説明

記録ヘッド及び情報記録再生装置

【課題】 円滑な姿勢変化により記録媒体上を安定して浮上することができると共に、姿勢変化に影響されずに光束を安定して導光でき確実な記録、再生を行うこと。
【解決手段】 導入された光束を集光して生成したスポット光を利用して一定方向に回転する記録媒体に情報を記録再生する記録ヘッドであって、記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、スポット光を記録媒体に対向する対向面24a側に生成するスポット光生成手段21を有するヘッド本体20と、導光部ホルダを介してヘッド本体に挿着され、光束をスポット光生成手段に導入させる導光部4と、導光部と導光部ホルダ内壁との間に介在された流体Wと、を備え、流体は導光部ホルダ内部を満たしていることを特徴とする記録ヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する磁気記録媒体上を浮上した状態で、導光された光を利用しながら各種の情報を記録する記録ヘッド及び該記録ヘッドを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会における画像・動画情報の急激な増加に対応するため、情報記録再生装置の大容量化、小型化が進められている。このうち、光を利用した情報記録再生装置に関しては、記録密度が光波長に依存するため、短い波長の光を用いることで高密度化が図られてきた。ところが、波長を短くすることには限界があるため、波長に依存しない記録密度の実現が以前から模索されてきていた。これを実現する方法の1つとして、近接場光を用いることで、光の回折限界を超える微小スポットに光エネルギーを局在化させる技術が注目されている。
【0003】
特に、磁気を利用した情報記録再生装置においては、磁気記録媒体表面の微小領域を分離して磁化することが重要であるが、微小領域のみに近接場光を照射することで磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式(近接場光アシスト磁気記録方式)が、次世代の記録再生原理の有力候補と見られている。
【0004】
このハイブリッド磁気記録方式を採用することで、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域に光スポットを局在化させることが可能となるので、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。この点において、上述したように次世代技術として注目を集めている。
【0005】
なお、近接場光は、近接場光発生素子によって発生されるものである。この近接場光発生素子は、例えば、光の波長以下のサイズに形成され、光の回折限界を超えた光学的微小開口や、先鋭化させた金属膜等により構成されるものである。そして、微小開口に光を照射することで開口先端から近接場光を発生させたり、金属膜の先端に光を照射することで近接場光を発生させたりしている。
【0006】
ところで、近接場光は、近接場光発生素子から数nm〜数十nm程度の微小領域に存在するものであり、伝播はしない。また、近接場光発生素子からの距離に依存して急激に減衰する特徴を有している。そのため、近接場光により回折限界を超える微小スポットを発生させ、該微小スポットを高密度記録化に利用するためには、近接場光発生素子を磁気記録媒体の表面から数nm〜数十nm程度の距離まで近接させる必要がある。
【0007】
一方、磁気記録装置における磁気ヘッドは、高密度記録を実現するため、磁気記録媒体の表面から所定距離(例えば、10nm程度)浮上した状態で動作するようになっている。そこで、この磁気ヘッドに上述した近接場光発生素子を組み合わせることで、上述した要求を満たすことができる。つまり、浮上する磁気ヘッドに近接場光発生素子を組み込むことで、磁気記録媒体の表面近傍に近接場光発生素子を位置させることが可能とされている。そのため、光スポットを局在化させた微小スポット(微小熱源)を利用して高密度記録化を実現することができる。
【0008】
ところで、上述した浮上技術と近接場光発生素子とを組み合わせたヘッドが既にいくつか知られている。
【0009】
その1つとして、浮上ヘッドに設けられた光学的微小開口に光を照射することで近接場光を発生させ、該近接場光を利用して情報の記録再生を行うヘッドが知られている(特許文献1参照)。このヘッドは、浮上ヘッドに接着固定された光ファイバによって、光を導光している。
【0010】
また、浮上ヘッドに設けられた金属膜(光散乱体)に光を照射することで金属膜先端に強く局在化した近接場光を発生させ、該近接場光を利用して情報の記録再生を行うヘッドも知られている(特許文献2参照)。このヘッドは、光を空中伝播させることで、光を導光している。更に、浮上ヘッドに設けられたレンズ等の光学部品で光を集光して近接場光を発生させ、該近接場光を利用して情報の記録再生を行うヘッドも知られている(特許文献3参照)このヘッドに関しても、光を空中伝播させることで、光を導光している。
【特許文献1】国際公開第00/28536号パンフレット
【特許文献2】特開2005−4901号公報
【特許文献3】特開2004−87065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来のヘッドには、まだ以下の課題が残されていた。
【0012】
始めに、回転する記録媒体上を微小な間隔を空けて浮上するヘッドには、安定した記録を行うために、常に安定した姿勢で浮上することが要求される。そのため、ヘッドを支持する構造や記録媒体に対向する面、即ちABS(Air Bearing Surface)等に工夫を凝らし、記録媒体が面振れを起こしたとしても、これに追従して姿勢が変化して安定浮上を行えるように設計がなされている。
【0013】
一方、近接場光等の光を利用して安定した記録を行うためには、常に安定してヘッドに導光することが要求される。
【0014】
このように、光を利用した浮上ヘッドに関しては、安定浮上と安定導光という2つの要求が両立することが望まれる。しかしながら、上述した従来のヘッドでは、この2つの要求を両立することが困難なものであった。
【0015】
即ち、特許文献1に記載されているヘッドは、接着剤等を利用して光ファイバを浮上ヘッドに強固に固定している。そのため、安定して浮上ヘッドに導光する点においては、優れている。しかしながら、浮上ヘッドに光ファイバが固定されているので、該光ファイバが突っ張る等して浮上ヘッドの姿勢変化を阻害する可能性があった。そのため、浮上ヘッドが記録媒体の面振れ等に追従して動き難く、安定浮上という点では劣ってしまうものであった。
【0016】
また、特許文献2及び3に記載されているヘッドは、光ファイバ等を使用しないため、安定浮上という点では優れている。しかしながら、光ファイバ等のように直接光を導光する場合とは異なり、空中伝播させることで導光させている。そのため、安定して導光することが難しいものであった。特に、ヘッドが姿勢変化した場合には、光を入射させるポイントがずれてしまうので、安定した導光がより困難になるものであった。
【0017】
加えて、ヘッドの周辺(上方等)にレンズやミラー等の光学部品や光源等を配置させる必要があるので、コンパクトに設計できず、小型化を図ることが困難であった。そのため、このヘッドを有する情報記録再生装置を設計する際に、ヘッドの分で設計スペースが取られてしまい、記録媒体を複数枚備えた構成にすることが難しいものであった。
【0018】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、円滑な姿勢変化により記録媒体上を安定して浮上することができると共に、姿勢変化に影響されずに光束を安定して導光でき確実な記録、再生を行うことができる記録ヘッド及び該記録ヘッドを有する情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0020】
本発明に係る記録ヘッドは、導入された光束を集光して生成したスポット光を利用して一定方向に回転する記録媒体に情報を記録再生する記録ヘッドであって、記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、スポット光を記録媒体に対向する対向面側に生成するスポット光生成手段を有するヘッド本体と、導光部ホルダを介してヘッド本体に挿着され、光束をスポット光生成手段に導入させる導光部と、導光部と導光部ホルダ内壁との間に介在された流体とを備え、流体は導光部ホルダ内部を満たしていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、ヘッド本体が、一定方向に回転している記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置されている。ここで記録を行う場合には、導光部を介して光束をヘッド本体のスポット光生成手段に導入する。すると、スポット光生成手段は、導入された光束を集光してスポット光を生成する。しかも、記録媒体に対向する対向面側に生成する。記録媒体は、このスポット光によって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下、或いは、結晶構造が変化する。その結果、このスポット光を利用して記録媒体に各種の情報を記録、再生することができる。
【0022】
ところで、光束を導入する導光部は、導光部ホルダを介してヘッド本体に先端が挿着されている。しかも導光部は、従来の接着固定されたものとは異なり、導光部ホルダによって摺動可能に保持されている。そのため、記録媒体上を浮上しているヘッド本体は、導光部によって動きが妨げられることなく自由に動くことができる。つまり、従来のものは、光ファイバの突っ張り等によってヘッドの動きが阻害されてしまっていたが、上述したように導光部が摺動可能に保持されているので、ヘッド本体の動きが阻害される恐れがない。従って、回転している記録媒体が面振れを起こしたとしても、該面振れに追従してヘッド本体の姿勢を円滑に変えることができる。よって、ヘッド本体を安定浮上させることができる。
【0023】
しかも、導光部ホルダと導光部との間に流体が介在されているので、摩擦力を低減することができ、より円滑に導光部を摺動させることができる。従って、ヘッド本体をより滑らかに姿勢変化させることができ、追従性を向上してより安定した浮上を行わせることができる。加えて、導光部と導光部ホルダとの摩擦力が低減されるので、耐久性に関しても向上することができる。
【0024】
また、流体が導光部と導光部ホルダ内部を満たしているので、流体の移動(流動)を規制することができる。そのため、導光部が摺動したとしても、流体が流れて漏れてしまうことがなく、常に導光部と導光部ホルダとの間に介在させることができる。従って、上述した流体の効果を長期間に亘って維持することができ、信頼性の向上化を図ることができる。
【0025】
また、空中伝播させることなく、導光部を利用して直接ヘッド本体のスポット光生成手段に光束を導入しているので、ヘッド本体の姿勢が変化したとしても、安定に光束を導光することができる。しかも、上述したようにヘッド本体を記録媒体上に安定に浮上させているので、対向面と記録媒体との距離を決められた距離に制御し易い。そのため、生成したスポット光を記録媒体に対して確実に作用させることができる。従って、情報の記録再生を確実に行うことができる。
【0026】
また、光束を導入するにあたってヘッドの周辺に光学部品や光源等を配置していた従来のものとは異なり、導光部を利用して直接光束をヘッド本体のスポット光生成手段に導入している。従って、部品点数を抑えることができ、コンパクトな設計で小型化を図ることができる。
【0027】
また、流体は導光部ホルダ内部を満たしているので、導光部から出射した光がスポット光生成手段に到達するまでの光路にも介在するため、この流体の屈折率を調整することにより導光部からスポット光生成手段までの距離や光伝播効率を調整することが可能になるという、光学設計自由度を高めることができる。
【0028】
上述したように、本発明に係る記録ヘッドによれば、従来困難とされていた安定浮上と安定導光とを両立させることができる。その結果、円滑な姿勢変化により記録媒体上を安定して浮上することができると共に、姿勢変化に影響されずに光束を導光でき、確実な記録再生を行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る記録ヘッドは、上記本発明の記録ヘッドにおいて、導光部は記録媒体の表面に対して略平行な方向に延びるように配置された可撓性の導光部とされ、長手方向に沿って摺動するように導光部ホルダに保持されていることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、導光部ホルダが、記録媒体の表面に対して略平行な方向に延びるように配置された導光部を、該導光部の長手方向に沿って摺動可能に保持している。ここで、記録媒体の面振れの影響により、ヘッド本体が記録媒体の表面に垂直な軸回りに回転した場合(ヨー角運動)には、導光部はヘッド本体の姿勢変化に追従しようとするので、左右のいずれかに曲がり始める。しかしながら、導光部は可撓性であると共に、長手方向に摺動可能とされている。よって、導光部は、曲がりながら長手方向にずれることができるようになっている。従って、ヘッド本体は、導光部に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化することができる。
【0031】
また、面振れの影響により、ヘッド本体が記録媒体の表面に水平で且つ導光部の長手方向に直交する軸回りに回転した場合(ピッチ角運動)も同様に、導光部は上下のいずれかに曲がりながら長手方向にずれることができるようになっている。従って、ヘッド本体は、導光部に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化することができる。また、面振れの影響により、ヘッド本体が導光部の軸線回りに回転した場合(ロール角運動)した場合には、上述した場合とは異なり、導光部が曲がったりずれたりすることなく、ヘッド本体のみが回転動作する。よって、ヘッド本体は、やはり導光部に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化することができる。
【0032】
このようにヘッド本体は、いずれの場合であっても導光部に動きを阻害されることなく円滑に姿勢変化することができるので、安定浮上する。特に、導光部は、光束をスポット光生成手段に導入する方向と同じ方向である長手方向にずれるようになっている。そのため、ヘッド本体の姿勢がどのように変化したとしても、スポット光生成手段に対して常に同じ位置に光束を導入することができる。つまり、導光部から出射された光束がスポット光生成手段に達する距離が変化するだけで、導入ポイントがずれてしまうことがない。
【0033】
従って、ヘッド本体の姿勢が変化しても、同じ位置にスポット光を生成することができる。但し、導光部とスポット光生成手段との距離が変化するので、スポットサイズが変化してしまい、スポット光がぼやける(大きくなる)。しかしながら、上述したようにスポット光の位置自体は変化しないので、スポット光のピーク位置を同じ位置にすることができ、光効率の低減を最少限に抑えることができる。従って、光束を無駄なく集光してスポット光にでき、安定した記録再生を行うことができる。
【0034】
また、本発明に係る記録ヘッドは、上記本発明の記録ヘッドにおいて、導光部が、光ファイバ又は光導波路であることを特徴とするものである。
【0035】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、特殊なものではなく、安価で一般的に使用されている光ファイバ又は光導波路を導光部として利用できるので、低コスト化及び設計の簡略化を図ることができる。
【0036】
また、本発明に係る記録ヘッドは、上記本発明の記録ヘッドにおいて、導光部ホルダが、ヘッド本体に形成され、導光部の少なくとも一部が接触する溝部であることを特徴とするものである。
【0037】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、導光部が溝部内に嵌り込んで少なくとも一部が該溝部に接触した状態となっている。よって、導光部は、溝部に案内されながら該溝部に沿って安定に摺動動作する。特に、新たな部品を付加することなく、ヘッド本体に溝部を形成するだけで導光部ホルダを構成できるので、設計の簡略化を図ることができると共に小型化を図ることができる。
【0038】
また、本発明に係る記録ヘッドは、導光部が、導光部ホルダに対して先端から一定距離の範囲が非接触とされた状態で、導光部ホルダに摺動可能に保持されていることを特徴とするものである。
【0039】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、導光部の先端が導光部ホルダに接触しないことにより、導光部が導光部ホルダ内で摺動しても、導光部の先端が導光部ホルダ内で引っ掛かることはないため、ヘッド本体の姿勢を円滑に変えることができる。
【0040】
また、本発明に係る記録ヘッドは、導光部ホルダが、導光部から出射された光束を集光する集光部を備え、流体が、光束が前記導光部から出射されてから集光部に集光されるまでの光束の通過部分に備えられていることを特徴とするものである。
【0041】
この発明に係る記録ヘッドにおいては、導光部から出射した光が集光部に到達するまでの光路に存在するため、この流体の屈折率を調整することにより導光部から集光部までの距離や光伝播効率を調整することができ、光学設計自由度を高めることができる。
【0042】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明の記録ヘッドと、記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回り及び記録媒体の表面に垂直な垂直軸回りに回動自在な状態で記録ヘッドを先端側で支持するビームと、導光部に対して光束を入射させる光源と、ビームの基端側を支持すると共に、ビームを記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、記記録媒体を一定方向に回転させる回転駆動部と、記録する情報に応じて光源の作動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0043】
この発明に係る情報記録再生装置においては、回転駆動部により記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりビームを移動させて記録ヘッドをスキャンさせる。そして、記録ヘッドを記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際、記録ヘッドは、記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回り及び垂直軸回りに回動自在な状態、即ち、2軸及び垂直軸を中心として捻れることができるようにビームに支持されている。よって、記録媒体にうねり(面振れ)が生じたとしても、うねりに起因する風圧変化、又は、直接伝わってくるうねりの変化を捩じりによって吸収でき、記録ヘッドの姿勢を安定にすることができる。
【0044】
その後、制御部は光源を作動させる。これにより記録ヘッドは、スポット光を利用して記録媒体に情報の記録、再生を行うことができる。特に、上述した記録ヘッドを備えているので、記録媒体の面振れ等に影響されずに安定した記録、再生を行うことができ、高品質化を図ることができる。また、記録ヘッドは、コンパクトな設計で小型化が図られているので、情報記録再生装置自体の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る記録ヘッドによれば、円滑な姿勢変化により記録媒体上を安定して浮上することができると共に、姿勢変化に影響されずに光束を導光でき、確実な記録再生を行うことができる。
【0046】
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、上述した記録ヘッドを備えているので、記録媒体の面振れ等に影響されずに安定した記録、再生を行うことができ、高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図18を参照して説明する。
【0048】
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、記録ヘッド2と、ディスクD(記録媒体)の表面に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスクDの表面に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回り及びディスクD表面に垂直な垂直軸(Z軸)回りに回動自在な状態で記録ヘッド2を先端側で支持するビーム3と、光導波路(導光部)4の基端側から該光導波路4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、ビーム3の基端側を支持すると共に、該ビーム3をディスクD面に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、記録する情報に応じて光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0049】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にビーム3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びビーム3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY軸方向に移動可能とされている。
【0050】
なお、キャリッジ11及びビーム3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、記録ヘッド2とビーム3とで、サスペンション12を構成している。また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0051】
上記記録ヘッド2は、導入された光束Lを集光して生成したスポット光Sを利用して、回転するディスクDに各種の情報を記録再生するものである。この記録ヘッド2は、図2から図5に示すように、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態でディスクDに対向配置され、ディスク面D1に対向する対向面24aを有するヘッド本体20と、該ヘッド本体20に形成され、導入された光束Lからスポット光Sを生成して対向面24a側に発生させるポット光生成手段21と、溝部23aを介してヘッド本体20に先端が挿着され、光束Lをスポット光生成手段21に導入させる光導波路4と、溝部23aと光導波路4との間に介在された潤滑油(流体)Wと、潤滑油Wの移動を規制して光導波路4と溝部との間に潤滑油Wを介在させ続ける凹部23cと、を備えている。凹部23cはヘッド本体20の光導波路4が挿入されている側面に形成されており、凹部23cの内部には潤滑油Wが満たされ、光導波路4はその潤滑油W中に配置されている。この潤滑油Wによって、光導波路4と溝部23aとの摩擦力は低減された状態となっている。
【0052】
本実施形態のヘッド本体20は、2枚の基板を張り合わせた構造となっている。即ち、ヘッド本体20は、互いに接着等で接合されたアーム側基板23と媒体側基板24とから構成されている。そして、ヘッド本体20は、対向面24aをディスクD側にした状態で、ジンバル部25を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部25は、X軸回り、Y軸回り及びZ軸回りに変位するように動きが規制された部品である。これによりヘッド本体20は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交するX軸、Y軸及びディスク面D1に垂直なZ軸回りに回動自在とされている。
【0053】
ヘッド本体20を構成するアーム側基板23は、例えば、厚さが200μm程度のSi基板であり、図6から図9に示すように、媒体側基板24に対向する面に、断面V字状の溝部23aが形成されている。この溝部23aは、アーム側基板23の一方の側面に露出するように形成されている。そして、光導波路4は、この溝部23aの内面に接触した状態で嵌り込んで、摺動可能に保持されるようになっている。つまり、この溝部23aは、導光部ホルダとして機能する。
【0054】
なお、各図において、潤滑油Wを見易くするため該潤滑油Wを適宜誇張して図示している。実際には、潤滑油Wの膜厚は僅かである。
【0055】
また、本実施形態のアーム側基板23には、この溝部23aに隣接してテーパ部23bが形成されている。このテーパ部23bは、光導波路4の先端側の端部に向かうにつれて、光導波路4との距離が漸次離間するように形成された傾斜面である。テーパ部23bが形成されているため、溝部23aに摺動可能に保持されている光導波路4の先端から一定距離の範囲は、宙に浮いた状態となって、溝部23a及びテーパ部23bに対して接触しないようになっている。
【0056】
ヘッド本体20を構成する媒体側基板24は、例えば、厚さが200μm程度の石英ガラス基板であり、図2から図5に示すように、ディスクD側の面が上記対向面24aとされている。この対向面24aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部24bが形成されている。本実施形態では、レール状に並ぶように、長手方向に沿って延びた凸条部24bを2つ形成している場合を例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、ヘッド本体20をディスク面D1から離そうとする正圧とヘッド本体20をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、ヘッド本体20を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部24bの表面はABS(Air Bearing Surface)と呼ばれている。
【0057】
ヘッド本体20は、この2つの凸条部24bによってディスク面D1から浮上する力を受けている。また、ビーム3は、ディスク面D1に垂直なZ方向に撓むようになっており、ヘッド本体20の浮上力を吸収している。つまり、ヘッド本体20は、浮上した際にビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。よってヘッド本体20は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。しかもヘッド本体20は、ジンバル部25によってX軸回り、Y軸回り及びZ軸回りに回動するようになっているので、常に姿勢が安定した状態で浮上するようになっている。
【0058】
なお、ディスクDの回転に伴って生じる空気流は、ヘッド本体20の流入端側(ビーム3の基端側)から流入した後、ABSに沿って流れ、流出端側(ビーム3の先端側)から抜けている。
【0059】
また、媒体側基板24には、図10に示すようにアーム側基板23に対向する面に直径が略80μm程度の非球面のマイクロレンズ26が形成されている。このマイクロレンズ26は、ミラー面23dで反射された光束Lを対向面24aに形成された後述するティップ27に向けて集光させるレンズである。そのため、マイクロレンズ26は、ティップ27に対向する位置に形成されている。
【0060】
また、媒体側基板24の対向面24aには、図2から図5に示すように、ティップ27が形成されている。このティップ27は、媒体側基板24と一体的に形成されたものであり、4つの側面27aと端面27bとで四角錐台形状の形成されている。具体的には、端面27bが平面視正方形状に形成されている。但し、端面27bは、正方形状に限定されるものではなく、平面視四角形状に形成されていれば構わない。例えば、長方形状、平行四辺形状や台形状であっても構わない。4つの側面27aは、端面27bに向かうにしたがって向かい合う側面27aとの間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。
【0061】
よって、マイクロレンズ26によって集光された光束Lがこのティップ27に入射すると、側面27aで反射を繰り返すことで徐々にスポットサイズが絞られて小さくなり、小さなスポットサイズとなったスポット光Sとして端面27bから外部に出射するようになっている。
【0062】
即ち、上述したミラー面23d、マイクロレンズ26及びティップ27は、上述したスポット光生成手段21として機能する。なおティップ27は、端面27bの対向面24aからの高さが凸条部24bの高さと同じになるように、高さ設計されている。
【0063】
また、端面27bを除くように、ティップ27の4つの側面27aから対向面24aに亘ってアルミニウム等の遮光膜28が成膜されている。これにより、ティップ27に入射した光束Lが端面27bに達する前に側面27aから外部に漏れることを防止している。これにより、光束Lを無駄なくスポット光Sにすることができ、損失をできるだけ抑えることができる。
【0064】
上記光導波路4は、ディスク面D1に対して略平行に伸びるように配置された可撓性のものであり、コアとクラッドとからなる導波路である。そして、コア内を光束Lが伝播するようになっている。この光導波路4は、図4及び図5に示すように、先端がアーム側基板23に形成された溝部23aに嵌り込んだ形で摺動可能に保持されている。しかも、光導波路4は、自身の長手方向に摺動できるように保持されている。また、光導波路4は、溝部23aに線接触した状態で保持されているので、長手方向以外の方向に動かないように規制されている。
【0065】
なお、光導波路4は、可撓性とはいえ自身の重みで容易に撓むほど軟性なものではないので、溝部23a内に嵌り込んだ形で安定し、媒体側基板24側に撓むことはない。よって、光導波路4は、溝部23aを介してヘッド本体20に挿着された状態となっている。
【0066】
また、光導波路4の基端側は、ビーム3及びキャリッジ11等を介して光信号コントローラ5に接続されている。このように配置された光導波路4からヘッド本体20内に導かれた光束Lは、アーム側基板23のミラー面23dに当たって反射した後、媒体側基板24のマイクロレンズ26に入射する。そして、該マイクロレンズ26によって集光されながら媒体側基板24の内部を対向面24aに向かって進み、ティップ27に入射する。そして、該ティップ27によってスポットサイズが絞られることで、スポット光Sとして外部に出射するようになっている。
【0067】
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
【0068】
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に記録ヘッド2を位置させることができる。この際、記録ヘッド2は、ヘッド本体20の対向面24aに形成された2つの凸条部24bによって浮上する力を受けると共に、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。記録ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H(例えば、数nm〜数十nm)離間した位置に浮上する。
【0069】
また、記録ヘッド2は、ディスクDのうねり(面振れ)に起因して発生する風圧を受けたとしても、ビーム3によってZ方向の変位が吸収されると共に、ジンバル部25によってX軸、Y軸、Z軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、記録ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。なお、この浮上に関しては、後に詳細に説明する。
【0070】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部8は光信号コントローラ5を作動させる。すると光信号コントローラ5は、制御部8からの指示を受けて光束Lを光導波路4の基端側から入射させる。入射した光束Lは、光導波路4のコア内を先端側に向かって進み、図4に示すように、ヘッド本体20に形成されたスポット光生成手段21を構成するアーム側基板23のミラー面23dに導入される。すると、導入された光束Lは、ミラー面23dで反射されて向きが変わった後、媒体側基板24のマイクロレンズ26に入射する。マイクロレンズ26に入射した光束Lは、該マイクロレンズ26によって集光されながら媒体側基板24の内部を対向面24a側に形成されたティップ27に向かって進む。そして、ティップ27に達した光束Lは、4つの側面27aで反射を繰り返しながら端面27bに向かって伝播する。この際、光束Lは、端面27bに向かうにしたがって徐々にスポットサイズが小さくなる。そして、スポットサイズが小さくなったスポット光Sとして、端面27b側からディスクDに向かって出射する。
【0071】
このように、スポット光生成手段21によって光導波路4から導入された光束Lを集光してスポット光Sを対向面24a側に生成することができる。しかも、ティップ27の4つの側面27aには、遮光膜28が形成されているので、光束Lを無駄に損失させることなく効率良くスポット光Sにすることができる。
【0072】
一方、ディスクDは、スポット光Sによって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下、或いは、結晶構造が変化する。その結果、このスポット光Sを利用して、ディスクDに各種の情報を記録、再生することができる。なお、記録を再生する場合には、ディスクDからの光の反射率の差を検出することで、再生を行うことができる。
【0073】
ところで、光束Lを導入する光導波路4は、導光部ホルダとして機能する溝部23aを介してヘッド本体20に先端が挿着されている。しかも光導波路4は、従来の接着固定されたものとは異なり、摺動可能に保持されている。そのため、ディスクD上を浮上しているヘッド本体20は、光導波路4によって動きが妨げられることなく自由に動くことができる。つまり、従来のものは、光ファイバ等の突っ張り等によってヘッドの動きが阻害されてしまっていたが、上述したように光導波路4が摺動可能に保持されているので、ヘッド本体20の動きが阻害される恐れがない。従って、回転しているディスクDが面振れを起こしたとしても、該面振れによってヘッド本体20の姿勢を円滑に変えることができる。よって、ヘッド本体20を安定浮上させることができる。
【0074】
この安定浮上について、より詳細に説明する。
【0075】
本実施形態では、ディスク面D1に対して略平行に配置された光導波路4を、光導波路4の長手方向に沿って摺動可能に保持している。ここで、ディスクDの面振れの影響により、ヘッド本体20が図11に示す状態から、図12及び図13に示すようにディスク面D1に垂直なZ軸回りに回転した場合(ヨー角運動)には、光導波路4はヘッド本体20の姿勢変化に追従しようとするので、左右(紙面における上下方向)のいずれかに曲がり始める。しかしながら、この光導波路4は可撓性であると共に、長手方向に摺動可能とされている。よって、光導波路4は、曲がりながら長手方向(紙面における右方向)にずれることができるようになっている。従って、ヘッド本体20は、光導波路4に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化することができる。
【0076】
また、面振れの影響により、ヘッド本体20が図14及び図15に示すように、X軸(ディスク面D1に水平かつ、光導波路4の軸線に沿ったY軸に直交する方向)回りに回転した場合(ピッチ角運動)も同様に、光導波路4は上下(紙面における上下方向)のいずれかに曲がりながら長手方向(紙面における右方向)にずれることができるようになっている。従って、ヘッド本体20は、やはり光導波路4に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化するようになっている。
【0077】
なお、面振れの影響により、ヘッド本体20が光導波路4の軸線に沿ったY軸回りに回転した場合(ロール角運動)には、図16及び図17に示すように、上述した場合とは異なり、光導波路4が曲がったりずれたりすることなく、ヘッド本体20のみが回転運動する。よって、ヘッド本体20は、やはり光導波路4に何ら動きを阻害されることなく、姿勢変化することができる。
【0078】
このようにヘッド本体20は、いずれの場合であっても光導波路4に動きを阻害されることなく円滑に姿勢変化することができるので、安定浮上することができる。
【0079】
特に、凹部23cには潤滑油Wが満たされ、光導波路4がその中に配置されているので、光導波路4がヘッド本体20に対して相対的に摺動するときにその摩擦力が低減されており、より円滑に光導波路4を摺動させることができる。従って、ヘッド本体20をより滑らかに姿勢変化させることができ、追従性を向上してより安定した浮上を実現することができる。
【0080】
更に、本実施形態では、光導波路4の先端から一定距離の範囲が宙に浮いており、溝部23a及びテーパ部23bに対して非接触とされた状態で保持されている。そのため、摺動始め或いは摺動中に、光導波路4の先端部が溝部23aやテーパ部23bに接触することがない。この先端部は、物理的な設計上、外縁となる部分であるので、他の部分に比べて接触領域が大きい。そのため、この先端部が溝部23aやテーパ部23bに接触する場合には、全体の摩擦抵抗が大きくなってしまい、摺動させ難くなってしまう。
【0081】
しかしながら、上述したように光導波路4の先端から一定距離の範囲が非接触であるので、引っかかり等なく、円滑に光導波路4を摺動させることができる。この点においても、ヘッド本体20を安定して浮上させることができる。
【0082】
また、凹部23cはヘッド本体20の光導波路4が挿入されている面にのみ開口を持っており、潤滑油Wを含んだ袋状になっている。その結果、情報記録再生装置1が転倒などにより衝撃を受けた場合でも、潤滑油Wが漏れ出ることはなく安定して凹部23c内に保持される。これにより長期間にわたって安定した情報記録再生が可能となる。
【0083】
しかも光導波路4は、光束Lをミラー面23dに導入する方向と同じ方向である長手方向にずれるようになっている。そのため、ヘッド本体20の姿勢がどのように変化したとしても、スポット光生成手段21を構成するミラー面23dに対して常に同じ位置に光束Lを導入することができる。つまり、ミラー面23dと光導波路4との距離が変化するだけ(即ち、光導波路4から出射された光束Lがミラー面23dに達する距離が変化)するだけで、導入ポイントがずれてしまうことがない。
【0084】
従って、ヘッド本体20の姿勢が変化しても、同じ位置にスポット光Sを生成することができる。但し、光導波路4とミラー面23dとの距離が変化するので、光の拡散によりスポットサイズが変化してしまい、生成されたスポット光Sはぼやけてしまう(スポットサイズが大きくなってしまう)。しかしながら、上述したようにスポット光Sの位置自体は変化しないので、スポット光Sのピーク位置を同じ位置にすることができ、光効率の低減を最少限に抑えることができる。従って、光束Lを無駄なく集光してスポット光Sにでき、安定した記録再生を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の記録ヘッド2は、空中伝播させることなく、光導波路4を利用して直接ヘッド本体20に光束Lを導入しているので、ヘッド本体20の姿勢が変化したとしても、安定に光束Lを導光することができる。しかも、上述したようにヘッド本体20をディスクD上に安定に浮上させているので、対向面24aとディスク面D1との距離を決められた距離Hに制御し易い。そのため、生成したスポット光SをディスクDに対して確実に作用させることができる。
【0086】
また、光導波路4の光出射面をレンズ状に加工したものを用いることにより、光導波路4からの出射光を平行光にすることも容易にできる。このようにした場合には光導波路4が長手方向にずれたとしてもミラー面23dに照射されるスポットサイズに影響が無く、結果としてスポット光Sのサイズおよび効率にも影響が出ない。これにより、安定導光を維持したままで安定浮上を実現した。
【0087】
また、光束Lをヘッド本体20に導入するにあたって、ヘッドの周辺に光学部品や光源等を配置していた従来のものとは異なり、記録ヘッド2は光導波路4を利用して直接光束Lをヘッド本体2のミラー面23dに導入している。従って、部品点数を最少限に抑えることができ、コンパクトな設計で小型化を図ることができる。
【0088】
上述したように、本実施形態の記録ヘッド2によれば、従来困難とされていた安定浮上と安定導光とを両立させることができる。その結果、円滑な姿勢変化によりディスクD上を安定して浮上することができると共に、姿勢変化に影響されずに光束Lを導光でき、確実な記録再生を行うことができる。
【0089】
また、安価で一般的に使用されている光導波路4を利用しているので、低コスト化及び設計の簡略化を図ることができる。また、ヘッド本体20に新たな部品を付加することなく、溝部23aを形成するだけで導光部ホルダを構成できるので、小型化を図ることができると共に、この点においても設計の簡略化を図ることができる。特に、光導波路4は、溝部23aに案内されるので、安定した摺動動作を行わせることができる。
【0090】
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、上記記録ヘッド2を備えているので、ディスクDの面振れ等に影響されずに安定した記録再生を行うことができ、高品質化を図ることができる。また、記録ヘッド2は、コンパクトな設計で小型化が図られているので、情報記録再生装置1自体の小型化を図ることができる。
【0091】
なお、上記第1実施形態において、溝部23aを断面V字状に形成したが、この形状に限定されるものではない、例えば、光導波路4の曲面に合わせてU字状に形成しても構わない。また、光導波路4ではなく、光ファイバを用いても構わない。
【0092】
また、上記第1実施形態では、テーパ部23bを、光束Lが出射される側(光導波路4の先端側)に形成したが、図18に示すように、光束Lが入射される側(光導波路4の基端側)にも形成して構わない。つまり、溝部23aの両側に隣接するようにテーパ部23bを形成しても構わない。こうすることで、光導波路4の低摩擦による摺動と潤滑油Wの漏れ防止を両立できるので、より好ましい。なお、光束Lが入射させる側のテーパ部23bは、光導波路4の基端側の端部に向かうにつれて光導波路4との距離が漸次離間するように形成された傾斜面であり、ダイシング等で切断するだけで、容易に作製することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図19を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0093】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、アーム側基板23に形成された溝部23aで光導波路4を摺動可能に保持したが、第2実施形態では、凹部42を利用して光導波路4を摺動可能に保持している点と、ヘッド本体41が1枚の基板をくり抜かれた形でできている点である。
【0094】
即ち、本実施形態の記録ヘッド40は、図19に示すように凹部42が形成されたヘッド本体41を備えている。この凹部42は、ヘッド本体41の一方の側面に露出するように光導波路4の長手方向に沿って形成されている。
【0095】
この凹部42は、光導波路4の径よりも若干大きいサイズで形成されている。そして、光導波路4は、凹部42内を貫通した状態で摺動可能に保持されている。よって、本実施形態では、この凹部42が導光部ホルダとして機能する。なお、凹部42は内部に潤滑油Wが満たされており、凹部42内壁と光導波路4との間には潤滑油Wが介在された状態となっている。凹部42はヘッド本体41のうちの一つの側面にのみ外部に開放されているので、その中に満たされた潤滑油Wは外部からの衝撃を受けた場合にも漏れ出ることが無い。また、ヘッド本体41は1枚の基板から成っているので薄型にできることでコンパクトな情報記録再生装置を実現する上に、安価に製造することもできる。なお、その他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
(実施の形態3)
なお、導光部ホルダは、光導波路4を摺動可能に保持するものであり、第1実施形態では、溝部23a、テーパ部23b、凹部23c、ミラー面23d、及びそれらと向い合う面により構成される筒状空間を備えるが、これに限定されないのは勿論のことである。具体的には、導光部ホルダは、2つの基板(アーム側基板23及び媒体側基板)により形成された筒状空間を備えていてもよいし、単一の基板に形成された筒状空間を備えていてもよいし、基板以外のものであり筒状空間を有する容器であってもよい。
【0096】
本発明に係る第3実施形態を、図20を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0097】
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、アーム側基板23に形成された溝部23aで光導波路4を摺動可能に保持したが、第3実施形態では、凹部52を利用して光導波路4を摺動可能に保持している点と、ヘッド本体51が1枚の基板をくり抜かれた形でできている点と、凹部52を持つ導光部ホルダ53がヘッド本体51とは別体でヘッド本体51に接着固定されている点である。
【0098】
このような構造を持つ記録ヘッド50は各部品を低コストで容易に作製することができ、光アライメントを行いながら組み立てることができるため光効率が最大になるように微調整されたヘッドを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示す図であって、情報記録再生装置の構成図である。
【図2】図1に示す情報記録再生装置を構成する記録ヘッドの拡大側面図である。
【図3】図2に示す記録ヘッドをディスク側から見た図である。
【図4】図2に示す記録ヘッドの断面図である
【図5】図4に示す記録ヘッドの断面矢視A−A図である。
【図6】図2に示す記録ヘッドのヘッド本体を構成するアーム側基板の斜視図であって、光導波路が溝部に挿着された状態を示す図である。
【図7】図6に示すアーム側基板を、光導波路の軸線に沿って切断した断面図である。
【図8】図7に示すアーム側基板を矢印B方向から見た断面図である。
【図9】図8に示す点線枠内の拡大図である。
【図10】図2に示す記録ヘッドのヘッド本体を構成する媒体側基板の斜視図である。
【図11】図2に示すヘッド本体の姿勢と光導波路との関係を説明するための図であって、ヘッド本体が通常の姿勢をしているときに、アーム側基板を媒体側基板から見た図である。
【図12】図11に示す状態から、ディスクの面振れによりヘッド本体がディスク面に垂直な軸回りに回転した状態を示す図である。
【図13】図12とは反対方向にヘッド本体が回転した状態を示す図である。
【図14】図2に示すヘッド本体の姿勢と光導波路との関係を説明するための図であって、ディスクの面振れによりヘッド本体がディスク面に水平な軸回りに回転した状態を示す断面図である。
【図15】図14とは反対方向にヘッド本体が回転した状態を示す図である。
【図16】図2に示すヘッド本体の姿勢と光導波路との関係を説明するための図であって、ディスクの面振れによりヘッド本体が光導波路の軸線回りに回転した状態を示す断面図である。
【図17】図16とは反対方向にヘッド本体が回転した状態を示す図である。
【図18】第1実施形態の変形例を示す図であって、溝部の両側にテーパ部が形成されたアーム側基板の斜視図である。
【図19】第2実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図20】第3実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1 情報記録再生装置
2 記録ヘッド
3 ビーム
4 光導波路(導光部)
5 光信号コントローラ(光源)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
9 ハウジング
9a 凹部
10 軸受
11 キャリッジ
12 サスペンション
20 ヘッド本体
21 光生成手段
23 アーム側基板
23a 溝部(導光部ホルダ)
23b テーパ部
23c 凹部
23d ミラー面
24 媒体側基板
24a 対向面
24b 凸条部
25 ジンバル部
26 マイクロレンズ
27 ティップ
27a ティップ側面
27b ティップ端面
28 遮光膜
40 記録ヘッド
41 ヘッド本体
42 凹部
50 記録ヘッド
51 ヘッド本体
52 凹部
53 導光部ホルダ
D ディスク(記録媒体)
D1 ディスク表面
H ディスク表面とヘッドとの距離
L 光束

S スポット光
W 潤滑油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された光束を集光して生成したスポット光を利用して一定方向に回転する記録媒体に情報を記録再生する記録ヘッドであって、
前記記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、前記スポット光を記録媒体に対向する対向面側に生成するスポット光生成手段を有するヘッド本体と、
導光部ホルダを介して前記ヘッド本体に挿着され、前記光束を前記スポット光生成手段に導入させる導光部と、
該導光部と前記導光部ホルダ内壁との間に介在された流体と、を備え、
前記流体は前記導光部ホルダ内部を満たしていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記導光部は、前記記録媒体の表面に対して略平行な方向に延びるように配置された可撓性の導光部とされ、長手方向に沿って摺動するように前記導光部ホルダに保持されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記導光部は、光ファイバ又は光導波路であることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記導光部ホルダは、前記導光部の少なくとも一部が接触する溝部であることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記導光部は、前記導光部ホルダに対して先端から一定距離の範囲が非接触とされた状態で、前記導光部ホルダに摺動可能に保持されていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1に記載の記録ヘッドにおいて、
前記導光部ホルダは、前記導光部から出射された光束を集光する集光部を備え、
前記流体は、前記導光部から出射された光束が前記集光部に到達するまでの光路に備えられていることを特徴とする記録ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録ヘッドと、
前記記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回り及び記録媒体の表面に垂直な垂直軸回りに回動自在な状態で前記記録ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記導光部に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
記録する前記情報に応じて前記光源の作動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−140537(P2009−140537A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313515(P2007−313515)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】