説明

記録媒体

【課題】鏡面光沢度が25%以上の点状画像に比べて読み取りの誤認識を抑える。
【解決手段】図4(a)に示す画像は、日本工業規格のP8142に基づく75度鏡面光沢度が13.7%の点状画像が形成されている第1の用紙P1を、10度の読み取り角度で読み取った画像である。図4(c)に示す画像は、上記の鏡面光沢度が25.2%の点状画像が形成されている第2の用紙P2を、10度の読み取り角度で読み取った画像である。図4(a)に示した画像では第1の用紙P1の表面における正反射の影響はほとんどなく、無いものとして誤認識された点状画像はなかった。一方、図4(c)に示した画像では第2の用紙P2の表面のうち、破線で示した領域内においていくつかの点状画像から正反射光を受光していることがわかる。そして、このため、読み取りデバイスは本来点状画像が描かれている部分について、その点状画像が無いものとして誤認識した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を吸収する赤外線吸収トナーで形成された複数のマークの配置によって情報を表す記録媒体がある。この記録媒体によって表される情報には、記録用紙を識別する識別情報や、記録用紙上の座標位置を表す位置情報などがある。この記録媒体から識別情報や位置情報を読み取る装置として、例えば、赤外線を照射するLED(Light Emitting Diode)と赤外線を検知するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーとを備えたペン状の手持ち式読み取りデバイスが挙げられる。
【0003】
ところで、上述したペン状のデバイスでこの記録媒体上に形成されたマークを読み取ろうとするとき、一般にその読み取り角度は、走査されるべき表面に対して変化する。そのため、記録媒体の表面における反射光が強くなる方向に、このデバイスの読み取り方向が一致ないし近づくと、マークにおいて反射した赤外線がデバイスで定められた閾値以上に受光され、有る筈のマークが無いものとして誤認識されることがある。
【0004】
このような誤認識を防ぐための技術として、特許文献1は、設定値と実際の輝度状態値との誤差を用いて露光時間を制御する光学センサーデバイスを開示する。また、このような誤認識の影響を抑えるために、受光面積を増加させたり、LED等の照射手段やCCD等の受光手段を複数設けたりすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−505061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、鏡面光沢度が25%以上の点状画像に比べて読み取りの誤認識を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る記録媒体は、赤外線の吸収率が閾値未満である表面と、前記表面上に形成され、赤外線読み取り装置により読み取られる範囲に形成された位置のパターンにより情報を示す複数の点状画像であって、前記赤外線の吸収率が前記閾値以上であり、且つ、前記赤外線に対する鏡面光沢度が22%以下である複数の前記点状画像とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の記録媒体によれば、鏡面光沢度が25%以上の点状画像に比べて読み取りの誤認識を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】点状画像の一例を示す図である。
【図3】点状画像におけるトナー濃度と鏡面光沢度との関係を示した図である。
【図4】第1の用紙と第2の用紙とを読み取った画像の例である。
【図5】読み取り角度ごとの誤認識率を測定した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の説明に使用する用語を以下のように定義する。
「光」とは、可視光線のほか少なくとも赤外線を含む電磁波である。
「点状画像」とは、記録媒体の表面に囲まれた輪郭を有し、その輪郭により閉じられている領域内を画像形成材料により塗りつぶされて形成される画像である。なお、実施形態において点状画像は、上記の輪郭が円形のものである。
「鏡面光沢度」とは、日本工業規格のP8142により定められた「紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法」に準じて測定される、入射角および反射角を75度とする鏡面光沢度である。なお、日本工業規格のP8142では、可視波長全域にわたって屈折率が1.567のガラス表面を光沢度100%と規定して、この規定されたガラス表面を基準として対象試料の光沢度を決定しているが、本発明においては、可視波長全域に代わり、予め定められた赤外線帯域にわたって屈折率が1.567のガラス表面を光沢度100%と規定して鏡面光沢度を定められている。
【0011】
1−1.画像形成装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。同図に示すように、画像形成装置1は、供給部11と、光走査部12と、現像部13I,13Kと、転写部14と、定着部15と、排出部16と、制御部19とを備えている。これらの供給部11、光走査部12、現像部13I,13K、転写部14、定着部15及び排出部16は、制御部19によって制御される。なお、符号末尾のアルファベットIは、赤外線を吸収する赤外線吸収トナーに対応した構成を意味しており、アルファベットKは、黒色トナーに対応した構成であることを意味している。
【0012】
ここで、赤外吸収トナーは、不可視の色材の一例である。この赤外吸収トナーは、可視光領域(400nm以上700nm未満)における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるという程度のもので、例えば、可視光領域における最大吸収率が7%未満であり、赤外領域(750nm以上1000nm未満)における吸収率が、予め定められた閾値の一例である30%以上のトナーである。この閾値は赤外吸収トナーにより形成した画像を読み取り装置で読み取り可能か否かに応じて定められるものである。なお、ここでの「不可視」は、目視により完全に認識不可能であるもののみを指すものではなく、一見しただけでは認識が困難であることや、目視によりほとんど認識することができないことを意味する。
【0013】
黒色トナーは、可視の色材の一例である。この黒色トナーは、可視光領域において吸収率が30%以上の広い吸収帯域を有するトナーである。黒色トナーにより形成された画像は、人間の目によって黒色に認識される。
【0014】
現像部13I,13Kのそれぞれは、用いるトナーが異なるのみであって、その構成に大きな差異はない。以下、赤外線吸収トナーおよび黒色トナーのそれぞれを特に区別する必要がない場合には、単にトナーという。また、現像部13I,13Kのそれぞれを特に区別する必要がない場合には、トナーの種類を示す符号末尾のアルファベットを省略して「現像部13」とする。各トナーの詳細については後述する。トナーはキャリアと混合されることによりキャリアから電荷を付与される。混合されたトナーとキャリアは現像剤として現像部13に供給される。
【0015】
供給部11は、予め定められたサイズにカットされた、記録媒体としての用紙Pを収容する。供給部11に収容されている用紙Pは、制御部19の指示により1枚ずつ取り出され、用紙搬送路を経由して転写部14へと搬送される。
ここで用紙Pは、パルプ繊維によって製造された、いわゆる「普通紙」である。なお、記録媒体は用紙に限らず、例えば樹脂製のシート等であってもよい。ただし、これら記録媒体の表面における赤外線の吸収率は、上述した閾値の一例である30%未満であり、望ましくは7%未満である。
【0016】
制御部19は、トナーごとに個別の画像データをRAM(Random Access Memory)などに対応付けて記憶しており、光走査部12は、制御部19の制御の下、各画像データに応じたビーム光をそれぞれ生成して対応する現像部13I,13Kへ照射する照射装置を備えている。
【0017】
現像部13Iが用いる赤外線吸収トナーに対応付けられた画像データは、用紙Pの表面上において点状の画像である点状画像を格子状に配列する配列パターンを示す。この配列パターンは、赤外線読み取り装置により読み取られる範囲内に形成された部分によって識別情報などの情報を表す。点状画像およびその配置の詳細については後述する。
【0018】
転写部14は、中間転写ベルト141と、ベルト搬送ロール142と、二次転写ロール143と、クリーナバックアップロール144と、ステアリングロール145と、張架ロール146と、一次転写ロール147I,147K(以下、これらを特に区別する必要がない場合には、総称して一次転写ロール147という)と、ベルトクリーナ149とを備えており、現像部13によって形成された画像を用紙Pに転写する転写装置である。中間転写ベルト141は周回移動する無端の帯状部材であり、ベルト搬送ロール142と、クリーナバックアップロール144と、ステアリングロール145と、張架ロール146と、一次転写ロール147とによって掛け渡される。
【0019】
ベルト搬送ロール142にはモータ等の駆動部(図示せず)が歯車等を介して連結されており、中間転写ベルト141を図中の矢印D14方向に周回移動させる。なお、駆動部と連結されていない他のロールは、中間転写ベルト141の周回移動に伴って回転する。中間転写ベルト141が図中の矢印D14方向に周回移動して回転することにより、転写部14が転写した画像は、ベルト搬送ロール142と二次転写ロール143とが接する領域に移動させられる。二次転写ロール143は、中間転写ベルト141の外側においてベルト搬送ロール142に向かい合う位置に設けられており、ベルト搬送ロール142とともに中間転写ベルト141を挟持する。二次転写ロール143は、例えば接地されることにより、予め定められた電位が維持されている。
【0020】
ベルト搬送ロール142は、中間転写ベルト141と接触している部位を内側から外側に向けて押すとともに、この接触部位をトナーと同極性に帯電させる。これにより、中間転写ベルト141のうちこの接触部位と、二次転写ロール143との間に予め定められた電位差が生じるため、この電位差によって、中間転写ベルト141上の画像は供給部11から搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0021】
ベルトクリーナ149は、中間転写ベルト141の表面に残留している未転写のトナーを取り除く。クリーナバックアップロール144は、ベルトクリーナ149に向かい合う位置において内側から中間転写ベルト141を支え、ベルトクリーナ149によるトナーの清掃を支援する。
【0022】
張架ロール146は、一次転写ロール147Iからベルト搬送ロール142までの中間転写ベルト141を内側から支える。そして、転写部14は、画像が転写された用紙Pを定着部15へと搬送する。
【0023】
各現像部13は、像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム131をそれぞれ備えている。各感光体ドラム131は、光走査部12から照射される光に応じた潜像を保持する。各現像部13は、それぞれ対応するトナーを用いて、感光体ドラム131が保持している潜像から各トナーに対応付けられた画像データにより示される画像をそれぞれ形成する。具体的には、感光体ドラム131の表面にトナーと同極性の電荷を保持させ、その表面に対して光走査部12により光を照射することで電荷を失った部分にトナーを付着させることで、現像部13は画像を形成する。
【0024】
そして、上述したとおり、中間転写ベルト141の内側において、各感光体ドラム131に向かい合う位置に一次転写ロール147が設けられている。一次転写ロール147は、中間転写ベルト141と接触している部位を内側から外側に向けて押すとともに、この接触部位をトナーと逆極性に帯電させる。これにより、中間転写ベルト141のうちこの接触部位と、一次転写ロール147に向かい合う感光体ドラム131との間に電位差が生じるため、中間転写ベルト141に画像が転写される。
画像が転写された後、感光体ドラム131の表面はクリーナによって除電されるとともに、残留している未転写のトナーが取り除かれる。
【0025】
定着部15は、加熱ロールと加圧ロールとを備え、これらを用いた加熱及び加圧により、用紙Pに転写された画像をその用紙Pに定着させる。排出部16は、定着部15による定着処理を経た用紙Pを画像形成装置1の上部に設けられた用紙置き場に排出する。制御部19は、通信可能に接続された外部機器2から受け取った指示の信号や、図示しない操作部によるユーザの操作等に応じて、現像部13等の画像形成装置1の各構成を制御して、用紙Pに画像を形成させる。
【0026】
1−2.点状画像
図2は、点状画像の一例を示す図である。同図に示すように用紙Pには赤外線吸収トナーにより点状の画像である点状画像が格子状に配置され、その配置パターンに応じた情報を示す画像が形成される。以下、同図に示すように、赤外線吸収トナーによる点状画像を点状画像GI、赤外線吸収トナーの配置されていない領域を空白領域Bとする。このように用紙Pに配置された複数の点状画像GIは、記録媒体の表面上に形成され、赤外線読み取り装置により読み取られる範囲に形成された位置のパターンにより情報を示す複数の点状画像であって、赤外線の吸収率が閾値以上であり、且つ、その赤外線に対する鏡面光沢度が22%以下である複数の点状画像の一例である。
【0027】
1−3.現像剤
1−3−1.キャリア
現像剤は、トナーとキャリアを含む、いわゆる二成分現像剤である。この二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0028】
1−3−2.トナー
トナーは顔料と樹脂とを含み、樹脂に顔料を分散させて成る。顔料は予め定められた帯域の光を吸収して、反射光に含まれるその帯域の光の強度を低下させる。樹脂は、顔料を分散させて保持するとともに塗布面における光沢度を決定する要因となる。
【0029】
(1)顔料
赤外線吸収トナーに含まれる顔料は、予め定められた帯域の光として、例えば、750nm以上1000nm未満の帯域の赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含む。この顔料は、赤外線吸収剤として例えば、下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する。
【化1】

【0030】
黒色トナーに含まれる顔料は、可視光領域に広い吸収帯域を有している。黒色トナーに含まれる顔料は、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、活性炭、フェライトなどの無機顔料や、アニリンブラックなどの有機顔料が挙げられる。黒色トナーに含まれる顔料は、黒色に発色するものであれば何でもよいが、赤外線帯域の吸収率が高いと赤外線吸収トナーによる点状画像の読み取りに影響を及ぼすため、赤外線帯域の吸収率が例えば7%未満というように比較的低いものが望ましい。
【0031】
(2)樹脂
赤外線吸収トナーに含まれる樹脂は、少なくとも熱可塑性の結着樹脂を含む。この結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂などの一般トナー用に用いられる公知の樹脂とその共重合体が挙げられる。これらの中でも、用紙との密着性、低温定着性、定着強度、保存性などのトナー特性を同時に満足し得る点でポリエステル系樹脂が好ましい。また、結着樹脂は、重量平均分子量が5000以上40000未満、かつ、ガラス転移温度が55℃以上75℃未満であることが好ましい。
【0032】
また、この樹脂は、粘弾性調整を目的として、無機粉体を含んでもよい。無機粉体としては、トナー表面の外添剤として使用されるものであればよく、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらの無機粒子は、一般に樹脂の流動性を向上させる(すなわち粘弾性を下げる)目的で使用される。粘弾性が下がればトナーにより形成される画像の表面はより平滑になり、光沢度が上がるからである。
【0033】
また、この樹脂は、2価以上の価数を取りうる金属元素を含んでもよい。この2価以上の価数を取りうる金属元素は、樹脂の流動性を低下させる(すなわち粘弾性を上げる)目的で使用される。2価以上の価数を取りうる金属元素を含ませることにより、樹脂の粘弾性が上がる原因については、明らかではないが、例えば、以下のように推測されている。
【0034】
すなわち、2価以上の価数を取りうる金属元素は、トナー母粒子中で結晶性樹脂や離型剤中に分散した状態で存在し、イオン架橋を形成するためトナー母粒子の弾性を高くすると共に、結晶性樹脂と離型剤との相溶性を向上させる。このため、定着時における結晶性樹脂の著しい粘性低下を防ぐと共に、結晶性樹脂と離型剤との相分離も抑制されるため、この金属元素を分散させた樹脂を含むトナーにより形成された画像の光沢が下がるものと考えられる。粘弾性が上がればトナーにより形成される画像の表面は平滑さが失われ、光沢度が下がるからである。
【0035】
赤外線吸収トナーの調製のために添加される無機粉体および2価以上の価数を取りうる金属元素の量は、この赤外線吸収トナーにより形成される画像に対して上記帯域の赤外線について測定される鏡面光沢度が少なくとも22%以下、望ましくは15%未満になるように決定される。
なお、従来の赤外線吸収トナーで形成された画像の光沢は比較的高く、例えば、TMA(Toner Mass Area)が2mg/cm2以上4mg/cm2未満の画像を形成した場合、その画像における、鏡面光沢度は25%未満にならない。
黒色トナーに含まれる樹脂は、一般トナー用に用いられる公知の樹脂を用いてもよいが、赤外線吸収トナーに含まれる樹脂と同じものであってもよい。
【0036】
2.実施例
本発明の実施形態に係る記録媒体の実施例として、いわゆる普通紙の一例である富士ゼロックス社製フルカラー複写機用紙の表面に、上述した赤外線吸収トナーにより点状画像が形成された用紙P(以下、「第1の用紙P1」という)を作成した。また、その比較例として、上記のフルカラー複写機用紙の表面に、比較用のトナー(以下、比較用トナーという)により点状画像が形成された用紙P(以下、「第2の用紙P2」という)を作成した。この比較用トナーは、上述した赤外線吸収トナーと同じ吸収帯域の顔料と、一般トナー用に用いられる公知の樹脂であって、これを含むトナーにより形成された画像に対して測定する鏡面光沢度が25%以上である樹脂とからなる。そして、これら用紙の評価を行った。なお、これらトナーにより画像が形成されていない用紙Pそのものの赤外線吸収率は上述した閾値の一例である30%未満である。
【0037】
図3は、第1の用紙P1および第2の用紙P2のそれぞれに形成した点状画像GIにおけるトナー濃度と鏡面光沢度との関係を示した図である。第2の用紙P2において、トナー濃度(TMA)が3mg/cm2以上で4mg/cm2未満であるとき、上記の比較用トナーにより形成された点状画像GIの鏡面光沢度は25%以上である。ここでは、図3に示した第2の用紙P2の二例中、鏡面光沢度の低い方を用紙P21とする。
【0038】
一方、第1の用紙P1において、トナー濃度が3mg/cm2以上で4mg/cm2未満であるとき、上記の赤外線吸収トナーにより形成された点状画像GIの鏡面光沢度は少なくとも22%以下であり、望ましくは15%未満である。同図に示したようにこの場合、第1の用紙P1に形成された点状画像GIの鏡面光沢度は12%以上22%以下である。ここでは、図3に示した第1の用紙P1の三例中、鏡面光沢度の最も高いものを用紙P12とし、用紙P12の次に鏡面光沢度の高いものを用紙P11とする。そして、トナー濃度が0mg/cm2であるとき、すなわちトナーによる画像形成がなされていない用紙Pそのものの鏡面光沢度は9%以上10%未満である。
【0039】
図4は、第1の用紙P1と第2の用紙P2とを読み取りデバイスでそれぞれ読み取った画像の例である。読み取りデバイスは、赤外線を照射するLEDなどの照射手段と、赤外線を検知するCCDなどの撮像素子と、可視光線をカットする可視カットフィルターを備えており、照射手段で用紙上に形成された画像に赤外線を照射し、可視カットフィルターによりその画像で反射した赤外線を含む反射光から可視光線を除去し、可視カットフィルターを透過したその光を撮像素子で検知する。ここでは、撮像素子は、縦224、横224、計50176個のフォトダイオードを有しており、これら各フォトダイオードは、受光した赤外線の強度に応じた電荷を発生させるため、発生したこの電荷に応じた224×224の画素からなる画像を生成する。具体的には、850nmの分光感度が550nmの分光感度の60%以上であってグローバルシャッター方式の赤外CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーを撮像素子として使用した。また、照明には設計中心波長850nmのOSRAM社製SFH4350(赤外LED)を用い、可視カットフィルターには、住友ベークライト株式会社製テクナライトIR/R2805を用いた。
【0040】
図4(a)に示す画像は、鏡面光沢度が13.7%の点状画像が形成されている用紙P11(第1の用紙P1の一例)を、10度の読み取り角度で読み取った画像である。図4(b)に示す画像は、鏡面光沢度が22.0%の点状画像が形成されている用紙P12(第1の用紙P1の一例)を、10度の読み取り角度で読み取った画像である。図4(c)に示す画像は、鏡面光沢度が25.2%の点状画像が形成されている用紙P21(第2の用紙P2の一例)を、10度の読み取り角度で読み取った画像である。
【0041】
図4(a)に示した画像では用紙P11の表面における正反射の影響はほとんどなく、有るにもかかわらず無いものとして誤認識された点状画像はなかった。また、図4(b)に示した画像では、用紙P11に比べて用紙P12の表面における正反射の影響が認められるものの、上記の誤認識をされた点状画像はなかった。
【0042】
一方、図4(c)に示した画像では第2の用紙P2の表面のうち、破線で示した領域内において、いくつかの点状画像から正反射光を受光していることがわかる。そして、このため、読み取りデバイスは本来、点状画像が描かれている部分について、その点状画像が無いものとして誤認識した。
【0043】
図5は、読み取り角度ごとの誤認識率を第1の用紙P1(用紙P11,P12)と第2の用紙P2(用紙P21)のそれぞれについて測定した例を示す図である。横軸は、読み取りデバイスが画像を読み取る際の読み取り方向の角度を示しており、用紙の表面における法線方向に対する角度によって表したものである。例えば、用紙の表面における法線方向に沿って用紙を読み取った場合、読み取り角度は0度である。縦軸は誤認識率であり、形成された点状画像が無いものとして誤って認識される割合を示したものである。この誤認識率は、読み取り角度毎に500回の認識を行い、それぞれ誤認識された回数を500で除算した百分率により表した。同図に示すように、第2の用紙P2について、読み取り角度を−40度から40度まで5度刻みで変化させて誤認識率を測定すると、読み取り角度が10度のとき誤認識率が0.3%程度であり、読み取り角度が5度のとき誤認識率が1.0%を超えることがわかった。一方、第1の用紙P1について誤認識率を測定したところ、いずれの読み取り角度においても誤認識率は0%であった。
【0044】
以上示したように、形成する画像の鏡面光沢度が少なくとも22%以下、望ましくは15%未満であるように調製された赤外線吸収トナー(画像形成材料)によって、用紙上に複数の点状画像を形成して情報を表すことにより、形成する画像の鏡面光沢度が25%以上になる従来のトナーを用いた場合に比べて誤認識の確率が低減された。
【0045】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
3−1.変形例1
上述した実施形態において、顔料は、赤外線吸収剤として例えば、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有していたが、他の赤外線吸収剤を含有していてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態において、顔料は、予め定められた帯域の光として赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含むものであったが、赤外線以外の帯域の光を吸収する吸収剤を含むものであってもよい。すなわち、顔料は、赤外線を吸収するものであっても、赤外線を吸収せず、赤外線以外の帯域の光を吸収するものであってもよい。要するに、顔料は、予め定められた帯域の光を吸収するものであればよい。
【0047】
3−2.変形例2
上述した実施形態において、画像形成装置1は、中間転写ベルト141の周回方向における上流側に現像部13Kが、下流側に現像部13Iがそれぞれ設けられていたが、これら現像部13の配置は逆であってもよい。
【0048】
また、現像部13Iがあれば現像部13Kはなくてもよい。また、現像部13Kに代えてまたは加えて、黒色と異なる顔料を含んだ別のトナーにより画像を形成する現像部13を中間転写ベルト141の周回上に設けてもよい。例えば、現像部13I,13Kに加えて、シアン、マゼンタ、イエローなど、可視光(例えば、波長が400nm以上700nm未満の光)に対応した吸収帯域を有する顔料を含んだ現像部を設けた場合には、記録媒体上に赤外線の受光センサーに検知させる不可視画像のほか、人間に視認される可視画像が形成される。
【0049】
3−3.変形例3
上述した実施形態において、点状画像は円形であったが、矩形であってもよい。
また、上述した実施形態において、点状画像は、格子状に仮想的な縦線と横線とを引いた場合に、それら各線の交差点上に配置されていたが、この交差点からずれた位置に配置されてもよい。そして、このずれの量や方向を点状画像ごとに定め、各点状画像がそれぞれ対応する交差点からずれている量や方向の組み合わせによって、情報を表してもよい。
また、格子の間隔としては様々な値が採用し得るが、例えば、記録媒体がISO216に定めるA4サイズ(210mm×297mm)である場合に、格子の間隔を0.01mm以上1.0mm未満、または、より好ましくは0.3mm程度(0.25mm以上0.35mm未満)とすると、点状画像の配置パターンの数は、記録媒体上の位置を特定するのに充分な量となるので望ましい。
【0050】
3−4.変形例4
上述した実施形態において、赤外線吸収トナーの鏡面光沢度が22%以下となるように、トナー原料である樹脂に、決められた量の無機粉体、または2価以上の価数を取りうる金属元素が添加されていたが、他の材料を添加してもよい。要するに、この赤外線吸収トナーは、これにより形成される画像の鏡面光沢度が22%以下になるのであれば、どのような材料を含んでもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…画像形成装置、11…供給部、12…光走査部、13,13I,13K…現像部、131…感光体ドラム、14…転写部、141…中間転写ベルト、142…ベルト搬送ロール、143…二次転写ロール、144…クリーナバックアップロール、145…ステアリングロール、146…張架ロール、147,147I,147K…一次転写ロール、149…ベルトクリーナ、15…定着部、16…排出部、19…制御部、2…外部機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線の吸収率が閾値未満である表面と、
前記表面上に形成され、赤外線読み取り装置により読み取られる範囲に形成された位置のパターンにより情報を示す複数の点状画像であって、前記赤外線の吸収率が前記閾値以上であり、且つ、前記赤外線に対する鏡面光沢度が22%以下である複数の前記点状画像と
を具備することを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−164214(P2012−164214A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25305(P2011−25305)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】