説明

記録媒体

【課題】 ひび割れを抑制し、かつ折り曲げた際のインク受容層の剥離を抑制した記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該支持体は、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体であり、該支持体のインク受容層側の表面は、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが3.0μm以上であり、JIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.2以下であり、該インク受容層の塗工厚は50μm以下であることを特徴とする記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法やフェルトペンにより記録を行う記録媒体として、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体上にインク受容層を有する記録媒体が知られている。このような記録媒体を折り曲げた場合、インク受容層が剥離することがあるが、支持体の表面に凹凸形状を設けることで、支持体とインク受容層の接着性が高まり、インク受容層の剥離を抑制することができる。
【0003】
支持体の表面に凹凸形状を有する記録媒体として、特許文献1には、樹脂被覆支持体の表面が、3mmの間に規則的に5〜10個の凹凸形状を有し、中心線平均粗さが2.5μm以上で、かつ十点平均粗さが中心線平均粗さの4倍〜7倍である記録媒体が記載されている。特許文献2には、表面の60度鏡面光沢度が7%〜50%であって、中心線平均粗さが1.0μm〜5.0μmである支持体上にインク受容層を有する記録媒体が記載されている。特許文献1及び2によれば、これらの記録媒体は、インク受容層のひび割れも抑制できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−246836号公報
【特許文献2】特開2000−296667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1、2に記載の記録媒体のように、支持体表面の中心線表面粗さRaを大きくした場合であっても、インク受容層にひび割れが発生することがあった。特に、インク受容層の塗工厚が厚い場合には、インク受容層を支持体上に塗工して乾燥した際に、インク受容層にひび割れが生じやすい傾向にあった。
【0006】
従って本発明は、ひび割れを抑制し、かつ折り曲げた際のインク受容層の剥離を抑制した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、該支持体は、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体であり、該支持体のインク受容層側の表面は、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが3.0μm以上であり、JIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.2以下であり、該インク受容層の塗工厚は50μm以下であることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ひび割れを抑制し、かつ折り曲げた際のインク受容層の剥離を抑制した記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。尚、本発明はこれらの記載に限定して解釈されるものではない。
【0010】
<記録媒体>
本発明の記録媒体は、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体である。インク受容層は、支持体の片面に設けられていても、両面に設けられていてもよい。また、インク受容層のインク吸収性を大きく妨げない程度であれば、インク受容層の表面上(支持体と反対側)に別の層を設けてもよい。或いは、インク受容層のひび割れが発生しない程度であれば、インク受容層と支持体との間に別の層を設けてもよい。
【0011】
記録媒体を折り曲げた時に生じるインク受容層の剥離は、支持体とインク受容層の接着性が、折り曲げによる応力よりも小さいために生じると考えられる。本発明の記録媒体は、支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが3.0μm以上である。支持体の両方の面上にインク受容層を有する場合には、支持体の両方の面のRaはともに3.0μm以上である。Raが3.0μm以上であるため、支持体とインク受容層との接着性が大きくなり、折り曲げた際のインク受容層の剥離を良好に抑制することができる。Raは、4.0μm以上であることが好ましい。さらには、5.0μm以上であることがより好ましい。
【0012】
一方、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工してインク受容層を形成する場合、インク受容層表面の形状は、支持体表面の形状に影響を受けやすい。このため、インク受容層表面の光沢性の点から、支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、7.0μm以下であることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明者らの検討によれば、記録媒体を折り曲げた際のインク受容層の剥離を抑制するために、単純に支持体表面の算術平均粗さRaを大きくすると、特にインク受容層の塗工厚が厚い場合に、インク受容層にひび割れが生じる場合があった。さらにこのひび割れについて検討した結果、ひび割れの発生と、支持体表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskとの間に関連があることを見出した。Rskは、表面粗さの高さ方向の特徴を表し、凹部が凸部に比べて大きくなると、Rskは正の値を示し、凹部が凸部に比べて小さくなると、Rskは負の値を示す。
【0014】
本発明の記録媒体は、支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.2以下である。支持体の両方の面上にインク受容層を有する場合には、支持体の両方の面のRskはともに0.2以下である。インク受容層は、顔料やバインダー等を含有する塗工液を支持体上に塗工し、乾燥することで形成する。支持体の表面がある程度の粗さを有する場合、塗工液は支持体の凸部に比べて凹部に多く塗工される傾向にあり、結果として、凸部上に比べ凹部上のインク受容層が厚くなる傾向がある。支持体のインク受容層側の表面のRskが0.2より大きくなると、凹部の面積が大きくなるため、塗工液が凹部により集まりやすくなる。そのため、凸部と凹部のインク受容層の厚みのムラが顕著になり、塗工液を塗工後、乾燥時に生じるストレスによってひび割れが生じる。このストレスは、インク受容層が厚い部分が多く存在する場合に生じやすくなる。本発明では、これを抑制するために、支持体のインク受容層側の表面のRskを0.2以下とする。より好ましくは、0.0以下である。Rskが0.0以下の場合、凸部と凹部の広さが同じ、もしくは凹部が凸部よりも狭くなり、インク受容層が厚い部分が減少する。よって、乾燥時に生じるストレスが緩和され、ひび割れの発生をより抑制できる。また、凹凸面形成の観点から、Rskは−1.5以上であることが好ましい。
【0015】
また、凹部を狭くする点から、支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmは、0.6mm以下であることが好ましい。RSmは、表面粗さの横方向(水平方向)の特徴を表し、凹凸部の間隔を表す値である。縦方向(高さ方向)の特徴にも依存するが、RSmを0.6mm以下にすることで、支持体表面の凹部の体積をさらに小さくすることができる。この結果、乾燥時に生じるストレスが緩和され、ひび割れの発生をより抑制できる。また、凹凸面形成の観点から、RSmは0.1mm以上であることが好ましい。
【0016】
支持体表面のRa、Rsk及びRSmを上記範囲に調整する方法としては、樹脂で基材を被覆した支持体の表面に型付け処理を行う方法が好ましい。例えば、ポリオレフィン樹脂表面に型付け処理を行う代表的な方法は、溶融したポリオレフィン樹脂を基材に押し出しコーティングした後、型付けローラーに圧接して微細な凹凸の模様付けを行う方法である。この模様付けを行う方法には、例えば以下の2つの好ましい方法がある。1つは、溶融押し出しで得られる樹脂コート紙に室温付近でエンボシングカレンダー処理する方法である。もう1つは、ポリオレフィン樹脂の押し出しコーティング時に、ロール表面に模様を彫刻したクーリングロールを用いて冷却しながら凹凸を形成する方法である。特に後者の方法の方が、比較的弱い圧力で型付けすることができ、さらにより正確で均質な型付けができるため好ましい。
【0017】
また、良好なインク吸収性を発現するには、インク受容層の塗工厚が15μm以上であることが好ましい。より好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。本発明の記録媒体は、支持体の表面の粗さを上記の通り制御しているため、インク受容層の塗工厚が厚い場合であっても、ひび割れの発生を抑制できる。
【0018】
しかし、インク受容層があまりに厚い場合には、インク受容層にひび割れが発生することがある。このため、インク受容層の塗工厚は50μm以下である。尚、本発明における塗工厚とは、絶乾時の厚さである。本発明では、記録媒体を四角形とし、四隅から四角形の重心方向に1cm離れた部分の絶乾時の厚さを走査電子顕微鏡を用いて測定し、これらを平均した値を塗工厚とする。
【0019】
(支持体)
本発明の支持体は、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体である。
基材としては、紙基材が挙げられる。紙基材は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKP等が挙げられる。中でも短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/又はLDPは、パルプ中10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。これらパルプとしては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましい。また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも好ましい。紙基材中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加してもよい。紙基材の坪量は50g以上250g以下が好ましく、特に70g以上200g以下が好ましい。紙基材の厚さは50μm以上210μm以下が好ましい。紙基材は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えてもよい。紙密度は0.7g/m以上1.2g/m以下(JIS P 8118)であることが好ましい。原紙剛度は、JIS P 8143に規定される条件で20g以上200g以下が好ましい。紙基材表面には表面サイズ剤を塗工してもよい。紙基材のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定した値で5以上9以下であることが好ましい。
【0020】
基材を被覆する樹脂は、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン、プロピレン等を主体とする共重合体が好ましい。中でもポリエチレンが好ましい。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も用いてもよい。ポリオレフィン樹脂は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリオレフィン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して3質量%以上20質量%であることが好ましい。被覆する樹脂の厚さは、10μm以上40μm以下であることが好ましい。被覆する樹脂は、白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を含有してもよい。顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアンブルー、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1、8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0021】
(インク受容層)
本発明のインク受容層は、無機顔料及びバインダーで構成することが好ましい。さらに、架橋剤、pH調整剤、各種添加剤等を含有してもよい。以下にこれらの成分について詳しく説明する。
【0022】
無機顔料としては、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、湿式及び乾式シリカゾル、アルミナ水和物等の白色顔料が好ましい。上記無機顔料は、単独で用いても良く、複数を混合して用いてもよい。中でも、インク吸収性等の点から、シリカ或いはアルミナ水和物が好ましい。さらに、白モヤの発生を抑制する点では、アルミナ水和物が好ましい。一方、記録媒体表面の傷の視認性低減の点では、気相法シリカが好ましい。
【0023】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等を用いることが好ましい。上記バインダーは、単独で用いても良く、複数を混合して用いてもよい。中でも最も好ましく用いられるバインダーは、PVAである。PVAとしては、例えばポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるPVAが挙げられる。また、粘度平均重合度が1500以上5000以下のものがより好ましい。ケン化度は70以上100以下のものが好ましい。この他に、末端をカチオン変性したPVAや、アニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性PVAを用いてもよい。無機顔料としてアルミナ水和物を用いる場合、インク受容層中のバインダーの量はインク受容層中の無機顔料全質量に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることが好ましく、8%以上15質量%以下であることがより好ましい。また、無機顔料としてシリカを用いる場合、インク受容層中のバインダーの量はインク受容層中の無機顔料全質量に対して20質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0024】
架橋剤としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、バインダーとしてPVAを用いる場合、PVAと架橋反応を起こして硬化するものが好ましい。架橋剤としては、特にホウ酸が好ましい。この際、用いるホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等が挙げられるが、塗工液の経時安定性とクラック発生の抑制の点から、オルトホウ酸を用いることが好ましい。
【0025】
ホウ酸の使用量は、インク受容層中のPVAに対して、0.2当量以上1.2当量以下の範囲であることが好ましい。尚、上記「当量」については、PVAが有するヒドロキシル基量と理論上、完全に反応する架橋剤量を1.0当量とする。上記範囲とすることによって、インク受容層用塗工液の経時安定性を特に向上させることができる。一般的にインク受容層を形成する際は、塗工液を長時間に渡って用いることとなる。塗工液中のホウ酸の含有量を上記範囲内とすることによって、長時間使用中に塗工液の粘度が上昇することや、ゲル化物の発生が起こることを優れて抑制することができる。このため、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等も頻繁に行わずに済み、記録媒体等の記録媒体の生産性が低下することを抑制することができる。さらに、塗工液中のホウ酸の含有量が上記範囲内であれば、均質で良好な表面を得ることができる。
【0026】
インク受容層は、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工することで形成する。インク受容層用塗工液中には、pH調整剤として、例えば、下記の酸をそれぞれ適宜、添加することができる。蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸。イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸、メタンスルホン酸。塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸等である。例えば、無機顔料としてアルミナ水和物を用いた場合、アルミナ水和物を水中に分散させるために一塩基酸を用いることが好ましい。このため、上記pH調整剤の中でも、蟻酸、酢酸、グリコール酸、メタンスルホン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸等を用いることが好ましい。また、添加剤として、顔料分散剤、堅牢性向上剤等をインク受容層形成後のインク受容層表面のイオン交換水に対する接触角が大きく変化しない範囲で適宜添加してもよい。
【0027】
<記録媒体の製造方法>
本発明の記録媒体は、例えば以下の方法で製造する。まず、無機顔料、バインダー、架橋剤、pH調整剤、各種添加剤、水等を混合したインク受容層用塗工液を調製する。続いて支持体上にインク受容層用塗工液を塗工、乾燥してインク受容層を形成することで、本発明の記録媒体を製造する。尚、インク受容層に用いるこれらの材料の種類、使用量等は、本発明の要件を満たすように適宜選択して用いればよい。
【0028】
次に、インク受容層用塗工液の塗工方法について説明する。インク受容層用塗工液の塗工には、適正な塗工量が得られるように、例えば、各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター。スライドホッパー方式を用いたコーター等により、オンマシン、オフマシンで塗工する。塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温してもよく、コーターヘッドを加温してもよい。
【0029】
塗工後の塗工液の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機を用いる。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜、選択して用いてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容はこれらに限られるものではない。尚、「部」或いは「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0031】
(表面粗さ測定方法)
算術平均粗さRa、粗さ曲線のスキューネスRsk、粗さ曲線要素の平均長さRSmの測定は、下記の測定装置及び条件で行った。
測定装置:Surfcorder SE3500(小坂研究所製)
測定条件:JIS B 0601:2001に準じて、カットオフ値を設定し、評価長さはカットオフ値の5倍の長さとして測定した。
【0032】
(支持体の作製)
軽質炭酸カルシウム20部を、広葉樹晒クラフトパルプ100部のスラリー中に添加し、カチオン澱粉2.0部、無水アルケニルコハク酸系中性サイズ剤0.3部を添加し、十分に混合して抄紙原料とした。長網多筒式抄紙機を用いて水分を10%まで乾燥させ、サイズプレスで酸化澱粉の7%溶液を両面で4g/m塗布し、さらに水分を7%まで乾燥させて坪量110g/mの基紙を作製した。作製した基紙の表裏両方の面に、低密度ポリエチレン70部と高密度ポリエチレン20部からなる樹脂組成物を、表1に記載の厚み(片面当たりの厚み)となるように溶融押し出し塗布し、PE(ポリエチレン)層を形成した。塗布直後に、表面に種々の不規則の形状の凹凸を有するクーリングロールを使用して、冷却しながらポリエチレン表面に型付け処理を行った。型付けの違いは凹部の形状、凸部の形状、凹凸の幅及び凹凸の高さを調整することで行い、樹脂被覆支持体である支持体1〜17を作製した。各支持体のRa、Rsk及びRSmを表1に示す。尚、支持体の両面ともに、表1に示す値となった。
【0033】
【表1】

【0034】
(インク受容層用塗工液Aの調製)
イオン交換水中に、アルミナ水和物(商品名:Disperal HP14、サソール製)を30%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物に対してメタンスルホン酸を1.5%加えて攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物が27%となるようにイオン交換水で希釈して、コロイダルゾルAを得た。
【0035】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール溶液を、コロイダルゾルAに、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが7.0%となるように混合した。次に、3.0%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物に対してホウ酸が2.0%となるように混合して、インク受容層用塗工液Aを調製した。
【0036】
(インク受容層用塗工液Bの調製)
上記で調製したコロイダルゾルAに、上記ポリビニルアルコール水溶液を、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが8.0%となるように混合した。これ以外は、インク受容層用塗工液Aの調製と同様にして、インク受容層用塗工液Bを調製した。
【0037】
(インク受容層用塗工液Cの調製)
上記で調製したコロイダルゾルAに、上記ポリビニルアルコール水溶液を、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが9.0%となるように混合した。これ以外は、インク受容層用塗工液Aの調製と同様にして、インク受容層用塗工液Cを調製した。
【0038】
(インク受容層用塗工液Dの調製)
上記で調製したコロイダルゾルAに、上記ポリビニルアルコール水溶液を、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが10.0%となるように混合した。これ以外は、インク受容層用塗工液Aの調製と同様にして、インク受容層用塗工液Dを調製した。
【0039】
(インク受容層用塗工液Eの調製)
上記で調製したコロイダルゾルAに、上記ポリビニルアルコール水溶液を、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが11.0%となるように混合した。これ以外は、インク受容層用塗工液Aの調製と同様にして、インク受容層用塗工液Eを調製した。
【0040】
(インク受容層用塗工液Fの調製)
上記で調製したコロイダルゾルAに、上記ポリビニルアルコール水溶液を、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが12.0%となるように混合した。これ以外は、インク受容層用塗工液Aの調製と同様にして、インク受容層用塗工液Fを調製した。
【0041】
(インク受容層用塗工液Gの調製)
シリカ(商品名:A300、日本アエロジル製)100部、カチオンポリマー(商品名:シャロールDC902P、第一工業製薬製)4部を、固形分濃度が18%となるようにイオン交換水に分散し、高圧ホモジナイザーで分散してコロイダルゾルBを得た。
【0042】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール水溶液を、コロイダルゾルBに、シリカに対してポリビニルアルコールが25.0%となるように混合した。次に、3.0%ホウ酸水溶液を、シリカに対してホウ酸が3.5%となるように混合して、インク受容層用塗工液Gを調製した。
【0043】
<実施例1>
支持体1上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が19μmの記録媒体1を作製した。
【0044】
<実施例2>
支持体1上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が38μmの記録媒体2を作製した。
【0045】
<実施例3>
支持体1上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が45μmの記録媒体3を作製した。
【0046】
<実施例4>
支持体2上に、インク受容層用塗工液Bを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が24μmの記録媒体4を作製した。
【0047】
<実施例5>
支持体2上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が28μmの記録媒体5を作製した。
【0048】
<実施例6>
支持体2上に、インク受容層用塗工液Eを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が42μmの記録媒体6を作製した。
【0049】
<実施例7>
支持体3上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が17μmの記録媒体7を作製した。
【0050】
<実施例8>
支持体3上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が30μmの記録媒体8を作製した。
【0051】
<実施例9>
支持体3上に、インク受容層用塗工液Eを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が40μmの記録媒体9を作製した。
【0052】
<実施例10>
支持体4上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が20μmの記録媒体10を作製した。
【0053】
<実施例11>
支持体4上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が37μmの記録媒体11を作製した。
【0054】
<実施例12>
支持体4上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が47μmの記録媒体12を作製した。
【0055】
<実施例13>
支持体5上に、インク受容層用塗工液Bを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が22μmの記録媒体13を作製した。
【0056】
<実施例14>
支持体5上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が32μmの記録媒体14を作製した。
【0057】
<実施例15>
支持体5上に、インク受容層用塗工液Eを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が41μmの記録媒体15を作製した。
【0058】
<実施例16>
支持体6上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が16μmの記録媒体16を作製した。
【0059】
<実施例17>
支持体6上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が39μmの記録媒体17を作製した。
【0060】
<実施例18>
支持体6上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が50μmの記録媒体18を作製した。
【0061】
<実施例19>
支持体7上に、インク受容層用塗工液Bを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が23μmの記録媒体19を作製した。
【0062】
<実施例20>
支持体7上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が25μmの記録媒体20を作製した。
【0063】
<実施例21>
支持体7上に、インク受容層用塗工液Eを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が44μmの記録媒体21を作製した。
【0064】
<実施例22>
支持体7上に、インク受容層用塗工液Gを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が34μmの記録媒体22を作製した。
【0065】
<実施例23>
支持体8上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が15μmの記録媒体23を作製した。
【0066】
<実施例24>
支持体8上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が31μmの記録媒体24を作製した。
【0067】
<実施例25>
支持体8上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が45μmの記録媒体25を作製した。
【0068】
<実施例26>
支持体9上に、インク受容層用塗工液Aを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が18μmの記録媒体26を作製した。
【0069】
<実施例27>
支持体9上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が27μmの記録媒体27を作製した。
【0070】
<実施例28>
支持体9上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が48μmの記録媒体28を作製した。
【0071】
<実施例29>
支持体10上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が36μmの記録媒体29を作製した。
【0072】
<実施例30>
支持体11上に、インク受容層用塗工液Eを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が43μmの記録媒体30を作製した。
【0073】
<実施例31>
支持体12上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が29μmの記録媒体31を作製した。
【0074】
<実施例32>
支持体13上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が49μmの記録媒体32を作製した。
【0075】
<実施例33>
支持体14上に、インク受容層用塗工液Bを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が21μmの記録媒体33を作製した。
【0076】
<実施例34>
支持体15上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が46μmの記録媒体34を作製した。
【0077】
<比較例1>
支持体16上に、インク受容層用塗工液Dを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が33μmの記録媒体35を作製した。
【0078】
<比較例2>
支持体9上に、インク受容層用塗工液Fを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が52μmの記録媒体36を作製した。
【0079】
<比較例3>
支持体17上に、インク受容層用塗工液Cを塗工し、60℃で乾燥させて、インク受容層の塗工厚が26μmの記録媒体37を作製した。
【0080】
<評価>
以上の記録媒体に対して、下記の評価を行った。
【0081】
(ひび割れ)
インク受容層形成後に、インク受容層表面のひび割れの長さを、下記の基準で目視で評価した。
A:ひび割れの発生は確認されなかった。
B:ひび割れの発生が確認されたが、全て1.0mm未満の長さのひび割れであった。
C:1.0mm以上のひび割れが確認された。
【0082】
(インク受容層剥離)
インクジェット記録装置(商品名(日本):PIXUS MP990、キヤノン製)を用いて、写真用紙光沢ゴールドモード(標準設定、色/濃度:マッチングなし)にて、各記録媒体の表面全体に黒色印字を行った。次に、記録媒体を10cm×10cmの大きさの正方形に切り取り、インク受容層を有する面が内側になるように、切り出した記録媒体を中央にて二つ折りとする折り曲げ操作を1回実施した。折り曲げ操作は、折り曲げた記録媒体の面同士が重なる程度までしっかりと行った。折り曲げ操作後のインク受容層の剥離の発生を、以下の基準で目視で評価した。
A:インク受容層の剥離は確認されなかった。
B:インク受容層の剥離がわずかに確認された。
C:インク受容層の剥離がはっきりと確認された。
【0083】
(インク吸収性)
インクジェット記録装置(商品名(日本):PIXUS MP990、キヤノン製)を用いて、写真用紙光沢ゴールドモード(標準設定、色/濃度:マッチングなし)にて、各記録媒体に下記の画像を記録した。
・画像:5cm×5cmの領域を、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(0,0,0)の黒色で塗りつぶした画像と、その画像に隣接した5cm×5cmの領域を(R,G,B)=(255,255,0)の黄色で塗りつぶした画像。
【0084】
インク吸収性が良好でない場合は、画像の隣接部に滲み出しが確認される。従って、上記画像の隣接部について、以下の基準で目視で評価することで、インク吸収性を評価した。
A:黒色の画像と黄色の画像との間に滲みだしは確認されなかった。
B:黒色の画像と黄色の画像との間にわずかに滲みだしが確認された。
C:黒色の画像と黄色の画像との間にはっきりと滲みだしが確認された。
【0085】
【表2】

【0086】
表2に示す通り、実施例1〜34の記録媒体は、インク受容層のひび割れ、折り曲げ時の剥離、インク吸収性のいずれも良好であった。
【0087】
一方、比較例1の記録媒体は、支持体のインク受容層側の表面のRaが2.8μmであり、折り曲げ時にインク受容層の剥離がはっきりと確認された。比較例2の記録媒体は、インク受容層の塗工厚が52μmと厚く、インク受容層表面に1.0mm以上のひび割れが確認された。比較例3の記録媒体は、支持体のインク受容層側の表面のRskが0.3であり、インク受容層表面に1.0mm以上のひび割れが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上にインク受容層を有する記録媒体であって、
該支持体は、樹脂で基材を被覆した樹脂被覆支持体であり、
該支持体のインク受容層側の表面は、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが3.0μm以上であり、JIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.2以下であり、
該インク受容層の塗工厚は50μm以下であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが4.0μm以上である請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線のスキューネスRskが0.0以下である請求項1または2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記インク受容層の塗工厚は25μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記支持体のインク受容層側の表面のJIS B 0601:2001で規定される粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.6mm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体。

【公開番号】特開2012−11775(P2012−11775A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110624(P2011−110624)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】