説明

記録媒体

【課題】磁性材を含有しているにも拘わらず、画像を記録するための画像形成装置に適用可能で且つ画質劣化を抑制可能な記録媒体を提供する。
【解決手段】内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲であることを特徴とする記録媒体である。更に、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上であることが好ましい。更に好ましくは、少なくとも大バルクハウゼン効果を起こすこと、また、填料を記録媒体本体の固形分に対して10質量%以下であることが好ましい。本発明によって、磁性材を含有しているにも拘わらず、電子写真方式を用いた画像形成装置に適用可能で、且つ画質劣化を抑制可能な記録媒体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体に係り、画像形成装置に用いられる記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報流出を防ぐため個人情報保護、プライバシーマーク制度、情報セキュリティ等の法律が整備されてきている。しかしながら、記録用紙の持ち運び性や収納性等の利便性から、記録用紙に印字された個人情報や機密情報等の情報流出は完全に抑えられていないのが現状である。このため、記録用紙の利便性を損なわず、且つ記録用紙に記録された機密情報の流出や偽造を防止することが急務となっている。
【0003】
このような課題に対応するため、様々な提案がなされている。
例えば、記録用紙に予め固有の識別番号を記録し、プリンタ等の画像形成装置において画像を記録用紙に印刷する過程において、記録用紙毎の固有の識別番号を読み取ることで、文書の機密性の保持や原本であるか否かを判別する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術によれば、記録用紙に記録する識別番号に対応付けて複写可否情報を予めデータベースに記録し、複写機が記録用紙毎の固有の識別番号を読み取ったときに、読み取った識別情報に対応する複写可否情報に基づいて記録用紙への複写可否を判断している。また、特許文献1の技術では、記録用紙に固有の識別番号を記録する手段として、バーコードや無線式データキャリアを利用しており、特に、2次元バーコードや半導体で製作される無線式データキャリアを用いた場合が、識別番号を付与する形態を小さくすることができるために好適であるとされている。
【0005】
しかしながら特許文献1の技術では、記録用紙上への画像や文字の記録が可能な領域が、識別情報の付与により狭められることを抑制するために、記録用紙上の狭い一部の領域に識別番号を付与していることから、識別番号のすり替えなどが容易であるという問題がある。
【0006】
記録用紙毎の識別番号の改ざんが困難な技術としては、例えば、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に示す技術が公開されている。特許文献2の技術では、記録用紙毎の識別情報として、特定のB−H磁化特性を有するアモルファス強磁性材料よりなる安全線条を記録用紙内に埋め込んでいる。このように、記録用紙内に、識別番号として安全線条を埋め込み、この安全線条による信号を識別情報として読み取るので、識別番号の容易な改ざんを防ぐことが可能となる。
【0007】
特許文献3及び特許文献4の技術では、大バルクハウゼン効果や磁歪振動するような特性を有する磁性材を用紙内に漉きこむことにより、識別情報を用紙に付加している。このように、用紙内に識別情報として磁性材を漉きこむので、識別番号の容易な改ざんを防ぐことが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−265183号公報
【特許文献2】特開平7−32778号公報
【特許文献3】特開2005―213654号公報
【特許文献4】特開2004―285524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2から特許文献4の技術では、記録用紙内に安全線条や磁性材を埋め込むことで、識別番号の容易な改ざんを防止することは可能であるものの、一般的に用いられている電子写真方式の画像形成装置において該記録用紙を用いた場合、安全線条等の磁性材が含有された記録用紙では、磁性材が記録用紙を構成するパルプ等の繊維により記録媒体が形成されるときの水素結合形成を阻害することから、画像形成装置内において搬送時に加えられる外部応力や転写電界等により、記録媒体本体から欠落しやすいという問題があった。このように、画像形成装置内において、記録媒体中に埋め込まれている安全線条等の磁性材が記録媒体から欠落されると、画像形成装置内を汚染し、画質劣化を引き起こす可能性があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、磁性材を含有しているにも拘わらず、画像を記録するための画像形成装置に適用可能で且つ画質劣化を抑制可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、磁性材を含有しているにも拘わらず、画像形成装置に適用可能で且つ画質劣化を抑制可能な記録媒体について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の記録媒体は、
<1>内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲であることを特徴とする。
【0013】
<2>本発明の記録媒体は、上記<1>に記載の記録媒体において、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上であることが好ましい。
【0014】
<3>本発明の記録媒体は、上記<1>または上記<2>に記載の記録媒体において、前記磁性材が、少なくとも大バルクハウゼン効果を起こすことが好ましい。
【0015】
<4>本発明の記録媒体は、上記<1>から上記<4>に記載の記録媒体において、填料を、記録媒体本体の固形分に対して10質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の記録媒体によれば、内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲内であるため、磁性材を含有しているにも拘わらず、電子写真方式を用いた画像形成装置に適用可能で且つ画質劣化を抑制可能な記録媒体を提供することができる、と言う効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明の記録媒体を、画像を形成するための記録媒体として用いることが可能な画像形成装置として、電子写真方式を用いた画像形成装置の一例を説明する。なお、本発明の記録媒体を適用可能な画像形成装置は、電子写真方式を用いた画像形成装置に限られるものではなく、インクジェット記録装置等のインクジェット方式を利用した画像形成装置であってもよい。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置10は、所定方向に回転され静電潜像が形成される像担持体12を備えている。像担持体12の近傍には、像担持体12の回転方向に沿って、帯電装置14、露光装置16、現像装置18、転写装置22、クリーニング装置24、及び定着装置26が設けられている。また、画像形成装置10は、画像形成装置10に含まれる各種デバイスを制御するための制御部(図示省略)を含んで構成されている。
【0019】
帯電装置14は、像担持体12表面を均一に帯電する。露光装置16は、図示を省略する外部装置から有線または無線通信により図示を省略する入出力部を介して入力された画像データに応じて変調したレーザ光を像担持体12上に走査露光することによって像担持体12上に静電潜像を形成する。現像装置18は、像担持体12上に形成された静電潜像をトナーによって現像することで、像担持体12上にトナー像を形成する。転写装置22は、像担持体12との間で記録媒体20を挟持搬送すると共に、図示を省略する電源により転写電圧が印加されることで、像担持体12上に形成されたトナー像を記録媒体20に転写する。クリーニング装置24は、像担持体12上の残留トナーを除去する。定着装置26は、記録媒体20上に転写されたトナー像を記録媒体20上に定着させる。
なお、定着装置26は、オイルレス定着により施されることが好ましい。
【0020】
定着装置26は、記録媒体20を加圧挟持すると共に定着ロール27を含んで構成されており、オイルレス定着とは、定着に際して、定着ロール27表面にオイル等の離型剤を含まない状態で定着する定着方法である。すなわち、定着ロール27表面に離型剤を供給するための供給装置を含まない定着装置26によって達成される。
【0021】
本実施の形態で用いられるトナーとしては、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等が主に用いられる。トナーの生成方法については、粉砕法、重合法などどのような方法を用いても構わない。
【0022】
画像形成装置10の像担持体12は、帯電装置14によって表面を一様に帯電された後に、露光装置16によってレーザ光を走査露光される。像担持体12表面には、レーザ光の走査露光により静電潜像が形成される。像担持体12上に形成された静電潜像は、像担持体12の回転によって現像装置18の設置位置に対向する領域に達すると、現像装置18によって現像される。現像装置18による現像によって、像担持体12上には、静電潜像に応じたトナー像が形成される(以下、現像工程と称する)。
【0023】
記録媒体20は、図示を省略する記録媒体貯留部から画像形成装置20内の搬送経路(図示省略)へと、図示を省略する各種搬送ロール等の搬送装置によって供給され、像担持体12と転写装置22とによって挟持される領域まで搬送される。像担持体12のトナー像の形成領域が、像担持体12と転写装置22とが対向配置された領域に達すると共に、像担持体12と転写装置22とによって記録媒体20が挟持搬送されることで、像担持体12上のトナー像は記録媒体20に転写される。
【0024】
この記録媒体20への転写は、図示を省略する電源によって転写ロール等の転写装置22に電圧が印加されることにより行われる。転写装置22に電圧が印加されることで、像担持体12上に形成されたトナー像を構成する各トナーが記録媒体20の方向へと移動するような電界が、像担持体12と転写装置22との間に形成され、像担持体12上のトナー像は記録媒体20へと転写される(以下、転写工程と称する)。
【0025】
記録媒体20に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって記録媒体20上に定着(以下、定着工程と称する)され、記録媒体20に画像が形成される。画像形成された記録媒体20は、図示を省略した排出ロールによって画像形成装置10の外部へと排出される。
【0026】
このような記録媒体に画像を形成するための、電子写真方式やインクジェット方式等の画像形成装置10で使用可能な記録媒体20としての、本発明の記録媒体は、内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲であることを特徴としている。
また、本発明の記録媒体20は、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上であることを特徴としている。
【0027】
磁性材が含有された記録媒体では、記録媒体を構成する主成分であるパルプ繊維等の材料(詳細後述)による層を形成するときに形成される水素結合形成が、磁性材によって阻害されるという問題がある。このため、このような磁性材が含有された記録媒体を、画像形成装置10における記録媒体20として用いると、画像形成装置10内において搬送されるときに記録媒体に加わる外部応力や記録媒体に加わる電界等により、記録媒体から磁性材が欠落し、画像形成装置10内に設けられた各種部品の摩耗や破損等を引き起こし、画質劣化を引き起こすという問題がある。
【0028】
また、電子写真方式を用いた上記画像形成装置10において用いた場合には、上記像担持体12から記録媒体20へのトナー像の転写時に、像担持体12と転写装置22との間に形成される電界によりリークが発生し、画像欠陥を引き起こすという問題がある。
【0029】
しかし、本発明の記録媒体では、内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲とされているので、外部応力や形成された電界等によって記録媒体から磁性材が欠落されることを抑制することができる。
【0030】
本発明の記録媒体のテーバー摩耗量は、上述のように10mg以下の範囲内であることが必須であるが、8mg以下の範囲内であることが更に好ましい。
記録媒体表面のテーバー摩耗量が小さいほど、記録媒体からの磁性材の欠落を抑制することができる。
記録媒体のテーバー摩耗量が10mgより多いと、磁性材の脱落と言う問題がある。
【0031】
ここで、本発明におけるテーバー摩耗量は、JIS P 8111に準じて調湿した本発明の記録媒体を(株)東洋精機製作所製のテーバーロータリーアブレーションテスターを用いて、外径50mmの摩耗輪CS―10により、摩耗回転速度を60rpm、試験荷重を2.45N(250gf)、摩耗回転数を50回転、測定環境を23℃、50%RHとして測定した。
【0032】
図2に、上記テーバー摩耗量の測定を行っている状態の一例を示した。図2(a)は平面状(円形)の試料が回転する状態を回転面と垂直方向から見た図、図2(b)は前記回転面と平行方向から見た図である。
ターンテーブル100の表面に固定された測定試料110には、2つの摩耗輪120が錘122により荷重された状態で当接しており、測定試料110がスピンンドル130に支持されたターンテーブル100の回転に伴って回転することにより、摩耗輪120が従動回転して測定試料110の摩耗輪120との当接部分が徐々に摩耗していくこととなる。
本発明におけるテーバー摩耗量は、本発明の記録媒体を、上記測定試料110として前記摩耗前後の質量を測定することにより求めた。
【0033】
前記のように、記録媒体から磁性材が欠落されることを抑制するためには、上記テーバー摩耗量で規定されるように、記録媒体の摩擦力に対する強度が重要な要因となる。しかし、記録媒体表面の強度が強いだけで、記録媒体内部の強度が弱いと、特に磁性材を含有している領域が、摩擦力や外部応力に耐えられなくなり、記録媒体に含有されている磁性材が欠落する可能性がある。
【0034】
本発明の記録媒体20では、上述のように、更に、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上となるように調製することにより、記録媒体に含有されている磁性材の欠落をさらに防止することができる。
【0035】
本発明の記録媒体20の内部結合強度は、上述のように、0.1N・m以上であることが好ましいが、0.15N・m以上であることが更に好ましい。
なお、内部結合強度の上限値としては、例えば、2N・m以下であることが好ましい。
記録媒体の内部結合強度が0.1N・m未満であると、磁性材の脱落により画像欠陥が発生すると言う問題がある。
【0036】
このように、本発明の内部に磁性材を含有する記録媒体では、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲であり、さらに、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上とすることができることから、一般的に導電性が高く、後述する基材材料と比べて高強度な無機材料である磁性材を含有する記録媒体であっても、記録媒体からの欠落を抑制することができ、上記搬送装置や、転写装置、クリーニング装置、及び定着装置等の磁性材による摩耗を抑制することができる。このため、画質劣化を抑制することができる。
【0037】
次に、本発明の記録媒体20の構成についてより詳細に説明する。
本発明の記録媒体20は、基材材料を少なくとも含み、用途に応じて磁性材(以下、「磁性材料」とも言う。)を含むシート状の基材を含んで構成されている。このため、記録媒体20は、内部に磁性材を含んだ構成となっている。
【0038】
本発明の記録媒体の内部に含有される磁性材料は、大バルクハウゼン効果を起こすことを特徴とする。
ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明する。図3は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図3(a)に示すようなB−H特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性材料を置くと、磁化反転時に、磁性材料の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。
【0039】
例えば、励磁コイルにより図3(b)の上段に示すような交番磁界を発生させた場合、発生された交番磁界内に記録媒体が配置されると、検知コイルには、図3(b)の下段に示すようなパルス電流が流れることとなる。
【0040】
本発明の記録媒体の内部に含有される磁性材料としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)-鉄(Fe)-ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)-コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)-ニッケル(Ni)-コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等があるが、上記大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料としては、基本組成がFe-Co-SiやCo−FeNi系であるアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0041】
磁性材料の形状としては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすには、断面積に対して所定の長さが必要となってくることから、線状(ワイヤ状)や帯状であることが好ましく、ワイヤー状であることがより好ましい。
【0042】
磁性材料がワイヤー状である場合には、上述のように、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小直径として10μm以上であることが好ましい。また、最大直径としては特に限定はされないが、記録媒体表面に磁性材料が露出することを抑制するために、その直径は記録媒体の厚みに依存し、例えば90μm前後の厚さの用紙の場合には、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0043】
また、長さとしては、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小長さとしての5mm以上が好ましい。アモルファス磁性材料の最大長については、内部に含有されたときに、記録媒体から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされないが、430mm以下であることが好ましい。
【0044】
上記基材材料とは、本発明の記録媒体の基材を構成する主材料を意味し、電子写真方式やインクジェット方式等の画像を記録媒体に記録する画像形成装置に適した厚み等を有するシート状に加工可能であるものであれば特に限定されない。
【0045】
例えば、本発明の記録媒体が紙基材よりなる場合には、紙基材を構成する主材料としては、パルプ繊維が挙げられる。
【0046】
上記パルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプ繊維、サルファイトパルプ繊維、セミケミカルパルプ繊維、ケミグラウンドパルプ繊維、砕木パルプ繊維、リファイナーグラウンドパルプ繊維、サーモメカニカルパルプ繊維等を使用することが好ましい。また、これらの繊維中のセルロースあるいはヘミセルロースを化学的に修飾した繊維も必要に応じて使用することができる。
さらに、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール共重合体、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0047】
また、必要に応じて、上記パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用することでテーバー摩耗量、内部結合強度を向上させることができる。
【0048】
また、更に上記パルプ繊維に、上質系および中質系の古紙パルプを配合することもできる。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定されるが、例えば、資源保護の観点から古紙パルプを配合する場合には、紙基材に含まれる全パルプ繊維に対して10質量%以上、好ましくは30質量%以上配合することが好ましい。
【0049】
本発明の記録媒体に用いられる紙基材には、不透明度、白さ、及び表面性を調製するために、填料を添加する。
【0050】
本発明の記録媒体においては、本発明の記録媒体の内部結合強度を0.1N・m以上とするために、この填料の配合量を、紙基材の固形分(乾燥重量)に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
紙基材の固形分に対する填料の割合が10質量%より多いと、紙基材を構成する繊維等の紙基材の材料間で生成される水素結合を分断したり、紙基材を構成する繊維間の距離が大きくなりやすく、紙基材を構成する主材料同士の結合強度が低下し、記録媒体からの磁性材の欠落を招くことになる。
【0052】
この填料の配合量は、本発明の記録媒体をJIS P 8128(575℃、4時間)で規定される方法に準拠して灰化処理を行い、残留した灰化物(JIS P 8128で規定される灰分)をIPC発光分析などの方法で元素分析することにより、記録媒体の紙基材に含まれる磁性材と填料の配合量を計算することにより求めることができる。
【0053】
本発明の記録媒体に使用可能な填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、パイオロフェライト、セリサイト、タルク等の珪酸類や二酸化チタン等の無機填料、及び尿素樹脂、スチレン等の有機顔料、さらにはポリエステル系や、スチレンアクリル系などの熱可塑性樹脂粒子を挙げることができる。
【0054】
上記填料の内、熱可塑性の有機顔料は、電子写真方式の画像形成装置において本発明の記録媒体を用いたときに、記録媒体上に形成されたトナー像を、定着させるときの記録媒体に加えられる熱により、紙基材を構成する材料間を融着することができるので特に好ましい。
【0055】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、サイズ剤等の各種薬品を内添または外添させることができる。
紙基材に添加可能なサイズ剤の種類としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を挙げることができる。さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉などのサイズ剤と、定着剤と、を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
上記サイズ剤の内、電子写真方式の画像形成装置やインクジェット方式の画像形成装置等において、画像が形成された後の記録媒体の保存性の観点から、中性サイズ剤、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を用いることが好ましい。また、表面サイズ剤として、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体、スチレンアクリル系ラテックス、スチレンマレイン酸系ラテックス、アクリル系ラテックスなどを単独もしくは組み合わせて使用することができる。
【0057】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。
紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を適宜使用しても構わない。
【0058】
本発明の記録媒体は、上記紙基材を構成する主材料と、上記紙基材を構成するその他の材料とを混合して、これらを抄紙することによって作製した複数の紙基材の間に、上記磁性材を分散させた後に紙基材同士を貼り合わせ、更に後述する表面層を形成することで作製してもよく、また、上記紙基材を構成する主材料と、上記紙基材を構成するその他の材料と、上記磁性材と、を混合してこれらを抄紙または多層抄紙した後に、後述する表面層を形成することで作製してもよい。
【0059】
抄紙法としては特に限定するものではない。多層抄紙法または、従来知られている長網抄紙機や、円網抄紙機、ツインワイヤー方式など何れも使用できる。酸性または中性抄紙法いずれでも構わない。
【0060】
多層抄紙の方法としては、円網多筒抄紙、長網多筒、長網・円網コンビ、マルチヘッドボックス、短網・長網方式いずれの方法を用いても構わないし、例えば石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法いずれを用いても構わないし、丸網を複数連ねた丸網多筒式等を用いてもよい。
【0061】
円網多筒式により多層抄紙をすると、ワイヤー状の磁性材を記録媒体内部に配合することが可能となるため、単層抄紙である場合に比べて記録媒体へのトナー像の転写時に記録媒体に含有される磁性材料による電気抵抗値の影響を受けにくくすることができ、記録媒体の、磁性材料含有領域周辺の白抜けを改善することができる。
【0062】
なお、記録媒体の表面には、上記磁性材が露出していないことが望ましい。磁性材が記録媒体表面に露出していると、パルプ繊維等の主材料との絡み合いが乏しく外部応力や、転写電界などで、記録媒体から欠落しやすくなる。さらに、記録媒体表面に露出した磁性材の硬さのために、画像装置内に設けられた各種装置(例えば、記録媒体を搬送するための搬送装置、転写装置、及び定着装置等)の、記録媒体に接触される接触部材を含む各種装置を摩耗させたり、傷をつけることがあり好ましくない。
またさらに、転写工程において、像担持体12と転写装置22との間に形成される電界内に記録媒体が位置されたときに、リークを起こすことがある。このため、磁性材は、記録媒体の内部に存在することが望ましい。
【0063】
磁性材を記録媒体の内部に存在させる方法は、特に限定するものではなく従来知られる方法はすべて使用することができる。望ましい製造方法としては、上述のように紙基材を多層で抄紙し、最表面層を、磁性材を含まない層とし、内側の層を、磁性材を含む層とすることで、内層に磁性材を存在させるか、紙基材間の界面に磁性材を存在させることが好ましい。さらには、上記紙基材上に表面層を設けることにより、記録媒体の表面に磁性材が露出することを抑制することができる。
【0064】
ここで、本発明の記録媒体において、記録媒体表面のテーバー摩耗量として規定される記録媒体の摩擦力に対する強度を、上記規定範囲(1mg〜10mg)とするためには、特に記録媒体表面の強度が必要となる。記録媒体の表面の強度を向上させるために効果的であるのは、高分子(樹脂)などで、表面を保護する方法である。
【0065】
そこで、本発明の記録媒体においては、紙基材上に、酸化変性澱粉や酵素変性澱粉などの接着剤と、顔料と、を含むと共に、記録媒体表面のテーバー摩耗量を上記規定範囲とするためにフィルム形成能の高い材料を加えた塗布液を塗布することで表面層を形成する。
【0066】
この表面層は、記録媒体の表面を構成する層であって、紙基材間に上記磁性材を挟持した複数の紙基材の内の最表面の紙基材表面、または内部に上記磁性材を含有する紙基材の表面に、塗布液を塗布することにより形成される。
【0067】
塗布液に含まれる接着剤には、水溶性及び水分散性の何れか一方または双方の高分子化合物が用いられ、例えば、カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エ−テル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、イソプレン、ネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成高分子化合物等を用いることができる。そしてこれらの中から、単独あるいは混合して使用することができるがこれに限定されるものではない。ただし、製造コストの観点からは、より安価である澱粉を使用することが好ましい。
【0068】
塗布液に含まれる顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂並びにそれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機顔料等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上が用いられる。
【0069】
上記塗布液中の顔料に対する接着剤の配合割合は、顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲内にあることが好ましい。接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が5質量部未満では、塗布液を上記紙基材上に塗工して上記紙基材上に表面層を形成した後に、更に高光沢画像を得るために樹脂層を塗工する場合に、紙基材の表面が樹脂液によって侵されるため、良好な白紙光沢度を得ることが出来ないという問題がある。また接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が50質量部を越えると、塗布液を上記紙基材上に塗工する時に泡が発生し、顔料塗工面にザラツキを生ずるため、良好な白紙光沢度が得られないという問題がある。
【0070】
なお、上記樹脂層に用いられる樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定はなく、例えばエステル結合を有する樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂等のポリアミド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロビオン酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルブチラール等のポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂、アクリル樹脂などを例示することができる。
【0071】
塗布液に含まれる、上記フィルム形成能の高い材料としては、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル等がある。
【0072】
上記塗布液中には、更に、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、酸化防止剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、及び香料等を必要に応じて適宜添加することも可能である。
【0073】
上記表面層を形成するために、上記塗布液を上記紙基材上に塗布する方法としては一般に公知の塗被装置、例えばサイズプレス、ブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等を適宜用いることができる。
【0074】
上記塗布液は、上記塗布方法により紙基材表面に塗布されて表面層を形成することができ、片面あたりの処理量としては固形分(乾燥質量)で0.8〜3.0g/m2の範囲であることが好ましく、1.0〜3.0g/m2の範囲であることがより好ましい。
処理量が0.8g/m2に満たないと、記録媒体表面の強度が十分でなくテーバー摩耗量が上記規定範囲より大きくなってしまう場合がある。処理量が3.0g/m2より大きいと、特に高湿環境で粘着性を持ち、画像形成装置10内における紙送り不良などを発生するために好ましくない場合がある。
【0075】
表面層は、紙基材上に設けられることで、記録媒体の片面或いは両面の表面層として形成され、表面層は1層あるいは必要に応じて2層以上の中間層を設け、多層構造とすることも可能である。なお記録媒体の両面へ塗工、又は多層構造にする場合、各々の塗工層を形成するための塗布液の量が同一、且つ塗布液に含まれる上記材料の種類及び含有量が同一である必要はなく、上記規定範囲を満たす範囲内で所要の品質レベルに応じて適宜調整して配合されればよい。
【0076】
なお、カール防止の観点から、表面層は、記録媒体の両面の表面層として形成されることが好ましい。
【0077】
本発明の記録媒体は、表面層が形成された後に、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて平滑化処理するのが好ましい。また、オンマシンやオフマシンで適宜平滑化が施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に準じて適宜調節されるようにすればよい。
【0078】
一方、上記紙基材と紙基材との間に、上記磁性材を分布させる方法としては、少なくとも一方の紙基材の片面に接着層を設けた後、その接着層上に上記磁性材を単独で散布してから、もう一方の紙基材を貼り合わせる方法や、あらかじめ接着剤に上記磁性材を分散しておき、磁性材入りの接着剤を紙基材の片面上に塗工してから、もう一方の紙基材を貼り合わせる方法が挙げられる。
なお、この場合には、紙基材と紙基材との間に上記磁性材を分布させて、この紙基材同士を貼り合わせた後に、上記表面層を紙基材表面に形成することにより、記録媒体を作製すればよい。
【0079】
上記接着層に用いたれる接着剤としては、水系、溶剤系の接着剤(具体的には、澱粉、変性澱粉、PVA、カルボキシメチルセルロース、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、ゴム系、シアノアクリレート系、エマルジョン系接着剤等を用いることができ、安全性の点からポリエステル系接着剤を用いることが特に好ましい。)を塗布して設けることに加え、両面テープを用いることも出来る。但し、電子写真方式の画像形成装置に用いられたときに記録媒体に要求される電子写真特性を阻害しないという観点から、記録媒体の表面抵抗率が、1×10Ω/□〜5×1011Ω/□の範囲内となるように調製されることが好ましい。
【0080】
この表面抵抗率は、JIS―P8111に規定される前処理及び測定環境において、JIS K6911に準拠した測定を行うことにより測定される。
【0081】
表面抵抗率が上記範囲内となるように、記録媒体の電気抵抗率を調製するためには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を単独あるいは混合して、表面抵抗率が上記範囲内となるように、これらの材料の選択及び紙基材への添加量を調整すればよい。なお、これらの材料の内、硫酸ナトリウムなどの非ハロゲン系の導電剤を使用することが環境保護の観点から望ましい。
【0082】
本発明の記録媒体の坪量(JIS P−8124)は特に規定しないが、好ましくは60g/m2以上であることが望ましい。坪量が60g/m2を下回ると、記録媒体のこしが小さくなることより、電子写真方式の画像形成装置に用いられたときに、記録媒体上に転写されたトナー像を記録媒体上に定着させる定着工程における、定着装置への巻き付きや、定着装置からの剥離不良にともなう画像欠陥を発生させやすくなるという問題がある。また、同様に、坪量が60g/m2を下回ると、電子写真方式やインクジェット方式の画像形成装置に用いられたときに、記録媒体中に含有されている磁性材が表面に露出しやすい、磁性材が記録媒体から欠落、及び記録媒体表面に磁性材が視認される事による印字画像の視認性劣化、等の問題がある。
【0083】
さらに、本発明に使用する記録媒体を仕上げる場合には、防湿包装によって密閉された状態から開封された直後の製品水分率が適切な範囲内、具体的には好ましくは3〜6.5質量%、より好ましくは4.5〜5.5質量%程度の範囲内に収まるように、紙基材を抄紙するときに抄紙機等により含水量を調整することが好ましい。また、作製された記録媒体の保管時に吸脱湿が発生しないように、作製された記録媒体は、所定枚数毎にポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙やポリプロピレン等の材料を用いて包装することが望ましい。
【実施例】
【0084】
下記に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,勿論、本発明の範囲はそれらにより限定されるものでない。
(実施例1)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)90質量部、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)10部、及び直径35μm長さ30mmの磁性材としての磁性繊維(組成:Fe−Si−B)5質量部を混合したパルプスラリー中に、パルプ固形分100部に対して、填料として軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)2.5質量部、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.15質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、王子ナショナル(株)製)0.05質量部を添加した。
これらの混合物を白水で希釈した紙料スラリーを抄紙して、磁性材を含む紙基材を作製した。
なお、抄紙には、長網式抄紙機を用いた。
【0085】
次に、上記作製した紙基材に、紙基材の片面あたり乾燥重量で酸化澱粉(エースA、王子コーンスターチ(株)製)0.7g/m2、ケン化度99mol%のポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ製)0.1g/m2、及び硫酸ナトリウム0.1g/m2となるように、これらを混合した塗布液を、サイズプレス装置により塗布量が1g/m2となるように塗布乾燥した。
さらに、カレンダー装置により王研式平滑度が60秒になるように平滑化処理を施し、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0086】
得られた記録媒体のテーバー摩耗量を測定したところ、5mgであり、内部結合強度は0.2N・mであった。
【0087】
なお、テーバー摩耗量は、JIS P 8111に準じて調湿した本発明の記録媒体を(株)東洋精機製作所製のテーバーロータリーアブレーションテスターを用いて、外径50mmの摩耗輪CS―10により、摩耗回転速度を60rpm、試験荷重を2.45N(250gf)、摩耗回転数を50回転、測定環境を23℃、50%RHとして測定した。
【0088】
また、内部結合強度は、JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度で測定した。
【0089】
また、坪量は、JIS P 8124の方法により測定した。なお、下記実施例及び比較例においても、同様にして坪量を測定した。
【0090】
(実施例2)
円網多筒式抄紙機を用い、実施例1で用いた紙料スラリーから、磁性繊維、および填料としての軽質炭酸カルシウムを除去した紙料スラリーを用いて坪量が30g/mとなるように抄紙して第1の紙基材層を作製した。この、第1の紙基材層の上に、実施例1で用いた紙料スラリーの磁性材を組成Fe−Co−Siに変更すると共に、軽質炭酸カルシウムを除去した以外は同様の紙料スラリーを用いて、坪量が30g/mとなるように抄紙して、第1の紙基材層上に中間層としての第2の紙基材層を作製した。さらに、この第2の紙基材層の上に、上記第1の紙基材層を上記と同様に坪量が30g/mとなるように、第3の紙基材層を抄紙した。
さらに、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った後に、実施例1で用いた塗布液と同一の塗布液を、実施例1と同様にして塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量90g/m2の3層からなり、中央の層に磁性材を含む記録媒体を得た。
【0091】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は4mgであり、内部結合強度は、0.3N・mであった。
【0092】
(実施例3)
実施例1で用いた紙料スラリーから、磁性繊維を除くと共に、填料として軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)を11質量部とした紙料スラリーを、円網多筒式抄紙機を用いて、坪量が40g/mとなるように抄紙して第1の紙基材層を作製した。次に、この、第1の紙基材層の上に、実施例1で用いた紙料スラリーの磁性材を組成Fe−Co−Siに変更すると共に、軽質炭酸カルシウムの配合量を11質量部とした以外は同様の紙料スラリーを用いて、坪量が40g/mとなるように、上記円網多筒式抄紙機を用いて抄紙して、第1の紙基材層上に第2の紙基材層を作製した。
さらに、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った後に、実施例1で用いた塗布液と同一の塗布液を、実施例1と同様にして塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の2層からなり、一方の層に磁性材を含む記録媒体を得た。
【0093】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は10mgであり、内部結合強度は、0.11N・mであった。
【0094】
(実施例4)
実施例1で用いた紙料スラリーから、填料としての上記軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)を除去し、磁性繊維を組成Fe−Co−Siの磁性繊維に変更し、紙力増強剤として、ポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS3874−20、荒川化学工業社製)0.4質量部を添加した以外は同様の紙料スラリーを用い、実施例1で用いた抄紙機により、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った後に、実施例1で用いた塗布液と同一の塗布液を、実施例1と同様にして塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0095】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は3mgであり、内部結合強度は、0.35N・mであった。
【0096】
(実施例5)
実施例1で用いた紙料スラリーにおいて、填料としての上記軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)を8質量部とし、磁性繊維を組成Fe−Co−Siの磁性繊維に変更した以外は、実施例1と同様の紙料スラリーを用い、実施例1で用いた抄紙機により、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った後に、実施例1で用いた塗布液と同一の塗布液を、実施例1と同様にして塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0097】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は7mgであり、内部結合強度は、0.15N・mであった。
【0098】
(比較例1)
実施例1で用いた紙料スラリーにおいて、填料としての上記軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)を17質量部とし、磁性繊維を、大バルクハウゼン効果を起こさない通常の金属繊維(ステンレス鋼繊維ナスロン 日本精線株式会社製)5質量部に変更した以外は、実施例1と同様の紙料スラリーを用い、実施例1で用いた抄紙機により、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った。
次に、実施例1で用いた塗布液に、ケン化度99mol%のポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ製)が含まれない以外は、同一の塗布液を用いて、実施例1と同様にしてこの塗布液を塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0099】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は18mgであり、内部結合強度は、0.08N・mであった。
【0100】
(比較例2)
実施例1で用いた紙料スラリーにおいて、磁性繊維を組成:Nd−Fe−Bの磁性繊維に変更した以外は、実施例1と同様の紙料スラリーを用い、実施例1で用いた抄紙機により、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行った。
次に、実施例1で用いた塗布液に、ケン化度99mol%のポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ製)が含まれない以外は、同一の塗布液を用いて、実施例1と同様にしてこの塗布液を塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0101】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は15mgであり、内部結合強度は、0.12N・mであった。
【0102】
(比較例3)
実施例1で用いた紙料スラリーにおいて、填料としての上記軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)を22質量部とした以外は、実施例1と同様の紙料スラリーを用い、実施例1で用いた抄紙機により、実施例1と同様にして、サイズプレス処理を行うと共に
次に、実施例1で用いた塗布液と同一の塗布液を用いて、実施例1と同様にしてこの塗布液を塗布して表面層を形成するカレンダー工程を経ることにより、坪量80g/m2の記録媒体を得た。
【0103】
得られた記録媒体の、テーバー摩耗量及び内部結合強度を実施例1と同様にして測定したところ、テーバー摩耗量は20mgであり、内部結合強度は、0.07N・mであった。
【0104】
上記実施例1〜実施例5、及び上記比較例1〜比較例3で作製した記録媒体各々の特定を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
(品質評価方法)
上記実施例1〜実施例5、及び上記比較例1〜比較例3で作製した記録媒体各々について、下記の画像形成装置を用いて画像形成を行い、磁性繊維欠落グレードについて評価した。評価結果を表2に示す。
なお、各評価方法については、以下に示す通りである。
実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例3で作製した記録媒体を、DocuCentreColor f450(富士ゼロックス株式会社製)を用い、定着条件として普通紙モードで、記録媒体全面にハーフトーン画像(以下、全面ハーフトーン画像という)を連続2000枚出力し、下記評価を行った。
【0107】
〔磁性繊維欠落グレード評価方法〕
DocuCentreColor f450(富士ゼロックス株式会社製)で連続2000枚出力したときの紙送りロール、転写ベルトクリーナー、定着ロールに付着堆積した磁性繊維量を目視で測定した。また、全面ハーフトーン画像の筋、抜けなどの画像欠陥を目視で判断した。さらに紙送り時のミスフィードなどの走行不良も参考とした。
評価基準を下記に示す。
◎ :磁性繊維の欠落は全く確認されず、画像欠陥、走行性不良もない。
○ :磁性繊維の欠落はほとんど確認されず、画像欠陥、走行性不良もない。
△ :磁性繊維の欠落が散見され、わずかな画像欠陥があるが、走行性不良はない。
× :磁性繊維の欠落があり、画像欠陥が認められるか、走行不良が発生。電子写真方式の装置の性能を大きく損なう。
【0108】
【表2】

【0109】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜実施例5で作製された記録媒体は、比較例1〜比較例3で作製した記録媒体に比べて、記録媒体からの磁性材(磁性繊維)の欠落が少なく、且つ画質劣化を抑制可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の記録媒体を用いることが可能な画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】テーバー摩耗量測定状態を示す説明図である。
【図3】大バルクハウゼン効果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0111】
20 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に磁性材を含有すると共に、テーバー摩耗量が10mg以下の範囲であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
JAPAN TAPPI No.18−2に規定される内部結合強度が、0.1N・m以上の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記磁性材が、少なくとも大バルクハウゼン効果を起こすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
填料が、記録媒体本体の固形分に対して10質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−177333(P2007−177333A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373618(P2005−373618)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】