説明

記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラム

【課題】磁気インク文字の認識に際し、認識率を向上させるとともに誤認識を抑制する。
【解決手段】パーソナルチェックに記録された複数の磁気バーによって構成されるCMC7文字を磁気的に読み取る磁気波形取得部202と、CMC7文字を読み取って得られる文字波形におけるピーク間隔パターンからCMC7文字の文字認識を行うCPU230と、磁気波形取得部202とCPU230とを制御する制御部203とを備えた小切手読取装置200のCPU230は、制御部203の制御に基づいて、測定したピーク間隔の値を相互に比較して、ピーク間隔が広いピーク間隔又は狭いピーク間隔のいずれであるかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気インク文字(MICR文字)は、磁性物質を含んだインクを用いて小切手やパーソナルチェック等の記録媒体に記録された文字や記号である。磁気インク文字の一つのフォントであるCMC7文字は、文字として視認可能な磁気バーコードによって表されており、店舗や銀行の決済システムにおいては、磁気インク文字認識が可能な記録媒体処理装置を用いて認識されている。
【0003】
記録媒体処理装置として、磁気インク文字列を磁気ヘッドで磁気的に読取って得られた1文字分の磁気波形における7個のプラスピーク(値がプラス側の変曲点)同士の間隔である6個のピーク間隔を所定の閾値に基づいて広い間隔と狭い間隔とに判別し、ピーク間隔の広狭の組み合わせによって表されるピーク間隔パターンに基づいて、CMC7文字の文字種類を認識するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−157982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気インク文字の印刷状態や記録媒体の折れ等に起因して、得られる検出磁気波形に伸び縮みが生じる場合がある。このような場合に、所定の閾値に対する絶対比較ではピーク間隔が広いか狭いかを正しく判別することが困難になり、その結果、ピーク間隔パターンに基づくCMC7文字の文字種類の認識が不可能となって認識率が低下することや、誤認識を招いてしまうことがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る記録媒体処理装置は、記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、前記読取部と前記認識部とを制御する制御部と、を備え、前記認識部は、前記制御部の制御に基づいて、測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、各間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する。このため、得られた磁気波形に伸び縮みが生じたことにより、所定の閾値に基づいてピーク間隔が広いか狭いかを正しく判別することが困難な場合でも、複数のピーク同士の間隔の値を相対比較することにより、ピーク間隔が広いか狭いかを判別できる。これにより、ピーク間隔パターンに基づくCMC7文字の文字種類の認識における認識率の低下を抑えるとともに、誤認識を抑制することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記認識部は、前記複数のピーク同士の間隔の値の大小に基づいて並べて、大きい方から所定の順位までの前記間隔を前記広い間隔とし、前記所定の順位よりも小さい方の順位の前記間隔を前記狭い間隔とすることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、磁気インク文字の数字やアルファベット等文字種類によって広い間隔及び狭い間隔のそれぞれの数が特定できる場合、複数のピーク同士の間隔のうち、値が大きい方から広い間隔の数に対応する所定の順位までを広い間隔とし、それよりも小さい方の順位を狭い間隔とすることで、広い間隔と狭い間隔とに判別することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る記録媒体処理装置であって、前記認識部は、前記複数のピーク同士の間隔の値の大小に基づいて並べて、大きい方からみたときの次の順位の前記間隔の値との差が最も大きくなる前記間隔までを前記広い間隔とし、前記次の順位以降の前記間隔を前記狭い間隔とすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、広い間隔と狭い間隔との値の差は、広い間隔同士の値の差及び狭い間隔同士の値の差よりも大きくなるので、複数のピーク同士の間隔を値の大きい方から順に並べて、次の順位の値との差が最も大きくなる順位までの間隔を広い間隔とすることで、複数のピーク同士の間隔を広い間隔と狭い間隔とに判別することができる。
【0013】
[適用例4]本適用例に係る記録媒体処理装置の制御方法は、記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、各間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する。このため、得られた磁気波形に伸び縮みが生じたことにより、所定の閾値に基づいてピーク間隔が広いか狭いかを正しく判別することが困難な場合でも、複数のピーク同士の間隔の値を相対比較することにより、ピーク間隔が広いか狭いかを判別できる。これにより、ピーク間隔パターンに基づくCMC7文字の文字種類の認識における認識率の低下を抑えるとともに、誤認識を抑制することができる。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るプログラムは、記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記認識部を、測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、磁気インク文字を磁気的に読み取った磁気波形において、複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、各間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する。このため、得られた磁気波形に伸び縮みが生じたことにより、所定の閾値に基づいてピーク間隔が広いか狭いかを正しく判別することが困難な場合でも、複数のピーク同士の間隔の値を相対比較することにより、ピーク間隔が広いか狭いかを判別できる。これにより、ピーク間隔パターンに基づくCMC7文字の文字種類の認識における認識率の低下を抑えるとともに、誤認識を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】パーソナルチェック及び磁気インク文字列を示す図である。
【図2】CMC7文字の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る小切手読取装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識の機能ブロック図である。
【図5】CMC7文字と磁気波形との関係を説明する図である。
【図6】磁気波形におけるピーク間隔の分布のばらつきを説明する図である。
【図7】第1の実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムについて図面を参照して説明する。本実施形態に係る記録媒体処理装置は、パーソナルチェック等の記録媒体の有効性を確認するために、記録媒体に印刷された磁気インク文字列の認識処理を行う装置である。
【0019】
<パーソナルチェック及びCMC7文字>
まず、記録媒体の一つであるパーソナルチェック、及び、磁気インク文字(MICR文字:Magnetic Ink Character Recognition)の一つのフォントであるCMC7文字について説明する。図1は、パーソナルチェック及び磁気インク文字列を示す図である。詳しくは、図1(a)は磁気インク文字列がチェック用紙に印刷されたパーソナルチェックを示す図であり、図1(b)はチェック用紙に印刷された磁気インク文字列の一部を拡大して示す図である。また、図2は、CMC7文字の構成を示す図である。
【0020】
パーソナルチェックは、個人用小切手として特に欧州や米国等において広く用いられているものである。図1(a)に示すように、パーソナルチェック100は、チェック用紙101に、発行日欄102、支払先店名欄103、支払金額欄104、署名欄105等を設けたものである。なお、図1(a)には、各欄102,103,104,105が記入される前の状態が示されている。チェック用紙101の下部には、複数のCMC7文字112によって構成され、銀行番号、口座番号、及び小切手番号の各データを表す磁気インク文字列106が印刷されている。
【0021】
ここで、パーソナルチェック100を用いた商取引の手順を簡単に説明する。商品等の購入者は、チェック用紙101の各欄102,103,104,105に、発行日、支払先、支払金額、自分の署名を記入の上、パーソナルチェック100を支払先の店舗に渡す。店舗では、後述する小切手読取装置200(図3参照)により、磁気インク文字列106を認識してパーソナルチェック100の有効性を確認し、パーソナルチェック100の裏書として振込先等の情報を記入する。
【0022】
振込先等の情報の記入は、手書きやスタンプで行われる他、小切手読取装置とプリンターとが一体となった複合処理装置を使用して行われることもある。裏書きされたパーソナルチェック100には、その店舗で、又は銀行等の金額入力センターで、右下欄にCMC7文字112により支払金額が印刷される。このパーソナルチェック100が銀行の決済システムで処理され、CMC7文字112で指定された金額が裏書きされた振込先に振り込まれる。
【0023】
図1(a)に示すように、磁気インク文字列106は、列方向に複数配列された段落文字列111(111a,111b,111c)で構成されている。段落文字列111a,111b,111cは、それぞれ複数の磁気インク文字(CMC7文字112)で構成されており、例えば、列方向の左側から順に銀行番号、口座番号、小切手番号に対応している。なお、本実施形態では、図1(a),(b)における左側を磁気インク文字列106の列方向の前方と呼ぶ。
【0024】
図1(a)に破線で示すように、段落文字列111a,111bの中間には空白文字116aが配置され、段落文字列111b,111cの中間には空白文字116bが配置されている。空白文字116a,116bは、小切手読取装置200によって空白文字として認識される。
【0025】
図1(b)に示すように、磁気インク文字列106において、各CMC7文字112は、所定の文字幅wを有しており、所定の文字間隔dを置いて配列されている。なお、文字幅w及び文字間隔dは、後述するように、各CMC7文字112を構成する磁気バー121の磁気バー後端部123を基準とした距離である。文字幅wは、例えば2.20±0.24mmと定められており、文字間隔dは、例えば0.67mmと定められている。
【0026】
また、空白文字116a,116bは、CMC7文字112の文字幅wと同じ幅を有しており、段落文字列111(CMC7文字112)との間に文字間隔dと同じ間隔を置いて配置されている。
【0027】
図2に示すように、CMC7文字112は、文字として視認可能な磁気バーコードによって表されている。CMC7文字112の形状や磁気特性、特に、磁気ヘッド221(図3参照)で磁気読取りした場合の磁束の波形の形状は、CMC7規格によって定められている。CMC7規格においては、フォントとして、10種類の数字「0〜9」、5種類の記号「SI〜SV」及び26種類のアルファベット「A〜Z」が存在する。なお、図2には、数字及び記号のみを示している。
【0028】
CMC7文字112は、各文字が7列の磁気バー121で構成される。そして、隣り合う磁気バー121同士の磁気バー後端部123間の距離である、6個のバー間隔122の「広い間隔(=1)」及び「狭い間隔(=0)」の組み合わせ(以下、「バー間隔パターン」という)によって、CMC7文字112の文字種類が認識される。
【0029】
例えば、数字の「0」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、文字の左側から「狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、広い間隔、狭い間隔、狭い間隔」、すなわち「001100」となっている。また、数字の「1」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、文字の左側から「広い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、狭い間隔」、すなわち「100010」となっている。
【0030】
バー間隔122の「広い間隔」は、例えば0.50±0.04mmと定められており、「狭い間隔」は、例えば0.30±0.04mmと定められている。この寸法公差は、チェック用紙101への印刷精度等を考慮して定められたものである。したがって、数字及び記号を表すCMC7文字112の所定の文字幅wは、2個の広い間隔及び4個の狭い間隔の和分、すなわち、2.20±0.24mmとなる。
【0031】
なお、6個のバー間隔122のうち広い間隔の数をN1、狭い間隔の数をN0とすると、数字及び記号は、N1:N0=2:4であり、アルファベットは、N1:N0=1:5又はN1: N0=3:3である。なお、市場に一般に流通しているパーソナルチェック100に使用されるCMC7文字112は、数字及び記号のみである。
【0032】
(第1の実施形態)
<小切手読取装置>
次に、記録媒体処理装置としての小切手読取装置200の構成について、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る小切手読取装置の概略構成を模式的に示す図である。図4は、第1の実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識の機能ブロック図である。
【0033】
図3に示すように、小切手読取装置200は、チェック用紙搬送部201と、読取部としての磁気波形取得部202と、制御部203と、入力装置204とを備えている。
【0034】
チェック用紙搬送部201は、駆動源となるステッピングモーター211と、ステッピングモーター211の駆動を制御するモーター制御回路212と、ステッピングモーター211の駆動力を伝達する動力伝達機構213と、動力伝達機構213を介してステッピングモーター211により回転する送りローラー214と、搬送されるチェック用紙101の送りを案内する搬送路(図示省略)とを有している。チェック用紙搬送部201は、チェック用紙101を、例えば、1/144インチ(約0.176mm)単位でステップ送りして搬送する。
【0035】
磁気波形取得部202は、搬送路上のチェック用紙101に臨むように配置された磁気ヘッド221と、磁気ヘッド221に対して送り方向の手前に位置し、CMC7文字112を磁化するための永久磁石222と、磁気−電気変換された電気信号を検出磁気波形131(図5参照)として後述するCPU230に送るCMC7文字検出回路223とを備えている。
【0036】
磁気ヘッド221は、CMC7文字112を構成する磁気バー121における磁束密度の変化を検出して電気信号に変換する。磁気ヘッド221は、例えば、磁気インク文字列106の後端(図1では、段落文字列111cの列方向後方の最外端のCMC7文字112「SI」)から列方向の後方に、例えば40mmの距離を隔てた位置より検出を開始する。磁気ヘッド221による磁束密度の測定は、例えば、チェック用紙101の搬送の1ステップ(約0.176mm)当り15回行われ、4回毎に測定値の平均をとり、この波形データ列が制御部203のRAM240に記憶される。1データは、磁気インク文字列106上では約0.047mmに相当する。
【0037】
CMC7文字検出回路223は、磁気ヘッド221により読み取られた電気信号を増幅する増幅回路226と、増幅された電気信号中の様々なノイズを除去するフィルター回路227と、フィルター回路227を通過したアナログ信号をA/D変換してデジタル値を出力するA/D変換回路228とを有している。
【0038】
制御部203は、検出磁気波形131からCMC7文字112を認識する認識部としてのCPU230と、CMC7文字検出回路223から送られた検出磁気波形131の波形データ等を一時的に保管するRAM240と、CMC7文字112を認識するための判定条件を記憶するROM250とを備えている。また、制御部203は、チェック用紙搬送部201、磁気波形取得部202、入力装置204の駆動及び制御を行う。
【0039】
入力装置204は、CMC7文字112を認識するための判定条件を変更する場合に、CPU230の判定条件変更部231(図4参照)に対して、入力操作を行う装置である。
【0040】
小切手読取装置200では、チェック用紙搬送部201によって、磁気インク文字列106が印刷されたチェック用紙101が、磁気インク文字列106の列方向の後方を先頭にして搬送される。そして、チェック用紙101が磁気波形取得部202を通過することで、磁気インク文字列106の複数のCMC7文字112が磁化された後、列方向の後方から磁気読取りされて検出磁気波形131が取得される。そして、取得された検出磁気波形131に基づいて、CPU230により文字認識処理が行われ、CMC7文字112の文字種類が認識される。
【0041】
図4に示すように、ROM250は、認識判定条件記憶部251を有している。認識判定条件記憶部251には、上述したCMC7文字112を認識するための判定条件が記憶されている。
【0042】
RAM240は、判定条件変更記憶部241と、磁気波形記憶部242と、認識結果記憶部243とを備えている。判定条件変更記憶部241は、CPU230の判定条件変更部231により変更された判定条件を記憶する。磁気波形記憶部242は、検出磁気波形131の波形データ及び検出条件を記憶する。認識結果記憶部243は、CPU230の磁気パターン認識部237によりCMC7文字112の文字種類が一義的に認識された場合に、その認識結果を記憶する。
【0043】
また、図示を省略するが、RAM240は、後述する文字認識処理における文字波形開始位置cspを記憶する文字波形開始位置記憶部や、文字波形開始位置記憶部、各種フラグの設定、切出し直しカウンター、認識不可能文字数カウンター等をそれぞれ記憶する各種記憶部等をさらに備えている。
【0044】
CPU230は、判定条件変更部231と、搬送制御部232と、磁気波形記憶指示部233と、磁気波形切出し部234と、ピーク間隔測定部235と、パターン変換部236と、磁気パターン認識部237と、認識制御部238とを備えている。判定条件変更部231は、入力装置204からの入力操作に基づいて、CMC7文字112を認識するための判定条件を変更する。
【0045】
搬送制御部232は、上記のモーター制御回路212を介して、チェック用紙101の搬送を制御する。磁気波形記憶指示部233は、上記のCMC7文字検出回路223から送られた検出磁気波形131及び検出条件を、磁気波形記憶部242に記憶させる。磁気波形切出し部234は、記憶された検出磁気波形131から切出し開始基準位置である文字波形開始位置cspを検出し、文字単位で文字波形145の切り出しを行う(図5参照)。
【0046】
ピーク間隔測定部235は、切り出された文字波形145の6個のピーク間隔142(142a〜142f)を測定する(図5参照)。パターン変換部236は、認識判定条件記憶部251又は判定条件変更記憶部241に記憶された判定条件にしたがって、6個のピーク間隔142a〜142fをそれぞれ、「広い間隔(=1)」又は「狭い間隔(=0)」のピーク間隔パターンに変換する。
【0047】
磁気パターン認識部237は、認識判定条件記憶部251又は判定条件変更記憶部241に記憶された判定条件に基づいて、CMC7文字112の文字種類を認識する。認識制御部238は、これら判定条件変更部231、搬送制御部232、磁気波形記憶指示部233、磁気波形切出し部234、ピーク間隔測定部235、パターン変換部236及び磁気パターン認識部237を関連付けて制御する。
【0048】
<磁気波形>
次に、記録媒体に印刷された磁気インク文字(CMC7文字112)と、磁気波形取得部202により取得された磁気波形(検出磁気波形131及び文字波形145)との関係を、図5を参照して説明する。図5は、CMC7文字と磁気波形との関係を説明する図である。
【0049】
検出磁気波形131は、図5ではその一部のみを図示しているが、図1(a)に示す磁気インク文字列106から取得された磁気波形であり、磁気インク文字列106を構成する複数のCMC7文字112に対応するものである。また、文字波形145は、検出磁気波形131から文字単位で切り出された磁気波形であり、CMC7文字112の1つの文字に対応するものである。図5には、記号の「SV」を表すCMC7文字112の磁気波形を示している。
【0050】
図5において、CMC7文字112を構成する7列の磁気バー121を、磁気インク文字列106の列方向の前方から後方(図1及び図5における左方から右方)の順に磁気バー121a〜121gとする。また、磁気ヘッド221(図3参照)による磁気インク文字列106の読取り方向を矢印224とする。矢印224で示す読取り方向は、磁気インク文字列106の列方向の後方から前方(図1及び図5における右方から左方)に向かう方向である。
【0051】
また、読取り方向と交差する方向に沿って延在する磁気バー121の読取り開始側の端部を、列方向の前方から順に磁気バー後端部123a〜123gとし、磁気バー121の読取り終了側の端部を、列方向の前方から順に磁気バー前端部124a〜124gとする。さらに、隣り合う磁気バー121同士の磁気バー後端部123間の距離である6個のバー間隔122を、列方向の前方から順にバー間隔122a〜122fとする。
【0052】
文字波形145(検出磁気波形131)は、各磁気バー121による磁束密度の変化を電圧変化として検出したものである。そのため、文字波形145は微分波形となり、各磁気バー121による磁束密度の変化量に対応してY軸方向の値が上下すると共に、磁束密度の変化量がプラスであるのかマイナスであるのかに応じてY軸方向の値の正負が変化する。なお、Y軸の上方がプラスであり、Y軸の下方がマイナスである。
【0053】
文字波形145は、磁気バー後端部123a〜123gの各位置において、値がプラス側の変曲点である極大値(以下、「プラスピーク」という)141となる。したがって、文字波形145は、7列の磁気バー121(121a〜121g)のそれぞれに対応して、7個のプラスピーク141(141a〜141g)を有している。
【0054】
文字波形145における6個のピーク間隔142(142a〜142f)は、隣り合うプラスピーク141a〜141g同士の間隔であり、CMC7文字112の6個のバー間隔122a〜122fに対応している。そのため、6個のピーク間隔142の「広い間隔(=1)」及び「狭い間隔(=0)」の組み合わせ(以下、「ピーク間隔パターン」という)は、CMC7文字112のバー間隔パターンに対応している。これにより、取得された文字波形145(検出磁気波形131)におけるピーク間隔パターンから、CMC7文字112の文字種類を認識することができる。
【0055】
例えば、記号「SV」を表すCMC7文字112のバー間隔パターンは、記号の左側(読取り方向の逆)から順に、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、広い間隔、広い間隔、すなわち「000011」である。文字波形145におけるピーク間隔142a〜142fのピーク間隔パターンは、読取り方向から順に、広い間隔、広い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、狭い間隔、すなわち「110000」となり、読取り方向の逆から順には「000011」となる。これにより、ピーク間隔パターンに基づいて、CMC7文字112の文字種類が記号「SV」であると認識される。
【0056】
なお、以下では、6個のピーク間隔142(142a〜142f)のうち、広い間隔を「広いピーク間隔」といい、狭い間隔を「狭いピーク間隔」という。
【0057】
<磁気文字認識処理>
次に、小切手読取装置200における磁気文字認識処理について説明する。図6は、磁気波形におけるピーク間隔の分布のばらつきを説明する図である。図7は、第1の実施形態に係る小切手読取装置における磁気文字認識処理を説明するフローチャートである。磁気文字認識とは、取得した検出磁気波形131から、CMC7文字112のそれぞれについて文字種類を確定し、又は、当該磁気インク文字の文字種類を確定できないことを検出することである。
【0058】
第1の実施形態に係る磁気文字認識処理は、CMC7文字112の文字種類が、市場で一般に使用されている数字及び記号であることを前提とする。すなわち、図5に示すように、文字波形145における6個のピーク間隔142a〜142fのうち、広い間隔の数をN1、狭い間隔の数をN0とすると、N1:N0=2:4である場合を前提としている。
【0059】
第1の実施形態に係る磁気文字認識処理では、6個のピーク間隔142a〜142fが、後述するステップSA2で測定したそれぞれの値を相互に比較して、広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する。より具体的には、6個のピーク間隔142a〜142fを測定した値の大小に基づいて降順に並べて、所定の順位として2番目までの上位2個を広い間隔とし、3番目以降の下位の4個を狭い間隔として判別する。
【0060】
図6(a)〜(f)には、6個のピーク間隔142a〜142fを測定して得られた値D1〜D6が、値の大きい方から降順に(右方から左方に向かって)プロットされている。図6(a)〜(f)において、左方から右方に向かってピーク間隔142の値が大きくなっており、ピーク間隔142の「狭いピーク間隔」の最大値S1と、「広いピーク間隔」の最大値S2とが破線で示されている。
【0061】
狭いピーク間隔の最大値S1は、バー間隔122の狭い間隔の上限値である0.34mmにバー間隔122の伸び量として0.1mmを加味した値に対応しており、例えば135波形データである。また、広いピーク間隔の最大値S2は、バー間隔122の広い間隔の上限値である0.54mmにバー間隔122の伸び量として0.1mmを加味した値に対応しており、例えば216波形データである。
【0062】
ここで、従来の磁気文字認識処理では、狭いピーク間隔の最大値S1を閾値として(以下では、閾値S1ともいう)、狭いピーク間隔と広いピーク間隔とを判別していた。すなわち、図6(a)に示す値D3〜D6のように、波形データで表されるピーク間隔142の値が閾値S1以下のものを狭いピーク間隔とし、値D1,D2のように、ピーク間隔142の値が閾値S1を超えるものを広いピーク間隔として判別していた。
【0063】
しかしながら、磁気インク文字列106の印刷状態やチェック用紙101の折れ等に起因して、図6(b)〜(d)のように、得られる文字波形145(検出磁気波形131)に伸び縮みが生じる場合がある。文字波形145に伸び縮みが生じると、ピーク間隔142も変動して広くなることや狭くなることがある。
【0064】
図6(b)は、文字波形145に伸びが生じてピーク間隔142が全体的に広くなった場合の例を示している。図6(b)では、図6(a)に比べて、値D1〜D6が大きくなっており、値D1〜D3が閾値S1を超えている。そうすると、値D3に対応するピーク間隔142は、本来は狭いピーク間隔であっても、閾値S1を僅かに超えていることで、広いピーク間隔であると判別されてしまう。
【0065】
また、図6(c),(d)は文字波形145に縮みが生じてピーク間隔142が全体的に狭くなった場合の例を示している。図6(c)では値D2〜D6が閾値S1以下となり、図6(d)では値D1〜D6が閾値S1以下となっている。したがって、図6(c)では値D2に対応するピーク間隔142が、図6(d)では値D1,D2に対応するピーク間隔142が、それぞれ、本来は広いピーク間隔であっても、狭いピーク間隔であると判別されてしまう。なお、文字波形145の波形中の一部に伸び縮みが生じる場合もある。
【0066】
このように、文字波形145に伸び縮みが生じている場合は、従来の磁気文字認識処理のような閾値S1に対する絶対比較では、6個のピーク間隔142が広いピーク間隔又は狭いピーク間隔のいずれであるかを正しく判別することが困難である。そのため、ピーク間隔パターンに基づくCMC7文字112の文字種類の認識が不可能となり認識率が低下することや、誤認識を招いてしまうことがあるという課題があった。
【0067】
これに対して、第1の実施形態に係る磁気文字認識処理では、CMC7文字112の文字種類が数字及び記号である場合を前提として、値が大きい方から2番目まで(D1,D2)のピーク間隔142を広いピーク間隔とし、3番目(D3)以降のピーク間隔142を狭いピーク間隔とする。これにより、図6(a)〜(d)に示すいずれの場合においても、6個のピーク間隔142を2個の広いピーク間隔と4個の狭いピーク間隔とに正しく判別することができるので、ピーク間隔パターンに基づいてCMC7文字112の文字種類の認識を行うことができる。その結果、従来の磁気文字認識処理に比べて、認識率の低下を抑えるとともに誤認識を抑制することができる。ただし、このようにして広いピーク間隔と狭いピーク間隔とを判別する上で留意しなければならない点がある。
【0068】
<磁気文字認識処理における留意点>
例えば、図6(e)に示すように、大きい方の上位3つの値D1,D2,D3が同じ値である場合や、図6(f)に示すように、大きい方から2番目の2つの値D2,D3が同じ値である場合は、6個のピーク間隔142から上位2個の広いピーク間隔を特定することが困難である。そのため、図6(e),(f)に示すような状態に該当するか否かの確認を先に行い、該当する場合は、ピーク間隔パターンに基づく文字認識を適用しないこととする。
【0069】
また、図6(e),(f)に示す場合以外においても、検出磁気波形131から1文字分の文字波形145を切り出す際の文字波形開始位置cspを誤ったこと(以下では、切出し間違いという)等により、文字波形145の波形中に、対応するCMC7文字112の前後に位置する他のCMC7文字112の広いピーク間隔が含まれてしまい、広いピーク間隔が3個となる場合があり得る。このような場合も、6個のピーク間隔142から上位2個の広いピーク間隔を特定することが困難である。そのため、切出し間違いの疑いがあるか否かの確認を先に行い、切出し間違いの疑いがある場合は、ピーク間隔パターンに基づく文字認識を適用しないこととする。
【0070】
切出し間違いの疑いがある場合について、より具体的に説明する。文字波形145の波形中に広いピーク間隔が3個ある場合、6個のピーク間隔142の合計値は、広いピーク間隔が2個ある場合よりも大きな値となる。したがって、6個のピーク間隔142の合計値を確認することにより、切出し間違いの疑いがあるか否かを推測できる。なお、6個のピーク間隔142の合計値は、図5に示すプラスピーク141aとプラスピーク141gとの間隔146の値に相当する。
【0071】
しかしながら、文字波形145の波形中に広いピーク間隔が3個ある場合であっても、文字波形145に縮みが生じた場合、6個のピーク間隔142の合計値が、広いピーク間隔が2個ある場合と大きく違わないことがあり得る。このような場合、値が大きい方から3番目のピーク間隔142が広いピーク間隔であるか否かを確認することにより、切出し間違いの疑いがあるか否かを推測できる。
【0072】
そこで、第1の実施形態に係る磁気文字認識処理では、切出し間違いの疑いがあるか否かを、例えば、ピーク間隔142の合計値、及び3番目のピーク間隔142の値を、それぞれの所定の値と比較することにより判定する。
【0073】
まず、ピーク間隔142の合計値による判定方法について説明する。CMC7文字112が数字及び記号である場合、6個のピーク間隔142のうち2個が広いピーク間隔であり4個が狭いピーク間隔である。したがって、6個のピーク間隔142の合計値の最大値S3は、上述の広いピーク間隔の最大値S2と狭いピーク間隔の最大値S1とから、下記の式1で求められる。
【0074】
S3=S2×2+S1×4・・・(式1)
【0075】
本実施形態では、磁気インク文字列106から取得した各CMC7文字112の1文字分の文字波形145について、その6個のピーク間隔142の合計値をS7とすると、合計値S7が、式1で求めた最大値S3以下である場合は切出し間違いはないと判断し、最大値S3を超える場合は切出し間違いの疑いがあると判断する。
【0076】
続いて、3番目のピーク間隔142の値による判定方法について説明する。ここでは、6個のピーク間隔142の合計値の最大値S3に加えて、合計値の最小値S6を求める。6個のピーク間隔142の合計値の最小値S6は、狭いピーク間隔の最小値S4と広いピーク間隔の最小値S5とから、下記の式2で求められる。
【0077】
S6=S5×2+S4×4・・・(式2)
【0078】
狭いピーク間隔の最大値S1が135波形データであることから、広いピーク間隔の最小値S5は136波形データとなる。また、狭いピーク間隔の最小値S4は、バー間隔122の狭い間隔の下限値である0.26mmからバー間隔122の縮み量として0.1mmを減じた値に対応しており、54波形データである。
【0079】
6個のピーク間隔142の合計値の最大値S3を100%とし、合計値の最小値S6を0%とすると、磁気インク文字列106から取得した文字波形145における6個のピーク間隔142の合計値S7の比率Rは、下記の式3で求められる。
【0080】
R=(S7−S6)/(S3−S6)・・・(式3)
【0081】
ここで、文字波形145の波形中に広いピーク間隔が3個あると仮定して、大きい方から3番目の広いピーク間隔について、その最大値D3maxを広いピーク間隔の上限値(バー間隔122の広い間隔の上限値であるS2に対応する値で、例えば217波形データ)とする。また、3番目の広いピーク間隔の最小値D3minを広いピーク間隔の下限値(バー間隔122の広い間隔の下限値であるS5に対応する値で、例えば136波形データ)とする。
【0082】
そして、大きい方から3番目の広いピーク間隔の最大値D3maxを100%とし、最小値D3minを0%とすると、磁気インク文字列106から取得した文字波形145における大きい方から3番目のピーク間隔142が広いピーク間隔であるか否かを判定する基準値D3refは、下記の式4で求められる。
【0083】
D3ref=D3min+(D3max−D3min)×R・・・(式4)
【0084】
本実施形態では、磁気インク文字列106から取得した文字波形145における大きい方から3番目のピーク間隔142の値D3が、式4で求めたD3ref未満である場合は切出し間違いはないと判断し、D3ref以上である場合は切出し間違いの疑いがあると判断する。
【0085】
第1の実施形態に係る磁気文字認識処理では、上述した留意点を踏まえて、値が大きい方から2番目までのピーク間隔142を広いピーク間隔と判別することができるかの判定を行った上で、判別することができる場合にピーク間隔パターンに基づく磁気文字認識処理を実行し、判別することが困難な場合には積分方式により磁気文字認識処理を実行することとする。
【0086】
<磁気文字認識処理フロー>
次に、図7を参照して、小切手読取装置200における磁気文字認識処理の動作の概略を説明する。まず、図7のステップSA1では、磁気波形切出し部234により、検出磁気波形131から、CMC7文字112の1文字分に対応する文字波形145の切り出しを行う。ここでは、まず、磁気波形記憶部242に記憶されている磁気波形データに基づいて、文字波形開始位置cspを検索する。
【0087】
文字波形開始位置cspは、図5に示すように、検出磁気波形131の読取方向における先頭のプラスピーク(先に文字波形145が切り出されている場合は、前回切り出された文字波形145から数えて1番目のピーク)141gから右方に、例えば11データ分戻った位置とする。この文字波形開始位置cspは、磁気インク文字列106上では、磁気バー121gの磁気バー後端部123gから後方約0.52mmの位置に相当する。
【0088】
続いて、文字波形開始位置cspから80データ分を1文字分として、検出磁気波形131から文字波形145を切り出す。これにより、磁気インク文字列106上では、各CMC7文字112の列方向後方の磁気バー121gの磁気バー後端部123gから後方約0.52mmの位置から、約3.76mm分が切り出されることとなる。以下、ステップSA1において切り出された文字波形145に対応する磁気インク文字(CMC7文字112)のことを「処理対象文字」という。
【0089】
次に、図7のステップSA2では、ピーク間隔測定部235により、処理対象文字の文字波形145において、文字波形開始位置cspから70データ分(約3.29mmに相当)について、プラスピークを検出してピーク間隔の測定を行う。ここでは、図5に示すように、処理対象文字の文字波形145において、7個のプラスピーク141a〜141gが検出され、6個のピーク間隔142a〜142fの値が測定される。
【0090】
次に、図7のステップSA3では、ステップSA2で測定して得られた6個のピーク間隔142a〜142fの値について、図6(e)に示すように上位3つの値が同じであるか否かを判定する。上位3つの値が同じでない場合(ステップSA3:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA4に移行する。一方、上位3つの値が同じである場合(ステップSA3:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA8に移行する。
【0091】
次に、図7のステップSA4では、ステップSA2で測定して得られた6個のピーク間隔142a〜142fの値について、図6(f)に示すように大きい方から2番目に同じ値が複数あるか否かを判定する。2番目に同じ値が複数ない場合(ステップSA4:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA5に移行する。一方、2番目に同じ値が複数ある場合(ステップSA4:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA8に移行する。
【0092】
次に、図7のステップSA5では、ステップSA2で測定して得られた6個のピーク間隔142a〜142fの合計値S7が、所定の値、すなわち上述の式1で求めた最大値S3以下であるか否かを判定する。合計値S7が最大値S3以下である場合(ステップSA5:YES)、認識制御部238は、切出し間違いはないと判断して処理手順をステップSA6に移行する。一方、合計値S7が最大値S3を超える場合(ステップSA5:NO)、認識制御部238は、切出し間違いの疑いがあると判断して処理手順をステップSA8に移行する。
【0093】
次に、図7のステップSA6では、ステップSA2で測定して得られた6個のピーク間隔142a〜142fの値について、大きい方から3番目の値D3が、所定の値、すなわち上述の式4で求めたD3ref未満であるか否かを判定する。値D3がD3ref未満である場合(ステップSA6:YES)、切出し間違いはないと判断して処理手順をステップSA7に移行する。一方、値D3がD3ref以上である場合(ステップSA6:NO)、認識制御部238は、切出し間違いの疑いがあると判断して処理手順をステップSA8に移行する。
【0094】
次に、図7のステップSA7では、磁気パターン認識部237により、処理対象文字の文字波形145に対して第1の文字認識を実行する。第1の文字認識では、ステップSA2で測定された6個のピーク間隔142a〜142fのうち、値が大きい方から2番目までを広いピーク間隔とし、3番目以降を狭いピーク間隔として、ピーク間隔パターンに基づいて処理対象文字の認識処理を行う。
【0095】
また、図7のステップSA8では、磁気パターン認識部237は、公知の積分方式による第2の文字認識を実行する。詳しい説明は省略するが、第2の文字認識では、処理対象文字の文字波形145から生成した積分波形における凹曲線の位置に基づいて、凹曲線により形成される谷形状の深浅から処理対象文字の認識処理を行う。
【0096】
なお、凹曲線とは、積分波形における一つの極小点と、その極小点を挟む2つの極大点との間に形成される曲線を指す。極小点は文字波形145におけるマイナス側のピーク(負の値)からプラス側のピーク(正の値)に向かう途中で値がゼロとなる点に対応し、極大点は文字波形145におけるプラス側のピーク(正の値)からマイナス側のピーク(負の値)に向かう途中で値がゼロとなる点に対応する。
【0097】
次に、ステップSA9では、ステップSA7の第1の文字認識、及びステップSA8の第2の文字認識における認識結果から処理対象文字の文字種類を確定できるか否かを判定する。第1の文字認識及び第2の文字認識において、文字波形145からCMC7文字112の文字種類が一義的に認識された場合に処理対象文字の文字種類を確定できると判定し、CMC7文字112の文字種類が一義的に認識されなかった場合に処理対象文字の文字種類を確定できないと判定する。
【0098】
ステップSA9において、処理対象文字の文字種類を確定できると判定した場合(ステップSA9:YES)、認識制御部238は、処理手順をステップSA10に移行する。一方、処理対象文字の文字種類が確定できないと判定した場合(ステップSA9:NO)、確定できなかった文字は認識不可を示す文字種類としてRAM240の認識結果記憶部243に記憶し、認識制御部238は、処理手順をステップSA11に移行し、次にステップSA12に移行する。
【0099】
次に、ステップSA10では、確定した処理対象文字の文字種類をRAM240の認識結果記憶部243に記憶して、処理手順をステップSA12に移行する。
【0100】
次に、ステップSA12では、磁気インク文字列106に含まれる全ての磁気インク文字について、検出磁気波形131から文字波形145の切り出しが行われ、処理対象文字として文字認識が実行されたか否かを判定する。全ての磁気インク文字について文字認識が実行されていない場合(ステップSA12:NO)、認識制御部238は、処理手順をステップSA1へ戻して、次の磁気インク文字についてステップSA1以降の処理を実行する。一方、全ての磁気インク文字について文字認識が実行された場合(ステップSA12:YES)、認識制御部238は、文字認識処理を終了する。
【0101】
以上の文字認識処理の結果、磁気インク文字列106に含まれる全ての磁気インク文字(CMC7文字112)の文字種類が確定された場合は、認識された磁気インク文字列106のCMC7文字112のデータが、インターフェイスを介して、ホストコンピューターに送信される。ホストコンピューターは、送信された磁気インク文字列106のデータに基づいて、銀行等の決済機関のサーバーへパーソナルチェック100の有効性を問い合わせる。このようにして、例えば店舗において、購入者から受け取ったパーソナルチェック100の有効性を確認することができる。
【0102】
ステップSA11では、処理対象文字の認識が不可能であったとして、パーソナルチェック100を小切手読取装置200から排出する等の処理を行ってもよい。そして、チェック用紙101の読取り動作を再度行ったり、オペレーターに磁気インク文字列106の認識ができなかった旨、報知したりする等のエラー処理を行ってもよい。
【0103】
以上説明したように、第1の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムによれば、以下の効果が得られる。
【0104】
CMC7文字112が数字及び記号であり、広いピーク間隔と狭いピーク間隔とが2:4であると特定できる場合、文字波形145における6個のピーク間隔142のうち、値が大きい方から上位2個を広いピーク間隔、他の4個を狭いピーク間隔と判別する。このため、文字波形145に伸び縮みが生じたことにより、従来の閾値S1に基づいてピーク間隔142が広いか狭いかを正しく判別することが困難な場合でも、広いピーク間隔と狭いピーク間隔とを判別できる。これにより、従来の磁気文字認識処理に比べて、認識率の低下を抑えるとともに、誤認識を抑制することができる。
【0105】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムを説明する。
【0106】
第2の実施形態に係る記録媒体処理装置、記録媒体処理装置の制御方法、及び、プログラムは、第1の実施形態に対して、磁気文字認識処理における広いピーク間隔と狭いピーク間隔とを判別する方法が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。ここでは、第1の実施形態と異なる点について、第1の実施形態で用いた図面を参照して説明する。
【0107】
第2の実施形態に係る磁気文字認識処理では、6個のピーク間隔142(142a〜142f)を測定した値の大小に基づいて降順に並べて、次の順位のピーク間隔142の値との差が最も大きくなるピーク間隔142までを広いピーク間隔とし、次の順位以降のピーク間隔142を狭いピーク間隔として判別する。
【0108】
第1の実施形態において説明したように、CMC7文字112のバー間隔122の広い間隔は0.50±0.04mmであり、狭い間隔は0.30±0.04mmである。そのため、磁気インク文字列106の印刷状態によってバー間隔122がばらついて広くなったり狭くなったりしても、バー間隔122の広い間隔と狭い間隔との差は、広い間隔同士の相互差及び狭い間隔同士の相互差よりも大きい。
【0109】
したがって、CMC7文字112の1文字分に対応する文字波形145において、6個のピーク間隔142を測定して得られた値を相互に比較すれば、広いピーク間隔の値と狭いピーク間隔の値との差は、広いピーク間隔同士の値の相互差及び狭いピーク間隔同士の値の相互差よりも大きくなるはずである。
【0110】
例えば、図6(a)〜(d)に示す場合では、6個のピーク間隔142a〜142fを測定して得られた値D1〜D6のうち、大きい方から2番目の値D2と3番目のD3との差が最も大きい。したがって、2番目の値D2と3番目のD3との間に広いピーク間隔と狭いピーク間隔との境界があると見なすことができ、境界の位置よりも大きい側の値D1,D2が広いピーク間隔であり、境界の位置よりも小さい側の値D3〜D6が狭いピーク間隔であると判別できる。
【0111】
このように、第2の実施形態に係る磁気文字認識処理においても、第1の実施形態と同様に、従来の磁気文字認識処理のような閾値S1に対する絶対比較では広いピーク間隔と狭いピーク間隔とを正しく判別することが困難な場合でも、6個のピーク間隔142を2個の広いピーク間隔と4個の狭いピーク間隔とに正しく判別することができる。これにより、従来の磁気文字認識処理に比べて、認識率の低下を抑えるとともに、誤認識を抑制することができる。
【0112】
また、図6(e)に示す場合では上位3つの値D1,D2,D3と4番目の値D4との差が最も大きく、図6(f)に示す場合では2番目の2つの値D2,D3と4番目の値D4との差が最も大きい。したがって、いずれの場合も上位3つの値D1,D2,D3と4番目の値D4との間に広いピーク間隔と狭いピーク間隔との境界があると見なすことができ、境界の位置よりも大きい側の値D1,D2,D3が広いピーク間隔であり、境界の位置よりも小さい側の値D4〜D6が狭いピーク間隔であると判別できる。
【0113】
このように、第2の実施形態に係る磁気文字認識処理では、6個のピーク間隔142a〜142fを測定して得られた値D1〜D6から、広いピーク間隔と狭いピーク間隔との境界を検出し、その境界の位置に基づいて広いピーク間隔と狭いピーク間隔とを判別することができる。そのため、境界の位置に基づく広いピーク間隔の数を特定することで、CMC7文字112が数字及び記号である場合だけでなく、アルファベットである場合にも適用することができる。
【0114】
すなわち、境界の位置に基づく広いピーク間隔の数が2個である場合に特定すれば、CMC7文字112が数字及び記号である場合に対応でき、図6(e)に示す上位3つの値D1,D2,D3が同じ値である場合や、図6(f)に示す2番目の2つの値D2,D3が同じ値である場合は対象外とすることができる。したがって、第1の実施形態の磁気文字認識処理におけるステップSA3及びステップSA4の処理を不要にできる。また、境界の位置に基づく広いピーク間隔の数が1個である場合及び3個である場合に特定すれば、CMC7文字112がアルファベットである場合に対応することができる。
【0115】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0116】
例えば、上述の第1の実施形態の磁気文字認識処理において、ステップSA3からステップSA6までの処理の順番は上述の構成に限定されるものではなく、順番を入れ替えた構成としてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態に示した小切手読取装置200における各部の機能は、コンピューターを機能させるプログラムとして提供することも可能である。さらに、そのプログラムをフレキシブルディスク、コンパクトディスク、フラッシュROM等の記憶媒体に格納し、パーソナルコンピューター等にインストールすることで、記録媒体処理装置を実現することも可能である。
【符号の説明】
【0118】
100…パーソナルチェック(記録媒体)、112…CMC7文字(磁気インク文字)、121…磁気バー(バー)、131…検出磁気波形(磁気波形)、141…ピーク、142…ピーク間隔(間隔)、145…文字波形(磁気波形)、200…小切手読取装置(記録媒体処理装置)、202…磁気波形取得部(読取部)、203…制御部、230…CPU(認識部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、
前記読取部と前記認識部とを制御する制御部と、を備え、
前記認識部は、前記制御部の制御に基づいて、
測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別することを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記認識部は、
前記複数のピーク同士の間隔の値の大小に基づいて並べて、大きい方から所定の順位までの前記間隔を前記広い間隔とし、前記所定の順位よりも小さい方の順位の前記間隔を前記狭い間隔とすることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記認識部は、
前記複数のピーク同士の間隔の値の大小に基づいて並べて、大きい方からみたときの次の順位の前記間隔の値との差が最も大きくなる前記間隔までを前記広い間隔とし、前記次の順位以降の前記間隔を前記狭い間隔とすることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の制御方法であって、
測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別することを特徴とする記録媒体処理装置の制御方法。
【請求項5】
記録媒体に記録された間隔が異なる複数のバーによって構成される磁気インク文字を磁気的に読み取る読取部と、
前記磁気インク文字を前記読取部により読み取って得られる磁気波形における複数のピーク同士の間隔の値を測定して、前記複数のピーク同士の間隔の広狭の組み合わせから前記磁気インク文字の文字認識を行う認識部と、を備えた記録媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記認識部を、測定した前記複数のピーク同士の間隔の値を相互に比較して、前記間隔が広い間隔又は狭い間隔のいずれであるかを判別する手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50765(P2013−50765A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186964(P2011−186964)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】