説明

記録媒体受付装置

【課題】記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図る。
【解決手段】記録媒体受付装置は、情報を記録した記録媒体の挿入を受け付ける略長方形状の挿入口を備える記録媒体挿入部と、挿入された記録媒体の情報記録部に記憶された情報を読み取るためのヘッドを有する読取部とを備える。記録媒体挿入部には、挿入口の長手方向の少なくとも一部の範囲、かつ、ヘッドと対応する位置に、記録媒体の挿入を案内するための突出部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記録した記録媒体の挿入を受け付け、記録媒体に記憶された情報を読み取る読取部に記録媒体を搬送する記録媒体受付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になり、現金自動取引装置(Automated Teller Machine、以降「ATM」とも呼ぶ。)や現金支払機(Cash Dispenser、以降「CD」とも呼ぶ。)の普及が拡大し、いわゆる無人店舗等においてもこれらの機器が設置されている。ATMやCDで取り扱われるキャッシュカードやクレジットカードには現金支払い・預け入れに必要な情報(顧客情報)が記録されている。カードへの顧客情報の記録形態としては、磁気ストライプへのデータ記録、集積回路(IC)へのデータ記録などがある。
【0003】
TMやCDでのこのようなカード使用が増えるに伴い、カードに記録済みの顧客情報を不正に入手するスキミングと称される犯罪の発生が国内外において増加している。スキミングは、不正に入手した顧客情報を偽造カードに記録させ、その偽造カードにて顧客口座から現金を引き出す等の犯罪行為である。スキミングは、例えば、ATMのカード挿入口近くに不正な読取装置(以降、「スキミング装置」とも呼ぶ。)を取り付け、顧客(利用者)が挿入したカードの情報を不正に読み取ることにより行われる。
【0004】
こうした経緯から、現在、種々のスキミング対策が提案されている。例えば、オートフォーカス制御機能付きのカメラを用いて、焦点距離の変化でスキミング装置を検出する技術が知られている(特許文献1)。しかし、従来の技術では、スキミング対策にかかるコストが大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−225670号公報
【特許文献2】特開2007−280317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
記録媒体受付装置であって、
情報を記録した記録媒体の挿入を受け付ける略長方形状の挿入口を備える記録媒体挿入部と、
挿入された前記記録媒体の情報記録部に記憶された情報を読み取るためのヘッドを有する読取部と、
を備え、
前記記録媒体挿入部には、前記挿入口の長手方向の少なくとも一部の範囲、かつ、前記ヘッドと対応する位置に、前記記録媒体の挿入を案内するための突出部が形成されている、記録媒体受付装置。
【0009】
この構成によれば、記録媒体を挿入するための挿入口の長手方向の少なくとも一部の範囲、かつ、記録媒体の情報記録部に記憶された情報を読み取るためのヘッドと対応する位置に、記録媒体の挿入を案内するための突出部が形成されているため、スキミング装置による情報記録部への接触を抑制しつつ、操作性を確保することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記挿入口に挿入された前記記録媒体を前記ヘッドに向かって搬送する搬送ローラを備え、
前記挿入口に対する前記突出部の突出量は、前記挿入口に挿入された前記記録媒体の先端が前記搬送ローラに接触した状態における、前記挿入口からの前記記録媒体の突出量以上である、記録媒体受付装置。
【0011】
この構成によれば、挿入口に対する突出部の突出量は、挿入口に挿入された記録媒体の先端が搬送ローラに接触した状態における、挿入口からの記録媒体の突出量以上であるため、記録媒体が搬送ローラによって搬送される間におけるスキミング装置による情報記録部への接触を抑制することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または2記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の先端付近に取り付けられた異物を検知するために、前記突出部の先端よりも外側、かつ、前記挿入口の長手方向を監視する第1のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【0013】
この構成によれば、突出部の先端よりも外側、かつ、挿入口の長手方向を監視する第1のセンサが設けられているため、突出部よりも外側に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の表面に取り付けられた異物を検知するために、前記磁気ヘッドと対応する位置、かつ、前記挿入口の短手方向を監視する第2のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【0015】
この構成によれば、磁気ヘッドと対応する位置、かつ、挿入口の短手方向を監視する第2のセンサが設けられているため、突出部と記録媒体との間の隙間に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0016】
[適用例5]
適用例4記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は中空状に形成され、かつ、前記突出部のうちの前記磁気ヘッドと対応する位置であって、前記挿入口と対向する側の面の少なくとも一部分は特定周波数の光のみを通過する材料で形成され、
前記第2のセンサは、前記突出部内に形成された空間に配置されている、記録媒体受付装置。
【0017】
この構成によれば、突出部は中空状に形成され、かつ、突出部のうちの磁気ヘッドと対応する位置であって、挿入口と対向する側の面の少なくとも一部分は特定周波数の光のみを通過する材料で形成され、第2のセンサは、突出部内に形成された空間に配置されているため、第2のセンサを突出部内に内蔵することができる。
【0018】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記挿入口は、前記記録媒体受付装置の前面に対して窪んだ面である挿入口形成面に形成され、
前記挿入口形成面のうち、前記挿入口の長手方向の両端部から前記記録媒体受付装置の前面に向かって延伸する面の少なくとも一方には、前記第1のセンサが設けられ、
前記挿入口形成面のうち、前記挿入口の短手方向の上端部から前記記録媒体受付装置の前面に向かって延伸する面と、前記突出部との少なくとも一方には、前記第2のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【0019】
この構成によれば、スキミング装置による情報記録部への接触を抑制しつつ、突出部よりも外側に取り付けられたスキミング装置を検知すると共に、突出部と記録媒体との間の隙間に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0020】
[適用例7]
適用例1ないし6のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の側面に取り付けられた異物を検知するために、前記突出部の一側面を監視する第3のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【0021】
この構成によれば、突出部の一側面を監視する第3のセンサが設けられているため、突出部の側面に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0022】
[適用例8]
適用例1ないし7のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は、前記突出部の一部が前記記録媒体と接触するように形成されている、記録媒体受付装置。
【0023】
この構成によれば、突出部は、突出部の一部が記録媒体と接触するように形成されているため、突出部と記録媒体との間の隙間にスキミング装置を取り付けることを妨げることができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0024】
[適用例9]
適用例1ないし8のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は、湾曲した形状である、記録媒体受付装置。
【0025】
この構成によれば、突出部は、湾曲した形状であるため、突出部の外側に対してスキミング装置の取り付けを困難にすることができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0026】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、本発明は、記録媒体受付装置(例えば、ATMやCD)、記録媒体受付方法のほか、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例としての現金自動取引装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】カード取扱機構の外観の構成を示す説明図である。
【図3】カード取扱機構のA面(図2)における断面を示す説明図である。
【図4】カード取扱機構のB面(図2)における断面を示す説明図である。
【図5】第2実施例におけるカード取扱機構のB面(図2)における断面を示す説明図である。
【図6】第3実施例におけるカード取扱機構のB面(図2)における断面を示す説明図である。
【図7】第4実施例におけるカード取扱機構の外観の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
【0029】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての現金自動取引装置10の構成を概略的に示す説明図である。本実施例における記録媒体受付装置としての現金自動取引装置(以降、「ATM」とも呼ぶ。)10は、例えば金融機関や小売店、公共施設等に設置され、顧客(利用者)の操作に基づき現金出納等の所定の取引処理を行う装置である。ATM10は、現金自動預け払い機とも呼ばれる。
【0030】
図1に示すように、ATM10は、装置前面に立つ顧客に対する前面パネル910と、顧客側に迫り出した操作テーブル920とを備えている。ATM10は、前面パネル910に、取扱可否ランプ911と、明細票印字機構400と、通帳取扱機構500と、カード取扱機構600と、紙幣入出金機構700と、硬貨入出金機構800と、を備えている。また、ATM10は、操作テーブル920に、顧客操作部300と、顧客検知センサ921とを備えている。なお、図1においては、説明上必要としない一部の構成部については図示を省略している。このことは、後述する図においても同様である。
【0031】
取扱可否ランプ911は、ATM10による取引が実行可能な状態にあるとき点灯し、顧客に利用可能/不能を通知する。明細票印字機構400は、顧客がATM10にて行った取引の内容を印字した明細票の発行を行う。通帳取扱機構500は、顧客の通帳BBの受け入れ/排出動作や、磁気ストライプを対象としたリード/ライト動作、通帳への印字動作等を行う。カード取扱機構600は、現金支払いや預け入れといった取引処理に必要な情報(以降、「顧客情報」とも呼ぶ。)が記録されたカードCDの受け入れ/排出動作や、カードCDに含まれる磁気ストライプを対象としたリード/ライト動作、カードのエンボス部分のイメージの読み取り動作等を行う。紙幣入出金機構700は、紙幣の入金/出金動作や、ATM10内部の図示しない紙幣収納部への搬送動作といった現金(紙幣)の管理を行う。硬貨入出金機構800は、硬貨の入金/出金動作や、ATM10内部の図示しない硬貨収納部への搬送動作といった現金(硬貨)の管理を行う。
【0032】
顧客操作部300は、例えば、入力機能と表示機能とを備えるタッチパネルにより構成されている。顧客操作部300は、種々の情報を画面に表示すると共に顧客の画面タッチ操作を検知することにより、顧客の取引操作を誘導したり、顧客による画面表示された項目の選択や暗証番号の入力等を受け付けたりするユーザインタフェースである。なお、顧客操作部300は、タッチパネルに代えて、ディスプレイと操作ボタンの組合せにより構成するものとしてもよい。顧客検知センサ921は、ATM10の前に立つ顧客を検知するセンサであり、その結果は、ATM10の制御部に送信され、制御部による顧客操作部300の点灯表示制御等に用いられる。
【0033】
なお、ATM10に含まれる顧客操作部300や、明細票印字機構400、通帳取扱機構500、カード取扱機構600、紙幣入出金機構700、硬貨入出金機構800等は、それぞれが所定の動作を行う構成要素である。本明細書では、これらの構成要素を動作ユニットとも呼ぶ。すなわち、ATM10は、複数の動作ユニットを有する。
【0034】
図2は、カード取扱機構600の外観の構成を示す説明図である。図3は、カード取扱機構600のA面(図2)における断面を示す説明図である。図4は、カード取扱機構600のB面(図2)における断面を示す説明図である。図2に示すように、カード取扱機構600の前面パネル910に面する側には、情報を記録した記録媒体としてのカードCDの挿入を受け付けるカード挿入部610(記録媒体挿入部)が設けられている。カード挿入部610には、前面壁部620と、上面部630と、右側壁部640と、底面部650と、左側壁部660と、突出部670と、挿入口680とが設けられている。また、図3、図4に示すように、カード取扱機構600の内部には、挿入されたカードCDの情報記録部としての磁気ストライプ部分に記憶された情報を読み取るための読取部690が設けられている。読取部690には、カード口センサ691と、下部ローラ692と、上部ローラ693と、磁気ヘッド694が設けられている。
【0035】
挿入口形成面としての前面壁部620は、ATM10の前面に対して窪むように設けられた面である。前面壁部620の略中央部には、前面壁部620の一部が略長方形状にくり抜かれた形状を有する挿入口680が設けられている。挿入口680には、カードCDが挿入される。カードCDは、情報記録部としての磁気ストライプMSを下に向けた状態で挿入される。さらに、前面壁部620には、挿入口680の長手方向の少なくとも一部の範囲であって、挿入口680に挿入されるカードCDの磁気ストライプMSの向きと対応する位置(すなわち、図4の磁気ヘッド694と対応する位置)に突出部670が形成されている。
【0036】
突出部670は、突出部上面671と、突出部側面672と、突出部底面673とを含んでいる。突出部上面671は、突出部670のうち、挿入口680と対向する側(上側)に位置する扇形状に湾曲した平面である。突出部上面671は、顧客がカードCDを挿入口680へ挿入する際に、カードCDと接触することによって、カードCDの移動を案内する機能を有している。また、突出部上面671は、特定周波数の光のみを透過する材料で形成されている。これは、後述する垂直発光センサPOSからの光を透過させるためである。突出部底面673は、突出部上面671と対応した形状を有する面である。突出部側面672は、突出部上面671と、突出部底面673とから延伸する面である。
【0037】
上面部630は、前面壁部620のうち、挿入口680の短手方向の上端部からATM10の前面に向かって延伸する面である。一方の側壁部としての右側壁部640は、前面壁部620のうち、挿入口680の長手方向の右側に位置する端部からATM10の前面に向かって延伸する面である。底面部650は、前面壁部620のうち、挿入口680の短手方向の下端部からATM10の前面に向かって延伸する面である。他方の側壁部としての左側壁部660は、前面壁部620のうち、挿入口680の長手方向の左側に位置する端部からATM10の前面に向かって延伸する面である。これらの上面部630、右側壁部640、左側壁部660についても、突出部上面671と同様に、特定周波数の光のみを透過する材料で形成されている。これは、後述する垂直発光センサPOSと、水平発光センサHOSからの光を透過させるためである。
【0038】
上面部630のうち、突出部670と対向し、磁気ヘッド694と対応する部分には、第2のセンサとしての垂直受光センサPISが設けられている。垂直受光センサPISは、受光素子を備えた透過型のフォトセンサであり、発光素子からの光を捉えて電流として出力する機能を有している。また、突出部670の内部(すなわち、突出部上面671と、突出部側面672と、突出部底面673とにより形成される中空部)であって、磁気ヘッド694と対応する部分には、第2のセンサとしての垂直発光センサPOSが設けられている。垂直発光センサPOSは、発光素子を備えた透過型のフォトセンサであり、垂直受光センサPISに向かってLED等の光を発する機能を有している。垂直受光センサPISと垂直発光センサPOSとは、挿入口680の短手方向をまっすぐ挟むようにして配置されている。
【0039】
左側壁部660には、第1のセンサとしての水平受光センサHISが設けられている。水平受光センサHISは、垂直受光センサPISと同様に、受光素子を備えた透過型のフォトセンサである。なお、水平受光センサHISは、突出部670の先端部分と対応する高さであって、突出部670の先端部分よりも外側(ATMの前面側)に設けられることが好ましい。右側壁部640には、第1のセンサとしての水平発光センサHOSが設けられている。水平発光センサHOSは、垂直発光センサPOSと同様に、受光素子を備えた透過型のフォトセンサである。なお、水平発光センサHOSについても、突出部670の先端部分と対応する高さであって、突出部670の先端部分よりも外側に設けられることが好ましい。水平受光センサHISと水平発光センサHOSとは、挿入口680の長手方向を挟むようにして配置されている。
【0040】
読取部690のカード口センサ691(図3)は、カードCDの搬送状態を検出するためのセンサである。搬送ローラとしての下部ローラ692と、上部ローラ693とは、挿入口680に挿入されたカードCDの上下面を巻き込むことによって、カードCDの搬送を行う。例えば、磁気ストライプのデータをリードする場合、カードCDは下部ローラ692と、上部ローラ693とによって磁気ヘッド694に向かって搬送される。磁気ヘッド694は、カードCDの磁気ストライプに記憶された情報を読み取るための読取装置である。
【0041】
以上のように、第1実施例によれば、記録媒体(カードCD)を挿入するための挿入口(挿入口680)の長手方向の少なくとも一部の範囲、かつ、記録媒体の情報記録部(磁気ストライプMS)に記憶された情報を読み取るためのヘッド(磁気ヘッド694)と対応する位置に、記録媒体の挿入を案内するための突出部670が形成されているため、スキミング装置による情報記録部への接触を抑制しつつ、操作性を確保することができる。この結果、記録媒体受付装置において、簡易な構成でスキミング対策を図ることができる。
【0042】
また、図4に示すように、挿入口680に対する突出部670の突出量Dは、挿入口680に挿入された記録媒体の先端が搬送ローラ(下部ローラ692、上部ローラ693)に接触した状態における、挿入口680からの記録媒体の突出量以上であるため、記録媒体が搬送ローラによって搬送される間、すなわち、記録媒体が定速で搬送される間におけるスキミング装置による情報記録部への接触を抑制することができる。
【0043】
さらに、図2に示すように、2つの側壁部(右側壁部640、左側壁部660)のうちの少なくとも一方には、突出部670の先端よりも外側、かつ、挿入口680の長手方向を監視する第1のセンサ(水平受光センサHIS、水平発光センサHOS)が設けられている。ATM10の図示しない制御部は、水平発光センサHOSから発せられる光HH(図4)を水平受光センサHISで受光し、出力電流の変化を監視することによって、水平発光センサHOSと水平受光センサHISとの間の遮蔽物の有無(すなわち、スキミング装置が設置されたか否か)を検知することができる。制御部は、このようにして異物を検知した場合、警報を鳴らす、センターへ通報する等の措置を採ることができる。このようにして、突出部670よりも外側に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。
【0044】
さらに、図2に示すように、上面部630のうちの突出部670と対向する部分と、突出部670との少なくとも一方には、磁気ヘッド694と対応する位置、かつ、挿入口680の短手方向を監視する第2のセンサ(垂直受光センサPIS、垂直発光センサPOS)が設けられている。ATM10の図示しない制御部は、垂直発光センサPOSから発せられる光PPを垂直受光センサPISで受光し、出力電流の変化を監視することによって、垂直発光センサPOSと垂直受光センサPISとの間の遮蔽物の有無(すなわち、スキミング装置が設置されたか否か)を検知することができる。制御部は、このようにして異物を検知した場合、警報を鳴らす、センターへ通報する等の措置を採ることができる。このようにして、突出部670と記録媒体との間の隙間に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。
【0045】
さらに、図4に示すように、突出部670は中空状に形成され、かつ、突出部670のうちの磁気ヘッド694と対応する一であって、挿入口680と対向する面(突出部上面671)の少なくとも一部分は特定周波数の光のみを通過する材料で形成され、第2のセンサは、突出部670内に形成された空間に配置されているため、第2のセンサを突出部内に内蔵することができる。この結果、第2のセンサは顧客に目立たない態様で配置可能となり、例えば、いたずら等による誤検知を抑制することができる。さらに、このような構成とすれば、外部からの水分によるセンサの故障についても抑制することができる。
【0046】
さらに、図4に示すように、突出部670は、突出部670の一部(突出部上面671)が記録媒体と接触するように形成されているため、突出部670と記録媒体との間の隙間にスキミング装置を取り付けることを妨げることができる。また、突出部670は、湾曲した形状であるため、突出部670の外側に対してスキミング装置の取り付けを困難にすることができる。
【0047】
B.第2実施例:
図5は、第2実施例におけるカード取扱機構600aのB面(図2)における断面を示す説明図である。図4に示した第1実施例との違いは、突出部底面673の代わりに突出部底面673aを、垂直発光センサPOSの代わりに垂直発光センサPOSaをそれぞれ備える点のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同様である。本実施例における突出部底面673aは、突出部上面671と同様に、特定周波数の光のみを透過する材料で形成されている。また、垂直発光センサPOSaは、底面部650のうち、突出部670と対向し、磁気ヘッド694と対応する部分に設けられている。
【0048】
このように、第2実施例のような構成としても、第1実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施例によれば、第2のセンサ(垂直受光センサPIS、垂直発光センサPOSa)によって、第1実施例よりも広い範囲、すなわち、突出部670と上面部630との間と、突出部670と底面部650との間における遮蔽物の有無(すなわち、スキミング装置が設置されたか否か)を検知することができる。
【0049】
C.第3実施例:
図6は、第3実施例におけるカード取扱機構600bのB面(図2)における断面を示す説明図である。図5に示した第2実施例との違いは、突出部上面671の代わりに突出部上面671bを備える点のみであり、他の構成や動作は第2実施例と同様である。本実施例における突出部上面671bは、ATM10の装置手前側に向かって下がるように傾斜している。このため、挿入されるカードCDと突出部上面671bとの間には、空間Eが形成される。スキミング装置は、通常、カードCDの磁気ストライプMSに接触する位置に配置される。従って、例えば、図6のように、突出部側面672の外側(すなわち、突出部670の先端部分)にスキミング装置SAが取り付けられた場合、空間Eが存在することにより、不自然な段差が形成されることとなる。この結果、スキミング装置の発見を促すことができる。
【0050】
このように、第3実施例のような構成としても、第2実施例と同様の効果を得ることができる。
【0051】
D.第4実施例:
図7は、第4実施例におけるカード取扱機構600cの外観の構成を示す説明図である。図2に示した第1実施例との違いは、カード挿入部610c(記録媒体挿入部)の構成のみであり、他の構成や動作は第1実施例と同様である。
【0052】
カード挿入部610cには、前面壁部620cと、ポケット900と、突出部670cと、挿入口680とが設けられている。前面壁部620cは、ATM10cの前面側に設けられた面である。前面壁部620cの上部には、半円状に窪んだポケット900が設けられている。ポケット900には、その一部が略長方形状にくり抜かれた形状を有する挿入口680が設けられている。挿入口680には、第1実施例と同様に、記録媒体としてのカードが挿入される。カードは、情報記録部としての磁気ストライプを下に向けた状態で挿入される。さらに、前面壁部620cには、挿入口680の長手方向の少なくとも一部の範囲であって、挿入口680に挿入されるカードの磁気ストライプの向きと対応する位置(すなわち、図4の磁気ヘッド694と対応する位置)に突出部670cが形成されている。
【0053】
突出部670cは、突出部上面671と、突出部内側側面675とを含んでいる。突出部上面671は、突出部670のうち、挿入口680と対向する側(上側)に位置する扇形状に湾曲した平面である。突出部内側側面675は、突出部上面671を形成する辺のうち、挿入口680の中心側に位置する一辺から、挿入口680とは遠ざかる方向に延伸する扇形状に湾曲した平面である。前面壁部620cと、突出部内側側面675とは、特定周波数の光のみを透過する材料で形成されている。これは、後述する対角発光センサCOSからの光を透過させるためである。
【0054】
前面壁部620cの長手方向の略中央部であって、突出部670cが設けられている側とは逆側に位置する部分には、対角受光センサCISが設けられている。対角受光センサCISは、第1実施例の垂直受光センサPISと同様に、受光素子を備えた透過型のフォトセンサである。また、突出部670cの内部であって、突出部内側側面675に隣接する部分には、対角発光センサCOSが設けられている。対角発光センサCOSは、第1実施例の垂直発光センサPOSと同様に、発光素子を備えた透過型のフォトセンサであり、対角受光センサCISに向かってLED等の光を発する機能を有している。対角受光センサCISと対角発光センサCOSとは、挿入口680の長手方向に沿うようにして配置されている。
【0055】
このように、第4実施例のような構成としても、第1実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、図7に示すように、第4実施例によれば、前面壁部620cの長手方向の略中央部であって、突出部670cが設けられている側とは逆側に位置する部分と、突出部670cの側面との少なくとも一方には、突出部の一側面を監視する第3のセンサ(対角受光センサCIS、対角発光センサCOS)が設けられている。ATM10cの図示しない制御部は、対角発光センサCOSから発せられる光PPcを対角受光センサCISで受光し、出力電流の変化を監視することによって、対角受光センサCISと対角発光センサCOSとの間の遮蔽物の有無(すなわち、スキミング装置が設置されたか否か)を検知することができる。第4実施例では、このようにして、前面壁部620cのうち、突出部670cが形成されていない部分(突出部670の側面)に取り付けられたスキミング装置を検知することができる。
【0056】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
E1.変形例1:
上記実施例におけるATMは、磁気ストライプに顧客情報を記憶するタイプのカード(磁気カード)をキャッシュカードとして用いる例について説明した。しかし、本発明におけるATMは、ICチップに顧客情報を記憶するタイプのカード(ICカード)をキャッシュカードとして使用しても良い。
【0058】
E2.変形例2:
上記実施例では、記録媒体の情報記録部を挿入口に対して右下側に向けて挿入するタイプについて例示した。しかし、記録媒体の情報記録部の向きは、ATM内部に設けられるヘッドの位置により変動し、これに伴って突出部が設けられる位置も変動する。
【0059】
E3.変形例3:
上記実施例では、第1〜第3の各センサに接する各構成部(例えば、上面部、突出部上面、右側壁部、左側壁部、ポケット、突出部内側側面)については、特定周波数の光のみを透過する材料で形成するものとして記載した。しかし、各センサに接する各構成部は、その部材の全ての部分ではなく、発光側のセンサから発生する光の光路に相当する一部分のみを特定周波数の光のみを透過する材料で形成するものとしてもよい。このようにすれば、各部材に掛かる製造コストを抑制できる点において好ましい。
【0060】
また、第1〜第3の各センサに接する各構成部は、発光側のセンサから発生する光の光路に相当する一部分に貫通孔を設けた形状とすることもできる。このようにしても、各部材に掛かる製造コストを抑制できる点において好ましい。
【0061】
さらに、第1〜第3の各センサを各構成部(例えば、上面部、突出部上面、右側壁部、左側壁部、ポケット、突出部内側側面)の表面に取り付ける構成とすれば、各構成部を遮光性の材料で形成することもできる。
【0062】
E4.変形例4:
上記実施例では、第1〜第3の各センサとして透過型フォトセンサを用いる例について説明した。しかし、これらのセンサには、種々のタイプのセンサを利用することができる。例えば、反射型フォトセンサを用いても良い。反射型フォトセンサを用いる場合、例えば、第2のセンサとしての反射型フォトセンサを、図2の垂直受光センサPIS・垂直発光センサPOSの位置の少なくともいずれか一方、第1のセンサとしての反射型フォトセンサを、図2の水平受光センサHIS・水平発光センサHOSの位置の少なくともいずれか一方に設ければよい。このようにすれば、使用するセンサの数を少なくすることができる。
【0063】
E5.変形例5:
上記実施例では、第1〜第3の各センサのうちの発光側のセンサは、常に光を発光するものとして記載した。しかし、発光側のセンサと、受光側のセンサとを協働させることで、不正な発光センサを備えたスキミング装置を検出することも可能となる。例えば、発光側のセンサは、予め定められた周期で発光を行う。制御部は、受光センサからの出力電流の遷移を監視することによって、発光センサが予め定められた正しい周期で発光しているか否かを検出することができる。この予め定められた周期は、ATM内部に保存され、任意に設定可能とすることが好ましい。
【0064】
E6.変形例6:
上記実施例では、ATM10の構成について説明した。しかし、上記実施例で示した態様は、あくまでATMの構成の一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様を採用することができる。例えば、各部を構成する部材の形状等を変更しても良いし、上述しない機能(例えば、音声案内部等)を備えるものとしても良い。
【0065】
例えば、突出部の形状を、より複雑な形状へ変更することで、スキミング装置の取り付けをより困難とすることができる。さらに、突出部の材質を工夫することで、突出部表面に対するスキミング装置の取り付けを困難とすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
10…現金自動取引装置(ATM)
300…顧客操作部
400…明細票印字機構
500…通帳取扱機構
600…カード取扱機構
600a〜c…カード取扱機構
610…カード挿入部
610c…カード挿入部
620…前面壁部
620c…前面壁部
630…上面部
640…右側壁部
650…底面部
660…左側壁部
670…突出部
670c…突出部
671…突出部上面
671b…突出部上面
672…突出部側面
673…突出部底面
673a…突出部底面
675…突出部内側側面
680…挿入口
690…読取部
691…カード口センサ
692…下部ローラ
693…上部ローラ
694…磁気ヘッド
700…紙幣入出金機構
800…硬貨入出金機構
900…ポケット
910…前面パネル
911…取扱可否ランプ
920…操作テーブル
921…顧客検知センサ
SA…スキミング装置
CD…カード
MS…磁気ストライプ
CIS…対角受光センサ
PIS…垂直受光センサ
HIS…水平受光センサ
COS…対角発光センサ
POS…垂直発光センサ
HOS…水平発光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体受付装置であって、
情報を記録した記録媒体の挿入を受け付ける略長方形状の挿入口を備える記録媒体挿入部と、
挿入された前記記録媒体の情報記録部に記憶された情報を読み取るためのヘッドを有する読取部と、
を備え、
前記記録媒体挿入部には、前記挿入口の長手方向の少なくとも一部の範囲、かつ、前記ヘッドと対応する位置に、前記記録媒体の挿入を案内するための突出部が形成されている、記録媒体受付装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記挿入口に挿入された前記記録媒体を前記ヘッドに向かって搬送する搬送ローラを備え、
前記挿入口に対する前記突出部の突出量は、前記挿入口に挿入された前記記録媒体の先端が前記搬送ローラに接触した状態における、前記挿入口からの前記記録媒体の突出量以上である、記録媒体受付装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の先端付近に取り付けられた異物を検知するために、前記突出部の先端よりも外側、かつ、前記挿入口の長手方向を監視する第1のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の表面に取り付けられた異物を検知するために、前記磁気ヘッドと対応する位置、かつ、前記挿入口の短手方向を監視する第2のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【請求項5】
請求項4記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は中空状に形成され、かつ、前記突出部のうちの前記磁気ヘッドと対応する位置であって、前記挿入口と対向する側の面の少なくとも一部分は特定周波数の光のみを通過する材料で形成され、
前記第2のセンサは、前記突出部内に形成された空間に配置されている、記録媒体受付装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記挿入口は、前記記録媒体受付装置の前面に対して窪んだ面である挿入口形成面に形成され、
前記挿入口形成面のうち、前記挿入口の長手方向の両端部から前記記録媒体受付装置の前面に向かって延伸する面の少なくとも一方には、前記第1のセンサが設けられ、
前記挿入口形成面のうち、前記挿入口の短手方向の上端部から前記記録媒体受付装置の前面に向かって延伸する面と、前記突出部との少なくとも一方には、前記第2のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、さらに、
前記突出部の側面に取り付けられた異物を検知するために、前記突出部の一側面を監視する第3のセンサが設けられている、記録媒体受付装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は、前記突出部の一部が前記記録媒体と接触するように形成されている、記録媒体受付装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項記載の記録媒体受付装置であって、
前記突出部は、湾曲した形状である、記録媒体受付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−232862(P2011−232862A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100914(P2010−100914)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】