記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラム
【課題】磁気インク文字の認識に際し、誤認識を抑制する。
【解決手段】小切手4に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る磁気ヘッド54を備えた小切手読取装置1の制御部71は、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と基準波形を所定の距離スライドさせた波形との差異に応じて算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、検出波形と基準波形を所定の距離伸縮させた波形との差異に応じて算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズとを実行し、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【解決手段】小切手4に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る磁気ヘッド54を備えた小切手読取装置1の制御部71は、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と基準波形を所定の距離スライドさせた波形との差異に応じて算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、検出波形と基準波形を所定の距離伸縮させた波形との差異に応じて算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズとを実行し、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して、磁気インク文字認識を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気インク文字認識においては、磁気インク文字の印刷のズレ、記録媒体の搬送状況、磁気ヘッドによる磁気インクの読み取り等に起因して、理想的な波形に対して、検出波形の位置がずれていたり検出波形に伸び縮みが生じていたりする場合がある。
上述した記録媒体処理装置による磁気インク文字の認識の結果は、例えば、小切手に対する各種処理を行う際に利用される。このため、磁気インク文字の認識に際し、検出波形の位置のずれや検出波形の伸び縮みの影響をできるだけ排して、誤認識を抑制したいとするニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、上述の2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1認識フェーズ及び前記第2認識フェーズのそれぞれでは、算出した前記差異量が小さい順に、少なくとも前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を選別し、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、認識方法が異なる第1認識フェーズ及び第2認識フェーズのそれぞれで差異量が小さい順に第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類の中から、さらに差異量が小さい順に第1候補、及び、第2候補を決定するので、磁気インク文字の誤認識を効果的に抑制できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量が、前記第2認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量よりも小さい場合は、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを前記第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせて、2回目の前記第2認識フェーズを実行し、前記2回目の第2認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1認識フェーズで第1候補として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズで第1候補として選別された文字種類の差異量よりも小さい場合は、検出波形の位置がずれている可能性が高いと考えられる。そのため、第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせた上で第2認識フェーズを再度実行することにより、検出波形の位置のずれ及び伸び縮みの双方の影響を抑えて、磁気インク文字の認識を行うことができる。これにより、誤認識をより効果的に抑制できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記2回目の第2認識フェーズは、前記磁気インク文字のフォントがE−13Bフォントであって、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類、及び、前記第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合以外に実行することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、E−13Bフォントにおける文字種類「2」と「5」とでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形の一端側、及び、他端側が互いに類似しているため、基準波形をスライドさせると「2」と「5」とを誤認識するおそれがある。そのため、第1認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合には、波形をスライドさせた上で行う2回目の第2認識フェーズを実行しないことで、「2」と「5」との誤認識を抑えることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0016】
[適用例6]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定する手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図11】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図12】検出信号波形データの一例を示す図である。
【図13】文字波形データの一例を示す図である。
【図14】差異量を説明するための図である。
【図15】伸縮テーブルのデータ構造を示す図である。
【図16】伸縮させた基準波形データを示す図である。
【図17】(A)は縮みテーブルを示し、(B)は伸びテーブルを示す図である。
【図18】第2の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図20】(A)はE−13Bフォントにおける文字種類「2」に対応する基準波形データの内容を模式的に示し、(B)はE−13Bフォントにおける文字種類「5」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
<記録媒体処理装置>
第1の実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0021】
まず、第1の実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0022】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを先頭として搬送路5に送り出される。
【0023】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0024】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0025】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0026】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0027】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0028】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、光学読取部としての表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0029】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る磁気読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0030】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0031】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0032】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0033】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0034】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0035】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0036】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0037】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字の認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0038】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。
また、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、オフセット印刷によって印刷されるE−13Bフォントの磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷されるE−13Bフォントの磁気インク文字とでは、その形状が相違している。
【0039】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、磁気インク文字の文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別され、一方、磁気インク文字の中に、1つでも磁気インク文字の文字種類が確定できないものがあれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
上述したように、制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、当該小切手4を第1小切手排出部7に搬送し、一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、所定の処理を実行した上で、当該小切手4を第2小切手排出部8に搬送する。
以下、文字認識部80の動作について詳述する。
【0040】
図4〜図11は、第1の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0041】
図4〜図11のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示しているものとする。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われており、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力されているものとする。さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力されているものとする。
【0042】
図4を参照し、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データから、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、文字の切り出しを行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
ステップSA1の処理は、例えば、以下のようにして実行される。
【0043】
図12は、検出信号波形データ(一部)の内容の一例を模式的に示す図であり、図13は、ステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取るが、その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を、1サンプリング単位と言うものとする。
【0044】
図12では、X軸(横軸)は、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)は、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。そして、図12では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0045】
ここで、本実施形態では、検出信号波形データのX軸方向において、1つの磁気インク文字に対応する波形が占める範囲は、所定の数のサンプリング単位(例えば、70サンプリング単位)と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。
【0046】
これを踏まえ、ステップSA1では、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形に基づいて、当該波形の各ピーク位置(極大値、極小値に対応するX軸の値であり、ピーク位置は、所定の周期で現出するよう規定されている)を検出し、検出したピーク位置に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、文字開始位置を検出する。そして、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形を、検出した文字開始位置から、1つの磁気インク文字の幅に対応する所定の数のサンプリング単位で切り出す。
その際、文字認識部80は、切り出した波形における最初のピーク位置が、X軸における所定のサンプリング単位目に位置するように、検出信号波形データが示す波形を切り出す。例えば、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、文字開始位置から11サンプリング目に波形の最初のピーク位置が位置するように、検出信号波形データの波形の切り出しを行う。
【0047】
ステップSA1における文字の切り出しにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の実際の検出信号に基づいて、図13の例に示すような内容を有する文字波形データが生成される。
なお、ステップSA1の文字の切り出しは、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって、順番に行われ、切り出された磁気インク文字ごとにステップSA2以下の文字の認識に係る処理が実行される。
以下、ステップSA1において、切り出された1の磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0048】
文字の切り出しの実行後、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、後述するパターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う(ステップSA2)。
【0049】
図4を参照し、ステップSA2の後には、第1認識フェーズ(ステップSA3)、及び、第2認識フェーズ(ステップSA7)の2つの処理フェーズが含まれている。これら2つの処理フェーズは、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。これら2つの処理フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。
【0050】
図5は、ステップSA3の第1認識フェーズにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第1認識フェーズにおいて、まず、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出する処理を実行する第1認識パスを実行する(ステップSB1)。
【0051】
次いで、文字認識部80は、第1認識パスで処理対象文字の文字種類を確定できたか否かを判別し(ステップSB2)、処理対象文字の文字種類を確定できた場合(ステップSB2:YES)、第1認識フェーズを終了する。一方、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合(ステップSB2:NO)、文字認識部80は、第2認識パスを実行する(ステップSB3)。
【0052】
次いで、文字認識部80は、第2認識パスで処理対象文字の文字種類を確定できたか否かを判別し(ステップSB4)、処理対象文字の文字種類を確定できた場合(ステップSB4:YES)、第1認識フェーズを終了する。一方、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合(ステップSB4:NO)、文字認識部80は、第1認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類を確定できないと判別する(ステップSB5)。
以下、第1認識パス、及び、第2認識パスの処理について詳述する。
【0053】
図6は、図5のステップSB1の第1認識パスにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第1認識パスにおいて、文字認識部80は、E−13Bフォントに規定された14個の文字種類の中から、ステップSC2の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSC1)。以下、ステップSC1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSC2の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、1回ずつ行われることになる。
【0054】
次いで、文字認識部80は、ステップSA1で切り出した処理対象文字の文字波形データの波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データのそれぞれが示す波形との間の差異量を算出する(ステップSC2)。
【0055】
ステップSC2の処理について詳述すると、1つの文字種類に対応する基準波形データとは、当該1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0056】
ここで、上述したように、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字とでは、その形状が相違している。そのため、基準波形データには、オフセット印刷用の基準波形データと、レーザー印刷用の基準波形データとの2種類のデータがある。第1認識フェーズでは、これらの2種類の基準波形データのうち、いずれか一方の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
なお、例えば、第1認識フェーズではオフセット印刷用の基準波形データを利用して各種処理を実行し、その後に、レーザー印刷用の基準波形データを利用して第1認識フェーズと同様の各種処理を別途実行することにより、2種類のデータの双方を利用して磁気インク文字認識を行う構成としてもよい。
【0057】
図14は、ステップSC2で検出される差異量を説明するための図である。図14において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。
差異量とは、図14中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値との差の絶対値の総和のことである。1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0058】
処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形との間の差異量を算出した後、文字認識部80は、14種類の全ての文字種類について、差異量の算出が終了したか否かを判別する(ステップSC3)。
14種類の全ての文字種類について、差異量の算出が終了していない場合(ステップSC3:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC1に戻し、全ての文字種類について差異量の算出が終了した場合(ステップSC3:YES)、処理手順をステップSC4へ移行する。
【0059】
ステップSC4において、文字認識部80は、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類をパス1用第1候補C11とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類をパス1用第2候補C12とする。
上述したように、パス1用第1候補C11とされた文字種類は、処理対象文字の文字種類である蓋然性が最も高く、パス1用第2候補C12とされた文字種類は、処理対象文字の文字種類である蓋然性が2番目に高い。
【0060】
次いで、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量、及び、パス1用閾値T1を比較し、当該差異量がパス1用閾値T1を上回るか否かを判別する(ステップSC5)。
パス1用閾値T1は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス1用閾値T1以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0061】
パス1用閾値T1は、処理対象文字の文字波形データと、当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが、当該パス1用閾値T1以下となり、かつ、当該文字波形データと、他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が、当該パス1用閾値T1を上回るようにするという観点から、適切に設定される。具体的には、本実施形態では、パス1用閾値T1は、文字種類ごとに、以下のようにして設定される。
すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、検出する。そして、1つの磁気インク文字に係るパス1用閾値T1を「パス1用閾値T1=(検出した複数の差異量の平均値)+(検出した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス1用閾値T1を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス1用閾値T1を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス1用閾値T1を適切な値とすることができる。
【0062】
差異量がパス1用閾値T1を上回る場合(ステップSC5:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識パスを終了する。
差異量がパス1用閾値T1以下の場合(ステップSC5:NO)、文字認識部80は、さらに、パス1用第2候補C12とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量、及び、パス1用閾値T1とを比較し、当該差異量がパス1用閾値T1を上回るか否かを判別する(ステップSC6)。
【0063】
当該差異量がパス1用閾値T1を上回る場合(ステップSC6:YES)、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSC7)、第1認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス1用閾値T1以下の場合(ステップSC6:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識パスを終了する。
【0064】
このように、本実施形態では、パス1用第1候補C11とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量が、パス1用閾値T1以下の場合であっても、パス1用第2候補C12とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量が、パス1用閾値T1以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、以下の理由による。
すなわち、パス1用閾値T1は、処理対象文字の文字波形データと、当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが、当該パス1用閾値T1以下となり、かつ、当該文字波形データと、他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が、当該パス1用閾値T1を上回るように設定された値である。従って、正常に小切手4が搬送され、磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られた場合は、パス1用閾値T1を下回る差異量に係る文字種類は、1つに限定される。このため、パス1用閾値T1を下回る差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性があり、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがあるからである。
【0065】
図7は、図5のステップSB3の第2認識パスにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第2認識パスにおいて、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSD2、及び、ステップSD3の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSD1)。以下、ステップSD1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSD2、及び、ステップSD3の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、1回ずつ行われることになる。
【0066】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせたもののそれぞれとの間の差異量を算出する(ステップSD2)。
【0067】
ステップSD2の処理について一例を挙げて説明すると、例えば、文字波形データのそれぞれにおいて、1つの磁気インク文字に対応する波形が占めるX軸の範囲は、70サンプリング単位と規定されているものとする。この場合、ステップSD2において、例えば、文字認識部80は、基準波形データの波形の全体を、X軸方向左方へ7サンプリング単位分だけスライドした波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。同様にして、文字認識部80は、基準波形データの波形の全体を、X軸方向左方へ、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。そうすると共に、基準波形データの波形の全体を、X軸方向右方へ、7、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分だけスライドした波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この場合、差異量の算出が15回おこなわれ、15回分の差異量が算出されることとなる。
【0068】
ここで、小切手4の搬送の状況や、磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りの状況、図4のステップSA1の文字の切り出しの処理の状況によっては、文字波形データにおいて、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。これを踏まえ、上述したように基準波形データの波形を所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した「ずれ」を反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0069】
次いで、文字認識部80は、ステップSD2で算出した差異量のうち、値が最も小さい差異量を、比較対象文字種類の差異量とする(ステップSD3)。上記の例では、文字認識部80は、算出された15回分の差異量のうち、その値が最も小さいものを、比較対象文字種類の差異量として特定する。
【0070】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSD2)、特定(ステップSD3)が終了したか否かを判別する(ステップSD4)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSD4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSD1に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSD4:YES)、文字認識部80は、14種類の文字種類のうち、ステップSD3で特定された差異量が最も小さかった文字種類を、パス2用第1候補C21とし、特定された差異量が2番目に小さかった文字種類を、パス2用第2候補C22とする(ステップSD5)。
【0071】
次いで、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量と、パス2用閾値T2とを比較し、当該差異量がパス2用閾値T2を上回るか否かを判別する(ステップSD6)。
パス2用閾値T2は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス2用閾値T2以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0072】
パス2用閾値T2は、上述したパス1用閾値T1と同様の手法により算出され、設定される。すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、ステップSD2、及び、ステップSD3の処理を実行し、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、特定する。
そして、1つの磁気インク文字に係るパス2用閾値T2を「パス2用閾値T2=(特定した複数の差異量の平均値)+(特定した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス2用閾値T2を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス2用閾値T2を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス2用閾値T2を適切な値とすることができる。
【0073】
差異量がパス2用閾値T2を上回る場合(ステップSD6:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第2認識パスを終了する。
差異量がパス2用閾値T2以下の場合(ステップSD6:NO)、文字認識部80は、さらに、パス2用第2候補C22とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量と、パス2用閾値T2とを比較し、当該差異量がパス2用閾値T2を上回るか否かを判別する(ステップSD7)。
【0074】
当該差異量がパス2用閾値T2を上回る場合(ステップSD7:YES)、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSD8)、第2認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス2用閾値T2以下の場合(ステップSD7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第2認識パスを終了する。
【0075】
このように、本実施形態では、パス2用第1候補C21とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量が、パス2用閾値T2以下の場合であっても、パス2用第2候補C22とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量が、パス2用閾値T2以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、上述したパス1用閾値T1で説明した理由と同様の理由による。
なお、ステップSD3で、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22とされた文字種類のそれぞれについて特定された差異量は、以降のステップまで保存される。
【0076】
さて、前掲図4を参照し、ステップSA3の第1認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA4)。
【0077】
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA5へ移行する。ステップSA5では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったか否か、換言すれば、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の全てについて、ステップSA1について文字の切り出しが行われ、かつ、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
そして、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA5:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字の切り出しを実行し、一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSA5:YES)、処理手順をステップSA6へ移行する。
【0078】
一方、ステップSA4において、第1認識フェーズで処理対象文字の文字種類が確定できなかったと判別した場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA7)。
【0079】
図8は、ステップSA7の第2認識フェーズの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第2認識フェーズにおいて、まず、文字認識部80は、検出信号波形データに基づいて、処理対象文字の文字間隔を算出する(ステップSE1)。
【0080】
処理対象文字の文字間隔とは、処理対象文字の文字開始位置と、処理対象文字の次の磁気インク文字(磁気インク文字列4Aにおいて、処理対象文字の前端4g側の隣に配列された磁気インク文字)の文字開始位置との離間量のことである。例えば、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形に基づいて、当該波形の各ピーク位置(極大値、極小値に対応するX軸の値)を検出し、検出したピーク位置に基づいて、処理対象文字の文字開始位置と、処理対象文字の次の磁気インク文字の文字開始位置とを検出し、検出した各文字の文字開始位置に基づいて、これら文字開始位置の離間量を検出し、検出した離間量を文字間隔とする。
上述したように、本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の文字間隔が一定(例えば、67サンプリング単位)となるように小切手4の搬送制御が実行され、また、サンプリング単位の長さが規定されている。以下、一定となるように規定された文字間隔を「基準文字間隔」というものとする。
【0081】
次いで、文字認識部80は、ステップSE1で検出した処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とを比較する(ステップSE2)。
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔」)、文字認識部80は、第3認識パスを実行し(ステップSE3)、当該第3認識パスにおいて処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、第2認識フェーズを終了し、文字種類が確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0082】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE4)、第5認識パス(ステップSE5)、及び、第3認識パス(ステップSE6)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0083】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合(ステップSE2:「文字間隔<基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE7)、及び、第3認識パス(ステップSE8)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0084】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE9)、第5認識パス(ステップSE10)、及び、第3認識パス(ステップSE11)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0085】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合(ステップSE2:「文字間隔>基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE12)、及び、第3認識パス(ステップSE13)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0086】
図9は、第3認識パスの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第3認識パスでは、後述する両側伸縮比較が行われ、この両側伸縮比較の結果に基づいて、処理対象文字の文字種類の確定、又は、処理対象文字の文字種類が確定できないことの検出が行われる。
【0087】
図9を参照し、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSF2以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSF1)。以下、ステップSF1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSF2以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、14回行われる。
次いで、文字認識部80は、両側伸縮テーブル90を参照する(ステップSF2)。
【0088】
図15は、両側伸縮テーブル90のデータ構造を模式的に示す図である。
図15に示すように、両側伸縮テーブル90では、14個の文字種類毎にレコードが生成されており、各レコードは、対応する文字種類の伸縮点を示す情報が格納される伸縮点フィールド91、最大縮み量を示すデータが格納される最大縮み量フィールド92、及び、最大伸び量を示すデータが格納される最大伸び量フィールド93の3つのフィールドを備えている。伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量については、後述する。
【0089】
次いで、文字認識部80は、参照した両側伸縮テーブル90において、比較対象文字種類に対応するレコードを取得し、当該レコードの伸縮点フィールド91、最大縮み量フィールド92、及び、最大伸び量フィールド93の各フィールドを参照し、当該比較対象文字種類に係る伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量のそれぞれの値を取得する(ステップSF3)。
【0090】
次いで、文字認識部80は、ステップSF3で取得した伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSF4)。
以下、ステップSF4の処理について詳述する。
【0091】
図16は、ステップSF4の処理を説明するために利用する図であり、詳細には、E−13Bフォントにおける文字種類「0」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。図16では、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形を実線で示しており、波形のX軸方向における幅は70サンプリング単位である。
以下では、比較対象文字種類が文字種類「0」であるものとし、ステップSF4において、文字種類「0」に対応する基準波形データの補正された波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する場合を例にして、ステップSF4の処理を説明するものとする。
【0092】
図15に示すように、本実施形態では、文字種類「0」の伸縮点は「42サンプリング単位目」であり、最大縮み量は「3サンプリング単位」であり、最大伸び量は「6サンプリング単位」である。
ステップSF4において、まず、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大縮み量である「3サンプリング単位」分、X軸方向左方へスライドさせる。これにより、図16を参照し、基準波形データの波形(実線で示す波形)は、破線で示す波形となるよう補正される。
【0093】
次いで、文字認識部80は、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する。このようにして差異量を算出した場合、基準波形データの波形のうち42サンプリング単位目より右方の波形は、3サンプリング単位分だけX軸方向左方へスライドされている。そのため、例えば、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の42サンプリング目の値は、補正「前」の基準波形データの波形の45サンプリング目の値との差分が取られ、また、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の43サンプリング目の値は、補正前の基準波形データの波形の46サンプリング目の値との差分が取られることとなる。
すなわち、差異量の算出に際し、n(ただし、n≧42)サンプリング単位目よりX軸方向左方の波形に関しては、処理対象文字の基準波形データのnサンプリング単位目の値と、補正前の基準波形データの波形の「n+3」サンプリング単位目の値との差分が取られることにより、差異量が算出されることとなる。nが70を超える場合は、70サンプリング単位目の値を使用する。
【0094】
このようにして最大縮み量に係る差異量を算出した後、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大縮み量である「3サンプリング単位」から「1サンプリング単位」減算した分、すなわち「2サンプリング単位」分、X軸方向左方へスライドさせる。このスライドにより、基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0095】
このようにして、文字認識部80は、最大縮み量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大縮み量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大縮み量の値が「1サンプリング単位」となるまで行われる。すなわち、文字認識部80は、3、2、1サンプリング単位分X軸左方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0096】
さらに、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大伸び量である「6サンプリング単位」分、X軸方向右方へスライドさせる。これにより、図16を参照し、基準波形データの波形(実線で示す波形)は、二点鎖線で示す波形となるよう補正される。
【0097】
次いで、文字認識部80は、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する。このようにして差異量を算出した場合、基準波形データの波形のうち42サンプリング単位目より右方の波形は、6サンプリング単位分だけX軸方向右方へスライドされているため、例えば、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の60サンプリング目の値は、補正「前」の基準波形データの波形の54サンプリング目の値との差分が取られる。また、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の61サンプリング目の値は、補正前の基準波形データの波形の55サンプリング目の値との差分が取られることとなる。
すなわち、差異量の算出に際し、n(ただし、n≧42)サンプリング単位目よりX軸方向左方の波形に関しては、処理対象文字の基準波形データのnサンプリング単位目の値と、補正前の基準波形データの波形の「n−6」サンプリング単位目の値との差分が取られることにより、差異量が算出されることとなる。n=43〜48の場合は、42サンプリング単位目の値を使用する。
【0098】
このようにして最大伸び量に係る差異量を算出した後、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大伸び量である「6サンプリング単位」から「1サンプリング単位」減算した分、すなわち「5サンプリング単位」分、X軸方向右方へスライドさせる。これにより、基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0099】
このようにして、文字認識部80は、最大伸び量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大伸び量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大伸び量の値が「1サンプリング単位」となるまで行われる。すなわち、文字認識部80は、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分X軸右方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0100】
さらに、文字認識部80は、基準波形データの波形について補正を行うことなく、処理対象文字に対応する文字波形データの波形と、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形との差異量を算出する。
【0101】
以上の例のようにして、ステップSF4では、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量が算出される。上記例で言えば、ステップSF4では、伸縮点よりも右方の波形について、3、2、1サンプリング単位分X軸左方へスライドさせたもの、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分X軸方向右方へスライドさせたもの、及び、スライドさせないものそれぞれについて、合計10通りの差異量が算出される。
【0102】
ここで、小切手4に対する磁気インク文字列4Aの記録に際し、磁気インク文字が印刷規格の中心値からずれて印刷されることに起因して、磁気インク文字が横方向(X軸に対応する方向)に縮んだ状態で、又は、伸びた状態で印刷されることがある。この場合、検出信号波形データに基づいて生成される文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。また、小切手4の搬送の状況によっては、文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。これを踏まえ、上述したように基準波形データの波形を所定の位置から所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した伸びや縮みを反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0103】
そして、各文字種類の伸縮点や、最大縮み量、最大伸び量は、磁気インク文字の伸びや縮みを反映して差異量を適切に算出することを目的として、事前の試験やシミュレーションの結果に基づいて、以下の観点で設定される。
すなわち、伸縮点は、磁気インク文字の基準波形データに対応する波形を、例えば、ピーク位置の密度に応じて分割したときの分割位置に対応する点が設定される。また、伸縮点は、磁気インク文字の基準波形データに対応する波形について、単位あたりの変化量が小さい点が設定される。
また、最大縮み量、及び、最大伸び量は、1つの文字種類に対応する基準波形データの波形を、最大縮み量、又は、最大伸び量に基づいて補正した場合であっても、当該1つの文字種類以外の文字種類の基準波形データの波形に近似してこない場合は、これらの値が大きく設定され、一方、近似してくる場合は、これらの値は、小さく設定される。
【0104】
ステップSF4において、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出した後、文字認識部80は、算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSF5)。
【0105】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSF4)、特定(ステップSF5)が終了したか否かを判別する(ステップSF6)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSF6:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSF1に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSF6:YES)、文字認識部80は、14個の文字種類のうち、特定された差異量が最も小さかった文字種類を、パス3用第1候補C31とし、特定された差異量が2番目に小さかった文字種類を、パス3用第2候補C32とする(ステップSF7)。
【0106】
次いで、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類について、ステップSF5で特定された差異量と、パス3用閾値T3とを比較し、当該差異量がパス3用閾値T3を上回るか否かを判別する(ステップSF8)。
パス3用閾値T3は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス3用閾値T3以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0107】
パス3用閾値T3は、上述したパス1用閾値T1と同様の手法により算出され、設定される。すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、ステップSF2〜ステップSF5の処理を実行し、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、特定する。そして、1つの磁気インク文字に係るパス3用閾値T3を「パス3用閾値T3=(特定した複数の差異量の平均値)+(特定した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス3用閾値T3を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス3用閾値T3を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス3用閾値T3を適切な値とすることができる。
【0108】
差異量がパス3用閾値T3を上回る場合(ステップSF8:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第3認識パスを終了する。
差異量がパス3用閾値T3以下の場合(ステップSF8:NO)、文字認識部80は、さらに、パス3用第2候補C32とされた文字種類について、ステップSF5で特定された差異量と、パス3用閾値T3とを比較し、当該差異量がパス3用閾値T3を上回るか否かを判別する(ステップSF9)。
【0109】
当該差異量がパス3用閾値T3を上回る場合(ステップSF9:YES)、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSF10)、第3認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス3用閾値T3以下の場合(ステップSF9:NO)、文字認識部80は、パス3用第2候補C32とされた文字種類に係る差異量が、パス3用第1候補C31とされた文字種類に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否かを判別する(ステップSF11)。
【0110】
5/4倍以上の大きさがある場合(ステップSF11:YES)、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSF10)、第3認識パスを終了する。
一方、5/4倍以上の大きさがない場合(ステップSF11:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第3認識パスを終了する。
【0111】
このように、本実施形態では、パス3用第1候補C31に係る差異量、及び、パス3用第2候補C32に係る差異量の双方が、パス3用閾値T3を下回る場合、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否か判別され、5/4倍以上の大きさがある場合は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがある場合、パス3用第1候補C31に係る差異量は、パス3用第2候補C32に係る差異量と比較して、十分に小さい値であると言うことができ、従って、パス3用第1候補C31とされた文字種類は、他の文字種類と比較して、処理対処文字の文字種類である蓋然性が十分に高いと言うことができるからである。
【0112】
次いで、第4認識パスについて、図9を援用して説明する。
第4認識パスの動作は、図9のステップSF11の処理、すなわち、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否かを判別する処理がない点において、第3認識パスの動作と異なっている。これにより、パス3用第1候補C31に係る差異量、及び、パス3用第2候補C32に係る差異量のいずれも、パス3用閾値T3を下回るような場合は、処理対象文字の文字種類を確定すると誤認識を招くおそれがあるとして、処理対象文字の文字種類が確定されない。
このように第4認識パスは、第3認識パスよりも、処理対象文字の文字種類を確定する条件が厳しくなっており、図8に示すように、必ず第3認識パスよりも前のステップで実行される。
【0113】
図10は、第5認識パスの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
図10を参照し、第5認識パスにおいて、まず、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があるのか、又は、「伸び」が発生している可能性があるのかを判別する(ステップSG1)。
【0114】
文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があるか否か、また、「伸び」が発生している可能性があるか否かを、以下のようにして判別する。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が基準文字間隔よりも小さい場合、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、縮小しているということであり、この場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があると判別する。一方、処理対象文字の文字間隔が基準文字間隔よりも大きい場合、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、伸張しているということであり、この場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「伸び」が発生している可能性があると判別する。
【0115】
ステップSG1において、「縮み」が発生している可能性があると判別した場合(ステップSG1:「縮み」)、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSG3以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSG2)。以下、ステップSG2で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSG3以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、1回ずつ行われる。
次いで、文字認識部80は、縮みテーブル94を参照する(ステップSG3)。
【0116】
図17(A)は、縮みテーブル94のデータ構造を模式的に示す図である。
図17(A)に示すように、縮みテーブル94では、14個の文字種類毎に、伸縮点を示す情報と、最大縮み量を示す情報とが対応づけて記憶されている。
なお、両側伸縮テーブル90と、縮みテーブル94において、同一の文字種類については、縮みテーブル94における最大縮み量の値は、両側伸縮テーブル90における最大縮み量の値以上となっている。
【0117】
次いで、文字認識部80は、参照した縮みテーブル94において、比較対象文字種類に対応するレコードを参照し、比較対象文字種類に係る伸縮点、及び、最大縮み量のそれぞれの値を取得する(ステップSG4)。
【0118】
次いで、文字認識部80は、ステップSG4で取得した伸縮点、及び、最大縮み量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSG5)。
【0119】
より詳細には、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大縮み量の値を上限として、最大縮み量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大縮み量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の算出は、減算後の最大縮み量の値が「0サンプリング単位」となるまで行われる。
例えば、比較対象文字種類が文字種類「0」の場合、図17(A)の縮みテーブル94を参照して、最大縮み量は、「3サンプリング単位」である。この場合、文字認識部80は、伸縮点より右方の波形について、3、2、1、0サンプリング単位分X軸左方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0120】
次いで、文字認識部80は、ステップSG5で算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSG6)。
【0121】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSG5)、特定(ステップSG6)が終了したか否かを判別する(ステップSG7)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSG7:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSG2に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSG7:YES)、文字認識部80は、14個の文字種類のうち、特定された差異量の値が最も小さかった文字種類を、パス5用第1候補C51とし、特定された差異量の値が2番目に小さかった文字種類を、パス5用第2候補C52とする(ステップSG8)。
【0122】
次いで、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量と、パス5用閾値T5とを比較し、当該差異量がパス5用閾値T5を上回るか否かを判別する(ステップSG9)。
パス5用閾値T5は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス5用閾値T5以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0123】
差異量がパス5用閾値T5を上回る場合(ステップSG9:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第5認識パスを終了する。
差異量がパス5用閾値T5以下の場合(ステップSG9:NO)、文字認識部80は、さらに、パス5用第2候補C52とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量と、パス5用閾値T5とを比較し、当該差異量がパス5用閾値T5を上回るか否かを判別する(ステップSG10)。
【0124】
当該差異量がパス5用閾値T5を上回る場合(ステップSG10:YES)、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSG11)、第5認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス5用閾値T5以下の場合(ステップSG10:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第5認識パスを終了する。
【0125】
このように、本実施形態では、パス5用第1候補C51とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量が、パス5用閾値T5以下の場合であっても、パス5用第2候補C52とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量が、パス5用閾値T5以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、上述したパス1用閾値T1で説明した理由と同様の理由による。
【0126】
また、本実施形態では、処理対象文字に対応する文字波形データの波形について、「縮み」が発生している可能性がある場合は、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大縮み量の値を上限として、所定の量だけX軸「左方」へスライドさせる。このスライドによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0127】
ここで、基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、X軸方向左方へスライドさせた場合、基準波形データの波形の全体としては、所定の範囲でX軸左方へ向かって縮んだ状態となる(例えば、図16参照)。
つまり、本実施形態では、文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性がある場合は、当該「縮み」に対応させて、基準波形データの波形を縮ませた上で、差異量を算出している。これにより、文字波形データの波形の「縮み」に対応して、適切に差異量を算出することができると共に、「伸び」に対応した補正を施した基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの間で差異量を算出しないため、処理効率が向上する。
【0128】
一方、ステップSG1において、「伸び」が発生している可能性があると判別した場合(ステップSG1:「伸び」)、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSG13以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSG12)。以下、ステップSG12で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSG13以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、14回行われる。
次いで、文字認識部80は、伸びテーブル95を参照する(ステップSG13)。
【0129】
図17(B)は、伸びテーブル95のデータ構造を模式的に示す図である。
図17(B)に示すように、伸びテーブル95では、14個の文字種類毎に、伸縮点を示す情報と、最大伸び量を示す情報とが対応づけて記憶されている。
なお、両側伸縮テーブル90と、伸びテーブル95において、同一の文字種類については、伸びテーブル95における最大伸び量の値は、両側伸縮テーブル90における最大伸び量の値以上となっている。
【0130】
次いで、文字認識部80は、参照した伸びテーブル95において、比較対象文字種類に対応するレコードを参照し、比較対象文字種類に係る伸縮点、及び、最大伸び量のそれぞれの値を取得する(ステップSG14)。
【0131】
次いで、文字認識部80は、ステップSG14で取得した伸縮点、及び、最大伸び量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSG15)。
【0132】
より詳細には、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大伸び量の値を上限として、最大伸び量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大伸び量だけ、X軸右方向へスライドさせることによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大伸び量の値が「0サンプリング単位」となるまで行われる。
例えば、比較対象文字種類が文字種類「0」の場合、図17(B)の伸びテーブル95を参照して、最大伸び量は、「6サンプリング単位」である。この場合、文字認識部80は、伸縮点より右方の波形について、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分X軸右方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0133】
次いで、文字認識部80は、ステップSG15で算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSG16)。
【0134】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSG15)、特定(ステップSG16)が終了したか否かを判別する(ステップSG17)。
【0135】
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSG17:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSG12に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSG17:YES)、文字認識部80は、ステップSG18〜ステップSG21の各処理を実行する。ステップSG18〜ステップSG21の処理は、上述した、ステップSG8〜ステップSG11の処理と同様なため、その説明を省略する。
【0136】
このように、本実施形態では、処理対象文字に対応する文字波形データの波形について、「伸び」が発生している可能性がある場合は、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大伸び量の値を上限として、所定の量だけX軸右方へスライドさせる。このスライドによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0137】
ここで、基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、X軸右方へスライドさせた場合、基準波形データの波形の全体としては、所定の範囲でX軸右方へ向かって伸びた状態となる(例えば、図16参照)。
つまり、本実施形態では、文字波形データの波形に「伸び」が発生している可能性がある場合は、当該「伸び」に対応させて、基準波形データの波形を伸ばした上で、差異量を算出している。これにより、文字波形データの波形の「伸び」に対応して、適切に差異量を算出することができると共に、「縮み」に対応した補正を施した基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの間で差異量を算出しないため、処理効率が向上する。
【0138】
さて、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔」)、第3認識パスにより、処理対象文字の認識を行う。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合、処理対象文字の文字波形データの波形について、伸びや縮みが発生していない場合が多く、また、伸びや縮みが発生している場合であっても、伸びと、縮みとのうちいずれか一方が発生している可能性が高いとは言えない。これを踏まえ、上記の場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスのみを実行する構成とし、処理効率の向上を図っている。なお、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合は、正常に磁気ヘッド54による読み取りや、小切手4の搬送が実行された可能性が高いことを踏まえ、本実施形態では、文字種類の確定の条件が厳しい第4認識パスを行わない構成となっているが、第3認識パスの実行の前に、第4認識パスを行う構成であってもよい。
【0139】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE4)、第5認識パス(ステップSE5)、及び、第3認識パス(ステップSE6)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合、文字間隔が、基準文字間隔よりも「1サンプリング単位」小さく、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、1サンプリング単位分、縮小しているということである。この場合、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性は、処理対象文字の波形が伸びている可能性よりも高いと言える。ただし、文字間隔と、基準文字間隔との差が「1サンプリング単位」以上存在している場合と比較して、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性は、「伸び」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではなく、また、「縮み」が発生している場合であっても、「1サンプリング単位」に対応する非常に小さな縮みである可能性が高い。
これを踏まえ、本実施形態では、上記の場合、第4認識パス、第5認識パス、及び、第3認識パスの順に段階的に認識に係る処理を実行する。
【0140】
詳述すると、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性は、「伸び」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではないことを考慮し、まず、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第4認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。第4認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性が、処理対象文字の波形が伸びている可能性よりも高いことを考慮して、第5認識パスを実行し、処理対象文字の波形が縮んでいる場合に特化した処理対象文字の認識を行う。
【0141】
なお、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性がある場合(図10のステップSG1:「縮み」)、第5認識パスでは、縮みテーブル94が参照されることとなるが、上述したように、両側伸縮テーブル90と、縮みテーブル94において、同一の文字種類については、縮みテーブル94における最大縮み量の値は、両側伸縮テーブル90における最大縮み量の値以上の値となっている。従って、第5認識パスの方が、第4認識パスよりも、処理対象文字の波形の「縮み」により対応した処理対象文字の認識を実現可能である。
そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、第4認識パスよりも文字種類の確定のための条件が緩い第3認識パスを実行する。これにより、確定された文字種類が正しい文字種類であることの信頼性を担保しつつ、文字種類の確定の成功率を向上している。
【0142】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合(ステップSE2:「文字間隔<基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE7)、及び、第3認識パス(ステップSE8)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性が比較的高いと言える。
これを踏まえ、まず、文字認識部80は、まず、処理対象文字の波形が縮んでいる場合に特化した処理対象文字の認識を行う第5認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスを行っている。
【0143】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE9)、第5認識パス(ステップSE10)、及び、第3認識パス(ステップSE11)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合、文字間隔が、基準文字間隔よりも「1サンプリング単位」大きく、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、1サンプリング単位分、伸張しているということである。この場合、処理対象文字の波形が伸びている可能性は、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性よりも高いと言える。ただし、文字間隔と、基準文字間隔との差が「1サンプリング単位」以上存在している場合と比較して、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性は、「縮み」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではなく、また、「伸び」が発生している場合であっても、「1サンプリング単位」に対応する非常に小さな伸びである可能性が高い。
これを踏まえ、本実施形態では、上記の場合、第4認識パス、第5認識パス、及び、第3認識パスの順に段階的に認識に係る処理を実行する。
【0144】
詳述すると、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性は、「縮み」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではないことを考慮し、まず、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第4認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。第4認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、処理対象文字の波形が伸びている可能性が、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性よりも高いことを考慮して、第5認識パスを実行し、処理対象文字の波形が伸びている場合に特化した処理対象文字の認識を行う。
【0145】
なお、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性がある場合(図10のステップSG1:「伸び」)、第5認識パスでは、伸びテーブル95が参照されることとなるが、上述したように、両側伸縮テーブル90と、伸びテーブル95において、同一の文字種類については、伸びテーブル95における最大伸び量の値は、両側伸縮テーブル90における最大伸び量の値以上の値となっている。従って、第5認識パスの方が、第4認識パスよりも、処理対象文字の波形の「伸び」により対応した処理対象文字の認識を実現可能である。
そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、第4認識パスよりも文字種類の確定のための条件が緩い第3認識パスを実行する。これにより、確定された文字種類が正しい文字種類であることの信頼性を担保しつつ、文字種類の確定の成功率を向上している。
【0146】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合(ステップSE2:「文字間隔>基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE12)、及び、第3認識パス(ステップSE13)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合、処理対象文字の波形が伸びている可能性が比較的高いと言える。
これを踏まえ、まず、文字認識部80は、まず、処理対象文字の波形が伸びている場合に特化した処理対象文字の認識を行う第5認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスを行っている。
【0147】
以上、第2認識フェーズの処理について説明したが、第2認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、必ず、第3認識パスが実行され、第3認識パスの実行に伴って、パス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32が特定された状態となる。また、パス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32とされた文字種類のそれぞれについて特定された差異量は、以降のステップまで保存される。
【0148】
さて、前掲図4を参照し、文字認識部80は、第2認識フェーズ(ステップSA7)の実行後、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA8)、確定できた場合は(ステップSA8:YES)、処理手順をステップSA5へ移行する。
確定できなかった場合は(ステップSA8:NO)、第1認識フェーズの第2認識パスで特定されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれについて特定された差異量と、第2認識フェーズの第3認識パスで特定されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれについて特定された差異量とを比較する(ステップSA9)。
【0149】
ステップSA9における差異量の比較の結果、文字認識部80は、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。ただし、差異量が2番目に小さかった候補の文字種類が差異量が最も小さかった候補の文字種類と同じ場合は、その次に差異量が小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42とする。
後述する光学認識処理(ステップSA18)において、これら第1候補C41、及び、第2候補C42と、光学文字認識において仮確定された文字と、が一致するか否かが判別される。
【0150】
ここで、第1認識フェーズの第2認識パスでは、処理対象文字の文字波形データの波形にずれがある場合を想定して、ずれを反映した上で差異量の算出が行われているが、波形の伸び縮みは反映されていない。一方、第2認識フェーズの第3認識パスでは、処理対象文字の文字波形データの波形に伸び縮みがある場合を想定して、伸び縮みを反映した上で差異量の算出が行われているが、波形のずれは反映されていない。
そのため、例えば、ステップSA1での文字の切り出し位置にずれがある場合、第1認識フェーズの第2認識パスで算出される差異量は、第2認識フェーズの第3認識パスで算出される差異量よりも小さくなる可能性が高い。また、印刷等に起因して磁気インク文字の伸び縮みがある場合、第2認識フェーズの第3認識パスで算出される差異量は第1認識フェーズの第2認識パスで算出される差異量よりも小さくなる可能性が高い。
そこで、第1認識フェーズの第2認識パスで算出された差異量と、第2認識フェーズの第3認識パスで算出された差異量とを比較して、差異量が小さかった方の文字種類を候補とすることで、より確実性が高い文字種類の候補を得ることができる。
【0151】
さて、前掲図4を参照し、ステップSA5において、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA5:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の数を検出する(ステップSA6)。
次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0152】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を実行する光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0153】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
【0154】
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0155】
図11は、ステップSA18の光学認識処理の実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
光学認識処理において、まず、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された、小切手4の表面の画像を示すデータに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の光学文字認識を実行する(ステップSK1)。
【0156】
ステップSK1では、例えば、文字認識部80は、小切手4の表面を示す画像データにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定すると共に、特定した範囲のデータについて、磁気インク文字ごとに画像データを切り出す。
次いで、文字認識部80は、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと、切り出した磁気インク文字の画像データとを比較することにより、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。なお、ステップSK1で確定された文字種類は、最終的な文字種類の確定ではないため、「仮確定」と表現する。
【0157】
次いで、文字認識部80は、ステップSK1の光学文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSK2)。
【0158】
次いで、文字認識部80は、図4のステップSA6で検出した文字数、すなわち、磁気ヘッド54により読み取られた検出信号波形データに基づいて検出された文字数と、ステップSK2で検出された文字数とが一致するか否かを判別する(ステップSK3)。
【0159】
文字数が一致しない場合(ステップSK3:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK5以下の処理は、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用して、文字種類が確定していない磁気インク文字について、文字種類の確定を試みる処理である。従って、上記文字数が異なっている場合は、検出信号波形データに基づいて切り出した磁気インク文字のそれぞれと、光学的な文字認識により切り出した磁気インク文字のそれぞれとの対応関係について確実性が担保できず、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用した文字種類の確定を実行できないからである。
【0160】
文字数が一致する場合(ステップSK3:YES)、文字認識部80は、図4のステップSA8において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の中から1つの磁気インク文字をステップSK6以下の処理を行う対象として特定する(ステップSK5)。ステップSK5以下の処理は、磁気インク文字認識では文字種類が確定できなかった磁気インク文字のそれぞれについて、順番に、行われる。以下、ステップSK5で特定された磁気インク文字を「処理対象文字」というものとする。
【0161】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類を取得する(ステップSK6)。
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類と、上述したステップSA10において第1候補C41とされた文字種類、及び、第2候補C42とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSK7)。
【0162】
一致する場合(ステップSK7:YES)、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSK8)、処理手順をステップSK9へ移行する。
一方、一致しない場合(ステップSK7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別し(ステップSK10)、処理手順をステップSK9へ移行する。
【0163】
ステップSK9において、文字認識部80は、図4のステップSA8において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の全てが、処理対象文字となったか否かを判別する。全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSK9:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSK5へ戻す。
一方、全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSK9:YES)、文字認識部80は、文字種類を確定できない磁気インク文字が1つでもあるか否か、すなわち、ステップSK10において、文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字が1つでも存在するか否かを判別する(ステップSK11)。
【0164】
文字種類を確定できなかったものが1つも存在しない場合(ステップSK11:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに成功したと判別し(ステップSK12)、光学認識処理を終了する。
一方、文字種類を確定できなかったものが1つでも存在する場合(ステップSK11:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。
【0165】
このように、本実施形態では、ステップSK1の光学文字認識処理において処理対象文字の文字種類を仮確定し、当該仮確定した文字種類が、ステップSA10において第1候補C41とされた文字種類、及び、第2候補C42とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK1の光学文字認識処理は、小切手4の表面を示す画像データに基づいて、光学文字認識により、磁気インク文字の文字種類を仮確定する。ここで、小切手4の表面には、ペン等でサインが記入されている場合が多く、当該サインが、磁気インク文字列4Aの誤認識の原因となる場合があることが知られている。
これを踏まえ、本実施形態では、磁気的な処理による文字種類の確定ができなかった磁気インク文字について、単純に光学文字認識によって文字種類を確定しない。光学文字認識により仮確定した文字種類が、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズにおける認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いとされた第1候補C41に係る文字種類、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いとされた第2候補C42に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これにより、誤認識を効果的に抑制している。
【0166】
特に、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズの双方の認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いと考えられる第1候補C41、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いと考えられる第2候補C42を選別しており、候補とする文字種類の信頼性が高いといえる。そのため、これらの第1候補C41、及び、第2候補C42を利用して文字種類を確定することにより、誤認識を抑制した信頼性の高い認識結果を得ることができる。
【0167】
なお、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、磁気インク文字認識による文字種類の確定、及び、光学文字認識による文字種類の確定を行い、磁気的な処理によって確定した文字種類と、光学文字認識によって確定した文字種類が一致する場合に、磁気インク文字の文字種類の最終的な確定を行うようにし、磁気インク文字の誤認識の低下を図ることも考えられる。しかしながら、この場合、誤認識は低下するものの、文字種類の確定の成功率(認識率)が低下することが考えられる。本実施形態では、上述した動作を実行するため、誤認識を抑制しつつ、認識率の低下を効果的に防止できる。
【0168】
以上説明したように、本実施形態では、磁気インク文字を異なる方法によって磁気インク文字認識するとして、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズを備え、これら処理フェーズにおける磁気インク文字認識の結果のそれぞれに基づいて、磁気インク文字が示す文字種類を確定する。
これにより、異なる方法によって磁気インク文字認識する2つの処理フェーズにおける磁気インク文字認識の結果に基づいて、多面的に磁気インク文字が示す文字種類の認識を行うことができ、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0169】
本実施形態では、第1認識フェーズにおいて、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形との差異に応じた差異量を算出し、ずれを反映して算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補としてパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22を選別する。
これにより、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
【0170】
また、本実施形態では、第2認識フェーズにおいて、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形との差異に応じた差異量を算出し、伸び縮みを反映して算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補としてパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32を選別する。
これにより、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
【0171】
さらに、本実施形態では、第2認識フェーズまでで処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、ステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量と、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量とを比較する。そして、ステップSA10では、ステップSA9における比較の結果から、差異量が小さい順に、磁気インク文字の文字種類の第1候補C41、及び、第2候補C42を決定する。
そのため、磁気インク文字認識により処理対象文字の文字種類を確定できない場合でも、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズの双方の認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いと考えられる第1候補C41、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いと考えられる第2候補C42が選別される。これにより、1つの処理フェーズのみの結果から文字種類の候補を選別する場合に比べて、より確実性が高い候補が得られるので、磁気インク文字の誤認識を効果的に抑制できる。
【0172】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0173】
第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第1の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムに対して、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理をさらに含む点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。図18は、第2の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0174】
第2の実施形態では、図18に示すステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量と、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量とを比較する。
【0175】
ステップSA9の比較において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21の差異量が、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合(ステップSA11:YES)、文字認識部80は、基準波形データの波形を、例えば、パス2用第1候補C21についてスライドさせた量(スライド量)だけスライドさせることにより、第1認識フェーズでのスライド量を反映させる(ステップSA12)。
なお、第1認識フェーズにおいて差異量を算出した際の、ステップSD2における基準波形データの波形のスライド量は保存されているものとする。
【0176】
次いで、基準波形データの波形に第1認識フェーズでのスライド量を反映させた状態で、第2認識フェーズを再度実行する(ステップSA13)。なお、2回目の第2認識フェーズ(ステップSA13)における処理は、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて行うこと以外は、1回目の第2認識フェーズ(ステップSA7)における処理と同じである。
【0177】
2回目の第2認識フェーズ(ステップSA13)の実行後、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA14)、確定できた場合は(ステップSA14:YES)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0178】
確定できなかった場合は(ステップSA14:NO)、2回目の第2認識フェーズで新たに選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量と、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量とを比較する。
差異量の比較の結果、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。
ただし、差異量が2番目に小さかった候補の文字種類が差異量が最も小さかった候補の文字種類と同じ場合は、その次に差異量が小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42とする。
【0179】
このように、ステップSA9の比較において、第1認識フェーズのパス2用第1候補C21の差異量が第2認識フェーズのパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合に、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行するのは、以下の理由による。
すなわち、第1認識フェーズでパス2用第1候補C21として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズでパス3用第1候補C31として選別された文字種類の差異量よりも小さい場合は、ステップSA1での文字の切り出し位置のずれ等により検出波形の位置がずれている可能性が高いと考えられる。そのような場合に、波形の位置がずれたままの状態(スライド量を反映しない状態)で基準波形に伸び縮みを反映して差異量の算出を行っても、差異量が小さくならない可能性が高い。
そこで、このような場合に、第1認識フェーズでのスライド量だけ基準波形データの波形をスライドさせた上で2回目の第2認識フェーズを実行すれば、検出波形の位置のずれが反映され、さらに波形の伸び縮みが反映されるので、検出波形の位置のずれ及び伸び縮みの影響を抑えて、磁気インク文字の認識を行うことができる。これにより、認識率を向上できる。
【0180】
なお、第1認識フェーズでパス2用第1候補C21として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズでパス3用第1候補C31として選別された文字種類の差異量よりも大きい場合は、検出波形の位置がずれている可能性が高いとはいえない。このような場合に、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行すると、かえって検出波形と基準波形との間の差異量が大きくなってしまうおそれがある。
したがって、本実施形態では、パス2用第1候補C21の差異量がパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合にのみ、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行することとしている。
【0181】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0182】
第3の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第2の実施形態に対して、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合には、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。図19は、第3の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。なお、第2の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0183】
第3の実施形態では、図19に示すステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22の文字種類が、「2」及び「5」であるかを判別する(ステップSA15)。
【0184】
パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のいずれか一方が「2」及び「5」のいずれか一方であり、かつ、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22の他方が「2」及び「5」の他方である場合(ステップSA15:YES)、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない。この場合、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0185】
一方、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」以外である場合(ステップSA15:NO)、第2の実施形態と同様に、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行する。
【0186】
パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合に、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない理由を以下に説明する。図20(A)はE−13Bフォントにおける文字種類「2」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図であり、図20(B)はE−13Bフォントにおける文字種類「5」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。
【0187】
図20(A),(B)に示すように、E−13Bフォントにおける文字種類「2」の文字波形データと文字種類「5」の文字波形データとは互いに類似している。より具体的には、図20(A)に示す「2」の文字波形データにおける一端側の1サンプリング単位目から28サンプリング単位目の部分W2aと、図20(B)に示す「5」の文字波形データにおける一端側の1サンプリング単位目から28サンプリング単位目の部分W5aとでは、波形及びピーク位置がほぼ同じである。
また、図20(A)に示す「2」の文字波形データにおける他端側の29サンプリング単位目から57サンプリング単位目の部分W2bと、図20(B)に示す「5」の文字波形データにおける他端側の36サンプリング単位目から64サンプリング単位目の部分W5bとでは、波形がほぼ同じである。そして、部分W2bのピーク位置と部分W5bのピーク位置とは7サンプリング単位程度ずれているが、部分W5bを図20(B)におけるX軸方向左方に7サンプリング単位分スライドさせると、部分W2bと部分W5bとで波形及びピーク位置はほぼ同じとなる。
【0188】
上述した通り、第1認識フェーズの第2認識パス(ステップSD2)では、基準波形データの波形全体を、X軸方向左方へ7サンプリング単位分スライドさせて差異量を算出するとともに、X軸方向右方へ7サンプリング単位分スライドさせて差異量を算出する。そうすると、比較対象文字種類が「2」又は「5」である場合、基準波形データの波形を7サンプリング単位分スライドさせると、基準波形データの文字種類が「2」及び「5」のいずれの場合でも、処理対象文字の文字波形データの波形に対して、一端側の部分W2aと部分W5aと、又は、他端側の部分W2bと部分W5bと、のいずれかが重なるので、差異量は小さくなる。
そのため、文字種類の「2」と「5」とを識別する場合、第1認識フェーズにおいて波形のずれを反映して差異量を比較しても確実性の高い選別ができるとはいい難く、第1認識フェーズにおけるスライド量を反映して第2認識フェーズを再度実行した場合、かえって誤認識を招くおそれがある。
【0189】
本実施形態では、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合は、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行せず、第1候補C41と第2候補C42とを決定するので、文字種類の「2」と「5」との間で誤認識、あるいは、認識不可能が生じることを防止できる。
【0190】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0191】
例えば、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0192】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、54…磁気ヘッド(磁気読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小切手等の記録媒体に記録された磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドを備え、搬送路を搬送される記録媒体の磁気インク文字を読み取って、磁気インク文字を認識する記録媒体処理装置(小切手類読取装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような記録媒体処理装置では、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた文字種類の基準波形とを比較して、磁気インク文字認識を行い、磁気インク文字の文字種類を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気インク文字認識においては、磁気インク文字の印刷のズレ、記録媒体の搬送状況、磁気ヘッドによる磁気インクの読み取り等に起因して、理想的な波形に対して、検出波形の位置がずれていたり検出波形に伸び縮みが生じていたりする場合がある。
上述した記録媒体処理装置による磁気インク文字の認識の結果は、例えば、小切手に対する各種処理を行う際に利用される。このため、磁気インク文字の認識に際し、検出波形の位置のずれや検出波形の伸び縮みの影響をできるだけ排して、誤認識を抑制したいとするニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、上述の2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1認識フェーズ及び前記第2認識フェーズのそれぞれでは、算出した前記差異量が小さい順に、少なくとも前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を選別し、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、認識方法が異なる第1認識フェーズ及び第2認識フェーズのそれぞれで差異量が小さい順に第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類の中から、さらに差異量が小さい順に第1候補、及び、第2候補を決定するので、磁気インク文字の誤認識を効果的に抑制できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記制御部は、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量が、前記第2認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量よりも小さい場合は、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを前記第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせて、2回目の前記第2認識フェーズを実行し、前記2回目の第2認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1認識フェーズで第1候補として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズで第1候補として選別された文字種類の差異量よりも小さい場合は、検出波形の位置がずれている可能性が高いと考えられる。そのため、第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせた上で第2認識フェーズを再度実行することにより、検出波形の位置のずれ及び伸び縮みの双方の影響を抑えて、磁気インク文字の認識を行うことができる。これにより、誤認識をより効果的に抑制できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記2回目の第2認識フェーズは、前記磁気インク文字のフォントがE−13Bフォントであって、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類、及び、前記第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合以外に実行することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、E−13Bフォントにおける文字種類「2」と「5」とでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形の一端側、及び、他端側が互いに類似しているため、基準波形をスライドさせると「2」と「5」とを誤認識するおそれがある。そのため、第1認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合には、波形をスライドさせた上で行う2回目の第2認識フェーズを実行しないことで、「2」と「5」との誤認識を抑えることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0016】
[適用例6]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定する手段として機能させることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1認識フェーズでは、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形とを比較するので、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。第2認識フェーズでは、検出波形と、複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形とを比較するので、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
また、第1認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量と、第2認識フェーズで候補として選別された文字種類の差異量とを比較して、磁気インク文字の文字種類の候補を決定する。そのため、文字種類の候補として、2通りの異なる方法による磁気インク文字認識の結果からより確実性が高いと考えられる方を選別できるので、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る小切手読取装置の外観斜視図である。
【図2】小切手読取装置の内部構造を示す図である。
【図3】小切手読取装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図11】第1の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図12】検出信号波形データの一例を示す図である。
【図13】文字波形データの一例を示す図である。
【図14】差異量を説明するための図である。
【図15】伸縮テーブルのデータ構造を示す図である。
【図16】伸縮させた基準波形データを示す図である。
【図17】(A)は縮みテーブルを示し、(B)は伸びテーブルを示す図である。
【図18】第2の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施形態に係る文字認識部の動作を示すフローチャートである。
【図20】(A)はE−13Bフォントにおける文字種類「2」に対応する基準波形データの内容を模式的に示し、(B)はE−13Bフォントにおける文字種類「5」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の寸法の比率、角度等が異なる場合がある。
【0020】
(第1の実施形態)
<記録媒体処理装置>
第1の実施形態に係る記録媒体処理装置を説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、小切手読取装置1とホストコンピューター70とで構成される。
【0021】
まず、第1の実施形態に係る小切手読取装置1の概略構成を説明する。図1は、本実施形態に係る小切手読取装置1の外観斜視図である。
小切手読取装置1は、シート状の記録媒体である小切手4に対し、小切手4に記録された磁気インク文字(MICR文字)の読み取りや、小切手4の両面の画像の読み取り、小切手4に対する裏書きに係る所定の画像の記録等の処理を行う装置である。
小切手読取装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の上側に被せた蓋ケース3とを備えており、この内部に各部品が組み込まれた構成となっている。
蓋ケース3には、上から見た場合にU形状をした細幅の垂直溝からなる小切手4の搬送路5が形成されており、搬送路5の一方の端は広幅の垂直溝からなる小切手供給部6に連通しており、搬送路5の他方の端は左右に分岐して、それぞれ広幅の垂直溝からなる第1小切手排出部7及び第2小切手排出部8に繋がっている。
【0022】
小切手4の表面4aには、所定の模様が形成された背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、その下端部分には、図1に示すように、長辺方向に延びる磁気インク文字列4Aが記録されている。磁気インク文字列4Aは、複数の磁気インク文字が横方向に並んで形成されている。
また、小切手4の裏面4bには、裏書き欄が形成されている。この裏書き欄には、後述する記録装置56によって、裏書きに係る所定の画像が記録される。
小切手4は、上端4eが上方に位置し下端4fが下方に位置するように上下方向が揃えられ、かつ、表面4aがU形状の搬送路5の外側を向くように表裏が揃えられた状態(図1に示す状態)で、小切手供給部6に挿入される。小切手供給部6に挿入された小切手4は、後端4dを先頭として搬送路5に送り出される。
【0023】
小切手供給部6から送り出された小切手4は、搬送路5に沿って搬送されながら、表面4aの画像である表面画像、及び、裏面4bの画像である裏面画像が読み取られ、さらに、表面4aに記録されている磁気インク文字列4Aが磁気的に読み取られる。そして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、裏書きに係る所定の画像の記録が行われた後に、第1小切手排出部7に排出される。
一方、読み取りが失敗した小切手4については、裏書きに係る所定の画像が記録されることなく、第2小切手排出部8に排出される。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0024】
図2は小切手読取装置1の内部構造を示す説明図である。
小切手供給部6には、小切手4を搬送路5に送り出すための小切手送り出し機構10が配置されている。小切手送り出し機構10は、繰り出しローラー11、送り出しローラー12、送り出しローラー12に押し付けられているリタードローラー13、送り出し用モーター14、及び小切手押し付け用のホッパー15を備えている。
送り出し用モーター14が駆動すると、小切手供給部6に入れた小切手4がホッパー15によって繰り出しローラー11の側に押し付けられ、この状態で、繰り出しローラー11及び送り出しローラー12が同期回転する。
【0025】
繰り出しローラー11によって小切手4は送り出しローラー12とリタードローラー13の間に送り込まれる。リタードローラー13には所定の回転負荷が与えられており、送り出しローラー12に直接に接触している一枚の小切手4のみが他の小切手4から分離されて搬送路5に送り出される。
搬送路5は上述したようにU形状をしており、小切手供給部6に繋がっている直線状の上流側搬送路部分21と、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に繋がっており、僅かに折れ曲がった状態で延びている下流側搬送路部分23と、これらの間を繋ぐ湾曲搬送路部分22とを備えている。
【0026】
小切手供給部6から搬送路5に送り出された小切手4を当該搬送路5に沿って搬送する小切手搬送機構30は、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36と、これらに押し付けられて連れ回りする第1押圧ローラー41〜第6押圧ローラー46と、第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36を回転駆動するための搬送用モーター37とを備えている。第1搬送ローラー31〜第6搬送ローラー36は同期して回転するようになっている。搬送用モーター37として、例えばステッピングモーターが用いられている。このため、ステッピングモーターを駆動するステップ数により、小切手4の搬送量を知ることができる。
【0027】
第1搬送ローラー31〜第3搬送ローラー33は、上流側搬送路部分21における上流端、その中程の位置、及び湾曲搬送路部分22との境界位置にそれぞれ配置されている。第4搬送ローラー34は湾曲搬送路部分22における下流側の位置に配置されている。第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36は、下流側搬送路部分23における中程の位置及び下流端にそれぞれ配置されている。
【0028】
上流側搬送路部分21における第1搬送ローラー31及び第2搬送ローラー32の間には、その上流側から磁気インク文字着磁用の磁石51、光学読取部としての表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53が配置されている。表面側コンタクトイメージセンサー52は、搬送路5を搬送される小切手4の表面4aに対向し、表面4aの画像である表面画像を読み取る。裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bに対向し、裏面4bの画像である裏面画像を読み取る。
【0029】
また、第2搬送ローラー32及び第3搬送ローラー33の間には、磁気インク文字を読み取る磁気読取部としての磁気ヘッド54が配置されており、磁気ヘッド54には、当該ヘッドに小切手4を押し付けるための押圧ローラー55が対峙している。
下流側搬送路部分23における第5搬送ローラー35及び第6搬送ローラー36の間には、裏書きに係る所定の画像の記録用の記録装置56が配置されている。記録装置56は、搬送路5を搬送される小切手4の裏面4bの適切な位置に、適切な方向で所定の画像を記録可能な、印刷ヘッドやスタンプなどを備えている。
【0030】
搬送路5には、小切手搬送制御のための各種センサーが配置されている。磁石51の手前側の位置には、送り出される小切手4の長さを検出するための用紙長検出器61が配置されている。裏面側コンタクトイメージセンサー53と第2搬送ローラー32との間には、小切手4が重なった状態で搬送されていることを検出するための重送検出器62が配置されている。第4搬送ローラー34の手前側の位置にはジャム検出器63が配置されており、ジャム検出器63によって所定時間以上に亘って継続して小切手4が検出されている場合には、搬送路5に小切手4が詰まった紙詰まり状態になったことが分かる。
第5搬送ローラー35の手前側の位置には、記録装置56によって裏書きされる小切手4の有無を検出するための印刷検出器64が配置されている。さらに、第6搬送ローラー36の下流側の位置、すなわち、搬送路5から第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に分岐している分岐路9の位置には、これらに排出される小切手4を検出するための排出検出器65が配置されている。
【0031】
分岐路9には、駆動モーター67(図3参照)によって切り替え操作される切り替え板66が配置されている。切り替え板66は、第1小切手排出部7、第2小切手排出部8に対して、搬送路5の下流端を選択的に切り替え、小切手4を選択された排出部に導くための部材である。
【0032】
図3は小切手読取装置1の機能的構成を示すブロック図である。
制御部71は、後述するホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の各部を中枢的に制御するものであり、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えている。
制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、送り出し用モーター14、搬送用モーター37を駆動して小切手4(図1参照)を一枚ずつ搬送路5に送り出させ、送り出された小切手4を搬送路5に沿って搬送させる。制御部71による小切手4の搬送制御は、搬送路5に配置されている用紙長検出器61、重送検出器62、ジャム検出器63、印刷検出器64及び排出検出器65からの検出信号に基づいて行われる。
【0033】
小切手4の搬送に伴って、表面側コンタクトイメージセンサー52、及び、裏面側コンタクトイメージセンサー53は、搬送路5を搬送される小切手4の表面の画像、裏面の画像をそれぞれ読み取り、読み取った画像を示す画像データを制御部71に出力する。制御部71は、これら画像データを、ホスト側制御部73に出力する。
また、磁気ヘッド54は、制御部71の制御の下、通過する磁気インク文字列4A(図1参照)によって形成される磁界の変化によって発生する起電力を検出し、検出信号として信号処理回路74に出力する。
【0034】
信号処理回路74は、増幅器や、ノイズ除去用のフィルター回路、A/D変換器等を備え、磁気ヘッド54から入力された検出信号を、増幅し、波形整形し、データとして制御部71に出力する。制御部71は、信号処理回路74から入力された検出信号を示すデータを、ホスト側制御部73に送信する。
操作部75は、本体ケース2(図1参照)に形成された電源スイッチや、操作スイッチ等の各種スイッチを備え、これらスイッチに対するユーザーの操作を検出し、制御部71に出力する。
【0035】
小切手読取装置1には、通信ケーブル72を介してホストコンピューター70が接続されている。
ホストコンピューター70は、CPUや、ROM、RAM、その他の周辺回路等を備えて構成されたホスト側制御部73を備えている。ホスト側制御部73は、後述する文字認識部80を備えている。
ホスト側制御部73には、各種情報を表示可能な表示器76と、キーボード、マウス等の入力デバイスが接続された操作部77と、EEPROMやハードディスク等の書き換え可能に各種データを記憶する記憶部78と、が接続されている。
記憶部78は、小切手読取装置1から入力された小切手4の表面画像や、裏面画像を示すデータや、検出信号を示すデータを記憶する。
【0036】
本実施形態では、ホストコンピューター70のホスト側制御部73の制御の下、小切手読取装置1の制御部71が小切手読取装置1の各部を制御する。具体的には、ホスト側制御部73は、そのCPUがROMに記憶されたプログラムを実行して、制御部71を制御するための制御データを生成し、生成した制御データを小切手読取装置1の制御部71に対して出力することにより、小切手読取装置1の各部を制御する。すなわち、本実施形態では、ホストコンピューター70と、小切手読取装置1とが協働して、記録媒体たる小切手4に対して各種処理を実行する記録媒体処理装置として機能する。
【0037】
<文字認識部>
次いで、ホスト側制御部73が備える文字認識部80について説明する。
文字認識部80は、磁気インク文字列4Aを構成する磁気インク文字のそれぞれについて、文字の認識を行う。磁気インク文字とは、所定のフォント(例えば、E−13Bフォント)に準拠して、小切手4に磁気印刷された文字のことであり、1つの磁気インク文字は、予め定められた複数の文字種類のうちのいずれか1つの文字種類に対応している。そして、磁気インク文字の認識とは、読み取った磁気インク文字のそれぞれについて、各磁気インク文字の文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0038】
なお、E−13Bフォントでは、磁気インク文字の形状として、「0」〜「9」、トランジット記号(TRANSIT SYMBOL)、アマウント記号(AMOUNT SYMBOL)、オン−アス記号(ON−US SYMBOL)、及び、ダッシュ記号(DASH SYMBOL)の14個の文字種類に対応する形状が用意されている。
また、磁気インク文字列4Aの各磁気インク文字は、小切手4にオフセット印刷により印刷される場合と、レーザー印刷により印刷される場合とがある。そして、オフセット印刷によって印刷されるE−13Bフォントの磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷されるE−13Bフォントの磁気インク文字とでは、その形状が相違している。
【0039】
本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、磁気インク文字の文字種類を確定できれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものと判別され、一方、磁気インク文字の中に、1つでも磁気インク文字の文字種類が確定できないものがあれば、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗したものと判別される。
上述したように、制御部71は、ホスト側制御部73の制御の下、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した小切手4については、当該小切手4を第1小切手排出部7に搬送し、一方、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した小切手4については、所定の処理を実行した上で、当該小切手4を第2小切手排出部8に搬送する。
以下、文字認識部80の動作について詳述する。
【0040】
図4〜図11は、第1の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
文字認識部80の機能は、ホスト側制御部73のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
【0041】
図4〜図11のフローチャートは、ある1つの小切手4について、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aの認識を実行する際の文字認識部80の動作を示しているものとする。そして、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aについて、磁気ヘッド54による読み取りが行われており、信号処理回路74によって、増幅処理や、フィルター処理、波形整形処理等の各種処理が実行されて検出信号を示すデータ(以下、「検出信号波形データ」という)が生成され、制御部71により、検出信号波形データが、ホスト側制御部73に出力されているものとする。さらに、表面側コンタクトイメージセンサー52により、当該小切手4の表面の画像が読み取られ、画像データとして制御部71からホスト側制御部73に出力されているものとする。
【0042】
図4を参照し、ホスト側制御部73は、制御部71から入力された検出信号波形データから、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、文字の切り出しを行う(ステップSA1)。文字の切り出しとは、検出信号波形データに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のうち1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の波形を示す文字波形データを生成することである。
ステップSA1の処理は、例えば、以下のようにして実行される。
【0043】
図12は、検出信号波形データ(一部)の内容の一例を模式的に示す図であり、図13は、ステップSA1における処理により生成された文字波形データの内容の一例を模式的に示す図である。
上述したように、本実施形態では、搬送路5内で小切手4を搬送しつつ、当該小切手4に記録された磁気インク文字列4Aを磁気ヘッド54により読み取るが、その際、磁気ヘッド54では、搬送される小切手4の磁気インク文字列4Aを、後端4d側から前端4g側へ向かって所定のサンプリング周期で磁束を測定することにより、磁気インク文字列4Aの読み取りを実行する。以下の説明では、サンプリング周期の最小単位の間隔を、1サンプリング単位と言うものとする。
【0044】
図12では、X軸(横軸)は、時間の経過(サンプリング周期の経過)が規定され(原点からX軸右方に向かうに従って、1サンプリング単位が順次経過したことを示す)、Y軸(縦軸)は、時間の経過に伴う磁荷の変化量の相対値が規定されている。そして、図12では、磁気インク文字列4Aにおいて、小切手4の後端4d側から前端4g側に向かって、所定のサンプリング周期毎に磁荷の変化量の相対値がどのように変化したかが示されており、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の磁荷の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁荷の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。
【0045】
ここで、本実施形態では、検出信号波形データのX軸方向において、1つの磁気インク文字に対応する波形が占める範囲は、所定の数のサンプリング単位(例えば、70サンプリング単位)と規定されており、この規定に準じるように、各種搬送制御が実行されると共に、1サンプリング単位の長さが規定されている。
【0046】
これを踏まえ、ステップSA1では、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形に基づいて、当該波形の各ピーク位置(極大値、極小値に対応するX軸の値であり、ピーク位置は、所定の周期で現出するよう規定されている)を検出し、検出したピーク位置に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、文字開始位置を検出する。そして、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形を、検出した文字開始位置から、1つの磁気インク文字の幅に対応する所定の数のサンプリング単位で切り出す。
その際、文字認識部80は、切り出した波形における最初のピーク位置が、X軸における所定のサンプリング単位目に位置するように、検出信号波形データが示す波形を切り出す。例えば、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、文字開始位置から11サンプリング目に波形の最初のピーク位置が位置するように、検出信号波形データの波形の切り出しを行う。
【0047】
ステップSA1における文字の切り出しにより、磁気インク文字列4Aに含まれる1つの磁気インク文字について、当該磁気インク文字の実際の検出信号に基づいて、図13の例に示すような内容を有する文字波形データが生成される。
なお、ステップSA1の文字の切り出しは、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、小切手4の後端4d側に配置された磁気インク文字から前端4g側に配置された磁気インク文字へ向かって、順番に行われ、切り出された磁気インク文字ごとにステップSA2以下の文字の認識に係る処理が実行される。
以下、ステップSA1において、切り出された1の磁気インク文字のことを「処理対象文字」という。
【0048】
文字の切り出しの実行後、文字認識部80は、生成した処理対象文字の文字波形データについて、各データが示す波形のY軸方向における振幅レベルが、後述するパターンマッチング用の基準波形データのY軸方向における振幅レベルと同等となるよう、データの正規化を行う(ステップSA2)。
【0049】
図4を参照し、ステップSA2の後には、第1認識フェーズ(ステップSA3)、及び、第2認識フェーズ(ステップSA7)の2つの処理フェーズが含まれている。これら2つの処理フェーズは、いわゆる磁気インク文字認識に係る処理であり、ステップSA1において切り出された磁気インク文字(処理対象文字)に対して順次実行され、これにより、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれに対して1回ずつ実行される。これら2つの処理フェーズは、それぞれ異なる方法により処理対象文字の磁気インク文字認識を行い、当該処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出するフェーズである。
【0050】
図5は、ステップSA3の第1認識フェーズにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第1認識フェーズにおいて、まず、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定し、又は、確定できないことを検出する処理を実行する第1認識パスを実行する(ステップSB1)。
【0051】
次いで、文字認識部80は、第1認識パスで処理対象文字の文字種類を確定できたか否かを判別し(ステップSB2)、処理対象文字の文字種類を確定できた場合(ステップSB2:YES)、第1認識フェーズを終了する。一方、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合(ステップSB2:NO)、文字認識部80は、第2認識パスを実行する(ステップSB3)。
【0052】
次いで、文字認識部80は、第2認識パスで処理対象文字の文字種類を確定できたか否かを判別し(ステップSB4)、処理対象文字の文字種類を確定できた場合(ステップSB4:YES)、第1認識フェーズを終了する。一方、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合(ステップSB4:NO)、文字認識部80は、第1認識フェーズでは、処理対象文字の文字種類を確定できないと判別する(ステップSB5)。
以下、第1認識パス、及び、第2認識パスの処理について詳述する。
【0053】
図6は、図5のステップSB1の第1認識パスにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第1認識パスにおいて、文字認識部80は、E−13Bフォントに規定された14個の文字種類の中から、ステップSC2の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSC1)。以下、ステップSC1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSC2の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、1回ずつ行われることになる。
【0054】
次いで、文字認識部80は、ステップSA1で切り出した処理対象文字の文字波形データの波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データのそれぞれが示す波形との間の差異量を算出する(ステップSC2)。
【0055】
ステップSC2の処理について詳述すると、1つの文字種類に対応する基準波形データとは、当該1つの文字種類に対応する磁気インク文字を磁気ヘッド54によって読み取ったときの検出信号の理想的な波形を示すデータであり、いわゆる磁気インク文字認識におけるパターンマッチング処理で供されるテンプレートデータに該当するデータである。
【0056】
ここで、上述したように、オフセット印刷によって印刷される磁気インク文字と、レーザー印刷によって印刷される磁気インク文字とでは、その形状が相違している。そのため、基準波形データには、オフセット印刷用の基準波形データと、レーザー印刷用の基準波形データとの2種類のデータがある。第1認識フェーズでは、これらの2種類の基準波形データのうち、いずれか一方の基準波形データが利用されて各種処理が実行される。
なお、例えば、第1認識フェーズではオフセット印刷用の基準波形データを利用して各種処理を実行し、その後に、レーザー印刷用の基準波形データを利用して第1認識フェーズと同様の各種処理を別途実行することにより、2種類のデータの双方を利用して磁気インク文字認識を行う構成としてもよい。
【0057】
図14は、ステップSC2で検出される差異量を説明するための図である。図14において、文字波形データが示す波形は細線で示され、基準波形データが示す波形は太線で示されている。
差異量とは、図14中、斜線で示す領域の大きさのことであり、より具体的には、X軸上に規定された各サンプリング単位における、文字波形データが示す波形のY軸方向の値と、基準波形データが示す波形のY軸方向の値との差の絶対値の総和のことである。1つの文字波形データが示す波形と、1つの基準波形データが示す波形との間の差異量が小さければ小さいほど、当該1つの文字波形データが示す波形と、当該1つの基準波形データが示す波形とが近似しているということであり、当該1つの文字波形データに対応する磁気インク文字の文字種別が、当該1つの基準波形データに対応する文字種類である蓋然性が高いということである。
【0058】
処理対象文字の文字波形データが示す波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形との間の差異量を算出した後、文字認識部80は、14種類の全ての文字種類について、差異量の算出が終了したか否かを判別する(ステップSC3)。
14種類の全ての文字種類について、差異量の算出が終了していない場合(ステップSC3:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSC1に戻し、全ての文字種類について差異量の算出が終了した場合(ステップSC3:YES)、処理手順をステップSC4へ移行する。
【0059】
ステップSC4において、文字認識部80は、差異量が最も小さかった基準波形データに対応する文字種類をパス1用第1候補C11とし、次に差異量が小さかった基準波形データに対応する文字種類をパス1用第2候補C12とする。
上述したように、パス1用第1候補C11とされた文字種類は、処理対象文字の文字種類である蓋然性が最も高く、パス1用第2候補C12とされた文字種類は、処理対象文字の文字種類である蓋然性が2番目に高い。
【0060】
次いで、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量、及び、パス1用閾値T1を比較し、当該差異量がパス1用閾値T1を上回るか否かを判別する(ステップSC5)。
パス1用閾値T1は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス1用閾値T1以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0061】
パス1用閾値T1は、処理対象文字の文字波形データと、当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが、当該パス1用閾値T1以下となり、かつ、当該文字波形データと、他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が、当該パス1用閾値T1を上回るようにするという観点から、適切に設定される。具体的には、本実施形態では、パス1用閾値T1は、文字種類ごとに、以下のようにして設定される。
すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、検出する。そして、1つの磁気インク文字に係るパス1用閾値T1を「パス1用閾値T1=(検出した複数の差異量の平均値)+(検出した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス1用閾値T1を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス1用閾値T1を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス1用閾値T1を適切な値とすることができる。
【0062】
差異量がパス1用閾値T1を上回る場合(ステップSC5:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識パスを終了する。
差異量がパス1用閾値T1以下の場合(ステップSC5:NO)、文字認識部80は、さらに、パス1用第2候補C12とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量、及び、パス1用閾値T1とを比較し、当該差異量がパス1用閾値T1を上回るか否かを判別する(ステップSC6)。
【0063】
当該差異量がパス1用閾値T1を上回る場合(ステップSC6:YES)、文字認識部80は、パス1用第1候補C11とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSC7)、第1認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス1用閾値T1以下の場合(ステップSC6:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第1認識パスを終了する。
【0064】
このように、本実施形態では、パス1用第1候補C11とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量が、パス1用閾値T1以下の場合であっても、パス1用第2候補C12とされた文字種類に対応する基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの差異量が、パス1用閾値T1以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、以下の理由による。
すなわち、パス1用閾値T1は、処理対象文字の文字波形データと、当該処理対象文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量のみが、当該パス1用閾値T1以下となり、かつ、当該文字波形データと、他の文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量が、当該パス1用閾値T1を上回るように設定された値である。従って、正常に小切手4が搬送され、磁気ヘッド54により正常に磁気インク文字列4Aが読み取られた場合は、パス1用閾値T1を下回る差異量に係る文字種類は、1つに限定される。このため、パス1用閾値T1を下回る差異量に係る文字種類が複数存在している状況のときは、磁気ヘッド54による読み取りエラーや、小切手4の搬送エラー、その他の何らかの原因により、当該状況が現出している可能性があり、このような状況のときに処理対象文字の文字種類を確定すると、誤認識を招くおそれがあるからである。
【0065】
図7は、図5のステップSB3の第2認識パスにおける文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第2認識パスにおいて、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSD2、及び、ステップSD3の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSD1)。以下、ステップSD1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSD2、及び、ステップSD3の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、1回ずつ行われることになる。
【0066】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形と、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を所定の範囲内で所定の距離だけスライドさせたもののそれぞれとの間の差異量を算出する(ステップSD2)。
【0067】
ステップSD2の処理について一例を挙げて説明すると、例えば、文字波形データのそれぞれにおいて、1つの磁気インク文字に対応する波形が占めるX軸の範囲は、70サンプリング単位と規定されているものとする。この場合、ステップSD2において、例えば、文字認識部80は、基準波形データの波形の全体を、X軸方向左方へ7サンプリング単位分だけスライドした波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。同様にして、文字認識部80は、基準波形データの波形の全体を、X軸方向左方へ、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分だけスライドした波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。そうすると共に、基準波形データの波形の全体を、X軸方向右方へ、7、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分だけスライドした波形のそれぞれと、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この場合、差異量の算出が15回おこなわれ、15回分の差異量が算出されることとなる。
【0068】
ここで、小切手4の搬送の状況や、磁気ヘッド54による磁気インク文字列4Aの読み取りの状況、図4のステップSA1の文字の切り出しの処理の状況によっては、文字波形データにおいて、実際の波形のX軸方向における位置が、波形の理想的な位置から数サンプリング単位分ずれることがある。これを踏まえ、上述したように基準波形データの波形を所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した「ずれ」を反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0069】
次いで、文字認識部80は、ステップSD2で算出した差異量のうち、値が最も小さい差異量を、比較対象文字種類の差異量とする(ステップSD3)。上記の例では、文字認識部80は、算出された15回分の差異量のうち、その値が最も小さいものを、比較対象文字種類の差異量として特定する。
【0070】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSD2)、特定(ステップSD3)が終了したか否かを判別する(ステップSD4)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSD4:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSD1に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSD4:YES)、文字認識部80は、14種類の文字種類のうち、ステップSD3で特定された差異量が最も小さかった文字種類を、パス2用第1候補C21とし、特定された差異量が2番目に小さかった文字種類を、パス2用第2候補C22とする(ステップSD5)。
【0071】
次いで、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量と、パス2用閾値T2とを比較し、当該差異量がパス2用閾値T2を上回るか否かを判別する(ステップSD6)。
パス2用閾値T2は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス2用閾値T2以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0072】
パス2用閾値T2は、上述したパス1用閾値T1と同様の手法により算出され、設定される。すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、ステップSD2、及び、ステップSD3の処理を実行し、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、特定する。
そして、1つの磁気インク文字に係るパス2用閾値T2を「パス2用閾値T2=(特定した複数の差異量の平均値)+(特定した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス2用閾値T2を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス2用閾値T2を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス2用閾値T2を適切な値とすることができる。
【0073】
差異量がパス2用閾値T2を上回る場合(ステップSD6:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第2認識パスを終了する。
差異量がパス2用閾値T2以下の場合(ステップSD6:NO)、文字認識部80は、さらに、パス2用第2候補C22とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量と、パス2用閾値T2とを比較し、当該差異量がパス2用閾値T2を上回るか否かを判別する(ステップSD7)。
【0074】
当該差異量がパス2用閾値T2を上回る場合(ステップSD7:YES)、文字認識部80は、パス2用第1候補C21とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSD8)、第2認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス2用閾値T2以下の場合(ステップSD7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第2認識パスを終了する。
【0075】
このように、本実施形態では、パス2用第1候補C21とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量が、パス2用閾値T2以下の場合であっても、パス2用第2候補C22とされた文字種類について、ステップSD3で特定された差異量が、パス2用閾値T2以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、上述したパス1用閾値T1で説明した理由と同様の理由による。
なお、ステップSD3で、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22とされた文字種類のそれぞれについて特定された差異量は、以降のステップまで保存される。
【0076】
さて、前掲図4を参照し、ステップSA3の第1認識フェーズの実行後、文字認識部80は、第1認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できたか否かを判別する(ステップSA4)。
【0077】
処理対象文字の文字種類が確定できた場合(ステップSA4:YES)、文字認識部80は、第2認識フェーズを行うことなく、処理手順をステップSA5へ移行する。ステップSA5では、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったか否か、換言すれば、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の全てについて、ステップSA1について文字の切り出しが行われ、かつ、文字認識に係る処理が実行されたか否かが判別される。
そして、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSA5:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字の切り出しを実行し、一方、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSA5:YES)、処理手順をステップSA6へ移行する。
【0078】
一方、ステップSA4において、第1認識フェーズで処理対象文字の文字種類が確定できなかったと判別した場合(ステップSA4:NO)、文字認識部80は、第2認識フェーズを実行する(ステップSA7)。
【0079】
図8は、ステップSA7の第2認識フェーズの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第2認識フェーズにおいて、まず、文字認識部80は、検出信号波形データに基づいて、処理対象文字の文字間隔を算出する(ステップSE1)。
【0080】
処理対象文字の文字間隔とは、処理対象文字の文字開始位置と、処理対象文字の次の磁気インク文字(磁気インク文字列4Aにおいて、処理対象文字の前端4g側の隣に配列された磁気インク文字)の文字開始位置との離間量のことである。例えば、文字認識部80は、検出信号波形データが示す波形に基づいて、当該波形の各ピーク位置(極大値、極小値に対応するX軸の値)を検出し、検出したピーク位置に基づいて、処理対象文字の文字開始位置と、処理対象文字の次の磁気インク文字の文字開始位置とを検出し、検出した各文字の文字開始位置に基づいて、これら文字開始位置の離間量を検出し、検出した離間量を文字間隔とする。
上述したように、本実施形態では、磁気インク文字列4Aに含まれる各磁気インク文字の文字間隔が一定(例えば、67サンプリング単位)となるように小切手4の搬送制御が実行され、また、サンプリング単位の長さが規定されている。以下、一定となるように規定された文字間隔を「基準文字間隔」というものとする。
【0081】
次いで、文字認識部80は、ステップSE1で検出した処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とを比較する(ステップSE2)。
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔」)、文字認識部80は、第3認識パスを実行し(ステップSE3)、当該第3認識パスにおいて処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、第2認識フェーズを終了し、文字種類が確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0082】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE4)、第5認識パス(ステップSE5)、及び、第3認識パス(ステップSE6)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0083】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合(ステップSE2:「文字間隔<基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE7)、及び、第3認識パス(ステップSE8)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0084】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE9)、第5認識パス(ステップSE10)、及び、第3認識パス(ステップSE11)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0085】
ステップSE2において、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合(ステップSE2:「文字間隔>基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE12)、及び、第3認識パス(ステップSE13)の順に、段階的に認識パスを実行する。その際、いずれかの認識パスにおいて、処理対象文字の文字種類が確定できた場合は、次の認識パスを実行することなく、第2認識フェーズを終了する。また、いずれの認識パスでも処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合は、処理対象文字の文字種類が確定できないものと判別し、第2認識フェーズを終了する。
【0086】
図9は、第3認識パスの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
第3認識パスでは、後述する両側伸縮比較が行われ、この両側伸縮比較の結果に基づいて、処理対象文字の文字種類の確定、又は、処理対象文字の文字種類が確定できないことの検出が行われる。
【0087】
図9を参照し、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSF2以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSF1)。以下、ステップSF1で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSF2以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれを比較対象として、順番に、14回行われる。
次いで、文字認識部80は、両側伸縮テーブル90を参照する(ステップSF2)。
【0088】
図15は、両側伸縮テーブル90のデータ構造を模式的に示す図である。
図15に示すように、両側伸縮テーブル90では、14個の文字種類毎にレコードが生成されており、各レコードは、対応する文字種類の伸縮点を示す情報が格納される伸縮点フィールド91、最大縮み量を示すデータが格納される最大縮み量フィールド92、及び、最大伸び量を示すデータが格納される最大伸び量フィールド93の3つのフィールドを備えている。伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量については、後述する。
【0089】
次いで、文字認識部80は、参照した両側伸縮テーブル90において、比較対象文字種類に対応するレコードを取得し、当該レコードの伸縮点フィールド91、最大縮み量フィールド92、及び、最大伸び量フィールド93の各フィールドを参照し、当該比較対象文字種類に係る伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量のそれぞれの値を取得する(ステップSF3)。
【0090】
次いで、文字認識部80は、ステップSF3で取得した伸縮点、最大縮み量、及び、最大伸び量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSF4)。
以下、ステップSF4の処理について詳述する。
【0091】
図16は、ステップSF4の処理を説明するために利用する図であり、詳細には、E−13Bフォントにおける文字種類「0」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。図16では、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形を実線で示しており、波形のX軸方向における幅は70サンプリング単位である。
以下では、比較対象文字種類が文字種類「0」であるものとし、ステップSF4において、文字種類「0」に対応する基準波形データの補正された波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する場合を例にして、ステップSF4の処理を説明するものとする。
【0092】
図15に示すように、本実施形態では、文字種類「0」の伸縮点は「42サンプリング単位目」であり、最大縮み量は「3サンプリング単位」であり、最大伸び量は「6サンプリング単位」である。
ステップSF4において、まず、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大縮み量である「3サンプリング単位」分、X軸方向左方へスライドさせる。これにより、図16を参照し、基準波形データの波形(実線で示す波形)は、破線で示す波形となるよう補正される。
【0093】
次いで、文字認識部80は、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する。このようにして差異量を算出した場合、基準波形データの波形のうち42サンプリング単位目より右方の波形は、3サンプリング単位分だけX軸方向左方へスライドされている。そのため、例えば、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の42サンプリング目の値は、補正「前」の基準波形データの波形の45サンプリング目の値との差分が取られ、また、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の43サンプリング目の値は、補正前の基準波形データの波形の46サンプリング目の値との差分が取られることとなる。
すなわち、差異量の算出に際し、n(ただし、n≧42)サンプリング単位目よりX軸方向左方の波形に関しては、処理対象文字の基準波形データのnサンプリング単位目の値と、補正前の基準波形データの波形の「n+3」サンプリング単位目の値との差分が取られることにより、差異量が算出されることとなる。nが70を超える場合は、70サンプリング単位目の値を使用する。
【0094】
このようにして最大縮み量に係る差異量を算出した後、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大縮み量である「3サンプリング単位」から「1サンプリング単位」減算した分、すなわち「2サンプリング単位」分、X軸方向左方へスライドさせる。このスライドにより、基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0095】
このようにして、文字認識部80は、最大縮み量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大縮み量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大縮み量の値が「1サンプリング単位」となるまで行われる。すなわち、文字認識部80は、3、2、1サンプリング単位分X軸左方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0096】
さらに、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大伸び量である「6サンプリング単位」分、X軸方向右方へスライドさせる。これにより、図16を参照し、基準波形データの波形(実線で示す波形)は、二点鎖線で示す波形となるよう補正される。
【0097】
次いで、文字認識部80は、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する。このようにして差異量を算出した場合、基準波形データの波形のうち42サンプリング単位目より右方の波形は、6サンプリング単位分だけX軸方向右方へスライドされているため、例えば、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の60サンプリング目の値は、補正「前」の基準波形データの波形の54サンプリング目の値との差分が取られる。また、処理対象文字に対応する文字波形データの波形の61サンプリング目の値は、補正前の基準波形データの波形の55サンプリング目の値との差分が取られることとなる。
すなわち、差異量の算出に際し、n(ただし、n≧42)サンプリング単位目よりX軸方向左方の波形に関しては、処理対象文字の基準波形データのnサンプリング単位目の値と、補正前の基準波形データの波形の「n−6」サンプリング単位目の値との差分が取られることにより、差異量が算出されることとなる。n=43〜48の場合は、42サンプリング単位目の値を使用する。
【0098】
このようにして最大伸び量に係る差異量を算出した後、文字認識部80は、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点(42サンプリング単位目)よりX軸方向右方の波形について、最大伸び量である「6サンプリング単位」から「1サンプリング単位」減算した分、すなわち「5サンプリング単位」分、X軸方向右方へスライドさせる。これにより、基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を検出する。
【0099】
このようにして、文字認識部80は、最大伸び量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大伸び量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大伸び量の値が「1サンプリング単位」となるまで行われる。すなわち、文字認識部80は、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分X軸右方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0100】
さらに、文字認識部80は、基準波形データの波形について補正を行うことなく、処理対象文字に対応する文字波形データの波形と、文字種類「0」に対応する基準波形データの波形との差異量を算出する。
【0101】
以上の例のようにして、ステップSF4では、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量が算出される。上記例で言えば、ステップSF4では、伸縮点よりも右方の波形について、3、2、1サンプリング単位分X軸左方へスライドさせたもの、6、5、4、3、2、1サンプリング単位分X軸方向右方へスライドさせたもの、及び、スライドさせないものそれぞれについて、合計10通りの差異量が算出される。
【0102】
ここで、小切手4に対する磁気インク文字列4Aの記録に際し、磁気インク文字が印刷規格の中心値からずれて印刷されることに起因して、磁気インク文字が横方向(X軸に対応する方向)に縮んだ状態で、又は、伸びた状態で印刷されることがある。この場合、検出信号波形データに基づいて生成される文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。また、小切手4の搬送の状況によっては、文字波形データの波形がX軸方向に伸び、又は、縮む場合がある。これを踏まえ、上述したように基準波形データの波形を所定の位置から所定の範囲でスライドさせた上で、処理対象文字の文字波形データの波形との間で差異量を検出することにより、上述した伸びや縮みを反映して、適切に差異量を算出することができる。
【0103】
そして、各文字種類の伸縮点や、最大縮み量、最大伸び量は、磁気インク文字の伸びや縮みを反映して差異量を適切に算出することを目的として、事前の試験やシミュレーションの結果に基づいて、以下の観点で設定される。
すなわち、伸縮点は、磁気インク文字の基準波形データに対応する波形を、例えば、ピーク位置の密度に応じて分割したときの分割位置に対応する点が設定される。また、伸縮点は、磁気インク文字の基準波形データに対応する波形について、単位あたりの変化量が小さい点が設定される。
また、最大縮み量、及び、最大伸び量は、1つの文字種類に対応する基準波形データの波形を、最大縮み量、又は、最大伸び量に基づいて補正した場合であっても、当該1つの文字種類以外の文字種類の基準波形データの波形に近似してこない場合は、これらの値が大きく設定され、一方、近似してくる場合は、これらの値は、小さく設定される。
【0104】
ステップSF4において、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出した後、文字認識部80は、算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSF5)。
【0105】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSF4)、特定(ステップSF5)が終了したか否かを判別する(ステップSF6)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSF6:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSF1に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSF6:YES)、文字認識部80は、14個の文字種類のうち、特定された差異量が最も小さかった文字種類を、パス3用第1候補C31とし、特定された差異量が2番目に小さかった文字種類を、パス3用第2候補C32とする(ステップSF7)。
【0106】
次いで、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類について、ステップSF5で特定された差異量と、パス3用閾値T3とを比較し、当該差異量がパス3用閾値T3を上回るか否かを判別する(ステップSF8)。
パス3用閾値T3は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス3用閾値T3以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0107】
パス3用閾値T3は、上述したパス1用閾値T1と同様の手法により算出され、設定される。すなわち、事前の試験で、14個の文字種類の磁気インク文字のそれぞれについて、ステップSF2〜ステップSF5の処理を実行し、1つの磁気インク文字を実際に読み取ったときの文字波形データと、当該1つの磁気インク文字の正しい文字種類に対応する基準波形データとの間の差異量を、複数回、特定する。そして、1つの磁気インク文字に係るパス3用閾値T3を「パス3用閾値T3=(特定した複数の差異量の平均値)+(特定した複数の差異量の標準偏差)×(所定の係数)」により算出される値とする。(所定の係数)は、パス3用閾値T3を上述した観点に従って設定することを目的として、事前の実験、シミュレーションの結果に基づいて、文字種類ごとに設定される値である。このようにして、パス3用閾値T3を設定することにより、実際に算出される差異量のばらつきを考慮して、パス3用閾値T3を適切な値とすることができる。
【0108】
差異量がパス3用閾値T3を上回る場合(ステップSF8:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第3認識パスを終了する。
差異量がパス3用閾値T3以下の場合(ステップSF8:NO)、文字認識部80は、さらに、パス3用第2候補C32とされた文字種類について、ステップSF5で特定された差異量と、パス3用閾値T3とを比較し、当該差異量がパス3用閾値T3を上回るか否かを判別する(ステップSF9)。
【0109】
当該差異量がパス3用閾値T3を上回る場合(ステップSF9:YES)、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSF10)、第3認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス3用閾値T3以下の場合(ステップSF9:NO)、文字認識部80は、パス3用第2候補C32とされた文字種類に係る差異量が、パス3用第1候補C31とされた文字種類に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否かを判別する(ステップSF11)。
【0110】
5/4倍以上の大きさがある場合(ステップSF11:YES)、文字認識部80は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSF10)、第3認識パスを終了する。
一方、5/4倍以上の大きさがない場合(ステップSF11:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第3認識パスを終了する。
【0111】
このように、本実施形態では、パス3用第1候補C31に係る差異量、及び、パス3用第2候補C32に係る差異量の双方が、パス3用閾値T3を下回る場合、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否か判別され、5/4倍以上の大きさがある場合は、パス3用第1候補C31とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがある場合、パス3用第1候補C31に係る差異量は、パス3用第2候補C32に係る差異量と比較して、十分に小さい値であると言うことができ、従って、パス3用第1候補C31とされた文字種類は、他の文字種類と比較して、処理対処文字の文字種類である蓋然性が十分に高いと言うことができるからである。
【0112】
次いで、第4認識パスについて、図9を援用して説明する。
第4認識パスの動作は、図9のステップSF11の処理、すなわち、パス3用第2候補C32に係る差異量が、パス3用第1候補C31に係る差異量の5/4倍以上の大きさがあるか否かを判別する処理がない点において、第3認識パスの動作と異なっている。これにより、パス3用第1候補C31に係る差異量、及び、パス3用第2候補C32に係る差異量のいずれも、パス3用閾値T3を下回るような場合は、処理対象文字の文字種類を確定すると誤認識を招くおそれがあるとして、処理対象文字の文字種類が確定されない。
このように第4認識パスは、第3認識パスよりも、処理対象文字の文字種類を確定する条件が厳しくなっており、図8に示すように、必ず第3認識パスよりも前のステップで実行される。
【0113】
図10は、第5認識パスの実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
図10を参照し、第5認識パスにおいて、まず、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があるのか、又は、「伸び」が発生している可能性があるのかを判別する(ステップSG1)。
【0114】
文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があるか否か、また、「伸び」が発生している可能性があるか否かを、以下のようにして判別する。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が基準文字間隔よりも小さい場合、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、縮小しているということであり、この場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性があると判別する。一方、処理対象文字の文字間隔が基準文字間隔よりも大きい場合、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、伸張しているということであり、この場合は、文字認識部80は、処理対象文字の文字波形データの波形に「伸び」が発生している可能性があると判別する。
【0115】
ステップSG1において、「縮み」が発生している可能性があると判別した場合(ステップSG1:「縮み」)、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSG3以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSG2)。以下、ステップSG2で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSG3以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、1回ずつ行われる。
次いで、文字認識部80は、縮みテーブル94を参照する(ステップSG3)。
【0116】
図17(A)は、縮みテーブル94のデータ構造を模式的に示す図である。
図17(A)に示すように、縮みテーブル94では、14個の文字種類毎に、伸縮点を示す情報と、最大縮み量を示す情報とが対応づけて記憶されている。
なお、両側伸縮テーブル90と、縮みテーブル94において、同一の文字種類については、縮みテーブル94における最大縮み量の値は、両側伸縮テーブル90における最大縮み量の値以上となっている。
【0117】
次いで、文字認識部80は、参照した縮みテーブル94において、比較対象文字種類に対応するレコードを参照し、比較対象文字種類に係る伸縮点、及び、最大縮み量のそれぞれの値を取得する(ステップSG4)。
【0118】
次いで、文字認識部80は、ステップSG4で取得した伸縮点、及び、最大縮み量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSG5)。
【0119】
より詳細には、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大縮み量の値を上限として、最大縮み量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大縮み量に基づいて基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の算出は、減算後の最大縮み量の値が「0サンプリング単位」となるまで行われる。
例えば、比較対象文字種類が文字種類「0」の場合、図17(A)の縮みテーブル94を参照して、最大縮み量は、「3サンプリング単位」である。この場合、文字認識部80は、伸縮点より右方の波形について、3、2、1、0サンプリング単位分X軸左方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0120】
次いで、文字認識部80は、ステップSG5で算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSG6)。
【0121】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSG5)、特定(ステップSG6)が終了したか否かを判別する(ステップSG7)。
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSG7:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSG2に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSG7:YES)、文字認識部80は、14個の文字種類のうち、特定された差異量の値が最も小さかった文字種類を、パス5用第1候補C51とし、特定された差異量の値が2番目に小さかった文字種類を、パス5用第2候補C52とする(ステップSG8)。
【0122】
次いで、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量と、パス5用閾値T5とを比較し、当該差異量がパス5用閾値T5を上回るか否かを判別する(ステップSG9)。
パス5用閾値T5は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定するか否かを判別する際の基準となる値であり、差異量がパス5用閾値T5以下の場合は、後述する他の条件が成立すれば、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。
【0123】
差異量がパス5用閾値T5を上回る場合(ステップSG9:YES)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第5認識パスを終了する。
差異量がパス5用閾値T5以下の場合(ステップSG9:NO)、文字認識部80は、さらに、パス5用第2候補C52とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量と、パス5用閾値T5とを比較し、当該差異量がパス5用閾値T5を上回るか否かを判別する(ステップSG10)。
【0124】
当該差異量がパス5用閾値T5を上回る場合(ステップSG10:YES)、文字認識部80は、パス5用第1候補C51とされた文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSG11)、第5認識パスを終了する。
一方で、当該差異量がパス5用閾値T5以下の場合(ステップSG10:NO)、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類を確定することなく、第5認識パスを終了する。
【0125】
このように、本実施形態では、パス5用第1候補C51とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量が、パス5用閾値T5以下の場合であっても、パス5用第2候補C52とされた文字種類について、ステップSG6で特定された差異量が、パス5用閾値T5以下である場合は、処理対象文字の文字種類を確定しない。これは、上述したパス1用閾値T1で説明した理由と同様の理由による。
【0126】
また、本実施形態では、処理対象文字に対応する文字波形データの波形について、「縮み」が発生している可能性がある場合は、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大縮み量の値を上限として、所定の量だけX軸「左方」へスライドさせる。このスライドによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0127】
ここで、基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、X軸方向左方へスライドさせた場合、基準波形データの波形の全体としては、所定の範囲でX軸左方へ向かって縮んだ状態となる(例えば、図16参照)。
つまり、本実施形態では、文字波形データの波形に「縮み」が発生している可能性がある場合は、当該「縮み」に対応させて、基準波形データの波形を縮ませた上で、差異量を算出している。これにより、文字波形データの波形の「縮み」に対応して、適切に差異量を算出することができると共に、「伸び」に対応した補正を施した基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの間で差異量を算出しないため、処理効率が向上する。
【0128】
一方、ステップSG1において、「伸び」が発生している可能性があると判別した場合(ステップSG1:「伸び」)、文字認識部80は、14個の文字種類の中から、ステップSG13以下の処理において比較対象とされる文字種類を特定する(ステップSG12)。以下、ステップSG12で特定された文字種類のことを、「比較対象文字種類」というものとする。ステップSG13以下の処理は、14個の文字種類のそれぞれについて、順番に、14回行われる。
次いで、文字認識部80は、伸びテーブル95を参照する(ステップSG13)。
【0129】
図17(B)は、伸びテーブル95のデータ構造を模式的に示す図である。
図17(B)に示すように、伸びテーブル95では、14個の文字種類毎に、伸縮点を示す情報と、最大伸び量を示す情報とが対応づけて記憶されている。
なお、両側伸縮テーブル90と、伸びテーブル95において、同一の文字種類については、伸びテーブル95における最大伸び量の値は、両側伸縮テーブル90における最大伸び量の値以上となっている。
【0130】
次いで、文字認識部80は、参照した伸びテーブル95において、比較対象文字種類に対応するレコードを参照し、比較対象文字種類に係る伸縮点、及び、最大伸び量のそれぞれの値を取得する(ステップSG14)。
【0131】
次いで、文字認識部80は、ステップSG14で取得した伸縮点、及び、最大伸び量に基づいて、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形を補正し、補正した波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量を算出する(ステップSG15)。
【0132】
より詳細には、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大伸び量の値を上限として、最大伸び量を「1サンプリング単位」ずつ減算しつつ、減算後の最大伸び量だけ、X軸右方向へスライドさせることによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。この差異量の検出は、減算後の最大伸び量の値が「0サンプリング単位」となるまで行われる。
例えば、比較対象文字種類が文字種類「0」の場合、図17(B)の伸びテーブル95を参照して、最大伸び量は、「6サンプリング単位」である。この場合、文字認識部80は、伸縮点より右方の波形について、6、5、4、3、2、1、0サンプリング単位分X軸右方へスライドさせることによって補正した基準波形データの波形のそれぞれと、処理対象文字に対応する文字波形データの波形との間の差異量のそれぞれを算出する。
【0133】
次いで、文字認識部80は、ステップSG15で算出した差異量のうち、その値が最も小さいものを特定し、特定した差異量を、比較対象文字種類の差異量として特定する(ステップSG16)。
【0134】
次いで、文字認識部80は、14個の文字種類の全てについて、差異量の算出(ステップSG15)、特定(ステップSG16)が終了したか否かを判別する(ステップSG17)。
【0135】
全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了していない場合(ステップSG17:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSG12に戻す。
一方、全ての文字種類について、差異量の算出、特定が終了している場合(ステップSG17:YES)、文字認識部80は、ステップSG18〜ステップSG21の各処理を実行する。ステップSG18〜ステップSG21の処理は、上述した、ステップSG8〜ステップSG11の処理と同様なため、その説明を省略する。
【0136】
このように、本実施形態では、処理対象文字に対応する文字波形データの波形について、「伸び」が発生している可能性がある場合は、文字認識部80は、比較対象文字種類に対応する基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、最大伸び量の値を上限として、所定の量だけX軸右方へスライドさせる。このスライドによって基準波形データの波形を補正し、補正後の基準波形データの波形と、処理対象文字の文字波形データの波形との間の差異量を算出する。
【0137】
ここで、基準波形データの波形のうち、伸縮点よりX軸右方の波形について、X軸右方へスライドさせた場合、基準波形データの波形の全体としては、所定の範囲でX軸右方へ向かって伸びた状態となる(例えば、図16参照)。
つまり、本実施形態では、文字波形データの波形に「伸び」が発生している可能性がある場合は、当該「伸び」に対応させて、基準波形データの波形を伸ばした上で、差異量を算出している。これにより、文字波形データの波形の「伸び」に対応して、適切に差異量を算出することができると共に、「縮み」に対応した補正を施した基準波形データと、処理対象文字の文字波形データとの間で差異量を算出しないため、処理効率が向上する。
【0138】
さて、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔」)、第3認識パスにより、処理対象文字の認識を行う。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合、処理対象文字の文字波形データの波形について、伸びや縮みが発生していない場合が多く、また、伸びや縮みが発生している場合であっても、伸びと、縮みとのうちいずれか一方が発生している可能性が高いとは言えない。これを踏まえ、上記の場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスのみを実行する構成とし、処理効率の向上を図っている。なお、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔とが等しい場合は、正常に磁気ヘッド54による読み取りや、小切手4の搬送が実行された可能性が高いことを踏まえ、本実施形態では、文字種類の確定の条件が厳しい第4認識パスを行わない構成となっているが、第3認識パスの実行の前に、第4認識パスを行う構成であってもよい。
【0139】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE4)、第5認識パス(ステップSE5)、及び、第3認識パス(ステップSE6)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値と、が等しい場合、文字間隔が、基準文字間隔よりも「1サンプリング単位」小さく、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、1サンプリング単位分、縮小しているということである。この場合、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性は、処理対象文字の波形が伸びている可能性よりも高いと言える。ただし、文字間隔と、基準文字間隔との差が「1サンプリング単位」以上存在している場合と比較して、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性は、「伸び」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではなく、また、「縮み」が発生している場合であっても、「1サンプリング単位」に対応する非常に小さな縮みである可能性が高い。
これを踏まえ、本実施形態では、上記の場合、第4認識パス、第5認識パス、及び、第3認識パスの順に段階的に認識に係る処理を実行する。
【0140】
詳述すると、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性は、「伸び」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではないことを考慮し、まず、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第4認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。第4認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性が、処理対象文字の波形が伸びている可能性よりも高いことを考慮して、第5認識パスを実行し、処理対象文字の波形が縮んでいる場合に特化した処理対象文字の認識を行う。
【0141】
なお、処理対象文字の波形に「縮み」が発生している可能性がある場合(図10のステップSG1:「縮み」)、第5認識パスでは、縮みテーブル94が参照されることとなるが、上述したように、両側伸縮テーブル90と、縮みテーブル94において、同一の文字種類については、縮みテーブル94における最大縮み量の値は、両側伸縮テーブル90における最大縮み量の値以上の値となっている。従って、第5認識パスの方が、第4認識パスよりも、処理対象文字の波形の「縮み」により対応した処理対象文字の認識を実現可能である。
そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、第4認識パスよりも文字種類の確定のための条件が緩い第3認識パスを実行する。これにより、確定された文字種類が正しい文字種類であることの信頼性を担保しつつ、文字種類の確定の成功率を向上している。
【0142】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合(ステップSE2:「文字間隔<基準文字間隔−1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE7)、及び、第3認識パス(ステップSE8)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔から「1サンプリング単位」減算した値を下回る場合、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性が比較的高いと言える。
これを踏まえ、まず、文字認識部80は、まず、処理対象文字の波形が縮んでいる場合に特化した処理対象文字の認識を行う第5認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスを行っている。
【0143】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合(ステップSE2:「文字間隔=基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第4認識パス(ステップSE9)、第5認識パス(ステップSE10)、及び、第3認識パス(ステップSE11)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔と、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値と、が等しい場合、文字間隔が、基準文字間隔よりも「1サンプリング単位」大きく、処理対象文字の波形のX軸における幅が、正常な状態と比較して、1サンプリング単位分、伸張しているということである。この場合、処理対象文字の波形が伸びている可能性は、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性よりも高いと言える。ただし、文字間隔と、基準文字間隔との差が「1サンプリング単位」以上存在している場合と比較して、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性は、「縮み」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではなく、また、「伸び」が発生している場合であっても、「1サンプリング単位」に対応する非常に小さな伸びである可能性が高い。
これを踏まえ、本実施形態では、上記の場合、第4認識パス、第5認識パス、及び、第3認識パスの順に段階的に認識に係る処理を実行する。
【0144】
詳述すると、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性は、「縮み」が発生している可能性と比較して、著しく高いわけではないことを考慮し、まず、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第4認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。第4認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、処理対象文字の波形が伸びている可能性が、処理対象文字の波形が縮んでいる可能性よりも高いことを考慮して、第5認識パスを実行し、処理対象文字の波形が伸びている場合に特化した処理対象文字の認識を行う。
【0145】
なお、処理対象文字の波形に「伸び」が発生している可能性がある場合(図10のステップSG1:「伸び」)、第5認識パスでは、伸びテーブル95が参照されることとなるが、上述したように、両側伸縮テーブル90と、伸びテーブル95において、同一の文字種類については、伸びテーブル95における最大伸び量の値は、両側伸縮テーブル90における最大伸び量の値以上の値となっている。従って、第5認識パスの方が、第4認識パスよりも、処理対象文字の波形の「伸び」により対応した処理対象文字の認識を実現可能である。
そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、第4認識パスよりも文字種類の確定のための条件が緩い第3認識パスを実行する。これにより、確定された文字種類が正しい文字種類であることの信頼性を担保しつつ、文字種類の確定の成功率を向上している。
【0146】
また、図8を参照し、本実施形態では、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合(ステップSE2:「文字間隔>基準文字間隔+1」)、文字認識部80は、第5認識パス(ステップSE12)、及び、第3認識パス(ステップSE13)の順に、段階的に認識パスを実行する。これは、以下の理由による。
すなわち、処理対象文字の文字間隔が、基準文字間隔に「1サンプリング単位」加算した値を上回る場合、処理対象文字の波形が伸びている可能性が比較的高いと言える。
これを踏まえ、まず、文字認識部80は、まず、処理対象文字の波形が伸びている場合に特化した処理対象文字の認識を行う第5認識パスを実行し、効率よく処理対象文字の認識を行う。そして、第5認識パスで処理対象文字の文字種類の確定ができなかった場合は、伸び、及び、縮みのいずれも反映して差異量を算出した上で処理対象文字の認識を実行する第3認識パスを行っている。
【0147】
以上、第2認識フェーズの処理について説明したが、第2認識フェーズにおいて、処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、必ず、第3認識パスが実行され、第3認識パスの実行に伴って、パス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32が特定された状態となる。また、パス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32とされた文字種類のそれぞれについて特定された差異量は、以降のステップまで保存される。
【0148】
さて、前掲図4を参照し、文字認識部80は、第2認識フェーズ(ステップSA7)の実行後、第2認識フェーズにおいて処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA8)、確定できた場合は(ステップSA8:YES)、処理手順をステップSA5へ移行する。
確定できなかった場合は(ステップSA8:NO)、第1認識フェーズの第2認識パスで特定されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれについて特定された差異量と、第2認識フェーズの第3認識パスで特定されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれについて特定された差異量とを比較する(ステップSA9)。
【0149】
ステップSA9における差異量の比較の結果、文字認識部80は、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。ただし、差異量が2番目に小さかった候補の文字種類が差異量が最も小さかった候補の文字種類と同じ場合は、その次に差異量が小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42とする。
後述する光学認識処理(ステップSA18)において、これら第1候補C41、及び、第2候補C42と、光学文字認識において仮確定された文字と、が一致するか否かが判別される。
【0150】
ここで、第1認識フェーズの第2認識パスでは、処理対象文字の文字波形データの波形にずれがある場合を想定して、ずれを反映した上で差異量の算出が行われているが、波形の伸び縮みは反映されていない。一方、第2認識フェーズの第3認識パスでは、処理対象文字の文字波形データの波形に伸び縮みがある場合を想定して、伸び縮みを反映した上で差異量の算出が行われているが、波形のずれは反映されていない。
そのため、例えば、ステップSA1での文字の切り出し位置にずれがある場合、第1認識フェーズの第2認識パスで算出される差異量は、第2認識フェーズの第3認識パスで算出される差異量よりも小さくなる可能性が高い。また、印刷等に起因して磁気インク文字の伸び縮みがある場合、第2認識フェーズの第3認識パスで算出される差異量は第1認識フェーズの第2認識パスで算出される差異量よりも小さくなる可能性が高い。
そこで、第1認識フェーズの第2認識パスで算出された差異量と、第2認識フェーズの第3認識パスで算出された差異量とを比較して、差異量が小さかった方の文字種類を候補とすることで、より確実性が高い文字種類の候補を得ることができる。
【0151】
さて、前掲図4を参照し、ステップSA5において、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字が処理対象文字となったと判別された場合(ステップSA5:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の数を検出する(ステップSA6)。
次いで、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aに含まれる全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別する(ステップSA16)。
【0152】
全ての磁気インク文字について文字種類が確定した場合(ステップSA16:YES)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功したものとして、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理には、例えば、磁気インク文字列4Aが示す情報を記憶部78に記憶し、また、制御部71に記録装置56を制御させて、小切手4の裏面に裏書きに係る所定の画像を記録し、また、第1小切手排出部7に小切手4を排出する等の処理が含まれる。
一方、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字について、1つでも文字種類が確定しなかったものが存在した場合(ステップSA16:NO)、文字認識部80は、文字種類が確定しなかった磁気インク文字に対して光学的な文字の認識を実行する光学認識処理(ステップSA18)を実行する。
【0153】
次いで、文字認識部80は、光学認識処理により、文字種類が確定していなかった全ての磁気インク文字について、文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA19)、全ての磁気インク文字について、文字種類が確定した場合は(ステップSA19:YES)、磁気インク文字列4Aの読み取りが成功した場合に行うべき処理を行う(ステップSA17)。一方、1つでも文字種類が確定しなかった磁気インク文字が存在する場合(ステップSA19:NO)、ホスト側制御部73は、磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理を行う(ステップSA20)。
【0154】
磁気インク文字列4Aの読み取りが失敗した場合に行うべき処理として、ホスト側制御部73は、制御部71を制御して、裏書きに係る画像の印刷等を行うことなく、第2小切手排出部8に小切手4を搬送する処理を行う。第2小切手排出部8に排出された小切手4は、読み取りが失敗した原因の究明や、再読み取り等の処理が行われる。
【0155】
図11は、ステップSA18の光学認識処理の実行時における文字認識部80の動作を示すフローチャートである。
光学認識処理において、まず、文字認識部80は、表面側コンタクトイメージセンサー52の読み取り結果に基づいて生成された、小切手4の表面の画像を示すデータに基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の光学文字認識を実行する(ステップSK1)。
【0156】
ステップSK1では、例えば、文字認識部80は、小切手4の表面を示す画像データにおいて、磁気インク文字列4Aの画像に対応するデータの範囲を特定すると共に、特定した範囲のデータについて、磁気インク文字ごとに画像データを切り出す。
次いで、文字認識部80は、14種類の文字種類のそれぞれに対応するビットマップパターンと、切り出した磁気インク文字の画像データとを比較することにより、磁気インク文字のそれぞれの文字種類を仮確定する。なお、ステップSK1で確定された文字種類は、最終的な文字種類の確定ではないため、「仮確定」と表現する。
【0157】
次いで、文字認識部80は、ステップSK1の光学文字認識の結果に基づいて、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字の文字数を検出する(ステップSK2)。
【0158】
次いで、文字認識部80は、図4のステップSA6で検出した文字数、すなわち、磁気ヘッド54により読み取られた検出信号波形データに基づいて検出された文字数と、ステップSK2で検出された文字数とが一致するか否かを判別する(ステップSK3)。
【0159】
文字数が一致しない場合(ステップSK3:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK5以下の処理は、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用して、文字種類が確定していない磁気インク文字について、文字種類の確定を試みる処理である。従って、上記文字数が異なっている場合は、検出信号波形データに基づいて切り出した磁気インク文字のそれぞれと、光学的な文字認識により切り出した磁気インク文字のそれぞれとの対応関係について確実性が担保できず、ステップSK1における光学文字認識処理の結果を利用した文字種類の確定を実行できないからである。
【0160】
文字数が一致する場合(ステップSK3:YES)、文字認識部80は、図4のステップSA8において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の中から1つの磁気インク文字をステップSK6以下の処理を行う対象として特定する(ステップSK5)。ステップSK5以下の処理は、磁気インク文字認識では文字種類が確定できなかった磁気インク文字のそれぞれについて、順番に、行われる。以下、ステップSK5で特定された磁気インク文字を「処理対象文字」というものとする。
【0161】
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類を取得する(ステップSK6)。
次いで、文字認識部80は、処理対象文字について、ステップSK1で仮確定された文字種類と、上述したステップSA10において第1候補C41とされた文字種類、及び、第2候補C42とされた文字種類のいずれかと、が一致するか否かを判別する(ステップSK7)。
【0162】
一致する場合(ステップSK7:YES)、文字認識部80は、仮確定した文字を、処理対象文字の文字種類として確定し(ステップSK8)、処理手順をステップSK9へ移行する。
一方、一致しない場合(ステップSK7:NO)、文字認識部80は、処理対象文字について、光学文字認識を利用した文字認識によっても文字種類を確定できないと判別し(ステップSK10)、処理手順をステップSK9へ移行する。
【0163】
ステップSK9において、文字認識部80は、図4のステップSA8において文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字の全てが、処理対象文字となったか否かを判別する。全ての磁気インク文字が処理対象文字となっていない場合(ステップSK9:NO)、文字認識部80は、処理手順をステップSK5へ戻す。
一方、全ての磁気インク文字が処理対象文字となった場合(ステップSK9:YES)、文字認識部80は、文字種類を確定できない磁気インク文字が1つでもあるか否か、すなわち、ステップSK10において、文字種類を確定できないと判別された磁気インク文字が1つでも存在するか否かを判別する(ステップSK11)。
【0164】
文字種類を確定できなかったものが1つも存在しない場合(ステップSK11:NO)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに成功したと判別し(ステップSK12)、光学認識処理を終了する。
一方、文字種類を確定できなかったものが1つでも存在する場合(ステップSK11:YES)、文字認識部80は、磁気インク文字列4Aの読み取りに失敗したと判別し(ステップSK4)、光学認識処理を終了する。
【0165】
このように、本実施形態では、ステップSK1の光学文字認識処理において処理対象文字の文字種類を仮確定し、当該仮確定した文字種類が、ステップSA10において第1候補C41とされた文字種類、及び、第2候補C42とされた文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、当該仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これは、以下の理由による。
すなわち、ステップSK1の光学文字認識処理は、小切手4の表面を示す画像データに基づいて、光学文字認識により、磁気インク文字の文字種類を仮確定する。ここで、小切手4の表面には、ペン等でサインが記入されている場合が多く、当該サインが、磁気インク文字列4Aの誤認識の原因となる場合があることが知られている。
これを踏まえ、本実施形態では、磁気的な処理による文字種類の確定ができなかった磁気インク文字について、単純に光学文字認識によって文字種類を確定しない。光学文字認識により仮確定した文字種類が、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズにおける認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いとされた第1候補C41に係る文字種類、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いとされた第2候補C42に係る文字種類のいずれかと一致する場合にのみ、仮確定した文字種類を、処理対象文字の文字種類として確定する。これにより、誤認識を効果的に抑制している。
【0166】
特に、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズの双方の認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いと考えられる第1候補C41、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いと考えられる第2候補C42を選別しており、候補とする文字種類の信頼性が高いといえる。そのため、これらの第1候補C41、及び、第2候補C42を利用して文字種類を確定することにより、誤認識を抑制した信頼性の高い認識結果を得ることができる。
【0167】
なお、磁気インク文字列4Aに含まれる磁気インク文字のそれぞれについて、磁気インク文字認識による文字種類の確定、及び、光学文字認識による文字種類の確定を行い、磁気的な処理によって確定した文字種類と、光学文字認識によって確定した文字種類が一致する場合に、磁気インク文字の文字種類の最終的な確定を行うようにし、磁気インク文字の誤認識の低下を図ることも考えられる。しかしながら、この場合、誤認識は低下するものの、文字種類の確定の成功率(認識率)が低下することが考えられる。本実施形態では、上述した動作を実行するため、誤認識を抑制しつつ、認識率の低下を効果的に防止できる。
【0168】
以上説明したように、本実施形態では、磁気インク文字を異なる方法によって磁気インク文字認識するとして、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズを備え、これら処理フェーズにおける磁気インク文字認識の結果のそれぞれに基づいて、磁気インク文字が示す文字種類を確定する。
これにより、異なる方法によって磁気インク文字認識する2つの処理フェーズにおける磁気インク文字認識の結果に基づいて、多面的に磁気インク文字が示す文字種類の認識を行うことができ、磁気インク文字の誤認識を抑制することが可能となる。
【0169】
本実施形態では、第1認識フェーズにおいて、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形との差異に応じた差異量を算出し、ずれを反映して算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補としてパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22を選別する。
これにより、理想的な波形に対して検出波形の位置がずれている場合に、そのずれの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
【0170】
また、本実施形態では、第2認識フェーズにおいて、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形との差異に応じた差異量を算出し、伸び縮みを反映して算出した差異量に基づいて、磁気インク文字の文字種類の候補としてパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32を選別する。
これにより、検出波形に伸び縮みが生じている場合に、その伸び縮みの影響を抑えて磁気インク文字の認識を行うことができる。
【0171】
さらに、本実施形態では、第2認識フェーズまでで処理対象文字の文字種類を確定できなかった場合、ステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量と、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量とを比較する。そして、ステップSA10では、ステップSA9における比較の結果から、差異量が小さい順に、磁気インク文字の文字種類の第1候補C41、及び、第2候補C42を決定する。
そのため、磁気インク文字認識により処理対象文字の文字種類を確定できない場合でも、第1認識フェーズ、及び、第2認識フェーズの双方の認識結果から正しい文字種類である蓋然性が最も高いと考えられる第1候補C41、及び、正しい文字種類である蓋然性が2番目に高いと考えられる第2候補C42が選別される。これにより、1つの処理フェーズのみの結果から文字種類の候補を選別する場合に比べて、より確実性が高い候補が得られるので、磁気インク文字の誤認識を効果的に抑制できる。
【0172】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0173】
第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第1の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムに対して、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理をさらに含む点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。図18は、第2の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0174】
第2の実施形態では、図18に示すステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量と、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量とを比較する。
【0175】
ステップSA9の比較において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21の差異量が、第2認識フェーズで選別されたパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合(ステップSA11:YES)、文字認識部80は、基準波形データの波形を、例えば、パス2用第1候補C21についてスライドさせた量(スライド量)だけスライドさせることにより、第1認識フェーズでのスライド量を反映させる(ステップSA12)。
なお、第1認識フェーズにおいて差異量を算出した際の、ステップSD2における基準波形データの波形のスライド量は保存されているものとする。
【0176】
次いで、基準波形データの波形に第1認識フェーズでのスライド量を反映させた状態で、第2認識フェーズを再度実行する(ステップSA13)。なお、2回目の第2認識フェーズ(ステップSA13)における処理は、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて行うこと以外は、1回目の第2認識フェーズ(ステップSA7)における処理と同じである。
【0177】
2回目の第2認識フェーズ(ステップSA13)の実行後、文字認識部80は、処理対象文字の文字種類が確定したか否かを判別し(ステップSA14)、確定できた場合は(ステップSA14:YES)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0178】
確定できなかった場合は(ステップSA14:NO)、2回目の第2認識フェーズで新たに選別されたパス3用第1候補C31、及び、パス3用第2候補C32のそれぞれの差異量と、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のそれぞれの差異量とを比較する。
差異量の比較の結果、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。
ただし、差異量が2番目に小さかった候補の文字種類が差異量が最も小さかった候補の文字種類と同じ場合は、その次に差異量が小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42とする。
【0179】
このように、ステップSA9の比較において、第1認識フェーズのパス2用第1候補C21の差異量が第2認識フェーズのパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合に、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行するのは、以下の理由による。
すなわち、第1認識フェーズでパス2用第1候補C21として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズでパス3用第1候補C31として選別された文字種類の差異量よりも小さい場合は、ステップSA1での文字の切り出し位置のずれ等により検出波形の位置がずれている可能性が高いと考えられる。そのような場合に、波形の位置がずれたままの状態(スライド量を反映しない状態)で基準波形に伸び縮みを反映して差異量の算出を行っても、差異量が小さくならない可能性が高い。
そこで、このような場合に、第1認識フェーズでのスライド量だけ基準波形データの波形をスライドさせた上で2回目の第2認識フェーズを実行すれば、検出波形の位置のずれが反映され、さらに波形の伸び縮みが反映されるので、検出波形の位置のずれ及び伸び縮みの影響を抑えて、磁気インク文字の認識を行うことができる。これにより、認識率を向上できる。
【0180】
なお、第1認識フェーズでパス2用第1候補C21として選別された文字種類の差異量が、第2認識フェーズでパス3用第1候補C31として選別された文字種類の差異量よりも大きい場合は、検出波形の位置がずれている可能性が高いとはいえない。このような場合に、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行すると、かえって検出波形と基準波形との間の差異量が大きくなってしまうおそれがある。
したがって、本実施形態では、パス2用第1候補C21の差異量がパス3用第1候補C31の差異量よりも小さい場合にのみ、第1認識フェーズでのスライド量を反映させて第2認識フェーズを再度実行することとしている。
【0181】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0182】
第3の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第2の実施形態に対して、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合には、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。図19は、第3の実施形態に係る文字認識部80の動作を示すフローチャートである。なお、第2の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0183】
第3の実施形態では、図19に示すステップSA9において、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22の文字種類が、「2」及び「5」であるかを判別する(ステップSA15)。
【0184】
パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22のいずれか一方が「2」及び「5」のいずれか一方であり、かつ、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22の他方が「2」及び「5」の他方である場合(ステップSA15:YES)、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない。この場合、4つの候補の中で差異量が最も小さかった候補の文字種類を、磁気インク文字認識における第1候補C41と決定し、差異量が2番目に小さかった文字種類を、磁気インク文字認識における第2候補C42と決定して(ステップSA10)、処理手順をステップSA5へ移行する。
【0185】
一方、パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」以外である場合(ステップSA15:NO)、第2の実施形態と同様に、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行する。
【0186】
パス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合に、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行しない理由を以下に説明する。図20(A)はE−13Bフォントにおける文字種類「2」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図であり、図20(B)はE−13Bフォントにおける文字種類「5」に対応する基準波形データの内容を模式的に示す図である。
【0187】
図20(A),(B)に示すように、E−13Bフォントにおける文字種類「2」の文字波形データと文字種類「5」の文字波形データとは互いに類似している。より具体的には、図20(A)に示す「2」の文字波形データにおける一端側の1サンプリング単位目から28サンプリング単位目の部分W2aと、図20(B)に示す「5」の文字波形データにおける一端側の1サンプリング単位目から28サンプリング単位目の部分W5aとでは、波形及びピーク位置がほぼ同じである。
また、図20(A)に示す「2」の文字波形データにおける他端側の29サンプリング単位目から57サンプリング単位目の部分W2bと、図20(B)に示す「5」の文字波形データにおける他端側の36サンプリング単位目から64サンプリング単位目の部分W5bとでは、波形がほぼ同じである。そして、部分W2bのピーク位置と部分W5bのピーク位置とは7サンプリング単位程度ずれているが、部分W5bを図20(B)におけるX軸方向左方に7サンプリング単位分スライドさせると、部分W2bと部分W5bとで波形及びピーク位置はほぼ同じとなる。
【0188】
上述した通り、第1認識フェーズの第2認識パス(ステップSD2)では、基準波形データの波形全体を、X軸方向左方へ7サンプリング単位分スライドさせて差異量を算出するとともに、X軸方向右方へ7サンプリング単位分スライドさせて差異量を算出する。そうすると、比較対象文字種類が「2」又は「5」である場合、基準波形データの波形を7サンプリング単位分スライドさせると、基準波形データの文字種類が「2」及び「5」のいずれの場合でも、処理対象文字の文字波形データの波形に対して、一端側の部分W2aと部分W5aと、又は、他端側の部分W2bと部分W5bと、のいずれかが重なるので、差異量は小さくなる。
そのため、文字種類の「2」と「5」とを識別する場合、第1認識フェーズにおいて波形のずれを反映して差異量を比較しても確実性の高い選別ができるとはいい難く、第1認識フェーズにおけるスライド量を反映して第2認識フェーズを再度実行した場合、かえって誤認識を招くおそれがある。
【0189】
本実施形態では、第1認識フェーズで選別されたパス2用第1候補C21、及び、パス2用第2候補C22が「2」及び「5」である場合は、ステップSA11,SA12,SA13,SA14の処理を実行せず、第1候補C41と第2候補C42とを決定するので、文字種類の「2」と「5」との間で誤認識、あるいは、認識不可能が生じることを防止できる。
【0190】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0191】
例えば、上述した実施形態では、ホストコンピューター70が文字認識部80を備え、磁気インク文字の認識を実行する構成であったが、この文字認識部80の機能を、小切手読取装置1に持たせるようにし、小切手読取装置1が単独で、磁気インク文字の認識に係る各種処理を実行する構成としてもよい。この場合、小切手読取装置1が、記録媒体処理装置として機能する。
【符号の説明】
【0192】
1…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、4…小切手(記録媒体)、4A…磁気インク文字列、54…磁気ヘッド(磁気読取部)、70…ホストコンピューター(記録媒体処理装置)、71…制御部、73…ホスト側制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、
前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1認識フェーズ及び前記第2認識フェーズのそれぞれでは、算出した前記差異量が小さい順に、少なくとも前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を選別し、
前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量が、前記第2認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量よりも小さい場合は、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを前記第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせて、2回目の前記第2認識フェーズを実行し、
前記2回目の第2認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記2回目の第2認識フェーズは、前記磁気インク文字のフォントがE−13Bフォントであって、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類、及び、前記第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合以外に実行することを特徴とする請求項3に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項6】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
規格で定められた複数の文字種類の基準波形を記憶する記憶部と、
前記読取部と前記記憶部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、前記記憶部に記憶された複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1認識フェーズ及び前記第2認識フェーズのそれぞれでは、算出した前記差異量が小さい順に、少なくとも前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を選別し、
前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量が、前記第2認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類の前記差異量よりも小さい場合は、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを前記第1認識フェーズでスライドさせた距離だけスライドさせて、2回目の前記第2認識フェーズを実行し、
前記2回目の第2認識フェーズで第1候補、及び、第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、前記第1認識フェーズで前記第1候補、及び、前記第2候補として選別された文字種類のそれぞれの前記差異量と、を比較して、前記差異量が小さい順に、前記磁気インク文字の文字種類の第1候補、及び、第2候補を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記2回目の第2認識フェーズは、前記磁気インク文字のフォントがE−13Bフォントであって、前記第1認識フェーズで前記第1候補として選別された文字種類、及び、前記第2候補として選別された文字種類が「2」及び「5」である場合以外に実行することを特徴とする請求項3に記載の記録媒体処理装置。
【請求項5】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
前記読取部が前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項6】
記録媒体に記録された磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、規格で定められた複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離スライドさせた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第1認識フェーズと、
前記検出波形と、前記複数の文字種類の基準波形のそれぞれを所定の距離伸縮させた波形と、の差異に応じた差異量を算出し、算出した前記差異量に基づいて前記磁気インク文字の文字種類の候補を選別する第2認識フェーズと、を実行し、
前記第1認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、前記第2認識フェーズで前記候補として選別された文字種類の前記差異量と、を比較して、前記磁気インク文字の文字種類の候補を決定する手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−174093(P2012−174093A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36811(P2011−36811)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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