説明

記録再生装置および記録再生方法

【課題】
本発明は、復元可能なデータに対する交替処理は行わないことで、交替処理の回数を削減し、データへのアクセス性能を改善する記録再生装置および記録再生方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、記録するデータにパリティを付加し、複数の光ディスクに分割して記録する記録再生装置であって、前記光ディスク上で欠陥部分を検出した場合に、前記欠陥部分に記録すべきデータが前記パリティを用いて復元可能か判断し、復元可能な場合は交替処理を行わず、復元不可能な場合のみ交替領域への交替処理を行い、交替処理を行わなかったデータは、再生時にパリティを用いて復元する記録再生装置および記録再生方法。パリティを用いて復元可能なデータの交替処理を行わないようにすることで、交替処理の回数を削減し、データのアクセス性能を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録再生装置および記録再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、PCに搭載されたHDD(Hard Disc Drive)のデータ保存先あるいはバックアップとして、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu−Ray Disc)などの光ディスクを複数枚用いてRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)を構成するアーカイブ装置の開発が進められている。
【0003】
一方、書き換え型もしくは追記型の光ディスクは、メディアの部分破損による傷や、指紋、汚れ、記録膜の劣化等によりメディア上の欠陥が発生し、その欠陥部分に記録を行っても、データを読み出すことが出来なくなる可能性が高くなる。このようなディスク面の欠陥を回避してディスク寿命を延ばす1つの方法として、その欠陥部分にはデータの記録は行わずに、同じ光ディスク上に設けた交替領域に記録を行う、欠陥管理方法がある。関連技術として特許文献1があり、課題として「欠陥セクタの交替セクタにアクセスする時間を短縮できるようにする。」と記載され、解決手段として、「記憶媒体のユーザ領域で欠陥セクタが発生したとき、その欠陥セクタに最も近い交替領域の交替セクタを検索して、その検索した交替セクタが空いているか否かを判断し、空いていればその交替セクタに交替処理を施す。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−50766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクにおいて交替処理が発生すると、交替領域へのシーク、データ記録、記録したデータに対するベリファイ処理、元の位置へシークという処理が行われるため、データへのアクセス性能が低下してしまうという問題がある。従来技術では、交替領域とユーザ領域とのシーク時間を短縮することはできるが、その他の処理時間を短縮することはできない。
【0006】
また、通常、交替領域は一度領域を確保すると領域を変更できない。BDを例に挙げて説明する。追記型のBD−R(Blu−ray Disc−Recordable)は交替領域をフォーマット時に確保すると、交替領域、ユーザデータ記録領域の割り当て配分を変更できない。また書き換え型のBD−RE(Blu−ray Disc− Rewritable)においても交替領域を一度確保すると、再フォーマットを行わない限り、交替領域の割り当て配分を変更出来ない。そのため、記録途中で交替領域が枯渇してしまうと、新たな欠陥に対して対応することができなくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、復元可能なデータに対する交替処理は行わないことで、交替処理の回数を削減し、データへのアクセス性能を改善する記録再生装置および記録再生方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、復元可能なデータに関する交替処理をディスクのクローズ処理時に行うことで、記録中に交替領域が枯渇することを防ぐ記録再生装置および記録再生方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば一つの実施態様として、記録するデータにパリティを付加し、複数の光ディスクに分割して記録する記録再生装置であって、前記光ディスク上で欠陥部分を検出した場合に、前記欠陥部分に記録すべきデータが前記パリティを用いて復元可能か判断し、復元可能な場合は交替処理を行わず、復元不可能な場合のみ交替領域への交替処理を行い、交替処理を行わなかったデータは、再生時にパリティを用いて復元する。パリティを用いて復元可能なデータの交替処理を行わないようにすることで、交替処理の回数を削減し、データのアクセス性能を改善することができる。
【0010】
また、前記光ディスクにクローズ処理をする時点で交替領域に空きがある場合は、前記パリティを用いて復元していたデータの交替処理を行う。これにより、交替処理をしないことで失われていた冗長性が確保され、データの信頼性を回復することができる。また、ディスククローズ時に交替処理を行うことで、記録途中に使用する交替領域の容量を削減することができ、記録途中での交替領域の枯渇を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上述の手段を用いることにより、記録再生装置・記録再生方法におけるユーザ利便性を向上させることができる。具体的には、交替処理の回数を削減し、データのアクセス性能を改善することができる。また、復元可能なデータの交替処理を行うことで、信頼性を回復することができる。また、復元可能なデータの交替処理を光ディスクのクローズ処理時に行うことで、記録途中での交替領域の枯渇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における記録再生装置の全体構成のブロック図
【図2】実施例1におけるRAIDコントローラのブロック図
【図3】実施例1における記録処理のフローチャート
【図4】実施例1における欠陥管理テーブルの構成図
【図5】実施例1における記録時の交替処理で各光ディスクに記録されているデータの構成図
【図6】実施例1における記録時の交替処理で、同一のアドレスを全て欠陥として扱う場合の各光ディスクに記録されているデータの構成図
【図7】実施例1における再生処理のフローチャート
【図8】実施例1におけるディスククローズ時の交替処理で各光ディスクに記録されているデータの構成図
【図9】実施例1におけるディスククローズ時の交替処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1を用いて本発明に係る記録再生装置の構成を説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る記録再生装置の全体構成を説明するブロック図である。
【0016】
記録再生装置1は、CPU(Central Processing Unit)100、メモリ101、RAIDコントローラ102、外部I/F103が内部バス105を介して互いに接続されている。RAIDコントローラ102にはODD(Optical Disc Drive)104a〜104dが接続されている。記録再生装置1は外部I/F103を介してHOSTPC2と接続されている。
【0017】
CPU100は記録再生装置1の全体動作の制御を行い、メモリ101は、CPU100のプログラム領域や一時作業領域として使用される。RAIDコントローラ102は、記録データの処理及びODD104a〜104dの制御を行い、外部I/F103は、RAIDコントローラ102とホストPC2との接続制御を行う。
【0018】
RAIDコントローラ102の構成について図2を用いて説明する。
【0019】
RAIDコントローラ102はデータの入出力を行うデータ入出力部200、入力されたデータを各記録媒体用に分割するデータ分割部201、分割されたデータにパリティを付加するパリティ生成部202、ODD104a〜104dとコマンド及びデータの送受信を行うドライブ制御部203、複数の記録媒体に分割されたデータを合成して元のデータを生成するデータ合成部204、破損した記録データをパリティを用いて復元するデータ復元部205、欠陥部分に対する交替処理を制御する交替処理制御部206で構成されている。また、交替処理制御部206には、欠陥及び交替領域に関する情報を管理する欠陥管理テーブル207がある。
【0020】
次に本記録再生装置1による記録処理について説明する。
【0021】
図3は本実施例の記録再生装置1による光ディスクへの記録処理について説明したフローチャートである。ホストPC2からの記録データが外部I/F部103を介して、RAIDコントローラ102のデータ入出力部200に入力されると、データ分割部201は該データを分割し(S301)、分割したデータに対してパリティ生成部202でパリティを付加する(S302)。分割したデータ及びパリティは、ドライブ制御部203を介してODD104a〜104dに装填されている光ディスクに記録される(S303)。ODD104a〜104dでは、データが正しく記録されたかを確認するベリファイ処理が行われ(S304)、欠陥の有無が確認される(S305)。欠陥が検出された場合は、欠陥情報がドライブ制御部203を介して交替処理制御部206に通知され、欠陥部分のデータがパリティを用いて復元可能かどうか判断し(S306)、復元が不可能な場合は交替領域への交替処理を該ODDに要求する(S307)。最後に欠陥管理テーブル207に欠陥及び交替領域に関する情報を登録する(S308)。
【0022】
本実施例における欠陥管理テーブル207の一例を図4に示す。欠陥管理テーブル207は記録する光ディスク毎に用意されており、欠陥が検出されたPSN(Physical Sector Number)と交替先のPSNが登録されている。データが復元可能なため交替処理を行っていない欠陥部分の交替先PSNは未登録とするか、負の値などを登録し、データの再生時にパリティを用いて復元する必要があることが分かるようにしておく。欠陥管理テーブル207はデータの再生をする際、欠陥部分のデータに対して、交替領域からデータを取得するか、パリティを用いてデータを復元するかの判断に用いる。図4の例では、PSN=1100及びPSN=1132のデータは、各々交代領域であるPSN=100及びPSN=132から取得し、PSN=1420のデータは、データ復元部205で復元する。
【0023】
また、本実施例では、記録する光ディスク毎に欠陥管理テーブル207を作成したが、RAIDを構成している全光ディスクをまとめて1つのテーブルで管理しても良い。
【0024】
次に記録処理時における各光ディスクの記録データの一例を図5に示す。光ディスク1〜4は、ODD104a〜104dに装填されている光ディスクであり、RAID5を構成している。また、501〜504は光ディスク1〜4のデータ領域を表しており、内周側の交替領域であるISA(Inner Spare Area)、ユーザが使用可能な領域であるユーザデータ領域、外周側の交替領域であるOSA(Outer Spare Area)の3つの領域に分かれている。また、PAはA1〜A3のパリティを表している。図5では、B1、B2及びF3を記録する部分が欠陥となっている。B1及びB2はB3及びPBを用いてもデータの復元は出来ないため、交替領域への交替処理を行う。しかし、F3はF1、F2及びPFを用いて復元が可能なため、交替処理は行わない。
【0025】
また、本実施例では、欠陥部分に対してのみ交替処理を行ったが、RAIDを構成する全ての光ディスクの同一アドレスを欠陥として扱い、交替処理を行っても良い。このときの各光ディスクの記録データの一例を図6に示す。図6の場合、B1、B2、B3、PBのデータにおいて、交替処理が必要なデータはB1とB2のみであるが、光ディスク3及び光ディスク4の同一アドレスも欠陥として扱い、B3及びPBの交替処理を行う。全ての光ディスクに対して同じ交替処理をすることで、RAIDを構成する全てのドライブに対して同じ動作命令を出すことができるので、RAIDコントローラによるドライブの制御を単純にすることができる。
【0026】
次に本記録再生装置1による再生処理について説明する。
【0027】
図7は本実施例の記録再生装置1による再生処理について説明したフローチャートである。まずは、読み出す領域が欠陥管理テーブル207に登録されているか確認する(S701)。欠陥として登録されていなければ、ODD104a〜104dからデータを読み出し、データ合成部204で元のデータに合成して(S705)、データ入出力部200から外部I/F部103を介してホストPC2へ出力する(S706)。読み出す領域が欠陥管理テーブル207に登録されていた場合は、欠陥管理情報テーブル207から、該領域について交替処理が行われたかどうかを確認し(S702)、交替処理を行っている場合は、該交替領域からデータを読み出す(S703)。交替処理を行っていない場合は、データ復元部205で欠陥部分のデータをパリティを用いて復元し(S704)、データ合成部204で元のデータに合成して(S705)、データ入出力部200から外部I/F部103を介してホストPC2へ出力する(S706)。
【0028】
次に本記録再生装置1におけるディスククローズ時の交替処理について説明する。図8は、本実施例の記録再生装置1によるディスククローズ時の交替処理における、各光ディスクの記録データの一例である。F3は欠陥部分のデータであるが、F1、F2及びPFを用いて復元できるため、記録処理時には交替処理をしなかったデータである。交替処理をしていないため、F1、F2及びPFに冗長性はなく、どれか1つでも破損してしまうとデータが復元できない状態である。そこで、F1、F2及びPFを用いてF3を復元し、交替処理を行うことで、データの冗長性を確保し、信頼性を回復することができる。
【0029】
図9は本実施例の記録再生装置1によるディスククローズ時の交替処理について説明したフローチャートである。まず、交替領域に空きがあるかを調べ(S901)、空きがある場合は、復元可能なため交替処理をしていないデータがあるか欠陥管理テーブル207で確認する(S902)。交替処理をしていないデータがあった場合は、データ復元部205で該データを復元し(S903)、交替処理を行い(S904)、欠陥管理テーブル207を更新する(S905)。これを交替領域に空きがなくなるか、交替処理をしていないデータがなくなるまで繰り返す。
【0030】
なお、本実施例では、復元可能なデータの交替処理をディスククローズ時に行ったが、他のタイミングで交替処理を行っても良い。例えば、ディスクを取り出す時や、ユーザデータ領域の使用率が閾値を越えた時、またはユーザが任意のタイミングで交替処理を行っても良い。
【0031】
なお、本実施例では、記録媒体ドライブとしてODDを用いたが、本発明は、HDDやSSD(Solid State Drive)にも適用可能である。HDD及びSSDにおける交替処理は、ODDのときと同様であり、交替処理制御部206で欠陥部分のデータが復元可能か判断し、復元不可能なデータに対してのみ交替領域への交替処理を行う。SSDの場合、各セルに対するデータ書き込みの回数に限度があるため、復元可能なデータの交替処理を行わず、書き込み回数自体を減らすことで、SSDの耐久性能を向上させることができる。
【0032】
また、本実施例では、RAIDコントローラ102を用いたハードウェアRAIDの場合を例にとったが、RAIDコントローラ102と同様の処理をCPU100がソフトウェアで行うソフトウェアRAIDを用いて実装することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…記録再生装置
100…CPU
101…メモリ
102…RAIDコントローラ
103…外部I/F
104a、104b、104c、104d…光ディスクドライブ
2…ホストPC
200…データ入出力部
201…データ分割部
202…パリティ生成部
203…ドライブ制御部
204…データ合成部
205…データ復元部
206…交替処理制御部
207…欠陥管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録媒体ドライブを備える記録再生装置であり、
記録するデータを分割する分割手段と、
前記分割手段により分割したデータにパリティを付加するパリティ付加手段と、
前記分割したデータと前記パリティを複数の記録媒体に分割して記録する記録手段と、
前記複数の記録媒体に記録したデータから元の1つのデータを合成する合成手段と、
前記分割したデータの1部を前記パリティを用いて復元する復元手段と、
前記複数の記録媒体ドライブから前記複数の記録媒体の欠陥情報を入手する欠陥情報入手手段と、
前記欠陥情報により欠陥が検出された場合、欠陥部分のデータが前記復元手段を用いて復元可能か判断する判断手段と、
復元不可能なデータのみを交替処理する交替手段と、
を有することを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録再生装置であって、
前記分割したデータの合成手段において、合成するデータに前記判断手段を用いて復元可能と判断された欠陥部分のデータが含まれていた場合に、前記復元手段を用いて前記欠陥部分のデータを復元して、前記合成手段を用いて合成処理をすることを特徴とする記録再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の記録再生装置であって、
前記複数の記録媒体へのデータの記録が終了したときに、前記判断手段を用いて復元可能と判断された欠陥部分のデータを前記復元手段を用いて復元し、前記交替手段を用いて交替処理を行うことを特徴とする記録再生装置。
【請求項4】
請求項1記載の記録再生装置であって、
前記復元不可能なデータを含む記録媒体の交替処理を行う場合に、前記分割したデータを分割記録している他の記録媒体においても前記復元不可能なデータのアドレスと同一のアドレスを欠陥として扱い交替処理を行うことを特徴とする記録再生装置。
【請求項5】
複数の記録媒体ドライブを制御する記録再生方法であり、
記録するデータを分割し、
前記分割したデータにパリティを付加し、
前記分割したデータと前記パリティを複数の記録媒体に分割して記録し、
前記複数の記録媒体に記録したデータから元の1つのデータを合成し、
前記分割したデータの1部を前記パリティを用いて復元し、
前記複数の記録媒体ドライブから前記記録媒体の欠陥情報を入手し、
前記欠陥情報により欠陥が検出された場合、欠陥部分のデータが前記復元方法を用いて復元可能か判断し、
復元不可能なデータのみを交替処理することを特徴とする記録再生方法。
【請求項6】
請求項5記載の記録再生方法であって、
前記分割したデータの合成方法において、合成するデータに前記判断方法を用いて復元可能と判断された欠陥部分のデータが含まれている場合に、前記復元方法を用いて前記欠陥部分のデータを復元して、前記合成方法を用いて合成処理をすることを特徴とする記録再生方法。
【請求項7】
請求項5記載の記録再生方法であって、
前記複数の記録媒体へのデータの記録が終了したときに、前記判断方法を用いて復元可能と判断された欠陥部分のデータを前記復元方法を用いて復元し、前記交替方法を用いて交替処理を行うことを特徴とする記録再生方法。
【請求項8】
請求項5記載の記録再生方法であって、
前記復元不可能なデータを含む記録媒体の交替処理をする場合に、前記分割したデータを分割記録している他の記録媒体においても前記復元不可能なデータのアドレスと同一のアドレスを欠陥として扱い交替処理を行うことを特徴とする記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−174296(P2012−174296A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32738(P2011−32738)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】