説明

記録媒体処理装置および記録媒体処理システム

【課題】記録媒体を受け入れてから排出するまでの間にその記録媒体表面(ひょうめん)の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置およびその記録媒体処理装置を備えた記録媒体処理システムに関し、読み取った記録媒体表面の画像をその記録媒体表面の色彩(背景色)や画像の記録状態等に応じて適切に二値化処理する。
【解決手段】画像読取部19が読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部171と、画像読取部19が読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部172とを備え、二値画像データ生成部172は、画像読取部19が読み取った画像を閾値設定部171が設定した閾値に基づいて二値化処理するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録媒体を受け入れてから排出するまでの間にその記録媒体表面(ひょうめん)の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置およびその記録媒体処理装置を備えた記録媒体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
購入額に応じて付与される金銭的価値のあるポイントや代金前払い方式における残金等の情報を記録させておく記録媒体として、財布に収容したりポケットに入れて気軽に持ち運ぶことができるカードタイプのものが広く用いられている。このカードタイプには、熱の作用により可視像が形成されたり消去されたりする熱可逆性の記録材料が設けられた印字領域を有するものがあり、その印字領域にはポイントや残金が印字される。カードタイプの記録媒体では特に、持ち運ぶ機会が多いことから、カード表面に汚れや傷がつきやすい。また、ポイントや残金といった経済的価値のある情報が印字されたカードでは、経済的価値を不正に高めることを目的として印字内容が改変される恐れがある。
【0003】
従来より、カード表面の画像を読み取る画像読取機能を有する記録媒体処理装置が知られている(例えば、特許文献1および2等参照)。画像読取機能を用いて得られた画像データは、カード表面に汚れや傷がついていないかを判定したり、印字領域に正しく印字されているかを判定したり、不正行為を曝くために用いたり等、利用価値が高い。
【特許文献1】特開2000−99661号公報
【特許文献2】特開平10−326328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、利用価値の高い画像データを数多く得るため、1枚のカードのおもて面と裏面それぞれの面の画像を読み取ったり、あるいは消去後の印字領域と印字後の印字領域の画像を読み取ったりすることが考えられる。
【0005】
ところで、熱可逆性の記録材料が設けられた印字領域では、印字するために加熱された印字領域の温度が十分に低下しないと印字された画像が濃くならない傾向にある。そのため、印字直後では印字された画像がまだ薄いことがある。また、1枚のカードであっても、おもて面と裏面とでは色彩の濃淡が全く異なる場合がある。このように、1枚のカードについて読み取られるそれぞれの画像の濃淡は、カード表面の色彩(背景色)、印字領域における温度や印字後の経過時間などにより様々である。
【0006】
ここで、画像読取機能を用いて得られた画像データに二値化処理を施す場合には、濃淡がある画像であってもその画像を構成する各画素は白色か黒色に振り分けられる。そのため、この二値化処理が適切に施されていないと、画像データを汚れや傷の判定に利用する際に、汚れや傷が見落とされてしまう恐れがある。また、印字領域に正しく印字されているにも関わらず誤りがあると判定されてしまう恐れもある。さらには、画像データを不正行為の発見に利用した際にも、誤った結論になってしまう恐れがある。これらの恐れは、カードタイプの記録媒体に限らず、様々なタイプの記録媒体でも言えることである。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、読み取った記録媒体表面の画像をその記録媒体表面の色彩(背景色)や画像の記録状態等に応じて適切に二値化処理することができる記録媒体処理装置および記録媒体処理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の記録媒体処理装置は、記録媒体を受け入れてから排出するまでの間にその記録媒体表面(ひょうめん)の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置において、
記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に、読取箇所あるいは読取タイミングを異ならせてその記録媒体表面の画像を複数回読み取る画像読取部と、
上記画像読取部が読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部と、
上記画像読取部が読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部とを備え、
上記二値画像データ生成部は、上記画像読取部が読み取った画像を上記閾値設定部が設定した閾値に基づいて二値化処理するものであることを特徴とする。
【0009】
ここにいう記録媒体表面(ひょうめん)とは、例えば、カードタイプの記録媒体であれば、おもて面および/または裏面のことを意味する。
【0010】
本発明の記録媒体処理装置によれば、上記画像読取部が読み取った画像に応じて適切に設定した閾値を用いて二値化処理を行うため、上記画像読取部が読み取る画像の状態や背景色の濃淡等に応じた閾値を用いることができ、読み取った記録媒体表面の画像を適切に二値化処理することができる。
【0011】
また、本発明の記録媒体処理装置において、熱の作用により可視像が形成されたり消去されたりする熱可逆性の記録材料が設けられた記録領域を有する記録媒体のその記録領域に熱を加えて可視像を形成する画像形成部を備え、
上記画像読取部は、上記記録媒体における、上記記録領域とは異なる異領域の画像を読み取るとともに、上記画像処理部によって加熱された状態にある記録領域の画像も読み取るものである
態様が好ましい。
【0012】
ここにいう異領域とは、上記記録領域が設けられた面と同一面における領域であってもよいし、その面とは異なる面の領域であってもよい。また、上記画像処理部によって加熱された状態にあるとは、熱を加えられた上記記録領域が、常温まで十分に下がらず、形成された可視像が所望の階調になっていない状態にあることを意味する。
【0013】
この態様によれば、可視像形成直後の加熱された状態にある記録領域の画像の上記閾値として、記録領域における温度や記録後の経過時間などに応じて適切に設定した閾値を用い、異領域の画像の閾値として、その異領域の背景色に応じて適切に設定した閾値を用いることができる。
【0014】
さらに、上記画像形成部が上記記録領域に可視像を形成する前にその記録領域に熱を加え、受け入れた記録媒体に既に形成されていた可視像を消去する画像消去部を備え、
上記画像読取部は、上記画像消去部によって可視像が消去された記録領域の画像を読み取るとともに、上記異領域の画像も読み取るものである
ことがより好ましい。
【0015】
こうすることで、可視像消去後の記録領域の画像の閾値として、その記録領域の背景の色に応じて適切に設定した閾値を用いることができる。
【0016】
上記目的を解決する本発明の記録媒体処理システムは、記録媒体を受け入れてから排出するまでの間にその記録媒体表面の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置を備えた記録媒体処理システムにおいて、
上記記録媒体処理装置が、記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に、読取箇所あるいは読取タイミングを異ならせてその記録媒体表面の画像を複数回読み取る画像読取部を有するものであり、
この記録媒体処理システムがさらに、
上記画像読取部が読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部と、
上記画像読取部が読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部とを備え、
上記二値画像データ生成部は、上記画像読取部が読み取った画像を上記閾値設定部が設定した閾値に基づいて二値化処理するものであることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明における技術的思想は、二値画像データ処理プログラムとしても利用することができる。この二値画像データ処理プログラムは、記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に、その記録媒体表面の画像を表す画像データを生成し、読取箇所あるいは読取タイミングを異ならせてその記録媒体表面の画像を複数回読み取る記録媒体処理装置を備えた記録媒体処理システムにおいて実行される二値画像データ処理プログラムであって、
上記記録媒体処理システムに、
読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部と、
読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部とを構築し、
上記二値画像データ生成部は、上記画像読取部が読み取った画像を上記閾値設定部が設定した閾値に基づいて二値化処理するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、読み取った記録媒体表面の画像をその記録媒体表面の色彩(背景色)や画像の記録状態等に応じて適切に二値化処理することができる記録媒体処理装置および記録媒体処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本実施形態の記録媒体処理装置は、熱可逆的な記録を行うリライタブルカードの処理装置である。このリライタブルカード(以下、単にカードと称する)は、熱の作用により可視像の記録と消去を繰返し行うことができる記録媒体である。
【0021】
図1は、本実施形態の記録媒体処理装置で取り扱うカードを示す図である。
【0022】
本実施形態の記録媒体処理装置では、AタイプとBタイプといった複数種類のカードを取り扱うことができる。図1に示すカード9はAタイプのカードである。図1の(a)にはカード9のおもて面91が示され、(b)にはその裏面92が示されている。
【0023】
図1(a)に示すおもて面91の中央部分には印字領域911が形成されている。この印字領域911には、加熱後の冷却速度を変えることにより発色したり消色したりするロイコ系リライタブル記録材料が設けられている。印字領域911の背景の色は白色であり、その印字領域911に黒色の印字が施される。なお、Bタイプのカードにおいても印字領域911の背景色は白色である。ここで、ロイコ系リライタブル記録材料の可逆特性について図1を離れて図2を用いて説明する。
【0024】
図2は、ロイコ系リライタブル記録材料の可逆特性を示すグラフである。
【0025】
図2に示すグラフの横軸は温度を示し、縦軸は発色濃度を示す。以下に説明するロイコ系リライタブル記録材料は、ロイコ染料と可逆性を発現する顕色剤を組み合わせた材料である。まず、消色状態(D)のロイコ染料と顕色剤を加熱すると、両者は溶融して発色状態(C)になる。これを急冷すると溶融状態に近い状態で固化し発色状態が維持される。一方、発色状態(C)から消色状態(D)にするには、加熱溶融した後、徐冷すればよい。徐冷することにより、溶融温度よりもやや低い温度領域(消色温度領域)でロイコ染料と顕色剤が相分離して消色状態(D)になる。また、消色温度領域で一定時間加熱保持後(図2中の1点鎖線参照)、冷却することでも、発色状態(C)から消色状態(D)になる。
【0026】
再び、図1を用いて説明する。図1(a)に示す印字領域911には、例えば、購入額に応じて付与される金銭的価値のあるポイント数が印字される。なお、印字領域911に、バーコード等の印画が施されることもある。この印字領域は、本発明にいう記録領域の一例に相当する。印字領域911の外側には、背景色が印字領域911の背景色よりも濃い色(例えば赤色)の外枠領域912が設けられている。
【0027】
図1(b)に示す裏面92の背景色は黒色に近い濃い色(例えば濃紺色)である。なお、Bタイプのカード裏面の背景色は、Aタイプのものよりも薄い色(例えば青色)である。また、図1(b)に示す裏面92の上方部分には、このカード9の長さ方向に延びた磁気ストライプ921が設けられている。磁気ストライプ921の色は黒色である。磁気ストライプ921には、このカード9を取り扱うにあたって必要な一切の情報が磁気データとして記録されている。すなわち、磁気ストライプ921には、おもて面91の印字領域911に印字されている情報の他、このカード9の持ち主の識別情報(ID)や、カードの種類がAタイプであること等の情報も記録されている。磁気ストライプ921の下方には、裏面92の背景色よりもわずかに薄い色(例えば紺色)の図柄922が印刷されている。
【0028】
なお、印字領域911に設ける記録材料として、白濁式の熱可逆性材料を用いてもよい。この白濁式の熱可逆性材料を用いた場合には、印字領域の背景の色は銀色になり、その印字領域に白色の(文字等)が印字される。また、熱可逆性材料に限らず、磁気の作用を用いた可逆性の材料を用いてもよい。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態である記録媒体処理装置を模式的に示す図である。
【0030】
図3に示す本実施形態の記録媒体処理装置1は、図1に示すカード9を搬送しながらリライタブル動作を行うものである。図3では、記録媒体処理装置1のカード挿入口10に左側からカード9が挿入され、カード9はその長さ方向(図3の左右方向)に沿って搬送される。カード9は、カード挿入口10に、おもて面91を上にして挿入され、おもて面91を上にしたまま装置内を搬送される。図3には、カード挿入口10から挿入されたカード9が示されている。記録媒体処理装置1には、カード9を受け入れてから排出するまでの間、エラーがなければカード9が3往復する搬送路12が設けられている。また、記録媒体処理装置1には、カード挿入口10が設けられた側(以降、こちら側を前側と称することがある)とは反対側(以降、この反対側を後側と称することがある)にカード通過口11が設けられている。搬送路12は、カード挿入口10とカード通過口11を結ぶものであり、この搬送路12では、前側から後側に向かう経路が往路になり、反対に後側から前側に向かう経路が復路になる。
【0031】
また、この記録媒体処理装置1には、この搬送路12に沿ってカード9を搬送するための搬送ローラ13,14が設けられている。さらに図3では図示省略しているが、カード挿入口10側に第1搬送ローラが設けられており、搬送路12の中間部分に設けられた第2搬送ローラ13と、後側に設けられた第3搬送ローラ14がそれぞれカード9の搬送方向に沿ってカード長未満の間隔で配置されている。これらいずれの搬送ローラ13,14も上下1対のローラ(上側ローラと下側ローラ)で構成されている。上側ローラ131,141と下側ローラ132,142は互いに接しており、上側ローラ131,141と下側ローラ132,142の間がニップ領域になる。下側ローラ132,142は、駆動モータ15により正逆回転する。すなわち、図3に示す下側ローラ132,142は、カード9を、往路に沿って搬送するときには時計回りの方向(第3搬送ローラ14の下側ローラ142に示した矢印R方向参照)に回転し、復路に沿って搬送するときには反時計回りの方向(同下側ローラ142に示した矢印F方向)に回転する。一方、上側ローラ131,141は下側ローラ132,142の回転に伴って従動回転する。
【0032】
また、図3に示す記録媒体処理装置1は、制御部16と二値化処理部17とを有する。制御部16は、この記録媒体処理装置1全体の制御を司るものである。また、図3には、ホストコンピュータ6が示されている。制御部16は、このホストコンピュータ6に接続されており、ホストコンピュータ6と必要な情報のやり取りを行う。二値化処理部17は、閾値設定部171と二値画像データ生成部172を有するものであるが、詳細については後述する。
【0033】
さらに、図3に示す記録媒体処理装置1は磁気ヘッド18も有する。ここで、図3では、カード9の長さ方向(図3の左右方向)に直交するカード9の幅方向は、紙面に対して垂直な方向になる。磁気ヘッド18は、カード搬送方向に関しては、第2搬送ローラ13の下側ローラ132と同じ位置に配置されているが、その下側ローラ132とはカード幅方向に間隔をあけて配置されている。磁気ヘッド18は、裏面92を下にして搬送されてきたカード9の磁気ストライプ921(図1(b)参照)が、ちょうど真上を通過する位置に配置されている。磁気ヘッド18の上方には、その磁気ヘッド18へ向けてバネ付勢された従動ローラ(不図示)が配置されており、搬送されてきたカード9の、磁気ストライプ921の部分は、磁気ヘッド18と不図示の従動ローラによって挟み込まれる。磁気ヘッド18は、制御部16によって通電されることにより駆動し、カード9の磁気ストライプ921に記録されている磁気データを読み出したり、あるいはその磁気ストライプ921に磁気データを書き込む。
【0034】
またさらに、図3に示す記録媒体処理装置1は、画像読取部19を備えているとともに、印字ヘッド20と消去ヘッド21も備えている。画像読取部19、印字ヘッド20、および消去ヘッド21は、第2搬送ローラ13と第3搬送ローラ14の間に、カード搬送方向に沿って前側からこの記載順に配置されている。したがって、図3の右側から左側に向かう復路に沿ってカード9が搬送されている状態では、カード9は、消去ヘッド21あるいは印字ヘッド20を通過してから画像読取部19を通過することになる。消去ヘッド21と画像読取部19の距離は、カード長以下であり、消去ヘッド21と画像読取部19の間には、カード9をニップして搬送する搬送ローラは設けられていない。
【0035】
画像読取部19は、搬送路12の上方におもて面読取部191を有するとともにその下方に裏面読取部192を有する。おもて面読取部191にも、裏面読取部192にも、カード幅方向に並ぶ複数の発光素子と、同じく同方向に並ぶ複数の受光素子とが設けられている。すなわち、この画像読取部19では、搬送路12を搬送されているカード9のカード幅方向が主走査方向になる。おもて面読取部191および裏面読取部192は、制御部16によって通電されることで別々に駆動する。したがって、後述するように、おもて面読取部191と裏面読取部192との内、おもて面読取部191のみが駆動することもある。おもて面読取部191は、駆動する必要がないときにはカード搬送の妨げとならぬよう、図3に示すように上方へ退避している。おもて面読取部191では、カード9のおもて面91全域の媒体画像を読み取る。一方、裏面読取部192では、その裏面92全域の媒体画像を読み取る。画像読取部19で読み取られた媒体画像は電気信号になって二値化処理部17の二値画像データ生成部172に送信される。なお、おもて面読取部191と裏面読取部192は、搬送路を間において互いに対向しており、いずれか一方の発光素子と、他方の受光素子を用いて、搬送されてくるカード9を検知するセンサとしても利用することができる。
【0036】
図3に示す印字ヘッド20と消去ヘッド21はいずれも、搬送されているカード9のおもて面91に対向するように搬送路12の上方に配置されたものである。また、搬送路12を間において、印字ヘッド20の下方には印字プラテンローラ201が配置されているとともに、消去ヘッド21の下方には消去プラテンローラ211が配置されている。印字プラテンローラ201も消去プラテンローラ211も、駆動モータ15により正逆回転する。すなわち、これらのプラテンローラ201,211は、各搬送ローラ13,14の下側ローラ132,142と同じ方向に回転駆動する。なお、駆動モータ15の正逆回転は、制御部16によって制御されており、カード9を、搬送路12の往路に沿って搬送する場合には、図3では、制御部16が駆動モータ15を時計回りの方向に回転させ、復路に沿って搬送する場合には反時計回りの方向に回転させる。
【0037】
印字ヘッド20は、カード幅方向に延在したサーマルヘッドであり、カード幅方向に並んだ複数の抵抗素子を有する。印字ヘッド20も、制御部16によって通電されることで駆動する。すなわち、制御部16が、複数の抵抗素子に対して選択的に通電を行うことで、通電された抵抗素子が発熱する。発熱した抵抗素子に接した、図1(a)に示すカード9のおもて面91に設けられた印字領域911は、図2に示す溶融温度を超える温度まで加熱される。また、印字ヘッド20のカード挿入口10側には、印字ヘッド20と一体的に金属ローラ202が設けられている。この金属ローラ202は、印字ヘッド20によって加熱された印字領域911に回転自在に接し、印字領域911を急冷する。印字領域911が急冷されることで、印字領域911に黒色の印字が施される。
【0038】
消去ヘッド21も、印字ヘッド20と同じく、カード幅方向に延在したものであるが、そのカード幅方向の長さは、カード9の幅以下の長さである。消去ヘッド21は、幅数ミリの面状の抵抗体をセラミック基材に貼り合わせたものである。この消去ヘッド21も、制御部16によって通電されることで駆動する。すなわち、制御部16が通電を行うことで、面状の抵抗体の全面が発熱する。発熱した抵抗体に接した印字領域911は、図2に示す溶融温度を超える温度まで加熱され、その後徐冷されることで、印字領域911に印字されていた画像(文字等)が消去される。消去ヘッド21が駆動しているときには、その消去ヘッド21は、制御部16により、抵抗体の温度が常に溶融温度よりも高い所定温度を維持するように制御されている。
【0039】
また、図3に示す記録媒体処理装置1には、ヘッド退避駆動モータ22が設けられている。印字ヘッド20も消去ヘッド21も、おもて面読取部191と同じように、駆動する必要がないときにはカード搬送の妨げとならぬよう、図3に示すように上方へ退避している。ヘッド退避駆動モータ22は、印字ヘッド20を上方へ退避させる駆動源になるとともに、消去ヘッド21を上方へ退避させる駆動源にもなる。なお、このヘッド退避駆動モータ22の駆動制御も制御部16によって行われる。
【0040】
以上、説明した記録媒体処理装置1の後端には、カードスタッカ装置3と回収ボックス5がそれぞれ装着される。カードスタッカ装置3は、Aタイプの新しいカード(不図示)を積み重ねた状態で収容しているものであり、記録媒体処理装置1の搬送路12を基準にして上方に装着される。一方、回収ボックス5には、後述するようにして制御部16が回収すると判定したカードが回収される。回収ボックス5は、記録媒体処理装置1の搬送路12を基準にして下方に装着される。カード通過口11は、カードスタッカ装置3にも回収ボックス5にもつながっている。搬送路12とカードスタッカ装置3を結ぶ経路と、搬送路12と回収ボックス5を結ぶ経路の切替えは、不図示の経路切替部材によって行われる。
【0041】
続いて、図3に示す記録媒体処理装置1における一連の処理について説明する。上述のごとく、この記録媒体処理装置1では、カード9を受け入れてから排出するまでの間に、エラーがなければカード9が搬送路12を3往復する。
【0042】
図4は、図3に示す記録媒体処理装置1における一連の処理を示すフローチャートである。
【0043】
図3に示すカード挿入口10にカード9が挿入されると、不図示の第1搬送ローラの下側ローラが時計回りの方向に回転し始め、装置内にそのカード9を受け入れる。まず、カード9は搬送路12の往路に沿って搬送される。ここでの搬送は、1往復目の往路に沿った搬送に相当する。カード9を受け入れたときの記録媒体処理装置1の状態は、図3に示す記録媒体処理装置1の状態と同じである。すなわち、おもて面読取部191、裏面読取部192、印字ヘッド20、および消去ヘッド21はいずれも駆動しておらず、おもて面読取部191、印字ヘッド20、および消去ヘッド21は上方へ退避した状態にある。また、何往復目かに限らずカード9を往路に沿って搬送する際には、制御部16が駆動モータ15を図3では時計回りの方向に回転させる。こうすることで、第1〜第3搬送ローラ13,14それぞれの下側ローラ132,142や、印字プラテンローラ201や消去プラテンローラ211も、時計回りの方向に回転する。1往復目の往路に沿って搬送され始めたカード9は、やがて磁気ヘッド18を通過する。このとき、磁気ヘッド18は駆動しており、通過するカード9の磁気ストライプ921(図1(b)参照)に記録されている磁気データを読み取る(ステップS1)。磁気ヘッド18を通過したカード9はカード通過口11へ向けてさらに搬送される。
【0044】
図5は、往路を搬送されたカードが記録媒体処理装置の後側で待機している様子を示す図である。
【0045】
この図5では、不図示の経路切替部材によって搬送路12とカードスタッカ装置3が結ばれている。ここで、往路を搬送されているカード9においては、図の右側が先端になり左側が後端になる(以下の説明でも同じ)。往路を搬送されてきたカード9は、カード9の後端部分が第3搬送ローラ14を抜けきる前に搬送が中止され、図5に示すように、カード9の先端から半分以上がカードスタッカ装置3に入り込んだ状態で停止する。カード9はこの状態で待機する。以下、この図5に示すカード9の状態を後側待機状態と称することにする。この後側待機状態では、カード9の後端部分が第3搬送ローラ14にニップされている。
【0046】
上述の如く、磁気ストライプ921には、このカード9を取り扱うにあたって必要な一切の情報が記録されている。ここで、磁気ストライプ921に記録されていた情報は、ホストコンピュータ6にも記録されており、ホストコンピュータ6では、カード9の持ち主の識別情報(ID)ごとにデータ管理がなされている。ステップS1で磁気データを読み取ると、制御部16は、読み取った磁気データに基づく情報をホストコンピュータ6に送信する。ホストコンピュータ6では、送信されてきた情報の中から、このカード9の持ち主の識別情報(ID)を取得し、その識別情報をもとに、ホストコンピュータ6に記録されている情報と制御部16から送信されてきた情報とが一致するか否かをチェックし、チェック結果を制御部16に返信する。
【0047】
制御部16は、ホストコンピュータ6からのチェック結果を受けて、今回受け入れたカード9の磁気ストライプ921に記録されている磁気データが正常か否かを判定する(ステップS2)。このステップS2における判定で磁気データが異常であれば、後側待機状態にあったカード9が、復路に沿って搬送路12の途中まで搬送される。ここで、復路を搬送されているカード9においては、図の左側が先端になり右側が後端になる(以下の説明でも同じ)。カード9は、後端部分が不図示の経路切替部材を通過するまで復路に沿って搬送される。本実施形態の記録媒体処理装置1には、搬送されているカード9の位置を検出する不図示のセンサが設けられており、制御部16は、カード9の後端部分が経路切替部材を通過したことを検知することができる。制御部16がこのことを検知すると、制御部16は、カード9の搬送を停止し、経路切替部材を操作して、搬送路12と回収ボックス5を結ぶ。搬送路12と回収ボックス5が結ばれると、カード9は、今度は逆方向になる往路に沿って搬送される。やがて、カード9は、カード通過口11から回収ボックス5に回収される。なお、カード9が回収ボックス5に回収されると、不図示の回収ランプが点灯し、カード9の持ち主にカード9が回収されたことが知らされる(以下、同じ)。
【0048】
反対に、ステップS2における判定で磁気データが正常であれば、図5に示す後側待機状態にあったカード9が、復路に沿ってカード挿入口10手前まで搬送される。
【0049】
図6は、カードが1往復目の復路を搬送されている様子を示す図である。
【0050】
何往復目かに限らずカード9を復路に沿って搬送する際には、制御部16が駆動モータ15を図6では反時計回りの方向に回転させる。こうすることで、第1〜第3搬送ローラの下側ローラ132,142や印字プラテンローラ201や消去プラテンローラ211が反時計回りの方向に回転する。また、カード9を1往復目の復路に沿って搬送するときの記録媒体処理装置1の状態は、消去ヘッド21及びおもて面読取部191の双方が搬送路12に臨む位置まで下げられた状態にあり、消去ヘッド21、おもて面読取部191、および裏面読取部192は駆動している。なお、印字ヘッド20は未だ駆動しておらず、上方へ退避したままである。
【0051】
1往復目の復路に沿って搬送され始めたカード9は、消去ヘッド21を通過し、カード9の後端が消去ヘッド21を抜けきる前にその先端が画像読取部19に達する。こうして本実施形態の記録媒体処理装置1では、カード9の印字領域911(図1(a)参照)に印字されていた画像(文字等)を消去しながらカード9のおもて面91と裏面92との両面それぞれの媒体画像を読み取る(図4に示すステップS3)。すなわち、画像(文字等)を消去しながら同時ではあるが2回の画像読取りが行われる。なお、消去ヘッド21と画像読取部19の距離がカード長よりも長く、カード後端が消去ヘッド21を抜けきった後にカード先端が画像読取部19に達する態様であってもよい。このステップS3において、おもて面読取部191及び裏面読取部192によって読み取られる媒体画像は、消去ヘッド21で印字が消去された後の印字領域911を含むカード9のおもて面91全体の媒体画像と、裏面92全体の媒体画像との2つの媒体画像である。ステップS3で読み取られた媒体画像は、電気信号になって二値化処理部17の二値画像データ生成部172に送信される。すなわち、二値画像データ生成部172には、消去後のカードおもて面91全体の媒体画像を表す電気信号と、裏面92全体の媒体画像を表す電気信号との2種類の電気信号が両者を区別できるようにして送信される。また、二値化処理部17の閾値設定部171には、二値化処理の際に各画素を白色か黒色かに振り分けるための閾値が複数用意されている。
【0052】
図7は、図6に示す二値化処理部の閾値設定部に用意された複数の閾値を説明するための図である。
【0053】
図6に示す二値化処理部17の閾値設定部171には、全部で4つの閾値(閾値1〜4)が用意されている。これら4つの閾値の値は、画像読取部19が読み取る媒体画像の種類に応じた値であり、以下の説明では、これら4つの閾値の値はそれぞれ異なるが、4つの閾値のうちいくつかの閾値の値が同じになることもあり得る。
【0054】
ここでは図7を用いて、白色を255、黒色を0とした256階調において、背景を白色に振り分け、傷や汚れや印字された画像(文字等)を黒色へ振り分ける場合を例にあげて説明する。本来、二値化処理の際に各画素を白色か黒色かに振り分けるための閾値は、ちょうど中間である127に設定される。しかしながら、コンピュータによる画像認識では、背景色が濃くなればなるほど、背景が黒色に振り分けられやすくなる。背景が黒色に振り分けられると、背景と背景部分に生じた汚れや傷との区別がつかず、背景部分に生じた汚れや傷の判定が正確にできなくなってしまう。本実施形態では、閾値1と閾値2が127よりも低い閾値である。これらの閾値1,2は、カード9の裏面92の背景色に応じた閾値である。また、わずかな汚れや傷でも見落とさないようにするには、閾値を127よりも上げ、汚れや傷が黒色に振り分けられやすくする必要がある。本実施形態では、閾値3が127よりも高い閾値である。この閾値3は、カード9のおもて面91、正確には後述するように外枠領域912にはマスク処理を施すため印字領域911に対する汚れや傷の認識精度を高めた閾値である。しかしながら、閾値を上げすぎると、背景を黒色に振り分けてしまい、汚れや傷の認識精度を高めることにはならないため、背景を白色に振り分けうる範囲で最大限高めた値に設定している。さらに、印字ヘッド20によって加熱されたカード9の印字領域911は、印字ヘッド20に設けられた金属ローラ202(図3参照)によって急冷されるとはいうものの、印字ヘッド20を抜けた直後の印字領域911は、常温に比べればまだまだ高い温度にあり、未だ加熱された状態にある。そのため、十分な発色濃度が得られず、印字された画像(文字等)はまだ薄い。このような薄い画像(文字等)でも正確に認識させるためには、閾値を127よりも上げる必要がある。しかしながら、閾値3程度にまで上げてしまうと、今度は、汚れや傷までも画像(文字等)として認識してしまう恐れがあるため、閾値3程度にまで上げることはできない。本実施形態では、閾値4が印字直後のおもて面91に用いる閾値であり、この閾値4は127よりは高くかつ閾値3よりは低い。この閾値4は、印字された画像(文字等)の階調、すなわち記録材料の発色特性に応じた閾値である。
【0055】
なお、ここでは背景を白色に振り分け、傷や汚れや印字された画像(文字等)を黒色へ振り分ける場合について説明したが、この場合とは逆に背景は黒色に振り分け、傷や汚れや印字された画像(文字等)は白色へ振り分ける場合には、ここでの説明とは逆になる。すなわち、カード9の裏面92の背景色に応じた閾値1および閾値2の値は127を超えた値になり、カード9の印字領域911に対する汚れや傷の認識精度を高めた閾値3や、印字された画像(文字等)の階調に応じた閾値4の値は127を下回る値になる。
【0056】
図6に示す閾値設定部171には、送信されてくる媒体画像の電気信号が、消去後のカードおもて面91全体の媒体画像を表す電気信号と、裏面92全体の媒体画像を表す電気信号との2種類であることが制御部16から通知される。また、制御部16は、図4に示すステップS1で読み取った磁気データから今回受け入れたカードの種類を認識し、閾値設定部171にカードの種類(ここではAタイプであること)も通知する。閾値設定部171は、制御部16から通知された情報をもとに、図4に示すステップS4の二値化処理で使用する閾値を二値画像データ生成部172に設定する。すなわち、閾値設定部171は、二値画像データ生成部172に、画像読取部19が読み取った媒体画像の種類に対応した閾値を設定する。閾値設定部171は、消去後のカードおもて面91全体の媒体画像の閾値として127よりも高い閾値3を設定する。また、閾値設定部171は、通知されたカードの種類がAタイプであることから、裏面92全体の媒体画像の閾値として閾値1を設定する。なお、閾値2は、裏面の背景色がAタイプよりも薄いBタイプのカードにおける裏面92全体の媒体画像の閾値である。
【0057】
1往復目の復路に沿って搬送されているカード9は、画像読取部19を通過し、さらにカード挿入口10へ向けて搬送される。
【0058】
図8は、復路を搬送されたカードが記録媒体処理装置1の前側で待機している様子を示す図である。
【0059】
復路を搬送されてきたカード9は、カード9の先端がカード挿入口10に達する前に搬送が中止され、先端部分が不図示の第1搬送ローラにニップされた状態で停止する。カード9はこの状態で待機する。以下、図8に示すカード9の状態を前側待機状態と称することにする。カード9の復路の搬送が終了すると、制御部16はヘッド退避モータ22を駆動させ、消去ヘッド21及びおもて面読取部191の双方が上方へ向かって退避する。
【0060】
二値化処理部17の二値画像データ生成部172では、送られてきた2種類の電気信号それぞれにつき、閾値設定部171が設定したそれぞれの閾値を用いて二値化処理を施し(図4に示すステップS4)、二値画像データを生成する。二値画像データ生成部172は、消去後のカードおもて面91全体の媒体画像については、図7に示す閾値3を用いて二値化処理する。この際、二値画像データ生成部172は、背景色が印字領域911の背景色よりも濃い外枠領域912(図1(a)参照)についてはマスク処理を行う。閾値3は、黒色に振り分けられやすくする閾値である。このため、背景色が印字領域911の背景色よりも濃い外枠領域912を二値化処理しても、外枠領域912の背景が黒色に振り分けられ、背景部分に生じた汚れや傷の判定ができなくなってしまう。そこで、二値画像データ生成部172は、処理負担を軽減するため、外枠領域912については、マスク処理をして二値化処理を行わずに無視する。一方、消去後の印字領域911については、閾値3を用いたことで、わずかな汚れや傷でも黒色に振り分けられやすくなる。また、二値画像データ生成部172は、裏面92全体の媒体画像については、図7に示す閾値1を用いて二値化処理する。この際、二値画像データ生成部172は、図1(b)に示す黒色の磁気ストライプ921の部分と、背景色よりもわずかに薄い色の図柄922の部分についても、マスク処理を行い、二値化処理を行わずに無視する。一方、裏面92の背景部分については、閾値1を用いたことで背景色は白色に振り分けられ、背景と背景部分に生じた汚れや傷との区別が明確になり、汚れや傷の認識が可能になる。ステップS4の二値化処理が終了すると、消去後の印字領域911の媒体画像を表す二値画像データと、裏面92の背景部分を表す二値画像データが得られる。これらの二値画像データは、ホストコンピュータ6に送信される。ホストコンピュータ6は、印字領域911の背景色が白色であることを記憶している。また、新品のカード9における裏面92の背景部分を表す二値画像データも記憶している。ホストコンピュータ6は、これらの記憶をもとに、黒色に振り分けられた画素の数によって、印字領域911や裏面92の背景部分に汚れや傷がないかを確認し、確認結果を制御部16に返信する。
【0061】
制御部16は、ホストコンピュータ6からの確認結果を受けて、今回受け入れたカード9の印字領域911および裏面92の背景部分いずれにも汚れや傷がないかを判定する(図4に示すステップS5)。このステップS5における判定で汚れや傷があれば、図8に示す制御部16が不図示の経路切替部材を操作して、搬送路12と回収ボックス5を結び、図8に示す前側待機状態にあったカード9が回収ボックス5へ向けて復路に沿って搬送される。このカード9は、カード通過口11から回収ボックス5に回収される。
【0062】
反対に、ステップS5における判定で汚れや傷がなければ、制御部16は排出指令が発せられるのを待つ。すなわち、制御部16は排出指令が発せられたか否かを、排出指令が発せられるまで繰り返し判定する(ステップS6)。この間、カード9は前側待機状態にある。本実施形態の記録媒体処理装置1では、カードの持ち主が不図示のカード返却ボタンを押さないと、カードが持ち主に返却されない。排出指令とは、カードの持ち主がカード返却ボタンを押したときに発せられる指令である。なお、カード返却ボタンを設けずに、カード9を受け入れるとカード排出(返却)まで最短の時間で行う態様であってもよく、この態様の場合には、ステップS6が省略される。
【0063】
排出指令が発せられると、制御部16が駆動モータ15を図8では時計回りの方向に回転させ、前側待機状態にあったカード9を往路に沿って搬送する(図4に示すステップS7)。ここでの搬送は2往復目の往路の搬送に相当し、磁気ヘッド18、画像読取部19、印字ヘッド20、および消去ヘッド21はいずれも駆動せず上方へ退避したままである。カード9は、図5に示す後側待機状態の位置まで搬送され、すぐさま、2往復目の復路の搬送が始まる。カード9を2往復目の復路に沿って搬送するときの記録媒体処理装置1の状態は、消去ヘッド21、印字ヘッド20、及びおもて面読取部191がいずれも上方へ退避したままであり、磁気ヘッド18のみが駆動する。2往復目の復路に沿って搬送され始めたカード9は、やがて磁気ヘッド18を通過する。制御部16には、カード9の磁気ストライプ921(b))参照)に今回新たに書込む情報が、ホストコンピュータ6から通知されている。磁気ヘッド18は、通過するカード9の磁気ストライプ921に、その通知された情報に基づく磁気データを書き込む(図4に示すステップS8)。制御部16には、カード9を新たに受け入れると初期値である0に戻る書込カウンタが設けられており、ステップS8で磁気データを書き込むと、制御部16はこの書込カウンタをインクリメントする。磁気ヘッド18を通過したカード9はカード挿入口10へ向けてさらに搬送される。カード9が前側待機状態の位置まで搬送されると、すぐさま、3往復目の往路の搬送が始まる。この3往復目の往路の搬送では、磁気ヘッド18が、ステップS8で書き込んだ磁気データを今度は読み取り(図4に示すステップS9)、その後カード9は、図5に示す後側待機状態になる。制御部16は、ステップS9で読み取った磁気データに基づく情報をホストコンピュータ6に送信する。ホストコンピュータ6では、今回書き込まれた磁気データが正しく書き込まれているか否かをチェックし、チェック結果を制御部16に返信する。すなわち、ベリファイが行われる。
【0064】
制御部16は、ホストコンピュータ6からのチェック結果を受けて、今回書き込んだ磁気データに誤りがないか否かを判定し(図4に示すステップS10)、誤りがあれば、制御部16は、書込カウンタの値が3であるか否かを判定する(図4に示すステップS11)。この書込カウンタの値が3であれば、図5に示す後側待機状態にあるカード9は、ステップS2における判定で磁気データに異常があることが判定されたときと同じようにして、カード通過口11から回収ボックス5に回収される。一方、書込カウンタの値が3でなければ、ステップS8に戻って磁気データの再書き込みを行う。磁気データの再書き込みから誤り判定が行われるまでの間(ステップS8〜ステップS10)に、図5に示す後側待機状態にあるカード9は、この状態から搬送路を一往復する。
【0065】
ステップS10における判定で今回書き込んだ磁気データに誤りがなければ、後側待機状態にあったカード9が、復路に沿って搬送され始める。
【0066】
図9は、カードが3往復目の復路を搬送されている様子を示す図である。
【0067】
カード9を3往復目の復路に沿って搬送するときの記録媒体処理装置1の状態は、印字ヘッド20及びおもて面読取部191の双方が搬送路12に臨む位置まで下げられた状態にある。印字ヘッド20は駆動しており、おもて面読取部191も駆動しているが、裏面読取部192は駆動していない。
【0068】
3往復目の復路に沿って搬送され始めたカード9は、印字ヘッド20を通過し、カード9の後端が印字ヘッド20を抜けきる前にその先端がおもて面読取部191に達する。こうして本実施形態の記録媒体処理装置1では、カード9の印字領域911(図1(a)参照)に印字を行いながらカード9の両面のうちのおもて面91のみの媒体画像を読み取る(図4に示すステップS12)。このステップS12で読み取られる媒体画像は、印字ヘッド20によって加熱された状態にある印字領域911を含むおもて面91全体の媒体画像である。ステップS12で読み取られた媒体画像は、電気信号になって二値化処理部17の二値画像データ生成部172に送信される。
【0069】
また、二値化処理部17の閾値設定部171には、送信されてくる媒体画像の電気信号が、印字ヘッド20によって加熱された直後のおもて面91全体の媒体画像であることが制御部16から通知される。また、閾値設定部171には、先のステップS4の二値化処理を行う際、今回受け入れたカードの種類が通知されている。閾値設定部171は、制御部16から通知された情報をもとに、二値画像データ生成部172に、ここでは図7に示す閾値4を設定する。すなわちここでは、閾値設定部171は、二値画像データ生成部172に、印字直後のおもて面91に対応した閾値4を設定する。閾値4は、127よりは高くかつステップS4の二値化処理の際に用いた閾値3よりは低い閾値である。
【0070】
二値画像データ生成部172では、送られてきた電気信号を閾値4を用いて二値化処理し(図4に示すステップS13)、二値画像データを生成する。ここで生成された二値画像データもホストコンピュータ6に送信されるが、ここではホストコンピュータ6は汚れや傷のチェックを行わない。制御部16は、送信した二値画像データをホストコンピュータ6に保存させる指示を送信し(図4に示すステップS14)、その二値画像データは、ホストコンピュータ6に保存される。上述の如く、ホストコンピュータ6では、カード9の持ち主の識別情報(ID)ごとにデータ管理をしており、今回保存された二値画像データもホストコンピュータ6によってデータ管理される。こうすることで、印字領域911に印字された内容が不正に改変された恐れがある場合等にも、保存されている二値画像データを用いて、前回カードを受け付けたときのカードおもて面91の媒体画像を確認することができ、不正を暴くことができる。
【0071】
先のステップS4における、閾値4よりも黒色に振り分けられやすい閾値3を用いた二値化処理では、外枠領域912(図1(a)参照)についてはマスク処理をして、外枠領域912の二値化処理は行わなかったが、今回のステップS13では、マスク処理は行わず、おもて面91全体の二値化処理を行なう。ここで用いる閾値4は、閾値3よりも値を下げたものであるため、背景色が印字領域911の背景色よりも濃い外枠領域912であっても、外枠領域912の背景は白色に振り分けられ、その背景部分に生じた汚れや傷が黒色として記録されやすい。また、閾値4の値は、127よりも高い値であるため、127の値を閾値に用いた場合に比べて、印字された画像(文字等)がまだ薄い状態の画像(文字等)であっても、正確に黒色に振り分けられやすい。なお、ステップS13の二値化処理では、ステップS4の二値化処理に比べて、わずかな汚れや傷は見落とされがちになるが、印字領域911についての汚れや傷の判定はすでにステップS5で終えているため問題はない。
【0072】
3往復目の復路に沿って搬送されているカード9は、カード挿入口10から排出され、そのカード9の持ち主に返却される。
【0073】
以上が、図3に示す記録媒体処理装置1において、1枚のカード9をカード挿入口10から受け入れ、そのカード挿入口10から排出するまでの一連の処理である。この一連の処理では、図4に示すステップS3で2回、ステップS12で1回、合計3回、カード表面(ひょうめん)の媒体画像を読み取り、それぞれの媒体画像を二値化処理する際には、各媒体画像に適した別々の閾値を用いている。その結果、各媒体画像を適切に二値化処理することができる。
【0074】
なお、これまでの説明では、カードスタッカ装置3からの、新しいカード9の発行についての説明は省略したが、回収ボックス5にカードが回収されると、カードスタッカ装置3から新しいカード9を送り出し、装置内で所定のカード発行処理を行った後、カード挿入口10から新しいカード9を排出する。
【0075】
また、本実施形態の記録媒体処理装置1では、制御部16が、ホストコンピュータ6と必要な情報のやり取りを行いながら、上記一連の処理を行うが、ホストコンピュータ6の役割を総て制御部16に負担させ、記録媒体処理装置独自で上記一連の処理を行うようにしてもよい。あるいは反対に、二値化処理部17の役割を総てホストコンピュータ6に負担させ、記録媒体処理装置1とホストコンピュータ6とを併せたものを記録媒体処理システムにしてもよい。この記録媒体処理システムは、本発明の記録媒体処理システムの一例に相当する。さらに、本発明における技術的思想は、二値画像データ処理プログラムとしても利用することができる。この二値画像データ処理プログラムは、上記記録媒体処理システムにおいて実行される二値画像データ処理プログラムであって、その記録媒体処理システムに、閾値設定部171と、二値画像データ生成部172とを構築するプログラムである。
【0076】
またさらに、本実施形態では、制御部16が回収すると判定したカードは回収ボックス5に回収されていたが、回収するのではなく、その判定以降の処理を中止して、そのカード9を持ち主にカード挿入口10から返却してもよい。こうする場合、回収ボックス5に代えて、Bタイプの新しいカードを収容したカードスタッカ装置を装着し、記録媒体処理装置1が、両タイプのカードを区別して取り扱うようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態ではカードを処理する装置について説明したが、本発明の記録媒体処理装置は、どのような記録媒体を処理する装置であってもよく、例えば、シート状の記録媒体(チケットのようなカット紙等)を処理する装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態の記録媒体処理装置で取り扱うカードを示す図である。
【図2】ロイコ系リライタブル記録材料の可逆特性を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態である記録媒体処理装置を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す記録媒体処理装置1における一連の処理を示すフローチャートである。
【図5】往路を搬送されたカードが記録媒体処理装置の後側で待機している様子を示す図である。
【図6】カードが1往復目の復路を搬送されている様子を示す図である。
【図7】図6に示す二値化処理部の閾値設定部に用意された複数の閾値を説明するための図である。
【図8】復路を搬送されたカードが記録媒体処理装置の前側で待機している様子を示す図である。
【図9】カードが3往復目の復路を搬送されている様子を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 記録媒体処理装置
10 カード挿入口
11 カード通過口
12 搬送路
13 第2搬送ローラ
14 第3搬送ローラ
15 駆動モータ
16 制御部
17 二値化処理部
171 閾値設定部
172 二値画像データ生成部
18 磁気ヘッド
19 画像読取部
191 おもて面読取部
192 裏面読取部
20 印字ヘッド
21 消去ヘッド
22 ヘッド退避駆動モータ
3 カードスタッカ装置
5 回収ボックス
9 カード
91 おもて面
911 印字領域
912 外枠領域
92 裏面
921 磁気ストライプ
922 図柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に該記録媒体表面の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置において、
記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に、読取箇所あるいは読取タイミングを異ならせて該記録媒体表面の画像を複数回読み取る画像読取部と、
前記画像読取部が読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部と、
前記画像読取部が読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部とを備え、
前記二値画像データ生成部は、前記画像読取部が読み取った画像を前記閾値設定部が設定した閾値に基づいて二値化処理するものであることを特徴とする記録媒体処理装置。
【請求項2】
熱の作用により可視像が形成されたり消去されたりする熱可逆性の記録材料が設けられた記録領域を有する記録媒体の該記録領域に熱を加えて可視像を形成する画像形成部を備え、
前記画像読取部は、前記記録媒体における、前記記録領域とは異なる異領域の画像を読み取るとともに、前記画像処理部によって加熱された状態にある記録領域の画像も読み取るものであることを特徴とする請求項1記載の記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記画像形成部が前記記録領域に可視像を形成する前に該記録領域に熱を加え、受け入れた記録媒体に既に形成されていた可視像を消去する画像消去部を備え、
前記画像読取部は、前記画像消去部によって可視像が消去された記録領域の画像を読み取るとともに、前記異領域の画像も読み取るものであることを特徴とする請求項2記載の記録媒体処理装置。
【請求項4】
記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に該記録媒体表面の画像を表す画像データを生成する機能をもった記録媒体処理装置を備えた記録媒体処理システムにおいて、
前記記録媒体処理装置が、記録媒体を受け入れてから排出するまでの間に、読取箇所あるいは読取タイミングを異ならせて該記録媒体表面の画像を複数回読み取る画像読取部を有するものであり、
この記録媒体処理システムがさらに、
前記画像読取部が読み取った画像に対応付けて閾値を設定する閾値設定部と、
前記画像読取部が読み取った複数の画像それぞれを二値化処理して二値画像データを生成する二値画像データ生成部とを備え、
前記二値画像データ生成部は、前記画像読取部が読み取った画像を前記閾値設定部が設定した閾値に基づいて二値化処理するものであることを特徴とする記録媒体処理システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−211197(P2009−211197A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51341(P2008−51341)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】