説明

記録媒体の製造方法

【課題】エクストルージョン型ダイを用いる磁気記録媒体の製造方法において、支持体の長手方向における塗膜厚みむらを十分に小さくし、良好な塗工性を確保すること
【解決手段】バックエッジ面及び湾曲を持ったドクターエッジ面に沿って連続的に走行する可撓性支持体表面に、スリット先端部から非磁性塗布液(支持体に接する側の下層塗布液)と磁性塗布液(非磁性下層に重層される上層塗布液)を同時に連続的に押出して該支持体表面に塗布するエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いた磁気記録媒体の塗布方法において、エクストルージョン型の塗布ヘッドの上層用のダイのスリットギャップが0.05mm〜0.15mmであり、かつ上層用のダイのスムージング長が0.1mm〜1.0mmであるエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気記録媒体の高密度化、高容量化に伴い、支持体に塗布される磁性塗膜の薄層化、表面平滑化が進んでいる。薄層化、平滑化の利点としては、自己減磁を抑え、高出力を図れることが挙げられる。また、このために磁性塗膜と支持体との間に少なくとも一つの塗膜層を形成した、いわゆる重層構成の磁気記録媒体が一般的になっている。
【0003】
とくに、1巻で100GBを超える容量のコンピューターバックアップ用磁気記録媒体(以下CP用媒体と略する)では、すべて薄層化した磁性層の下に実質的に非磁性の塗膜(下層)を形成した構成となっている。この構成を実現するのに、エクストルージョン型ダイを用いて支持体に塗料を塗布するのが主流となっている。
【0004】
そして1巻で1TBを超える容量のCP用媒体では、磁性層の厚さや磁性層と下層との界面のわずかな変動が、短波長域の記録信号の再生出力やC/Nの低下をまねくので、厚みむらや界面の変動をできる限り小さくすることがより重要となっている。
【0005】
従来から磁性層の薄層化と厚みむらの低減について エクストルージョン型ダイ に関しての案もいくつか開示されている。(例えば特許文献1から特許文献3)
【0006】
特許文献1では、ダイの部位の寸法と塗料の粘度や塗布条件の因子との関係を規定している。特許文献2では、ダイのスリット寸法と供給する塗料の供給通路における壁面への応力差を規定している。特許文献3では、ダイのいくつかの部位の寸法と形成する塗膜の厚みを規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許 第2684487号 公報
【特許文献2】特許 第3146977号 公報
【特許文献3】特開2002−25051号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、文献1も文献2も支持体に塗布する磁性層の原反の幅方向についての厚みむらを小さくしようとするものであり、文献3は単なる磁性層の薄膜化の処方を開示しているにすぎない。最近の大容量化が要求されているCP用媒体は、リニア型が主流であり、テープの長さも600mを超えるのが通常である。すなわち、1巻のテープにおける走行方向(テープ長手方向)の厚みむらが問題なのである。上の文献で述べられた従来技術では、重層媒体においては、支持体の走行方向(以下、長手方向という)における塗膜厚みむらを十分に小さくできず、良好な塗工性を確保することに困難がある。
【0009】
本発明の課題は、エクストルージョン型ダイを用いる磁気記録媒体の製造方法において、支持体の長手方向における磁性層の塗膜厚みむらを十分に小さくし、良好な塗工性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明は、バックエッジ面及び湾曲を持ったドクターエッジ面に沿って連続的に走行する可撓性支持体表面に、スリット先端部から非磁性塗布液(支持体に接する側の下層塗布液)と磁性塗布液(非磁性下層に重層される上層塗布液)を同時に連続的に押出して該支持体表面に塗布するエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いた磁気記録媒体の塗布方法において、エクストルージョン型の塗布ヘッドの上層用のダイのスリットギャップが0.05mm〜0.15mmであり、かつ上層用のダイのスムージング長が0.1mm〜1.0mmであるエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いて塗布するようにしたものである。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において更に、塗布して製造する磁気記録媒体を乾燥後の磁性層塗膜厚みが50nm以上150nm以下の磁気記録媒体であるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
テープ長手方向で、磁性層厚みおよび上下層の界面変動が少ないので1巻のうちで出力変動の少ない、出力特性の安定した大容量 のCP用テープが供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】磁気記録媒体製造ラインを示す模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態の塗布装置の模式図(断面図)である。
【図3】図2のエクストルージョン型ダイの要部の拡大断面図である。
【図4】図3の下流側リップ付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は磁気記録媒体製造ラインを示す模式図、図2は塗布装置のエクストルージョン型ダイを示す模式図、図3はエクストルージョン型ダイの要部の拡大断面図、図4は図3の上層側リップ付近の拡大断面図である。
【0015】
磁気記録媒体製造ラインでは、図1に示す如く、磁性塗料タンク11内の塗料をポンプ12によって圧送し、フィルタ13、分散機14を通し、塗布機15に供給する。塗布機15は、非磁性支持体上に上層の磁性塗料と下層の非磁性塗料とを磁性層及び非磁性層の乾燥厚みがそれぞれ所定の厚みとなるようにウエット・オン・ウエット方式により同時重層塗布を行い、磁性層及び非磁性層の塗膜を形成する。これにより、磁性層を非磁性層の湿潤時に塗設・形成することができる。次いで、該塗膜に対して、配向機16で磁場配向処理を行った後、乾燥機17で乾燥処理を行い巻き取る。この後、必要に応じてカレンダー処理を行った後、更に必要に応じてバックコート層を形成する。次いで、必要に応じて、例えば、磁気テープを得る場合には、40〜80℃下にて、 8〜72時間エージング処理し、所望の幅にスリットする。
【0016】
上記塗布機15による同時重層塗布方法は、特開平5-73883 号公報等に記載されており、非磁性塗料が乾燥する前に上記の磁性層を形成する磁性塗料を塗布する方法であって、ウエット・オン・ドライ方式とともに最近の重層構成のCP用磁気記録媒体を得る周知の方法である。
【0017】
また、上記配向機16による磁場配向処理は、磁性塗料が乾燥する前に行われ、例えば、本発明の磁気記録媒体が磁気テープの場合には、磁性塗料の塗布面に対して平行方向に約40kA/m(約500 Oe)以上、好ましくは約80〜800kA/m(1000〜10000 Oe)の磁界を印加する方法や、上記の磁性塗料が湿潤状態のうちに80〜800kA/m(1000〜10000 Oe)のソレノイド等の中を通過させる方法等により行うことができる。
【0018】
上記乾燥機17による乾燥処理は、例えば、40〜120 ℃に加熱された気体の供給により行うことができ、この際、気体の温度とその供給量を制御することにより塗膜の乾燥程度を制御することができる。
【0019】
また、上記カレンダー処理は、メタルロール及びコットンロールもしくは合成樹脂ロール、メタルロール及びメタルロール等の 2本のロールの間を通すスーパーカレンダー法等により行うことができる。また、上記カレンダー処理の条件は、60〜140 ℃、 100〜500kg/cmとすることができる。
【0020】
また、必要に応じて設けられる上記バックコート層は、上記非磁性支持体の裏面(磁性層、非磁性層を設けていない側の面)に設けられるものであり、通常バックコート層の形成に用いられているバックコート塗料を上記非磁性支持体上に塗布することにより得られるものである。
【0021】
尚、本発明の磁気記録媒体の製造に際しては、必要に応じ、磁性層表面の研磨やクリーニング工程等の仕上げ工程を施すこともできる。
【0022】
本発明の塗布機15は図2に示すような二層同時塗布用エクストルージョン型ダイ20を用いて構成される。二層同時塗布用エクストルージョン型ダイ20は、図2に示す如く、ダイヘッド21に上流側リップ22と第1下流側リップ23と第2下流側リップ24とを備え、上流側リップ22と第1下流側リップ23の間に第1スロット25を形成し、第1スロット25をマニホールド26に連通するとともに、第1下流側リップ23と第2下流側リップ24の間に第2スロット27を形成し、第2スロット27をマニホールド28に連通している。下層塗料供給系29は、下層塗料をマニホールド26を経て第1スロット25へ供給する。上層塗料供給系30は、上層塗料をマニホールド28を経て第2スロット27へ供給する。これにより、非磁性支持体1の表面に、第1スロット25から押し出される下層塗料、第2スロット27から押し出される上層塗料がウエット・オン・ウエット方式により同時塗布され、これにより、上層塗料が下層塗料のウエット(湿潤)時に塗布されるものとなる。
【0023】
先述したように、大容量化の対応のためCP媒体(以下CPテープという)では磁性層も非磁性層も薄層化がますます進み、乾燥後で磁性層は70nm以下、非磁性層は1μm以下が要求されている。しかも、リニア型テープでは、主流のテープ幅は1/2吋であるのに対して長さは600m以上である。それゆえ、長手方向の出力変動の原因となる厚み変動や界面変動を、すなわち支持体への塗料の塗布工程での長手方向の厚みむらをできる限り小さくすることが重要である。
【0024】
エクストルージョン型ダイを用いて液体状である塗料を厚みむらなく塗布しようとするときの種々の因子は、当業界の経験や学術的理論からかなりの数があげられているが、大きくまとめると塗布条件としての(1)塗布速度(2)塗布時の塗料厚みと塗料粘度、装置としての(3)ダイの形状(4)ダイの構成部の寸法である。このうち、生産効率の点から(1)塗布速度と、加工精度や製作コストの点から(3)ダイの形状はほぼ制限固定される。よって本発明は、(2)塗布時の塗料厚みと塗料粘度と(4)ダイの構成部の寸法との関連を種々検討実証した結果、厚みむらを小さくすることができたものである。
【0025】
乾燥後で磁性層は70nm以下、非磁性層は1μm以下であるような薄層の重層塗布では、ダイから支持体に塗布される塗料のwet厚みは、厚い方の非磁性塗料でさえ3μm以下となる。すると仮りに200m/分の塗布速度としても、ダイのリップでは、ずり速度(1/s)=塗布速度(m/s)/wet厚み(m)から、10(1/s)以上のずり速度となる。それゆえ、塗料粘度によっては支持体上にうまく広がって塗布できない状況が生じる。何よりも重層構成をとることが基本である。そのため、薄層化の塗料は単純にいえば支持体上で広がりやすい低粘度の傾向にある。
【0026】
そして塗料の粘度が重大因子というわけではなく、ダイの構成部の寸法によって、幅広い粘度範囲の塗料が均一に塗布できるようになる。以下、塗料粘度の広い範囲にわたって適用可能な、本発明におけるわれわれの見出したダイの寸法について図を参照しながら説明する。
【0027】
図3は、ダイの要部の拡大断面図、図4は図3の上層側(下流側)リップ24付近の拡大断面図である。図の矢印方向は支持体の走行方向をしめす。われわれは、それまでの生産および試作実績から、重層塗布において上層側(下流側)ダイ33に関係する寸法が上層の磁性層の厚み変動に一番関与するという知見はえていた。
【0028】
CPテープの大容量化、薄層化に対応するための上層の磁性塗料の設計では、塗布する塗料は従来にない固形分濃度は低くして、塗料粘度は低いものが要求された。それゆえ上層側ダイ33に関係する寸法について、塗布速度、塗料粘度を変化させてより詳細に検討した。その結果、図4に示した上層側ダイのスリットギャップ40と上層側ダイのスムージング長41の寸法が重要な因子であることを見出した。
【0029】
すなわち次のような事項である。スリットギャップ40については(1)スリットギャップ内での塗料流速安定化。(2)リップ先端部における、スリットギャップ内で塗布した塗料の層に対して乱れを与える渦流の発生量。(3)塗料の延伸率変化による上層薄膜安定化。延伸率=スリットギャップ(mm)/リップ上wet厚(μm)等に影響して厚み変動と密接に関係する。
【0030】
また、スムージング長41については、重層塗布時(下層塗料の上に上層塗料が塗布された時)上層塗料が広がった後は無駄なずり(抵抗)を与えないこと、これを外乱抑制というがこの抑制程度に影響する。
【0031】
そこで、スリットギャップ40とスムージング長41の寸法と長手厚み変動との関係を明らかにするために、乾燥後で磁性層は70nm以下、非磁性層は1μm以下である重層塗布を、上層磁性層の乾燥後厚み、上層磁性層塗料粘度を変化させて検討した。
【0032】
塗布速度は生産効率と塗布面直後の平滑性を得る観点から、支持体の幅が500mm以上の原反を用いる製造では通常160m/分以上である。平滑化処理による効果やテープとしての耐久性確保のための潤滑材供給効果から、下層非磁性層の乾燥後の厚みは、800nm以上が必要である。この厚みを確保して上記塗布速度で塗布しようとすると、下層の非磁性塗料の粘度は5mPa・sより高くないと、下層側ダイ21のリップ22から裏もれが発生したり、リップでの同伴空気が下層に侵入して塗布ムラが発生する。
【0033】
以上のことから、塗布速度は250m/分、下層の乾燥後厚みを1.0μm、下層塗料粘度10mPa・sに固定して、スリットギャップ40、スムージング長41をいくつか変更して、磁性層の厚み変動が少ない寸法を検討した。その結果、長手方向の磁性層の厚み変動が極めて少ないスリットギャップ40、スムージング長41の寸法範囲をはじめて見出した。
【0034】
すなわち、上層用のダイのスリットギャップ40が0.05mm〜0.15mmであり、かつ上層用のダイのスムージング長41が0.1mm〜1.0mmであるとき厚み変動が極めて少ない上層がえられる。スリットギャップ40がこの範囲が好ましいのは先述した(1)スリットギャップ内での塗料流速を安定化させ、(3)塗料の延伸率変化による薄膜塗布時の偏差を低減して(2)リップ先端部における、塗布した塗料の層に対して乱れを与える渦流の発生量を減少させるからと推測できる。現実の加工精度の真直性は(0.001mm/1m)の長さが限度で真直性を考慮すると、加工上は0.05mmが限度であることと、生産中の塗布機稼働時でのリップ清掃作業が困難であることから、スリットギャップ40を0.05mmより小さくするのは好ましくない。
【0035】
スムージング長41を0.1mmより小さくするのは、リップ先端部の剛性からして加工上現実的には困難であり、上層の塗料が広がらない。
【0036】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、上記の寸法のダイユニットを持つエクストルージョン型ダイ含むを用いる以外は、従来の磁気記録媒体の製造方法と同様に実施されるもので、用いられる磁性塗料、非磁性塗料および非磁性支持体としては、従来法で通常用いられているものを使用することができる。
【0037】
例えば、上記磁性塗料の構成成分である磁性粉としては、針状形の微細なγ−Fe2 O3 、Fe3 O4 、CrO2 のような金属酸化物、またCo被着γ−Fe2 O3 、Coドープγ−Fe2 O3 のような加工処理を施したγ−Fe2 O3 、金属鉄粉末、微小板状のバリウムフェライト及びそのFe原子の一部がTi、Co、Zn、V、Nb等の1種又は2種以上で置換された磁性粉、Co、Fe−Co、Fe−Ni等の金属又は合金の超微粉等が挙げられる。これらのうち金属鉄粉末は特に化学的に安定性が悪く、この改良のため、ニッケル、コバルト、チタン、ケイ素、アルミニウム等を金属原子、塩及び酸化物の形で少量加えたり表面処理されることがあるが、これらを用いることもできる。金属鉄粉末はその安定化のため弱い酸化性雰囲気の中で表面に薄い酸化被膜を作らせることがあるが、このように処理された金属粉を用いることもできる。また、前述の磁性粉を2種以上混合して用いても良い。
【0038】
上記磁性塗料の構成成分であるバインダーの例としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルニトリル、ニトリルゴム、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルプチラール、塩化ビニリデン、硝化綿、マレイン酸変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いても良い。また、樹脂の硬さを調節するため可塑剤や硬化剤を加えて使用することもできる。
【0039】
上記磁性塗料の構成成分である有機溶媒としては、上記塗料の各成分に対して不活性なものが使用され、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。さらに、上記磁性塗料には、以上の成分の他、この分野で通常使用される研磨剤、潤滑剤、帯電防止剤等の添化剤を加えても良い。
【0040】
以下に実施例をあげてるが、長手方向の磁性層の厚みむらを極力なくすためにエクストルージョン型ダイの要部寸法を規定するという本発明の思想から逸脱しないかぎり以下に限定するものではない。
<実施例1> 表1に示す組成成分の磁性塗料および表2に示す組成成分の非磁性塗料を調整し、塗工液を作製した。下層の非磁性塗料は一定組成で、磁性塗料の方は粘度を変化させる場合は溶媒量を変えて作製した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
厚さ 5.1μm のポリエチレンナフタレートフィルムの表面上に、上記の粘度10mPa・sの非磁性塗料塗工液は乾燥後の厚みが1.0μmになるようにし、上層の磁性塗料は乾燥厚み50nmを目標にして上層側のダイスリットギャップが0.05mm、スムージング長が0.2mmのエクストルージョン型ダイを使用して塗布を行い、重層構成の磁性塗膜を形成した。このときの磁性塗料の粘度は3mPa・sであった。
次いで、塗膜が湿潤状態のうちに400kA/mのソレノイド中を通過させて磁場配向処理を行い、90度の乾燥処理を行った後巻き取った。次いで、85度、350kg/cmの条件でカレンダー処理を行い磁性層を形成した後、上記非磁性支持体の裏面にバックコート塗料を厚さ 0.5μm になるよう塗布し、90度にて乾燥処理を行った後、巻き取った。その後、50度以下にて、24時間エージング処理した後、 1/2吋幅のテープ状に裁断し、磁気テープを得、得られた磁気テープをLTO(登録商標)カートリッジケースに装填してLTO4対応の1巻が820mの試作CP用テープを作製した。
【0044】
重層構成になったテープ塗膜の長手方向について磁性層の厚み変動と下層非磁性層との界面変動を測定した。また、作製したCPテープについては 出力変動を評価した。
評価方法および測定方法は次のとおりである。
【0045】
<厚み変動>
テープ幅で任意刃番位置の原反塗膜について、蛍光X線を用いて原反ハブの巻芯から5m以内の長手方向(走行方向)長さ1mを測定範囲としてピッチ20mmで50点測定する。測定は20mm四方の平均値とする。原反の長手方向に200m離れた点ごとにテープ長さ当たり換算で計5か所測定する。厚み変動は次式によって5か所の平均から求めた。 厚み変動=測定範囲内σ/平均値×100(%)
【0046】
<界面変動>
任意刃番位置のテープについて、SEM断面でカートリッジハブの巻芯から5m以内の長手方向(走行方向)長さ1.2mmを測定範囲としてピッチ200μmで6点測定する。6点の平均値とする。テープの長手方向に200m離れた点ごとに1巻ついて計4か所測定する。界面変動は次式によって4か所の平均から求めた。
【0047】
界面変動=測定範囲内σ/平均値×100(%)
【0048】
<出力変動>
LTOドライブの搭載された記録ヘッドと再生ヘッドを、それぞれ波長0.5μmの信号が記録できる記録ヘッドと再生出力が読み取れるヘッドに交換した後、CPテープ全長にわたっての1分間を1セクションとした再生出力の平均値を出して、最大平均出力と最低平均出力を示したセクションの差を読み取る。
【0049】
実施例2〜実施例6
<実施例2>スリットギャップを0.13mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<実施例3>スムージング長が0.4mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<実施例4>スムージング長が0.9mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<実施例5>上層の乾燥後厚みを150nmに変更した以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<実施例6>磁性塗料の粘度を1mPa・sに調整したものに変更した以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
【0050】
比較例1〜比較例3
<比較例1>スリットギャップが0.2mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<比較例2>スムージング長が1.2mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
<比較例3>スリットギャップが0.2mm、スムージング長が1.2mmのエクストルージョン型ダイに変えた以外は実施例1と同様にして試作CP用テープを作製した。
【0051】
表3に、数多く試作した中から、実施例と比較例にあげた、磁性層厚みや磁性塗料の粘度を変えて作製したテープの塗膜特性と出力変動の結果を表3にまとめた。
【0052】
【表3】

【0053】
表3に示したように、上層側のダイにおいて、本発明で規定したスリットギャップが0.05mm〜0.15mm、スムージング長が0.1mm〜1.0mmのエクストルージョン型ダイを用いて作製した実施例の重層構成の磁性層は、厚み変動および下層との界面変動が少なく得られたテープの長手方向の出力変動も、比較例のいずれとくらべても良好な結果がえられていることがわかる。
【符号の説明】
【0054】
20・・・ダイユニット、21・・・上流側ダイヘッド、22・・・上流側リップ、
23・・・中間リップ
24・・・下流側リップ、25・・・第1スロット、26・・・第1マニホールド、
27・・・第2スロット
28・・・第2マニホールド、29・・・下層塗料供給系、30・・・上層塗料供給系 31・・・下層、32・・・上層、33・・・上層側ダイ、40・・・上層スリットギャップ、41・・・上層スムージング長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックエッジ面及び湾曲を持ったドクターエッジ面に沿って連続的に走行する可撓性支持体表面に、スリット先端部から非磁性塗布液(支持体に接する側の下層塗布液)と磁性塗布液(非磁性下層に重層される上層塗布液)を同時に連続的に押出して該支持体表面に塗布するエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いた磁気記録媒体の塗布方法において、エクストルージョン型の塗布ヘッドの上層用のダイのスリットギャップが0.05mm〜0.15mmであり、かつ上層用のダイのスムージング長が0.1mm〜1.0mmであるエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いて塗布することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
乾燥後の磁性層塗膜厚みが50nm以上150nm以下の磁気記録媒体であることを特徴とする(請求項1)記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−128920(P2012−128920A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281173(P2010−281173)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】