材が発生しない。
【0067】
また、第2の突起部24の溶融部24aがフィルター21の内部にまで到達しているため、第1の突起部23からのバリや浮き出たフィラー材は、第2の突起部24によって遮断される。
【0068】
また、予め高さ検知装置によって取得した第2の突起部24の高さ及びフィルター21の厚さを基に、前述した溶着完了位置を設定することにより、第2の突起部24における溶融高さHを定める。その溶融高さHは、フィルター固定部22に含まれるフィラー材の長手方向の長さ(例えば、約100μm)よりも少ない大きさ(例えば、約50μm)とする。こうすることで、第2の突起部24の溶融部24aからのフィラー材の脱落を防止することができる。
【0069】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態においては、フィルター5、12、21の材料としてSUS金属繊維焼結により形成されたものを用いたが、SUS金属メッシュにより形成されたものであってもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、第2の突起部7、15、24の高さおよびフィルター5、12、21の厚さを高さ検出装置によって検知したが、フィルター5、12、21の厚さを予め測定しておき、その値を用いてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態においては、三色のカラーインクを用いたカラープリンタにおけるインクジェット記録ヘッドについて述べたが、単色のプリンタにおけるインクジェット記録ヘッドであってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態における記録ヘッドは、インクタンクと一体となってインクジェットカートリッジを構成するものについて述べたが、本発明はこれに限定されることはない。本発明は、例えば、記録ヘッドを持たないインクタンク単独のもの、及びインクタンクを持たない記録ヘッド単独のものにも適用可能である。
【0073】
また、第1、第2の突起部は、インク流路の周囲に位置するように環状に形成されていれば良く、その形状は円環状のみに特定されない。また、第1の突起部は必ずしも環状である必要はない。
【0074】
また、本発明は流体の流路中にフィルターが取り付けられるものであればプリンタ以外の機器にも適用することができ、例えば、薬液を扱う装置や食品を製造する装置なども適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおける構成部材の一部の外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿うフィルター固定部におけるフィルター固定前の断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、図2のフィルター固定部に対してフィルターを固定する工程の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図5】図4のフィルター固定部における突起部の拡大断面図である。
【図6】図4のフィルター固定部におけるフィルター固定後の溶着部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図8】図7のフィルター固定部におけるフィルター固定後の溶着部の拡大断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを上方から見た外観斜視図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドを下方から見た外観斜視図である。
【図11】図9のインクジェット記録ヘッドの下側部分の分解斜視図である。
【図12】図9のインクジェット記録ヘッドの上側部分の分解斜視図である。
【図13】図9のインクジェット記録ヘッドにおける記録素子基板の一部を破断した斜視図である。
【図14】従来のインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図15】図14のフィルター固定部のフィルター固定後の断面図である。
【図16】従来の他のインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図17】図16のフィルター固定部のフィルター固定後の断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェット記録ヘッド
2a,2b,2c インク収納部
3、13、22 フィルター固定部
4、11、20 熱融着ホーン
5、12、21 フィルター
6、14、23 第1の突起部
6a 第1の先端部
7、15、24 第2の突起部
7a 第2の先端部
8、17、26 インク流路
9、18、27 インク供給口
10 高さ検知装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を用いて記録動作を行う記録装置に用いられる記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法に関する。本発明は、一般的なプリント装置の他、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等にも適用することができる。
【0002】
本発明は特に、インク流路中にゴミ等を除去するためのフィルターを有する記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
インクジェット記録装置においては、高画質化の要求に伴い、インクを小液滴化させるためにインクの吐出口が小径化される。例えば、インクの液滴は、約5pl(ピコリットル)であり、この液滴により形成されるドット径は40〜50μmである。このため、吐出口内に進入する異物に対する管理・対策が大きな課題である。このようなインクジェット記録ヘッドには、インク流路内および吐出口内への異物の侵入を阻止するため、インク流路内にフィルターが固定されている。従来のフィルターの固定方法の一例を図14および図15に示す。(特許文献1及び2参照。)
【0004】
図14は、フィルター101をフィルター固定部102に対して固定する際の断面図である。フィルター固定部102は、加熱することで溶融する樹脂により形成されている。フィルター固定部102を貫くようにインク流路104が設けられ、フィルター固定部102の下部には、記録ヘッド内にインクを供給するためのインク供給口105が設けられている。フィルター固定部102の上部には、インク流路104およびインク供給口105を囲むように環状の突起部106が設けられており、またフィルター固定部102には側壁107が設けられている。
【0005】
フィルター101のフィルター固定部102への固定について説明する。まず予め熱せられた熱溶着ホーン103が、フィルター101を吸着して保持する。熱溶着ホーン103によってフィルター101を加熱、保持したまま、その熱溶着ホーン103を押し下げて、フィルター101をフィルター固定部102における突起部106に接触させる。
【0006】
これにより、樹脂によって形成された突起部106の先端部が溶融しフィルター101の内部に入り込む。その後、熱溶着ホーン103がフィルター101の保持を止めフィルター101から遠ざかることで、フィルター101に対する加熱が終わる。そして、フィルター101内部の温度が下がることにより、フィルター101内部で溶融した突起部106の先端部が固化する。こうして、フィルター101がフィルター固定部104に対して溶着される。
【0007】
また、従来技術における他のフィルターの固定方法を図16および図17に示す。図16は、フィルター108をフィルター固定部109に対して固定する際の断面図である。フィルター固定部109は、加熱することで溶融する樹脂により形成されている。
【0008】
インク流路111はフィルター固定部109を貫くように設けられ、フィルター固定部109の下部には、記録ヘッド内にインクを供給するためのインク供給口112が設けられている。フィルター固定部109上部には、側壁113と、この側壁113に隣接する第1の突起部114が設けられている。フィルター固定部109の上部における第1の突起部114よりも内側の位置には、第2の突起部115が形成されている。第2の突起部115は、第1の突起部114よりも低く形成されている。第1の突起部114および第2の突起部115は、インク流路111およびインク供給口112を取り囲むように環状に形成されている。
【0009】
フィルター108のフィルター固定部109への固定に際しては、まず予め熱せられた熱溶着ホーン110が、フィルター108を吸着させて保持する。熱溶着ホーン110によってフィルター108を加熱、保持したまま、その熱溶着ホーン110を押し下げて、フィルター108をフィルター固定部109における第1の突起部114に接触させる。
【0010】
このときフィルター108は熱溶着ホーン110によって熱せられており高温となっているので、樹脂により形成された第1の突起部114の先端部は溶融してフィルター108の内部に入り込む。その後、熱溶着ホーン110がフィルター108の保持を止めてフィルター108から遠ざかることで、フィルター108に対する加熱が終わる。そして、フィルター108内部の温度が下がることにより、フィルター108内部で溶融した突起部106の先端部が固化する。こうして、フィルター101がフィルター固定部104に対して溶着される。第2の突起部115は、第1の突起部114よりも低く形成されており、フィルター108と第1の突起部114とは接触して溶着されるが、フィルター108と第2の突起部115とは接触せず溶着されない。
【0011】
【特許文献1】特開平8−80616号公報
【特許文献2】特許第3175266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図14、図15の固定方法の場合には、フィルターを溶着する際に、フィルター101内部に入りきれない溶融した突起部106の樹脂がフィルター101の下部にバリ116となってはみ出すおそれがある。はみ出したバリ116は、インクの流通時などにおいて剥がれ落ちてインク流路104内に侵入するおそれがある。
【0013】
特に、突起部106を含むフィルター固定部102が、剛性を向上させるためにガラスフィラー等のフィラー材を含む樹脂によって形成されている場合には、突起部106を溶融した際にフィラー材が浮き出て、樹脂から剥がれて異物になりやすい。仮に、突起部106における先端部の溶融量を減らして、フィルター101下部周囲のバリ116のはみ出しを無くした場合には、フィルター101とフィルター固定部102との溶着面積が十分にとれない。したがって、この場合には、溶着強度が低くなり、フィルター101がフィルター固定部102から剥がれてしまうおそれがある。
【0014】
一方、図16、図17の固定方法の場合には、第1の突起部114の内側に第2の突起部115を設けることで、第1の突起部114の溶着時に発生するバリ117およびフィラー材を第2の突起部115によって遮断することができる。しかし、第2の突起部115がフィルター108に接触していないため、それらの間には隙間が存在する。従って、フィルター108と第2の突起部115との隙間よりも小さいバリ117やフィラー材が、インク流路111内およびインク供給口112内へ侵入することは防ぐことができない。
【0015】
本発明の目的は、溶着によるフィルターの固定において、十分な溶着強度を確保すると共に、バリやフィラー材が異物となってインクの通路内に侵入することのない記録ヘッド、インクタンク、記録ヘッドの製造方法、インクタンクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の記録ヘッドは、インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられた記録ヘッドにおいて、前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のインクタンクは、インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられたインクタンクにおいて、前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の記録ヘッドの製造方法は、インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定される記録ヘッドの製造方法において、前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のインクタンクの製造方法は、インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定されるインクタンクの製造方法において、前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とするインクタンクの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の突起部と第2の突起部とで溶融量に差を持たせて、前者よりも後者の溶融量を少なくすることで、第1の突起部の溶融部においては、溶融部がフィルターの下面からはみ出す程度にまで溶着面積を大きく取ることができる。一方、第2の突起部の溶融部においては、溶融部がフィルターからはみ出すことのない程度に溶融量を少なくすることができる。これにより、バリやフィラー材がインク流路内に侵入することを防ぎつつ、十分な溶着強度を確保することができる。その結果、良好な歩留りで記録ヘッド及びインクタンクを製造することができ、安価な記録ヘッド及びインクタンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明を適用可能な記録ヘッドの基本構成を図9から図13に基づいて説明する。
【0023】
(記録ヘッドの基本構成)
本例の記録ヘッドは、インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドである。
【0024】
記録ヘッド1000は電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生手段を用いて、インク吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドである。本例の記録ヘッド1000は、吐出エネルギー発生手段として電気熱変換体を備えており、電気信号に応じて電気熱変換対が発熱することによりインクが発泡する。その発泡エネルギーを利用して、インク吐出口からインクが吐出される。また、本例の記録ヘッド1000は、電気熱変換体とインク吐出口とが対向するように配置された、いわゆるサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0025】
本例の記録ヘッドは、インクタンクと一体のインクジェットカートリッジを構成している。図9および図10は本発明の記録ヘッド1000を有するインクジェットカートリッジ1100の外観斜視図であり、図11および図12はインクジェットカートリッジ1100を構成するそれぞれの要素を示す分解斜視図である。図9において、インクジェットカートリッジ1100の下部には装着ガイド1001が設けられており、記録ヘッド1000の交換を行う際にインクジェット記録装置本体に対してインクジェットヘッド1100の位置決め手段となる。インクジェットカートリッジ1100の下部および側面には、取り付けられた際に折り曲げられてL字状となる可撓性の電気配線テープ1002が設けられている。
【0026】
また、図11に示すように、電気配線テープ1002は、記録ヘッド1000の記録素子基板1003に接続されている。記録ヘッド1000における記録素子基板1003との対向部分には、第1のインク供給口1004が設けられている。本例の場合、第1のインク供給口1004は3つ設けられており、それぞれのインク供給口1004が3色のカラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)の供給を行う。
【0027】
電気配線テープ1002には、電極端子1005および記録素子基板1003を組み込むための開口部1006が設けられており、またインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号回路が形成されている。電気配線テープ1002には、インクジェット記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子1007が形成されており、電極端子1005と外部信号入力端子1007とは連続した銅箔の配線パターンでつながれている。
【0028】
第1の封止材1008および第2の封止材1009は、電気配線テープ1002と記録素子基板1003との電気接続部分を封止し、インクによる腐食や外的衝撃から電気接続部分を保護している。
【0029】
記録素子基板1003を一部破断した斜視図を図13に示す。本実施形態における記録素子基板1003は、厚さ0.5〜1mmのSi基板1010と、Si基板1010の上方にSi基板1010を覆うように設けられた天井部1018とから構成されている。Si基板1010は、インク流路である長溝状の第2のインク供給口1011がSiの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成されている。
【0030】
記録素子基板1003の天井部1018には、インク吐出口列1012a、1012b、1012c、1012d、1012e、1012fがそれぞれ2列ずつ3組、計6列設けられている。それぞれのインク吐出口列1012a、1012b、1012c、1012d、1012e、1012fは、本実施形態においては説明の便宜上12個のインク吐出口1013からなる。インク吐出口列1012a、1012bの間、およびインク吐出口列1012c、1012dの間、およびインク吐出口列1012e、1012fの間のそれぞれには第2のインク供給口1011が計3つ設けられている。
【0031】
それぞれのインク吐出口1013に対向するように電気熱変換素子1014がSi基板1010に形成されている。電気熱変換素子1014もインク吐出口1012と同様に、2列ずつ3組の電気熱変換素子列1015a、1015b、1015c、1015d、1015e,1015fを形成している。3つの第2のインク供給口1011のそれぞれには3色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエローのインク)が供給され、対応するインク吐出口1013から吐出される。
【0032】
インク吐出口1013および電気熱変換素子1014は、それぞれ各列千鳥状に配列されている。すなわち、各列のインク吐出口1013および電気熱変換素子1014は、その並び列方向に直交する方向に並ばないように半ピッチずれて配置されている。また、記録素子基板1003には、電気熱変換素子1014に電力を供給するAlなどからなる不図示の電気配線が形成されている。
【0033】
記録素子基板1003の側辺部には、電気熱変換素子1014の駆動信号等を供給するための電極部1016が設けられている。電極部1016上にはAuなどからなるバンプ1017が形成されている。
【0034】
天井部1018は樹脂材料により形成されており、天井部1018におけるインク流路壁1019およびインク吐出口1013は、フォトリソグラフィ技術によって形成されている。
【0035】
記録素子基板1003の電極部1016に形成されたバンプ1017と電気配線テープ1002に形成された電極端子1005とは、熱超音波圧着法により電気接合されている。
【0036】
また、図12に示すように、インクジェットカートリッジ1100には3つの部屋からなるインク収納部1020、1021、1022が設けられている。その内部には、3種類のカラーインクのそれぞれを吸収するインク保持部材1023、1024、1025が収容されるようになっている。記録ヘッド1000とインク収納部1020、1021、1022との間のインク流路中にフィルター1026、1027、1028が取り付けられる。インク収納部1020、1021、1022の上方開口部には、蓋部材1029が取り付けられる。蓋部材1029には、インク収納部1020、1021、1022内の圧力変動を逃がすための細口1030、1031、1032と、それぞれの細口1030、1031、1032に一端が連通する微細溝1033、1034、1035が設けられている。
【0037】
微細溝1033および1034の他端は微細溝1035の途中に合流している。また、細口1030、1031、1032および微細溝1033、1034、1035のほとんどはシール部材1036によって覆われており、微細溝1035の他端を開口することで大気連通口を形成している。また蓋部材1029には、記録ヘッド1000をインクジェット記録装置本体に対して固定するための係合部1037が設けられている。蓋部材1029は、インク収納部1020、1021、1022を含むインクタンク1038の上部開口部に溶着される。
【0038】
インクタンク1038は樹脂材料により形成されている。本実施形態においては、剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料によりインクタンク1038が形成されている。
【0039】
各インク収納部1020、1021、1022は、内部にカラーインクを保持し、負圧を発生するためのインク保持部材1023、1024、1025を有することでインクタンクとしての機能を有している。インク保持部材1023、1024、1025としてはPP(ポリプロピレン)繊維を圧縮したもの、あるいはウレタン繊維を圧縮したものでもよい。インク収納部1020、1021、1022に収納されたインク保持部材1023、1024、1025に保持されているカラーインクは、第1のインク供給口1004に供給される。その後、第1のインク供給口1004から記録素子基板1003上の第2のインク供給口1011に供給される。インク吐出口1013は、電気熱変換素子1014に対向して配置されている。従って、第2のインク供給口1011から供給されたカラーインクは、各電気熱変換素子1014の発熱によって発生した気泡の圧力によって各電気熱変換素子1014に対向するインク吐出口1013から吐出される。
【0040】
(特徴的な構成)
以下、本実施形態についての要部についての説明を行う。
図1は、前述したインクジェット記録ヘッドの一部の外観斜視図である。前述のインクジェットカートリッジ1100に対応するインクジェットカートリッジ50は、前述の記録ヘッド1000に対応するインクジェット記録ヘッド1を有している。またインクジェットカートリッジ50は、前述のインク収納部1020、1021、1022に対応する3つのインク収納部2a,2b,2cを有している。インクジェット記録ヘッド1と、インク収納部2a,2b,2cとが、一体に形成されたインクジェットカートリッジ50として構成されている。それぞれのインク収納部2a,2b,2cには、カラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)のそれぞれを保持するための3つのカラーインク保持部材が収容可能である。また、インクジェット記録ヘッド1は、インクジェット記録装置本体に対して着脱可能となっており、インクタンク内のカラーインクが消費されるとインクジェット記録ヘッド1は交換される。
【0041】
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。前述のフィルター1026、1027、1028に対応するフィルター5は、後述するように、熱溶着ホーン4を用いてインクジェット記録ヘッド1のフィルター固定部3に固定される。フィルター固定部3に、外側に環状の第1の突起部6を有しており、内側に環状の第2の突起部7が一体成型されている。また、フィルター固定部3は樹脂により成型され、その樹脂材料には、剛性を向上させるためにフィラー材としてガラスフィラーが5〜40%混入されている。
【0042】
フィルター固定部に形成されたインク流路8は、前述した第1のインク供給口1004に対応するインク供給口9に連通する。第1の突起部6および第2の突起部7のそれぞれは、インク流路8およびインク供給口9を囲むように環状に形成されている。内側に位置する第2の突起部7の高さH2は、外側に位置する第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されている。本例の場合、第2の突起部7の高さH2は、第1の突起部6の高さH1のおよそ2分の1である。フィルター5は、SUS金属繊維焼結により形成されている。
【0043】
インク収納部2a,2b,2cに収容されたカラーインクは、インク流路8およびインク供給口9を通ってインクジェット記録ヘッド1の内部に供給され、そして記録データに応じてインク吐出口(1013)から吐出される。フィルター5は、フィルター固定部3に固定されることにより、カラーインクに含まれるゴミ等を除去する。
【0044】
次に、フィルター5をフィルター固定部3に対して固定する工程について説明する。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、高さ検知装置10を用いて第2の突起部7の高さの検知を行う。これにより、後述する溶着完了時の熱溶着ホーン4の移動位置(溶着完了位置)を決定する。それから、予め熱せられた熱溶着ホーン4をフィルター5に当接させ、図3(b)に示すように、熱溶着ホーン4内の空気を矢印方向に吸い込んでフィルター5を吸引保持する。熱溶着ホーン4の熱がフィルター5へ伝わり、フィルター5が加熱される。
【0046】
熱溶着ホーン4にフィルター5を吸引保持したまま、図3(c)に示すように、フィルター5を第1の突起部6の第1の先端部6aに接触させてから第2の突起部7の第2の先端部7aに接触させる。このとき、フィルター5は熱溶着ホーン4によって加熱されているので、樹脂により形成された第1の突起部6の第1の先端部6aと第2の突起部7の第2の先端部7aは溶融する。それらの溶融した第1の先端部6aと第2の先端部7aは、フィルター5の内部に入り込む。
【0047】
その後、熱溶着ホーン4は、フィルター5の吸引保持を止めてから、上昇してフィルター5から離れる。熱溶着ホーン4がフィルター5から離れることで、時間の経過と共にフィルター5内の温度が低下し、溶融した第1の先端部6aおよび第2の先端部7aが固化する。この結果、フィルター5は、第1の先端部6a,第2の先端部7aの溶着によって第1の突起部6および第2の突起部7に固定される。図3(d)は、第1の突起部6および第2の突起部7の要部の拡大図である。
【0048】
ところで、フィルター5を熱溶着ホーン4で保持したまま押し下げる際には、まず、図3(a)の高さ検知装置10により取得した第2の突起部7の高さH2、およびフィルター5の厚さWを基に、溶着完了位置を設定する。その溶着完了位置は、フィルター5を図3(d)のような固定位置にまで押し下げるときの熱融着ホーン4の移動位置である。
【0049】
第2の突起部7の高さH2が第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されているので、加熱されたフィルター5は、第2の突起部7よりも先に第1の突起部6と接触する。その後、さらにフィルター5を押し下げると、フィルター5が第2の突起部7と接触する。熱溶着ホーン4を溶着完了位置まで移動させることにより、図3(d)のように、第1、第2の突起部6、7の第1の先端部6a,第2の先端部7aのそれぞれが溶融する。第2の突起部7の高さH2は第1の突起部6の高さH1よりも低く設定されているので、第2の突起部の第2の先端部7aの溶融量は第1の突起部の第1の先端部6aよりも少ない。
【0050】
第1の突起部6の第1の先端部6aにおける溶融部6bはフィルター5の下面からはみ出す程度にまで溶着面積を大きくすることにより、十分な溶着強度を確保することができる。これに対して、第2の突起部7の第2の先端部7aにおける溶融部7bは、フィルター5からはみ出さない程度に溶融量を抑えることができる。従って、その第2の突起部7からはバリやフィラー材が発生しない。
【0051】
一方、第1の突起部6の第1の先端部6aにおける溶融部6bはフィルター5の下面からはみ出る程度にまで溶着されている。しかし、第2の突起部7の第2の先端部7aがフィルター5の内部にまで到達しているため、第1の突起部6からバリやフィラー材が発生したとしても、それらは第2の突起部7によって遮断されてインク流路8内への侵入が防止される。これらの結果、バリやフィラー材がインク流路8内に侵入することを防ぎつつ、フィルター5の溶着強度を十分に確保することができる。
【0052】
また、高さ検知装置10により検知した第2の突起部7の高さH2およびフィルター5の厚さWから、溶着完了位置を設定するため、第2の突起部7の第2の先端部7aの溶融の程度をフィルター5の下部からはみ出ない程度に適確に調整することができる。高さ検知装置10は、第2の突起部7の高さH2及びフィルター5の厚さWを検出できればよく、例えば、光学的または機械的な接触方式等の種々のものを用いることができる。
【0053】
第2の突起部7の溶融前の高さH2と溶融後の高さとの差を溶融高さH(図3(d)参照)とする。本実施形態においては、その溶融高さHを50μmとして、フィルター固定部3に含まれている後述するフィラー材の長手方向長さ(例えば、100μm)よりも小さくした。従って、第2の突起部7の溶融部7bからフィラー材が脱落することがない。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
図4に、第2の実施形態における要部の断面図を示す。
第1の実施形態と同様に、熱溶着ホーン11を用いてフィルター12を加熱、保持し、フィルター固定部13に対してフィルター12を溶着する。
【0055】
フィルター固定部13は樹脂により形成され、外側に環状の第1の突起部14を有しており、内側に環状の第2の突起部15を有している。内側に位置された第2の突起部15の幅W2は、外側に位置された第1の突起部14の幅W1よりも小さく設定されている。インクジェット記録ヘッド16の下部には、インク流路17およびインク供給口18が設けられている。第1の突起部14および第2の突起部15は、それぞれがインク流路17およびインク供給口18を取り囲むように環状に形成されている。図5に示すように、第1の突起部14および第2の突起部15を形成する樹脂に含まれたフィラー材19は、ガラスにより形成されているため長片状になっており、長手方向の長さLを有している。本例の場合、その長さLは約100μmである。
【0056】
フィルター12をフィルター固定部13に固定させる際には、熱溶着ホーン11が、フィルター12を加熱したまま第1の突起部14および第2の突起部15に接触させる。本実施形態においては第1の突起部14と第2の突起部15とがほぼ同じ高さのため、第1の突起部14と第2の突起部15とはほぼ同時にフィルター12と接触する。従って、第1の突起部14と第2の突起部15とがほぼ同時に溶融を開始し、フィルター12の内部に、第1の突起部14と第2の突起部15との溶融部分14a、15aが入り込む。
【0057】
ここで、第1の突起部14の幅W1は第2の突起部15の幅W2よりも広いため、第1の突起部14においては、第2の突起部15よりも多くの樹脂が溶融される。そのため、図のように、第1の突起部14における溶融部14aは、第2の突起部15における溶融部15aよりも大きく形成される。第1の突起部14においてはフィルター12の内部に入りきれない樹脂がフィルター12の下面にはみ出す程度にまで溶着面積が大きく形成される。従って、フィルター12と第1の突起部14との溶着強度が十分に確保される。
【0058】
一方、第2の突起部15の幅W2は、フィルター内部に入り込む溶融部15aがフィルター12の下面からはみ出ない程度に狭く設定されている。従って、第2の突起部15からは、バリやフィラー材が発生しない。
【0059】
また、図6のように、第2の突起部15の先端がフィルター12の内部に入り込んでいるので、第1の突起部14からバリやフィラー材が発生したとしても、それらは第2の突起部15によって遮断される。そのため、バリやフィラー材のインク流路17への侵入が防止される。
【0060】
これらの結果、バリやフィラー材がインク流路17内に侵入することを防ぎつつ、十分な溶着強度を確保することができる。
【0061】
第2の突起部15における溶融高さH(図6参照)は、フィルター固定部13に含まれるフィラー材19の長手方向の長さLの約100μmよりも小さい約50μmとした。こうすることで、第2の突起部15の溶融部からのフィラー材19の脱落を防止することができる。
【0062】
また、第2の突起部15の幅W2は、フィラー材19の長さLの約100μmよりも小さくした。これにより、第2の突起部15に含まれるフィラー材19は、図5のように、第2の突起部15の高さ方向とほぼ平行に配置されることになる。従って、第2の突起部15の溶融部15aからのフィラー材19の脱落をより確実に防止することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。
図7に、本実施形態における要部の断面図を示す。熱溶着ホーン20を用いてフィルター21を加熱、保持し、フィルター固定部22に対してフィルター21の溶着を行う。フィルター固定部22は樹脂により形成され、外側に環状の第1の突起部23を有しており、内側に環状の第2の突起部23を有している。インクジェット記録ヘッド25の下部にはインク流路26およびインク供給口27が設けられている。第1の突起部23および第2の突起部24は、それぞれがインク流路26およびインク供給口27を取り囲むように環状に形成されている。
【0064】
本実施形態においては、第1の突起部23と第2の突起部23とはほぼ同形状であり、ほぼ同じ高さと幅とを有している。フィルター21には、予めプレスにより段差が形成されており、第1の突起部23に対応する部分21aは、図7中の下方側に位置するように低く形成されており、第2の突起部23に対応する部分21bは、図7中の上方側に位置するように高く形成されている。フィルター21は、SUS金属繊維焼結により形成されている。
【0065】
フィルター21をフィルター固定部22に固定させる際には、熱溶着ホーン20が、フィルター21を加熱したまま第1の突起部23および第2の突起部23に接触させる。本実施形態においては、フィルター21に段差が設けてあるため、フィルター21の部分21aが第1の突起部23に早く到達し、第2の突起部24の部分21bが第2の突起部24に接触する。そのため、第2の突起部24に比べて第1の突起部23の方がフィルター21の内部に入り込む量が多くなる。従って、フィルター21を所定量押し下げることにより、第1の突起部23の方が第2の突起部24に比べより多くの樹脂が溶融され、図8のように、前者の溶融部23aは後者の溶融部24aよりも大きく形成される。第1の突起部23においては、フィルター21の内部に入りきれない樹脂がフィルター21の下面にはみ出す程度にまで溶融し、第1の突起部23とフィルター21との溶着面積が大きく形成される。従って、フィルター21と第1の突起部23との溶着強度は確保される。
【0066】
第1の突起部23における溶融から遅れて、第2の突起部24も溶融を開始する。第2の突起部24における溶融部24aがフィルター21内部に入り込む量だけ溶融して、フィルター21の下面からはみ出ないように、フィルター21の段差が形成されている。そのため、第2の突起部24の溶融部24aがフィルター21からはみ出ない程度に溶融し、その溶融部24aからバリやフィラー材が発生しない。
【0067】
また、第2の突起部24の溶融部24aがフィルター21の内部にまで到達しているため、第1の突起部23からのバリや浮き出たフィラー材は、第2の突起部24によって遮断される。
【0068】
また、予め高さ検知装置によって取得した第2の突起部24の高さ及びフィルター21の厚さを基に、前述した溶着完了位置を設定することにより、第2の突起部24における溶融高さHを定める。その溶融高さHは、フィルター固定部22に含まれるフィラー材の長手方向の長さ(例えば、約100μm)よりも少ない大きさ(例えば、約50μm)とする。こうすることで、第2の突起部24の溶融部24aからのフィラー材の脱落を防止することができる。
【0069】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態においては、フィルター5、12、21の材料としてSUS金属繊維焼結により形成されたものを用いたが、SUS金属メッシュにより形成されたものであってもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、第2の突起部7、15、24の高さおよびフィルター5、12、21の厚さを高さ検出装置によって検知したが、フィルター5、12、21の厚さを予め測定しておき、その値を用いてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態においては、三色のカラーインクを用いたカラープリンタにおけるインクジェット記録ヘッドについて述べたが、単色のプリンタにおけるインクジェット記録ヘッドであってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態における記録ヘッドは、インクタンクと一体となってインクジェットカートリッジを構成するものについて述べたが、本発明はこれに限定されることはない。本発明は、例えば、記録ヘッドを持たないインクタンク単独のもの、及びインクタンクを持たない記録ヘッド単独のものにも適用可能である。
【0073】
また、第1、第2の突起部は、インク流路の周囲に位置するように環状に形成されていれば良く、その形状は円環状のみに特定されない。また、第1の突起部は必ずしも環状である必要はない。
【0074】
また、本発明は流体の流路中にフィルターが取り付けられるものであればプリンタ以外の機器にも適用することができ、例えば、薬液を扱う装置や食品を製造する装置なども適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおける構成部材の一部の外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿うフィルター固定部におけるフィルター固定前の断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、図2のフィルター固定部に対してフィルターを固定する工程の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図5】図4のフィルター固定部における突起部の拡大断面図である。
【図6】図4のフィルター固定部におけるフィルター固定後の溶着部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図8】図7のフィルター固定部におけるフィルター固定後の溶着部の拡大断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを上方から見た外観斜視図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドを下方から見た外観斜視図である。
【図11】図9のインクジェット記録ヘッドの下側部分の分解斜視図である。
【図12】図9のインクジェット記録ヘッドの上側部分の分解斜視図である。
【図13】図9のインクジェット記録ヘッドにおける記録素子基板の一部を破断した斜視図である。
【図14】従来のインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図15】図14のフィルター固定部のフィルター固定後の断面図である。
【図16】従来の他のインクジェット記録ヘッドにおけるフィルター固定部のフィルター固定前の断面図である。
【図17】図16のフィルター固定部のフィルター固定後の断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェット記録ヘッド
2a,2b,2c インク収納部
3、13、22 フィルター固定部
4、11、20 熱融着ホーン
5、12、21 フィルター
6、14、23 第1の突起部
6a 第1の先端部
7、15、24 第2の突起部
7a 第2の先端部
8、17、26 インク流路
9、18、27 インク供給口
10 高さ検知装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられた記録ヘッドにおいて、
前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、
前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2の突起部における溶融前の高さが前記第1の突起部における溶融前の高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記第2の突起部の幅が前記第1の突起部の幅よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記フィルターは、前記第1の突起部に接する部分と前記第2の突起部に接する部分とが段差を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部における第2の先端部が溶融して前記フィルターの内部に入り込む長さは、前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部の幅は前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項7】
インクを収容するインクタンクと一体に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項8】
インクを吐出可能なノズルを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項9】
インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられたインクタンクにおいて、
前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、
前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項10】
前記第2の突起部における溶融前の高さが前記第1の突起部における溶融前の高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項9に記載のインクタンク。
【請求項11】
前記第2の突起部の幅が前記第1の突起部の幅よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載のインクタンク。
【請求項12】
前記フィルターは、前記第1の突起部に接する部分と前記第2の突起部に接する部分とが段差を形成することを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項13】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部における第2の先端部が溶融して前記フィルターの内部に入り込む長さは、前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項14】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部の幅は前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項15】
インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定される記録ヘッドの製造方法において、
前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、
前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とする記録ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記フィルターを前記フィルター固定部に溶着させる際に、前記フィルターの高さを検知し、前記フィルターの高さデータから前記第1の突起部および前記第2の突起部を一定量だけ溶融させるように前記フィルターを前記フィルター固定部に押し込むことを特徴とする請求項15に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、前記第2の突起部の高さに対応する量だけ前記フィルターを前記第1及び第2の突起部に押し付けることを特徴とする請求項15または16に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、熱溶着ホーンによって前記フィルターを熱した状態に保持したまま、前記フィルターを前記第1の突起部および前記第2の突起部に押し当てることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項19】
インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定されるインクタンクの製造方法において、
前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、
前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とするインクタンクの製造方法。
【請求項20】
前記フィルターを前記フィルター固定部に溶着させる際に、前記フィルターの高さを検知し、前記フィルターの高さデータから前記第1の突起部および前記第2の突起部を一定量だけ溶融させるように前記フィルターを前記フィルター固定部に押し込むことを特徴とする請求項19に記載のインクタンクの製造方法。
【請求項21】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、前記第2の突起部の高さに対応する量だけ前記フィルターを前記第1及び第2の突起部に押し付けることを特徴とする請求項19または20に記載のインクタンクの製造方法。
【請求項22】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、熱溶着ホーンによって前記フィルターを熱した状態に保持したまま、前記フィルターを前記第1の突起部および前記第2の突起部に押し当てることを特徴とする請求項19から21のいずれかに記載のインクタンクの製造方法。
【請求項1】
インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられた記録ヘッドにおいて、
前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、
前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
前記第2の突起部における溶融前の高さが前記第1の突起部における溶融前の高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記第2の突起部の幅が前記第1の突起部の幅よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記フィルターは、前記第1の突起部に接する部分と前記第2の突起部に接する部分とが段差を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部における第2の先端部が溶融して前記フィルターの内部に入り込む長さは、前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部の幅は前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項7】
インクを収容するインクタンクと一体に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項8】
インクを吐出可能なノズルを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項9】
インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターを固定するためのフィルター固定部が設けられたインクタンクにおいて、
前記フィルター固定部に、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を設け、
前記第1の突起部は、熱により溶融して前記フィルターを固定する第1の先端部を有し、前記第2の突起部は、熱により溶融して前記フィルターに入り込みかつ溶融量が前記第1の先端部よりも少ない第2の先端部を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項10】
前記第2の突起部における溶融前の高さが前記第1の突起部における溶融前の高さよりも低く形成されていることを特徴とする請求項9に記載のインクタンク。
【請求項11】
前記第2の突起部の幅が前記第1の突起部の幅よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載のインクタンク。
【請求項12】
前記フィルターは、前記第1の突起部に接する部分と前記第2の突起部に接する部分とが段差を形成することを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項13】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部における第2の先端部が溶融して前記フィルターの内部に入り込む長さは、前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項14】
前記第1の突起部と前記第2の突起部とはフィラー材が添加されている樹脂からなり、前記第2の突起部の幅は前記フィラー材の長手方向の長さより小さいことを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のインクタンク。
【請求項15】
インク供給口から供給されるインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定される記録ヘッドの製造方法において、
前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、
前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とする記録ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記フィルターを前記フィルター固定部に溶着させる際に、前記フィルターの高さを検知し、前記フィルターの高さデータから前記第1の突起部および前記第2の突起部を一定量だけ溶融させるように前記フィルターを前記フィルター固定部に押し込むことを特徴とする請求項15に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、前記第2の突起部の高さに対応する量だけ前記フィルターを前記第1及び第2の突起部に押し付けることを特徴とする請求項15または16に記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、熱溶着ホーンによって前記フィルターを熱した状態に保持したまま、前記フィルターを前記第1の突起部および前記第2の突起部に押し当てることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の記録ヘッドの製造方法。
【請求項19】
インク供給口から供給するインクの流路中にフィルターを介在させるように、前記フィルターがフィルター固定部に固定されるインクタンクの製造方法において、
前記固定部は、前記流路の周囲に位置する第1の突起部と、前記流路の周囲に位置しかつ前記第1の突起部の内側に位置する環状の第2の突起部と、を有し、
前記フィルターを固定する際に、前記フィルターを加熱して前記第1及び第2の突起部の先端部に押し付けることにより、前記第1の突起部の先端部を溶融させて前記フィルターに溶着させ、かつ前記第2の突起部の先端部を前記第1の突起部の先端部よりも少ない量だけ溶融させて前記フィルターに入り込ませることを特徴とするインクタンクの製造方法。
【請求項20】
前記フィルターを前記フィルター固定部に溶着させる際に、前記フィルターの高さを検知し、前記フィルターの高さデータから前記第1の突起部および前記第2の突起部を一定量だけ溶融させるように前記フィルターを前記フィルター固定部に押し込むことを特徴とする請求項19に記載のインクタンクの製造方法。
【請求項21】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、前記第2の突起部の高さに対応する量だけ前記フィルターを前記第1及び第2の突起部に押し付けることを特徴とする請求項19または20に記載のインクタンクの製造方法。
【請求項22】
前記フィルターを前記フィルター固定部に固定する際に、熱溶着ホーンによって前記フィルターを熱した状態に保持したまま、前記フィルターを前記第1の突起部および前記第2の突起部に押し当てることを特徴とする請求項19から21のいずれかに記載のインクタンクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−144863(P2007−144863A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344010(P2005−344010)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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