説明

記録媒体搬送装置及び印刷装置

【課題】駆動装置がロール紙をいずれの方向で回転させたとしても、支持軸歯車と噛合する歯車が支持軸歯車から離間することを防止できる記録媒体搬送装置及び印刷装置を提供すること。
【解決手段】本発明の記録媒体搬送装置5は、ロール状に巻回された記録媒体Pを支持する支持軸13と、支持軸13に固定された支持軸歯車14と、駆動装置51により駆動される駆動歯車52cと、駆動歯車52cと噛み合う第1歯車53bと該第1歯車53bと輪列構造をとる第2歯車53cとを有し第1歯車53bの回転軸53eを支点として一体的に揺動可能に設けられた可動歯車列53と、第2歯車53cが支持軸歯車14と噛み合う方向に可動歯車列53を付勢する付勢部材54と、を備えるという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置、及び該記録媒体搬送装置を備え上記記録媒体に文字や画像等の情報を印刷する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上にインクを吐出して文字や画像等の情報を印刷する印刷装置が用いられている。また、JIS規格におけるA1等の大判の記録紙に印刷する大型の印刷装置、いわゆるラージフォーマットプリンター(LFP、以下単にプリンターと称する)が使用されている。このようなプリンターでは、大判の記録紙をロール状に巻回したロール紙が用いられる。ロール紙の中心部にはロール紙を支持する支持軸が設けられ、プリンターにはロール紙の支持軸を軸支する軸受が設けられている。ロール紙は支持軸を介してプリンターの軸受に回転自在及び着脱自在に設置されている。
【0003】
プリンターには、ロール紙を回転させるための駆動装置が設けられている。また、支持軸の外周面には、支持軸に対して駆動装置からの回転の駆動力を伝えるための支持軸歯車が形成されている。そして、駆動装置と支持軸歯車との間には、輪列構造をとる複数の歯車が設置されている。駆動装置の駆動力は上記複数の歯車を介して支持軸歯車に伝達され、支持軸及びロール紙を回転させる。すなわち、駆動装置の駆動によって、ロール紙を回転させ、ロール状に巻回された記録紙をプリンターの印刷部に搬送することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−254826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したプリンターでは、ロール状に巻回された記録紙を搬送し終えると、ロール紙を新しいものに交換する。この交換時には、支持軸歯車と噛合している歯車を、支持軸歯車から一時的に離間させる必要がある。ここで、上記歯車を支持軸歯車から離間させるための一構造として、上記歯車を含む複数の歯車を有し揺動可能に設けられた可動歯車列が挙げられる。このような可動歯車列を支持軸歯車と駆動装置との間に介在させることで、駆動装置の駆動力を支持軸歯車に伝達すると共に、可動歯車列を支持軸歯車から離間するように揺動させることで、支持軸歯車と噛合している歯車を支持軸歯車から離間させることができた。
【0006】
ここで、所定の回転方向で支持軸歯車を回転させるときに、支持軸歯車と噛合している歯車に対して、支持軸歯車を回転させる力の反力として支持軸歯車から離間させる方向での力が生じる場合がある。そのため、上記歯車が支持軸歯車から離間してしまい、支持軸歯車に対して駆動装置の駆動力を伝達できなくなる虞があった。結果として、ロール紙を回転させることによる、記録紙の印刷部への安定した搬送動作が維持できなくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、駆動装置がロール紙をいずれの方向で回転させたとしても、支持軸歯車と噛合する歯車が支持軸歯車から離間することを防止できる記録媒体搬送装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の記録媒体搬送装置は、ロール状に巻回された記録媒体を支持する支持軸と、支持軸に固定された支持軸歯車と、駆動装置により駆動される駆動歯車と、駆動歯車と噛み合う第1歯車と該第1歯車と輪列構造をとる第2歯車とを有し第1歯車の回転軸を支点として一体的に揺動可能に設けられた可動歯車列と、第2歯車が支持軸歯車と噛み合う方向に可動歯車列を付勢する付勢部材と、を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、支持軸歯車の回転に伴い、第2歯車に対して支持軸歯車から離間する方向での力が加えられた場合であっても、第2歯車が支持軸歯車と噛み合う方向に付勢部材が可動歯車列を付勢していることから、第2歯車の支持軸歯車からの離間が生じない。
【0009】
また、本発明の記録媒体搬送装置は、付勢部材が第2歯車を挟んで支持軸歯車の逆側に設けられているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、第2歯車を挟んで支持軸歯車の逆側に付勢部材が設けられているために、付勢部材が邪魔になることなく記録媒体及び支持軸等を交換することが可能となる。
【0010】
また、本発明の記録媒体搬送装置は、付勢部材が支持軸歯車の中心と第2歯車の中心とを結ぶ直線に沿う方向で可動歯車列を付勢するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、付勢部材の付勢力を効率よく可動歯車列に伝えることが可能となる。
【0011】
また、本発明の記録媒体搬送装置は、付勢部材が圧縮バネであるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、圧縮バネはその外形を小さく構成することができ、記録媒体搬送装置内の限られたスペースを有効に活用することが可能となる。
【0012】
また、本発明の印刷装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置を備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、支持軸歯車の回転に伴い、第2歯車に対して支持軸歯車から離間する方向での力が加えられた場合であっても、第2歯車が支持軸歯車と噛み合う方向に付勢部材が可動歯車列を付勢していることから、第2歯車の支持軸歯車からの離間が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターIJの全体構成を示す斜視図である。
【図2】プリンターIJの内部構成を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線視断面図である。
【図4】搬送部5の動作を示す概略図である。
【図5】ロール紙11の交換時における搬送部5の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の記録媒体搬送装置及び印刷装置に係る実施の形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下の説明では、印刷装置として、インクを記録媒体である記録紙等に噴射し、文字や画像等の情報を印刷するインクジェット方式のプリンター(以下、単に「プリンター」と称する)の例を示す。

【0015】
まず、本実施形態に係るプリンターの全体構成を図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンターIJの全体構成を示す斜視図である。
図1に示すように、プリンター(印刷装置)IJは、例えばJIS規格のA1やB1等の大判の記録紙(記録媒体)Pに情報を印刷するラージフォーマットプリンター(LFP)である。プリンターIJは、給紙部1と、印刷部2と、排紙部3とを有している。
【0016】
給紙部1は、印刷部2に対して記録紙Pを供給する箇所であって、プリンターIJの上段部分に設けられている。給紙部1は、その内部にロール紙11を備えている。
ロール紙11は、記録媒体である記録紙Pをロール状に巻回したものであって、全体として略円柱状の外観を有し、給紙部1の内部に回転自在且つ着脱自在に設置されている。ロール紙11が所定の回転方向で回転することで、記録紙Pを印刷部2に搬送することができる。ロール紙11を回転させるために、給紙部1には搬送部5(図3参照)が設けられている。なお、搬送部5の詳細は後述する。
また、給紙部1には、ロール紙11への塵埃の付着を防止するためのカバー12が、開閉自在に設けられている。
【0017】
印刷部2は、給紙部1から搬送された記録紙Pに対して文字や画像等の情報を印刷する箇所であって、プリンターIJの中段部分に設けられている。印刷部2の内部には、記録紙Pに対してインクを噴射する印刷ヘッド23(後述、図2参照)が設けられている。
排紙部3は、印刷が完了し印刷部2から排出された記録紙Pを保持する箇所であって、プリンターIJの下段部分に設けられている。排紙部3には、印刷部2から排出された記録紙Pを保持するためのスタック布31が設けられている。
【0018】
なお、プリンターIJは、鉛直方向で立設される略板状の一対のフレーム4を有している。フレーム4は、プリンターIJの両脇側にそれぞれ設置され、互いに対向して設けられている。給紙部1及び印刷部2は、一対のフレーム4によって支持されている。
【0019】
次に、プリンターIJの内部構成を図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るプリンターIJの内部構成を示す正面図である。
まず、給紙部1をさらに説明する。
ロール紙11の中心部には、ロール状に巻回された記録紙Pを支持する支持軸13が設けられている。支持軸13は、ロール紙11の中心軸方向で延在する棒状の部材であり、ロール紙11の両端部からそれぞれ突出している。
一対のフレーム4は、支持軸13を軸支するための軸受41をそれぞれ有している。そして、ロール紙11は支持軸13を介して、一対の軸受41に回転自在及び着脱自在に設置されている。
【0020】
次に、印刷部2をさらに説明する。
印刷部2は、ガイドロッド21と、キャリッジ22と、印刷ヘッド23とを有している。
ガイドロッド21は、水平方向で延在する棒状部材であって、一対のフレーム4に架け渡された状態で支持されている。
キャリッジ22は、印刷ヘッド23を保持すると共に、印刷ヘッド23をガイドロッド21の延在方向で移動させるためのものである。キャリッジ22は、ガイドロッド21にその延在方向で移動自在に設けられている。また、キャリッジ22には、図示しないキャリッジ駆動装置が連結されており、キャリッジ22はプリンターIJで使用される最大サイズの記録紙Pの幅方向に亘って移動可能となっている。
【0021】
印刷ヘッド23は、キャリッジ22に一体的に保持され、記録紙Pに対してインクを噴射して文字や画像等の情報を印刷するものである。印刷ヘッド23の記録紙Pに対向する部分にはノズル形成面23aが設けられ、ノズル形成面23aにはインクを吐出する複数のノズル23bが配設されている。印刷ヘッド23には図示しないインクタンクがインク供給路を介して接続されており、インクタンクから供給されたインクが複数のノズル23bから吐出され、印刷が行われる。
また、上述したようにキャリッジ22は記録紙Pの幅方向に亘って移動可能となっており、印刷ヘッド23はキャリッジ22に保持されているため、印刷ヘッド23は記録紙Pの幅方向に亘ってインクを噴射し印刷を行うことが可能となっている。
【0022】
次に、給紙部1に設けられる搬送部5の構成を、図3を参照して説明する。
図3は、搬送部5の構成を示す概略図であって、図2のA−A線視断面図である。
なお、搬送部5の構成を説明する前に、フレーム4及びロール紙11をさらに説明する。
【0023】
フレーム4に設けられた軸受41は、ロール紙11の支持軸13を回転自在に軸支するものであって、上方に向かって開いた略U字状に形成された部材である。すなわち、支持軸13は、U字の底部によって保持されると共に、上下方向で着脱できる構成となっている。
【0024】
また、フレーム4には、支持板42が設けられている。
支持板42は、折り曲げ加工が施された板状の部材であって、フレーム4の板面と対向しフレーム4との間に所定の間隔を空けた状態で、フレーム4に一体的に接続されている。支持板42は、フレーム4と共に、搬送部5の各構成要素を保持するためのものである。
【0025】
ロール紙11における支持軸13の外周面には、支持軸歯車14が形成されている。支持軸歯車14は、後述する駆動モーター51の駆動力を受けて、ロール紙11を回転させるためのものである。なお、支持軸歯車14は、支持軸13の軸受41により軸支される部分よりも端面側に形成されている。
【0026】
次に、搬送部(記録媒体搬送装置)5の構成を説明する。
搬送部5は、ロール紙11を回転させることで、ロール状に巻回された記録紙Pを印刷部2に向けて搬送するためのものである。搬送部5は、駆動モーター(駆動装置)51と、固定歯車列52と、可動歯車列53と、圧縮バネ(付勢部材)54と、上述した支持軸13と、支持軸歯車14とを有している。
【0027】
駆動モーター51は、ロール紙11を回転させるための回転の駆動力を発生する駆動装置である。駆動モーター51は、正逆転いずれの方向でも回転可能に構成されている。駆動モーター51の回転軸(図示せず)には、固定歯車列に駆動力を伝達するためのピニオンギア51aが一体的に接続されている。なお、ピニオンギア51aはフレーム4と支持板42との間に設けられ、駆動モーター51は支持板42のフレーム4とは逆側に設置されている。
【0028】
固定歯車列52は、駆動モーター51の駆動力を可動歯車列53に伝達するものであって、第1固定歯車52aと、第2固定歯車52bと、第3固定歯車(駆動歯車)52cとを有している。固定歯車52a、52b及び52cは、所定の方向で並び互いに噛合する輪列構造をとり、フレーム4と支持板42との間にそれぞれ回転自在に設けられている。第1固定歯車52aは、ピニオンギア51aと噛合して設けられている。
【0029】
可動歯車列53は、固定歯車列52から伝達された回転の駆動力を支持軸歯車14に伝達して、支持軸歯車14さらにはロール紙11を回転させるものである。可動歯車列53は、ホルダー53aと、第1可動歯車(第1歯車)53bと、第2可動歯車(第2歯車)53cと、第3可動歯車53dとを有している。第1可動歯車53b、第3可動歯車53d及び第2可動歯車53cは、所定の方向で並び互いに噛合する輪列構造をとっている。
【0030】
ホルダー53aは一対の板部材が互いに対向して保持された構成となっており、ホルダー53aにおける一対の板部材の間には、可動歯車53b、53c及び53dがそれぞれ回転自在に設けられている。また、ホルダー53aはフレーム4と支持板42との間に設置され、第1可動歯車53bの回転軸53eを支点として支持されている。すなわち、ホルダー53aは、回転軸53e周りに揺動可能となっている。
【0031】
第1可動歯車53bは、回転軸53eに回転自在に軸支される歯車である。回転軸53eは、フレーム4と支持板42とに架け渡されて設けられている。また、第1可動歯車53bは、ホルダー53aの支持軸歯車14とは逆側の端部に設けられ、固定歯車列52の第3固定歯車52cと噛合している。
第2可動歯車53cは、ホルダー53aに回転自在に軸支される歯車である。また、第2可動歯車53cは、ホルダー53aの支持軸歯車14側の端部に設けられ、支持軸歯車14と噛合できる構成となっている。
第3可動歯車53dは、ホルダー53aに回転自在に軸支され、第1可動歯車53bと第2可動歯車53cとの間でそれぞれと噛合して設けられる歯車である。
【0032】
圧縮バネ54は、可動歯車列53を所定の方向で付勢するための部材であって、可動歯車列53と支持板42の支持面42aとの間に設けられている。支持面42aは支持板42の一部分であって、ホルダー53aと対向する向きで設けられている。より詳細には、支持面42aは、支持軸13の支持軸中心13aと、第2可動歯車53cの歯車中心53fとを結ぶ直線Lと略直交する向きで設けられている。
なお、圧縮バネ54はその外形を小さく構成することができることから、搬送部5内の限られたスペースを有効に活用することが可能となる。
【0033】
圧縮バネ54は、第2可動歯車53cを挟んで支持軸歯車14の逆側に設けられている。より詳細には、圧縮バネ54は、上述した直線Lと平行する向きで可動歯車列53と支持面42aとの間に設けられ、圧縮バネ54はホルダー53aを付勢する構成となっている。すなわち、圧縮バネ54の付勢力を効率よく可動歯車列53に伝えることができる。
また、圧縮バネ54は、第2可動歯車53cが支持軸歯車14と噛合している状態において、圧縮された状態で設置されている。よって、圧縮バネ54は、第2可動歯車53cが支持軸歯車14に噛み合う方向で、ホルダー53aすなわち可動歯車列53を付勢できる構成となっている。
【0034】
上述したように、駆動モーター51と支持軸歯車14との間には、ピニオンギア51a、固定歯車列52及び可動歯車列53が、輪列構造をとった状態で設けられているため、駆動モーター51の回転駆動力によってロール紙11を回転させることが可能となっている。
【0035】
続いて、本実施形態に係る搬送部5の動作を、図4を参照して説明する。なお、以下の説明では圧縮バネ54が、第2可動歯車53cの支持軸歯車14からの離間を防止する作用を中心に説明する。
図4は、搬送部5の動作を示す概略図である。
駆動モーター51の駆動によって固定歯車列52における各歯車が回転し、第3固定歯車52cが回転する(以上の要素は図4では図示せず)。第3固定歯車52cの回転により可動歯車列53の各歯車が回転し、第2可動歯車53cの回転により支持軸歯車14が矢印Rの方向で回転する。支持軸歯車14を回転させることにより、支持軸13及びロール紙11を回転させることができる。矢印Rの方向でロール紙11が回転することで、ロール状に巻回された記録紙Pが回転と共に送り出され、記録紙Pを印刷部2に対して搬送することができる。なお、駆動モーター51は、ロール紙11を矢印Rとは逆の方向で回転させることもでき、この逆方向の回転は、例えば記録紙Pに生じた撓み等を伸ばして解消するときに実施される。
【0036】
第2可動歯車53cが支持軸歯車14を矢印Rの方向で回転させるとき、第2可動歯車53cは、支持軸歯車14から反力を受ける。この反力は、第2可動歯車53cと支持軸歯車14との噛合点Cにおいて発生する。
ここで、第2可動歯車53cの歯部は、所定の角度をもって支持軸歯車14の歯部と当接するために、その反力の作用する方向は、第2可動歯車53cと支持軸歯車14とのいずれに対しても接線方向となる接線Lから、所定の角度αだけ第2可動歯車53c側にずれた方向となり、図4において矢印Fによって示す方向となる(以下、反力Fと記載する)。なお、角度αの例としては、例えば20°が挙げられる。
【0037】
反力Fのうち直線Lと平行する方向での力をFとすると、Fは、F=F・sinαで表される。すなわち、第2可動歯車53cが支持軸歯車14を矢印Rの方向で回転させると、支持軸歯車14から離間する方向での力Fを受ける(以下、離間力Fと記載する)。この離間力Fが、第2可動歯車53cを支持軸歯車14から離間させ、搬送部5による記録紙Pの安定した搬送を妨げる原因となっていた。
【0038】
もっとも、本実施形態においては、可動歯車列53と支持面42aとの間に圧縮バネ54が圧縮された状態で設けられていることから、圧縮バネ54は、第2可動歯車53cが支持軸歯車14と噛み合う方向で可動歯車列53を付勢する付勢力Fを、可動歯車列53に対して与えることができる。さらに、付勢力Fが想定される離間力Fに安全係数(例えば1.5)を掛けた値となるように、圧縮バネ54のバネ定数及び自然長等が設計されているため、付勢力Fは十分に離間力Fに打ち勝つことができ、第2可動歯車53cの支持軸歯車14からの離間を防止することができる。結果として、搬送部5によるロール紙11の回転、及び記録紙Pの印刷部2に対する安定な搬送を維持できる。
【0039】
次に、ロール紙11を交換する動作を、図5を参照して説明する。
図5は、ロール紙11の交換時における搬送部5の動作を示す概略図である。
ロール状に巻回された記録紙Pを搬送し終えたときには、新しいロール紙11と交換する。このとき、支持軸13を軸受41から上方に向かって離脱させる必要があることから、支持軸歯車14と噛合する第2可動歯車53cを、支持軸歯車14から離間させる。
【0040】
より具体的には、可動歯車列53におけるホルダー53aの上部を支持面42aに接近させる方向(図5における紙面右方向)に付勢する。ここで、可動歯車列53と支持面42aとの間には圧縮バネ54が設けられているため、圧縮バネ54の付勢力よりも大きな力でホルダー53aの上部を付勢すれば、圧縮バネ54は圧縮され、可動歯車列53は第1可動歯車53bの回転軸53eを支点として揺動する。よって、第2可動歯車53cを支持軸歯車14から離間させることができる。この状態で、ロール紙11を上方に移動させて、古いロール紙11を給紙部1から取り外す。
【0041】
次に、ホルダー53aの上部を支持面42a側に移動させたまま、新しいロール紙11を給紙部1に設置する。新しいロール紙11の支持軸13は、軸受41によって回転自在に軸支される。なお、圧縮バネ54は、第2可動歯車53cを挟んで支持軸歯車14の逆側に設けられていることから、圧縮バネ54が邪魔になることなくロール紙11を交換することができる。
最後に、可動歯車列53を支持軸歯車14側に戻し、第2可動歯車53cを支持軸歯車14と噛合させる。
以上で、ロール紙11の交換が完了する。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、駆動モーター51がロール紙11をいずれの方向で回転させたとしても、可動歯車列53における第2可動歯車53cの支持軸歯車14からの離間を防止でき、記録紙Pの印刷部2に対する安定した搬送を維持できるという効果がある。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、可動歯車列53を付勢する部材として圧縮バネ54が用いられているが、これに限定されるものではなく、板バネや、第1可動歯車53bの回転軸53eの外周面に設けられるつる巻バネ等であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、可動歯車列53における可動歯車として、合計3つの可動歯車が設けられているが、これに限定されるものではなく、少なくとも2つの可動歯車が設けられていればよく、一方が第3固定歯車52cに噛合し、他方が支持軸歯車14に噛合する構成となっていればよい。
【符号の説明】
【0046】
1…プリンター(印刷装置)、13…支持軸、14…支持軸歯車、5…搬送部(記録媒体搬送装置)、51…駆動モーター(駆動装置)、52c…第3固定歯車(駆動歯車)、53…可動歯車列、53b…第1可動歯車(第1歯車)、53c…第2可動歯車(第2歯車)、53e…回転軸、54…圧縮バネ(付勢部材)、P…記録紙(記録媒体)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された記録媒体を支持する支持軸と、
前記支持軸に固定された支持軸歯車と、
駆動装置により駆動される駆動歯車と、
前記駆動歯車と噛み合う第1歯車と、前記第1歯車と輪列構造をとる第2歯車とを有し、前記第1歯車の回転軸を支点として一体的に揺動可能に設けられた可動歯車列と、
前記第2歯車が前記支持軸歯車と噛み合う方向に前記可動歯車列を付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体搬送装置において、
前記付勢部材は、前記第2歯車を挟んで前記支持軸歯車の逆側に設けられていることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記録媒体搬送装置において、
前記付勢部材は、前記支持軸歯車の中心と前記第2歯車の中心とを結ぶ直線に沿う方向で前記可動歯車列を付勢することを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置において、
前記付勢部材は、圧縮バネであることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置を備えることを特徴とする印刷装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−79646(P2011−79646A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234285(P2009−234285)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】