説明

記録媒体及び読取り書込み装置

【課題】 磁気記録層と不可逆的に記録される感熱記録層を有した記録媒体で、偽造品の作成が難しく、真贋判定が確実に行なわれて、磁気記録層の情報を書き換えて記録する際、及び感熱記録層の情報記録を行う際、その書き換え記録情報及び感熱記録層の不可逆の記録情報の信頼性が高い記録媒体と、その記録媒体の読取り書込み装置を提供する。
【解決手段】 基材10の一方の面に、少なくとも磁気記録層7、感熱記録層4を順次積層した記録媒体1において、該基材10の他方の面の一部に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜2を設けたものである。この記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取ることにより、真贋判定を行ない、該判定結果が真正であるときにのみ、磁気記録手段により磁気記録層に情報を記録し、かつ不可逆記録手段により感熱記録層に情報を記録して用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録層と不可逆的に記録される感熱記録層を有した記録媒体と、その記録媒体の読取り書込み装置に関するものである。詳しくは、偽造品を作成することが難しく、真贋判定が確実に行なわれて、磁気記録層の情報を書き換えて記録する際、及び感熱記録層の情報記録を行う際、その書き換え記録情報及び感熱記録層の不可逆の記録情報の信頼性が高い記録媒体と、その読取り書込み装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、情報記録カードとして、特許文献1にあるように、基材、磁気記録層、感熱破壊記録層、ホログラム層を順次積層したカードとして、感熱破壊記録層が不可逆的に固有情報を記録できる可視情報記録部として設けられたものが知られている。また、特許文献2にあるように、基材の裏面に磁気層を設け、該基材の表面に感熱発色層、ホログラム形成層を設けた感熱印字用シート(カード)が提案されている。このような情報記録カードは、磁気記録層、ホログラム層と、情報記録層として感熱記録層である感熱破壊記録層や、感熱発色層を用いて不可逆的に固有情報を記録できるものである。これらの情報記録カードは偽造防止性を高める効果を有することを記載している。
【0003】
しかし、ホログラム(回折格子)のセキュリティは、近年、偽造品がかなり多く出てきており、目視による真贋判定だけでは、偽造防止効果は完全なものではなくなってきている。また、磁気記録層のデータを読取るだけでは、近年、磁気記録データの書き換えは容易であり、追記情報に確実な信頼性がおけなくなっている。
【特許文献1】特開平8−80680号公報
【特許文献2】特開2005−66871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、磁気記録層と不可逆的に記録される感熱記録層を有した記録媒体において、偽造品を作成することが難しく、真贋判定が確実に行なわれて、磁気記録層の情報を書き換えて記録する際、及び感熱記録層の情報記録を行う際、その書き換え記録情報及び感熱記録層の不可逆の記録情報の信頼性が高い記録媒体と、その記録媒体の読取り書込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の状況を鑑み、鋭意研究開発を進め、本発明は、上記課題を解決した記録媒体と、その記録媒体の読取り書込み装置を見出したものである。すなわち、請求項1に記載の発明は、基材の一方の面に、少なくとも磁気記録層、感熱記録層を順次積層した記録媒体において、該基材の他方の面の一部に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜を設けたことを特徴とする記録媒体である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアモルファス強磁性体膜は、読取りコードとして形成されていることを特徴とする記録媒体であり、さらに偽造防止性が高まる。また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載のアモルファス強磁性体膜の上に、更に着色層が形成されていることを特徴とする記録媒体であり、アモルファス強磁性体膜が外観上、認識できなく、さらに偽造防止性が高まる。請求項4の発明は、請求項1に記載のアモルファス強磁性体膜の上に、更にホログラム形成層が形成されていることを特徴とする記録媒体であり、さらに偽造防止性が高まる。
【0007】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの記録媒体の読取り及び書込み装置において、記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取る手段(強磁性読取手段)と、記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段(磁気記録手段)及び記録媒体の不可逆的に記録される感熱記録層に情報を記録する手段(不可逆記録手段)をもち、該強磁性読取手段により、真贋判定を行ない、該判定結果が真正であるときにのみ、該磁気記録手段により磁気記録層に情報を記録し、かつ不可逆記録手段により感熱記録層に情報を記録することを特徴とする読取り書込み装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の記録媒体は、基材の一方の面に、少なくとも磁気記録層、感熱記録層を順次積層した構成において、該基材の他方の面の一部に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜を設けたものである。この記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取ることにより、真贋判定を行ない、該判定結果が真正であるときにのみ、磁気記録手段により磁気記録層に情報を記録し、かつ不可逆記録手段により感熱記録層に情報を記録して用いられるもので、この記録媒体の偽造品を作成することが難しく、また真贋判定が確実に行なわれて、磁気記録層の情報を書き換えて記録する際、及び感熱記録層の情報記録を行う際、その書き換え記録情報及び感熱記録層の不可逆の記録情報の信頼性が非常に高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の記録媒体1の一つの実施形態を示す概略平面図であり、記録媒体1の表面側には、絵柄印刷層3により、文字、パターン等が記録媒体1の全面に形成されていて、またその絵柄印刷層3の上に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜2が部分的に設けられている。また、その記録媒体1の裏面側には、感熱記録層4が記録媒体1の全面に設けられ、また文字印刷層5により、その感熱記録層4の上に、各種文字が形成されている。図示したものでは、点線で示した領域内が印字ヘッドの走査領域であり、その領域内で、印字ヘッドの加熱により感熱記録層4が発色して、不可逆的に記録された可視情報の記録部6が形成される。
【0010】
図2は、図1で示した記録媒体1のX−Xの切断面における概略断面図であり、基材10の一方の面に、磁気記録層7、着色印刷層8、感熱記録層4を順次積層し、また感熱記録層4の上に、部分的に文字印刷層5が設けられている。また、基材10の他方の面に、絵柄印刷層3、保護層9が積層され、また保護層の上の一部に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜2を設けた構成である。尚、着色印刷層8は、磁気記録層7の色相が感熱記録層の発色記録部が判読しやすくすることを主目的とするが、感熱記録層の材料選定や、その厚さを調整する等して、必ずしも設けるものではない。保護層の上の一部分に、アモルファス強磁性体膜を形成するには、スクリーン印刷、活版印刷等の印刷方式で出来るが、アモルファス強磁性体膜を支持体上に剥離可能に設けた感熱転写箔を用いて、サーマルヘッド等の加熱手段を用いて、熱転写方式で、任意の形状でアモルファス強磁性体膜を形成することが好ましく行われる。
【0011】
図3は、アモルファス強磁性体膜を熱転写方式で形成するために使用する感熱転写箔11の一つの実施形態を示す概略断面図であり、支持体12上に、剥離層13、着色層14、アンカー層15、アモルファス強磁性体膜2、接着層16が順次積層された構成である。図示した転写箔を用いて、記録媒体に転写すると、記録媒体の上の一部分に、接着層、アモルファス強磁性体膜、アンカー層、着色層、剥離層が順次積層された状態となる。
【0012】
また図4は、アモルファス強磁性体膜を熱転写方式で形成するために使用する感熱転写箔11の他の実施形態を示す概略断面図であり、支持体12上に、剥離層13、OP層17、ホログラム形成層18、金属反射層19、アモルファス強磁性体膜2、接着層16が順次積層された構成である。図示した転写箔を用いて、記録媒体に転写すると、記録媒体の上の一部分に、接着層、アモルファス強磁性体膜、金属反射層、ホログラム形成層、OP層、剥離層が順次積層された状態となる。
【0013】
(基材)
本発明の記録媒体における基材10としては、上質紙、コート紙、再生紙、合成紙等が使用でき、さらに、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン,塩化ビニル等の合成樹脂フィルムを使用することもできる。これらの基材は、絵柄印刷層の絵柄を識別しやすくする等のために、白色等に着色し、隠蔽されているものが好ましく用いられる。また、これらの基材は、厚さが16〜50μm程度のものが、転写箔からアモルファス強磁性体膜を転写する際、熱転写の際の熱の伝導効率や、記録媒体の取扱いや保管のしやすさ等から、好ましく用いられる。
【0014】
(感熱記録層)
感熱記録層4は、サーマルヘッドや、レーザー照射による加熱により、その加熱部が発色記録されるもので、不可逆的に固有情報を記録するものである。その感熱記録層は、感熱発色性材料を含有するもので、詳細には熱融解反応により発色する電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物が含まれ、さらに必要に応じて増感剤、退色防止剤、顔料や滑剤などの充填剤、分散剤、結着剤などが含まれる。
【0015】
感熱記録層は、基材へのコーティング、印刷などにより層として形成する。感熱記録層の形成方法としては、グラビア、ロールコート、スプレーコート、ディッピング、その他がある。電子供与性染料前駆体としては、ロイコ染料としてこの種の感熱材料に適用されているもの、イエロー、シアン、マゼンタ系等に発色するものが選ばれる。その電子供与性染料前駆体として、具体的にはトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系などが使用でき、発色する色相に応じて適宜選択する。
【0016】
上記の電子受容性化合物としては、電子供与性染料前駆体と組み合わせられる顕色剤であり、ビスフェノールAなどのフェノール性物質、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エロキシテトラデカノイック酸などの有機酸、金属錯体化合物、チオジフェニル尿素、キノン類などがある。
【0017】
また増感剤としては、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、シュウ酸ジベンジル、トリルビフェニルエーテル、脂肪酸アマイド類がある。退色防止剤としては、水酸基をブロックした顕色剤の類似物、亜鉛塩などの有機金属塩、ヒンダードフェノール類などがある。顔料を併用する場合、白色顔料であれば、可視光、近赤外光を周囲に散乱させる効果があり、光吸収剤への近赤外光吸収を促進および発熱効率を上昇させる。顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸塩、ゼオライト、シリカ、カオリンクレー、尿素ホルマリン樹脂などがある。
【0018】
感熱記録層の形成には、上記材料からなる層を形成するためにインキまたは塗料を調製する。インキまたは塗料の結着剤としては、主に水溶性樹脂が主成分となり、ポリビニルアルコール、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、尿素樹脂、メラニン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂などがある。また、必要に応じて各種補助剤を添加できる。
【0019】
感熱記録層は黒色、茶色、紺色、紅色、赤色、橙色、赤紫色、青色等の発色色相のものが使用できる。感熱記録層の厚さとしては、乾燥時の厚さで約1.0〜20g/m2程度である。
【0020】
(アモルファス強磁性体膜)
アモルファス強磁性体膜2としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)を主基としたアモルファス強磁性体を、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング法等の真空成膜法により、感熱磁気転写箔の支持体に形成することができる。このようなアモルファス強磁性体膜は、10nm〜300nm(0.01μm〜0.3μm)程度の厚さで設けることができる。そして、このアモルファス強磁性体として、Hc(保持力)、μ(透磁率)、Bm(飽和磁束密度)、およびB−H特性(ヒステリシス曲線)の履歴特性が特異なものを使用する。
【0021】
すなわち、磁性材料のヒステリシス曲線を示す図6を参照して説明すると、本発明に使用するアモルファス強磁性体は、図6(A)のような高角型比の磁気特性を示す材料が好ましい。このような強磁性体は、Hc(保磁力)、Bm(飽和磁束密度)において特異な特性を示し、その磁気特性から通常印加の磁界強度とその磁界によって磁化される磁性体の磁束密度とは非線形のB−H特性(ヒステリシス曲線)を有するので、図6(B)のような一般の磁性材料とは明確に区別できる。本発明に使用する強磁性体は、Hcが、40〜4000A/m(0.5〜50エルステッド)、Rsq(角型比)が、0.7〜1.0であることが好ましい。なお、角型比Rsqは、Rsq=Br(残留磁束密度)/Bm(飽和磁束密度)で表される。
【0022】
(磁気記録層)
磁気記録層7は、γ−Fe23、Co被着γ−Fe23、Fe34、CrO2、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Cr、Co−Ni、MnAl、Baフェライト、Srフェライトなどの従来公知の磁性微粒子が適当な樹脂あるいはインキビヒクル中に分散されてなる分散物を、グラビア法、ロール法、ナイフエッジ法などの従来公知の塗布方法によって基材上に形成することができる。また、磁気記録層は、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Crなどの金属または合金あるいはその酸化物を用いて、真空蒸着法、スパッタ法、めっき法などによって、基材上に形成することもできる。
【0023】
塗布方法によって磁気記録層を形成する場合には、その膜厚は1〜100μm好ましくは5〜20μm程度である。また真空蒸着法、スパッタ法、めっき法によって、磁気記録層を形成する場合には、その膜厚は100Å〜1μm好ましくは500〜2000Å程度である。
【0024】
γ−Fe23などの磁性微粒子が分散される樹脂あるいはインキビヒクルとしては、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂などが用いられ、必要に応じて、ニトリルゴムなどのゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマーなどが添加される。また、磁性微粒子が上記樹脂中に分散されてなる分散物中に、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボンその他の顔料を添加することもできる。
【0025】
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層3は、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンなどのスチレン樹脂あるいはスチレン共重合体樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル樹脂またはメタクリル樹脂の単独あるいは共重合体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、重合ロジンなどのロジンエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、クマロン樹脂、ビニルトルエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂などのバインダーに、着色すべき色に応じて各種の顔料、染料を添加し、さらに必要に応じて、可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、乾燥補助剤、硬化剤、増粘剤、分散剤を添加した後、溶剤あるいは希釈剤で充分に混練してなる着色塗料あるいはインキを用いて、通常のグラビア法、ロール法、ナイフエッジ法、オフセット法などの塗布方法あるいは印刷方法により、所望部分に形成できる。なお、絵柄印刷層は単色で形成したり、また複数色の着色塗料あるいはインキを用いて、所望の絵柄、文字、地紋、模様等で形成してもよい。
【0026】
以上の絵柄印刷層は、基材とアモルファス強磁性体膜との間に形成するものであるが、基材の他方の面に設ける着色印刷層8、文字印刷層5についても、上記の絵柄印刷層で説明した同様の材料、形成方法により設けることができる。
【0027】
(保護層)
保護層9は、合成樹脂フィルムをラミネートするか、エクストルージョンコート法によるか、あるいは合成樹脂塗料を塗布することなどによって形成することができる。保護層を構成する合成樹脂は、用途あるいは他層との密着性などを考慮して、着色印刷層を形成するに際して用いられた合成樹脂類と同様なものが広く用いられうる。特に、熱硬化型の合成樹脂を用いると、表面の硬度、汚染の防止という点で有利であり、さらに紫外線硬化型の合成樹脂を含む塗料を用いれば、塗布後の硬化が瞬時に行なえるので好ましい。また、保護層中にシリコーンなどを添加して表面を剥離性とすることもできる。
【0028】
(感熱転写箔)
本発明における記録媒体のアモルファス強磁性体膜を形成するには、支持体上に剥離可能に設けた感熱転写箔11を用いて、サーマルヘッド等の加熱手段を用いて、熱転写方式で、任意の形状でアモルファス強磁性体膜を形成することができる。感熱転写箔の支持体12としては、上記の記録媒体の基材で説明したような合成樹脂フィルムが使用でき、その厚さは、5〜300μm程度、好ましくは、10〜50μm程度のものである。そして、この支持体上に剥離層を介して、上記に説明したアモルファス強磁性体膜を形成することが好ましい。
【0029】
上記の剥離層13は、アモルファス強磁性体膜が支持体から剥離しやすくするためのものであって、転写後にはアモルファス強磁性体膜をある程度保護する役割をも有するものである。この層の材質としては、十分な透明性があり、耐摩擦性、耐汚染性、耐溶剤性を有する樹脂、例えば(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラニン系樹脂、ポリエステル系樹脂の単体、混合物および共重合体が用いられる。また、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散して調整したインキを、基材上に公知の手段により塗布、乾燥させて行うことができる。このような剥離層の厚さは、0.5〜5μm程度が好ましく、さらに好ましくは、1〜3μmの範囲である。
【0030】
また、感熱転写箔において、アモルファス強磁性体膜を含む転写部が記録媒体との接着性を高めるために、アモルファス強磁性体膜の上に、つまり感熱転写箔の最表面に接着層17を設けることができる。この接着層は、ヒートシール剤としては、塩酢ビ系ホットメルト型樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等から構成したり、また、粘着剤としては、アクリル系、ゴム系のものから構成することができる。その塗布厚みは、1〜数μm以内のものであってよい。通常、当該接着層が粘着剤層である場合は、転写箔上に設ける保護用剥離紙に粘着剤を付与してから、この保護用剥離紙と転写箔を一体にし、転写箔を使用する際に、剥離紙を除去すると、アモルファス強磁性体膜上に粘着剤が転移して使用できる状態になる。
【0031】
感熱転写箔の着色層14とアモルファス強磁性体膜2との間に、アンカー層15を設け、着色層とアモルファス強磁性体膜との密着力を高めることができる。また、感熱転写箔の製造する際に、このアンカー層の上にアモルファス強磁性体膜を形成することになるが、このアンカー層の形成された表面を平滑にして、その上にアモルファス強磁性体膜を形成し、アモルファス強磁性体膜の機械読取りの精度を良好にすることができる。アンカー層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、ゴム系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。これらのバインダー樹脂を溶剤に溶解させて、グラビア法、ロール法、ナイフエッジ法などの従来公知の塗布方法によって基材上に形成することができる。
【0032】
(ホログラム形成層)
本発明の記録媒体は、アモルファス強磁性体膜の上に、更にホログラム形成層18が形成されていることが好ましく、ホログラム形成層18を記録媒体上に形成する方法の一つとして、感熱転写箔を用いることが簡便であり、好ましく行なわれる。ホログラム形成層は、ホログラムの精細パターンを再現できる樹脂材料で構成することができる。一般的には、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン、エポキシ、アクリレート等の熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、あるいは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、さらにラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、あるいはこれらにラジカル重合性不飽和基単量体を加え、電離放射線硬化性樹脂放射線硬化性としたものなどを使用することができる。このようなホログラム形成層の膜厚は、0.1〜6μmの範囲が好ましく、1〜4μmの範囲がさらに好ましい。
【0033】
ホログラム形成層に形成されるホログラム画像の大きさと形状は、要求される態様によってそれぞれ異なるので、特に限定されるものではない。ホログラム画像の形成方法としては、従来公知の方法、例えばホログラムの干渉縞の凹凸パターンを設けた原版を用い、微細凹凸をエンボス加工法等によって形成する。ホログラム画像は、平面型ホログラムでも体積型ホログラムでもよく、平面型ホログラムの場合、なかでもレリーフホログラムが量産性およびコストの面から好ましい。その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、更に、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチフレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。
【0034】
また、上記のホログラム形成層とアモルファス強磁性体膜との間に、金属反射層19を設けることができ、アモルファス強磁性体膜を隠蔽でき、またホログラム形成層におけるホログラム画像の視認性を向上させることができる。金属反射層は、非磁性体の金属や非金属から構成する。これには例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銀(Ag)、金(Au)、珪素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)やこれらの合金、あるいはこれらの酸化物、窒化物、酸化窒化物粉体を使用することができる。金属反射層は、上記の金属や非金属を、真空蒸着法、スパッタ法等の方法で、膜厚が100Å〜1μm程度で形成することができる。
【0035】
尚、図4に示した感熱転写箔において、剥離層とホログラム形成層との間に、OP層17を設けているが、このOP層は、ホログラム形成層を保護する機能をもち、上記の絵柄印刷層で説明したような樹脂を用い、着色剤を除いて、絵柄印刷層と同様の方法で形成することができる。
【0036】
(読取り書込み装置)
本発明の読取り書込み装置は、上記に説明した記録媒体の読取り及び書込み装置であり、記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取る手段(強磁性読取手段)と、記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段(磁気記録手段)及び記録媒体の不可逆的に記録される感熱記録層に情報を記録する手段(不可逆記録手段)をもち、該強磁性読取手段により、真贋判定を行ない、該判定結果が真正であるときにのみ、該磁気記録手段により磁気記録層に情報を記録し、かつ不可逆記録手段により感熱記録層に情報を記録するものである。
【0037】
本発明の読取り書込み装置について、図5に示した装置を例にして、説明する。カ−ド状の記録媒体1を搬送する搬送手段としての複数の搬送ロ−ラ対21、30、31、32等、記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取る手段としての読取ヘッド22と、該ヘッド22に対し記録媒体1を押し付けながら搬送する搬送ロ−ラ23、磁気記録を行うタイミングを検知する為のタイミングセンサ24、記録媒体1の磁気記録層に情報を記録する手段としての磁気ヘッド25、該ヘッド25に対し記録媒体1を押し付けながら搬送する搬送ロ−ラ26、感熱記録を行うタイミングを検知する為のタイミングセンサ27、記録媒体1の感熱記録層に情報を記録する手段としてのサーマルヘッド28、該ヘッド28に対し記録媒体1を押し付けながら搬送するプラテンロ−ラ29等により構成された読取り書込み装置20である。
【0038】
上記のような構成において、図示しない搬送モ−タの駆動力により搬送ロ−ラ対21を回転させることにより、記録媒体1を搬送しながら一連の読取り、書込み(記録)の動作が行なわれる。すなわち、まず、読取ヘッド22によって、記録媒体1のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性の有無、あるいは該強磁性体膜の磁気記録された情報を読取り、該強磁性体膜の磁気特性を有している、あるいは該強磁性体膜の磁気記録された情報を検知した場合のみ、次の記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段へ進む。上記の読取ヘッド22によって、記録媒体1のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性が認められない、あるいは該強磁性体膜の磁気記録された情報を検知できない場合は、記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段(磁気ヘッド25)へは進めずに、停止する。
【0039】
上記の記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段の磁気ヘッド25には、図示しない制御装置から、磁気記録層への書込むべき情報に応じた信号が送られてくる。また、予めタイミングセンサ24で読み取った位置データに基づき、磁気記録層への書込み時にずらす位置、方向が決定されている。上記の記録媒体の磁気記録層に情報を記録した後に、記録媒体の感熱記録層に情報をサーマルヘッド28により記録する。このサーマルヘッド28には、図示しない制御装置から、感熱記録層への記録すべき情報に応じた信号が送られてくる。また、予めタイミングセンサ27で読み取った位置データに基づき、感熱記録層への記録時にずらす位置、方向が決定されている。
【0040】
また、図5には示さなかったが、読取ヘッド22によって、記録媒体1のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性の有無、あるいは該強磁性体膜の磁気記録された情報を読取り検知の可否の結果が、読取ヘッド22から、コンピュータにその読取りデータが送信され、その読取りデータを受信したコンピュータは、強磁性体膜の固有の磁気特性を有している場合と、強磁性体膜の磁気記録された情報を読取れる場合のみ、真正品と判断し、それ以外は、真正品でないと判断する、つまり真贋判定を行なう。
【0041】
上記の真贋判定で、真正品と判断された時のみ、次の記録媒体の磁気記録層への情報を記録する手段、記録媒体の感熱記録層への情報を記録する手段へ進むが、真正品と判断されないときは、次の工程へ進まず停止する。尚、その真贋判定の結果をディスプレイ等の表示手段により、判定情報として表示することができる。また、この際に真贋判定が偽物であるとの判定であった場合には、表示手段にこれらの真贋判定情報を表示すると共に、警報ブザーを鳴らすようにしてもよい。
【0042】
以上に説明した記録媒体の読取り書込み装置により、感熱記録層に情報が記録された一つの実施形態を図1に示す。図示した記録媒体は、カード形態であり、カード表面には、御利用年月日、残数などが、感熱記録層に記録されている。図示した「040312」や、「8000」等の数字が、不可逆的に記録された可変情報としての記録部6である。尚、図1で示した裏面の感熱記録印字層(領域)とアモルファス強磁性体膜のX−X断面図は、例えば、図2で示したような概略図のようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の記録媒体の一つの実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1で示した記録媒体のX−Xの切断面における概略断面図である。
【図3】アモルファス強磁性体膜を熱転写方式で形成するために使用する感熱転写箔の一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図4】アモルファス強磁性体膜を熱転写方式で形成するために使用する感熱転写箔の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の記録媒体の読取り書込み装置の一つの実施形態を示す概略図である。
【図6】磁性材料のヒステリシス曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 記録媒体
2 アモルファス強磁性体膜
3 絵柄印刷層
4 感熱記録層
5 文字印刷層
6 記録部
7 磁気記録層
8 着色印刷層
9 保護層
10 基材
11 感熱転写箔
12 支持体
13 剥離層
14 着色層
15 アンカー層
16 接着層
17 OP層
18 ホログラム形成層
19 金属反射層
20 読取り書込み装置
21、30、31、32 搬送ロ−ラ対
22 読取ヘッド
23 搬送ロ−ラ
24 タイミングセンサ
25 磁気ヘッド
26 搬送ロ−ラ
27 タイミングセンサ
28 サーマルヘッド
29 プラテンロ−ラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、少なくとも磁気記録層、感熱記録層を順次積層した記録媒体において、該基材の他方の面の一部に、固有の磁気特性を有するアモルファス強磁性体膜を設けたことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記のアモルファス強磁性体膜は、読取りコードとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記のアモルファス強磁性体膜の上に、更に着色層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記のアモルファス強磁性体膜の上に、更にホログラム形成層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体の読取り及び書込み装置において、記録媒体のアモルファス強磁性体膜の固有の磁気特性を読取る手段(強磁性読取手段)と、記録媒体の磁気記録層に情報を記録する手段(磁気記録手段)及び記録媒体の不可逆的に記録される感熱記録層に情報を記録する手段(不可逆記録手段)をもち、該強磁性読取手段により、真贋判定を行ない、該判定結果が真正であるときにのみ、該磁気記録手段により磁気記録層に情報を記録し、かつ不可逆記録手段により感熱記録層に情報を記録することを特徴とする読取り書込み装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−188602(P2007−188602A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6676(P2006−6676)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】